八幡「誕生日プレゼント?」小町「これが小町からの誕生日プレゼントだよ」back

八幡「誕生日プレゼント?」小町「これが小町からの誕生日プレゼントだよ」


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1:
比企谷八幡誕生日記念
『比企谷小町からの贈り物』
誕生日。
いつ頃から誕生日が特別な日ではなくなったのだろうか。
今年の誕生日は、
親からは出勤直前にこれでなにか好きな物を買えと財布から出した一万円札を
渡されてはいる。
小町からは今年も申し訳程度に祝いの言葉がいただけるだろう。
史上最強の妹たる小町からのお言葉が毎年貰えるのならば、
それだけで来年まで頑張れると思ってしまう。
……まあ、一時間も経たないうちに効果が消えてしまうのが難点ではあるが。
それよか両親よ。
万札を頂けるのは嬉しいのですが、剥き出し万札で、
しかも財布から直に手渡しではなくて、
せめて祝儀袋に入れて渡していただけないでしょうか?
いや、俺の両親様はエコに目覚めでもしたか?
どうせ祝儀袋に入れて渡されても、中身の万札を財布に移動させたのちに、
祝儀袋はゴミ箱にダイブだもんな。
というわけで、
両親からの愛とエコ精神を確認できた今年の誕生日は朝食後の眠気と共に
忘れ去られようとしていた。
小町「おに?ちゃんっ。起きてよっ。っていうか、いつまで寝てるつもり?」
よくあるラノベテンプレイベントのごとく、
朝目覚めると目の前には最愛なる妹小町が俺を睨みつけていた。
といっても、
朝食を早く食べろと一度たたき起こされ、
食後に二度寝?をしているので、
本日二度目のイベントではあったが。
八幡「俺は疲れてるんだ。今日は予備校休みだから寝かせてくれ」
小町「受験生に休日なんてないよ。
 しかも夏休みで24時間勉強できる時間があるんだから、
 きっちりと24時間勉強してよ」
八幡「おい、小町。
 その計画でいくと食事や睡眠の時間がないんだが。
 いくらストイックに勉強を続けている俺であっても不可能だ」
小町「あぁ?、
 なんだかお兄ちゃんを見ていると、
 ストイックのイメージが壊れちゃうんだよなぁ。
 ストイックっていうと、もっとクールなイメージを持ってたけど、
 実際実物を見たら幻滅しちゃったみたいな?」
それってよくあるよな。
後姿は美人だけど、
実際追い越し際にちらりと横から顔を見たらがっかりするみたいなやつ。
こっちが勝手に期待してがっかりしているだけであって、
向こうはまったく悪くないのにさ。
だから俺は後姿美人には期待しない。
相手に悪いからな。
でも俺は鍛えられた精鋭。
むしろ真正面から見て美人であっても期待しないまでである。
やっぱ美人っていと、ちやほやされていて性格が悪いしな。
って、これこそ身勝手なイメージか……。
八幡「それって間違いなく誉めてないよな?」
小町「うんっ、誉めてないよ」
無駄に朝っぱら元気な奴め。
自分こそ高校受験のときは今の俺のような状態だったくせに。
他人には厳しく。
自分には……、そこそこに厳しくってところか。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438849053
2:
これでも小町は志望高校に合格したんだ。
今度は俺も志望大学に合格して見せないと、
将来小町が大学受験に励む時のモチベーションにもかかわるから頑張ってやる……。
 だがしかし、今日だけは休ませてくれ。
八幡「でもな小町」
小町「なんでしょうお兄ちゃん?」
八幡「申し訳ないが今日だけは数学の事を考えさせないでくれ。
 これ以上数学の事を考え続けたら発狂しちまう。
 だから今日だけは見逃してほしい」
小町「はぁ……、
 今日くらいはお兄ちゃんの好きにすればいいとは思うよ。
 だってお兄ちゃんが国立大学に行かなくちゃならなくなって、
 数学も勉強しなくちゃいけなくなったのは小町のせいだし」
八幡「小町はあんま気にするな。
 いきなり母ちゃんに死刑宣告された時はマジで死を覚悟したが、
 覚悟さえできてしまえば数学くらいどうにかなる」
小町「でもさ、お母さんもいきなりだったよね。
 お母さんも小町のふがいなさって言うのかな。
 高校受験で大学は国立は無理だって判断下しちゃったからね。
 その点お兄ちゃんは数学が壊滅的だとはいっても文系科目は問題ないし、
 どうにかなるんじゃないの?」
八幡「あまいな小町」
小町「どうしてよ?」
八幡「数学だけじゃない。理科もあるんだな、これが」
小町「たしかに……」
八幡「でも、それも含めてどうにかするさ。
 親父は何も言ってはこないが、母ちゃんと同じ意見みたいだしな」
小町「そだね。
 でも、お父さんが何も言わないのは、
 お母さんに決定権があるだけだと思うけどなぁ……」
八幡「……たしかに」
 親父には意見を言う権限も、決定を下す権限もないからな。
あくまで母ちゃんの決定に従って親父は動いているだけだし。
 そう考えてみると、親父と母ちゃんの関係は、俺と小町の関係に似ているよな。
俺も小町には逆らえないし。
 となると、俺は小町と結婚すべきなのか? 
親の後ろ姿を見て育つと言ったものだが、やっぱ親父の背中を見習うんなら…………、
いや、よしとこう。
小町「それに、さすがに子供二人を私立大学に入れるわけにはいかないみたいだし、
 二人ともずっと帰ってくるの遅いしさ。
 親が仕事を頑張ってるのを見ちゃうと、子供としても何かできないかなって、ね」
八幡「ま、小町は気にするな。お兄ちゃんに任せておけ」
小町「うんっ」
八幡「それで小町。なんか用か?」
小町「いつまで寝ているのかなって。
 せっかく起きて朝食食べたばかりなのに、食べてすぐ寝ると太っちゃうよ。
 しかも受験勉強で運動なんてしてないし、ますます……。
 あっ、でも、お兄ちゃんが太ってもお兄ちゃんはお兄ちゃんだからね。
 外に一緒に出かける時も、
 今まで通り一緒に出かけてあげるから安心してね」
八幡「受験がなくても今までそんなに運動してはいないが、
 ……太っても一緒に行ってくれるのか」
小町「今の……」
八幡「小町的にポイント高いな。はいはい、高い高い」
3:
小町「なんか今のは小町気にポイント低いんだけど……」
八幡「そうか?」
小町「そうだよぉ。
 でも、まあいっか。
 それに一緒に出かけるといっても、ちょっと離れてくれる助かるっていうか」
八幡「それって一緒に出かける意味あるのか?」
小町「ほら、今外暑いし、側にいられると暑いでしょ?」
八幡「まあそうだな。だったら冬ならいいのか? 
 むしろ風よけになったり、プチ暖房にもなるぞ」
小町「そ、それはぁ……」
 だから目をそらすなって。
八幡「心配するな。
 俺は太るつもりもないし、今も体重は増えてもいない。
 だから今まで通り俺の隣を歩けるぞ」
小町「お兄ちゃん。いつ運動してるの?
 なんか勉強はしているようだけど、
 勉強以外だといつもソファーで寝てるっていうイメージしかないんだけど」
八幡「お前も大概だな。
 あと、小町だって自転車通学してるだろ?
 これだって立派な運動には違いない」
小町「なるほど」
八幡「というわけで、俺はもう一度寝る。昼飯できたら起こしてくれ」
小町「だぁかぁらぁ……寝ないでって言ってるじゃん」
もう一度惰眠を貪りつくそうと寝に入った俺に、
ついにというかとうとう小町による実力介入が行われてしまう。
つまり、ソファーから転がし落とされた。
八幡「って?な……。いくらなんでもやりすぎだろ」
小町「そんな事はないから。
 これでも受験勉強に精を出すお兄ちゃんを見て、
 ちょっとはかっこいいなって思って尊敬しているし、
 だからこそ敬意を払っての実力行使をしてあげたって」
八幡「そう思ってるんならもう少し寝かせてくれ。
 それに、いちいち自分から言う事でもないが、
 今日は俺の誕生日だ」
小町「うん、知ってる」
八幡「その割にはなにもないよな?」
小町「ん、と。だってお兄ちゃん。朝お母さんからお金貰ったでしょ?」
八幡「そうだけどよ。愛しの妹君からのお祝いのお言葉とか」
小町「そう? しょうがないなぁ……。うん、おめでと」
八幡「そっけないな」
小町「これでも小町が物心がついてからは毎年祝ってあげているんだから、
 それだけでもすごいことだと思うんだけど」
八幡「わぁたよ。
 もういい。
 というわけで、俺は自分で自分の誕生日は祝う事にしたんだ」
小町「へぇ……」
馬鹿にしてるだろ?
良く言えば好奇心が宿った目が、
悪く言えば馬鹿な事をまた言ってるよっていう目が俺に向けられていた。
4:
八幡「俺も将来は寿退社して主夫を目指す者として、
 OLがよくやる自分へのご褒美、
 自分への誕生日プレゼントってやつをする事にしたんだ」
小町「へぇ、すごいすごい」
やはり感情が込められてい歓声は聞かなかった事にして、
俺は話を続ける。
八幡「でも俺はそこいらの丸の内OLとは違う。
 自分へのプレゼントという名の、
 ただ自分が欲しいものを買うだけの甘ちゃんではないのだよ」
小町「ふぅ?ん」
八幡「俺は自分への誕生プレゼントとして惰眠をプレゼントすることにした。
 ふつうだったらただ眠たいだけの自己満足
 …………ごほん、ごほん。
 いやまて。
 俺の場合は欲しいものを買う為の言い訳ではなく自分への投資だ。
 日頃の勉強疲れを癒す為の一日だけの休暇。
 つまりは英気を養う為の必要な投資だといえる」
小町「言っていることは間違ってはないと思うよ」
八幡「だろ?」
小町「でも、自分で惰眠って言っているあたりですでに言いわけじゃないかなぁ」
八幡「あっ…………」
小町「といわけで、せっかくの誕生日だし。
 高校最後の夏休みでもあるわけだから、小町がデートしてあげるね」
八幡「えっ、まじ?」
小町「うん、まじまじ」
妹とのデートイベント。
ラノベやギャルゲーではありかもしれないイベントだが、
これが現実になってしまうと倫理的に問題が……、
いやないか。
どうせ将来小町に面倒見てもらう可能性が高いのならば、
いまさら倫理観なんて考える必要さえない。人としてどうかは別だが。
八幡「ちょっと待て。何か企んでるんだろ?」
小町「ひっどい言い分だと思うよ。
 そう考えてしまうのはお兄ちゃんらしいから小町は気にしないけど」
八幡「本当に何もないのか?」
小町「何もないって。
 まあ、さっきの話の続きではないけど、
 家にこもっているお兄ちゃんを外に連れ出そうかなっていう思いはあるけど」
八幡「別に家にいるだけじゃないぞ。予備校にだって出かけている」
小町「それは外出には含まれないから。
 それに、勉強ばっかりで夏らしい事を一つもしないのも寂しいでしょ?」
八幡「寂しくはないが。
 そもそも受験勉強の夏も夏らしいイベントには違いはないと思うぞ」
小町「そうだけど、
 今日はお兄ちゃんに体を動かしてもらってリフレッシュしてもらおうという
 小町なりの気遣いなんだから、
 素直に受け取ってほしいなぁ」
八幡「そういうんなら貰ってはおくが、
 去年の夏休みも家でごろごろしていて体なんてろくに動かしてはない……」
小町「シャラップ。もう文句は言わないの」
八幡「じゃあ、どこかに出かけるよりも、
 なにかうまいもの作ってくれるほうがお兄ちゃんとしては嬉しいぞ。
 小町の手料理は最高だしな」
6:
小町「嬉しい評価をくれるのはいいんだけど、
 今日は無駄だから。
 これから一緒にプールに行くの事が確定しているのです。
 夏といえばプール。
 夏といえば海。
 高校最後の夏休みなんだし、一度くらいは行ってもいいと思うよ」
八幡「プールと海の両方いくのか?」
小町「うん。そこのプールだと、そのまま海にも行けるでしょ?」
海岸沿いにある巨大プール施設。
この辺の子供だったら一度は行った事がある施設の一つに数えられる。
流れるプール、波のプール、ウォータースライダーに普通のプール。
一通り有名どころのプール施設を網羅したこの施設には、
他には珍しい施設がある。
それは海に繋がっていること。
夏の有名イベントたるプールと海をいっぺんに楽しめるこの施設は、
子供たちにとってはパラダイスに違いない。
一方大人といえば、
馬鹿広い施設で迷子になる子供を探したり、
駐車場が満車になって子供たちだけを先にプールに行かせ車で待機など、
大人にとっては疲れる施設かもしれない。
まあそんな施設が近所にあるわけで、
そこに行こうと誘う小町のチョイスは悪くはなかった。
八幡「海つっても、あんま泳ぎたいとは思わんけど、
 小町が行きたいんなら別にいいぞ。
 これが小町からの誕生日プレゼントというなら、目いっぱい楽しんでやるよ」
小町「楽しいんで貰うのはいいけど、
 これが小町からの誕生日プレゼントってわけじゃないよ」
八幡「はっ?
 だってデートしてくれるって言ってただろ?」
小町「そうだけど、でもこれはプレゼントではありません。
 それに、小町からのプレゼントはもう渡してるから」
八幡「いや、俺はなにも受け取ってないから」
小町「小町自身がプレゼントっていうか……、
 まあそのうちわかるかな。
 さてお兄ちゃん、早く準備してね」
小町自身がプレゼント?
あれか?
自分にリボンを巻いてプレゼントするっていう禁断の……。
いやまて妹だぞ。でも実の妹であっても小町ならありか?
小町「はいそこまで。
 いやらしい目で小町を見るのは厳禁です」
俺は蔑む視線から逃れるようにリビングから撤退した。
俺は悪くないぞ? 小町の魅力が悪いんだ。
予想はしていたが、人が溢れるプール入口に、
俺は既に体力をごっそり持っていかれていた。
そもそも家の玄関を出た瞬間に灼熱の太陽に体力を6割ほど奪われているから、
今や瀕死状態とも言える。
だったら戦略的撤退の決断を下すべきだな。
苦渋の選択ではあるが、被害は少ないうちに決断すべきだ。
と、俺の決断はいっこうに採用されないもようで、
ぐったりとしている俺の腕を引っ張る小町に連行され、
俺は入り口に向かっていった。
7:
小町「お待たせしました陽乃さん」
陽乃「おっ、ようやく来たな」
小町「すみません?。兄がグダグダ言ってなかなか動こうとしなかったもので」
陽乃「大丈夫よ。さて行きましょうか」
俺は聞きたくもない名前を耳にして、ゆっくりと顎をあげる。
予想通りそこには元気一杯の陽乃さんと、俺と同じようにグロッキー状態の雪ノ下がいた。
元々華がある陽乃さんは夏の日差しを受け、なおも輝きを増している。
当然のごとく周りからの視線も集まって来ていた。
一方雪ノ下も疲れ切った表情はしてはいるが、
そこはか弱い美少女というか、
儚げな美女として雪ノ下を知らない連中の目には映るのだろう。
本当は疲れ果てており、心の中で陽乃さんに文句を言っているだけなのだろうが、
黙っている分には人目を簡単に集められほどの美貌を今日も惜しみなく発揮していた。
そんな美人姉妹と親しげに会話する俺達には、
特に俺にだが、
嫉妬の視線があつまってくるわけで、このまま晒しものになるのもいい気はしない。
俺はとりあえず現状確認だけはしてとっとと中に入ろうとしたが、
小町と陽乃さんはすでに俺達を置いて中に入っていこうとしていた。
なもんだから、
もう一人残っている雪乃下に現状を聞く事にした。
八幡「なんでお前がここにいるんだ?」
雪乃「それは私が聞きたい事よ」
八幡「俺は小町に連れられてきただけだ。
 ちょうど予備校も休み出し、リフレッシュするためにも体を動かせってさ」
雪乃「私も同じようなものよ。
 昨晩いきなり姉さんが来たかと思えば、
 どういうわけか水泳の勝負をすることになってしまったのよ」
八幡「なるほどな」
その簡潔な説明だけでも鮮明にその光景が浮かぶぞ。
きっと陽乃さんに挑発でもされて連れ出されたのだろうな。
雪乃「だけど、あなたが来るなんて思いもしなかったわ」
八幡「それは俺も同じだ。
 小町と雪ノ下さんが共謀したみたいだが、この後もなにかあるのかもしれないな」
雪乃「…………そうね。かもしれないわ」
八幡「お互い何かわかったら情報交換な。情報は共有しておいたほうがいいからな」
雪乃「わかったわ」
そうちいさく呟くと、陽乃さん達を追って雪ノ下も施設の中へと進んでいった。
人。人、人、人、人、人人人…………。
プールに人が埋まってる。
と表現しても間違いではない。
流れるプールなんてどこが流れているのかわかったものではない。
更衣室から出て待ち合わせの場所から眺める景色は、
これもまた水の中に入る前から俺から容赦なく体力を奪っていく。
ここまで人が多いと何が楽しいかわからない。
それでも楽しそうにプールに入っている連中がそこかしこにいるわけで、
楽しもうと思えれば楽しいのだろう。
8:
小町「お待たせぇ、お兄ちゃんっ」
八幡「おつ、きたか。別に待ってないから大丈夫だぞ」
小町「どうどう、小町の水着姿?」
八幡「ん? いいと思うぞ」
小町「それだけぇ?」
八幡「妹の水着姿に見惚れたとか感想しだしたら危ない奴だろうに」
シスコン補正が入っていなくても、元気一杯で躍動的な小町の水着姿は人目を引く。
まだ高校一年ともあって控えめな胸も、
そこは小町のはつらつとした表情が補ってしまう。
胸元にたくさん付いているフリルは、
胸の大きさをカバーする効果があるとかないとか、
いつだったか忘れた朝のテレビで言ってた気がする。
小町がそれを知っていて水着を選んだかはわからないが。
…………いや、
小町が見ていたのを俺が朝食を取りながら耳に流していた気もするから、
やっぱ知ってて選んだのか、もしれない。
小町「じゃあいいよ。だったら雪乃さんは?」
小町が一歩横にずれると、タオルによる完全防備が施されている雪ノ下がいた。
八幡「えっと、そのまま入るわけじゃないよな?」
雪乃「何を言っているのかしら? 水着を着てプールに入るに決まっているじゃない」
八幡「ならいい。でもその姿って悪い意味で人目を引くぞ」
雪乃「だって姉さんが……」
まあ、そんなところだと思ったよ。
でもな、お前のその姿は、はっきり言って悪い意味で目立ちまくるぞ。
腰に巻かれたバスタオルはパレオの役割を担っているのかもしれない。
そして、肩から胸元に羽織ったバスタオルも似たような効果を狙ったものだろう。
これが風呂上がりみたいに胸元でタオルを巻いている状態だったら、
さすがの俺も今すぐタオルを取れといったほどだ。
でも、今の姿も十分すぎるほど人目を引いてしまうのは確かだった。
八幡「雪ノ下さんか。でも、下に着ているのも水着は水着なんだろ?」
雪乃「そうだけれど」
陽乃「ゆっきのちゃ?ん。
 いつまでもタオルで隠している方がよっぽど恥ずかしいと思うわよ。
 だってここには水着の人ばっかなんだし、
 そこに異物がいると目立ってしまうわ」
雪ノ下から強引にタオルをはぎ取ってしまいそうな勢いで乱入してきたのは、
雪ノ下になんらかの策略を働いた陽乃さんであった。
これもまた雪ノ下に勝るとも劣らない魅力を振りまき、
周囲からの視線を集めまくっていた。
周りの連中の気持ちもわからなくもない。
元々の美貌に、身にまとったデニムショートパンツの水着は、
はちきれんばかりの肉体が収まっていて刺激が強すぎる。
小町や雪ノ下にはない主張をはっきりとしている胸も
男どもの視線を集めるには効果的すぎた。
雪乃「姉さんが私の水着をすり替えたからじゃない」
陽乃「あんな地味な水着で来るつもりだったの?」
雪乃「だって姉さん。水泳の勝負をしにきたのよ」
陽乃「だからか。なんで競泳用の水着なのかなって疑問に思っていたわ」
雪乃「そもそも姉さんと勝負をするためにここに来たのよ。忘れてしまったのかしら?」
陽乃「本気でそう思っていたの?」
雪乃「えぇそうよ」
9:
これは雪ノ下を同情できない。
このプール施設に泳ぎの勝負の為に来たって意味はないからだ。
そもそも人が溢れているプールでどうやって水泳の勝負をするって言うんだ。
もし水泳の勝負をするというのならば、ほかのプールに行くべきだ。
俺は行った事はないが、新習志野にある水泳をする為のプールとかを選択しないと、
今の時期普通のプールでは人が溢れていて泳ぐことなんてできやしないだろう。
ましてや勝負だなんて、周りに迷惑すぎる。
八幡「なあ雪ノ下」
雪乃「なにかしら?」
八幡「お前ってここに来るの初めてか?」
雪乃「そうよ」
八幡「そっか……、なら仕方ないな」
雪乃「どういう意味かしら」
小町「あのですね雪乃さん。
 今の時期ここのプールは人が多くて泳ぐ事は出来ないんですよ。
 遊びでくるのならわかりますが、泳いで勝負だなんて不可能なんです」
雪乃「えっ…………。姉さんっ」
あっ、やっぱり。
いくら雪ノ下が鋭い視線で陽乃さんを拘束しようとも、
陽乃さんは素知らぬ顔で雪ノ下のタオルを剥ごうとさえしてしまう。
雪乃「ちょっと、姉さん。……待って、お願い」
陽乃「もうっ、雪乃ちゃん。プールに来たのよ。だったら水着にならなきゃ」
雪乃「わかっているわ。でも……」
雪ノ下の抵抗も虚しく、タオルをはぎ取られた下から見せた水着姿は、
周りの男連中のみならず女連中の視線さえも集めてしまう。
かくいう俺もその魅力にはあがらえず、
ぽけえっとただただ雪ノ下を見つめていた。
雪乃「ど、どうかしら? でも、そんなに見つめらてしまうと恥ずかしいわ」
八幡「すまんっ」
陽乃「どうかしら? 雪乃ちゃんの水着姿。わざわざ私が用意したのよ」
黒いシックなビキニ。
ところどころにつけれた銀の留め金もアクセントになっていて、
雪ノ下の魅力を数段階も跳ね上げさせている。
もともと大人っぽい容姿もあって、黒のビキニははまりすぎていた。
胸の大きさが足りないのさえも魅力と思えるほどスレンダーな体は完成されていた。
白い肌に、やや赤みを帯びた頬。
すれっと伸びた手脚は細く引き締まり、
くびれた腰は優雅さを示し、
直視してはしけないとわかっていても視線を引き剥がす事ができない。
つまり、俺はその姿に見惚れてしまったていた。
まあ、なんだ。
小町や陽乃さんが俺の事を冷やかさなかったのは、せめてもの救いだったのだろう。
俺は雪乃下に負けないほど顔を赤く染めていたはずだから。
雪乃「もう泳がないの?」
八幡「もう十分泳いだからな。
 つっても、泳ぐというよりは水につかるっていう方が正しい気もするが」
10:
俺達よりも早くばててしまった雪ノ下は、プールから上がり休んでいた。
今日も見事に気温が上がりまくっているせいもあって長い髪もすでに乾き始め、
肌もじりじりと焼き始めていた。
八幡「ほら、着ておけ。焼けるぞ」
雪乃「……ありがとう」
俺は薄手のパーカーを手渡す。
本当は小町の為に持ってきた日焼け防止用の長そでだが、
小町はまだ泳いでいるし、雪ノ下に貸しても問題はなかろう。
雪ノ下は最初こそ戸惑いながらパーカーを広げはしていたが、
なにも異常がないことを確認でもできたのだろうか、するすると袖を通す。
いや、そもそも小町に着させるために持ってきたのだから
きっちりと洗濯してあるんだがな。
まあいいか。
俺のパーカーだし、抵抗があっても仕方がない。
八幡「フードもかぶっとけ。
 あとタオルも脚にかけておけよ。
 脚だけ日にやけるのも変だしな」
雪乃「そうね」
いそいそをタオルの準備をする雪ノ下を横目に、
俺は今もなおプールで陽乃さんと遊んでいる小町に軽く手を振ってやる。
八幡「雪ノ下はもう泳がなくていいのか?」
雪乃「そもそも人が多すぎて泳げないじゃない」
八幡「それもそうだな」
雪乃「……こうして」
八幡「ん?」
雪乃「こうしてただのんびりするのも、たまには悪くはないわ」
八幡「そうだな」
雪乃「姉さんには騙されはしたけれど、こういうのだったら悪い気はしないわね。
 でも、いつも驚かされてしまう立場のことも考えて欲しいけれど」
八幡「あれだな。……雪ノ下さんだし、諦めるしかないっていうか」
雪乃「そうね。考えるだけ無駄だし、疲れるだけね」
八幡「だな。…………なあ、雪ノ下」
雪乃「なにかしら?」
八幡「海の方には行ったのか?」
雪乃「いいえ。海にも行けるのかしら?」
八幡「ああ、このまま行く事が出来る。………………行ってみるか?」
雪乃「そうね。……行ってみたいわ」
雪ノ下ではないが、
俺も小町に連れ出されてきて良かったと思ってしまう自分がいた。
ほんとげんきんなやつだって自分でも思う。
でも、いいじゃないか。
夏休みだし、高校最後の夏だし。
こんな日が一日くらいあっても勉強の神様も怒りはしないだろう。
俺は立ちあがると、柄にもなく雪乃下に手を差し出してしまった。
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