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エリカ「カレーの味」
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1:
あの子が去ったあの日の夜、私の部屋は涙で濡れていました。
深い悲しみに選ばれ目から零れ落ちるその涙は、降り止まない雨のように冷たく頬を伝い、
小さな私の部屋にまた一つ影を落とすのでした…。
エリカ「隊長」
まほ「うぐぅぅぅぅ…ゥゥゥ!ヒグッ!ゥグッ!」ボロボロ
エリカ「隊長」
まほ「うぅぅぅぅぅあぐっ…ゥグッ!ェグッ!ふぅ、ふぅ、ぁぁぁ」ボロボロ
エリカ「……」
まほ「ぅぅぅああああァァ…みほぉ…ゥゥゥ!」ボロボロ
エリカ「泣きすぎでしょう」
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2:
まほ「だって…だって…みほが…」ボロボロ
まほ「ふぅ、ふぅ、まさか出て行くとは…ふぅ、ふぅ」
まほ「思わなかっ…ゥグッ!ふぅ、思わなかったん…ふぅぅぅ、だんだもん…ングッ、ゥゥゥウ!」ボロボロ
エリカ「それはそうですけど」
エリカ「仕方ないじゃないですか、あの子の取った行動に鑑みれば」
まほ「…ふっ、ふっ、ズズッ、はぁはぁ」
3:
エリカ「…10連覇を目前にして、フラッグ車長である副隊長…いえ、元ですか」
まほ「うぅぅう」ボロボロ
エリカ「元副隊長が、それを相手に明け渡してしまったんですから…」
エリカ「結果だけ見たら色んな方面からバッシングされてもおかしくないです……」
まほ「あの子はただ優しかっただけなのに!!!」ボロボロ
エリカ「……」
まほ「ぅぅぅう…なにも……」
まほ「なにも出て行かなくたっていいじゃないか……」ボロボロ
5:
まほ「いつの頃からか…うぐッ…みほはあんまり笑わなくなって」ボロボロ
エリカ「……」
まほ「戦車に乗る…のが楽しくなさそうで、ふぅ、ふぅ、ウゥゥ…」ボロボロ
まほ「だから私が…西住流のことなら長女の私が背負っていこうと…」ボロボロ
まほ「みほには何も背負わずただ笑って欲しくて…」
まほ「それだげなのに……うゥゥゥ」ボロボロ
まほ「10連覇も私は別に……ぅぅぅウウウ」ボロボロ
エリカ「みほ…さんは人一倍優しいから耐えられなかったんだと思いますよ」
まほ「……」グスッグスッ
6:
エリカ「隊長みたいに強い芯がある人なら毅然としていられたかもしれませんが…」
まほ「うっ…ぅぅううゥゥ!」ボロボロ
エリカ「戦車道チームの視線も」
まほ「ううっううっ」ボロボロ
エリカ「西住流という名の重みも…」
まほ「ゥゥゥ!ぅうう」ボロボロ
エリカ「でも根の優しさによる葛藤の板挟みと……」
まほ「うぐぅぅゥ!!ウウッ!ウウッ!」ボロボロ
エリカ「耐えられなかったんです…」
まほ「……」
エリカ「隊長みたいに強い人なら転校なんてしなかったはず…」
まほ「ウワアアアあああ!!!!」ボロボロボロボロ
エリカ「……」
エリカ「…いや、隊長もそんな強くないか?…」
7:
まほ「エリカは悲しくないのか!?」グスッ
まほ「もうみほはいないんだぞ!!!」ボロボロ
エリカ「!……」
エリカ「わ…私だって」
エリカ「……悲しいに決まってますよ…」
エリカ「あなた方西住流を私はどれだけ…」
まほ「ならどうして!!」ボロボロ
まほ「そんな落ち着いていられるんだ……グスッ!スビビ!!」
まほ「すまんティッシュがない…スビビ!!」グスッ
まほ「どうして平静を保っていられるる…いららるるんだ!」ズズッズビビ!!
まほ「グスグス」
エリカ「……」
エリカ『あんたが泣き喚くから泣くタイミングがないんでしょうが!!!』
エリカ(…とは言えないわね……)
8:
まほ「止められなかった……」ボロボロ
まほ「追い詰められるみほを助けられなかった……」ボロボロ
まほ「ウワァぁぁ…あぁぁ」ボロボロ
エリカ「ティッシュ好きなだけ使ってくださいどうぞ」
まほ「…うっ…ううっ…」シクシク
まほ「みほ……」ごそごそ
まほ「……」ごそごそ
エリカ「何してるんですか?」
まほ「ベッド借りる」
エリカ「不貞寝ですか…」
まほ「ううっ…みほ…嫌だぁ…嫌だよ…」
まほ「行かないでくれ……また昔みたいに……」
まほ「一緒に戦車に……」グスグス
エリカ「……」
9:
エリカ「……」
エリカ『逸見エリカです!黒森峰並びに西住流の名に恥じないよう全力を注ぎます!』
みほ『よろしくね、逸見さん』
エリカ『西住みほさん、よろしくお願いします!』
みほ『えぇっ、みほでいいよ』
エリカ『えっでも…』
みほ『私も逸見さんと同じ一年生だし、これから一緒に頑張ろうね!』
エリカ『……私も』
エリカ『私も、エリカでいいわ』
11:
まほ『全車停止、一度引いて再度突撃する』
エリカ『えっ?敵は稜線を超えたすぐ先にいますよ隊長!行かなくていいんですか?』
みほ『あ、それはね。一回おびき寄せてから突撃して相手の意表をつくの』
エリカ『なるほど…』
みほ『お姉ちゃん口下手だから…はは』
エリカ『あはは』
まほ『聞こえてるぞ、二人とも』
12:
エリカ『ごめんなさい副隊長』
エリカ『突っ走って撃破されちゃったわ…結果も出せずに…』
みほ『そんな!エリカさんが無事ならそれに越したことはないよ!』
エリカ『副隊長…』
13:
みほ『久しぶりの陸だね』
エリカ『副隊長は…』
みほ『もう、二人のときは』
エリカ『フフ、ごめんなさい。みほはどこか行きたいところある?』
みほ『新しいショップができたみたいなの!もしかしたらボコのグッズもあるかも!』
エリカ『本当に好きねみほは。じゃあそこに行きましょうか』
みほ『えへへ』
14:
エリカ「お姉さんと妹で、志向は随分違っていたけど」
エリカ「どちらも私の憧れだった」
エリカ「二人の戦車道に触れられるのが嬉しくて楽しくて私は好きだった」
エリカ「……」
エリカ「転校先の町にも…」
エリカ「ボコのショップがあるといいけど…」
エリカ「……」
エリカ「……」ポロ…
エリカ「!……」ポロポロ
エリカ「ぐ……」
エリカ「私だって寂しいですよ…」
エリカ「晩ごはん、作らなきゃ」
15:
まほ「…ぅ?ん…みほ…みほ…」
まほ「……はっ」
まほ「エリカ?」
エリカ「少しは落ち着きましたか?」
まほ「……」
まほ「うっ……」ジワッ
エリカ「……」
まほ「うおおおえぇぇ…えぐっえぐっ」ボロボロ
エリカ「とりあえず顔洗ったらどうです?」
まほ「……」バシャッバシャッ
エリカ「タオルここにありますから」
16:
エリカ「晩ごはん、ありますよ。食べていってください」
まほ「…エリカが作ったのか?」
エリカ「ええ。隊長、カレー好きでしたよね」
まほ「…ズビッ!ズビッ!……いいのか?」
エリカ「はい」
エリカ「隊長も副隊長と同じように、たくさん重みを背負っているはずですから」
エリカ「今日のことは誰にも言いませんから…」
エリカ「まぁ、好きなだけ吐き出してください」
まほ「うええぇぇぇええぁりぁおうぅう」ボロボロ
エリカ「いいえ」
17:
エリカ「はいどうぞ。熱いので気をつけてくださいね」
まほ「ああ…」
エリカ「……」
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「……」
エリカ「?」
エリカ「食べないんですか?」
まほ「……」
まほ「子どもっぽいかもしれないが私は…カレーが好きだ」
エリカ(私はハンバーグが好きだから人のこと言えないけど…)
まほ「みほが初めて私に作ってくれた料理が」
エリカ「……」
まほ「…カレーだったから…」
18:
まほ「カレーを見ると…思い出す…」
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「……」
まほ「ふっ…う…」ポロ
エリカ「な、泣いてちゃ食べられませんから!冷めないうちに食べましょう!?」
エリカ「ねっ!?」
まほ「あ、ああ、そうだな…すまん。……いただきます」
エリカ「…いただきます」
まほ「……」もぐもぐ
エリカ「……」
まほ「……」もぐもぐ
19:
エリカ(隊長は本当に妹さんのことが好きなのね)
エリカ(普段は西住流を背負い、黒森峰の隊長として表に立っているけど)
エリカ(隊長も可愛い妹を持つ、一人の女の子なんだ)
エリカ(じゃなきゃ私の部屋に来ていきなり号泣することもないわよね…)
エリカ(きっと家でも自分をさらけ出せずに…)
エリカ「……」
エリカ(私にできることって何かしら…)
エリカ(何か、支えになることができればいいんだけど…)
エリカ「味は大丈夫ですか?一応ちゃんと作ったつもりですが…」
まほ「……」もぐもぐ
20:
まほ「…私が好きだったカレーは」
エリカ「……」
まほ「決まって甘口のカレーだった」
まほ「優しい口当たりで、食べたら安心して、嬉しくなるカレーだったんだ」
エリカ「……」
まほ「このカレーは…」
エリカ「………辛口…」
エリカ「ですね…」
まほ「ああ…」
エリカ「……」
エリカ「……」もぐもぐ
まほ「……」もぐもぐ
エリカ「……」もぐもぐ
21:
まほ「……」
まほ「だが」
エリカ「……?」
まほ「元気の出る…いつも前向きな、エリカの味がする」
エリカ「え…っ?」
まほ「副隊長はお前がやれ、エリカ」
隊長の目は涙で赤くなっていたけれど、
いつもの凛とした表情で、
真っ直ぐな瞳は私を見つめ、そう言ったのでした。
---
--
-
22:
みほ「エリカさん、カレーできたよ?」
エリカ「へぇ…これが噂の」
みほ「噂って??」
エリカ「噂は噂よ」
エリカ「食べていいかしら?」
みほ「もちろん!食べて食べて」
エリカ「いただきます」
みほ「いただきまーす。熱いから気をつけてね」
エリカ「……」もぐもぐ
みほ「……」
エリカ「……」もぐもぐ
みほ「ど、どうかな?」
23:
エリカ「うーん…」
みほ「えぇ??」
エリカ「ウフフ」
みほ「笑ってないで教えてよぅ」
エリカ「そうね、甘いわね」
みほ「それって褒めてるの?」
エリカ「さぁどうかしら?」
みほ「えぇ?」
エリカ「でも確かに」
24:
エリカ「優しい口当たりで、安心して嬉しくなる、みほの味がするわ」
みほ「…つまり?」
エリカ「美味しいってこと」
おしまい。
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