穂乃果「あなたは…誰なの?」ヴィオラ「……」【後半】back

穂乃果「あなたは…誰なの?」ヴィオラ「……」【後半】


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4:
ブツンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真姫「 嘘、 でしょ…?」
希「なんなん…あれ…っ…」
希「何が…起こって…何で…穂乃果ちゃん…」
ことり「ほ、穂乃果…ちゃんっ…」
ことり「なんで…なんでっ…ぇ…!」 
ことり「あっ…ああああああっ!!??!?」
真姫「ことり!」
ことり「やだっ、いやだいやだいやっいやぁっ!」
ことり「いやああああっ!!!穂乃果ちゃん!穂乃果ちゃんっ!!」
505:
ことり「なんでっ!?今のどういう事なのぉ!?」
ことり「穂乃果ちゃんは何もっ!何もしてないのにっ!」
ことり「どうして消えちゃったの!?ねぇどうして!?どうしてなのぉ!?」
真姫「そ、そんなの…分かんないわよっ…!」
真姫「私だって一瞬の事で何がなんだか!」
ことり「ひぐっ…あっ…えぐっ…!どうしてっ…どうしてなのっ…!」
ことり「誰か教えてよぉ…!何でっ…なんでぇ…!…っ」
希「ことり、ちゃん…」
ことり「うわあああああああああああああああっ!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
506:
-渡り廊下-
海未「……」
ヴィオラ「……」
海未「…何が、起こったのですか」
ヴィオラ「……」
海未「見ていたのでしょう、あなた」
海未「説明して下さい。…何ですか、今のは」
海未「…答ぇろと言ってるでしょ!!」 バキッ!
海未「いつまで沈黙決め込むつもりですかあなたはっ!!」
海未「少しは反応示したらどうなんですか!えぇ!?」
海未「答えなさいっ!穂乃果はっ!何故っ!消えたのですかっ!?」
507:
ヴィオラ「……」
海未「…っ!」 
海未「知りたくば…先に進めとでも言いたいのですか…」
海未「このっ…人形めっ…!」
ジャリ
海未「……」
…海未の足元には、穂乃果を消し去ったものが破ったステンドガラスの破片が散らばっていた。
509:
海未「……」 
海未は、そのステンドガラスを一欠片拾うと…
ぐしゃ
海未「……っ」
―それを一気に、手で握り込んだ。
ポタッ
 ピチャ…
海未「…嘆く、ものですか」
海未「全て、終わるまで…」
海未「絶対に…絶対っ…!」
ヴィオラ「……」 ガチャ
510:
?????
ことり「っぐ…ひっ…うっ…っ…!」
ことり「穂乃果ちゃん…穂乃果ちゃんっ…」
真姫「…ねぇ、おかしくない?」
希「……」
真姫「…もう、3人終わってる筈なのに」
真姫「なんで私達、ここから出られないのよ…?」
希「…うちにも、分からない」
真姫「…そう」
希「でも…もし魔女が、ウチらを殺して…力を強めているのなら」
希「この状況も、不思議な事ではないと思う」
真姫「……」
真姫(…魔女)
真姫(魔女って…何者なのよ)
512:
-人形の部屋-
ヴィオラ「……」
海未「……」
海未「人形だと言い放ったら、人形の部屋に来てしまいましたね」
海未「ほら、一つ場所が空いてますよ?…あなたもそこに座っていたらどうですか」
ヴィオラ「……」
海未「…ふん」
海未(4つの台座に、3つの人形)
海未(人形、台座とそれぞれ色がバラバラに置かれていますね)
海未(今、私は人形などは持ち合わせていません)
海未(…なら)
ヴィオラ「……」 ゴトッ
海未「色を合わせる…まぁこれだけで終わるはずはないでしょうね」
513:
カチャ
ヴィオラ「……」
海未「…扉の、開く音」
海未「……」
海未(台座は、まだ一つ余っています…)
海未(たとえ鍵が開いた音がしたとしても、それが正解だとは限らない)
海未(絵里のように正解だと思っていたものが違っていた、ということも十分ありえます)
海未(しかし、今までの場所で何処にも人形のようなものは…)
ヴィオラ「……」 ガチャ
海未「…!?」
海未「あ、あなた!何故勝手に…!」
514:
-庭園-
ヴィオラ「……」
海未「…ここは」
海未(…何も、起こらなかった)
海未(何故いきなり…意思を持ったかのようにコレは…)
「やあ。」
ヴィオラ「……」
黒猫「ここが最上階みたいだよ。」
海未「……」
海未「嫌がらせですか、あなた」
プツンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
515:
-???-
海未「……」
希「…海未ちゃん」
海未「重ね重ね申し訳ありません…私だけがこんなに楽をしてしまって」
希「ううん、そんなん気にすることじゃ…」
希「っ!?う、海未ちゃんそれっ!手が血だらけやん!?」
海未「……これは」
希「すぐに消毒せんと…ああでもここ何もないし…」
海未「構いません、それより…」
ことり「……」
海未「…ことり」
516:
ことり「…海未ちゃん」
海未「……」
ことり「…どうして、ことり達はこんな目に合わないといけないの?」
海未「……」
ことり「どうして…穂乃果ちゃんは…」
海未「ことり」
海未「立ってください」
ことり「……」
海未「……」
ことり「…うん」
海未「……」
517:
海未「……」
ことり「……」
希(…驚いたなぁ)
希(二人でじっと見つめるだけで…何かを悟ったようにことりちゃんが立ち上がった)
希(うちや真姫ちゃんが言っても取り乱すだけだったのに)
希(…二年生は本当に、お互いの事を分かり合ってるんやね)
真姫『………』
海未「…次は真姫ですか」
ことり「うん。…大丈夫かな」
海未「信じましょう」
ことり「そうだね」
518:
-庭園-
ヴィオラ「……」
真姫「…何ここ?」
真姫「変に草や花が多くて…気持ち悪い」
真姫「一体何からやればいいのよ…」
真姫(…扉は3つ、その内の一つは)
ヴィオラ「……」
真姫「…変な植物があって、進めない」
真姫「つまりここを開ける為の仕掛けを見つけないといけないのね」
真姫「…貼り紙もあるわ」
ヴィオラ「……」 ペラッ
519:
   【みどりは とりがたべる】
真姫「…みどり」
真姫「この蔦みたいな植物の事よね?」
真姫「…でも、鳥って」
ヴィオラ「……」
真姫「…もう少し調べよう」
真姫「最上階、って言ってたっけ…慎重に進めないと」
520:
ヴィオラ「……」
真姫「…それにしても、大きな木ね」
「…なにか ようかね。」
真姫「っ!?」
真姫「しゃ、喋った…」
「…わしは おまえさんなどに ようはないわ。」
    
「…しずかに しとくれ。」
真姫「…この木、すごく大きい。かなりの年代物ね」
真姫「おじいさんみたいな喋り方だし、…もしかしたら、いろんなこと知ってるのかも」
真姫「……」
真姫「…ねぇ、何か知ってることがあるなら教えなさいよ」
「……」
真姫「……」
521:
ヴィオラ「……」
「…そうだなあ。おまえさん。」
「ときをきざむもんには さわっちゃいかんよ。」
真姫(…時を、刻むもの?)
真姫(時…時間、時計の事?)
真姫(時計…この先にあるのかしら)
ヴィオラ「……」 ガチャ
真姫「次はこの部屋…」
真姫「理不尽なこと起こったら承知しないんだから」
522:
-廊下 牢獄前-
ヴィオラ「……」
真姫(…なに、ここ)
真姫(気味悪い…なんなのよ…)
真姫(さっきの庭もおかしかったけど…ここだけ、明らかに空気が違う)
真姫(何があるっていうのよ…もうっ)
ヴィオラ「……」
真姫「…なにこれ、図鑑」
ペラッ
真姫「…『饒舌な花たち』」
523:【内容省略】 2014/05/26(月) 23:49:36.23ID:1+6oUW+Eo
真姫「……」
真姫「ふーん…そうなの」
真姫「白い花…の花びらは、雨に当たると光る」
真姫「赤い花は、物知りだけど常に嘘をつく」
真姫「…そして、黄色い花の粉は殺しも活かしもする高級な薬になる」
真姫「……」
パタンッ
真姫(……)
真姫(こんな見つけやすい場所に本があるって事は…花の情報は何れ必要となるって事よね)
真姫(覚えておくことが前提条件ね)
真姫「…他の場所も調べないと」
ヴィオラ「……」 テクテク
524:
ヴィオラ「……」
真姫「げっ…」
真姫(ここにも気持ち悪い植物があるし…)
真姫「じゃあ、こっちの扉は…」
-穴のある部屋-
ヴィオラ「…」
真姫「…何もないじゃない」
真姫(でも…変ねこの部屋)
真姫(大きな穴があって…底が見えないくらい、深い)
真姫(一体何のためにあるのよ、この部屋)
ヴィオラ「……」
真姫「…分からない」
真姫「ここは置いといて、さっきの奥の道に行ってみようかしら」
525:
-廊下 牢獄前-
ヴィオラ「……」
真姫「…あまり近づきたくないけど」
真姫「この二つの牢屋みたいな場所も調べるべきよね」
真姫「…一つ目は」
ヴィオラ「……」 ガシャガシャ
真姫「…開かない」
真姫「二つ目は…えっ?」
真姫「…こんな所に貼り紙」
真姫「なんなのよ…今回情報量多すぎよ」
ヴィオラ「……」 ペラッ
526:
    【くすりを】
真姫「……」
真姫「えっ!?これだけ!?」
真姫「ちょっと!これだけでどうしろって言うのよ!」
ヴィオラ「……」
真姫「…この子に怒鳴っても虚しいだけね」
真姫「取り敢えず、二つ目の扉は…」
ウェッ… グェホッ… ゴホ…。
真姫「…誰か、いるわね」
529:【訂正】 2014/05/27(火) 20:36:12.31ID:Rx0QbxAVo
真姫「……」
「ウェッ… グェホッ… ゴホ…。
 薬…。あんた… 薬…持ってないか?」
真姫「…薬って」
真姫(さっきの貼り紙の…)
真姫「…生憎だけど、今は持ち合わせてないわ」
「……」
びちゃ!
真姫「うぇっ!?」
真姫「何これ…!唾っ…?」
真姫「な、なにすんのよっ!?」 ガシャン!
ヴィオラ「……」
真姫「うぅ…気持ち悪い」
真姫「いきなり唾を吐きかけて来るなんて…非常識じゃないっ」
530:
真姫「…最悪な気分」
真姫「ここも開きそうにないし、他に何かないかしら」
真姫「……」
真姫「…これは」
真姫「鳥籠…?でも、何もいないじゃ…」
真姫「…ううん、何かいる」
真姫「鳥…なの?」
真姫「すごく弱ってる…」
真姫「…ねぇ、これ開けなさいよ」
ヴィオラ「……」 ガチャガチャ
真姫「…開かないの?」
真姫「面倒ね…今は放置しておくしかないのかしら」
 ヒソヒソ
  ヒソヒソ
  
真姫「…そして、その奥には」
真姫「赤い花…いや、草…よね?あれ…」
531:
ヒソヒソ
 
  ヒソヒソ
真姫「…話し声が小さすぎて、全然聞こえない」
真姫「ここも何かをしないと、話が聞けないのかしら…」
ヴィオラ「……」 テクテク
真姫「つまり、ここはまだ来るべき場所じゃなかったみたいね」
真姫「はぁ…唾は吐かれるし、収穫も花の知識ぐらいだし」
真姫「……もういいわ、次行きなきゃ」
532:
-庭園-
ヴィオラ「……」 テクテク
真姫「…えっと、次は反対側の扉」
真姫「…あ」
真姫「……白い、花」
「ごきげんよう。」
真姫「えっ…」
真姫「…ご、ごきげんよう」
ヴィオラ「……」
真姫「…何呑気に返事してるのよ、私ったら」
真姫「でも、白い花って事は…」
真姫「……」
真姫「反対側の部屋、行かなきゃ」
ヴィオラ「……」 ガチャ
534:
-黄色い花の部屋-
真姫「…な、なにこれ」
ヴィオラ「……」
真姫「花が…座ってる」
真姫「でも…それよりも…あの花達…黄色い」
真姫(赤い草に、白い花。…そして黄色い花)
真姫(全部あの本の通りに見つかってる…じゃあやっぱり)
真姫「…この家の仕掛けは、人によって作られてる」
真姫「だから、あの残虐的な殺し方も…」
真姫「……ほんっと、最悪な気分」
真姫「いいわ…この真姫ちゃんが全て掻い潜ってあげる」
ヴィオラ「……」
535:
「ほんとうに いらいらするってないわ。」
「あのこさえいなきゃ わたしたちが ここいらでいちばん 美しいのに。」
「「ねー。」」
真姫「……」
「あらあなた、ずいぶん太い腕が生えているのね。オホホ。」
真姫「…植物のあなたと比べないで」
ヴィオラ「……」
「だれか あの子を×してくださらないかしら。」
「そうすれば、…そうねえ。」
「私たちの頭にできる粉を、少しばかりわけてさしあげるのに。」
真姫「…ちょっと待って」
真姫「今…粉って言ったわよね?」
536:
真姫「……」
真姫(確か黄色い花から取れる粉って、高級な薬になるって)
真姫(じゃあ…この花達の言うことを聞けばいいの?)
真姫(……)
真姫「……頭にだけ置いておくわ」
真姫「不可解な事が多すぎる…順番に整理しないと」
真姫「…ん?」
真姫「…ひっ!?」
真姫「な、なによこれ…!」
真姫「文字が…ち、血でっ…!」
ヴィオラ「……」 
537:
   はなを ×せば おまえも しぬ
真姫「…っ!」 ゾグッ
真姫「な…何よっ…これっ…」
真姫「花を…×す…」
真姫「これって…さっきのっ…!」
真姫(…どういう事?)
真姫(おそらくあの黄色い花たちが言ってる【あの子】ってのは、庭園に咲いていた白い花の事)
真姫(あの花を…こ、殺さないと、黄色い花から粉が貰えない)
真姫(でもっ…白い花を殺したら…私がっ…?)
真姫「……落ち着いて、まだ何も始まってない」
真姫「見つけないと…粉を手に入れて、私も死なない方法をっ…!」
真姫「この家の仕掛けは、必ず解けるように出来てる筈…」
真姫「もっと情報を…手に入れないとっ…」
ヴィオラ「……」 テクテク
539:
ヴィオラ「……」
真姫「…ベットが3つに、スタンドライトが置いてある」
真姫「何か、妙な配置ね…ここ」
真姫「…もしかして」
ヴィオラ「……」
真姫「早くしなさいよ、あなたの仕事でしょ」
ヴィオラ「……」 ゴソゴソ
真姫「っ!?」
真姫「ひ、ひっ!?」
【頭蓋骨を手に入れた】
ヴィオラ「……」
真姫「なっ…何よっ…なんなのよそれっ…!」
真姫「なんでそんな所に頭蓋骨が落ちてるのよっ!」
ヴィオラ「……」
真姫(なにかヒントになる物があるとは思ったけどっ…頭蓋骨なんて想定外よっ!)
真姫(何!?これをどうしろって言うのよ!?)
真姫「…頭痛くなってきた」
真姫「なによ今回…謎が多すぎて頭おかしくなりそうっ…!」
ヴィオラ「……」 テクテク
540:
ヴィオラ「……」 ガチャ
真姫「…ここは」
真姫「日記帳…でも」
真姫「なにこれ…血だらけじゃない」
真姫「まるでさっきの血文字みたいに…」
ヴィオラ「……」 ペラッ
真姫「…『魔女の日記』」
 
   ― 女の子が 遊びに来た ―
  ― 金髪の髪を三つ編みをした 可愛い女の子 ―
真姫「…えっ」
541:
真姫「…金髪の髪を、三つ編みにした」 
真姫「可愛い……女の子」
ヴィオラ「……」
真姫(それって…この子の事じゃないの!)
真姫(だって、そうでもないと…こんな事、ありえないっ…)
真姫「……すぅ」
真姫「…はぁ」
真姫「……」
真姫「もう一度全部調べるわ」
真姫「一度行った所でも、二度目には何か変わってるかもしれない」
ヴィオラ「……」 テクテク
真姫「上等よ…絶対に死んでやらないんだから」 
542:
真姫「…あっ」
 チッ
  チッ
ヴィオラ「……」
真姫「…柱時計」
『ときをきざむもんには さわっちゃいかんよ。』
真姫「…言う通りにしておいたほうが良さそう」
真姫「今まで散々時計の仕掛けがあったから…今度は、騙しで置いてある可能性」
真姫「…十分に、あるわ」
ヴィオラ「……」テクテク
真姫「後ここで調べてないのは…この扉だけね」
ガチャ
真姫「!?」
真姫「な、なによここ!真っ暗で何も見えないじゃない!」
真姫「こ、こんな所危なすぎて進めないわ!」
ヴィオラ「……」
543:
真姫「…ここも後回し」
真姫「なんなのよもう…何からすればいいのよっ…」
真姫「……」
ヴィオラ「……」
真姫「…一度庭園に戻って、考えるわ」
真姫「流石に私でも…落ち着かないと、無理」
-庭園-
真姫「…ふぅ」
真姫「…このベンチ、やけに座り心地いいわね」
ヴィオラ「……」
真姫(…最初に、3つの場所に違う色の花がいた)
真姫(赤い花…いえ、赤い草の話し声は全く聞こえなかった)
真姫(もしかしたら、あの時私がまだ知らなかったことに関して話していたのかしら…?)
真姫(そして白い花…これを殺さないと、黄色い花から粉を貰えない)
真姫(恐らく、白い花を殺したら、同時に花びらが手に入るはず…よね)
真姫(黄色い花の粉は毒にも薬にもなる…ていうより、薬物って、用法と容量を変えればどんなものでも毒になるし、薬にもなるわ)
真姫(…一番最初に浮かぶのは、麻薬。…黄色い花の粉なんて聞いたことないけど)
真姫(……薬は多分、あの牢屋にいるのに渡せばいいとして、あとは…鳥籠)
真姫(あれを開けるには…どうすればいいのよ?あの中にいる鳥を開放してあげないと、あの変な植物を食べてくれない)
真姫(それに、一番の疑問が…この頭蓋骨)
真姫(多分これって、まだ進めない場所で使うもの…そうに違いないわ)
真姫「…大体こんな所ね」
真姫「まず最初にするべきことは…あの白い花の殺し方」
真姫「…あの赤い草の話が聞けるといいのだけど」
真姫「…さて、と」
真姫「疲れも取れたし…早く進まないと」
ヴィオラ「……」 テクテク
544:
-廊下 牢獄前-
 ヒソヒソ
  ヒソヒソ
ヴィオラ「……」
真姫「…ねぇ、ちょっと」
「花の×し方を聞きにきたの?」
真姫(聞こえた…!)
真姫「…そうよ。教えて」
「引き抜く方法も、手折る方法も、どちらも正しい×し方。」
「引きちぎる方法と、引く抜く方法のうち、少なくとも1つは正しい×し方。」
「3つの方法の中には、1つも正しい×し方はない。だから花を×すのはやめなさい。」
真姫「…はぁ?」
真姫「なによこれ…全員言ってることバラバラじゃない」
真姫「意味分かんな…あっ」
真姫「…忘れてた」
真姫「確か赤い草って、常に嘘をつくってあの本に書いてあったっけ」
真姫「嘘って事は…反対の事を言ってる」
真姫「……」
真姫(…だとしたら、余りにもあの草達が言ってることは真面目すぎるわ)
真姫(まるでクイズみたいに、捻りがなくて…少し考えれば答えが出てくる)
ヴィオラ「……」 テクテク
真姫「…油断を誘ってるのかしら」
545:
真姫「…じゃあ、さっきの庭園に」
真姫「…っ!?」
ヴィオラ「……」
真姫「び…びっくりした」
真姫「何よ!さっきまでこんな所に頭蓋骨なんてなかったじゃないの!」
【頭蓋骨を手に入れた】
真姫「…ああもうっ」
真姫「ほんっと趣味悪い…!どんな性格してんのよっ…」
ヴィオラ「……」 テクテク
546:
-庭園-
「ごきげんよう。」
真姫「……」
真姫「さっきの赤い草の情報を纏めると」
真姫「手折る…でいいのよね」
真姫「…何してるのよ、早くしなさいよ」
ヴィオラ「……」 ポキッ
 
 キ
 
  イ
   
  ィ 
 
 ィ
 
  ッ
  !
真姫「ひっ!?」
ヴィオラ「……」
真姫「な、何よ…何よ今の声っ…!」
真姫「ほんとにっ…信じらんないっ…!」
真姫「やめてよっ…もうっ…!」
547:
ヴィオラ「……」
真姫「ハァ…ハァ…」
真姫「…白い、花びら」
【花の残骸を手に入れた】
真姫「…次は、あの部屋に」
ヴィオラ「……」 テクテク
「…しずかに しとくれと いったのに。」
真姫「……っ」
ヴィオラ「……」 ガチャ
548:
-黄色い花の部屋-
「きこえた!あの子の醜い声!」
「きこえた!」
   「きこえた!」
 「きこえた!」
「アハハハハハハハハハハハハハアッハッハッハッハハハハハハハ!!!!!」
真姫「…最低」
「え?ああ、約束のものね。差し上げてよ。」
【白灰色の粉を手に入れた】
真姫「……」
キャッキャ!
  ケラケラ!
アハハハハ!
真姫「…気分悪い。さっさと行くわよ」
ヴィオラ「……」 ガチャ
549:
-庭園-
真姫(……)
真姫(次は…この粉の薬を渡して)
真姫(いや…花びらの解明の方が先?)
真姫(もしかしたら、あの大きな穴が空いていた場所に変化があったかもしれないわ)
真姫(何にしても、今するべき事は…)
「ひどいことするなあ。」
黒猫「」
真姫「っ!?」
真姫「えっ!?なんでこのタイミングでっ…」
プツンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
550:
-???-
真姫「……」
海未「真姫、ご苦労様です」
真姫「うん…」
海未「…どうかしましたか?」
真姫「……」
希「それにしても、今回は随分と遠回りすることがおおいなぁ」
海未「魔女もいよいよ本気を出してきた…ということでしょうか」
真姫「…そうね、今までとは比べ物にならないくらい、考える事が多かったわ」
真姫「ここからの行動は、全員できちんと情報を共有し合って」
真姫「…え」
真姫「ちょっと、 待って…」
真姫「情報を…共有… って」
真姫「っあ…あ……ぁあああぁああぁあああっ!!!」 ガタッ
海未「ま、真姫っ!?」
真姫「そ、そうよっ…!そうよそうよそうよっ!!」
真姫「馬鹿っ!私こんなっ…こんな事もっ…!気づかないなんてっ!」
551:
希「真姫ちゃん!どうしたん!?何をそんな…」
真姫「海未!希っ!」
真姫「さっきの…!私が探索してた時の!」
真姫「私の【声】っ!どのくらい聞こえてたっ!?」
海未「こ、声…ですか?」
真姫「ずっと独り言でブツブツ言ってたじゃない!その独り言!ちゃんとここまで聞こえてたの!?」
海未「…いえ、こちらからはそれ程には」
希「全然聞こえてないっていう訳やないけど…ボソボソと、何か喋ってるなぁって感じには…」
真姫「…っ!」
海未「真姫、一体何を…」
真姫「……作っちゃったかも」
希「えっ?」
真姫「私がっ…!【犠牲になる役目】を作っちゃったかもしれないのよっ!」
海未「ど、どういう意味ですか!?」
真姫「この階…色んな謎が多すぎて、一つ一つ整理しないと危なくて先に進めない…!」
真姫「だから私の推測をみんなに話して、全員で共有すればいいと思ってた!」
真姫「でもっ!出来ないじゃないっ!」
真姫「生きてる全員が私が戻ってくるまでここにいる訳じゃない…必ず入れ替わりで誰かがあっちに行っちゃう!」
真姫「次の人が一番知っておかなきゃいけないのにっ…!それが出来ないまま魔女の家に連れてかれる!」
真姫「一度集めた情報が二度目も必ず手に入る確証なんてないっ…!だからっ!必然的に作っちゃうじゃないの!犠牲になる役目っ!」
真姫「私がっ…こんな事見逃すなんてっ…!」
552:
海未「そっ…そんな…!」
希「で、でも…映像で大体の状況は把握出来とったし、真姫ちゃんがいない時うちらも三人で考察し合ってたから…」
真姫「…甘いわよ。この階、考察だけで突破出来る程生易しく出来てない…」
真姫「今まではそれでまかり通って来たけどっ…この階はそれとは訳が違うのよっ!」
真姫「持ち物もどんどん増えて…どこで何を使うかもまだ分かってないのに」
真姫「その前の出来事も正確に把握してない状態じゃ…絶対っ…!」
海未「こ、ことりっ!」
ことり『…っ?……? …?』 キョロキョロ
真姫「ほらっ…何からすればいいか、分かってないっ…!」
真姫「どうしようっ…このままじゃ、ことりはっ…!」
希「こ…ことりちゃん!」 
「どうかっ…どうか死なないで下さいっ!ことりっ…!!」
【To Be Continued…】
567:
-園庭-
ヴィオラ「……」
ことり「…今度は、ことり」
ことり「……」
ことり「……えっ っと」
ことり「ことり、まずは何をすればいいんだっけ」
ことり「確か真姫ちゃんがこのお花さんを…それで、この粉を」
ことり「……渡しても、いいの?」
ヴィオラ「……」
ことり「あ、あれっ?この骸骨さんは何に使うの?」
ことり「ことりも探索したいけど…どこから行けばいいの…?」
ことり「そ、それに…さっき真姫ちゃんが行った所、もう一度行っても大丈夫なの…?」
ことり「……どうしよう」
ことり「全然、分からないっ…!」
568:
ギィッ…
ことり「……」
ことり「はぁ…どうしよぉ…」
ヴィオラ「……」
ことり「…ごめんね、ことりがずっと座ってるから」
ことり「あなたもベンチに座っていいんだよ?」
ヴィオラ「……」
ことり(動いてくれない…ことりが動かないと動けないんだ)
ことり「……」
ことり「……」 スクッ
ことり「ずっとこのまま座ってても、ダメ」
ことり「ことりが進まないと…みんなに迷惑がかかっちゃう」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「……穂乃果ちゃん」
569:
―――――――――
ことり『………』 テクテク
希「…ことりちゃん、進み始めたね」
海未「ことり…」
真姫「……」
希「真姫ちゃん、どうしたん?」
真姫「…何でもない」
海未「何ですか?何か思う事があるなら私達に…」
真姫「別にそんな大したことじゃないわ」
真姫「…ただ、本来ならことりの前にあの子がいる筈なのに」
真姫「どうしてここからだとことりしか見えないのかしら?」
海未「…分かりません」
海未「そもそも、あの少女は一体何者なんですか」
海未「こちらの声に反応を示さない、名も名乗らない」
海未「…私には、アレが生き物かどうかさえ疑問に思います」
570:
希「……なぁ、ちょっとオカルトな話をしてもいい?」
真姫「いいわよ。…何か心当たりあるの?」
希「んとね…」
希「見えなモノが見えたり…見えてはいけないものが見えたって言う人…」
希「写真には写ってるけど、実際にはそんなモノいなかったとか…」
希「いわゆる霊感が強い人ってのを、よくテレビとかで見かけるやん?」
海未「…はぁ。私はあまりテレビを見ないのでよく分かりませんが…」
真姫「それがどうしたのよ?」
希「…どうする?」
希「あの子が見えないモノ…あるいは見えてはいけないものだったら」
希「ウチらにだけ見えて、本当はあんな子…どこにもおらんかった、とか」
571:
海未「……」
真姫「…そんな」
希「ありえない話ではないと思うんよ」
希「ウチらはずっと、あの子が自分の分身の様なものだと認識してた」
希「物を持ったり使ったり…でも、それはこの魔女の家だけの事やん?」
希「分身である確証なんてないし、意思を持ってないだなんても誰も言ってない」
海未「…確かに、今までも何度か私の意思に反した行動をあの少女はしています」
真姫「…ちょっと、そんな話聞いてないわよ」
海未「すみません…怒りと動揺で我を忘れていたので」
真姫「しっかりしなさいよ…」
希「…もしかしたらウチら、とんでもないモノと一緒におるのかもしれん」
希「二人共気をつけとき。…あの少女は、普通じゃない」
真姫「…そんな事、分かってるわよ」
海未「……」
572:
-廊下 牢獄前-
ヴィオラ「……」
ことり「……たしか真姫ちゃんは、この本を」
ヴィオラ「……」
ことり「どうして…読めないの?」
ことり「……」
ことり「…どうしよう」
ことり「読めないってことは、もう必要ないってことなのかな…」
ことり「じゃあ…お花の事はもう気にしなくて大丈夫…?」
ことり「…牢屋の方に、行ってみよう」
ヴィオラ「……」 テクテク
573:
「ウェッ… グェホッ… ゴホ…。
 薬…。あんた… 薬…持ってないか?」
ヴィオラ「……」
ことり「…えっと、これを」
ガシャンッ!!
ことり「きゃあっ!!」
「…おい!……それをよこせ。」
ことり「あっ…は、はいっ…!」
ヴィオラ「……」 カサッ
…何者かは 素早く粉を手に取った。
.
574:
「… … …ああ、ああ?…?なんてこった。
 …あれが ねえや…。あれがねえと…。」
ことり「…えっ?」
「あれがねえと 吸えねえじゃねえかッ!!」 ドンッ!
ことり「ひゃあっ!?」
ガシャンッ!
ことり「あ…あっ…っ!」 
「…あああっ、くそっ、 …。」 トントントントン
ヴィオラ「……」
ことり「ひっ…えっ…ぐっ…怖かったよぉ…!」 ポロポロ
ことり「ことりっ…何か間違えたかと思ってっ…!」
ことり「……あ」
ことり「鳥籠が…倒れてる…」
575:
ことり「…中に、何かいる」
ことり「ごめんね…びっくりしたよね…?」
ことり「戻してあげないと…」
ことり「…あ」
ことり「扉の金具がゆるんでる…倒れた時に曲がっちゃったのかな」
ことり「……」
ことり「開けても、いいの…?」
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「えっ…えっ!?勝手に開けてっ…!」
バサッ!
ことり「きゃっ…」
…見えない何かが飛び出していった。
ことり「……行っちゃった」
ことり「良かったのかな…籠から出しちゃって」
ヴィオラ「……」
 
576:
ことり「あ、貼り紙が…」
ヴィオラ「……」 ペラッ
    【すえるものを】
ことり「…吸えるもの」
ことり「さっきのひと…吸えないって」
ことり「……っ!」
   
    やみに かくした
ことり「ひっ…!」
ことり「ち、血の…文字っ…!」
ヴィオラ「……」
577:
ことり「……」
ことり「吸えるものを…闇に隠した」
ことり「闇って…もしかして、さっき真姫ちゃんが入ってすぐに出てきた場所…?」
ことり「じゃあ、あそこに…」
ことり「…でもどうやって」
ことり「……」
ことり「…とにかく、色んな所に行ってもいいみたいだから」
ことり「探索、しなくちゃ…」
ヴィオラ「……」 テクテク
578:
-庭園-
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「何か、何か変わった所…変わったところ…」
ことり「…あっ!」
バサッ
  バサッ
ことり「…さっきの小鳥さんが、飛んでる」
ことり「それに…あの植物がなくなってるよ!」
ヴィオラ「……」
ことり「…そっか。食べて元気になったんだね」
ことり「よかったね、小鳥さん…」
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「ことりは…こっちに進まなきゃ」
579:
ヴィオラ「……」
ことり「えっと、ここは」
ことり「…っ!?」 
-毒の水溜り廊下-
ことり「ごふっ!」
ことり「げほっ!ごほっ!ごほっ!」 バッ
ことり(な…なに…ここっ…!)
ことり(苦しいっ…!身体がっ…痺れてっ…!)
ことり「げほっ!」
ことり「た…たて…札っ…!」
ヴィオラ「……」
   【どくそ はっせいちゅう】
  【.いろのないくつで とおること】
ことり(毒素っ…!?)
ことり(ダメっ!ここにいたら、死んじゃうっ…!)
ことり(も、戻らない…とっ…!)
ヴィオラ「……」 ガチャ
580:
-庭園-
バタンッ
ことり「げほっ!ごほっ…!」
ことり「はぁ…はぁ…!」
ことり「……」
ことり「…あれ、何ともない」
ことり「どうして…?ことり、いっぱい吸っちゃったのに…」
ことり「……」
ことり「とにかく、ここは後回しにしないと…」
ことり(でも、さっきチラッと見えた、箪笥の列も気になるし…)
ことり「…もうちょっと、色々調べなきゃ」
ヴィオラ「……」 テクテク
581:
-黄色い花の部屋-
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「…だめ。やっぱり明かりがないと危なくて入れない」
ことり「どうすればいいのかなぁ…」
ヴィオラ「……」
ことり「このスタンドライトを…」 
ことり「…あ、動かない」
ことり「うーん…」
ことり「…もう一回、牢屋の所に行ってみようかな」
ヴィオラ「……」 テクテク
582:
-廊下 牢獄前-
ことり「…今度は、北の方に」
ことり「…あっ!」
ヴィオラ「……」
ことり「そっか…ここにも緑の植物があったから」
ことり「…入っても、いいよね?」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「…そういえば」
ことり「なんで、ここだけ扉がないんだろう…?」
583:
ヴィオラ「……」 
ことり「ここ、すっごく狭いよぉ…」
ことり「ヒト一人分の道しかないないんて…」
ことり「あっ、貼り紙…」
ヴィオラ「……」 ペラッ
  【みずは ずがいこつが ふういんしている】
ことり「…!」
ことり「頭蓋骨…って、もしかして…!」
ことり「でも…水?何の事だろう…」
ことり「でもでも、これでこの骸骨さんが何に使うのか分かったから…それだけでも!」
ことり「…あれ?」
ことり「……」
ことり「なんで…こんな所に…壺が…」
ヴィオラ「……」
584:
ことり「……」
ことり「何か…入ってるの?」
ことり「……」
ことり(ここに、ひとつだけ壺があるって事は)
ことり(絶対何かあるって、事だよね…?)
ことり「…お願い、してもいいかな?」
ヴィオラ「……」 ゴソゴソ
ヴィオラ「……」
ことり「…!」
ことり「えっ…ま、また?」
585:
【頭蓋骨を手に入れた】
ことり「…これで三つ目」
ことり「こんなにたくさん、いらないよ…」
ことり「これをどうしたら…」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「こっちに行けば、分かるのかな…」
586:
-頭蓋骨の部屋-
ことり「ひゃっ…!」
ことり「な…なにっ…なに…ここっ…!」
ことり「頭蓋骨がっ…いっぱいっ…!」
ことり「き、気持ち悪い…!」
ヴィオラ「……」
ことり「うぅ…もういやだよぉ…」
ことり「これ、いきなり襲ってきたりしないよね…?」
ことり「どうすれば…」
ことり「…あっ」
ことり「…なんだろう、これ」
ことり「レバー…だけど」
587:
ヴィオラ「……」
ことり「…えっと、この部屋は」 キョロキョロ
ことり(あんまり広くない部屋に、たくさんの骸骨)
ことり(壁に青いレバーがあって…まだ触るのは、危険だよね)
ことり(後は…うーん、特に何もないけど…ないけど)
ことり「…ここ、不自然だよね」
ことり「たくさんの骸骨の隅っこに…何かを填めるくぼみがある」
588:
ことり「……」
ことり「あっ、もしかして…!」
ヴィオラ「……」 ゴトッ
ことり「やっぱり…入った!」
ことり「そうだよね…こんなにたくさんの骸骨さんがいるのに…他に使うところがないよね」
ことり「…でも」
ことり「…ことりが持ってるのは、3つ」
ことり「くぼみは4つあるから…一つ足りない」
ヴィオラ「……」
589:
ことり「…やっぱり、最後の一つは」
ことり「……」
ことり(あの部屋、ずっと居たら危ないけど…別にすぐに死ぬ訳じゃなかったよ)
ことり(じゃあ、入出を何回か繰り返しながらだったら、あの箪笥も調べることができるのかな…?)
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「…大丈夫、だよね…?」
592:
ことり「……」
ことり「すぅ…はぁ…」
ことり「……」 グッ
ヴィオラ「……」 ガチャ
-毒の水溜り廊下-
ことり「…うっ」
ことり(い、息止めてもっ…苦しいっ!)
ことり(走れないっ…早く箪笥に…!)
ヴィオラ「……」 ガラッ
ことり(…何も、ない)
ことり(次…うぇっ…)
ヴィオラ「……」 ガラッ
ことり「…!」
ことり(何かあった!…これは?)
【空きビンを手に入れた】
ことり(空の…ビン?)
ことり「うっ…がっ…」
ことり(考える前にっ…ここから…出ないとっ…!)
ヴィオラ「……」 ガチャ
593:
ガチャ
ことり「…っぷは!」
ことり「はぁ…はぁっ…」
ことり「…やっぱり、苦しくない」
ことり「何なんだろう…あの毒素って」
ヴィオラ「……」
ことり「……えっと」
ことり「最初はただのゴミかと思ったけど…拾えたって事は」
ことり「この空き瓶、何かに使う…のかな?」
ことり「…よぉし、もう一度」
ヴィオラ「……」 ガチャ
594:【内容省略】 2014/06/03(火) 20:58:27.29ID:KY4LvNzmo
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴィオラ「……」 ガラッ
ことり「げほっ…これは」
ことり(本…!でも、なんで…)
ことり(持ち出せない…じゃあ、ここで読まなきゃいけないのぉ!?)
ことり(は、早く読まないと…)
ことり(…『どくろの兵士』)
ヴィオラ「……」 ペラッ
ことり「…ごほっ!」
ことり(も、もうダメっ!一時退避?!)
ヴィオラ「……」 ガチャ
595:
ガチャ
ヴィオラ「……」
ことり「……はぁ」
ことり「嫌だなぁ…もうここに入るの」
ことり「でも、まだ調べてない箪笥があるし…」
ことり「…さっきの本って」
ことり「死んだ兵士が滅んだ国の見張りをずっとしてた…って内容だったけど」
ことり「…正面、右、左、正面」
ことり「……これって」
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「…次が最後、かな」
596:
・・・・・・・・・・・・・・
ヴィオラ「……」 ガラッ
ことり「……!」
ことり(あった!……最後の骸骨さん!)
【頭蓋骨を手に入れた】
ことり(…これで、あの部屋に)
ことり「…げほっ」
ことり(……)
ヴィオラ「……」 ガチャ
598:
-頭蓋骨の部屋-
ヴィオラ「……」
ことり「えっと、このくぼみに…正面、右…」
ことり「…あっ」
ことり(…何処から見て、正面なんだろう…?)
ことり(えっとぉ…ここが右を向いてて…こっちが正面で…だから)
ゴトッ
ことり「……これで、いい筈だけど」
ヴィオラ「……」
ことり「あとは、レバーを…」
ことり「…じゃあ、お願いね」
ヴィオラ「……」 ガコンッ

ザアァァァァ…
ことり「…!」
…近くで水の流れる音がした。
599:
ことり「はぁ…よかったぁ」
ことり「これで水が…どこに溜まったんだろう?」
ことり「…あっ、もしかして真姫ちゃんが入ったあの大きな穴の部屋?」
ことり「ことりまだ調べてなかったっけ…」
ことり「…気をつけなくちゃ」
テクテク…
ことり「…けほっ」
ことり(あれ…おかしいなぁ…少し息苦しい)
ことり(……さっきの毒素、吸い込み過ぎたのかな)
ヴィオラ「……」
600:
-通路-
ことり「えっと、ここを通り抜けて…北の」
ガシャン
ことり「……え」
ことり「壺が…ひとりでに…割れて」
  ドクン
ことり(…っ!)
ことり(ことり…この感じ…知ってる)
ことり(かよちゃんの…花瓶が倒れた時と…同じっ…!)
602:
…ことりの呼吸が乱れ、激しい動悸が起こり始める。
先程の部屋で吸い込んだ毒素の影響とは明らかに違うと感じる症状…
それは自分が今置かれている状況に恐怖していることを証明していた。
花陽や希が人外に襲われた際、何かしらの前兆あった…
花瓶が倒れ熊が襲い、鈍い音が響き唸り声のようなものが聞こえたと希は話していた。
…この先、足を踏み出すと、自分は最期を迎えてしまうかもしれない。
そんな想像がことりの胸を更に締めつけ、呼吸が出来ず口を魚のように情けなく開閉を繰り返した。
ことり「はぁ…はぁ…はぁっ…!」
ことり「げほっ…!……はっ…はぁっ…あっ!」
金縛りに掛かったかのように動かない脚を必死に上げる。
ここで止まっていては何も起こらない、先に進めない…
仲間の為に、自分の為にと心に刻んだ決意だけがことりの身体を動かしていた。
かつん
…一歩、また一歩と、足を前に踏み出す。

   地面を踏みしめたことりの視界に飛び込んできたのは
  恐ろしい程巨大で、返り血を浴びドス黒く変色した頭蓋骨の化物だった。
 
603:

  ご
 ご
 ご ご ご
ことり「…はっ…ひっ・・・ひっ!!!」
ことり「ひゃ…!あっ…!…いやっ…!」
ことり「いやあああああああああああああああああああっっ!!!!」
悲鳴を上げるより先に足が動き出す。
巨大な頭蓋骨は奇っ怪な動きでことりに向かって襲いかかる。
希を襲った生首のように、足を持たないモノとは思えない程のさでことりとの距離を縮めている。
化物自身が動かしているのは、鋼のように強靭な顎と歯だけのように見えた。
ことり「はっ…!はぁっ…!ひぃっ…!」
大量の骸骨の部屋に飛び込むも、化物は部屋に進入しことりを追いかける。
人一人動くのも神経を使うほどの狭い通路を、度を落とさずに難なく進んでくるその様は異様だった。
その不可解な現実はことりの恐怖心をさらに募らせ、ただひたすらに走る事に意識を向ける。
ことり「やだっ!やだやめてっ!来ないでっ!いやっ!いやあああっ!!」
ことり「いやあああああああああああっ!!来ないでっ!来ないでええええええええええええええっ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
604:
-廊下 牢獄前-
ヴィオラ「……」
ことり「はっ…はっ…はっ…!」
ことり「うっ…げほっ!ごほっ!…かふっ」
ことり「ハァー…ハァー…」
ことり「……うっ」
ことり「あっ…ひっ…ああっ…」
ことり「あああっ…ひぐっ…ぅあっ…!」 ポロポロ
ことり「怖かったっ…!えぐっ…!え゛っ…こわっ…怖かったっ…!」
ことり「もういやぁ…なんでっ…ことりがっ…こんな目にっ…!」
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「ひぐっ…もうっ…嫌だよぉ…」
605:
-穴のある部屋(注水後)-
 ポチャン
  ピチャン…
ヴィオラ「……」
ことり「…水」
ことり「透き通ってて…綺麗」
ちゃぽん
ヴィオラ「……」
ことり「……瓶に、水を」
…空きビンに水を入れた。
ことり「…喉、乾いた」
ことり(でも…、この家の物を…口に含みたくない)
ことり(我慢…しなくちゃ)
ヴィオラ「……」
ことり「えっと…水について、他に何かあったような…」
ことり「…あっ」 
606:
ことり(そういえば…)
ことり(真姫ちゃんが読んでた花の本に…白い花びらの事が)
ことり(確か、雨に触れると、って…)
ヴィオラ「……」 ポチャン
ことり「…!」
ことり「光ってる…!これってもしかして…!」
…花の残骸を水の入ったビンに入れた。
ポワッ
ことり「…出来た」
ことり「これであの暗い部屋に行けるんだね」
ことり「…怖いけど、行かなきゃダメだよね」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり(見てない)
ことり(ことりは何も見てない)
ことり(水中で泳いでるおたまじゃくしなんて 見てない)
607:
・・・・・・・・・・・・・・
ことり「…じゃあ、行くよ」
ヴィオラ「……」 ガチャ
-暗闇の通路-
ことり「…っ!?」
ことり(暗いっ…この光、全然辺りが見えない…!)
ことり(どうしようっ…!一歩先も見えないだなんて思わなかったっ…!)
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「何も、起こりませんようにっ…!」
608:
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「……」
ことり(壁伝いに進まないと…道が分からない) 
ことり(道が別れてたら…どうしよう)
ことり「…箪笥がある」
ことり「これを…調べてもいいのかな」
ヴィオラ「……」 カタンッ
ことり「…何もないね」
ヴィオラ「……」
609:
ヴィオラ「……」
ことり(…机の下も、調べたけど)
ことり(やっぱり、何もなかった…)
ことり(ここ…来た意味あるのかな)
ベチャ
ことり「…えっ」
ことり「壁に何か触って…」
ことり「…ひっ!?」
ことり「ち、血がっ…!」
  ブワッ
ことり「きゃあああっ!?」
610:
ヴィオラ「……」
ことり「なっ…なに…今のっ…!」
ことり「あの子…誰っ…!?」
ことり「うっ…ぐすっ…ここ…怖いっ…!」
ことり「早く出たいよぉ…うぅっ…!」
ヴィオラ「……」 カタンッ
ことり「…また、箪笥」
ことり「でも、何も見つからないから…探しても…」
カタンッ
ことり「……あ」
ことり「この箪笥だけ…何かある」
611:
【翡翠のパイプを手に入れた】
ことり「……」
ことり「もしかして、これが」
ことり「吸える、もの…」
ことり「見つけた…見つけたよっ…!」
ことり「これで…ここから出られるっ…!」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「あともう少し…あともうちょっと…!」
612:
ヴィオラ「……」
ことり「…待っててね、みんな」
ことり「ことり、絶対にっ…!」
ドンッ
ことり「きゃ…!」
ことり「…何、これ」
ことり「銅…像?どうしてこんな所に…」
ことり「……」
ヴィオラ「……」 テクテク
ことり「…あれ」
ことり(気付かなかったけど…ここ…銅像がいっぱい)
ズ ズ ズ 
ことり「きゃあ!?」
ことり「あっ…?」
ことり(ど、銅像がっ…勝手にっ…!)
ことり「…やめてよっ…嫌だよっ…」
ことり「もう…怖いのは…嫌ぁ…!」 
ヴィオラ「……」 ダッダッダ
ベタ 
  ベタ 
ベタッ!
ことり「ひいいっ!?」
ことり「手っ…手ぇっ…!」
ことり「やだっ!やだやだっ!やめてぇっ!」 ダッダッダ!
613:

 ズ
 ズ
ことり「いやっ…いやぁ…!」
ことり「来ないでっ…何もこなっ」
パリンッ
ことり「…え」
ことり「な、何も見えないよぉ…!!」
ことり「えっ…えっ!?なんでっ…なんで!」
ことり「ね、ねぇ!どうしてビン落としちゃったの!?なんで…」
ヴィオラ「  」 
 
ことり「ひっ…あ…ああっ!!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
.
614:
ガチャ…バタンッ
ことり「ひっ…ひっ…ひぃっ…!」
ことり「うっ…げほっごほっ!」
ことり「ごほっ!…うっ…げぇっ…ぇ…」
ことり「…っは…はぁっ」
ことり「……」
ことり「何 今の…」
ヴィオラ「……」
ことり「きゃあ!」
ことり「こ…来ないでっ!ことりに近寄らないでっ!」
615:
ヴィオラ「……」
ことり(…暗闇の中でもはっきりと見えた)
ことり(この子が…私に向かって)
ことり(気味悪い笑顔でっ…私を見てたっ!)
ことり(赤くて…目が黒くてっ…!)
ことり(この子は…この子は一体何者なのっ…?)
ことり(怖いよっ…もう、一緒に居たくない…!)
ヴィオラ「……」
ことり「…うっ」 
 
ことり「えぐっ…ひっくっ…穂乃果ちゃん…海未ちゃぁん…!」 ポロポロ
616:
-廊下、牢獄前-
ヴィオラ「……」 カランッ
ことり「……」
…鉄格子の隙間から、翡翠のパイプを投げ入れた。
「…あ、ああ。 これは… 
    へへっ、俺のだ。俺の…。」
…何者かは牢の奥に消えていった。
ことり「…えっ」
ことり「何も…起こらない…どうして」
…ガチャン
ことり「っ!?」
…隣の牢屋から何者かが出て行く音がした。
617:
ヴィオラ「……」
ことり「隣の牢屋…開かない筈だったのに」
ことり「それに…なに、この変な匂い」
  ベタッ!
ことり「ひっ!?」
ヴィオラ「……」
   せっかく かくしておいたのに
 
ことり「…ぁ…っあ…!」
ことり「なんでっ…だって…探せって…!」
ことり「…うっ…ひっく…っ」
ヴィオラ「……」
ことり(…こっち、調べよう)
ことり(何かしないと…怖さと、この甘い匂いでおかしくなりそう…)
618:
-牢屋-
ヴィオラ「……」
ことり「…なに、ここ」
ことり(色んな本が散らばってる…どれも汚れてて読めない)
ことり(えっと…『楽×いお菓子づ×り』、『病×の子××つ親へ』)
ことり(…『×物依存症』)
ことり「…もしかして、さっきの薬って」
ことり「……」
ことり「…ここ、なんだろう」
ことり「牢屋じゃなくて…なんだか」
ことり「誰かの、部屋みたい…」
619:
ことり「えっと…他には」
ことり「…!」
ことり「布に包まれて…何かある!」
ことり「…でも」
ことり(…取っていいのかな)
ことり(また…この前みたいに…猫さんの死体が入ってたり…)
ことり(…っ)
ヴィオラ「……」 バサッ
ことり「…!これって」
620:
【赤い靴を手に入れた】
ことり「…なんだろう、この靴」
ことり「すごく…不気味…」
ことり「…あ、貼り紙も」
ヴィオラ「……」 ペラッ
   
    【ちをながせ】
ことり「…血を、流せ」
ことり「…っ!この靴の赤色って…血っ!?」
どろっ
ことり「ひっ!?」
621:
    ちをながせ
ことり「なっ…なんでっ…!貼り紙にっ…血がっ…!」
ことり「やめてよぉ…!もう、怖いの嫌だよっ…ぉ…!」
ことり「ちゃんと言ったとおりにするからっ…!もう脅かさないでぇ…!」
ヴィオラ「……」 ガチャ
ことり「えぐっ…いつになったらっ…あっちに…戻れるのぉ…っ?」
622:
・・・・・・・・・・・・・・
ヴィオラ「……」
ことり「……」
ことり(もう、ここに…来たくなかったのに)
ことり(早く、済ませないと…)
ジャブ
 ザバッ
ことり「…うっ」
ことり(あんなに綺麗だったのに…血で、真っ赤に)
…靴の血が洗い流されて、透明な色があらわれた。
ヴィオラ「……」
ことり「…綺麗に、なった」
【ガラスの靴を手に入れた】
.
  
624:
ことり「…色の無い、靴って」
ことり「コレのこと…だよね」
ことり「…じゃあ、これを履いて…あの廊下の先に」
ことり「……この部屋から、抜け出せる」
ことり(……) チラッ
ことりは意図的に目を逸らしていた方へと顔を動かす
…そこには、数匹のおたまじゃくしが力なく浮いていた。
ことり「……」
ことり「ことりの、せいだよね」
ことり「…ごめんなさい」
ことり「ことり…元の世界に戻ったら」
ことり「カエルさんと…おたまじゃくしさんの…お墓を作るよ」
ことり「ごめんね…こんな事しか出来ないことりを…許して」
ことり「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」
ことり「……」 ゴシゴシ
ことり「泣いてても、だめ」
ことり「早く行かないと…みんな、心配して」
625:
「お父さん、死んじゃった。」
626:
…血の気が引く音がした。
誰も居ないはずの部屋から、幼くてか細い声が聞こえたのだ。
ここにいるのは、ことりとこの少女だけ。
部屋は水が滴り、雫が落ちる音が部屋に響いており、その音が心地よいとすらことりは思っていた。
だが、聞こえたのだ。
その声は今まで一度も声を出さなかった少女の物ではない
この部屋の、水中から。
…死んだはずのおたまじゃくし達が、声を出して喋っていた。
628:
ことり「 えっ」
ことり「あっ・・・  はっ・・・  え」
ことりは振り向く事ができなかった。
この血で赤く染め上げた部屋の水を、おたまじゃくしの死体を直視する勇気がない。
何より振り向く事で状況が変わるとも思っていなかった。
だが、声は再び聞こえた。
次第に喋り出す声は増え、その声は部屋中に響き渡る。
「お父さん、死んじゃった。」
「お父さん、ヘビに食べられて死んじゃった。」
「お父さん、いっぱい頑張ったのに、窓に押し込まれて死んじゃった。」  
629:
ことり「……やめて」
ことり「やめてっ…!お願いっ…やめてっ…!」
ことり「いやっ…やだっ…!やめてっ……許してっ…!」
耳を塞ぎ、ことりは小さく蹲った。
しかしそれでもおたまじゃくし達の声は聞こえてくる。
小さな部屋の水場が、か細い声を響かせていた。
ことり「いやぁっ!やめてっ!やめてぇ!」
ことり「やだっ…やだっ!聞きたくないっ!聞きたくないっ!」
ことり「お願い!やめてっ!もうやめ」
ことりはその声を止めようと、血の水場に振り向く。そして
   「お 前 が 殺 し た」
―大量のおたまじゃくしの死体が、ことりの目に映った。
630:
―ドボンッ!
ことり「がっ…!ごぼっ…ごっ…!」
突然、ことりが蹲っていた足場が崩れ始め、ことりは水中に引きずり込まれた。
突然の出来事に混乱する間も無く、ことりの身体は水中の底へと落ちていく。
何とかして浮き上がろうと手足を動かすが、上に進む気配など無く、むしろ更に沈みかけている気がした。
ことり「ごっ…がっ…… がぼっ…」
自分の身体が浮かび上がらないことに疑問を感じたことりは、息苦しさの中自分の足に目を向ける。
…そこには、先程の大量のおたまじゃくしがことりの足を引っ張り、水底へと引きずり込む様に泳いでいた。
ことり(……ごめん、なさい)
ことり(穂乃 果 ちゃん… 海未 ちゃん)
ことり(みん な…)
    ごぽっ…
 
 ― そしてことりは 血の海へと消えていった。 ―
631:
ブツンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
希「 …そん、な」
真姫「あっ…あっ…ことり…っことり…!」
海未「…消えた」
海未「私の、前から」
海未「穂乃果と ことりが 消え」
グ ニ ャ ア
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
634:
?????????????????
「…ガ…ォ…グ…ゲ…」
少女は悶えていた。
腐った足から焼けるような痛みが全身に響き渡り、意識が飛びそうになる。
だが、ここで意識を切らすことは、死ぬ事であるのを少女は知っていた。
…この身体は、魔法と気力のみで原型を留めていたのだ。
『…苦しそうだね。ヴィオラちゃん』
…聞こえる筈のない声が頭の中に響き渡る。
この家から【彼女】の存在を断ち切った筈だったのに、また、聞こえてきたのだ。
『…私、びっくりしてるんだよ?』
『ヴィオラちゃんがここまで、魔女になりきれてるだなんて』
『もしかしたら、私より才能。あるかもしれないね』
『ふふっ…よかったね。魔女になれて』
…ああ、うるさい。
この声は私を不快にする。
一度は仕方の無い事だと思ったけど、でも、今は彼女に慈悲の感情など持ち合わせていない。
無い筈だ。
636:
『でも、残念だね。』
『その身体に、もうこれ以上の魔力を貯める力はないよ』
『だから、すぐに使うしかない…今日のアレも、そういう事でしょう?』
…見透かされていた。
家から生み出される魔力は、この身体には毒だった。
大きすぎる魔力は身体から溢れ、血を流すかのように止まらなかった。
…だから、魔法として消費する事で、溢れ出る魔力を抑えることができた。
―本当は、こんな筈ではなかったのに。
638:
『…でも、あまり【改築】しないでね?』
『私が遊びに行く時に…迷子になったら、困るでしょ?』
彼女はそう言うと、くすくすと笑い始める。
何もかも上手くいかない私を揶揄いに【来た】だけなのだと、私は理解した。
『…もうちょっとだけ、待ってあげるよ』
『もう私も、いい加減外に出たいの…だから、もうちょっとだけ。』
『頑張ってね。 ヴィオラちゃん。』
…彼女の意識が、私の頭の中から消え去る。
この身体が悔し涙を流せる身体だとしたら、私は泣いていたかもしれない。
…だが、それは無意味だという事を知っている。
今はまだ、感情に気力を費やす時ではない。
…あと一夜で、全てが終わる。
だから、私は動かない。何も言わない。何も感じない。
……だから、早く伝えないと。
あの×××××に、私の事を。
【To Be Continued…】
644:
――――――
「かーよちーんっ!」
「きゃあ!?り、凛ちゃんどうしたの…?」
「今日のテストの出るところ教えて欲しいにゃー」
「…えっ?テストって明日の筈だけど」
「えぇっ?!?なんでなんでー!?」
「な、なんでって花陽に言われても…」
「せっかく早起きしてかよちんに教えて貰おうって思ってたのに…」
「これじゃあ早く来た意味ないにゃ?」
「り、凛ちゃん…」
「うー…あっそうだっ!今日かよちんに教えてもらって明日の朝詰め込めばいいんだよ!」
「で、でも今回の範囲…結構多いよ」
「そんなのかよちんなら大丈夫だって!あっそうだ!」
「真姫ちゃん!真姫ちゃんも一緒に凛の勉強に付き合って欲しいんだにゃー!」
645:
真姫「 」
「…そうだね。三人一緒で勉強した方が効率はいいかも」
「決まりー!じゃあ早」
パサッ
「…にゃ?」
「真姫ちゃん?」
真姫「 …それ、今回のテスト範囲」
真姫「内容。全部入ってるから」
「え、ええっ!?もう全部まとめちゃってるの!?」
「真姫ちゃんすごいにゃー!やっぱり凛とは頭の作りが違うんだねぇー」
「う、うん…ごめんね凛ちゃん、今回花陽あんまり役に立ちそうにないよ…」
「凛はそんなかよちんも好きだにゃー」
「も、もうっ!凛ちゃ」 バンッッ!!!
「…えっ?」
「真姫、ちゃん…?」
真姫「  …お願い」
真姫「…私の視界から、消えて。」
646:
「ま、真姫ちゃん…?」
「どうしたの?生理中かにゃ?」
真姫「……」 ガタッ
カツン
  カツン…
「…真姫ちゃん、調子悪いのかな?」
「分かんなーい。でもしばらく一人にしてあげたほうがいいかも」
「そうだね…でも、心配だなぁ」
「大丈夫だって!どうせ真姫ちゃんの事だから後でひょっこり顔出しに来るよ」
「…うん、そうだね」
ヴィオラ「じゃあ、早はっじめーるにゃー!」
ヴィオラ「もう、凛ちゃんったら…くすっ」
650:
-放課後 部室前-
真姫(……)
真姫(……) ガチャ
ヴィオラ「ちょっと!それ私のでしょ!?返しなさいよっ!」
ヴィオラ「ちょっとぐらいいいじゃーん!にこちゃんケチだにゃー!」
ヴィオラ「ほらっ!かよちんもこの前からコレ観たいって言ってたじゃん!」
ヴィオラ「え、ええっ!?そ、そうだけどぉ…」
ヴィオラ「そっちは保存用よ!観るならこっちの鑑賞用にしなさいよっ!」
ヴィオラ「どっちも同じだにゃー」
ヴィオラ「凛、その辺にしておくのよ?それ、にこが一年生の時から大事にとってた物らしいから」
ヴィオラ「ちょ、ちょっと絵里!?」
ヴィオラ「わぁ?♪ホントだっ。ほらっ、ここのカバーに日付が…」
ヴィオラ「わーわーっ!?やめてぇっ!見ないでー!!」
真姫(……)
真姫(……) カチャリ
カツン
  カツン…
651:
-生徒会室-
真姫「……」
真姫「ここに、いたのね」
真姫「…希」
希「……」 
真姫「何してるのよ」
希「んー?」
希「…別に、何もしとらんよ?」
真姫「してるじゃないの」
真姫「…何?その散らばってるタロットカード…」
希「……」
652:
希「…ねぇ、真姫ちゃん」
希「占い師が絶対にしてはいけない…禁忌って知ってる?」
真姫「…知らない」
希「…それはね」
希「自分の運命を占う事なんよ。」
希「占いっていうのは、その人のこれからの事を予測して、よりよい未来に導いてあげる為にあるもの」
希「だから、自分の運命を占ったところで、それが100%当たるだなんて証明が出来ない」
希「占い師としての沽券にも関わるし、何より信用を失ってしまうやん?」
希「世界中にいる占い師が自分の運命を占わないのは…こういう理由があるんやんな」
希「…だから、ウチは占い師…いや、まだなってはないよね」
希「カードを使う者として、…失格だね」
653:
真姫「…占ったの?」
真姫「自分の、これからの事…」
希「……」
希「タロット占いって、普通は一回一回結果が違うんよ」
希「だから、2度占う事は絶対にしてはいけない…あっ、これも禁忌やったね」
希「…不思議なこともあるもんやなぁ」
希「何回やっても、結果が同じなんよ」
ペラッ
真姫「…何、それ」
希「『死神』の正位置」
希「意味合い的には…終末、破滅、離散、終局、清算、決着」
希「…そして、死の予兆。」
真姫「…っ!」
654:
真姫「ふざけないでよっ!」
真姫「それで諦めるつもり!?ここまで生き残ってきたのに!」
真姫「これまで倒れていったみんなの犠牲を無駄にするつもりなのっ!?」
希「……」
真姫「希っ!」
真姫「…しっかりしなさいよっ!なんでっあなたが心折れちゃうのよっ…!」
真姫「希や海未がいなくなったら…私っ!」
真姫「私一人じゃ…何も…っ!」
希「…ごめんね。真姫ちゃん」
希「ちょっと弱気になってたんよ」
希「普段はここに…絵里ちも一緒に居たから」
希「それが急に居なくなると…ウチって、ここまで弱気になってしまうんやね」
真姫「馬鹿っ…私だってっ…!」
希「…帰ろっか、真姫ちゃん」
真姫「……」
655:
-帰り道-
テクテク
希「…今日、海未ちゃん来なかったね」
希「大丈夫なのかな?」
真姫「……」
真姫「…メールは、来てた。」
真姫「今日は学校、休みますって…」
希「…そっか」
真姫「…ねぇ、今日は作戦。立てなくていいの?」
希「うーん、そうやんなぁ」
希「ウチが思うに、もうこれ以上の推測は意味がないと思うんよ」
真姫「…どうしてよ」
希「これまで、色んな仮設を立ててきたけど」
希「実際、殆ど裏目に出てきてるやん?」
真姫「……」
希「もしかしたら、ウチらの考えは魔女に読まれてて…それが原因でみんな倒れてしまったのかもしれない」
希「だったら、敢えて敵に情報を与えずに挑むってのも作戦の一つだとは思わない?」
真姫「…言えない、訳じゃないけど」
希「うんうん。後は自分を信じるだけやね♪」
希「じゃあ、ウチはこっちやから。またね真姫ちゃん」
真姫「…うん、じゃあ」
希「?♪」
タッタッタ…
656:
真姫「……希」
真姫「本当に…諦めてないわよね」
真姫「…運命を、受け入れる…なんて」
真姫「……っ」 タッタッタ
真姫「はっ…はっ…はっ…!」 タッタッタ…!
真姫「はああああああああああああああっ!!!!」 ダッダッダッダッ!!!
真姫「はぁ…はぁ…はぁっ…!」
真姫「私は…死なないっ!」
真姫「あんな意味分かんない所でっ!絶対!」
「絶対にっ!死んでやらないんだからっ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
660:
-???-
真姫「……」
真姫「…ここも、寂しくなったわね」
海未「……」
真姫「…海未」
海未「…来ていましたか、真姫」
真姫「うん」
真姫「…貴女、大丈夫なの?」
海未「私は大丈夫です」
海未「すみません…今日は学校、休んでしまって」
真姫「いいのよ」
真姫「…今日は、行かない方がよかったと思うから」
海未「……」
希『………』
海未「始めは希、ですか」
真姫「……」
海未「真姫?」
662:
真姫「ねぇ、海未」
真姫「貴女は」
真姫「諦めたり、しないわよね…?」
海未「諦める?」
海未「…まさか…希」
真姫「……」
海未「有り得ません。」
海未「私はどんな事があろうと、決して諦めない」
海未「たとえ一人になっても、必ずここから抜け出し、全員を助け出す方法を見つけ出してみせます」
海未「…この手に、そう誓いましたから」
663:
真姫「…うん」
海未「安心して下さい。…必ず救いはあります」
真姫「そうね」
真姫「…それよりその手、治ってないじゃない」
海未「えぇ。」
海未「現実世界では怪我をしていない事になっていましたからね…治療のしようがありませんでした」
真姫「…そう」
希『………』
真姫(…希)
真姫(貴女は今…何を考えてるの?)
664:
-血の水場-
ピチャン
  ポチャン…
希「……」 
希「このおたまじゃくし、死んでる」
希「それに、大量になんていない。…浮かんでるのは、三匹だけ」
希「……」
希「私には、話しかけないんだ」
希「…そんな事しても意味がないって言いたげだね」
ヴィオラ「……」 ガチャ
希「…そう」
希「それが魔女。…よく分かった」
666:
-廊下 牢獄前-
ヴィオラ「……」 テクテク
希「…この靴で、あの通路を」
 カタ カタ
  
  カタ カタ
希「……」
希(椅子が揺れた)
希(死の、前兆…)
希「…っ!」 ダッ
ガタンッ!!
希「はっ!」 ダッダッダッ!

 ゴ 
 ゴ
 
  ドドドドッ!
希「私をっ!馬鹿にしてないっ!?」
希「三度も同じ手に引っかかるほどっ!阿呆じゃないよっ!」
ヴィオラ「……」 ダッダッダッダッ
667:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
希「…随分と、諦めが早いんだね」
希「ここまで素直に引っ込んでくれると、もっと疑いたくなるんだけどなぁ」
ヴィオラ「……」
ヴィオラ「……」
希「…でも、何度来ても一緒」
希「こんな事で運命だなんて言ったら、神様に怒られちゃう」
668:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴィオラ「……」
希「…よし」
希(靴は履いた…これでここから先は行けるはず)
ガチャ
-毒の水溜り廊下-
希「…っ」 テクテク
希(歩けるけど…毒が回ってない訳じゃない)
希(早く渡らないと、この毒素にやられてしまう…でも、何でだろう)
希(…上手く、歩けない)
ヴィオラ「……」 テクテク
希「げほっ…も、もっと早く」
669:
ヴィオラ「……」 テクテク
希「はぁ…はぁっ…げほっ!」
希「まだ…なのっ…」
希「早く…しないとっ…」
ヒュン
希「…え?」
   ドチャ
希「……」
希「…ぁ…ぁあ…あああっ!!」
希「がふっ…!ぎっ…!ぁ…あああああっ!!」
ヴィオラ「……」 テクテク
670:
パリンッ
…ガラスの靴は粉々に砕け散った。
希「ひっ…がっ…ぁ…あ…っ!!」
バタンッ
-造花の小部屋-
ヴィオラ「……」
希「げはっ!げほっ!かふっ…かふっ…!」
希「はぁ…はぁ…はぁ…はぁっ…!」
希「…酷い」
希「こんなっ…!よく…思いついたなぁ…!」
希「ハラワタが…煮えくり返りそうっ…!」
希「うっ…ぐっ…ぁ…あああっ!!」
希「うわあああああああああああああああっっ!!!」 ガンッ! ガンッ!
671:
…薔薇の造花で囲われている小さな小部屋に、希の大きな悲鳴が響き渡る。
希は毒の廊下を渡りきると、先程受けた屈辱に対しての怒りと悲しみを全て扉にぶつけ始めた。
魔女の家では与えられたものにしか動かす事が出来ず、物を投げるという行為が出来ない…
それを理解した上での行動だった。
…廊下を渡っている最中、頭上から何かが落ちてきた。
それは重力に従って落下し、鈍い音を立てて床に転げ落ち、希の進行を阻止するかのように行く手を塞いだ。
希は、その落下物の正体を知っていた。
他人との距離感が分からずに、周りに溶け込めず、排他的な態度を取り自分を守ろうとする。
そんな自分と似た面倒な性格で、希の友達だと胸張って言える存在
――銃殺された、絢瀬絵里の死体だった。
673:
希「う゛っ…くっ…うううっ!!」
希「うぁう゛っ!あ゛あっ!あああっ!!」 ガンッ! ガンッ!
あの場で驚愕し、立ち止まっては自分の命が危ない。
そう感じていた希に余計な時間など無く、無駄な動きをせずに進む必要があった。
だから、踏み越えてきたのだ。
友達だった人間の屍をガラスの靴で踏みつけ、脇目も振らずに扉の先にへと進む。
…そうせざる負えないように仕組まれた、魔女の罠だった。
希「はっ…はっ…はぁっ!」
希「はぁ…はぁ…はっ」
希「…あは、あはははっ」
希「はははははははっ!!!アハハハハハハッ!!」
希「あはははははははははははははははははっははははははははははっ!!!!」
希「…ふふふっ、私がこんな事で泣くと思った?」
希「寂しいのは、慣れてるんだよ。辛いのは、慣れてるんだよ。」
希「私を馬鹿にしたら……『いかんよ』?」
ヴィオラ「……」
希「…でも、そうだなぁ」
希「私の友達を侮辱した償いは……絶対に払って貰うからね」
674:
希「……」
希(ここは…何?)
希(小さい部屋に、造花の薔薇がびっしりと)
希(…少し、気味悪い)
希(…切り株に、猫の毛がある)
希(ここに黒猫がいたのかな?)
希(そして)
希「…魔女の、日記」
ヴィオラ「……」 ペラッ
675:
   ― 彼女は ×さない ―
    ― だって 彼女は ―
  ― 私を この病気から 救ってくれるから ―
  ― 私は 彼女と ''友達''になることにした ―
希「……」
希「友達」
希「あなたの言う、友達って何?」
希「こんな場所にこの子を閉じ込めて、悪事を強要させてあの手この手で殺そうとする」
希「それが友達にすることなの?」
676:
ヴィオラ「……」
希「…もし、私の声が届いてるのなら」
希「もう一度考えて。…本当の友達の意味を」
ヴィオラ「……」 ガチャ
希「……」
   「''友達''って何だろうね。」
希「……」 
バタンッ
677:
-薬品庫-
希「…ここは」
ヴィオラ「……」
希(…数え切れない程のビンの量)
希(見ただけで分かる…ここは、収納室)
希(薬だけじゃない…何かの肉片や骨までびっしりと保管されてある)
希「…『私は病気だから』ってのは、本当の事みたいだね」
希「でも、この子が魔女の病気と何で関係があるの?」
希「……」
ヴィオラ「……」 カタンッ
希「全部調べてみないと分からない、か…」
678:
ヴィオラ「……」 カタンッ
希「…頭痛薬、睡眠薬、鎮痛剤」
希「…これは止血剤かな?後は…」
希「…目薬」
希「何でこんなに沢山」
   ゾワッ 
希「……っ」 ブルッ
希「今…誰かに見られてた」
希「…また、かぁ」
ヴィオラ「……」
希「…次は、この戸棚」
679:
カタンッ
希「…喉を××薬」
希「なに…これ?」
希「…危ないから、置いておこう」
希「×膚炎に塗×薬」
希「文字が掠れてるけど…これは恐らく、皮膚炎の薬」
希「…包帯や消毒液もあったから、病気は皮膚に影響のあるものだったのかもしれないなぁ」
希(…後は、骨や肉を詰め込んだビンが羅列してあった)
希(実験でもしてたのかな…いかにも魔女ってイメージを出してる)
ヴィオラ「……」 カタン
希「でも、ここだけは違う」
希「魔女とかそんなの関係ない…そんな気が漂ってる」
680:
希「…血で汚れた戸棚」
希「微かに香る、甘い香り…」
ヴィオラ「……」 カタンッ
…棚の奥に小さなビンが入っている。
希「…その正体がこれ?」
希「こんな可愛い小瓶が…どうして」
【可愛い小瓶を手に入れた】
希(……) 
希(でも、どうしてだろう)
希(この瓶を持ってると、なんだか安心する)
681:
希「…全部調べ終わったかな?」
希「でも、この瓶は何処で…」
ガシャンッ!!
希「っ!?」
希「なっ…!」
希「何、これ」
希「何で、人形の首が、飛んできて…」
ヴィオラ「……」
682:
希「…これって」
希(海未ちゃんが台座に乗せた人形の顔と一緒…!)
希(一つ空いていたのは…この人形のスペースだったんだ)
希「…でも、胴体は」
【人形の頭を手に入れた】
ガタンッ!
希「どこにあるのかなってっ!!」 ダッ
ヴィオラ「……」 ダッダッダッダッ!
683:
バタンッ
希「……ふぅ」
ダン! 
  ダン!
 ダン!
ダン!
  ダンッ!!
希「なっ!」
希「もうっ!しつこい!」
ヴィオラ「……」 ガチャ
…人形の首を拾うと、目玉のような何かが希に向かって襲いかかってきた。
しかしそれを希は予測していた。目薬を調べた時から自分を見つめる視線に注意を払っていたのだ。
瓶を手に取る瞬間、人形の首を拾う瞬間一つ一つに気を配らせ、自分がいつでも逃げることができるように…
…希は分かっていた。
自分に迫る「死の予兆」は、こんなものでは無いと。
-小部屋-
ヴィオラ「……」
希「なっ…何、これ…は…?」
684:
…希が小部屋に戻ると、辺りは紅色で染まっていた。
まるで血の雨でも降ったかのように、地面を、植物を、壁を染め上げていた。
希「…どういう事?」
希「さっきの目玉のせい?」
希「それとも…」
希は可愛らしい小瓶を手に取り見つめる。
思えばこの家にある持ち物を自分の手で手にするのが出来たのはこの瓶だけだったかもしれない。
今まで見つけてきたもののどれもがこの少女が扱ってきたので、自分達は触れることもできなかったのである。
希「……」
瓶の蓋を開けると、中には何も入っていなかった。
しかし香水とは少し違う甘い香りが漂い、匂いは切れることなく希を包み込んだ…
希「…この匂いは、まるで」
ヴィオラ「……」 ガチャ
685:
-水溜りの廊下-
ヴィオラ「……」 テクテク
希「……」
希(あの毒々しい色の靄が消えて、普通の廊下になってる)
希(…まるで役目を終えたかのように…この通路自体が死んでるみたい)
希「…あ」
希「こんな所に部屋が…あの衝撃で周りが見えてなかったんだ」
希「……」
希(でも、それで良かった)
希(もしこの扉が目に入ってたなら…こっちに進んでしまう可能性もあった)
希(不幸中の幸い…私、こんなのばっかりだね)
ヴィオラ「……」 ガチャ
希「…じゃあ、この先には」
686:
-水の流れる部屋-
希「…あった」
ヴィオラ「……」
希「人形の…胴体」
【首なし人形を手に入れた】
希「…次は何が来」
ザザザザザザッ!!
希「ひっ!?」
希「きゃあ!!ちょ…!やだっ!」
希「…ぁ…う、ううっ」
希「忘れてた…こんな事も、あり得るんだって」
ヴィオラ「……」
687:
希「…スゥ…ハァー」
希「…気を取り直して、この人形の首を」
ヴィオラ「……」 ガポッ
希「…はまった」
【人形を手に入れた】
,
688:
希「…うん」
希「後は…これを台座に乗せるだけの筈」
希「…終わりが、近づいてる」
ガチャ
希(…あれ)
希(そういえば…何か忘れてる気がする)
希(何だっけ…一瞬で思い出せないから、そんなに気にすることでもないような気もするけど)
ヴィオラ「……」 バタンッ
689:
-園庭-
希「……」
希「ここも、なんだね」
希「すごく、怖い…」
植物を食べ元気に羽ばたいていた小鳥は消え、老樹は紅く染まり何も喋らない。
地面も植物も先程の小部屋と同じように染まっていた。
…唯一色に染まらず美しく飾られている造花の薔薇が、園庭の雰囲気を異様なものにしていた。
ヴィオラ「……」
希「…ここまで変わってるなら、他の部屋も色々変わってるのかな」
希「一応、調べた方がいいかもね」
ヴィオラ「……」 ガチャ
希「…うん、一番気になる所は、ここ」
690:
-廊下 牢獄前-
カサカサ
 カサカサ
希「……」
希「牢屋が、赤く染まってる」
希「ぐちゃぐちゃになって、何を表してるのか、全然分からない」
希「…でも」
  おかあさんは わたしを 捨てようとした
希「…なんで」
  おとうさんは わたしを みていなかった
希「言葉が、頭に浮かんでくるの?」  
691:
希「……」
希「魔女、あなたは…」
希「あなたが、本当に求めていたものが」
希「…少しだけ、分かった気がするよ」
希「…私も、両親から【それ】を貰った記憶、少ないんだ」
希「辛いよね、…自分が寂しい時に、近くに居ないのは」
希「怖いよね、自分を見てくれる人が居ないってのは」
希「でも、私はあなたに同情なんてしない」
希「あなたが求めている【それ】は、子供が駄々をこねているの一緒」
希「その我儘が私の友達を殺した。…その事実は、変わらない」
ガチャ
希「……」
希「でも、それでも」
希「あなたが両親の事で辛い思いをした、という辛い気持ちだけは」
希「私が…ウチが慰めてあげようって」
希「そう、思ってるんよ」
バタンッ
ヴィオラ「……」
ヴィオラ「」
692:
-通路 骸骨の部屋前-
希「…そっか、あの骸骨達は」
ガタンッ!
希「っ!?」
希「また来たなぁ…でも、何度来ようが一緒」
希「ウチはみんなをっ!」 クルッ
希「 …え」
694:
…希に迫る巨大な頭骸骨。
二度三度と現れるその化物にただならぬ執念を感じ取ったが、常に同じ動きをするそれに反応する事は容易いことだった…
簡単だった。また同じように逃げ出し、諦めるまで全力で走るだけ
だが、それは不可能だった。
この通路が二手に分かれたりしていたなら、まだ逃げようがあったのかもしれない
幅が広く、化物との隙間があればくぐり抜け逃げることができたのかもしれない。
希は狭い一本道で、【二つ】の化物に襲われた。
前に一匹、後ろに一匹。
巨大な頭蓋骨が、希を挟むように襲いかかってきた。
695:
希(……)
希はその場に立ち尽くし、両端から迫る化物を向い受ける。
頭蓋骨達は度を落とさず、ただ真っ直ぐと道を進んできた。
希(…あぁ、そうだった)
やがて二つの頭蓋骨は希の一歩手前まで距離を縮める。
強靭な顎が希の頭上で大きく開き影となった。
希(今日は)
後ろの頭蓋骨もまた、希の胴体に喰らい付く為に大きく口を開ける。
鋭い歯は希の腹部を狙い、服を抉り
  「うち、 今日… 誕生日やったね。」
    しゃくっ
 
 ― 間の抜けた音と共に、二つに引き裂いた。 ―
702:
ブツンッ
・・・・・・・・・・・・・・
真姫「あ ああっ!あああああっ!」
真姫「希!のぞみぃっ!!」
真姫「うわあああああああああああああああああっ!!!」
…誰もいない空間に真姫の悲鳴が響き渡る。
かつてそこには沢山の仲間がいて、お互いに慰め立ち上がり、苦を共にしていた。
真姫「馬鹿っ…ばかっ!」
真姫「あれほどっ!あれほど言ったのにっ!」
真姫「何でっ…どうしてっ!!」
真姫「どうしてなのよおおおおおおっ!!!」
だが、真姫を慰める人間は残っていなかった。
次々と家に取り込まれていく仲間をその目で見届け…気がつけば残り二人になっていた。
自分の隣にいた最後の仲間は連れ去られ、しんとした雰囲気が真姫を包み込む。
真姫「ひっ…あっ…嫌っ…嫌ぁ…」
真姫「出して…誰か…私をっ…助けて…」
最早、この空間に語りかけてくれる人間などいない。
真姫は悲しみに打ちひしがれ、壁と思われる物に手を付け泣き崩れた。
ザラザラとした感触が真姫の手の平に傷をつける。
ずるずると壁に引きずった手は、針でも刺さったかのように皮膚を破いた。
703:
…そして、無慈悲にもそれは映り始める。
信頼していた二人の友人を失い、怒りを押し殺し決意へと変えて…
無表情で、この赤色に染まった部屋を歩いている
―園田海未の姿が、そこにあった。
705:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「僕はね。」
「君がうまくここから逃げれようが、
 この家に食われようが、かまわないんだけど。」
「どちらかというと、ね?
 君に逃げてもらいたいなあとおもってるんだよ。」
海未「……」
ヴィオラ「……」
黒猫「ま、死なないでよ。」
海未「今のは、私に対しての言葉ですか」
海未「それとも、その人形に対してですか」
ヴィオラ「……」 ガチャ
海未「…まぁ、どちらでも構いません」
海未「私は、この家に魂を捧げるつもりなどありませんから」
706:
-人形の部屋-
海未「……」
海未「穂乃果」
海未「貴女は、私とずっと傍に居てくれる」
海未「そう、言ってくれましたよね?」
ヴィオラ「……」 ゴトッ
ゴ ゴ ゴ ゴ 
…台座が移動し、大きな穴が現れた。
海未「約束、破らないでください」
海未「私が必ず救い出してみせます。だから、今度こそ…」
707:
-魔女の部屋への道-
海未(……)
海未(暗い)
海未(何も、見えない)
テクテク…
海未(怖い)
海未(辛い)
海未(苦しい)
テクテク…
海未(悔しい)
海未(泣き叫びたい)
海未(逢いたい)
海未(逢いたい)
ヴィオラ「……」 ペラッ
   【わたしの へやまで おいで】
海未「…救いたい」
海未「穂乃果を…ことりを…みんなを」
海未「私の仲間をっ…今すぐ返せぇっ!!!!」
ガチャ…バタンッ
708:
-魔女の部屋への道 廊下-
海未「…外が、明るい」
海未「……」
ヴィオラ「……」
海未「……」
扉の前に、黒猫の死骸があった。
つい先日の私なら、悲鳴を上げて震え上がり、穂乃果やことりに飛びついていたかもしれない。
…今、私の隣に二人の友人は居ない。
訳も分からずに連れてこられたこの家に、奪われたから。
海未「……」 グシャ
私はその死骸を踏み潰した。
タンパク質独特のぐちゃっとした感覚に鳥肌が立ったが、その他に感じるものは無かった。
…もしかすると、私の心は既に壊れてしまったのかもしれない。
私の前に歩いているこの少女と同じように、自分は動くだけの人形に成り果てたのだろうか。
海未「…今更、どうでもいい事です」
海未「全て…そう、全て終わらせれば」
海未「また、みんなで、一緒に」
ガチャ
711:
-魔女の部屋-
海未「……」
海未「無残なものですね」
海未「これが魔女の部屋ですか…子供が見たら、泣き叫びますよ」
魔女の部屋と思われる場所は、酷く荒れていた。
ベットのシーツからカーペット、枕にかけて血で汚れ、水の入ったコップが転げて中身がこぼれている。
誰かが座っていたと思われる椅子は倒れており、人の気配はない。
…まるで殺人現場のような光景が、そこには広がっていた。
ふと、海未は机の方に目を向ける。
そこには、これまで何度も仲間が読んできた、辞書のように分厚い日記帳が置かれていた。
海未「……」
海未「私が読むのは初めてですね」
海未「魔女の、日記」
ペラッ
…海未はその日記帳を開き、文字のあるページまで捲り始める。
712:
  ― 私は 病気で 死ぬ ―
   ― だから ―
 「彼女の 体を もらうことにした」
 「彼女の 体で 生きることにした」
   「いいよね」 
 『だって 私たち ''友達'' だから』
  『私に 体 くれるよね』 
   『''友達''だから』
 【だから 今日も 遊びに来てくれたんでしょ?】
 
  【ねぇ ヴィオラちゃん】
.
713:
―バリンッ!
海未「っ!?」
悍ましい内容の日記を読み終えると、魔女の部屋のガラスが大きな音を立てて破れた。
ぼんやりと光が差していた部屋には靄がかかり、一瞬にして不穏な空気を作り上げた。
ずる、ずる…と何かが蠢く音がする
それは聞いたこともない、肉と骨が床を擦りつける音
…下半身のない女の子が、そこにいたのだ。
『 …ガぁッ …ぅう゛ … … ぅぎェ… 』
海未「ひっ!?」
海未「ひ…あっ…はっ…がっ…!」
海未「や、やめっ…こなっ…こっちにっ…こっちにこないでっ…!」
714:
…謎めいた音が部屋中に響き渡る。
聞いたこともない音に海未は恐怖し、悲鳴を上げることすら出来なかった。
震えながら海未はその音を発しているものに目を向ける。
ぐちゃ、ぐちゃ…
内蔵がはみ出し、 両目は潰れ赤黒く染まり空洞が出来ていた。
化物と呼ぶに相応しいその身体は、潰れた瞳で海未の元へと確実に迫ってくる。
   そして それは
  人間の形である事を忘れたかのように
  ×××××を求めて襲いかかってきた。
718:
・・・・・・・・・・・・・・・・・
海未「はぁ!はぁっ!はぁっ…!」
海未「がっ…はぁっ!はぁっ!」
海未「ど、どこっ!何処に逃げればっ!」
気がつけば無意識に部屋を飛び出し、海未は来た道を全力で走り出す。
扉を強く占めた筈なのに、下半身のない少女は勢いよく扉を開け、なおも追いかけて来る。
何故、目が潰れているのにこっちに向かって来ることが出来るの?
どうして、その身体で恐ろしい程の早さが出せるの?
理屈では考えられない動きと想像を超えた化物のさに、海未は混乱している。
先程までの決意や余裕は一瞬にして吹き飛び、壊れかけていた感情は魔女によって強引に甦させられた。
ああ、この家はどこまで人間の心情を掌で転がしているのだろうか
花瓶は割れ壁に手形が現れ、床が崩れ椅子が勝手に動く
その一つ一つの出来事が、海未の心を蝕んていった。
逃げれば逃げるほど恐怖心は膨張し、それは身体にも影響を及ぼし始める。
足が痙攣を起こし上手く走れない、自慢の身体能力は普段の三分の一までにも落ちていた。
…捕まる。このままでは追いつかれる。
嫌だ、死にたくない、死にたくない。
もう、魔女の家なんて懲り懲りだ。私をここから出してくれ。
…そして、その願いは届いた。
階段を降り食堂を駆け抜けると、入口の扉が見えた。
―その扉の隙間には、微かに外の光が差していた。
719:
海未「や…やった!」
海未「見えたっ!見えましたっ!光がっ!あの扉に光がっ!」
海未「やりましたっ!私はっ!穂乃果!ことり!みんなぁ!!!」
海未「これでっ!これで私は―」
   バキッ
海未「  えっ」
720:
…身体は宙を舞っていた。
自分から飛んだつもりなど無い、ましてや体から飛び込むなどという愚行は今の今までした事が無かった。
だが、飛んでいた。
足は縺れ腕が交差し、何とも情けない格好をしながら…
海未は、崩れた床に足を踏み外し、体制を崩し飛び跳ねた。
―ドカッ!
海未「がっ…はっ…!」
 
扉とは正反対の方向の壁に海未の身体が叩きつけられる。
走った勢いを殺さずに飛び込み壁に衝突した為、直様に起き上がることができない。
海未「がふっ…がっ…い…た…」
海未「…は」
身体を起こそうと頭を上げたのは間違いだった。
何故なら、海未の正面には
―両目の潰れた怪物が、目と鼻の先に。
721:
「…い、いや…やだっ…やめ」
「いやああああああああああああああああっ!!!あああっ!!!ああああああああああああああっ!!!?!?!?!」
「やめてっ!やめてぇっ!!!いやだっ!やだやだやいやああああああああああああっ!!!」
「こな…がっ!!?ごっ!がっ…!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!?!!」
「や゛め゛て゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!い゛や゛ぁ゛!があああああああああああああ!!!」
「い゛や゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!ゆ…ゆる…じっ゛…!ぎゃあああああああっ!!!」
「はがっ…い゛い゛っ!?ぁあ゛ああっ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「あがっ…ごっ…ぎゅ…げっ…がっ…ひゅ…ごっ…ぉ…!」
ブツンッ
722:
真姫「な なに」
真姫「今、何が 起こって…」
プツンッ
真姫「え あ  」
真姫「う 海未…? 海未…」
…真姫の目の前に映っているのは、
倒れて動けなくなった下半身ない化物に、髪が乱れ顔が隠れ―
723:
  ―両目が赤黒く染まった、海未の姿だった―
.
726:
ブツンッ
・・・・・・・・・・・・・・・
真姫「………」
ストンッ
真姫「…もう、ダメ」
真姫「希も…海未も、居なく なって」
真姫「私…一人だけに」
グワッ
真姫「ぁ…ひっ…!」
真姫「無理よ…無理よ無理よ無理よぉっ!」
真姫「無理だって言ってるでしょ!?やめてっ!!お願いやめてっ!!」
真姫「やだっ!いやあっ!!やめてぇっ!!連れて行かないでぇっ!」
真姫「いやああああっ!!やめてえええええええええっ!!!!」
プツンッ
729:
-魔女の部屋-
『 …ガぁッ …ぅう゛ … … ぅぎェ… 』
真姫「う…ぁ…ゃ…」 
がさ、ガサと床を這いずる化物。
それは海未の身体ではなく、元の下半身のない少女のものになっていた。
その事実が真姫を自分が最後の生き残りであることを裏付け、絶望する。
真姫「…や、だ」
真姫「本当に…ホントに嫌なのっ…お願い…許して…」
命乞いをしようが泣き叫ぼうが、化物には届かなかった。
化物の目は潰れ、何かが崩れるような衝撃音が真姫の声をかき消し届かない。
真姫「ぁ…ぁ…っ!」
真姫が一歩、後ろに下がる。
それに合わせて辺りの空気が張り詰め…
―最後の死の追いかけっこが、始まった。
731:
真姫「…ぅ…ぁ…ぁあっ!」
真姫「うわああああああああああああああああああっ!!!」
真姫は走った。
海未程のさを出すことは出来ないが、自分の全ての力を出し尽くす勢いで足を動かす。
真姫「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
真姫「ぁあああああああああああああああああっ!!!あああああああ!!!!!」
化物は近づかず、遠ざからず、常に一定の度で真姫に向かって追いかけてくる。
その作られたさで這いずる姿は真姫を恐怖で染め上げる。
しかし、それよりも先に逃げることに集中した。
かつてこれほどまでに必死になったことがあっただろうか…
厨房を抜け、海未が踏み外した床を避ける。
壁の奇っ怪な手形が何度も何度も目に入るが、脇目もふらずにただひたすらに走った。
真姫「がはっ!はっ!がっ!ああっ!あああっ!うわああああああああ!!!」
やがて魔女の家の入口が見えた。
海未の時と同様にその扉の隙間には、光が差していた。
この扉が開かなければ、私は化物に殺される。
光が差しているからと言って、この扉が開く確証などは何処にもない。
私を欺くために魔女が用意した罠だとしたら、私は
732:
―扉の手を掴み、家の外へ
.
733:
――
真姫「……」
真姫「……ぁ」
真姫「……」
真姫「ここ、は」
…真姫の目に写る光景は、見慣れた天井だった。
見慣れた机、見慣れた窓からの景色、見慣れた譜面用紙。
何もかもが、真姫の私物である。
真姫「っ!?」
真姫は飛び起きた。
自分の服装は魔女の家に囚われた時の制服などではなく、昨日寝る前に着た寝巻きだった。
―ここは、私の家。
737:
真姫「…わ…わた、し」
真姫「生きて…帰って…」
真姫「っ!そ、そうだっ!携帯!」
真姫「確かめないとっ…!みんなっ!みんながっ!」 ピッ
真姫の携帯のアドレス帳には、μ's全員の名前が登録されていた。
高坂穂乃果、園田海未、南ことり、小泉花陽、星空凛、絢瀬絵里、矢澤にこ、東條希。
誰もが欠けてる事なく、画面に映されていた。
真姫「…や、やった」
真姫「やった、やったの、わたし、やったわ」
真姫「みんなっ…みんな元にっ!」
…真姫は急いで制服に着替え、音ノ木坂へと足を運ばせた。
時刻は午後3時、遅刻を通り越して欠席になっているだろう。
だけど、まだ練習は終わってない。この時間には全員部室に居るはずだ。
真姫は胸を躍らせ、学校への道を駆け出していった。
740:
タッタッタッタ…!
真姫「はぁ、はぁ、はぁ…!」
真姫「まったくー、信じらんない!」
真姫「この、この真姫ちゃんが!学校サボって部活だけ行くだなんて!」
真姫「花陽に、どうしたのって心配されるだろうなぁ…!凛やにこちゃんに、いっぱいからかわれるだろうなぁ…!」
真姫「でもっ!それでもいいのっ!」
真姫「私っ…言えないけどっ…!」
真姫「みんなに面向かって、言えないけど!」
真姫「私は!μ'sのみんなが…!」
ガチャ
741:
真姫「…あ、れ」
真姫「…ここ、 どこ?」
743:
…アイドル研究部と書かれた教室には、誰もいなかった。
人だけではない、スクールアイドルのポスターも、にこが保存していたDVDやグッズも、穂乃果が置き忘れた練習靴も、
何も、何も残っていなかった。
教室にあるのは、机と戸棚、そしてパソコンだけ。
そこは部室と言うより、空き教室に近い状態で存在していた。
真姫「……」
真姫「何よ…何よ、これ」
真姫「何で…こんな…みんなは?…μ'sは?」
真姫「私の 居場所が」
744:
ふと、机の方に目を向ける。
…そこには、一枚の紙切れが丁寧に折りたたまれて置かれていた。
真姫「  」
真姫はそれを見た事があった。
自分を、仲間を、あの恐ろしい家に送り込む元凶となったもの
…上部の破れた、手紙だった。
真姫「………」
真姫はその手紙を拾うと、中身を開いた。
仲間を失い、見事生き残り生還した者へ送られたその手紙には
―カサッ
745:
  【何も】書かれて、いなかった。
.
746:
真姫「……」
真姫「… ・・・ ・・・・」
…真姫はその場で力なく座り込んだ。
今の自分に、状況を理解する事が出来なかったのだ。
泣けばいいのか、怒ればいいのか、恨めばいいのか。
それとも、死ねばよかったのか。
…窓から吹き込む風は、その答えを教えてくれなかった。
下校時間を知らせるチャイムと、茜色に染める夕陽だけが、真姫を優しく包み込んでいた。
【To Be Continued…】
760:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁっ…はぁっ…!」
「かふっ…くっ…はっ…はぁっ…!」
長い、長い廊下を必死に走る。
壁の燭台は走った軌跡だけに光を灯し、先の道は暗闇で覆われていた。
走っても走っても先が見えない。まるでゴールのないマラソンをしている様だった。
「はっ…はっ…はぁっ…!」
「ど、どこっ…!どこまで行けばっ…!」
私は、何故走っているのだろうか。
何かに追われている訳でもないのに、どうして…
…やがて、大きな教堂が私を迎え入れる。
美しいステンドガラスから射す太陽の光が、私には希望の光の様に見えた。
761:
「はぁっ…!はぁっ…はぁっ…」
「…?…・・・・?」
今まで見た事もない、とても綺麗な教堂だった。
中央に置かれている女像は天を仰ぐ様にして、窓から照らす光の先をじっと見ている…
その姿はとても神々しく、私を心を清らかなものにした。
「…ここは、一体」
―ガシャンッ!
762:
「っ!?」
ガラスの割れる音と共に、辺りは藍色の闇に支配される。
太陽の光は一瞬にして消え去り、女像は粉々に砕け散っていた。
「な…なに…何がっ…起こって」
―ズドンッ!
「きゃああっ!?」
…天井から落ちてきたのは、猛獣を捕獲する為に作られた大きな檻だった。
太く、そして硬い鉄で出来ているそれは、私の力でどうにかなるものではなかった…
「い、いやっ…」
「出して…ここから…出してっ…!」
次々に起こる不気味な現象に、私の頭は追いつかなかった。
それでも必死にこの窮地から逃げ出そうと、私は檻に手をかける。
そして、薄暗くなった教堂から8つの影が見えた
影達は私が入っている檻を囲むように、ゆっくりと歩き始める。
765:
―どうして一人で逃げたの。
「ぁ…あっ…っ…!」
影の一人が呟くと、残りの影も思い思いに言葉を綴る。
―助けてくれると、信じてたのに。
―自分だけ逃げて、ずるいよ。
「いやっ…やめ、やめて…」
「仕方なかったの…逃げるしか…なかったの…!」
―信じてたのに。本当に信じてたのに。
―私達、みんなで一つだと思ってたのに。
私はその場で跪いた。
自分ができる精一杯の懺悔を、この影達にしなければならないから。
―私、だけだったんだ。
―仲間だと、思っていたの。
「ごめんなさいっ!ごめんなさい!」
「許してっ…!お願いっ…私をっ…!」
―友達だと、思っていたのに。
766:
   『―ねぇ、真姫ちゃん。』
.
767:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真姫「いやああああああああああーっ!!!」
「……西木野さん?」
真姫「はぁっ…はぁっ…!」
真姫「……あ、れ」
「…ふぅ。夢の世界に行くのは別に構いませんが、授業中なので静かにして下さいね?」
真姫「……」
真姫「は、い…」
768:
…教室に、私の悲鳴が響き渡った。
クラスメイトは何事かとこちらに目を向けたが、真姫がただ寝ぼけていただけと分かると再び黒板に意識を集中させた。
真姫「……」
私は今、授業を受けている。
いつもと同じ日常。同じ様な時間がゆっくりと流れていた…
そう、【同じように】だ。
「じゃあこの問題を…」
「―星空さん」
769:
真姫「……」
先生は居るはずのない凛の机に視線を向けている。
そしてその角度は段々と上へ向き、黒板の中央に視点を留めた。
…まるで、そこに何かがいると言わんばかりに。
「…はい、結構です」
「ここの助動詞は―」
答えが間違っていたのだろうか?
先生は空白の括弧に赤線だけを引き、その上に正解を板書していく。
その意味不明な行為に誰もがおかしいと異議を申し出さず、黙々とノートに写し始めた。
隣の生徒のノートを見てみると、凛が書いたと思われる間違った単語に赤線が引かれていた。
私以外には、見えている
存在しない筈の、星空凛が。
771:
――
「ねぇねぇ西木野さん、μ'sのHPみたよ!」
「みんなすごく可愛かった?。今度またライブするんでしょ?」
クラスメイトが嬉々とした顔で私に話しかけてきた。
ここ数日、人と会話するという事をしていなかったので、私は咄嗟に言葉を発することが出来ず…
真姫「…ぅん」
…なんとも情けない声を出してしまった。
「あ、何か手伝えることがあったら言ってね?差し入れとかしに来るから!」
「何がいい?小泉さんだったら…ご飯パック?」
真姫「…そうね」
「ちょっとそれは流石にダメだよ?!」 アハハハハ
そう言い残し、彼女達は自分の席に戻っていく
私の周囲は静かになり、自分だけの時間が訪れる。
真姫「……」
…空は、とても青く澄んでいる
心地よい風が窓から入り込み、私の髪を優しく靡かせていた。
773:
――
放課後、私は教室をすぐに出た。
クラスメイトにいるはずのない仲間の話をされることに嫌気をさしたからだ。
…存在しているのは、凛や花陽だけではなかった。
二年生も、三年生も、あたかもそこに存在しているかのように生徒が接していて、名簿表にも名前が記されているのを確認した。
アイドル研究部という部室も、μ'sというスクールアイドルもこの世界には存在している。
それを認識出来ないのは、私だけ。
私だけが、この現実の一部から切り離されていた。
真姫「……」 ピッ
携帯を取り出して、インターネットブラウザを立ち上げる。
ブックマークをしているμ'sのHPのURLを選択し、サイトに繋げた。
…HPにアップロードされた写真の中には
9人いる筈のスペースに8人分のスペースが空き、私一人だけが笑顔で写っていた。
774:
真姫「…どうして」
私の呟きは、誰の元へも届かない。
いや、もしかしすると私の近くに仲間がいて、普段通り喋りかけているのかもしれない。
真姫「…馬鹿じゃないの」
自分が精神異常者の様な気がして気分を悪くする
私は考えていることを振り切るように早足で廊下を駆け出した。
…あれから、部室には行っていない。
行ったところであの場所に私の居場所などないのだから。
―私は、音楽室へと足を運ばせた。
775:
-音楽室-
真姫「…ふぅ」
誰もいない、静かな教室。
ここは何も変わることなく、ありのままで私を迎えてくれる。
―私の、もう一つの居場所。
真姫「……」
グランドピアノの鍵盤蓋を上げると、白と黒だけで構成された鍵盤が私を迎え入れてくれた。
屋根を突上棒で立たせ、椅子に腰掛けながらゆっくりと深呼吸をする。
頭の中を音楽で一杯にして、自分の世界を作り上げる。
奏でられるメロディーを想像し、指に少しだけ力を入れ…
―トンッ
…音色は、響かなかった。
776:
真姫「…?」
想像していた音と明らかに違う、気の抜けた音に真姫は首を傾げた。
真姫「…んっ…しょ」
…響盤内の弦の調子が悪いのだろうか?
真姫はピアノの中を覗き込み、どこかに異常がないか調べた。
異常は何処にも見つからなかった。
目に見えない細部が故障しているのかと考え、自身の身を更に中に潜り込ませ
777:
 
   【おまえが ひくひつようはない】
.
780:
―ガンッ!
真姫「あ゛っ…がっ…!?」
グランドピアノの屋根が、真姫の頭上に落下してきた。
首が譜面台にめり込み、顔面は前框に叩きつけられる。
真姫「はっ…がっ…な、なん…で…っ」
突上棒が外れて屋根が落ちてきたのだと、最初は思っていた。
だがそれは違うのだと次の瞬間に嫌でも分かってしまう
…落ちたはずの屋根が、再び頭上で浮かび上がり、そして落下してきた。
―ガンッ!ガンッ!!ガンッ!!!
真姫「ぎゅっ!げっ!ごっ!がぁっ…ぁあああ゛っ!あ゛あ゛あ゛っ!?あ゛あ゛っ!」
ピアノは何度も何度も真姫の頭に落とし、顔をグシャグシャに潰していく。
鼻から、口から血が流れ出し、頭蓋骨にひびが入る音がした。
それでもピアノは動きを止めず、真姫の頭に屋根を叩きつけた。
…まるで、猛獣が獲物を咀嚼するかの様に
781:
突上棒が真姫の制服を掴み、響盤の中へと引きずり込む。
中の弦はピンと張られており、真姫の体重によって身体にめり込んでいた。
…この身体は、中に入るには大きすぎる。
だからと言わんばかりに、重く頑丈な屋根が再び浮かび上がった。
真姫「ひっ…ぎっ…や゛め゛っ…い゛や゛っ!お願いやめっ…!」
歯のように並んだ弦は真姫を引き裂き、鉄のように硬い屋根は
    がしゃん
  ― 真姫の身体を、血と肉片に変えた。 ―
786:
「いやあああああああああああああああああああああっ!!!」
自分の悲鳴と共に、椅子から転げ落ちた。
頭を手で抱え、保身の形を取りながら小さく蹲る。
…今、何が起こったの?
ピアノが身体を引きずり込み、プレス機のように何度も叩きつけた。
そして弦に引き裂かれ、私の身体はぐちゃぐちゃに…
真姫「…なって、ない」
791:
…私の身体は、傷一つ付いていなかった。
ピアノが動いた痕跡などは何処にもなく、私が弾く準備をしたままでそこにあった。
…ここは、夢の中なのだろうか
それとも、私は本当に頭がおかしくなってしまったのか
真姫「…誰か、答えてよ」
真姫「ここは、…【どこ】なの?」
真姫「私は…どうしちゃったのよっ…!」
…もし、今が夢の中だったら
私はまだあの悪夢から覚めていないのかもしれない。
だけど、悪夢が続いているのならば、私はあの時点で死んでいた。
私が今ここに存在しているという事実が、この部屋が魔女の家ではないという事を示している筈だ。
なら、さっきの映像はなんだったのか。
考えれば考えるほど、何もかもが理解する事が不可能になった。
何故私一人だけ見えないのか、何故私は死ななかったのか
―何故、扉の前に小さな女の子がいるのか。
792:
真姫「―っ!?」
少女は、私を見つめて笑っていた。
小さな身体はピクリとも動かず、ただじっと私だけを見ていたのだ。
真姫「あっ…ああっ…!」
真姫「あっ…あなたっ…!あなたはっ…!」
私は、その女の子を知っていた。
あの家の厨房から二階へと向かう階段を、私より先に歩いていた。
紫色の髪をした、可愛らしい女の子。
793:
真姫「な、なんっ…で」
真姫「どうしてっ…あなたがここにっ…」
私がそう問いかけると、彼女はまたにっこりと笑った。
後ろの大きなリボンが、髪を靡かせる度にひらひらと揺れている。
その屈託のない笑顔と姿に、私は少しだけ警戒心を解いて女の子に近づいた。
真姫「…えっ」
私が少し近づくと、女の子はその小さな口を動かして喋っていた。
でも、その声は全く聞こえず、口の動きだけを見て言葉を理解するしかなかった。
女の子は聞こえない事を知っているのか、一文字の間隔を空けて、口を大きく広げ
『わたしの へやまで おいで』
・・・そう、はっきりと答えた。
795:
真姫「わたしの…へや?」
真姫「―っ!?」
私は思い出したかのように驚き、尻餅をつく。
手で彼女の姿を覆い隠し、自分の視界から見えないようにしながら後退りをした。
…思い出したのだ。
私は、あの魔女の家の最後の部屋で彼女を見ていた。
両目が潰れ、足は無く内蔵ははみ出ている…
それでも尚、私を殺そうと恐ろしいさで追いかけてきた
あの化物と、同じ髪の色だった。
真姫「ぁ…ひゃ…!」
真姫「待って…お願いっ…殺さないでっ…!」
そう彼女に伝えたところで届かないことは分かっていた。
でも、そうする事でしか彼女に私の意思を伝えることができない。
『………』
小さな女の子は、私が怯えている姿を見ると軽快な動きで後ろを向き、
―タッタッタ…
音楽室を、出て行った。
796:
真姫「…えっ?」
どういうことか、理解できなかった。
彼女は私を殺しに来た訳ではないの?
私を殺し、あの家の養分にする為に現れたのではない?
だから私の部屋までおいで、と…
真姫「…っ!」
真姫「ま、待ってっ!」
私は咄嗟にそう言い放った。
来るなと言ったり待てと言ったり、自分でも意味の分からない事をしていると思う。
だけど、知りたかった。
ここは何処なのか、彼女は何故現れたのか
…私の仲間は、本当に死んでしまったのか。
真姫「お、追いかけなきゃ…!」
―ガッ
797:
真姫「きゃあ!?」
足に何かが引っかかり躓いた。
体勢を崩しかけたが、近くの壁に手をかけることで辛うじて転ぶこまでには至らなかった。
真姫「もうっ!なんなのよっ!」
私が教室に入ってきた時、足を引っ掛けるようなものは何も無かった。
怪訝な表情を浮かべながら、足元を見渡すと…
真姫「…えっ」
真姫「何で…こ…これが」
赤い表紙の、分厚い日記帳が落ちていた。
798:
日記帳は、開いていなかった。
あの魔女の家で何度も目にした、赤い日記帳…
一人の少女の記録が記されたもんが、何故ここに落ちているのだろうか。
真姫「……」
私はその日記帳を拾い、中身を開こうと手を添えた。
真姫「…あれ」
日記帳は開かなかった。
いくら表紙に力を込めても、びくともしない…
まるで、魔法でもかかっているかの様に、固く閉じられていた。
真姫「…これ、もしかして」
私は急いで廊下に出て周りを確認した。
まだHRから時間が経っていないのに、辺りは不自然に真っ暗だった。
…女の子が、階段を上がっていくのが見える。
私は見失わないように駆け足で追いかけた。
表紙が血で汚れて読めない、日記帳を持って。
799:
真姫「はぁっ…はぁっ…はぁっ!」
真姫「ちょっと…待ちなさいよっ…あなたっ…誰なのっ…!」
子どもとは思えない動きで階段を一気に駆け上がっていく少女。
そのさに負けないように私も早足で登り始めた。
…二階、三階、四階を難なく駆け上がる彼女を目で追いかけながら、練習不足の身体で必死に階段を上がる。
やがて見えてきたのは小さな鉄の扉。
ここから先は屋上に繋がっていて、私が二番目に来たくない場所だった。
ここは、μ'sの練習場所。
ラブライブに向けてみんなで団結し、一つになった、あの…
―ガチャ
800:
・・・・・・・・・・・・・・・
真姫「……」
真姫「え……えっ?」
屋上には、誰もいなかった。
辺りは暗く、夜にでもなったかのように何も見えなかった。
真姫「なに…これ」
真姫「なにが…どうなって」
一歩、また一歩と屋上を歩く。
普段と明らかない雰囲気が異なるこの場所で、私が見たものは
…人が一人飛び降りることのできる幅の、手摺の外れた空間だった。
801:
真姫「……」
真姫「…あは」
真姫「あはは…あはははは」
真姫「あはは!あははははははっ!!」
唐突に、笑いがこみ上げてきた。
何だ、そうか、そういう事だったんだ。
あの自殺する為に意図的に手摺が外されている部分を見て、すべて理解することができたんだ。
真姫「…つまり、あなたは」
真姫「私にここで死ぬか、あっちで死ぬか選べって言いたいんでしょ…?」
真姫「死に場所くらい、好きにさせてあげるって言いたいんでしょ!?」
真姫「あはっ!あははははっ!優しいのね!あなた!本っ当に優しいわ!」
真姫「あはははははははっ!!あははっ!アハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
真姫「…本当、優しくて」
真姫「もう…涙も…何も…出てこないわよ…」
802:
…悪夢は、終わっていなかった。
違う、命をかけた逃走劇は私が家を出た時点で終わりを告げた。
それは間違っていないと、確信が持てる。
…続いてなんていない。
【新たに始まっていた】のだ。
私はあの家の外に出ることができた日、部室には何も無かった。
メンバーの名残を残しているものなんて、何も…
でも、一つだけあったじゃないか。
真姫「…この、手紙が」
真姫「私が…これに触れてしまったから」
真姫「また、悪夢が…始まって…しまったのね…」
803:
…ポケットに入っている破れた手紙を取り出した。
手紙と呼ぶのも疑問に思うその紙切れには、相変わらず何も書かれていなかった。
…この手紙を無視すれば、私はひとりで生きていくことができたのかもしれない。
『魔女の家の招待状』を私が手に取り読んでしまった事によって、悪夢は再び始まりを告げたんだ。
…私が見る事のできない。8人の仲間
それは私の為に用意された虚像の駒だった。
私を含めて9人用意することが、このゲームの最低条件だったんだ。
きっと、そうに違いない。
真姫「…馬鹿にしないでよ」
真姫「私、絶対あの場所で死なないって、決めてたのよ」
真姫「何が何でも、魔女の思い通りになんて、絶対ならない」
804:
真姫「…魔女、聞いてるわよね?」
私は一歩、歩き出す。
真姫「今日眠りについたら、私はどうせあの家に連れてかれるんでしょ?」
空に向かって、大きな声で語りかける。
真姫「あの子は、それを私に教えてくれた。そして、私に死に場所を与えてくれた」
歩幅はどんどん大きくなり、屋上の端へと進んでいく。
真姫「残念だったわね、私は、あの家の養分になんかならない」
やがて、柵の外れた場所に近づいて、脱いだ靴を綺麗に並べる。
真姫「魔女の思い通りになるくらいなら、わたしは…」
腕を広げ、後ろを向き、そして―
805:
   【―この日、μ'sは…】
     『End』
.
808:
   【―この日、×××は…】
    『E×n×d×』
   
   【×この×、×××は×】
   
 
    『E×n×××』
    
   【××××××××××】
    『E×n×××』
    【やあ。】
809:
    【どうしたの?そんな不思議そうな顔をして】
 
 【…ふうん、そっか。何が起こってるのか、分からないんだ。】
   【僕はね、君を助けてあげたんだよ。】
 【魔女が君の身体を、心を、自分のものにしようとするその前に】
.
811:
???????????????
…風で木が揺らぎ、ざわざわと葉音が聞こえてくる。
辺りは美しい薔薇に囲まれていて、森の中を美しく魅せていた。
「気づいたみたいだね。」
切り株の上に乗っている黒い毛並みをした猫が、それに向かって話しかける。
…ここはどこ?
「君は知っているだろう?」
黒猫は何をとぼけているんだい?と言いたげな顔で丁寧に毛並みを整えた。
「ここは、家の外さ」
少し強めの風が吹き、カラスのような鳴き声がざわめかせる。
澱んだ空気が森中の雰囲気を異様なものに変えていた。
812:
「間一髪だったよ。」
黒猫が切り株から飛び降りると、それに向かってゆっくりと歩いてくる。
「彼女は知っていたんだ。」
「家に魂を捧げるだけでは、自分が助からないことを。」
「恐らく、魔法について書かれたノートを、強引にあの家から取り出しただと思う。」
僕が望んでいない物は与えていない筈だったのに、と黒猫は怒ったような素振りを見せてきた。
…私は死んでしまったの?
「だから、言ってるじゃないか。」
黒猫は再び切り株の上にぴょんと飛び乗りると。
「僕が助けてあげたんだ。彼女の意思から君をね。」
813:
少年のような声をした黒猫は、続けて語りだした。
「君も災難だったね」
「魔女に魅入られてしまったばっかりに、こんな事に巻き込まれるだなんて。」
「本当は君もあの家の一部になるだけの筈だったのに、彼女は君を気に入ったみたいなんだよ。」
…彼女って、誰?
「少女の名前は、ヴィオラ。」
「魔女に魅入られてしまった、可哀想な少女さ。」
悲しげな言葉とは逆に、黒猫は己の尻尾でじゃれながら楽しそうに動いた。
815:
「今、彼女は魔女に囚われているんだ。」
「魔女と深い信頼関係にある彼女は、魔法を施すのにとても適しているからね。」
「ある程度人間の魂を取り込んだ後、身体を入れ替わるつもりなんだろう。」
…魔女は、どうしてそんな事をするの?
率直な疑問を黒猫にぶつけると、意外な答えが返ってきた。
「魔女は、愛されたかっただけなんだ。」
「誰かに愛されることだけが魔女の望みなんだよ。」
「でも、魔女の身体は決して愛されることのない身体だった。だから、彼女が羨ましかったんだろうね。」
…魔女の病気は、愛されなかったことが原因。
魔女にとっての望みは愛される事。魔女が望んだのは病気が治る魔法。
「君に彼女を救って欲しい。」
816:
「魔女は、君を気に入ってる。だから、あの家に招待されたんだよ。」
「そして魔女は君の友達の魂を家に捧げて、ある程度力が溜まったら彼女を招き入れるつもりだったんだろうね。」
「でも、それは失敗に終わった。」
「君の仲間の一人が、家の外に出てしまったからね。」
「魔女はあの家でしか自身の身体を保つことが出来ない。だから、彼女の侵入を恐れた魔女は外に出た君の友達を追わずに家の扉を固く閉じた。」
「これじゃあいつまでたっても彼女が外に出ることが出来ないんだよ。」
…黒猫は後ろを向き、恐ろしい程大きな薔薇を見つめた。
「この薔薇を枯らす事ができれば、彼女は森の外へと出ることができる。」
「でも、彼女一人ではこの家に入る事が出来ない。そこで、君に頼みがあるんだ。」
黒猫はもう一度答える。
助けた恩をここで返せと言わんばかりの態度で、それに向かって言い放った。
「君に、彼女を救って欲しい。」
817:
…どうすればいいの?
「それは彼女が知っているよ。」
「彼女は魔女の友達だからね。魔女の事なら何でも知っている筈だ。」
「君は彼女の言うとおりにしてあげるだけでいい。今の魔女の狙いは、あくまでも君だからね。」
「もし、君が【上手く】彼女を救ってくれるなら。」
「君の願いを一つだけ、僕が叶えてあげるよ。」
「例えば、そうだねえ」
「君の友達を、元に戻してあげる。なんてどうかな?」
820:
…森をざわめかせる風が止んだ。
足は地面を踏みしめ、開いていた掌をぎゅっと握り締める。
「魔女の名は『Ellen』。愛されることを望み、愛される身体を求めた女の子。」
森の先には、魔女の家が見える。
不気味な瘴気が漂うそれを睨みつけ、心に決意を刻み込んだ。
「魔女の家は悪魔が魔女に与えた魔法。魔女自身が姿をあらわすとき、魔女の家は元の姿に戻る。」
やるったら、やる。
今まで出来ないと思っていたことを、出来ると信じ、それを実現してきた。
「僕は魔女と契約を交わしているから、直接手を加えることは出来ないけど。」
目を閉じて、夢から覚めるのをじっと待つ。
自分の役割を、そして、自分の役目を果たすために。
「それでも、彼女に逃げてもらいたいという気持ちは本当なんだ。」
821:
    「じゃあ、頑張ってね。」
.
823:
・・・・・・・・・・・・・・・
…何時まで私は、この澱んだ空を見上げていればいいのだろうか。
死ぬことを選んだ私は、屋上から飛び降り命を投げ捨てた。
あの家で死ぬくらいなら、自分の好きな場所で死にたかったから。
もしかすると、私はもう死んでしまってるのかもしれない。
魂と体が分離して、天に召されている途中なのだろうか。
だから、最期に見えるのはこの大空。
まるで私の心を映しているかのように灰色で、とても悲しい空。
…私って、こんなにもロマンチストだったんだ。
海未と一緒に歌詞を考えたりしたら、とても楽しかったかもしれない。
ふふ…穂乃果にこの事を話したら、どんな答えが返ってくるのかしら?
恥ずかしくて絶対言えないだろうけど、彼女だったら
「…すっごくいいと思う。それ、とっても面白そうだねっ」
―そう、答える筈よね。
824:
――
真姫「……えっ」
聴こえる筈のない声が真姫の耳に届いた。
この世界には自分一人、私だけが生き残っている…
そう思い込んで命を投げ捨てたのだ。
真姫の手は、何者かによって掴まれていた。
彼女を引っ張る力は、真姫の体制を徐々に起こし、再び屋上の地に足を踏み入れさせる。
「でも私、歌詞を作っても歌う人がいなかったら寂しいと思うの」
空は、夕日で赤く染まっている。
屋上から見える夕焼けはとても綺麗で、目を前に向ける。
夕陽と同じ山吹色の髪の色をした、私に居場所を与えてくれた人。
穂乃果「そうだよね、真姫ちゃん」
―高坂穂乃果が、そこにいた。
830:
真姫「ほ、ほの…か」
真姫「な、なんで…どうして、ここにっ…!」
予想だにしていなかった人物を目にして、真姫は混乱する。
彼女は、魔女の家に取り込まれで死んだ筈だ、それを真姫は自分の目で確かに見た。
穂乃果「…戻ってきたよ」
穂乃果「真姫ちゃんを、みんなを」
穂乃果「あの家の悪夢から、救うために」
…高坂穂乃果は、はっきりとそう答えた。
普段のふざけた彼女からは聞くことは出来ない、強くて頼もしい声だった。
真姫「う、嘘…嘘よっ」
真姫「だって…あなたは…あの時にっ…!」
穂乃果「……」
真姫「ねぇ…あなた、本当に…」
真姫「本当に…穂乃果なの?」
835:
穂乃果「μ'sはみんなが歌って、みんながセンター」
穂乃果「誰か一人が欠けたら、それはもう私達じゃない」
穂乃果「私達は9人で一つ。その事実は変わらない」
…一つ一つの言葉が、真姫の心の闇を晴らしてゆく。
穂乃果「穂乃果は、それをもう一度叶えるチャンスを掴んだの」
穂乃果「あの家に囚われている女の子を救えたら、みんなの魂を元に戻す」
穂乃果「あの黒猫は、穂乃果にそう約束してくれた」
虚無で狂いかけていた彼女の心は、小さな太陽の輝きによって自身を取り戻そうとしている。
穂乃果「でも、それだけじゃない」
穂乃果「私はみんなの魂だけじゃなくて、あの子も救いたいと思った」
穂乃果「魔女に狙われたあの女の子も、みんなも、穂乃果にとっては同じ…救いたい命」
…聞こえるのは、彼女の本心。
真っ直ぐの一本柱で、決して揺らぐことのない信念。
穂乃果「私の力で助けることが出来るなら」
穂乃果「私はやる」
穂乃果「やるったら、やるんだっ!」
837:
真姫「穂乃果…ほの、かぁ…!」
真姫「うっ…ぁ…ああっ…!」
真姫「うわああああああああああああああっ!!!!」
真姫は穂乃果に抱きつくと、大声で泣き叫んだ。
穂乃果はそれを受け止めると、真姫の頭を優しく撫でる。
穂乃果「…ごめんね、辛い思いをさせて」
穂乃果「悲しかったよね…誰もいないμ'sなんて」
真姫「馬鹿っ!寂しいなんてものじゃないわよぉ!」
真姫「私の…生きてる意味がっ…なくなるくらいっ…」
真姫「私はっ…みんなの事がっ…!」
穂乃果「…うん、分かってる」
真姫「ほんとに…ほんとに恐かったんだからぁっ…!」
真姫「あっ…ああっ…うぁぁぁっ…!」
838:
…真姫が一頻り泣き叫ぶと、沈黙が訪れる。
二人は肩を寄せ合い、山に沈んでいく夕日を見つめていた。
真姫「…これから、どうすればいいのよ」
真姫がそう呟くと、穂乃果はすぐに答えた。
穂乃果「簡単だよ」
穂乃果「今日は家に帰って、ベットで眠るだけでいいの」
真姫「っ…!」
真姫「でも、それじゃあまた、あの家に行く事になるじゃないのよっ!」
真姫「嫌よっ…私、もう…あんな所にっ!」
穂乃果「大丈夫だよ」
真姫の恐怖で硬った表情とは逆に、穂乃果の声は冷静さを保っていた。
穂乃果「…多分、あの家に入るのは穂乃果だけ」
穂乃果「真姫ちゃんはずっと見てくれるだけでいい…穂乃果の、頑張る姿を」
839:
真姫「…なんで、そんな事」
穂乃果「教えてくれたの」
穂乃果は立ち上がると、夕日に向かって手を振り上げる。
穂乃果「…魔女には、穂乃果が必要なんだって」
穂乃果「どうして穂乃果なのか分からないけど…でも、それって穂乃果以外の人間はいらないって事でしょ?」
穂乃果「だからあの家に最初に連れて行かれるのは、私」
穂乃果「今は、それだけ分かっていればいいと思うんだ」
再び穂乃果は真姫の方へと向き、真姫の手を取り身体を起こさせる。
840:
真姫「…穂乃果」
握った手は、とても力強く感じた。
彼女の意思が、真姫の恐怖心を取り除いてゆく。
穂乃果「…いこう、真姫ちゃん。」
「もう一度、魔女の家にっ…!」
【To Be Continued…】
856:
私の目は もういらない
私の足も 必要ない
あなたの目で 見ればいい
あなたの足で 駆ければいい
だから 私に頂戴
あなたのぜんぶ 私に
858:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
-???-
真姫「…ん…ぅ…」
真姫「……」
ムクリ
真姫「…ここ」
真姫「っ!?」
穂乃果『………』
真姫「嘘っ…本当に穂乃果がっ…」
穂乃果『…あなたが、ヴィオラちゃん?』
.
859:
-森-
穂乃果「……」
「……」
「ふうん、今度は私が見えるんだ」
切り株に座り薔薇を見つめていた少女は、声をかけられた事に気がつくと穂乃果の方へ目を向ける。
これまで彼女が喋っている事を見たことがなかった穂乃果だが、不思議と驚いた様子は見せていなかった。
穂乃果「……」
「という事は…ふふっ」
「そっか、…やっと私入れるんだね」
少女が腰を上げると、穂乃果に近づくために足を運ばせる。
そして、ゆっくりと顔をあげ丁寧にお辞儀をした。
ヴィオラ「こんにちは。私の為にありがとう」
穂乃果「…ううん、これは穂乃果の為でもあるから」
ヴィオラ「そっかあ…ふふっ」
860:
少女は含んだ笑いをすると、改めて穂乃果の顔を見つめた。
物の品定めをするかの様にジロジロと目を動かすと、小さな声で穂乃果に呼びかける。
ヴィオラ「ねぇ」
ヴィオラ「私と、友達になってくれる?」
穂乃果「…えっ?」
突然の申し出に穂乃果は困惑する。
驚いた顔を見たかったのか、ヴィオラは屈託のない笑顔を見せながら話を続けた。
ヴィオラ「ふふっ。…ごめんね。びっくりしたでしょ?」
ヴィオラ「私、あの子以外の友達って、知らないから」
ヴィオラ「だから、あなたが友達になってくれたら…とっても嬉しい」
…ヴィオラの表情は笑っていたが、その瞳は虚ろに輝いている。
寂しさを醸し出すその声に、穂乃果が答えを出のは容易なことだった。
穂乃果「…うん。いいよ」
穂乃果「私も、ヴィオラちゃんが友達になってくれたら、とっても嬉しい」
穂乃果は彼女の友達になることを承諾する。
それがこの子にとって大きな支えとなるのならば、お安い御用だと考えた。
861:
ヴィオラ「…ふふっ。ありがとう」
ヴィオラ「とても優しいねの…あなた」
穂乃果「そうかな」
穂乃果が自分の素直な気持ちを告げると、ヴィオラは続けて自信なさげに語り出す。
ヴィオラ「普通、いきなり友達になろうだなんて言う女の子…気持ち悪くならない?」
穂乃果「ううん。そんな事ないよ?」
穂乃果「…私は、素直でとってもいい子だなって思ったから」
ヴィオラ「そっか。ふふっ…ありがとう」
穂乃果「ううん、こちらこそっ」
お互いに笑みを交わすと、穂乃果とヴィオラは森の奥に見える大きな家を見つめる。
辺りは相も変らず澱んでおり、不穏な空気に包まれていた。
ヴィオラ「じゃあ、そろそろ行こう」
穂乃果「…魔女の、家に」
二人の少女は歩き始める。
人の生命を喰らう魔の巣窟に入る為に…
862:
-???の家 入口-
穂乃果「…あっ」
黒猫「」
穂乃果「…黒猫」
ヴィオラ「話しかける必要はないよ」
穂乃果「えっ?」
ヴィオラ「【あれ】は、私には必要のないものだから」
穂乃果「…どういうこと?」
ヴィオラ「ふふっ。…だって」
今まで命をつなぎ止める為に話しかけていた黒猫に、ヴィオラは目もくれずに魔女の家の入口に立つ。
立て付けの悪くなった不快な音が、穂乃果とヴィオラを出迎えた。
「私が、この家で殺されるわけがないのだから」
ガチャ…バタンッ
863:
-魔女の家 入口-
ヴィオラ「…ふうん。ここはいつもどおりなんだ」
家に入ると、穂乃果達が隔離されていた部屋で映像として映された小さな部屋に足を踏み入れる。
そこは以前と変わらず、部屋の中心に血痕が残っていた。
穂乃果「…うっ」
ヴィオラ「ここは一番人間が死んでいったから、血がこべり付いてるのよ」
ヴィオラは何も感じていない仕草を見せて、奥にある貼り紙に目を向けた。
穂乃果「……」
ヴィオラ「わたしのへやまでおいで…かあ」
ヴィオラ「ふふっ…こんな事書いてるのに、今まで私を入れてくれなかったなんて」
ヴィオラ「おかしいなあ…ふふっ」
穂乃果「…ねぇ、ヴィオラちゃん」
穂乃果「本当に…この家に入るの、初めてなの?」
864:
…穂乃果達は、何度もこの少女の存在を目にしている。
何も喋らず反応も示さなかったが、常に自分達の前を歩き共に行動してきた。
ヴィオラ「うん。あの子が私を閉じ込めてからは、一度も入ってない」
穂乃果「でも、それだとおかしいの」
穂乃果「私達は、この家でヴィオラちゃんとずっと一緒に行動してたから」
穂乃果「同じ場所を歩いて、道具を使って…私達は、ずっとヴィオラちゃんを見てきた」
穂乃果「これは…どういう事?」
ヴィオラ「私に聞かれても困るよ」
ヴィオラはそう一言呟くと、部屋を出るために元来た扉を開けた。
ヴィオラ「でも、考えられるとしたら…そうだね」
ヴィオラ「滞りなく人間を家の罠に誘導するために…魔法で作られた私の幻」
穂乃果「……っ」
ヴィオラ「さあ、早く行こうよ」
866:
ガタンッ
ドンッ
  ドンッ
 ドンッ
 
穂乃果「はあっ…はあっ…はぁっ…!」
ヴィオラ「……」
穂乃果「ふぅ…ふぅ…」
穂乃果「…全然疲れてないね。ヴィオラちゃん」
テディベアの化物を切り抜けると、全く疲れを見せないヴィオラに穂乃果は話しかける。
あれだけのさで追いかけられていたにも関わらず、ヴィオラは汗の一滴も出していなかった
…あのぬいぐるみが、私を殺せるわけないじゃない
穂乃果「えっ?」
ヴィオラ「私ね、この家の事沢山知ってるの」
ヴィオラ「よくこの家で、友達と一緒に遊んでたから」
穂乃果「…そっか」
867:
穂乃果(…でも、それでも)
穂乃果(こんな簡単に切れ抜けれる事って…できるの?)
…穂乃果は、ヴィオラの後を追う様に走ってきた。
この少女は化物の動く距離や動作などを完全に把握しており、計算をしながら動いているように穂乃果は見えていた。
ヴィオラ「だから、この家の考えている事は分かる」
ヴィオラ「何処でどんな事が起こるのか、どんな風に殺そうとするのか」
ヴィオラ「全部全部、分かっちゃうの。…ふふっ」
穂乃果「……」
ヴィオラは床に落ちているぬいぐるみの手足を拾うと
ヴィオラ「ねっ。…私と一緒にいると、安心でしょ?」
…食堂へ通じる扉を開き、再び進み始めた。
868:
-厨房-
トントントン…
 トントントン…
「ああ いそがしい いそがしい。」
穂乃果「…っ」
ヴィオラ「相変わらず、無駄な事をしてるんだね」
穂乃果「…えっ?」
ヴィオラ「……」 ボソッ
「…あれ?」
ヴィオラが話しかけると、コックは料理の手を止め何か喋り始めた。
穂乃果(…えっ)
穂乃果(どうして…普通に喋りかけてるの?)
869:
ヴィオラ「…知らないわよ。そんなの」
「おかしいなあ…違ったかなあ…」
見えないコックは納得がいかない様子で独り言を呟くと、再び包丁を動かし始めた。
穂乃果「…知り合い、なの?」
ヴィオラ「うん」
ヴィオラ「あれは、ずっと昔からいるから」
穂乃果「昔?」
ヴィオラ「私が知らない、魔女」
穂乃果「……」
…穂乃果は理解ができなかった。
が、ヴィオラの握る銀の鍵を見つけると、あまり関係のない事なのだと考えるのを止めて
ヴィオラ「行こう?…こんな汚いところ、いつまでもいたくないでしょ?」
厨房を後に、食堂へと戻った。
870:
-二階への階段-
スウッ
「……」
穂乃果「あっ…今の」
ヴィオラ「ふうん…まだあったんだ」
穂乃果「…まだ?」
紫色の髪をした女の子を見つけると、ヴィオラはまたクスクスと笑い始める。
ヴィオラ「意志」
穂乃果「…?」
ヴィオラ「知ってるでしょう?この家は…意志を持ってる」
ヴィオラ「だから、自然と魔女の意志も出てくるの…でも、こんな所にもあったんだ」
ヴィオラ「じゃあ、あの子の意志も何処かにあるのかな…ふふっ」
魔女の家は意志を持つ。
魔女の家の住人は悪魔に喰われた魂の残骸であり、意志を持たない。
穂乃果「じゃあ…あれは、魔女の意志?」
ヴィオラ「ええと、次は…あそこかあ」
871:
?書物庫?
ペラッ
ヴィオラ「…ここも、懐かしいな」
穂乃果「え、っと…」
ヴィオラ「相変わらず、あれが望むもの以外は読めないんだ」
穂乃果「…あれ?」
ヴィオラは魔女の家と書かれていた本を本棚に戻すと、つまらなさそうに呟いた。
ヴィオラ「私ね。ここで字を覚えたの」
ヴィオラ「手に取れば、読める程度の本を提供してくれる…でも、まだ読むべきではないものは絶対に読ませてくれない」
ヴィオラ「…つまんない場所だよ」
ヴィオラの顔は、本当につまらなさそうだった。
この書庫に対してではなく、何か一つの事に対しての不満を吐き出しているかのように穂乃果は見えた。
穂乃果「……」
ヴィオラ「ああ、でも」
ヴィオラ「この家、あなた達が来る前から色んな人間が訪れたから」
ヴィオラ「読めないはずの本が読めるようになってる…きっと、ここから先の場所まで来ることが出来た人間がいたんだね」
ヴィオラ「まあ、その人間達はとうの昔に食べられたのだろうけど。…ふふっ」
ヴィオラ「普通は元に戻ってる筈なんだけど…どうしてかなあ?くすくす…なんでだろうね?」
そう言うと、ヴィオラは本を整理する魂の残骸の元へと近づき、ロープを渡して本を受け取った。
872:
穂乃果「……」
穂乃果は本棚から一冊、本を取り出す。
そこには希が読むことのできなかった魔女の家の続きが書かれていた。
希『それに、なんやろう…このもやもやする感じ』
希『まるで、まだ知らなくていい事を知ってしまった。…そんな感覚』
穂乃果「…希ちゃんが感じてた事って、これだったんだ」
ヴィオラ「もういいよ」
ヴィオラはこの場所での作業を終えると、穂乃果を呼び出し手招きをした。
ヴィオラ「こんな所にずっといても、つまんないでしょ?」
穂乃果「……」
書物庫を出て、展示室へと向かう。
穂乃果も再びヴィオラの後を追うようにして歩き始めた。
…ヴィオラの淡々とした行動に穂乃果は少し疑問を感じていたが、自分が今するべき事を再び思い出し先へと進む。
873:
?幻影の廊下?
 ヒュン!
穂乃果「っ!」 ギュッ
ヴィオラ「…何してるの?」
穂乃果「え、えっと…ナイフの幻だって分かってても…やっぱり怖いから」
ヴィオラ「……」
ヴィオラは興味なさそうに前を向くと、突然横を振り向き、黒猫や本棚のある場所へと身体を動かそうとした。
穂乃果「っ!?待って!そっち向いたらっ…!」
…ヴィオラはそのまま横に進み、黒猫や本棚のある場所へと歩いてゆく。
穂乃果「う、嘘…どうしてっ…!」
ヴィオラ「…別に、普通じゃない。こんなの」
…この廊下は、よそ見をしてはいけない
貼り紙に書かれた決まり事に従い真っ直ぐと進まなければ、謎の処刑場に連れてかれる。
そうやって、にこは殺されたのだから。
874:
穂乃果「だ、だって…ここ、次の扉まで…よそ見をしたら」
ヴィオラ「そうなの?」
穂乃果「う、うん…それでにこちゃんが…っ」
ヴィオラ「…ふうん。そうなんだ」
ヴィオラ「でも、私そんなの【知らない】から」
ヴィオラは関心のなさそうな返事をして、少し小さな本棚の調べていた。
ヴィオラ「…やっぱり、読んだんだね」
ヴィオラ「魔法でこんな事もできるんだ…ふふっ」
ヴィオラ「あれの悔しそうな顔が目に浮かぶわね…ふふ、ふふふっ」
古い書物を手に取って眺めると、ヴィオラは含みのある笑いを静かにした。
その意味を理解出来ない穂乃果は、先程のルール無視の事もあり頭が混乱し始めていた。
穂乃果「…どうして」
ヴィオラ「ここはもう用済み。…次は、あそこ」
…幻影の廊下を抜けると、小さな部屋に出る。
その場所は穂乃果にとって、あまり思い出したくない部屋でもあった。
875:
?巣窟前?
ヴィオラ「……」
カエル「♪」 ピョン
穂乃果「…ねぇ、このカエルは何のためにいるの?」
穂乃果は素朴な疑問をヴィオラにぶつける。
このカエルの存在価値が、本当にあの蛇に食べられることだけなのかという事を明らかにしたかった。
…他の方法があれば、ことりは傷付かずに済んだかもしれない
そんな想いが穂乃果の心の中にいつまでも残っていた。
ヴィオラ「…知ってる?悪魔にとってどんな魂が一番好みなのか」
ヴィオラはカエルを掌に乗せると、扉の前に立ち止まり覗き窓を開ける。
穂乃果「…悪魔?」
ヴィオラ「悪魔は、人間を殺すことができない。だから魔女は悪魔と契約して、魔女は人間の魂を悪魔に捧げる」
覗き窓の先に何がいるのか確認する必要もないと言うかのように、ヴィオラはカエルを窓に押し込む。
重みのあるずんとした音が、部屋中に響き渡った。
876:
ガチャ
ヴィオラ「悪魔はね、人が苦しむのを見るのが好きなの」
ヴィオラ「こんなところで死にたくない、いやだ、助けてくれ」
ヴィオラ「そんな絶望で染まった魂は、悪魔にとってすごく美味なんだって」
化物の部屋を出ようとすると、小さなカエルの幻影が視界に入ってきた。
ヴィオラ「だから、悪いことをさせた人間にこんな光景を見せたら…」
ガチャ
ヴィオラ「絶望、しちゃうでしょ?」
目の前に広がるのは、巨大な肉の壁。
絶望した人間を恐怖の底で陥れ、消化する為に存在する奈落の穴。
穂乃果「うっ…ぁ…っ!」
ヴィオラ「なあんて、魔女なら考える」
ヴィオラ「だから、この家もそれに合わせて作られているの」
「悪魔が絶望した魂を美味しく食べることができるように…ねっ。」
877:
-音の部屋の通路-
ヴィオラ「どうして、そんな暗い顔をしてるの?」
穂乃果「……」
ヴィオラ「ごめんね。…怖がらせちゃった」
穂乃果「ううん、そうじゃないの」
穂乃果の表情は、怒りと悲しみで沈んでいた。
ヴィオラは予想していない穂乃果の表情を疑問に思うと
ヴィオラ「じゃあ、どうして?」
そう、正直に問いかけた。
穂乃果「…みんな、恐怖で怯えてた」
穂乃果「最初はどんな意味があって、こんな事が起こってるんだろうってずっと考えてた」
穂乃果「かよちゃんやにこちゃんの顔がヴィオラちゃんになったり、私の頭の中で声が聞こえてきたり…真姫ちゃんに幻覚が見えたり…」
ヴィオラ「…声?」
穂乃果はその場に立ち止まり、拳を強く握り締めると
穂乃果「全部、私達を絶望に陥れるために魔女がした事だったんだ」
穂乃果「あんな…普通じゃ考えられない事を…私達に見せつけて」
穂乃果「安心させる暇を与えないように…あっちの世界にまで入り込んできてっ…」
穂乃果「絶望する私達をっ…この家に殺させてっ…」
穂乃果「魂を…悪魔に…っ!」
…怒りを露にして、悔し涙を流した。
878:
やり場のない怒りが穂乃果を苦しめた。
もしこの事に早く気が付いていたのなら、どれだけの生命を救う事が出来たのだろうか…?
中盤になると、海未は微かにその事を感じ取っていた。
しかし具体的な解決策を出すことが出来ず、海未の鼓舞は気休めにしかならなかった。
もし私が、悪魔の、魔女の思惑にいち早く気が付いていたなら
私があの日に休まず部室でみんなを励ましていたならば…
そんな考えが頭に過ると、急に怒りがこみ上げ…居ても立っても居られなくなった。
穂乃果「…絵里ちゃんも、ここで殺された」
穂乃果「こんなの、いつもの絵里ちゃんだったらすぐに分かる仕掛けだったのに」
穂乃果「余計な思惑が邪魔をして…これにっ」
穂乃果は兵隊の人形を睨みつけると、それを押し倒そうとした。
しかし、人形はぴくりとも動かない。
力負けした穂乃果は息を切らしながらその場に座り込み、髪で顔を隠した。
穂乃果「…っ…ぐすっ」
穂乃果「酷い…酷いよっ…」
穂乃果「なんで…私達がっ…こんな事っ…!」
…音を鳴らす為に用意された4つの燭台。
それは穂乃果の鳴き声では明かりを灯さなかった。
…ふうん。あの子、そんな事までしてたんだ。
.
879:
穂乃果「…えっ」
ヴィオラ「どうやって繋げたのかな…悪魔の入れ知恵?それとも新しい魔法…?」
ヴィオラ「…ふふっ。そっか、契約したんだよね」
ヴィオラ「やっぱり、すごいよ。…魔女の素質、十分だよ」
ヴィオラ「私って、とってもすごい子と友達だったんだ…くすくす」
不敵な笑みを浮かべた少女の顔は、とても満足そうだった。
何故こんな状況で笑うことができるのか、理解出来ない。
…穂乃果は、ヴィオラの異様な雰囲気を不気味だと感じた。
穂乃果「…ヴィオラ、ちゃん」
ヴィオラ「もう大丈夫?」
穂乃果「あ、えっと…うん」
ヴィオラ「そっか」
ヴィオラ「じゃあ、進もう」
ヴィオラ「魔女の部屋まで、まだずうっと先だから」
穂乃果「…うん」
穂乃果達は進んでいく
音のある部屋を抜け、次の階段へ…
880:
・・・・・・・・・・・・・・・
カツン
 カツン…
ヴィオラ「そろそろ最上階だね」
穂乃果「……」
ヴィオラ「どうしたの?…そんな顔して」
穂乃果「…私、ここからの記憶がないの」
最上階へと繋がる階段を登る途中、穂乃果はポツリと呟く。
…この先の廊下で、得体の知れない物体に穂乃果は取り込まれた。
大きな黒い靄が、身体を包み込むように侵食していく感覚は今でも鮮明に思い出すことができる。
自分の死因を穂乃果はありのままにヴィオラに告げた。
ヴィオラ「ふうん。…どうして逃げなかったの?」
穂乃果「……それは」
穂乃果がずっと抱えてきた違和感…
それはこの家が、魔女が、何故自分を求めているのかという疑問だった。
881:
穂乃果「…あの靄は、私に何かを訴えてるように見えたの」
穂乃果「包まれた瞬間、色んな感情が渦巻いて…怖かったけど」
穂乃果「とても、心地…よかった」
小さな闇に包まれる瞬間…
それは穂乃果にとって苦痛ではなかった。
自分の全てを受け入れてくれる…そんな気がしたからこそ、穂乃果は動くことをしなかった。
穂乃果「…あれは、まるで」
ヴィオラ「ふうん…そっかあ」
ヴィオラは穂乃果の言葉を断ち切るように、もう一度クスクスと笑い始めた。
今度はさっきまでの小さく切るような笑いではなく、深く息を吐き出すかのような長い笑いだった。
ヴィオラ「ふ、ふふふ…ふふふふっ」
ヴィオラ「ああ、おかしい…とてもおかしいの」
ヴィオラ「あのね、分かっちゃうの。…あなたが、どうしてここにいるのかってのが」
ヴィオラ「やっぱり、やっぱりそうだったんだっ…ふふっ、あははははっ…!」
笑いのつぼにでも入ったかのように、ヴィオラは何度も何度も笑い出す。
心の底から喜の感情を表してる少女の顔は、とても幼く拙いものだった。
穂乃果「な、何がおかしいの…っ?」
ヴィオラ「もうすぐわかるよ」
階段を登ると、美しいステンドガラスが敷き詰められている廊下に出くわす。
その先を進むと窓の割れる音と共に、何かが家の外から入ってきた。
―恐ろしい程の度で、それは穂乃果に襲いかかる。
882:
―グワッ!
穂乃果「っ!?」
穂乃果「えっ…な、何でっ…!」
穂乃果「あれは…あれはっ!」
…人の形をした黒い物体に、穂乃果が以前感じた優しさなどは欠片も無い。
ただ穂乃果を奪うことだけを目的にして、敵意を丸出しにこちらに向かってきたのだった。
ヴィオラ「…だから、無駄なんだってば」
―ガキンッ!
穂乃果「…えっ」
ヴィオラ「……ふふっ」
二人の目の前に現れたのは、先程見かけた紫色の髪をした女の子の意志だった。
二つの意志は互いの力を相殺すると、靄となり消えていった。
883:
穂乃果「な、なに…どういう事…?」
穂乃果「魔女の意志が…どうして」
ヴィオラ「これで、わかったでしょ?」
ヴィオラは再び足を動かし、扉を背にして穂乃果に語りかけた。
ヴィオラ「あれが、魔女の本心なの」
ヴィオラ「あなたをもう一度自分の元に置くために、今度は容赦なく私達に襲いかかった」
ヴィオラ「あなたが心地いいと感じたのは、魔女が自分のものにする為の甘い罠だったんだよ」
ヴィオラ「あなたはそれに引っかかっただけ…それだけの事じゃない?」
穂乃果「……」
穂乃果は何を言えばいいのか分からず、黙り込む。
ヴィオラの言い分に反論する為の理由を思いつく事ができなかった。
ヴィオラ「ああ、次は面倒だなあ…まあ、いいけど」
…人形の部屋を抜け、二人は園庭へと進んでいった。
884:
-???-
穂乃果『……』
ヴィオラ『……』
真姫「…二人が、見える」
私は、魔女の家を歩いていく二人の姿をずっと見ていた。
声は魔女の家に入ると聞こえなくなり、今までのように映像だけが映されている。
真姫「…信じられない」
真姫「私達があんなに苦労した家の中を、こんなに早く進んでいくだなんて…」
私達の感覚で例えると、まだ一日目の夜だった。
黒猫に話しかけ無い事によって私の順番が回ってくることはなく、ただじっと歩く姿を見るだけ。
真姫「…でも、おかしい」
真姫「私達の時は、黒猫を無視しても向こうから強引に話しかけてきたのに」
黒猫『』
ヴィオラ『……』 ガチャ
穂乃果『……』
真姫「どうして…何も起こらないのよ?」
885:
ヒュン
ドチャ
穂乃果「…っ」
ヴィオラ「…何これ?」
毒の水溜りの廊下に落ちてきたのは、ヴィオラと思われる少女の死体だった。
ヴィオラはそれを躊躇なく踏みつけると、扉の先へと足を急がせた。
ヴィオラ「…今更、こんな仕掛けで私が絶望するとでも思ったのかな」
ヴィオラ「それとも、もう考えれる程の頭が残ってないのかも…ふふっ」
穂乃果「……」
…廊下を抜けると、小さな部屋に出る。
そこにはいくつもの薔薇の造花が部屋中を進み込んでいて、異様にも神秘的だった。
ヴィオラ「…ねえ、薔薇は好き?」
886:
穂乃果「えっ?」
ヴィオラ「私は好きだよ…だって」
ヴィオラ「とっても綺麗で、美しいから」
ヴィオラ「ずっと見ているとね、…なんだか楽しい気持ちになってくるの」
ヴィオラは造花の薔薇を一つ手に取ると、小動物を扱うかのように優しく手で摘み取った。
ヴィオラ「ね、とっても綺麗でしょ?」
穂乃果「…うん、そうだね」
ヴィオラ「前に住んでいた魔女も、薔薇が好きだったんだって」
穂乃果はヴィオラから薔薇を受け取ると、どうしていいのか分からずに暫く手に持っていた。
穂乃果(…作り物の薔薇、だからかな)
穂乃果(冷たくて、…何だか、怖い)
そう思った穂乃果だったが、楽しそうにするヴィオラを目の前に水を注すような事はしたくない…。
なので薔薇を日記の置いてある机に置き
穂乃果「えっと…次、行こっか」
ヴィオラに、そう呼びかけた。
888:
-薬品庫-
穂乃果「…うわぁ」
初めて見る物品の多さに、穂乃果は驚いていた。
薬品だけではなく、肉や骨などといったサンプルのようなものまで棚に収められていた。
ヴィオラ「…これだけ集めるのに、苦労したんだよ」
穂乃果「…えっ?」
ヴィオラ「魔女は、病気だったの」
ヴィオラ「皮膚はドロドロで、歩くと痛みが走って」
ヴィオラ「誰もが見ても、化物にしか見えなかった」
ヴィオラの顔は沈んでいた。
魔女がどれだけ重い病気を患っていたのかを感じ取ることができる程に、その顔は悲しげだった。
穂乃果「…ヴィオラちゃん」
ヴィオラ「その病気のせいで、魔女は愛されなかった」
ヴィオラ「愛されることを求めていたのに、身体は愛される事を拒んだ」
血の飛び散った戸棚の前にヴィオラが立ち尽くす。
戸を開けると、棚の奥に小さな小瓶を見つけた。
ヴィオラ「【これ】に愛される事が、魔女は幸せだと思っていた」
穂乃果「…?」
ヴィオラ「…ねえ、この小瓶」
ヴィオラ「あなたが持っててくれないかな」
穂乃果「えっ?」
ヴィオラ「私を助けてくれるのでしょ?」
穂乃果「う、うん…そうだけど」
ヴィオラ「なら、いいじゃない」
穂乃果「……」
…穂乃果は棚に手を伸ばすと、甘い香りのする小瓶を手に取り落とさないように握り締めた。
889:
・・・・・・・・・・・・・・
-園庭-
穂乃果「…っ!」
穂乃果「ここも…真っ赤にっ…!」
…紅く染まった園庭は、穂乃果の恐怖心を煽るのに十分だった。
冷たく生い茂る造花の薔薇は何色にも染まらず、まるで魔法にでもかけられたかのように美しく咲き誇っていた。
ヴィオラ「……」
あれからヴィオラは一言も喋らなかった。
後ろを振り向かない彼女の表情は穂乃果には分からなかったが、穏やかではないという事だけは察する事が出来た。
…馬鹿だよね、こんな奴に振り回されてたなんて。
穂乃果「…ヴィオラ、ちゃん?」
ヴィオラ「ふふっ…本当に、何で分からなかったんだろう」
ヴィオラは園庭を通り抜けると、二つの牢獄が存在する廊下へと早足で進んでいく。
ヴィオラ「…むしろ、気付かなかった方が幸せだったのかな」
穂乃果「ま、待ってよヴィオラちゃん!」
ガチャ…バタンッ
890:
-牢獄前-
ヴィオラ「…日の沈みかけた時の空気と、甘い香りの混ざった匂いを嗅ぐのが好きだった」
ヴィオラは手前の牢獄の前に立つと、何かに語りかける様に声を出す。
ヴィオラ「悲しげな顔を見ると、愛されなくなるのだと思って一生懸命いい子を演じた」
ヴィオラ「そうする事でしか繋ぎ止めれない。臆病な気持ちと行動が心を削っていった」
ヴィオラ「愛されることだけが、存在してもいいという証明になっていた」
語る声は次第に感情が篭り、声と共に吐き出されていく。
ヴィオラ「そんな気持ちも知らずにお前は何と言った?」 ガンッ
ヴィオラ「同情?我儘?子供の駄々?」 ガンッ
ヴィオラ「挙句の果てには慰める?慰めるって言ってたわよね?」 ガンッ ガンッ
ヴィオラ「何も、何も知らない人間が、よくもそんな知ったふうな口ぶりが出来るわねえ」 ガンッ! ガンッ!
ヴィオラ「私がこいつにどれだけの憎しみを抱いているのか知らない癖に」 ガンッ! ガンッ!
ヴィオラ「ふふっ 私 あなた 大嫌い」 ガンッ! ガンッ!
ヴィオラ「だって あなた この女に似てるもの」 ガンッ! ガンッ! ガンッ! 
ヴィオラ「全部包み込む振りをして 心の中は全然違うことを考えてる」 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ヴィオラ「偽りの愛なんていらない 慰めなんていらない」 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ヴィオラ「ふふっ いらないの そんなものは いらない いらない いらない」 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! 
891:
穂乃果「―ヴィオラちゃんっ!」 ガバッ
…穂乃果は、興奮するヴィオラの身体を抱きしめた。
事情が掴めず、何に対して怒っているのかも分からなかったが、…この状況が良いとは思えない。
ヴィオラ「…ふ、ふふっ」
ヴィオラ「でもよかったねえ…生まれた日に、死ねるなんて」
ヴィオラ「死ぬ意味を 身をもって知ることが出来たのだからっ!」
ヴィオラ「ふふふっ あはははっ アッハハハハハハハハハハハハッハッハッハッハッ!!!」
穂乃果「…っ」
穂乃果には、誰の事を言っているのか分からなかった。
このヴィオラの異常とも言える憎悪の塊は何に対してなのか
…それを知る術は、見つからなかった。
ヴィオラ「…ふふっ。ごめんね」
ヴィオラ「寄り道しちゃったあ…早く行かないと、間に合わないかもしれないよ」
穂乃果「……」
牢獄を抜けると、道中で手に入れた人形を置き、隠し通路に入る。
その先に見えるのは、魔女の部屋へ繋がる扉だった。
893:
【わたしの へやまで おいで】
ヴィオラ「……」
ヴィオラ「何だか、懐かしいなあ」
ヴィオラ「ついこの前まで、ずっとここに居たのに」
…扉を抜けると、魔女の部屋へと繋がっている廊下に出る。
その先にはきっと、魔女が待ち構えているのだろう。
穂乃果「…ヴィオラちゃん」
穂乃果は不安を隠し切れず、ヴィオラに何か縋り付くかのように手を握る。
海未ですら逃げ切ることのできなかった魔女に、自分が立ち向かうことが出来るのか…
自分が足でまといになり、ヴィオラを巻き添えにしてしまうのではないか
ヴィオラ「……」
恐怖を察したのか、ヴィオラは柔らかい笑顔を穂乃果に向け手を握り返した。
ヴィオラ「大丈夫だよ」
ヴィオラの顔には不安など何処にも無かった。
短くも、心強い言葉が穂乃果の不安をかき消していく。
ヴィオラ「私と同じ様にすれば、絶対…」
ヴィオラ「【絶対】に、助かるから。」
894:
-魔女の部屋 廊下-
カツン
  カツン…
「やあ。」
穂乃果「……あっ」
魔女の部屋の前には、一匹の獣が待ち構えていた。
ヴィオラはそれを目にするそれを目にすると、少し不機嫌そうな態度で話しかける。
ヴィオラ「…なに?」
「ひどいなあ。少しくらい嬉しそうな顔をしてくれてもいいのに」
少年のような声を出すそれは、残念そうに伏せた。
ヴィオラ「別に、おまえの顔なんて見飽きたから」
「僕はずっと心配してたんだからね。折角手助けしてあげようと思ってたのに」
獣は僕の目を見て信じてと言わんばかりに丁寧に座り込む。
ヴィオラ「いらないわ。そんなの」
ヴィオラ「だって、私はもう、お前とは何の関係もないのだから」
「いやまあ、そうなんだけどさあ」
…外の景色は、少し明るかった。
窓から差し込むぼやけた光は、一人の少女と一匹の獣を静かに照らしていた。
895:
「僕だって、少し感慨深いものがあるんだよ。」
「彼女はもうすぐ、この家を××××みたいだからね。」
獣の言葉にヴィオラは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにそれは笑みに変わった。
ヴィオラ「ふうん。そっか」
ヴィオラ「ふふっ…全部、終わりにするつもりなんだね」
穂乃果「終わりに…する?」
「そうみたいだね。」
穂乃果の疑問に答えず、それは続けて話し始めた。
「君ってば、ぼくの助けなんて、全然必要としないんだから。やんなっちゃうよなあ。」
ヴィオラ「だから、必要ないって言ってるでしょ」
「まぁ、そうだよね」
…少女と獣は、少しずつ語り始める。
友達や、仲間などといった繋がりとはかけ離れている『何か』を穂乃果は感じながら、
穂乃果「……」
ただそこに、立っていた。
896:
「じゃあ、そういうことで、あとは頑張ってね。」
―シュン。
穂乃果「…っ!?」
…黒猫の身体は、魂が抜け去ったかのように力なく倒れた。
寄り代としての役目を終えたそれは、ただの猫の死骸へと成り果てたのだった。
穂乃果「…黒猫、が」
ヴィオラ「行くよ」
ヴィオラが扉に手を付け、穂乃果を呼びかけた。
「会いたかったよ…××××ちゃん。」
897:
・・・・・・・・・・・・・・・・
穂乃果「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
化物は穂乃果達を追いかける。
下半身のない女の子の格好をした魔女は、全ての力を出して襲いかかってきた。
ベトッ!
  バキッ!
ダダダダッ!
穂乃果「はぁっ!ひっ!はぁっ!はあっ!」
ヴィオラ「こっちだよ」
階段を駆け下りると、厨房に繋がる。
その先の食堂を抜け、手首を切り取った部屋を全力で駆け抜けた。
やがて入口に戻り、外へと繋がる扉を見つけた。
ヴィオラ「こっち」
穂乃果「―えっ!?」
…ヴィオラは、入口への扉を開けなかった。
狭い廊下を渡り北の方角へ、柱時計を横切ると
ヴィオラ「あった」
小さな部屋に入り、箪笥の中から何かを取り出した。
898:
【××ンズ×××を手に入れた】 
穂乃果「な、何っ!これっ!どうしてっ!」
ヴィオラ「外に出るよ」
考えている暇は無かった。
部屋に入ろうが扉を閉めようが魔女は動きを止めずに追いかけてくる。
穂乃果はただひたすらにヴィオラの後を追い、離れないように手を握り必死に走った。
「ァ…い…ゃ…ダ……ぁ…!」
―扉を開けると、穂乃果とヴィオラは光に包まれる。
眩しすぎる光に目を閉じて、辺りが見えるのをじっと待っていた。
899:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-森-
…風は、静かに森の中を泳いでいる。
何の花なのか分からない花壇が規則正しく並び、人が通る道を作っていた。
後ろに見えるのは、屋敷の様大きい魔女の家。
白い壁に大きな赤い屋根が、私達を上から見下ろしていた。
穂乃果「…あ、あっ」
穂乃果「で、出られたっ…!家の…外にっ…!」
穂乃果「やったっ…!私、魔女に!」
ヴィオラ「……」 テクテク
穂乃果「…あっ、ヴィオラちゃん!」
森の外に出ると、ヴィオラは颯爽と森の外へと歩いていく。
穂乃果もそれにつられて、駆け足で魔女の家を後にした。
…家を離れると、誰も魔女の家に振り向く事をしなかった。
900:
穂乃果「…あれ?」
森を歩いていると、花畑の中に小さな紙が落ちていた。
この場所に初めて来たときは、こんな物は落ちていなかった筈だったのに。
ヴィオラ「……」
穂乃果「えっと、拾わなくても…いいの?」
ヴィオラ「好きにしたら?」
ヴィオラは紙になど見向きもせず、ただ真っ直ぐと森の外を目指して歩いて行った。
あまりの素っ気無さに穂乃果は少し驚くが、彼女が早く森の外へと出たい気持ちを察して追求はしなかった。
穂乃果「…えっと」
穂乃果は花畑の中に入ると、中途半端に破れた紙を拾う。
穂乃果「…こ、これって」
【手紙を手に入れた】
.
901:【内容省略】 2014/06/26(木) 23:16:41.10ID:9Fl0K2mEo
穂乃果「……」 ペラッ
間違いない。
この手紙の続きを私は知っている。
これは、私達が部室で見た…上半分の破れた手紙の残りの部分だ。
穂乃果「…ヴィオラ、ちゃん」
私ははその手紙をポケットの中に仕舞い込み、ヴィオラの元へと駆け寄る。
ヴィオラ「……」
…そこには、少女の力ではどうする事も出来ない程大きな薔薇が生い茂っていた。
902:
穂乃果「ヴィオラちゃん?」
ヴィオラ「仕上げだよ」
彼女が私の為に道を空ける。
すると次に私は、彼女に最後の仕事を任せられた。
ヴィオラ「小瓶を出して」
ヴィオラ「それをこの薔薇に、注いで」
小瓶を持っているのは私だった。
彼女がどうしても私に持っていて欲しいと言ったから、私はこの甘い香りのする小瓶を無くさないように持っていた。
…これで、薔薇を枯らすことが出来るの?
穂乃果「…うん」
私は蓋を開けると、薔薇に向けて小瓶を傾けた。
液体の様な気体の様な何かが小瓶から流れ落ち、それは薔薇に触れると
―カッ
…辺りの薔薇は、跡形も無く消え去った。
90

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ニュース「アメリカが核ミサイルを発射しようとしており、これを受けて政府はーーー」 俺「始まったか・・・」

【悲報】 Wikipediaの「タイムトラベル」の項目、煽り口調

紹介された女性と食事に行ったが、介護の仕事をしてるらしく話題がずっとお年寄りの下の世話のこと

マ●コってどんな匂いするの?

【キチ】いつも貧乏自慢してくるママ友に数枚お下がりしたら変なスイッチを入れてしまった…

【悲報】識者、山尾志桜里問題について「民進党、情けなくて涙が出る。可哀想だが無理だろ。これは」

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