海未「今日は絵里とお泊りデートです!」back

海未「今日は絵里とお泊りデートです!」


続き・詳細・画像をみる


絵里の家
海未(絵里と交際を始めてから約一ヶ月……ついにこの日がやってきました)
亜里沙「海未さん、今日は家に泊まっていくんですよね?」
海未「ええ、そうですよ」
亜里沙「…………」ジー
絵里「亜里沙? どうかしたの?」
亜里沙「……お姉ちゃんたちって、付き合ってるの?」
海未「おやおや」
絵里「付き合ってないわよ?」
海未「えっ!?」
亜里沙「なぁんだ」
海未(私と絵里が付き合っていない……? いったいどういうことなのでしょう)
海未(あっ、わかりました! きっと絵里はまだ亜里沙には秘密にしておきたいのですね)
海未(だからそんな嘘をついたのですか……なるほどなるほど)
2:
絵里の部屋
絵里「亜里沙ったら、いきなりおかしな事言い出すからびっくりしちゃったわ」
海未「ふふっ、そうですね」
絵里「私と海未が恋人同士だなんて、どうしてそんな勘違いをしたのかしら」
海未「……勘違い?」
絵里「友達の家に泊まるなんて、よくあることなのにね」
海未「友、達……?」
絵里「そもそも亜里沙だって雪穂ちゃんと……って、まさかあの二人が!?」
海未(どういうことですか今ここに亜里沙はいないのにどうしてそんなことをおかしいおかしいですよこれは)
絵里「なーんて、さすがにそんなことないわよね」
海未「う……ぁ……」
絵里「海未……? ちょっと、大丈夫?」
海未「絵里!」
絵里「な、なに?」
海未「私は絵里の“友達”なのですか?」
4:
絵里「そうよ、当たり前じゃない」
海未「」
絵里「もう、海未までおかしなことを言い出すのね」
海未(これは……悪夢です)
海未(今日までずっと、私は絵里と恋人同士だと思っていました。しかし絵里は友達だと言います)
海未(……よくよく考えてみると、私が絵里に告白したりされたりはしていないような気がしますね)
海未(で、ですが絵里とはとても親しい仲のはずです! こうしてお泊りデートするくらいですし……)
海未(待ってください。お泊りデートだと私は思っていましたが、絵里はデートだとは思っていないのでは?)
海未(いえ、これはデートです! 誰がなんと言おうとデートなのです! 少なくとも私はそのつもりでここにいます!)
海未(……しかし思い返せば私は絵里とキスもしたことがありませんね。手を繋いだことすらないような……)
海未(おかしいですね、なんだか自分に自信がなくなってきました。もしかして私は絵里の恋人ではないのでしょうか?)
海未「むむぅ……」
絵里「おーい、海未ー? もしもーし」
海未「はっ! な、なんでしょうか」
絵里「ベッドとお布団、どっちで寝たい?」
海未(絵里と一緒に寝たいです、なんて怖くてとても言えませんね……)
5:
海未「私はおふと――」
海未(いえ、待つのです園田海未。お布団というのはきっと来客用のもののはずです)
海未(ですがベッドは間違いなく絵里のベッドのことです。つまり絵里が毎日そこで眠っている……)
海未「ベッドがいいですね」
絵里「あら、意外ね。てっきりお布団にすると思ったんだけど……たまにはベッドで眠りたいとか?」
海未「ま、まあそんなところですね、ええ」
絵里「あっ、そうだ。せっかく泊まりにきたんだから、一緒のベッドで寝ない?」
海未「はいっ!? あ、あの、それは、その、ええと……」
絵里「ふふふ、冗談よ」
海未「あ、そ、そうですよね……」
絵里「もしかして、本気にしちゃった?」
海未「してません! 大丈夫です!」
絵里「そう?」
海未「からかわないでください……おや? それは……」
絵里「ん? トランプがどうかしたの?」
海未「……絵里、私と勝負しましょう」
7:
数分後
絵里(……二人でババ抜きって、かなりつまらないわね)
絵里「さーて、残り一枚だけどどっちを引こうかしら」
海未「私は負けませんよ、絵里。どうぞ!」スッ
絵里「うーん……じゃあこっち?」
海未「!」パァァ
絵里「やっぱりこっちにしようかなぁ」
海未「!?」ズーン
絵里「…………」
絵里(これは罠なのかしら……)
絵里(普通に考えたらこんなにわかりやすい反応をするはずないわよね)
絵里(ということは、この嫌そうな顔をしている方がババ?)
絵里(いえ、もしかすると裏の裏でこっちはババじゃないのかも)
8:
絵里(うーん、わからなくなってきたわ……)
絵里(でも、海未って案外単純なところもあるし、こっちがババと考えていいんじゃないかしら。なら――)
絵里「これが当たりよ!」スッ!
絵里「……え?」
海未「や……やりましたぁ! ついに、ついにこの時が来ました! ふふっ、ふふふふふっ!」
絵里(私としたことが……やられたわ)
海未「で、では引かせてもらいますねっ! ふふふっ」スッ
海未「あがり! あがりです! 私の勝ちです! あぁ、今日は人生最高の日です!」
絵里(ず、ずいぶん大袈裟ね……)
海未「ハラショー! ハラショーですよ、絵里!」
絵里「う、うん……」
海未「ふふっふー!」ピョンピョン
9:
絵里「あー、海未? そろそろお風呂に入ってきたら?」
海未「お風呂ですか……」
海未(本当は絵里と一緒に入るつもりだったのですが)
海未「では、絵里がお先にどうぞ」
絵里「ダメよ、海未はお客さんなんだから遠慮しないで」
海未「ですが……」
海未(せめて絵里の残り湯に浸かりたいです)
絵里「うーん、じゃあ間をとって亜里沙と入ったらどうかしら?」
海未(どの間をとったらそうなるのでしょう……)
絵里「亜里沙はきっと喜ぶと思うけど、海未は嫌?」
海未「嫌ではありませんが……」
絵里「じゃあお願いね」
海未「はい……」
10:
浴室
亜里沙「海未さん、お背中流しますね!」
海未「あ、はい」
亜里沙「?♪」ゴシゴシ
海未(あぁ、絵里。昨日までは恋人だったのに、どうしてこんなことに……)
海未(私がこんなに絵里のことを想っていても、絵里は私のことを想ってはくれないのですね……)
海未「うっ、うぅ……」ポロポロ
亜里沙「海未さん……? 痛かったですか?」
海未「い、いえ、違うんです。これはその、なんと言いますか――」
亜里沙「もしかして、具合が悪いんですか? どうしよう……お姉ちゃん呼んできますね!」
海未「えっ、ちょっ、待ってください!」
亜里沙「お姉ちゃーん!」タッタッタッ
海未「亜里沙ぁー!」
11:
絵里の部屋
海未(絵里に裸を見られてしまいました……)カァァ
絵里「ごめんね、亜里沙ったらそそっかしくて」
海未「いえ、あれは私にも非がありますから」
絵里「さてと、もうそろそろ寝ましょうか」
海未「そうですね」
絵里「じゃあ電気消すわね」
海未「はい」
パチッ
海未(絵里はナツメ球を消さないんですね)
絵里「おやすみ、海未」
海未「おやすみなさい」
海未「…………」クンクン
海未(あぁ、絵里の匂いがします……)
海未「ん……」スゥゥゥゥ
海未(しあわせです……)
12:
海未「…………」クンスゥゥクン
海未(絵里、絵里ぃ……)
海未「…………」スゥゥゥゥゥゥゥ
海未(あ、れ……なんだか妙な気分になってきました)
海未「はぁ、んっ……」モゾッ
海未(なんだか体の様子が変です……)
海未(絵里のことが好きだから、こんなふうになってしまうのでしょうか)
海未(ああ、私はどうすれば……)
海未「…………」クン
海未「……絵里、まだ起きていますか?」
絵里「ん……どうしたの?」
海未「来てください、こちらに」
絵里「えっ?」
海未「私の隣に来てほしいんです。お願いします」
絵里「え、ええ。わかったわ」
海未「…………」
13:
絵里「これでいいかしら?」
海未「絵里っ!」ギュッ
絵里「きゃっ! う、海未?」
海未「絵里……」ギュゥ
絵里「えっと……これはどういう……んむっ!?」
海未「んんっ……」チュゥゥ
絵里「ぷはっ、いきなりなにを……」
海未「私、なんだか変なんです。絵里のことを考えるだけで、頭がぼーっとして……」
絵里「海未……」
海未「これはいったいなんなのですか? 教えて下さい、絵里」
絵里「……海未は、知りたいの?」
海未「はい。このままでは、おかしくなってしまいそうで……」
絵里「そう……わかったわ。なら教えてあげる」スッ
海未「絵里……? どうして服を……」
絵里「海未、力を抜いて?」
海未「絵里……あっ」
14:
翌朝
絵里「海未、朝よ。起きて」
海未「ん……絵里……?」
絵里「おはよう」
海未「おはようございます……」
絵里「朝ご飯、もうすぐできるから、着替えたら来てちょうだい」
海未「はい、わかりました……」
絵里「じゃあ、待ってるから」
ガチャッ
バタン
15:
海未「……はっ!」
海未(わ、私、昨夜は絵里と……)カァァ
海未「????!」バタバタ
海未(思い出すだけで恥ずかしくなってしまいます……)
海未(たしか事が済んだあと、私は服も着ずに眠ってしまったような)
海未(……変ですね、しっかり服を着ています)
海未(夢、だったのでしょうか? 絵里の感触はまだ残っているのですが……)
海未(いえ、それだけじゃありません。あの匂いもしっかり指に残っています。夢だったなんてありえません)
海未(……なんだか、今度こそ絵里と本当の恋人になったような気分ですね)
海未「ふふっ」
海未(早く着替えて、絵里のところへ行きましょう!)
17:
ダイニング
海未「お待たせしました」
絵里「どうぞ座って」
海未「はい」
亜里沙「海未さん、おはようございます」
海未「おはようございます、亜里沙」
絵里「それじゃあ食べましょうか」
海未「いただきますっ」
亜里沙「ねぇお姉ちゃん、昨日の夜変な音が聞こえなかった?」
海未「!」ピクッ
絵里「変な音?」
亜里沙「うめき声みたいな音とか……」
海未「ぁわ、あゎわ……」
絵里「気のせいじゃない? それか夢でも見ていたのよ」
亜里沙「そうかなぁ……」
18:
海未「すみません、わざわざ送ってもらって」
絵里「いいのよ、気にしなくて」
海未「その……今朝は焦りましたね。亜里沙がいきなりあんなことを言い出すとは……」
絵里「あんなことって?」
海未「夜、変な音が聞こえたとか……」
絵里「どうしてそれで焦るのよ?」
海未「で、ですから、亜里沙に昨夜のことが知られるのではないかと――」
絵里「昨夜って、なにかあったかしら?」
海未「えっ……?」
絵里「もしかして、海未もなにか夢を見たの?」
海未「絵里、なにを言って――」
絵里「あっ、着いたわ。じゃあ今度は学校でね」
海未「あのっ……行ってしまいました」
海未(絵里は昨夜のことを覚えていないのでしょうか?)
海未「まさか、そんなことは……」
19:
音ノ木坂学院音楽室
海未「うーむ……」
真姫「海未? ちょっと、聞いてるの?」
海未「むむぅ……」
真姫「海未ってば!」ユサユサ
海未「ひゃっ!? な、なんですかいきなり!」
真姫「いきなりじゃないわよ、何度も呼んだじゃない」
海未「そうなのですか? すみません、気が付かなくて……」
真姫「何か悩み事でもあるの? 私で良かったら話聞くけど」
海未「あー……いえ、大丈夫です」
真姫「大丈夫じゃないでしょ。そんなんじゃいつまでたっても新曲が完成しないわよ」
海未「真姫に相談してどうにかなるとは思えませんから」
真姫「なっ! どういう意味よ!」
海未「あっ、いえ、その……違うんですよ? ふふっ」ニッコリ
真姫「……話しなさいよ」
21:
海未「はい?」
真姫「聞こえなかった? 私に話しなさいって言ってるの」
海未「ですが――」
真姫「いいから!」
海未「わ、わかりましたよ……」
真姫「まったく、もっと素直になりなさいよね」
海未(どの口が言うのでしょう……)
真姫「で、何があったの?」
海未「実は先日とある女性と、その……せ、性行為をしたのですが……」
真姫「ヴェェ……!?」
海未「彼女はそのことを覚えていない……というより、そんなことはなかったかのように振舞っているんです」
真姫「そ、そう……」
海未「私は本当に彼女と身体を重ねたのか、わからなくなってしまって……真姫はどう思いますか?」
真姫「知らないわよっ!」
海未「むっ、話せと言っておきながらなんですかその態度は」
22:
真姫「う……ええと、その相手は海未の恋人なの?」
海未「恋人だと思っていたのですが、どうやら違ったみたいです」
真姫「は……?」
海未「ですから、私は恋人のつもりでいたんです。しかし彼女は私を友達だと言っていました」
真姫「あなた……ストーカー予備軍なんじゃない?」
海未「失敬な。私と彼女はとても仲がいいんです。最近は毎日のように一緒にいるんですよ」
真姫「仲がいい、ね……」
海未「ああ、仲がいいと言っても穂乃果やことりとの関係とはちょっと違うんです。ほら、友達以上恋人未満というやつですよ」
真姫「……多分、その人と海未は何もしてないわよ」
海未「な、何故ですかっ!」
真姫「だって勝手に恋人同士だと思い込んでたんでしょ? だからその……したっていうのもきっと思い込みよ」
海未「そんなはずありません! 私はちゃんと覚えているんです!」
真姫「記憶が捏造されるっていうのは、そう珍しいことでもないの。残念だけど――」
海未「嘘! 嘘です! だってちゃんと残っていたんですよ! この指に、絵里の匂いがしっかりと!」
真姫「ちょっと、突きつけないで!」
23:
海未「はぁー、はぁー……!」
真姫「だ、だったら直接聞いて確かめればいいじゃない」
海未「それは……怖いので無理です」
真姫「なら、なかったことと思いなさい」
海未「嫌です!」
真姫「わがまま言わないでよ!」
海未「もう真姫が聞いてくればいいじゃないですかぁ!」
真姫「そんなの嫌に決まってるでしょ!」
海未「うぅぅ……」
真姫「正直、私には『頑張って』としか言えないわ。かなりプライベートなことだし……」
海未「そうですか……」
真姫「それに絵里のことが本当に好きなら、やっぱり海未が直接聞くべきよ」
海未「そう、ですよね……話を聞いてくれて、ありがとうございます」
真姫「どういたしまして」
海未「……ん? どうして相手が絵里だと知っているのですか!?」
24:
放課後・屋上
絵里「話ってなにかしら?」
海未「先日、絵里の家に泊まった時の話です」
絵里「……?」
海未「あの夜、私は絵里と……その、破廉恥なことをしましたよね?」
絵里「破廉恥って、なんのことかしら?」
海未「……どうして知らないふりをするんですか?」
絵里「海未……」
海未「私はちゃんと覚えているんです! あなたに教えてもらったことを!」
絵里「っ……」
海未「本当は、絵里も覚えているのでしょう?」
絵里「…………」
海未「覚えて、いますよね?」
25:
絵里「……ええ」
海未「よかったです、少し安心しました」
絵里「本当は、海未があれは夢なんだって思ってくれるのが一番だったんだけどね……」
海未「夢だなんて、思えるはずがないじゃありませんか」
絵里「そうね……でも、あの夜のことはなかったことにしましょう」
海未「えっ……」
絵里「それがお互いのためだと思うから」
海未「な、何を言っているのですか? 私はあの時、本当に嬉しかったんです。大好きな絵里と――」
絵里「『大好き』……あの夜、海未は何度も私にそう言ってたわね。まるで傷ついたレコードみたいに」
海未「…………」
絵里「でもね、たぶんそれは海未の本当の気持ちじゃないわ」
海未「……どういうことですか?」
26:
絵里「ここ最近、私と海未が一緒にいることが多かったでしょ? きっとそのせいで、私のことが好きだって勘違いしちゃったのよ」
海未「いいえ、私は間違いなく絵里のことが好きです! この気持ちは本物です!」
絵里「……しばらくこうやって二人で会うのはやめましょう。そうすれば海未もわかるはずよ、あの日したことは間違いだったって」
海未「間違いなどではありません! 私は本当に、絵里のことが――」
絵里「お願い、海未。その気持ちも、あの夜のことも、もう全部忘れて」
海未「絵里……」
絵里「勝手なことばかり言ってごめんなさい。でもこうするのが正しいって、私は思うの」
海未「あのっ! 一つだけ聞かせてください」
絵里「なに?」
海未「その、絵里は私のことを、どう思っているのですか?」
絵里「……言ったでしょう? 海未は私の“友達”よ」
海未「友達、ですか……」
絵里「そう、私たちはただの友達。それ以上でもそれ以下でもないわ」
海未「…………」
27:
数日後
海未「では今日の練習はここまでにしましょう」
にこ「……海未、この後ちょっと残ってくれる?」
海未「はい?」
にこ「あんた、絵里と喧嘩でもしたの?」
海未「喧嘩はしていませんが……」
にこ「じゃあ何があったのよ」
海未「な、何もありませんよ?」
にこ「正直に話しなさい。あんたたち、明らかにお互いを避けてるじゃない」
海未「気のせいですよ」
にこ「気のせいなわけないでしょ。この間まで無駄にくっついてたのに」
海未「う……そ、それも気のせいでは?」
28:
にこ「あんたねぇ……それでごまかせると思ってるの?」
海未「べ、別にいいでしょう? μ'sの活動に支障はありませんし」
にこ「ダメよ。話すまでは絶対に帰さないから」
海未「話なら絵里に聞いたらいいじゃないですか!」
にこ「ああ、そっちは希に任せてあるわ。一応両方から聞いておいたほうがいいでしょ」
海未「個人的なことですから、そっとしておいてください」
にこ「じゃあいつまで絵里とああしてるつもり?」
海未「それは……わかりませんが……」
にこ「わからないじゃ困るのよ、早くなんとかしなさい。できないなら今ここで私に話す。どっちかよ」
海未「なんとかします! なんとかしますから今日のところは――」
にこ「じゃあ今から絵里に電話して」
海未「え……」
30:
にこ「今ここで解決させたら帰ってもいいわ」
海未「ぐ……汚いですよ、にこ」
にこ「それができないなら、私に話しなさい」
海未(うぅ……私はどうすればいいのでしょう)
ピリリリリ……ピリリリリ……
海未「!」
にこ「希からだわ、ちょっと待ってて」ピッ
にこ「もしもし? そっちはどう?」
にこ「……はあ? なによそれ、どういうこと?」
にこ「……そう、わかったわ。じゃあ、絵里のこと頼むわね。……ああ、そっちは私がなんとかするわ。それじゃ」ピッ
にこ「ちょっと海未! あんたいったい絵里となにが――」
にこ「って、いないし!」
31:
海未「ふう……なんとか抜け出せました」
海未(ですが、にこの言う通りいつまでもこのままではいけませんよね……)
海未「はぁ……」
穂乃果「海未ちゃん? ため息なんてついてどうしたの?」
海未「穂乃果……まだ帰っていなかったのですか?」
穂乃果「ちょっと忘れ物しちゃって、えへへ」
海未「ダメですよ、もっとしっかりしないと」
穂乃果「……なんか海未ちゃん、この頃元気ないね」
海未「そう見えますか?」
穂乃果「うん」
32:
海未「……それだけですか?」
穂乃果「えっ?」
海未「いえ、てっきり元気のない理由を聞かれるんじゃないかと」
穂乃果「あれ、聞いたほうがよかった? 話したくないかもって思ったから聞かなかったんだけど……」
海未「驚きました。まさか穂乃果がそんな気を使えるとは」
穂乃果「おっ、褒められちゃったぁ」
海未(褒めたつもりはなかったのですが……)
海未「まあ、そういうことにしておきましょう」
穂乃果「?」
海未「では、帰りましょうか」
穂乃果「うんっ!」
33:
テクテク……
海未「……穂乃果、すこし聞きたいことがあるのですが」
穂乃果「なぁに?」
海未「その……穂乃果には好きな人はいますか?」
穂乃果「えっ!? う、海未ちゃん、それって……」
海未「ち、違います! そういうことではなくて……」
穂乃果「だ、だよね。あー、びっくりした」
海未「……例えばの話ですが、穂乃果に好きな人がいて、その相手と肉体関係を持ったとします」
穂乃果「え」
海未「しかし相手にそのことをなかったことにしようと言われたら、穂乃果はどうしますか?」
穂乃果「例えばの話なんだよね……?」
海未「そ、そうですよ?」
34:
穂乃果「……穂乃果なら、なかったことにするかなぁ」
海未「何故ですか?」
穂乃果「だって、それって体目当てだったってことでしょ? いくら好きでもそんなひどい人――」
海未「絵里はそんな人じゃありませんっ!」
穂乃果「へ? 絵里ちゃん?」
海未「……あっ」
穂乃果「もしかして海未ちゃん、絵里ちゃんとそういうことが……?」
海未「い、いえ、あの、ちがっ、なんでしゅか!?」
穂乃果「なんでしゅか……」
海未「ぅあ……」
穂乃果「と、とりあえず落ち着こっか」
海未「うぅ……」
穂乃果「ここじゃなんだし、家でお話しよう? ねっ?」
海未「はい……」
35:
穂乃果の部屋
穂乃果「えっと、海未ちゃんは絵里ちゃんのことが好き……なんだよね?」
海未「…………」コクッ
穂乃果「そっか。絵里ちゃんかぁ……」
海未「…………」
穂乃果「どうして絵里ちゃんとエッチすることになったの?」
海未「……一週間ほど前、絵里の家に泊まったんです。その夜、私の絵里への想いが押さえられなくなって……」
穂乃果「じゃあ、海未ちゃんが絵里ちゃんを誘ったんだ」
海未「そういうことになるのでしょうか……」
穂乃果「絵里ちゃんは海未ちゃんのことをどう思ってるの?」
海未「えっ?」
穂乃果「絵里ちゃんは、海未ちゃんのことが……好きなの?」
海未「そんなこと、私にはわかりませんよ」
36:
穂乃果「でも普通好きじゃない人とエッチなんてしないよね? 海未ちゃんだってそうでしょ? ねぇ?」
海未「穂乃果……? なんだか怖いです……」
穂乃果「あ……ごめん」
海未「……穂乃果も、絵里のことが好きなのですか?」
穂乃果「ううん。穂乃果が好きなのは、絵里ちゃんじゃないよ」
海未「そう……ですか。ならいいのですが」
穂乃果「……それで、海未ちゃんはどうしたいの?」
海未「どうしたい、とは?」
穂乃果「絵里ちゃんの言う通り、なかったことにするのか。それとも……」
海未「私は、なかったことにはしたくありません。できることなら、絵里の恋人になりたいと思っています」
穂乃果「だよね。好きなんだもんね」
海未「はい」
穂乃果「……わかった。私に任せて」
37:
翌日・音ノ木坂学院屋上
ガチャッ
絵里「…………」
穂乃果「絵里ちゃん……来てくれたんだ」
絵里「……この手紙、穂乃果が書いたの? 『海未より』って書いてあるけど」
穂乃果「うん。ごめんね、騙しちゃって」
絵里「別に気にしてないわよ。海未からじゃないっていうのはわかってたし」
穂乃果「えっ、どうしてわかったの?」
絵里「だって海未の字はもっと綺麗だもの。流石に気づくわ」
穂乃果「そ、そっか」
絵里「それで? 海未の名を騙ってまで私を呼び出した理由は何かしら?」
穂乃果「……わからない?」
絵里「心あたりがないとは言わないわ。でも穂乃果には関係のないことよ」
穂乃果「…………」
絵里「そうでしょう?」
38:
穂乃果「……あるよ。関係、あるもん」
絵里「どう関係があるの?」
穂乃果「私が……海未ちゃんのことを好きだから」
絵里「……なら私なんかと話してないで、海未に気持ちを伝えたらどう?」
穂乃果「無理だよ……海未ちゃんが好きなのは、絵里ちゃんなんだもん」
絵里「それこそ関係ないじゃない。私と海未は付き合っているわけじゃないのよ?」
穂乃果「……エッチまでしたくせに」
絵里「はぁ……そんなことまで知っているのね」
穂乃果「どうして海未ちゃんの彼女になってあげないの?」
絵里「それは……」
穂乃果「絵里ちゃんは海未ちゃんのこと、好きじゃないの?」
絵里「…………」
穂乃果「答えてよ」
絵里「……私は――」
39:
教室
穂乃果「海未ちゃん」
海未「穂乃果……」
穂乃果「絵里ちゃんが呼んでるよ。屋上で待ってるから、行ってあげて」
海未「わかりました。行ってきます」
穂乃果「ファイトだよっ、海未ちゃん」
海未「……はい!」
タッタッタッ……
穂乃果「…………」
ことり「穂乃果ちゃん」
穂乃果「わわっ、こ、ことりちゃん! どっから出てきたの!?」
ことり「いいの? 行かせちゃって」
穂乃果「……うん」
ことり「そっか」
穂乃果「だけど……今はちょっとだけ、泣いちゃおっかな」
ことり「穂乃果ちゃん……」ギュッ
穂乃果「ぐすっ……ことりちゃん……ううっ……」ズピッ
ことり「ん? えっ? わぁ待って穂乃果ちゃん! 制服に鼻水が――」
40:
屋上
ガチャッ
海未「……絵里っ!」タッタッタッ
絵里「来たのね」
海未「絵里に呼ばれたら、行かないわけにはいきませんよ」
絵里「そう」
海未「その……嬉しいです、またこうして絵里と二人でお話ができて」
絵里「……海未は、今でも私のことが好き?」
海未「はい、大好きです。当たり前じゃないですか」
絵里「その気持ちは忘れてって言ったはずよ」
海未「そんなことを言われても、忘れられるわけがありません」
絵里「前にも話したけど、それは海未の本当の気持ちじゃないわ」
海未「どうしてそう言い切れるのですか?」
42:
絵里「海未が私のことを好きだって思ってしまうのは、これのせいだからよ」スッ
海未「それは……ど、ドラゴンボー――」
絵里「これはね、持っていると好きな人と両思いになれるっていう不思議な水晶なの」
海未「はあ……もしかして、希からもらったのですか?」
絵里「いいえ、これは自分で買ったの。税込5122円(送料別)でね」
海未「……詐欺のにおいがしますが」
絵里「そんなはずないわ、ほんとに海未に好かれちゃったし……だからもう処分しようと――」
海未「あ! 待ってください、さっきなんといいました?」
絵里「えっ、さっきって?」
海未「7行くらい前です」
絵里「これを持っていると、好きな人と両思いに――」
海未「それです! 好きな人と両思いになる、ということは……」
絵里「ええ、そうよ。私も海未のことが好きだったの」
海未「……!」
43:
絵里「もしあなたと恋人同士だったら、って考えない日は一日もなかったわ」
海未「絵里、ならば私と――」
絵里「ダメよ」
海未「な、何故ですか! 私たちは好きあっているんですよ!?」
絵里「だからそれは水晶のせいだって言っているでしょう?」
海未「それがなんだって言うんです?」
絵里「こんな卑怯な手を使った私に、海未の恋人になる資格なんてないわよ」
海未「では聞きますが、絵里はその水晶をいつから持っているんですか?」
絵里「……先月よ」
海未「なら水晶は関係ありません。私はもっと前から絵里のことが好きでしたから」
絵里「ち、違うわ、今のは間違い。本当は先々月から持っていたの」
海未「ふふふ、だとしても無関係ですね」
44:
絵里「じゃあ3ヶ月前! 3ヶ月前からよ!」
海未「『じゃあ』ってなんですか! 変な意地を張るのはやめてください!」
絵里「だ、だって……」
海未「もう一度言います。私は水晶なんて関係なく、あなたのことが好きです」
絵里「…………」
海未「そしてなにより、あの夜のことを間違いになんてしたくないんです」
絵里「海未……」
海未「それとも、絵里はもう私のことを好きではないのですか?」
絵里「……ばか」プイッ
海未「ふふっ」
絵里「笑わないでよっ、もう……」
海未「すみません。では、改めて聞きます」
海未「私は絵里の“友達”ですか?」
絵里「……いいえ、違うわ。海未は私の――」
チュッ
絵里「恋人よ」
45:
数日後
希「これは……本物やね」
絵里「本当!?」
海未「希……あなた嘘をついていませんか? 絵里に恥をかかせまいと――」
希「何言うてるん。ウチはスピリチュアルに関してはいつでも正直なんよ?」
海未「うーむ、にわかには信じがたいですね……」
絵里「えっ、どっちが? 希? 水晶?」
海未「どっちもですよ」
絵里「でも私と海未はもともと両思いだったから、水晶の効果は何も現れなかったのかしら?」
希「いや、なにかしらの影響はあったはず……海未ちゃん、なにか心あたりがあるんやない?」
海未「そう言われましても……」
希「えりちが水晶を買った頃――つまり、一月半くらい前のことをよ?く思い出してみ」
海未「一月半前ですか。特に思い当たるようなことは……あ」
海未(そういえば私が絵里を恋人だと思い込み始めたのはその頃だったような……)
絵里「なにかあったの?」
海未「い、いえ! なにも!」
46:
希「ん?? 嘘はあかんよ、海未ちゃん」
海未「嘘なんてついていませんっ」
絵里「海未、恋人に隠し事はなしよ?」
海未「う……その、心当たりはあるのですが……恥ずかしいので話したくありません」
希「話したくないって言われると、余計に聞きたくなるやんな?」
海未「ダメなものはダメです!」
絵里「話してくれないの? どうしても?」
海未「……絵里にはいずれ話しますよ、今はダメですが」
絵里「じゃあ、その時を楽しみに待ってるわね」
海未「楽しみにされても困ります……」
希「にしても、あの時のえりちが嘘みたいやね」
海未「あの時とは?」
希「海未ちゃん、にこっちに尋問されたことがあったやろ?」
海未「ええ、たしかその時希は絵里から話を聞いていたんですよね?」
47:
希「そうそう。えりちに海未ちゃんのこと聞いたら、いきなりわんわん泣き出して――」
絵里「ちょっと希!? どうして海未にそのこと話しちゃうのよ!」
希「恋人に隠し事はなしって言うてたやん」
絵里「そ、そうだけど……!」
海未「ふむ、それはぜひ見てみたかったですね」
絵里「海未に見せられるわけないでしょ、あんな恥ずかしいところ……」
希「とか言って、もうふたりでもっと恥ずかしいことしてたりするんちゃう?」
海未「……!!」カァァ
絵里「な、何言ってるのよ希ったら……」
希「あれ? 冗談のつもりやったんやけど……ホンマに?」
海未「う……」
希「まさか、付き合い始めたその日に……とか?」
海未・絵里「…………」
海未(言えません……)
絵里(付き合う前にしたとはとても……)
48:

続き・詳細・画像をみる


【画像】大気汚染で人類の鼻毛は伸び続けることが判明

大は小を兼ねるっていうし。はからずも巨大化してしまったペットたちのいる暮らし

トランプ「支持率下がらん……クッソ!ナチス式敬礼や!」

車の中快適過ぎwwwwww

『僕だけがいない街』9話感想 ひとまず一安心!ここからどうなるのか!

海未「今日は絵里とお泊りデートです!」

歴史上の面白い国家を探してくるスレ

【衝撃】深夜に過酷な高尾山を登りながらネット生放送 / 高山病になりながらも32000人が視聴で大人気

【衝撃】神様「好きな武器やるから魔王殺ってこい」俺「えー」→ その結果wwwwwww

祝R-1優勝 ハリウッド・ザコシショウ「ドラクエの敵ものまね」ランキング20

Aって女は俺の学生ライフを最も狂わせた人間だった

医者「咳止めはハチミツとレモンで十分。薬を買う必要は無い」

back 過去ログ 削除依頼&連絡先