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【ガルパン】西住家の鬼コーチです!


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アズミ「──こんな時間に隊長から呼び出されるなんて珍しいわね」
メグミ「たしかに。いつもなら自室に戻られて、録画した番組を観ている時間帯ね」
ルミ「そういうところがあるから、アリスちゃんってやっぱ普通の中学生の子と変わらないんだなって安心するよねー」
アズミ「こらこら、今はちゃんと隊長って呼びなさい」
メグミ「そうね。戦車道チームの隊員メールから来た連絡だし、プライベートな呼び出しでは無いとは思うのだけど……」
ルミ「ひょっとして……前の試合で高校生相手に負けたからって、何かしらペナルティでも言い渡されるんじゃ……」
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2: 以下、
アズミ「それは無いんじゃない? 島田の奥様だって隊長のことは褒めてたし、試合の後にご褒美もあったでしょ?」
ルミ「ああ、あのミュージアムね。……隊長には悪いけど私、アレ系の施設はしばらく無理だわ……。物凄いスピードで突っ込んでくる観覧車とポルシェティーガーが、たまに夢に出てくるの……」
メグミ「私も、振り子みたいに船が揺れる系のアトラクションはしばらく無理……」
アズミ「実は私もホラー系はしばらく無理……。昨日見た夢なんだけど……暗いトンネルから出てすぐ、ポンと肩を叩かれたような気がして、振り向いたら?号戦車が砲身向けてコッチ見てるの……」
ルミ「……」
アズミ「それで逃げようと反対向いたら、今度はティーガーが立ち塞がってて逃げられないの……」
メグミ「……」
3: 以下、
ルミ「……みんなあの試合の後で、結構なトラウマ抱えてるじゃない」
アズミ「仕方ないでしょ……あんな体験滅多にできるもんじゃないし」
メグミ「どちらにせよ、あのときの私達は失態続きだったのよね……」
ルミ「やっぱり何かペナルティがあるんじゃない……?」
アズミ「結局奥様が甘いのって、基本的に自分の娘だけだし……」
4: 以下、
メグミ「はぁ……ダメね、大人の私たちがこんな顔してちゃ」
ルミ「うん。腹くくって行くしかない」
アズミ「やだなぁ……アリスちゃんに怒られたくないよぉ」
ルミ「アズミ姉さん、いい大人が説教から逃げちゃダメでしょ」
メグミ「安心なさいアズミ。隊長ならそんな悪い事にはしないと思うわ」
アズミ「そうならいいんだけど……」
5: 以下、
───
──

愛里寿「待機中に呼び出してごめんなさい」
メグミ「いえ。戦車道に関することであれば、いつでもお呼びください」
アズミ(戦車道の事じゃなくても呼んでほしいんだけどね!)
ルミ(ちょっと姉さん……)
愛里寿「今日ここへあなた達を呼び出したのは他でもないわ。先日に対戦した、大洗女子学園をはじめとする高校生の連合チーム……」
アズミ(そらきた!)
メグミ(仕方ない。大人しく受け入れましょう)
6: 以下、
愛里寿「彼女たちとの試合で……試合内容はどうあれ……今後の世界大会までにクリアしなければならない課題が、各員の中で幾つか浮かんできたんじゃないかと思う」
アズミ「はい……」
愛里寿「そこで母上──島田流家元のお力添えを頂いて、来週から私たちの専属コーチをお招きすることが決まったわ」
ルミ「コーチ……ですか?」
愛里寿「ええ、今から紹介する──どうぞ、お入り下さい」
 ガチャ …
7: 以下、
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
愛里寿「現在、国際強化選手への直接指導を専属で務めていらっしゃる、西住コーチよ」
メグミ「」
アズミ「」
ルミ「」
愛里寿「コーチ、ご挨拶を」
西住(柴犬)「──ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
8: 以下、
ルミ「……あ、わたし妖精さんにお菓子作ってこなきゃ」フラー
アズミ「ルミ、いい大人が現実逃避するのはダメ」ガシッ
愛里寿「西住コーチはご覧のとおり男性だから、公式の試合には直接出られない。だけど、戦車道に関して言えば、並の選手は爪先にも及ばない知識と技量の持ち主よ」
アズミ「いや、男性とか以前にもっと……その、なんていうか……」
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
9: 以下、
愛里寿「質問があるなら、今のうちに聞くけど」
メグミ「では、隊長」
愛里寿「なあに?」
メグミ「先ほどお聞きしたコーチのお名前ですが、西住というのは、あの西住流の……?」
愛里寿「そう。コーチは西住流本家で師範資格を取得していらっしゃるわ」
アズミ「この犬が……」
メグミ「師範……」
愛里寿「これはオフレコなのだけど……。プロリーグ設置委員会に現西住流家元の委員長就任が決まった場合、これまで家元がされていた師範としての活動は、この西住コーチへ引き継がれるでしょうね」
ルミ「嘘だっ!!」
10: 以下、
愛里寿「本当よルミ。それにね、コーチは西住流家元の御養子でもあられるの」
アズミ「家元の養……子……」
ルミ「……だと?」
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
愛里寿「そう。私たちが対戦した大洗連合チームの大隊長と中隊長だった、西住みほ選手とまほ選手は、義理の兄と妹の間柄なのですって」
ルミ「えっ、あの高校生姉妹のお義兄さんって……何才なんですか?」
愛里寿「たしか、今年で19とお聞きしたのだけど」
アズミ「犬年齢でけっこうなお年でいらっしゃる!」
11: 以下、
愛里寿「年齢は……うん、合ってるみたいね。よしよし」ナデナデ
西住(柴犬)「ウォフッ」ヘッヘッヘッヘ…
ルミ「……」
メグミ「隊長、このような場所でお聞きする事ではないのですが……」
愛里寿「うん」
メグミ「西住流の家元とコーチは義理の親子関係があると先ほどおっしゃいました。しかし、法的というか、種族的にというか、とにかく色んな問題があったと思うのですが……」
12: 以下、
愛里寿「……?」キョトン
ルミ(駄目だこの中坊。メルヘン思考に寄ってるせいか、あんま理解できてないっぽい……)
メグミ(それは、さっき妖精さん発言かましたルミには一番言われたくないでしょうね……)
アズミ(あーもーキョトンとした顔で見ないでよ可愛いなーチキショー!!)
愛里寿「うーん、そんな事はないと思うんだけどなあ」ナデナデ
西住(柴犬)「─ウォン、ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
((( 大ありだよッ!!! )))
13: 以下、
愛里寿「確かにコーチは西住の直系ではないのだけど、由緒正しい血筋であるとお聞きしたわ」
メグミ「あの、それって西住さんのお宅で飼われている……という事ではないのでしょうか?」
愛里寿「そんなことはないと思う。ほら、それを証明する血統書がこれ」ピラッ
ルミ「やっぱ飼ってる犬なんじゃないですかッ!」
アズミ「くぅぅ……ドヤ顔の写真と肉球マークが憎らしいけどちょっと可愛いッ!」
西住(柴犬)「──ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
15: 以下、
愛里寿「まあ、そういうわけで最初はつらいかもしれないけど、3人とも西住コーチの指導にしっかり付いていけるよう頑張ってね」
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
メグミ「……」
アズミ「……」
ルミ(つらい……)
愛里寿「……いや?」
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
メグミ「いえ」
アズミ「嫌というわけでは……」
ルミ「ないのですが……」
16: 以下、
愛里寿「それじゃあ、今後の編成なんだけど、しばらくは西住コーチを大隊長に置いた……」
アズミ「やっぱり嫌ぁあああーーーーー!!」
ルミ「覚悟してたけど犬の指揮で動かされるなんて嫌ぁあああーーーーー!!」
愛里寿「……だったら、ルミ、アズミ、メグミ、ニシズミの4中隊で……」
アズミ「それはもっと嫌ぁあああーーーーー!!」
ルミ「私たちのアイデンティティが犬にぶち壊されるなんて嫌ぁあああーーーーー!!」
愛里寿「うーん、困ったなあ」ナデナデ
西住(柴犬)「……クァアア(大欠伸)」
17: 以下、
メグミ「こらこらあなたたち、西住コーチに失礼でしょ」ガクガク
アズミ「そんな真っ青な顔で言ったって説得力ないわよ姉さん!」
ルミ「メグミ姉さんリバースする寸前じゃない! 先月やったコンパでその顔見たよ!!」
愛里寿「どうしよっかコーチ」ナデナデ
西住(柴犬)「──ウォン、ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
18: 以下、
愛里寿「なになに。"こういうときは西住流の力と業(わざ)を魅せるに越したことはない"……だって?」
メグミ「待ってください隊長、そのコーチ……じゃなくて、その犬畜生が、仰っている事が、わかるのですか?」ガクガク
アズミ「姉さん逆。逆。無理しなくていいから」
愛里寿「うん。母上からの経由でお借りした、この西住流秘伝のバウリンガルで意志の疎通は可能よ」
ルミ(騙されてる……)
アズミ(それ絶対だまされてるよアリスちゃん……)
19: 以下、
愛里寿「とりあえず明日、お互いの顔合わせも兼ねて何度か練習試合してみましょう。そうすればお互いの力量も測れるでしょ?」
西住(柴犬)「──ウォン、ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
愛里寿「なになに。"一戦で充分。ひよっ子どもは三匹まとめて掛かって来い"……だって?」
メグミ「──」
アズミ「──」
ルミ「──」
西住(柴犬)「……クァ(欠伸)」
20: 以下、
メグミ「わかりました……」
アズミ「それでは明日……ご指導、御鞭撻のほど、お願い申しやがります……」
ルミ「わりゃぶちころしちゃるけんのう犬コロ……」
愛里寿「うん。私のセンチュリオンは週明けまで調整してるから練習試合には出られないけど、みんな頑張ってね」
西住(柴犬)「──ウォン!」ヘッヘッヘッヘ…
21: 以下、
▽翌日
───
──

ルミ「犬に負けた……犬に負けたッ!」ダンッ ダンッ
アズミ「ルミ、お茶がこぼれるからテーブル叩かないで」
メグミ「あの?号戦車、今まで見たことないような動きだった……」
アズミ「絶対どこか弄ってるわよあの戦車……公式スペックの範疇を明らかに越えた挙動だったわ」
ルミ「なんなのよあの加とスピードは!? あのポルシェティーガー以上に化物だったじゃない!!」
22: 以下、
メグミ「私たちのバミューダアタックから流れるように離脱して、そこからの正確無比な行進間射撃……」
アズミ「隊長のチームが操作するセンチュリオンのように洗練された履帯運びと砲塔回し……いや、それ以上だったかもしれない」
メグミ「戦車の方は何かしら有るのかもしれないけど、あの動きを見るからに車長としての練度は本物……」
アズミ「国際強化選手の専属コーチというのは、本当だったようね……」
ルミ「だけど何で犬なのよぉおお……」
23: 以下、
ガチャ …
愛里寿「みんなお疲れさま」
西住(柴犬)「─ワンッ!」
ルミ「ひっ!」ガタッ
アズミ「た、隊長!」ガタッ
メグミ「お疲れ様です、隊長」ガタ
愛里寿「3人とも楽な格好でいいよ。明日は日曜だからゆっくり休んで、今日の反省点をしっかり振り返って、来週からの練習に備えてね」
西住(柴犬)「─ワンッ、ワンッ!」
愛里寿「……って言ってる」
ルミ「は、はいコーチッ!」
アズミ「ありがとうございましたコーチ!」
メグミ「これからもご指導のほど、よろしくお願い申し上げますコーチ」
24: 以下、
西住(柴犬)「ワンッ、ワンッ」ヘッヘッヘッヘ…
愛里寿「んー? なになに。"来週も俺と地獄まで付き合ってもらう"……だって?」
ルミ「」
アズミ「」
メグミ「」
愛里寿「それじゃあ私たちはこれで」
西住(柴犬)「─ワンッ!─ワンッ!」ヘッヘッヘッヘ…
愛里寿「おいでコーチ。西住のおば様から貴方にって、とっておきの缶詰を頂いてるの」
西住(柴犬)「─ワンッワンッ!─ワンッ!」ヘッヘッヘッヘ…
バタン = 3
25: 以下、

ルミ「……なんでこんなことに」ガックシ
アズミ「……ルミ、諦めましょう」
ルミ「嫌だよアズミ姉さぁん……」
メグミ「なんにせよ、彼の実力は認めるしかないわ。諦めなさいルミ」
ルミ「……メグミ姉さんは嫌じゃないの? あんな犬に完敗して、本当は辛いんでしょう?」
メグミ「……」
アズミ「姉さん?」
メグミ「そりゃあオイラだって嫌になるときゃあるさぁ……だからってさぁ……」
アズミ「姉さん地が出てる。地が出てる」
ルミ「ごめん私が言い過ぎた。戻ってきてメグミ姉さん」
26: 以下、

ルミ「ねえ、メグミ姉さんのそのモノマネを駆使して、アリスちゃんからコーチのお引き取りをお願いできないかしら」
アズミ「ちょっと無理矢理すぎやしないかしら……」
メグミ「ダメよ。それに隊長はボコが好きなのであって、中の人だけが居ても、あんまり興味の対象にはならないの」
アズミ「ある意味、とっても純粋な子なのよね……」
ルミ「はぁ……諦めるしかないのかぁ……」
27: 以下、
メグミ「それにしても、キューポラから覗いたあの御顔から下が一体どうなっているのか非常に興味深いわ」
アズミ「隊長が言うには、乗員スタッフは車長の西住コーチ以外、顔出しをNGとするって契約にあるそうよ」
ルミ「どうせ、よってたかって柴犬が操作してるに決まってるじゃない」
アズミ「ぶへっっ!! ……ちょっとルミ、むせちゃったじゃないの!」ゲホ ゲホ
メグミ「……もうこうなったら、コーチから西住流の極意を徹底的に学ぶしかないようね」
アズミ「西住流の……」
ルミ「極意……?」
28: 以下、
メグミ「大洗に転校した義妹さんの方は、亜流とはいえ西住流で私たちに勝った」
アズミ「いや、アレと西住流は比べちゃダメでしょ」
ルミ「後半戦のトリッキーさは本当に異次元だったわ……」
メグミ「でも、その根底には西住流が確かに根付いていたはずよ。隊長が操る島田流の片鱗しか知らない私たちにとって、他の流派を学ぶ意義は充分にあるんじゃないかしら」
アズミ「うーん、姉さんがそこまで言うのなら……やるかあ」
ルミ「やるしかないのかぁ……」
メグミ「ええ、やってみせましょう」
───
──

29: 以下、
西住流戦車道、其の心得──

撃てば必中──
西住(柴犬)「──」ヘッヘッヘッヘ…
 シャー …
メグミ「またですかコーチ……。水で流して洗浄するので少々お待ち下さい」

守りは固く──
アズミ「コーチ、寒いからって小屋に引きこもらないで?」
西住(柴犬)「─ッ!─ッ!!」キューン キューン
アズミ「あーんそんな引っ張ったらまた首輪取れちゃうでしょ?」グイグイ

進む姿に乱れなし──
 ギャン! ギャン! ギャン! ギャン!
 ヴォン! ヴォン! ヴォン! ヴォン!
ルミ「コーチ! あっちこっち他の犬とすれ違う度にケンカ吹っかけるのやめてくださいっ! ……すみません、すぐに撤退しますんで! ……ほんとすみません!!」

30: 以下、
───
──

▽一ヶ月後
メグミ「永かったわね……」
アズミ「ええ、だけど完璧に掴んでみせたわ!」
ルミ「散歩か、ご飯か、おしっこか、コーチが何を求めているのか、今の私たちならアリスちゃんが持ってる道具が無くても手に取るように分かる!!」
メグミ「そうね……」
アズミ「だって私たち……」
ルミ「この一ヶ月……」
((( 犬の世話しかしてない…… )))
メグミ「……」
アズミ「……」
ルミ「……」
31: 以下、
───
──

─ 黒森峰女学園 / 戦車道科目 ─
島田(ポメラニアン)「──」ハッハッハッハ…
エリカ「あの、隊長。それは一体……」
まほ(犬耳)「先ほど紹介したように、西住流家元を通してお招きした特別講師の島田教官だ」
小梅「いえ、逸見副長が西住隊長にお聞きしたいのは、隊長の頭についてる……その……耳です」
まほ(犬耳)「ああ、これは今回の講習で特別にお借りした島田流秘伝のバウリンガルだ。皆、何か教官に質問があるなら私が代わりに聞こう」
エリカ(騙されてる……)
小梅(それ絶対だまされてます隊長……)
島田(ポメラニアン)「─キャン、キャン!」ハッハッハッハ…
まほ(犬耳)「それでは、来週に開催される親善試合の相手だが、逸見や赤星も対戦した経験のある大学選抜チームで──」
親善試合はドッグランで白熱したそうです
32: 以下、
おわり
柴犬はいいぞ
36: 以下、

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