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モバP「凛とお菓子作り」
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1:
ある日の昼下がり事務所で仕事をしていると凛に声をかけられた。
凛「ねぇ、プロデューサー相談があるんだけど」
P「ん。どうした何かあったか?」
凛「別にそんなに大したことじゃないんだけど...」
何やら勿体ぶっている様子である。何かあったのだろうか。と思い一旦パソコンを閉じ凛の方に体を向ける。
P「いいよ。聞かせてくれ」
凛「その...プロデューサーってお菓子とか作れる?」
P「まぁ、簡単なやつならな」
凛「そっか」
P「でもお菓子と言えば凛だってバレンタインの時にチョコレート作ってくれたしアニバーサリーの時だって作ってくれただろ?」
凛「それはそうなんだけど...」
P「それで、お菓子作りがどうしたんだ?」
凛「今度、教えて欲しいんだ」
なるほど。素直じゃないなぁ。ちょっとここはからかってやろう。
P「でもそれならかな子とか愛梨の方が上手じゃないか?会ったら頼んどくよ」
凛「...うん。そうだね。ありがとう」
ちょっと寂しそうに凛が返事をする。
ああ、もう。素直に言えばいいのに。わかっててからかう俺も俺だけれど。
P「なんてな。わかってるよ、週末オフだろ?ウチ来るか?」
俺がそういうと凛の顔がパァァという音が聞こえんばかりに明るくなる。
そしてその後すぐにムッとする。忙しいやつだ。
凛「ねぇ、プロデューサー?」
低めのトーンで呼ばれる。怖い。
P「なにかな?凛さん」
凛「私の勘違いならいいんだけど...気付いてた?」
P「ん?なんのことだ?俺は世界一可愛いアイドルの凛とお菓子作れたら幸せだなー!って思ってな!」
この男、必死である。
凛「....」
沈黙を守る俺の担当アイドル。
P「オフの日も凛と会えるなんて幸せだなぁ!今から週末が楽しみだなぁ!」
依然として必死に女子高生をおだてる哀れな俺であった。
凛「もう...まぁいいか。それじゃあ週末プロデューサーの家に行くね」
どうやら機嫌は直ったみたいだ。ちょろい。
P「ああ、俺も準備しとくよ」
凛「それじゃ、私仕事行くから」
P「行ってらしゃい、気を付けてな」
凛「うん。行ってきます」
そう言って凛は事務所から出て行った。楽しそうに愛梨のアップルパイプリンセスを口ずさむ凛の声が聞こえた。
階段は音が響くので丸聞こえである。可愛いやつめ。
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2:
そして時は流れて、待ちに待った週末。
凛と約束したときはからかっていたがぶっちゃけめちゃめちゃ楽しみである。
午前中からウキウキしながら待っているとインターホンが鳴った。
鍵を開けてドアを開く。
凛「おはよう。プロデューサー」
P「おはよう。随分早いな」
凛「そう?迷惑だったかな」
P「いや、そんなことないよ。待ってたぞ」
凛「そっか、じゃあよかったよ」
P「まぁいつまでも玄関にいるのもなんだから入ってくれ」
凛「うん。お邪魔します。」
どうぞ。とリビングの方へ案内しようと凛の方を振り返るとご丁寧に靴を揃えていた。俺のまで。
ダメな大人でお恥ずかしい。
3:
凛「靴ぐらい揃えなよ」
P「すまんすまん、どうも自分の家だと適当になっちゃってな」
凛「ふふっ、なんだかいつもと反対みたいでくすぐったいね」
P「ん?どういうことだ?」
凛「だってプロデューサー、いつもスタッフさんに挨拶しろーとか言うでしょ?」
P「ああ、確かに。でもあれは凛のために言ってるんだからな?」
凛「わかってるよ。私もプロデューサーのために言ってるんだよ?」
P「返す言葉もございません」
凛「ふふっ」
P「あはは、いやー二人だと素が出ちゃってな」
凛「別にいいけどね。私も楽しいし」
P「そりゃよかった。じゃあソファにでも適当に座ってて飲み物用意するよ」
凛「うん、なんでもいいからね」
P「まぁお茶くらいしかないんだけどな」
凛「じゃあ最初からお茶っていいなよ」
P「そこは大人としてカッコつけたいだろ」
凛「ふふっ、意味わかんないよ」
4:
冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルとコップを二つ持ってくる。
2人掛けのソファの右の方にちょこん、と座ってる凛がなんだか可笑しかった。
P「ほい、緑茶」
凛「あ、このコップ...」
P「ああ。大事にしてるよ」
このコップとは前に凛が俺にくれたレモンジンジャーティーが入っていたコップである。
凛「でもこれパーティ会場のコップでしょ?」
P「持ってきちゃった」
てへ、と舌を出し頭をコツンとやる。
凛「いや、てへ。じゃないし。ホントに何やってるのもう」
P「ちひろさんに頼んでもらってお金も払ったから泥棒じゃないぞ!」
凛「なんでただのコップにそんな...」
P「凛との大切な思い出だからな!」
凛「はぁ...ホントになんでこの人が仕事できるんだろう。って時々思うよ」
P「うーん、凛のためだからかなぁ。こう、やってやるぞ!みたいな?」
凛「そこは真面目に答えるんだ...」
ちょっと呆れ気味なそれでいて楽しそうな凛であった
5:
P「それはそうとお菓子作りだけど、もう始めるか?」
凛「私はいつでもいいよ。どうする?」
P「そうだなぁ、でも時間が中途半端だな...お菓子作ってたら昼ごはんの時間になっちゃいそうだ」
凛「それもそうだね。やっぱりちょっと来るの早かったかな」
P「いや、そんなことないぞ。...あ。出前でもとるか!」
凛「それは悪いし私作るよ」
P「なら一緒になんか作ろうか。あー、でも食材あったかなぁ」
凛「とりあえず冷蔵庫開けてもいい?」
P「うん。いいぞ、一番下が野菜室で真ん中が冷凍庫、上が色々入ってるやつだ」
凛「....うーん。全然ないね...」
P「どれどれ...ってホントだ。まぁ最近買い出し言ってなかったからなぁ...」
凛「野菜は玉ねぎと...アボカド...どういう組み合わせ...?」
P「なんとなく安かったから買ったんだけど他に食材もないからとりあえず冷蔵庫入れといたんだよ」
凛「もうちょっとよく考えて買いなよ...あ、マグロもあったよ」
P「お。じゃあレンジでチンするご飯が戸棚にあるからそれでマグロ丼とかいけるんじゃないか?」
凛「そうだね。...あ、でもせっかく野菜もあるしアヒポキ丼なんてどう?」
P「...何だそれ」
凛「ハワイの料理。マグロと玉ねぎとアボカドをタレで和えたやつだよ」
P「へぇー。美味しそうだな。和えるだけでいいのか?」
凛「うん。簡単でしょ?」
P「そうだな。二人で手分けしたらすぐできちゃいそうだ」
凛「じゃあ、早とりかかろうか」
6:
そうして、二人でキッチンに並び立つ。
一人暮らし用の部屋なため二人並ぶとそれだけでちょっと狭い。
P「じゃあ俺はマグロと玉ねぎとアボカド切っとくからタレ頼む」
凛「うん。ボールどこにある?」
P「そこの収納の下の方にないか?」
凛「あ、あった」
凛が真剣な眼差しで調味料を量ってボールに次々と入れていくのを眺めながら玉ねぎを切る。
玉ねぎとマグロを切り終え次はアボカド...というところで凛作業が終わってしまったらしく声をかけられた。
凛「アボカド、私やろうか?」
P「ん?いや、いいよあとこれだけだし...ってこれすごい固くないか」
凛「アボカドは真ん中に大きい種があるから...ちょっと貸して」
P「ああ、頼んだ」
凛「こうやって種に当たったら...くるんって」
凛が手慣れた様子でアボカドを半分に切る。これ俺が教えることなくないか...?
なんて思ってしまった。まぁそれはこの際どうでもいいか。
P「おおー、すごい。こうやってやるんだな」
凛「うん。そしたら後は種をくりぬくだけだよ」
P「おお、取れた。凄いな凛」
凛「ふふっ、それほどでもないよ。じゃあタレと和えていこうか」
P「じゃあ俺はレンジでご飯をチンするか」
凛「じゃあご飯はよろしくね」
7:
その後は何の問題もなく盛り付けまで終了。
リビングのテーブルに持って行く。
P「いやー、すごい美味そうだな」
凛「そうだね。じゃあ食べようか」
P「ああ、いただきます」
凛「いただきます」
言うや否や一口目を頬張る。
マグロと玉ねぎにタレが絡んでいてとても美味しく、アボカドの食感も楽しめる。
これはいい料理を知った。
P「うまい!凄いな凛!」
凛「プロデューサーだって一緒に作ったでしょ?」
P「そうだった!凄いな俺!」
凛「もう、調子いいんだから」
なんて談笑しながら昼ごはんを楽しんだ。
二人とも食べ終わり俺が食器を流しに持っていこうとすると凛に遮られる。
凛「あ、洗い物は私やるよ」
P「いやいや、お客さんなんだし座っててくれよ」
凛「食材使わせてもらったんだからそれくらいやらせてよ」
P「....それじゃあお言葉に甘えて」
好意を無にするのも申し訳ないので素直にお願いした。
凛は腕まくりをしてスポンジを手に取り一つ一つ丁寧に洗っていく。
こんな毎日だったらいいなぁ。なんてくだらないことを考えながらそれを眺めていた。
まぁ洗い物とはいっても二人分のためすぐに終わり、凛が戻ってくる。
凛「洗い物、終わったよ」
P「ありがとな。まぁご飯食べたばっかだしゆっくりしようか」
凛「そうだね」
8:
それからしばらくは二人でテレビを見ながらだらだらと過ごした。
ずっとこうしているのも捨てがたいのだけれども凛の本来の目的を果たさねば。
P「じゃあ、そろそろお菓子作るか?」
凛「なに作るの?」
P「うーん、どうしようかなぁ」
凛「というか...冷蔵庫に何もなかったよね...」
P「あ...」
凛「準備しとくって言ったよね...」
P「すまん...」
凛「卵もバターも生クリームも牛乳もないんじゃどうしようもないね...」
P「そうだな....ん?いや、待てよ。クッキーなら作れるぞ?」
凛「いや、バターとか卵がないと無理だよ」
P「ふっふっふ、俺のおばあちゃん直伝のレシピを伝授してやろう!」
凛「大丈夫かなぁ...」
こうして俺たちは再びキッチンに並び立った。
9:
P「よっしゃ、今度は俺が凛に教える番だ!さぁ準備はいいか?」
凛「うん...ホントにできるの?」
P「安心しろって!たぶん大丈夫だから!」
凛「たぶんって...」
P「まず必要なものを用意します!」
凛「うん」
P「メープルシロップ!菜種サラダ油!塩!薄力粉!片栗粉!ベーキングパウダー!」
凛「....メープルシロップないよ?」
P「....蜂蜜で代用しよう」
凛「...なんかどんどん不安になるんだけど」
P「大丈夫いけるいける!それではまず粉類以外をボールにぶち込んで混ぜます!」
凛「えっ、分量は?」
P「うーん。二人だし蜂蜜100gくらいと菜種サラダ油が60gくらいかな」
凛「そこは細かく指定するんだ...量りある?」
P「ほい、量り。ボール乗っけてから目盛りをゼロにするんだぞ」
凛「それくらいわかるよ...泡立て器とってくれる?」
P「はいよ」
凛「ありがと....これくらいでいいかな?」
P「ああ、そんなもんで大丈夫だ。じゃあ次は粉類をふるい入れてくれ」
凛「...だから分量を...」
P「薄力粉が180g片栗粉が20gのベーキングパウダーが小さじ1/4くらいかな」
凛「アバウトだなぁ...はい。入れたよ」
P「それじゃあしっかり混ぜてくれ」
凛「はい。できたよ」
P「うん。いい感じだ。それじゃあ絞り袋に入れて、オーブンシートの上に絞り出して焼くだけだ」
凛「えっ。これだけ?」
P「ああ、これだけだ、形は星形でも円を描く感じでもハートでもなんでもいいぞ」
凛「こんな感じ?」
P「そうそう、薄いと焦げるから気を付けてな」
凛「それくらいわかるってば」
P「できたら、あとはオーブンに入れて10分焼けば完成だ」
凛「温度は?」
P「180度くらいかな」
凛「よし。っと」
P「じゃあ焼くの待ってる間に使ったもの片づけるか」
凛「そうだね」
10:
使ったものを洗い、凛と俺はオーブンの前で今か今かと焼きあがるのを待っていた。
5,4,3,2,1 チンッという音が鳴る。焼けたようだ。
オーブンを開くといい匂いが漂ってくる。
凛「すごい、こんな簡単にできちゃうんだね」
P「だろ?これなら暇なときにパパッと作れちゃうしな!」
凛「すごいのはプロデューサーのおばあちゃんだけどね」
P「それもそうだった」
凛「ふふっ、じゃあお皿に盛りつけて食べようか」
P「そうだな、じゃあ俺は紅茶でも淹れるよ」
凛「ないんでしょ?」
P「バレた?」
凛「緑茶でいいよ」
二人ともなんだかおかしくなってあははと笑い合った。
リビングのテーブルにクッキーとお茶を運び、いざ実食。
凛「そろそろ食べてもいいころかな?」
P「ああ、そろそろいい感じに固くなって食べごろじゃないか?」
凛「じゃあ、まず一個...あ、おいしい」
P「だろ?俺も一個...うん。よくできてる」
凛「クッキーにこんな作り方があるとは知らなかったよ」
P「役に立てたようでよかったよ。でもメープルシロップがあるともうちょっと甘くなったかもな」
凛「そうだね。でも私は甘さ控えめって感じで好きだよ」
P「好き...!?誰が?」
凛「クッキーの話でしょ!?」
P「そうだっけ」
凛「そうだよ、まったく...」
笑いながらそうこぼす凛に窓から差し込む西日が当たっていた。
とあるアイドルとプロデューサーのなんてことのない休日のお話。
おしまい。
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