希「高いか安いかはお客様の考え方次第やん」真姫「イミワカンナイ」back

希「高いか安いかはお客様の考え方次第やん」真姫「イミワカンナイ」


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にこ「あーもう何回言わせんのよ!目玉焼きには醤油でしょ!」
真姫「いいえ、ケチャップよ」
真姫「ケチャップは玉子焼きにも合うのよ」
にこ「醤油だってそうよ!」
真姫「?ぇえ、合わないわよ絶対」
にこ「じゃああんた、卵かけご飯にもケチャップかけてるの?」
真姫「そんなもの食べないわよ」
にこ「そうよね」
真姫「生の卵をご飯にかけるなんて信じられないわ」
にこ「はあ!? ウチの朝ごはんバカにしてるの!?」
真姫「知らないわよそんなの」
にこ「あんたと喋ってるとイライラするわ!もう黙ってなさい!」
真姫「なによ、にこちゃんのバカ」
にこ「ぬゎんですってぇ?!!」

―――
―――――
2:
真姫「はあ、今日もにこちゃんと喧嘩しちゃった……」
真姫「もっと仲良くなりたいのに、つい余計なことまで言って怒らせちゃうわ」
真姫「にこちゃんの言う通り、もうずっと黙っていようかしら」
真姫「なんて、そんなことできないわよね。はぁ……このままにこちゃんが卒業しちゃったら……ん?」
希「いらっしゃいませー」チョコン
真姫「希じゃない。何やってるのよ、占い師みたいな格好して」
希「……」
真姫「もう、なんで無視するのよ」イミワカンナイ
真姫「って、何か売ってるの?」
真姫「ええっと、『必要のないマスク』?」
3:
真姫「よくわからないけど、見たところ普通のマスクじゃない」
希「一万円になるやん」
真姫「買うとは言ってないわよ。風邪も流行ってないし、いらないわ。それに高いし」
真姫「ねえ、必要のないマスクってどういうこと?」
希「それはお買いになったお客様だけがわかることやん」
真姫「何よケチね」
4:
真姫 (あ、でもマスクしていれば喋らなくても不自然じゃないわね)
真姫 (私がずっと黙ってればにこちゃんと喧嘩にはならないわ)
真姫「うーん、一万円もするんだからすごくいいものなんでしょうね」
希「それはお買いになったお客様――」
真姫「それはもうわかったわよ」
真姫「いいわ、これちょうだい」
希「お買い上げありがとうございますやん」
真姫「ふふ、さっそく明日付けていきましょ」
5:
次の日
教室
真姫 (考えたら急にマスクなんてしていったらみんなに心配させちゃうわよね)
真姫 (なんて理由を付けとこうかしら)
凛「あれ、真姫ちゃんがマスクしてるにゃ。病気したの?」
花陽「エェ!?大丈夫?」
真姫「……」モゴモゴ
真姫「!」
真姫 (声が出ないわ)
真姫 (このマスクのせいかしら……?)
凛「風邪の予防とは真姫ちゃん流石にゃ」
真姫 (えっ)
花陽「へぇ?、体調管理に気を使ってるんだね」
真姫「……」
真姫「……」コクコク
真姫 (なんか勝手に納得してくれたわ)
6:




教師「じゃあこの問題はー、西木野さん」
真姫 (このくらい答えられるわ)
真姫 (あっ、マスク外さないと)
教師「はい正解です」
真姫 (えっ……私まだ何も……)
7:
廊下
海未「あら真姫、どこか悪いのですか?」
真姫 「……」カミノケクルクル
海未「練習は出れるのですね。わかりました」
真姫「……」
海未「そういえばこの前渡した歌詞で変更したい部分があるので、また打ち合わせをしたいのですが」
真姫「……」
海未「そうですね、今度の昼休みに時間を取りましょう」
真姫「……」
海未「えっ? ……ふふっ、真姫は面白いですね」
真姫「……」カミノケクルクル
9:
トイレ
真姫「ふぅ、マスクを取れば普通に喋れるみたいね」
真姫「おかげで今日一日、一言も喋ってないわ」
真姫「それにしても不思議。何も言ってないのにみんな話が通じてるようで」
真姫「海未の時に至っては私が冗談か何か言ったみたいに笑ってたし」
真姫「つまりこれって、自分で喋る必要がなくなるマスク、っていうことかしら」
真姫「海未を笑わせるなんて、私より話上手じゃない」
真姫「この調子でにこちゃんと仲直りできるといいけど」
真姫「さてと、もう部室に行かないと」
10:
部室
ガチャ
にこ「あっ……なんだ、真姫ちゃんか」
真姫「……」
にこ「みんなもう練習行ってるわよ。あんたも早く準備しなさいよね」
にこ「ってマスクしてるじゃない。大丈夫なの?」
真姫 (みんなそこ突っ込むわね)
にこ「あらそう、問題ないのね。まあ、体調管理はアイドルの基本なんだから、風邪なんか引いちゃだめなんだからね」
真姫「……」
にこ「ん?なによ」
真姫「……」
にこ「そうね」
にこ「あっ、そうそう」
真姫「……」カミノケクルクル
にこ「昨日は悪かったわね。ちょっと言いすぎたわ」
真姫「!」
真姫 (やったわ、いい感じね)
11:
真姫「……」
にこ「……ちょっと」
真姫「……」
にこ「私が謝ってるのに、何よそれ」
真姫 (えっ?)
にこ「今ウチの妹は関係ないでしょ!なんなのよもう!」
にこ「あーあ、なんか馬鹿みたい。もう先に行ってるわよ」ガチャッ
バタン
真姫「……」
12:
真姫「……おかしいわね」
真姫「途中まで良かったはずなんだけど、なんだかうまくいかなかったみたい」
真姫「にこちゃんすごく怒ってたけど、いったいこのマスクは何を伝えたのかしら」
真姫「海未の時の冗談といい気になるわ」
真姫「まったく、都合のいい返事ばかりしてくれるわけじゃないのね」
真姫「このマスクじゃダメね。そうとわかれば別の方法を考えなきゃ」
真姫「にこちゃんともっと仲良くなるには……」
真姫「あぁ、にこちゃん」
13:
真姫「やっと見つけた。探したわよ」
希「いらっしゃいませ」
真姫「他の商品はないの? 昨日の変なのは役に立たなかったわ」
真姫「あら、新しいの売ってるじゃない」
真姫「えーと、『必要のない手袋』?」
真姫「これも見た目はフツーの手袋ね。これは何が起こるの? あのマスクみたいに変なのは嫌よ?」
希「それはお買いになったお客様だけがわかることやん」
真姫「はいはい、わかったわよ」
真姫「まあいいわ。これちょうだい」
希「10万円になるやん」
真姫「いきなり値上げしたわね。これじゃあ真姫ちゃん貯金を切り崩すしかないわ」
真姫「うふふ。これでにこちゃんともっと仲良くなれるかしら」
希「お買い上げありがとうございますやん」
14:
次の日
通学路
真姫「今日も寒いわね」ガタガタ
真姫「そうだ、希から手袋を買ったんだったわ」
真姫「あれ、おかしいわね、確かカバンに入れたのに」ゴソゴソ
絵里「真姫」
真姫「あ、エリーじゃない」
絵里「これあげるわ。さっき間違って買っちゃったの」
真姫「熱っ。これ、おでん缶じゃない」
絵里「じゃあ、遅れるといけないからもう行くわね」
真姫「えっ、う、うん」
真姫「なによもう」
真姫「でも手に持ってるだけで暖まるわね。助かったわ」
15:
学校
真姫「なんだ、ちゃんとカバンに手袋入ってるじゃない」
真姫「さっきはちゃんと見てなかったのかしら」
真姫「今日こそにこちゃんと仲直りするんだからしっかりしないとね」
真姫「とりあえず昨日のことを謝らないと。練習が終わったら一緒に帰るのに誘ってみましょう」
17:
放課後
海未「では今日の練習はここまでにしておきましょう」
穂乃果「海未ちゃんことりちゃん!帰りにクレープ寄っていこーよ!」
ことり「穂乃果ちゃん、また太っちゃうよ」
穂乃果「久しぶりだから大丈夫だよ!ねっ、だから行こ?」
海未「油断は禁物ですよ」
ザワザワヤザワ
にこ「あいつらも元気ねー」
真姫「にこちゃん」
にこ「ん? なによ」
真姫「い、一緒に帰らない?」
にこ「……」
にこ「いいわよ別に」
真姫「やった」
真姫 (やった)
19:
にこ「あんたから誘うなんて珍しいじゃない」
真姫「うん……あのね、昨日のことなんだけど……」
にこ「昨日? 昨日のことなんて覚えてないわ」
真姫「えっ、でも……」
にこ「……」
にこ「もう気にしてないわよ」
にこ「スーパーアイドルのにこにーは小さなことでくよくよしないのよ」
真姫「にこちゃん……」
にこ「真姫ちゃん、もしかして1日中引きずってたの?」クスクス
真姫「もう!茶化さないで!」プンプン
20:
ビュゥー
にこ「うわ寒っ!」
にこ「今日は一段と冷えるわね……」ガクガク
真姫「あ、私手袋持ってるからにこちゃん使って」
にこ「ほんと?助かるわ。でも真姫ちゃんも寒いでしょ」
真姫「いいの、にこちゃんのためなら……あれ?」ゴソゴソ
真姫「また見つからないわ」ゴソゴソ
真姫「もう、どうして肝心な時になくなっちゃうのよ」ゴソゴソ
にこ「あーもう何やってんのよ、ほら」
ギュッ
真姫「!」
にこ「手を繋げばあったかいでしょ」
真姫「///」ボッ
にこ「なんか言いなさいよね//」




21:
真姫「今日は凄かったわね。にこちゃんと手を繋いじゃった」
真姫「そういえば手袋をはめようとした時におでん缶をもらったんだったわ」
真姫「寒くてもはめる必要なく暖まる手袋、ってことだったのね」
真姫「希、あの手袋はすごくよかったわ」
希「それはよかったやん」
真姫「これを機に、にこちゃんに急接近しようと思うの」
真姫「それでにこちゃんにプレゼントがしたいんだけど、何かないかしら」
23:
希「これ売ってるやん」
真姫「ええと、『必要のない指輪』?」
真姫「指輪ね。ピッタリじゃない」
真姫「これはいくら?」
希「100万円やん」
真姫「買うわ」サツタバドサー
真姫「綺麗な指輪ね。これがほんとに100万円でいいのかしら」
希「高いか安いかはお客様の考え方次第やん」
真姫「そうね。でもにこちゃんへのプレゼントだもの。いくら出しても惜しくないわ」
希「お買い上げありがとうございますやん」
真姫「ふふっ、にこちゃん喜んでくれるかしら」
真姫「あぁ、にこちゃん……」
24:
次の日
放課後
真姫 (今日も一緒に帰れたわ。渡すなら今がチャンスね)
真姫「にこちゃん」
にこ「んー?」
真姫「あのね、プレゼントがあるの」
にこ「なによ急に」
真姫「これ……」ガサッ
25:
にこ「ふぅん。開けてもいい?」
真姫「うん……」
にこ「何かしら」ガサゴソ
にこ「ゆ、指輪?」
にこ「綺麗だけど、すごく高そーね……」
にこ「いくらぐらいしたのよ?」
真姫「100万円よ」
にこ「ひゃくっ……!」
にこ「ダメよ、受け取れないわ」
真姫「気に入らなかった……?」
にこ「違うわよ。こんな高価なもの、タダでもらえるわけないでしょ」
27:
真姫「いいの。私の気持ちだから」
にこ「気持ち?」
真姫「とにかく今は受け取って。お願い」
にこ「……」
にこ「……やっぱりダメよ」
真姫「にこちゃん……」
にこ「ごめんね真姫ちゃん。でも、すごく嬉しかったわ」
真姫「うん……」
真姫「じゃあせめて、ちょっとつけてみてくれる?」
28:
にこ「今? いいわよ」
にこ「どう?」スッ
真姫「とても綺麗よ」
にこ「そうね。綺麗な指輪 」
真姫「にこちゃんが、よ」
にこ「何言ってんのよ//」
にこ「当然でしょ、スーパーアイドルのにこにーなんだから//」
真姫「うん、本当に」
にこ「なんか調子狂うわね///」
にこ「じゃあ、そろそろ返さないとね」スッ
ブブー
真姫「にこちゃん!危ない!」
にこ「えっ?」
グチャッ
29:





真姫「にこちゃん、学校行ってくるわね」
にこ「うん」
真姫「明日は休みだから、ショッピングにでも行きましょうか」
にこ「うん」
真姫「お腹空いたらコックさんに言って何か作ってもらってね」
にこ「うん」
真姫「じゃあ、行ってきます」
にこ「行ってらっしゃい」
真姫「ふふっ」
30:
真姫「にこちゃんは飲酒運転のトラックにはねられて、車椅子生活になった」
真姫「にこちゃんの家では大変みたいだったから治療費をウチで持って、ウチで一緒に暮らすことになったわ」
真姫「家に帰ればにこちゃんがいるなんて、とっても幸せ」
真姫「腕も足もなくなっちゃったけど、かわいいにこちゃんには変わりないわ」
真姫「にこちゃんも最初は落ち込んでたけど、最近は少しずつ元気になってきたし」
真姫「にこちゃんには私が必要なの」
真姫「私もにこちゃんさえいればいい」
真姫「にこちゃんは指輪をつけられなくなっちゃったけど、必要ないものだったわね」
真姫「そんなものなくても、私たちは結ばれたんだから」
31:

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