渋谷凛「アイドルに必要なもの」 木場真奈美「強靭な肉体と鋼の精神だな」back

渋谷凛「アイドルに必要なもの」 木場真奈美「強靭な肉体と鋼の精神だな」


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麗奈「つかさ! 勝負!」
つかさ「賭けは?」
麗奈「今日のお昼代!」
つかさ「よし乗った。今日も昼飯はタダだな」
麗奈「ハンッ! その余裕クシャクシャな顔、すぐに泣きっ面にしてやるわ!」
つかさ「余裕綽々な」
凛「また始まった」
晶葉「恒例行事だからな。あの二人が勝負するのは」
凛「ちなみに、今まで麗奈が勝ったことってあるの?」
晶葉「私が見た限りだと………ないな」
ゆかり「今まで20回くらいは勝負をしていたと思いますけど……」
凛「麗奈の財布、大丈夫なの?」
3: 以下、
麗奈「今日の種目は、これよ!」
つかさ「カルタか」
麗奈「読むのはゆかりにやってもらうから、さっさと並べて始めるわよ!」
つかさ「………」
麗奈「どうしたの? 早く並べて」
つかさ「10分」
麗奈「え?」
つかさ「10分待て。一通りカルタに目を通すから」
麗奈「はぁ? なんでそんなこと」
つかさ「だってお前、このカルタの絵柄覚えてるだろ」
麗奈「ぎくっ!」
つかさ「お前が持ってきたカルタだからな。家で何度も遊んでるうちに自然に記憶してるはずだ」
つかさ「アタシにも絵柄を見る時間くれなきゃ、さすがにフェアじゃないよな」ニヤリ
麗奈「うぐっ……いいわ! たった10分くらい待ってあげるわよ!」
麗奈「こっちは何年もこれで遊んでるのよ。その積み重ねを見せてやるっ!」
ゆかり「準備ができたら教えてくださいね」
5: 以下、
凛「そういえば、真奈美さんは?」
晶葉「先ほどPの仕事を手伝うと言っていた。もう少ししたら来ると思うぞ」
凛「手伝いか……私がやっても足引っ張るだけかな」
晶葉「プロデューサーの仕事というものをある程度理解している必要があるからな」
凛「……あの人、なんでもできるよね」
晶葉「うむ。いわゆる完璧超人というやつだ。私も頭脳では負けない自信があるが、それ以外はな」
凛「私は……花の知識なら勝てるかな」
晶葉「探せばもっとあるだろう」
凛「そうかな?」
晶葉「人間そんなものだ。いくらパーフェクトな人間相手でも、勝っている部分は意外とある」
晶葉「……と、Pが言っていた」
凛「ふーん」
6: 以下、
麗奈「21、22……」
つかさ「23。合計46枚だから、ぴったり引き分けか」
ゆかり「お二人とも、すごく取るのがいんですね。私、びっくりしました」
ゆかり「名勝負ですね」パチパチ
麗奈「むむむ……もうちょっとで勝てそうだったのに」
つかさ「付け焼刃の記憶じゃこんなもんだな。負けなかっただけよしとするか」
真奈美「おはよう。少し遅くなってしまったな……おや、カルタをやっているのか」
ゆかり「真奈美さん。おはようございます」
真奈美「懐かしいな。昔は家族や友人とよく遊んだものだ」
真奈美「海外に持ち込んで、向こうの連中と一緒にやったこともあったな」
麗奈「真奈美もやる? アタシとつかさの3人で」
真奈美「いいのか?」
つかさ「ま、麗奈と引き分けで終わりってのもすっきりしねぇし」
ゆかり「読むほうは、私がもう一度やりますね」
真奈美「では参加させてもらおう。ふふふ、久しぶりだから腕が鳴るな」
麗奈「ククク、絵柄を覚えていない真奈美相手なら楽勝ね」ニヤリ
つかさ「コイツ、フラグ立てないと気が済まないのか」
7: 以下、
ゆかり「あ――」
真奈美「ふんっ」バシッ
ゆかり「こ――」
真奈美「はっ」シュバッ
ゆかり「に――」
真奈美「とおっ」バンッ
ゆかり「わぁ、すごいです。これで10枚連続真奈美さんの札ですね」
麗奈「」
つかさ「」
麗奈「ちょ、ちょっとタンマ!」
つかさ「作戦ターイム!」
真奈美「認めるっ!」
麗奈「ど、どうすんのよメチャクチャ強いわよ」
つかさ「飛び抜けた反射神経と空間認識能力のなせる業だな……想定以上だ。やっぱウチの会社に欲しいわ」
麗奈「それはどうでもいいけど、このままボロ負けするのだけは嫌よ」
つかさ「同感。……かくなるうえは、トラスト、いくか」
麗奈「トラスト?」
8: 以下、
真奈美「む? この位置取りは」
ゆかり「まあ」
つかさ「いいか。お前が左半分、アタシが右半分のフィールドを受け持つ」
麗奈「足引っ張るんじゃないわよ!」
真奈美「なるほど、共闘か。面白い」
ゆかり「やっぱり仲良しなんですね」ウフフ
晶葉「いつも争っている二人が協力体勢か」
凛「漫画だと熱い展開だね」
麗奈「つかさ!」
麗奈「この状況、一言で表すならこう言うのよねっ」
つかさ「どう言うんだ」
麗奈「ゴエモン風呂!」
つかさ「呉越同舟だバカ」
9: 以下、
その後
真奈美「さあ、来い!」
ギュイイイン!
麗奈「うわあああ」
ドカーン!
つかさ「ぐうううう」
ビュオオオッ!
麗奈・つかさ「負けるかーっ!!」
ゆかり「ええと……24VS22で、つかささん・麗奈さんチームの勝ちですね」
真奈美「負けてしまったか。だが久しぶりにカルタができて楽しかったよ」
麗奈「か、勝ったぁ……!」ボロボロ
つかさ「つーか、なんでカルタでこんなに疲労する羽目に……つれぇー」ヘトヘト
麗奈「途中、カルタやってるだけじゃ出るはずのない音が聞こえたしねー……」
つかさ「カルタじゃなくてKARUTAだったな……」
つかさ「ま、なんにせよ勝ったのは収穫だ。やるじゃん、麗奈」ニヤリ
麗奈「そっちもね」ヘヘーン
晶葉「うむ。あれぞまさに、友情・努力・勝利だな!」
凛「ジャンプの鉄板だね」
真奈美「戦いを終え、互いに認め合う。いい光景だ」
ゆかり「拍手です」パチパチパチ
17: 以下、
お昼 食堂
つかさ「カレーうどんとサラダ1つずつ」
麗奈「A定食1つ!」
真奈美「私はB定食にしよう」
つかさ「マジでおごってくれるの?」
真奈美「二人は私に勝ったからな。勝利には報酬があったほうがいいだろう」
つかさ「そりゃ、アタシら二人の枚数を合計すれば勝ってたけど、単独ならボロ負けだぞ?」
麗奈「なんでもいいわよ。勝ちは勝ち! そしてもらえるものはもらっておく!」
麗奈「それが悪の流儀!」ドヤッ
つかさ(どっちかっつーと小悪党のテンプレだな)
18: 以下、
つかさ「やっぱカレーうどんはうまいわ」ズルズル
真奈美「つかさは相変わらずカレーが好きだな」
麗奈「カレーばっかりで飽きないの?」
つかさ「別に一日三食全部カレーってわけじゃねえんだから。普通に食べない日もあるし」
つかさ「それに、こうやってカレーうどんやカレーそばも食うから。ひとくちにカレー使ったメニューって言っても、レパートリーは多い」
麗奈「カレーがかかるのがご飯かうどんかの違いしかないじゃない」
つかさ「そんなわけないだろ。カレーうどんはカレーとだし汁のコンビネーションが肝だから、カレーライスとは別物なんで」
真奈美「ただうどんにカレーをかけるだけではないからな。私も何度か作ったことがあるが、なかなか奥が深い料理だ」
つかさ「ウチの高校の食堂のは、まさにその、うどんにルーをかけただけのヤツだからな。その点、ここのはちゃんと作ってるから食べがいがある」
麗奈「ふーん。カレーにうるさいのね」
つかさ「通なんで」
19: 以下、
麗奈「アタシはおいしければなんでもいいわ」モグモグ
麗奈「真奈美、そっちのからあげとこっちの卵焼き、ひとつずつトレードしない?」
真奈美「ああ、いいだろう」
つかさ「からあげと卵焼きでトレード成立か。真奈美さん優しいな」
真奈美「子どもには優しくしてやるものさ。それに、卵焼きだってうまいだろう」
つかさ「ふーん……」
つかさ「やっぱ欲しいなあ。真奈美さん、アタシの会社に来ない?」
真奈美「アイドルを引退した後なら考えておこう」
つかさ「ま、そういう答えになるか」
麗奈「そんなに真奈美を部下にしたいの?」
つかさ「したい。有能だから」
つかさ「お前だって、自分が悪の王様になるとしたら、真奈美さんを四天王くらいに置きたいと思うだろ」
麗奈「確かに。四天王最後にして最強の砦にしたくなる」
真奈美「王様がだらしないと下剋上をしてしまうかもしれないぞ?」
麗奈「怖っ」
麗奈「あ、そうだ。つかさ、ちなみにアタシは?」
つかさ「もーすこし賢くなったら部下にほしーかもなー」
麗奈「あー、なによそのやる気のない返事はーっ!」ムキーッ
真奈美「ふふっ」
20: 以下、
同時刻
ゆかり「あら? 凛さん、今日はお弁当ですか?」
凛「うん。ゆかりも?」
ゆかり「はい。一緒に食べましょうか」
凛「そうだね」
凛(あっちの弁当、箱からして高級感漂ってるな……)
ゆかり「では」
ぱかっ
凛「………」
ゆかり「いただきます……凛さん? どうかしました?」キョトン
凛「ゆかりの弁当がキラキラ輝いて見えるのは、私の劣等感から生まれた幻覚なのかな」
凛「しょせんこっちは昨日の残り物の煮物中心だけどさ」
ゆかり「輝いて、だなんて。私のお弁当も、昨日の残り物ですよ?」
凛「イタリア料理かフランス料理のフルコースで出そうなものがちらほら見えるんだけど……」
ゆかり「昨晩は少しだけ夕食が豪勢でしたから」
凛「少し、なんだ……これがお金持ちパワー」
21: 以下、
晶葉「どちらも弁当なことに変わりないんだから、そう落ち込まなくてもいいだろう」
凛「晶葉」
ゆかり「晶葉さん、お昼ご飯は」
晶葉「あー、この発明品の調整が一段落ついたら食べる」カチャカチャ
凛「そんなこと言ってると、食べる時間なくなっちゃうよ?」
晶葉「あー」
凛「聞いてる?」
晶葉「んー」
凛「ダメだ。生返事し始めた」
ゆかり「食べないと午後のレッスンでお腹が減ってしまうでしょうし……」
ゆかり「あ、そうです。私達が食べさせてあげましょう」
凛「え?」
ゆかり「はい、晶葉さん。お肉ですよー」スッ
ゆかり「あーん」
晶葉「ぱくっ」
凛「わっ、食いついた」
晶葉「もぐもぐ」
ゆかり「ふふ、なんだかかわいらしいですね」
凛「発明に夢中でも、実際はお腹が減ってるんだろうね。だから身体は正直に食べ物を求めるんだよ」
22: 以下、
凛「はい、晶葉。こっちもお肉だよ」
晶葉「ぱくっ」
晶葉「もぐもぐ」
凛「ちなみに……ゆかりのお弁当と私のお弁当、どっちがおいしい?」
晶葉「………」
晶葉「どちらもおいしい。それ以上の区別は今の私に必要ないのだ」
凛「本音は?」
晶葉「私は空気の読める女だから深くは言わない………はっ!?」
凛「素直な感想、ありがとう」
ゆかり「凛さん。私にも一口もらえませんか?」
凛「え? いいけど」ホイ
ゆかり「いただきます」ハムッ
ゆかり「……おいしいです。私のお弁当とは、また違った味わいがあります」
凛「でも」
ゆかり「お互いに、あるものとないものがあると思うんです。だから、お互い自分のお弁当に胸を張ればいいのではないでしょうか」
凛「……まあ、そうだね。おかずの値段なんて気にしたってしょうがないか」
凛「ゆかり。そっちのおかず、一口くれる?」
ゆかり「もちろんです。先ほどいただいたお返しに――」ニコニコ
23: 以下、
午後
凛(今日は真奈美さんとボイストレーニングだけど……)
真奈美「あーあーあー♪」
凛(相変わらず、すごく声に張りがある感じ……肺活量が違うのかな」
凛「なんだっけ……確か、海外でなんとかボーカリストをやってたって聞いたような……」
真奈美「スタジオボーカリスト、だな」
凛「あ、真奈美さん」
真奈美「少し休憩だそうだ。トレーナーが言っていた」
凛「そっか」
凛「そのスタジオボーカリストって、えっと……CMとかで歌ったりする仕事なんだっけ」
真奈美「そうだな。他にもコーラスの声を当てたりもしたが、基本的に表には出ない。いわゆる裏方さ」
凛「ということは、歌に関してはずっと前からプロだったってことか」
凛「だからあんなにきれいな声してるんだ」
真奈美「きれいか?」
凛「うん。ボイストレーニング、必要ないんじゃないのって思うくらい」
真奈美「ははは、それは光栄だな。だが定期的に訓練をしなければ、努力の成果も錆びてしまう」
24: 以下、
凛「真奈美さん、いつごろから海外で暮らしてたの?」
真奈美「学生時代からだよ。長く滞在していたぶん、いろんな経験をしたし、学んだことも多い」
真奈美「たくさんの個性豊かな人達がいて、その数だけ様々な生き方を見てきた。それを見て、私も私らしい生き方を見つけたいと思ったものだ」
凛「私らしい生き方、か……」
真奈美「一時期、自分探しと称して各国を放浪していたこともある」
凛「放浪って、ひとりで? 危ないこととかなかったの?」
真奈美「たまにあったが、それもまた旅のスパイスさ」ハハッ
凛(男らしすぎる……)
真奈美「しかし、アフリカのサバンナで遭難した時はさすがに危機を感じたな」
凛「遭難!? 大丈夫だったの!?」
真奈美「そこで暮らしていた男に助けられたことで事なきを得た。確かジャングルの王者を名乗っていたな」
凛「なんでサバンナで暮らしてるのにジャングルの王者なの?」
真奈美「さあ。それは私も聞かなかった」
25: 以下、
真奈美「まあそんな感じで旅を終えて、大学を卒業後にボーカリストの仕事を始めた」
真奈美「そして久しぶりに日本に戻ってきた時、Pのスカウトを受けたというわけだ」
真奈美「はじめはただの助っ人のつもりだったんだが、私自身アイドルの仕事を楽しく思うようになってね。気づけばすっかりここのプロダクションの一員さ」
凛「プロデューサーの担当の中だと、3番目にここに来たんだよね」
真奈美「ああ。ゆかりと晶葉の後輩で、君と麗奈とつかさの先輩だ」
凛「プロデューサー、前に言ってたよ。真奈美さんやつかさが仕事手伝ってくれるから、だいぶ楽だって」
真奈美「彼は仕事が丁寧すぎるきらいがあるからな。アイドルひとりひとりにかける時間が多めだから、誰かがサポートしてやる必要がある」
真奈美「まあ、それだけ私達を大事にしてくれているということになるが」
凛「そうなんだ」
26: 以下、
凛「……そういえば、結局『自分らしい生き方』って見つかったの?」
真奈美「ああ。一応は、だが」
凛「聞いていい?」
真奈美「そうだな……私は、真っ直ぐ、美しくありたい。シンプルな答えだが、そう思う」
凛「真っ直ぐ、美しく……」
夕方
つかさ「へえ、真奈美さんの生き方ねえ」
つかさ「てっきり『俺より強いヤツに会いに行く』かと思ってたわ」
凛「バトル漫画のキャラじゃないんだから」
つかさ「今日カルタでバトル漫画みたいな展開経験したトコなんで」
凛「ああ、なるほど……納得しちゃった」
30: 以下、
つかさ「しかし、真っ直ぐ美しく、ね。やべぇな、ますます欲しくなってきた」
凛「前も言ってたよね。真奈美さんを会社に欲しいって」
つかさ「凛がここに来る前からアプローチはかけ続けてる。今は無理でも、あの人がアイドル辞めた後はアタシの下で働いてほしいからな」
凛「熱心だね」
つかさ「ああいう強い人間は貴重だからな……そういう人とこうして縁ができたんだ。そりゃ欲も出る」
つかさ「あ、強いってのは戦闘力的な意味じゃないから」
凛「さすがにそれはわかってるよ。心の強さ、みたいなもののことでしょ」
つかさ「そ。ああいう、自分を曲げず、動じず、強くあれる人材」
凛「………」
凛(もしかして……つかさ、自分が怖がりだから、部下にそういう人を欲しがってるのかな)
凛(いざって時に、自分の背中を押してくれるような人を)
つかさ「……なにその顔。やたら優しい目つきなのがムカつく」
凛「え……そんな顔してた?」ビックリ
つかさ「はあ……ま、お前が今考えてること、多分正解」
つかさ「自分に足りない部分は部下に補ってもらう。これ常道だから」
31: 以下、
凛「でも、真奈美さんってすごいよね。歌はもちろんうまいし、ダンスだって運動神経いいからキレキレだし」
凛「あれなら、近いうちにもっと人気が出て、一流アイドルの仲間入り、なんてことになるかも」
つかさ「………」
つかさ「そんな簡単にいくとも思えないけどな」
凛「え? どうして」
つかさ「あの人は確かに完璧超人だけど、それがアイドルとして必ずしもプラスに働くとは限らないってこと」
凛「……ごめん。よくわかんない」
つかさ「そうだな……凛は、アイドルって言ったらどんなイメージを最初に抱く?」
つかさ「この事務所に来る前に、自分がどう考えていたか、覚えてるか」
凛「ここに来る前……それなら、やっぱり『かわいい子がステージで歌って踊る』みたいな」
つかさ「だろ? かわいい子であって、決してかっこいい人じゃない」
つかさ「真奈美さんは後者だ。だからお前が抱いていたイメージとはズレてることになる」
凛「でも、それは私がアイドルのことをよく知らなかったからで」
つかさ「よく知らない人間が、世の中大半なんだよ。だから、大衆の考えるアイドル像は『かわいい女の子』だ」
32: 以下、
つかさ「確かに、クールやカリスマっぷりを売りにして稼いでるアイドルもいる。城ヶ崎美嘉なんかはかっこよさが人気の要因にあるしな」
つかさ「けどそれも、根底に『かわいらしさ』『女らしさ』が存在するのが大きなポイント」
つかさ「これは、真奈美さんと同い年の高垣楓にも言えるな」
つかさ「別に意識してるわけじゃないのかもしれねえけど、あの人の人懐っこさはファンにも伝わってるし」
凛「……確かに。なんだかわかる気がする」
つかさ「対して真奈美さんは、というと」
凛「……女らしいというより、男らしい」
つかさ「かっこよすぎるんだわ、あの人」
つかさ「もちろん、それはそれで熱心なファンも多くつくと思う、が……かわいい系に比べると、バズるのはイージーじゃない」
つかさ「非の打ちどころがないって点も、普通に生きる分にはプラスなんだが。ちょっとばかり弱みを見せたほうが、くらっと傾く人間が多いっつー傾向もあるワケ」
33: 以下、
凛「でも、真奈美さんは女らしいところもちゃんとあるよ。体つきとかすごいし、料理も上手だし」
つかさ「確かにな。けど、本人がそういう部分を表になかなか出さねえから」
つかさ「ナイスバディなのも料理上手なのも隠してるわけじゃない。普通に露出高めの衣装も着るし……ただ、それを女らしさと結びつけてPRしようとしてない。そう感じる」
凛「どうして」
つかさ「それは知らねえけど……さっきの『自分らしい生き方』に関わってくるんじゃねーの?」
凛「真っ直ぐ、美しくってやつ?」
つかさ「アタシは別に、男に媚びようとするのが真っ直ぐじゃないなんて思わねえけど。ま、今のやり方があの人にとっちゃ一番自分らしいと思うものなんだろうな」
つかさ「多分、Pとも話はしてるだろうし」
凛「………」
つかさ「それで人気が出なきゃ問題だが、真奈美さんは現状着々とファンを増やしてる。ステージに立つたびに、あの人に向けられる歓声は大きくなっている」
つかさ「だからPも、自信を持ってあの人を送り出せるんだろうな」
34: 以下、
凛「……なんていうか、すごいね。そうやって、自分らしさを貫き通すのって……真奈美さん、かっこいい」
凛「うん。かっこいい」
つかさ「……感心するのはいいけど、それだけじゃダメなんだわ」
凛「えっ」
つかさ「アタシも凛も、その真奈美さんよりファン少ないのが現実だから。ちょっとは悔しがれ」
凛「それは……だって、まだデビューしてからの時間も短いし」
凛「だいたい、別に対抗心持たなくたっていいじゃん」
つかさ「本当の敵は自分自身ですーってか。それも結構だけど、反骨心がなきゃたいてい前に進めないのも人間だぞ」
凛「別にそこまでは言ってないけど……」
つかさ「Pから聞いただろ。アタシとお前でユニット組ませることにしたって」
つかさ「アタシのパートナーを務める以上、半端なところじゃ妥協する気ないんで」
凛「うっ……なんか怖い」
つかさ「とりあえずの目標は、ここのプロダクションの全アイドルよりも人気を上にすることだな」
凛「それ、とりあえずのレベル越えてるよ」
つかさ「そんくらいの心意気でいろってことだ」
35: 以下、
凛「はあ……わかった」
凛「ビッグマウスなのは、不安を隠すためだもんね」
つかさ「んなっ……お、お前なあ!」
凛「冗談だよ、冗談」
つかさ「ったく。日に日に可愛げがなくなっていくな、この後輩は」
凛「先輩に似てきたんじゃないの?」
つかさ「ほーう?」
つかさ「……ま、いいけど。ちゃんとついて来いよ?」
凛「うん」フフッ
36: 以下、
後日 凛とつかさのユニット初ライブ
P「今、真奈美さんがステージに向かった。次が君達の出番だからな」
凛「うん……」
つかさ「………」フー
つかさ「凛、緊張してないか?」
凛「してないわけないでしょ。つかさこそどうなの」
つかさ「しないわけないだろ」
凛「……ぷっ。自信満々に言うことじゃなくない?」
つかさ「そっちもな」フフ
P「……大丈夫そうだな。よし、そろそろ移動しよう」
37: 以下、
真奈美「声援、ありがとう!」
ワーワー!
クールだぜー!
つかさ「さすがの歌唱力だな。ありゃ観客も虜になるわ」
凛「私達のハードルも上がる?」
つかさ「そういうこと」
凛「だよね……」
凛「でも。負けてらんない、かな」
凛「あ……もしかして、これが反骨心ってやつ?」
つかさ「……かもな」フフッ
真奈美「ただいま。あとは頼んだぞ、若人たち!」
凛・つかさ「………」
真奈美「今、年寄り臭いと思わなかったか?」
凛・つかさ「思ってないです」
真奈美「ならいい。じゃあ、しっかりやってこい」
凛「はいっ」
つかさ「いくか!」
P「……あれ? 俺のセリフが盗られたような」
凛「プロデューサーも、言いたいことあるなら早くっ」
P「あ、ああ……えっと、思いっきり暴れてこい!」
つかさ「アイドルに言うセリフか、それ?」
凛「でも、わかった!」
38: 以下、

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