士郎「それで…誰も泣かずにすむのなら――」【前半】back

士郎「それで…誰も泣かずにすむのなら――」【前半】


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※地の文あり、冒頭は多め
本来静かなはずの夜の学校――
友人の頼みを聞いて遅くまで学校に残っていた俺が見たものはそれとはかけ離れた物だった
吹き荒れる砂荒らし、鳴り響く数多の金属のぶつかる音――
赤い槍を持った青い男と金ぴかの鎧をまとった男が夜の校庭で戦っていた
士郎「何だよあれ…」
青い男がかまえると同時に凄まじい魔力が放たれる
殺される…あの金ぴかの男は殺される――
青い男「誰だ!!」
士郎「あ…」
青い男の体が沈むと同時に、それの標的は自分に切り替わったとわかった
足が勝手に走り出す――
走らなければ殺される、死を回避しようと人気のない校舎の中へと逃げ込む――
立ち止まり振り返ると追いかけてくる足音はない
士郎「ふう、逃げきれ――」
青い男「よう、わりと遠くまで走ったなお前」
誰もいないはずの後ろから声をかけられる
青い男「運がなかったな坊主。ま、見られたからには死んでくれや」
容赦もなく男の槍は衛宮士郎の心臓を貫いた
衛宮士郎は死んだのだ――
2:以下、
士郎「ぐ……何が起きた?」
自分は殺されたはずだ
だが生きている
士郎「夢…だったのか?」
いやそんなことはない
制服には穴が開き、血がべっとりとついている
近くに赤い宝石が落ちている
わずかに魔力が入っている――
誰かが殺された自分を救ってくれたのだ――
朦朧とした意識の中、ふらつく足取りでなんとか家にたどり着き、床に倒れこむ
士郎「はあっ、はあ――いったい誰が――うぐっ!!」
痛みをこらえ息を整える
息を整えるとほとんど同時に侵入者用の結界が反応する
士郎「こんな時に泥棒か――同調、開始〈トレースオン〉」
自己暗示の言葉と共に、ポスターに強化の魔術をかける
そして天井から振り下ろされた銀光を避ける
青い男「あーあ、見えていたら痛かろうと俺なりの配慮だったんだがな」
士郎「お前は――」
青い男「一日に同じ人間を二度殺すはめになろうとは、いつになろうと人の世は血生臭いということか」
3:以下、
青い男「じゃあな、今度こそ迷うなよ坊主」
ギィンッ
士郎「あがっ!!」
反応できない度で繰り出された男の槍が、身構えてた武器で軌道が剃らされ腕を掠めるだけに留める
青い男「へえ、変わった芸風だなおい。心臓を穿たれて生きてるってのはそういう事か」
男が振るった槍を間一髪庭に飛び出ることでかわす
だが男の回し蹴りをまともに食らい土蔵まで吹き飛ばされてしまう
士郎「がは――あ…」
壁に勢いよく叩きつけられた衝撃で肺の中の酸素が押し出される
追撃が来る前になんとか土蔵の中に…ここならまだマシな武器が――
青い男「これで終わりだ――!!」
士郎「こ―――のぉおおおお!!」
ポスターを広げ一度きりの盾にする
なんとか防いだがポスターは破れ、壁まで吹き飛ばされる
青い男「詰めだ。今のはわりと驚かされたぜ坊主」
男の腕がまるでスローモーションのように動いて見える
一秒後には殺されているだろう――ふざけるな
助けてもらったのに、こんなとこで簡単に殺されるわけにはいかない――!!
士郎「平気で人を殺す、お前みたいなヤツに――!!」
4:以下、
士郎「え…?なに……?」
眩い光の中、それは俺の背後から現れた
その騎士は現れるなり俺を貫こうとした槍を打ち弾き、躊躇なく男へと踏み込んだ
青い男「――本気か、七人目のサーヴァントだと…!?」
青い男の槍を幾度か弾き、青い男が離れたのを確認した騎士は振り向き――
「――問おう。貴方が、私のマスターか」
闇を弾く声で彼女はそう言った
「召喚に従い参上した。
これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。――ここに契約は完了した」
そう、契約は完了した
彼女がこの身を主と選んだように。きっと自分も彼女の助けになると誓ったのだ
おそらくは一秒とすらならなかった光景。
されどその姿ならば、たとえ地獄に落ちようと鮮明に思い返す事が出来るだろう
僅かに振り向く横顔。どこまでも穏やかな聖緑の瞳。
時間はこの瞬間のみ永遠となり、彼女を象徴する青い衣が風に揺れる。
――差し込むのは僅かな蒼光。金砂のような髪が、月の光に濡れていた。
5:以下、
セイバーと名乗る少女は土蔵の外に飛び出し、外で待ち構えていた青い男とぶつかり合う
青い男「くっ、卑怯者め!!自らの武器を隠すとは何事だ!!」
セイバー「どうしたランサー、止まっていては槍兵の泣こう。そちらが来ないのなら私が行くが」
ランサー「その前に一つ訊かせろ。貴様の宝具、それは剣か?」
セイバー「さあどうかな。斧かもしれぬし、槍かもしれん。いやもしや弓ということもあるかもしれんぞ」
ランサー「ぬかせっ剣使い!!」
青い男、ランサーが槍を構える
士郎「あの構えは――」
ランサー「ついでにもう一つ訊くがお互い初見だしよ。ここらで分けって気はないか」
セイバー「断る。貴方はここで倒れろ、ランサー」
ランサー「そうかよ…その心臓、貰い受ける!!」
ランサーから凄まじい魔力が溢れだす
ランサー「刺し穿つ――」
士郎「危ないセイバー!!」
ランサーはセイバーに魔槍を放とうと――
それの動作を変え何処からか飛んできた剣を弾き落とす
ランサー「くっ――何者だ!!」
6:以下、
金ぴか「数刻振りよな」
士郎「あれは学校にいた――」
ランサー「アーチャー…!!」
セイバー「バカな――何故貴方がここにいる、アーチャー!!」
アーチャー「その出立ち、セイバーのサーヴァントか」
セイバー「私を知らない…?まさか貴方も此度また召喚されたというのですか!?」
アーチャー「引けランサー。此度は特別に見逃してやろう」
ランサー「流石に二人同時に相手するのはきついしな。退かせてもらうぜ」
セイバー「待てランサー!!――っ!!」
セイバーは投げられた剣を見えない剣で弾き落とす
アーチャー「敵に向かって背を向けるとは、無謀にも程があるぞセイバー」
セイバー「……アーチャー、十年前の決着を今ここで果たすか」
士郎「待ってくれセイバー、ちゃんと説明をしてくれ。何が何だが……」
セイバー「敵を前にして何を言うのですかマスター」
士郎「マスターなんて呼ぶのはやめてくれ。俺は衛宮士郎だ」
セイバー「ではシロウ、指示を」
士郎「だから説明をだな」
アーチャー「どうしたセイバー、我はいつでもかまわんぞ。それとも抵抗せず我の処刑を受け入れるか」
金ぴかの男の背後に無数の剣が現れる
セイバー「まずい――」
7:以下、
凛「待ちなさいアーチャー」
アーチャー「雑種か」
凛「だから雑種じゃないっての!!ったく」
士郎「とお――さか――?」
凛「こんばんは素人のマスターさん」
アーチャー「雑種、どうするつもりだ」
凛「彼は聖杯戦争について何もわかってないみたいだからね。説明してあげるのよ」
アーチャー「くだらん。我は好きにさせてもらうぞ」スッ
凛「ったく、あれのどこが絶対服従なのよ。何はともあれ上がっていいかしら衛宮くん」
士郎「え…ああ」
セイバー「シロウ、敵のマスターを信用するつもりですか?」
士郎「遠坂は大丈夫だ、それに俺達を殺すつもりならさっきのヤツを止める必要はなかったはずだ」
セイバー「それはそうですが…いえ、シロウがそういうのなら今は受け入れましょう」
士郎「つまり聖杯戦争ってのは七人の魔術師とサーヴァントによる殺し合いってことか?」
凛「そうよ。詳しいことは聖杯戦争の監督者に聞くのが一番ね」
8:以下、
教会に行き、言峰神父の話を聞いた帰り道
凛「ここでお別れね。義理は果たしたし、これ以上一緒にいると何かと面倒でしょう」
士郎「なんだ。遠坂っていい奴なんだな」
凛「は?何よ突然。おだてたって手は抜かないわよ」
士郎「知ってる。けどできれば敵同士にはなりたくない。俺、お前みたいなヤツは好きだ」
凛「な―――と、とにかくサーヴァントがやられたらさっきの教会に逃げ込みなさい。そうすれば命だけは助かるから――」
士郎「遠坂?」
「ねえ、お話は終わり?」
幼い声が響き、視線が坂の上に引き寄せられる。そこには――
凛「――バーサーカー」
「こんばんはお兄ちゃん」
士郎「――――」
凛「――やば。あいつ桁違いだ」
「あれ?なんだ、あなたのサーヴァントはお休み?二匹一緒に潰してあげようと思ったのに」
坂の上から俺達を見下ろしながら少女は不満そうに言う
「はじめましてリン。わたしはイリヤ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言えばわかるでしょ?」
凛「アインツベルン―――」
遠坂の反応が気にいったのか、少女は嬉しそうに笑みをこぼし
イリヤ「じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」
歌うように、背後の異形に命令した。
9:以下、
巨体が飛ぶ、バーサーカーと呼ばれたモノが何十mという距離を一息で落下してくる
セイバー「――シロウ下がって!」
セイバーはバーサーカーの落下地点に走り、バーサーカーの斧を見えない剣で受け止める
セイバー「…くっ!!」
士郎「駄目だ、バーサーカーの方がセイバーより力も早さも上だ!!」
バーサーカーの猛攻を前にセイバーはどんどん押されてゆき――
凛「――Vier Stil Erschieβung!」
バーサーカーの背中に凄まじい威力の魔術の弾丸が襲いかかる、しかし
凛「っ…!?なんてでたらめな体してんのよこいつ!!」
襲いかかる魔術を意にも介さず、バーサーカーはセイバーに突進し――
士郎「逃げろセイバー!!」
バーサーカー「■■■■■■■―――ッ!!!!」
完全に防ぎに入ったセイバーは簡単に吹き飛ばされた
だん、と遠くに何かが落ちる音。
…鮮血が散っていく、もはや立ち上がる事などできない体で彼女は意識などないままで立ち上がる
そこにバーサーカーがとどめを刺そうと――
士郎「――え?」
どたんと倒れた、なんで……?
俺はセイバーを突き飛ばそうとしたはずなのに――
士郎「が――は―――」
イリヤ「――なんで?……もういい。こんなの、つまんない。バーサーカー」
バーサーカーは攻撃をやめ、イリヤの元へと戻っていく
イリヤ「――リン、次に会ったら殺すから」
少女は去っていく
凛「……あ、あんた何考えてるのよ!もう助ける事なんて出来ないってのに……!!」
10:以下、
それは五年前の冬の話――
月の綺麗な夜だった。自分は何をするでもなく父である衛宮切嗣と月見をしていた
切嗣「僕はね、正義の味方に憧れていたんだ」
士郎「何だよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」
切嗣「うん。ヒーローは大人になると名乗るのが難しくなるんだ。そんなこと、もっと早くに気がつけば良かった」
士郎「そっか。それじゃあ仕方ないな」
切嗣「そうだね。本当に、しょうがない」
士郎「うん、しょうがないから――俺が代わりになってやるよ」
切嗣「ん?」
士郎「爺さんは大人だからもう無理かもしれないけど俺なら大丈夫だろ。任せろって、爺さんの夢は――」
言い切る前に父は笑った。そして――
切嗣「そっか――安心した」
静かに目蓋を閉じて、その人生を終えていた
14:以下、
士郎「ぐ――あ……?」
凛「おはよう。勝手にあがらせてもらってるわ、衛宮くん」
士郎「そっか――遠坂が助けてくれたのか。ありがとう」
凛「これに懲りたら次からはもっと考えて動いてよね。それで本題に入るけど」
士郎「?」
凛「衛宮くん、これからどうするつもり?」
士郎「正直わからない。聖杯を奪いあうために殺し合うなんてバカげてる。正直俺は聖杯なんてものに興味はない」
凛「それ、セイバーの前で言ったら殺されるわよ」
士郎「な…殺されるってどうして!?」
凛「サーヴァントの目的も聖杯だからよ。彼らも聖杯に叶えたい願いがあるからこそ召喚に応じるのよ」
士郎「セイバーにも叶えたい願いがあるってのか…」
凛「それで昨日あったことは覚えてる?」
士郎「ああ、だけどどうして俺は助かったんだ?」
凛「勝手に治ったのよ。おそらくセイバーと契約したことでセイバーの治癒の力が流れ込んだんでしょうね」
士郎「そうだ、セイバーは無事なのか!?」
凛「ええ、道場の方にいるみたいよ」
士郎「そうか…良かった」
凛「それで昨日のマスターを覚えてる?あの子必ずわたし達を殺しにくるわ」
士郎「――」
凛「あの子のサーヴァント、バーサーカーは桁違いよ。未熟な貴方にはアレを撃退できないわ」
士郎「悪かったな。けどそういう遠坂だってアイツには勝てないんじゃないか?」
凛「正面からじゃ無理でしょうね。それで提案なんだけど、わたしと手を組まない?」
15:以下、
士郎「俺と遠坂が?」
凛「そう。わたしのアーチャーは今回の聖杯戦争に乗り気じゃないのよ」
士郎「乗り気じゃないって、さっきサーヴァントは願いを叶えるためにって――」
凛「わたしのアーチャーはちょっと特別なのよ。願いはないけど他のサーヴァントに聖杯を渡す気はないっていう」
士郎「なんだよそれ?」
凛「さあね。同盟の対価として、マスターとしての知識を教えてあげるし、暇があれば魔術の腕も見てあげるけどどう?」
士郎「……わかった。手を組もう」
アーチャー「物好きだな雑種、そのような下等なモノと協力するか」
士郎「うを!?いつの間に――」
凛「アーチャー、何か文句あるわけ?あと雑種って呼ぶな」
アーチャー「雑種は雑種だ。なに、別に口を出すつもりなどない」
凛「なら口を挟まないで。それで用もなく出てきたわけ?」
アーチャー「一応貴様は我のマスターだ。報告をしておこうと思ってな」
凛「報告?何よ」
アーチャー「貴様がここで怠けてる間に龍洞寺にいた二匹のサーヴァントを消しておいた」
凛「はあ!?龍洞寺ってことはキャスターよね?」
アーチャー「ああ。民を裁くのは王であるこの我の役目だ。勝手なことは許さん」
凛「それでもう一人のサーヴァントってのは?」
アーチャー「確か偽のアサシンだ。道の邪魔だったのでな、消えてもらった」
士郎「……俺いなくてもこいつ一人でバーサーカーを倒せるんじゃ――」
ザシュ
凛「ちょっとアーチャー!?」
アーチャー「貴様、不敬であるぞ。貴様が雑種の僕じゃなければ首をはねていたぞ?」
士郎「」コクコク
16:以下、
アーチャー「ふん、狂犬など我が相手をする価値などない。我と戦う資格があるのは真の英雄だけよな」
凛「ごめん衛宮くん。とにかくアーチャーはバーサーカーと戦う気がないのよ。こいつ令呪もはねのけるし…」
アーチャー「王の中の王であるこの我が何故雑種ごときに従ってやらねばならん」
士郎「……遠坂もなんだか大変そうだな」
アーチャー「我は喉が渇いたぞ。雑種、美味い酒を持ってこい」
凛「朝っぱらから飲酒しようとしてんじゃないわよ!!」
アーチャー「時間等関係ない。我が飲みたいと言えば用意するのが当然であろう」
士郎「家には酒なんてないぞ。お茶ならあるけど」
アーチャー「我に出すからには上等な物を用意せよ」
凛「そうだアーチャー、家から荷物とってきて」
アーチャー「雑種、我にそのような雑事をさせるつもりか?」
凛「良いじゃない。どうせアンタの宝物庫の中には移動用のもあるんでしょう?」
アーチャー「これで自分で取り出せ」つ取り寄せ○ッグ
士郎「これ別の作品じゃ――」
アーチャー「我の宝物庫には人間の作る物の全ての原典が入っているのだ」
凛「便利ねこれ」
士郎「おい遠坂、そんなたくさんの荷物どうするつもりだ?」
凛「今日からここに泊まるから」
士郎「は?」
凛「同盟組む以上一緒の家にいた方が色々と便利でしょ?別棟の客室の一番いい部屋借りるから」
士郎「え?」
アーチャー「雑種、食事は上等な物を用意せよ。我は食事にはうるさいぞ」
凛「言っとくけど拒否権はないからね」
士郎「なんでさ!?」
アーチャー「うるさい」シュッ
ザクッ
士郎「あ、はい」
17:以下、

凛「それじゃあやっぱり、当面は様子見かな」
セイバー「それについては提案が。アーチャーの目は鷹の目のそれと聞きます。彼に屋根の上から見張って貰うというのは」
凛「無理ね」
アーチャー「断る。我が何故そのような事をせなばならぬ」カチャカチャシュー
凛「さっきからアンタは何やってんのよ」
アーチャー「ぷらもでるとやらを組み立てているのだ。昨日散歩の途中で会ったワカメが持っていたのでな」
凛「ワカメ?まさかアンタそれ奪ったんじゃないでしょうね」
アーチャー「民の物は我の物、我の物は我の物だ」
凛「……流石史上最悪の暴君」
士郎「どうでもよくないけど家の中でスプレー塗装はやめてくれよな」
凛「それで学校以外出かけるときは常にセイバーを連れて歩きなさいよ衛宮くん」
セイバー「学校にいる間はどうするのですか?」
凛「アーチャーの道具があるし大丈夫よ」
アーチャー「待て雑種、何を勝手に我の宝物を使う気でいる」
凛「だってどうせアンタ側にいる気ないでしょ?だったら出しなさいよ」
アーチャー「……仕方あるまい。こいつを貸してやろう。常に脅威を自動で迎撃するすぐれ物だ」
凛「目立ち過ぎるから論外ね」
アーチャー「注文の多い…第一あと残っているサーヴァントはライダーとランサーだけであろう」
凛「そういやそうだったわね。イリヤスフィールとランサーは人目のつく時間は襲ってこないでしょうし」
18:以下、
士郎「ライダーにだけ気をつければいいってわけか。でもライダーがどんなヤツかわからないしな」
凛「それだけどライダーのマスターは学校の人間よ」
士郎「何だって!?」
凛「学校に結界が張られてるのに気がつかなかった?あれは多分ライダーのマスターの仕業よ」
士郎「あの違和感は結界だったのか。でも何でライダーのマスターってわかるんだ?」
凛「消去法よ。まずキャスターならあんな素人丸出しの結界を張らないし、アサシンがキャスター側だったって事はアサシンでもない」
士郎「それで?」
凛「バーサーカーとイリヤスフィールの実力ならあんなの必要ないし、ランサーでもなかった」
士郎「残るはライダーのみってわけか。それで結界ってのはどんなのなんだ」
凛「人の魂を吸い上げてサーヴァントの強化をするってヤツよ」
士郎「そんなの発動したら学校にいる皆が――」
凛「死ぬわね」
士郎「そんなことさせられない」
凛「だから止めるんじゃない」
士郎「どうやって?」
凛「発動させるのを待つしかないわね」
士郎「さっきと言ってる事が違うじゃないか」
凛「矛盾してるって?結界はもう張られちゃってるの。表に出てくるのは発動させるときしかないわ」
士郎「発動までにあとどのぐらいかかるんだ?」
凛「六日ってところね。それまでは大人しくしてなさい。自分から探し回って敵に知られるのもバカバカしいし」
士郎「六日か……」
19:以下、
凛「その間にみっちり教え込んであげるわ。バーサーカーとも近いうちに戦わなきゃいけないんだし」
士郎「ああ頼む。セイバーも剣の稽古を頼んでいいか?」
セイバー「もちろんです。その前にシロウ、一つ頼みが」
士郎「なんだ?」
セイバー「私はシロウからの魔力の提供が不十分です。なので普段は寝て魔力の温存をさせたいのです」
士郎「寝てると消費を抑えられるのか?」
セイバー「はい。それと食事でわずかばかり魔力を補給できます」
士郎「そっか、すまない」
セイバー「いえ。もし私が寝ている間に何かがあれば令呪で呼んでください」
士郎「わかった」
アーチャー「それよりセイバー、貴様は我を知っているようだったが?」
セイバー「……私は十年前に行われた聖杯戦争でもセイバーとして召喚されていました」
凛「嘘っ!?それってどんな確率よ!?」
セイバー「そのときにアーチャー、貴方もアーチャーとして呼ばれていた」
アーチャー「我には聖杯戦争に参加した等という記憶はないが…貴様は特別なサーヴァントのようだな」
士郎「どういう事だ?」
凛「召喚されたサーヴァントはあくまでもコピーなの。本体は英霊の座ってところにいるのよ」
士郎「それがセイバーが特別だってのはどう関係するんだ?
凛「本体には召喚されたという記録を知る事はできるけど、何が起きたかという記憶を知る事はできないのよ」
アーチャー「つまり我が参加していたという事を本来知る事は不可能なのよな」
セイバー「私はまだ死んでいません。それゆえ記憶も引き継げるのです」
凛「死んでない?それってどういうこと?」
20:以下、
セイバー「私は死ぬ前に聖杯を手に入れる事を条件に世界と契約しました。なので死の直前を永遠に繰り返しているのです」
凛「コピーじゃなくて本人が呼ばれてるって事ね?」
セイバー「はい、私が霊体化できないのもそれが理由です」
凛「ちょっと待って、アーチャーを知ってるってことはアーチャーと戦ったの?」
セイバー「はい、前回の聖杯戦争で最後に残ったサーヴァントが私とアーチャーでした」
凛「うそっ、アンタ達そんなに強かったの!?それでどっちが勝ったの?」
セイバー「決着は着いていません。聖杯を前にして私はマスターに裏切られました」
士郎「裏切られた?」
セイバー「私の前回のマスター……衛宮切嗣は令呪を二画使い私の手で聖杯を破壊させたのです」
士郎「おや…じ……?」
凛「衛宮君のお父さんって前回の聖杯戦争に参加してたの!?」
セイバー「この屋敷は聖杯戦争の拠点として使っていたものです。シロウが召喚に使った魔法陣はその時にアイリスフィールが描いた物でしょう」
士郎「あいりすふぃーる?」
セイバー「アイリスフィール・フォン・アインツベルン。前回の聖杯戦争の間、私と共に行動をしていたキリツグの妻です」
士郎「親父の奥さん?いやそれよりアインツベルンって遠坂」
凛「昨日のあの子ね。前回のアインツベルンは外部の魔術師を婿に迎え入れて聖杯戦争に参加させたとは聞いてはいたけれど」
アーチャー「人間と人形の混ざりものとは酔狂なモノを作ったと思ってはいたがそういうわけか」
士郎「?」
セイバー「まさか…ありえない。あれから十年の月日が経っているのですよ!?」
アーチャー「あの人形はあれ以上成長せんという事だ。貴様も似たようなものであろう」
セイバー「……」
凛「なるほどね、あの子が衛宮君を狙ってきたのはそれが理由か」
士郎「おい、それぞれで納得してないでわかるように説明してくれよ」
凛「あの子は多分あなたのお父さん、衛宮切嗣の娘よ」
士郎「親父の?」
凛「そうよ。切嗣って人はセイバーだけじゃなくて、奥さんやその家系のアインツベルン、そして実の娘のイリヤスフィールを裏切って聖杯を破壊した。つまりあなたは裏切り者の子供ってわけ」
士郎「……」
凛「もう遅いわね。お話は今日はここまでにしましょう」
22:以下、
翌朝
士郎「げ、もう6時か。朝飯の用意をしないと」
凛「おはよ――朝早いのねアンタ」
士郎「と…遠坂?どうした…何かあったのか!?目つきが尋常じゃないぞ」
凛「気にしないで、朝はいつもこんなんよ。顔でも洗えば目が覚めるわ」
士郎「顔を洗うだけなら玄関の廊下に洗面所がある」
凛「あーそういえばあったわね…そんなの……」
士郎「……ほんとに大丈夫なのかあいつ?」
ピンポーン
凛「士郎―――?誰か来たけど――――?」
士郎「ああ、気にしないでいい!!この時間に来るのは身内だからってまずい!!」
桜「―――え?」
凛「おはよう間桐さん。こんなところで顔を会わせるなんて以外だった?」
桜「遠坂…先輩……先輩…あの、これはどういう……」
士郎「ああ、それが話せば長くなるんだけど――」
凛「長くならないわよ。単にわたしがここに下宿することになっただけだもの」
桜「……先輩、本当なんですか」
士郎「要点だけ言えばな。ちょっとした事情があって遠坂にはしばらくうちに居てもらうことになった」
桜「今の話、本当に――」
凛「これはわたしと士郎で決めた事よ。家主である士郎が同意したんだからこれは決定事項。この意味わかるでしょう?」
桜「……わかるって、何がですか」
凛「今まで士郎の世話をしていたようだけど暫くは必要ないって事よ。来られても迷惑だし、来ない方が貴女の為だし」
桜「わかりません」
凛「はい?」
23:以下、
桜「……わたしには遠坂先輩のおっしゃることがわからないと言いました」
凛「ちょっ、ちょっと桜、アンタ――」
桜「お邪魔します。先輩、お台所お借りしまs――」
アーチャー「朝から何を騒いでいる雑種」
桜「え――どうして先輩の家に貴方が……」
アーチャー「誰の許可を得て我を見ている、女。失せよ」
アーチャーの背後から飛び出た一本の剣が桜に襲いかかる
桜「!!」
セイバー「はあっ!!」
それをセイバーが弾き、床の落ちる前に剣は消える
アーチャー「邪魔をする気かセイバー」
セイバー「貴方こそ何のつもりですかアーチャー」
アーチャー「邪魔をするというなら雑種もろとも散れ」
玄関という狭い空間にセイバー達を囲むように数えきれない程の剣が現れる
凛「いい加減にしなさいアーチャー!!」
アーチャー「……ふん、さっさと失せよ雑種。そして二度と我の前に姿を現すな」
士郎「さ、桜。外で話そう」
桜「……はい」
凛「……アーチャー、何でいきなり桜を殺そうとしたの。桜は何の関係もない一般人なのよ」
アーチャー「本気で言っているのか雑種、我はあれ程気色の悪いモノを見た事がない」
凛「それどういうこと?」
アーチャー「朝から気分が悪い。気晴らしに出かけるとしよう」スッ
凛「待ちなさいアーチャー!!……ったく、セイバー、アーチャーが言ってた意味わかる?」
セイバー「いえ…私には彼女はごく普通の女性に見えましたが……」
24:以下、
士郎「悪いな桜。あいつも悪気があったわけじゃないんだ」
桜「先輩……」
士郎「どうした?」
桜「あの男の人は先輩の知り合いなんですか?」
士郎「俺のってより遠坂の知り合いだな。あいつも暫く家に泊まるんだ、だからその――」
桜「ふふ…そうですか……遠坂先輩の……姉さんは――」
士郎「さく…ら……?」
桜「何でもないですよ先輩。ごめんなさい先輩、暫くご飯作りに行けません」
士郎「桜が謝ることじゃない。むしろ俺が謝らないと――」
桜「良いんです。先輩は何も悪くありません。悪いのは全部――ですから」
士郎「――え?」
桜「何でもありません。それじゃあ先輩、また学校で」
士郎「あ…ああ、またな桜」
桜「はい、それじゃあ失礼します」
士郎「……帰るか、あれ?何か忘れてる気が――」
「下宿ってどういうことよ――――!!!!」
士郎「やべっ、藤ねえ!!」
大河「へー、セイバーちゃんて切嗣さんと知り合いだったんだ」
セイバー「はい、10年前にキリツグの妻の護衛を」
大河「えっ、十年前ってことはもしかしてセイバーちゃんって私より年上!?」
セイバー「タイガの年は知りませんがおそらく」
大河「全然そんな風に見えないんだけどなー」
セイバー「私はわけあって15の頃から成長が止まっているので」
大河「何それ羨ましい」
士郎「藤ねえ、早くしないと遅刻するぞ」
大河「あ、もうこんな時間!?行ってくるわねえ、士郎も遠坂さんも遅刻したらダメよー」
凛「藤村先生、ここでも慌ただしいのね」
士郎「ははは……」
32:以下、
慎二「おい衛宮」
士郎「なんだ慎二?」
慎二「何で今朝遠坂と一緒にいた」
士郎「あー偶然会って一緒に来たんだよ」
慎二「偶然?そんなわけあるもんか、遠坂は今まで誰とも一緒に登校したことがないんだよ」
士郎「そうなのか?どおりで朝からこっちを見てくるヤツが多いわけだ」
慎二「どういう事かしっかり説明しろよ」
士郎「そう言われたって困る。じゃあな、生徒会の手伝いがあるんだ」
慎二「待てよ!!」ガシッ
士郎「何だよ、もう話すことなんてないだろ」
慎二「いーや、きっちり説明してもら――これは令呪…?」
士郎「な――」
慎二「そうかそうだよなあ、どうりで遠坂とお前が一緒にいるわけだ。マスター同士だもんなあ」
士郎「慎二お前何でそれを――」
慎二「何で?そりゃ僕もマスターだからに決まってるだろう?」
士郎「お前も魔術師だったのか!?」
慎二「何にも知らないんだな衛宮は。間桐と遠坂は代々魔術師の家庭さ」
士郎「間桐が……?」
慎二「ここで魔術について話すのもなんだ、今から僕の家に来ないか?」
33:以下、
間桐宅
慎二「まあそんなに警戒すんなよ衛宮」
士郎「警戒するに決まってるだろう。これ見よがしにサーヴァントをいさせやがって」
慎二「ライダーのことかい?何もさせやしないよ、お前のサーヴァントがいきなり仕掛けてこないとは限らないからな」
士郎「ライダーのサーヴァント…ってことは学校の結界は――」
慎二「ああ、僕が張ったんだ」
士郎「お前、あれがどういうものかわかっているのか?」
慎二「当たり前だろ?」
士郎「慎二お前ッ!!」
慎二「そう騒ぐなよ、ただの保険だよ保険。僕は戦う気はないんだよ」
士郎「だったら何の保険なんだよ。戦う気がないならあんなもん必要ないだろ」
慎二「こっちに戦う気はなくても向こうはそうじゃないだろう?昨日だって明らかに人間じゃない金ぴかに……」ガクブル
士郎「金ぴか?あっ……」
慎二「あってまさか衛宮、あいつの事知ってるのか!?」
士郎「い、いや人違いの可能性もあるし……」
慎二「あんな金ぴかのヤツがそう何人もいてたまるか!!知ってるんだろ!?言えよ!!」
士郎「と、遠坂のサーヴァントだと思う」
慎二「遠坂のサーヴァントだと!?よし衛宮、僕と手を組んで遠坂を倒そう!!」
士郎「いやちょっとそれは無理というか」
慎二「何でだよ!?お前ああいうヤツ許せない人間だろう!?あんなヤツ野放しにしておけないだろう!?」
士郎「……慎二、それでもあんな結界を使おうとするヤツとは手を組めない。じゃあな」
慎二「おい待てよ、頼むから――あの金ぴかと青タイツに仕返しするまでは――」
士郎「青タイツ?とにかく――お前があの結界を発動させるっていうなら俺は容赦しないからな」
34:以下、
士郎「こんなもんかな。アーチャーは今夜は飯食うのか?…それより桜は大丈夫かな」
「お兄ちゃん、こんなところで何してるの?」
士郎「っ!?」
イリヤ「もう、そんなに驚かなくたっていいじゃない」
士郎「えっ、イリヤ…スフィール……?」
イリヤ「イリヤでいいよ、こんにちはお兄ちゃん」
士郎「あ、ああこんにちはイリヤ……今日はバーサーカーは連れてないのか?」
イリヤ「何言ってるのお兄ちゃん、今は夜じゃないよ?聖杯戦争は夜にするものでしょう?」
士郎「それじゃあ今は戦わなくていいんだな?」
イリヤ「うん、でも夜に会った時は殺すね?」
士郎「イリヤは…その、切嗣の――」
イリヤ「……」
士郎「いや、何でもない。イリヤはこの辺りに住んでるのか?」
イリヤ「ううん違うよ。郊外の森にね、お城が建ってるの。そこに住んでるんだ」
士郎「郊外の森の城?そこに一人で住んでるのか」
イリヤ「口うるさい使用人が二人いるわ。そろそろ帰らないと怒られちゃう」
士郎「帰るのか?」
イリヤ「うん、次会ったら殺すねお兄ちゃん」
士郎「昼間だったら殺さないんだろう?」
イリヤ「え?そうだけど――」
士郎「だったら俺はまたイリヤと話したいな」
イリヤ「――――、考えといてあげる。じゃあねお兄ちゃん」
35:以下、
士郎「ただいまー」
セイバー「随分と遅い帰りですねシロウ」
士郎「げっセイバー」
セイバー「げっとは何ですか。シロウ、貴方はマスターとしての自覚が足りません。サーヴァントも連れずに何を考えているのですか」
アーチャー「我の宝物がその雑種を守っているのだ問題はあるまい」
セイバー「アーチャー、口を挟まないでください。これは私とシロウの問題です」
アーチャー「雑種、我は腹が空いた早く馳走を用意せよ。我の飯の準備ができるのだ、光栄に思うがよい」
士郎「すぐに準備するよ。今日は豚肉が安かったんだ」
アーチャー「貴様ァ!!雑種の分際で我に安物の肉を食わせる気か!!」
士郎「仕方ないだろう!?衛宮家の財布はそんなに裕福じゃないんだ、ただでさえ急に三人も増えたのに」
アーチャー「畏れ多くも我に報酬を求める気か?」
凛「あら、住ませてもらうんだからそれぐらい当たり前でしょう?」
アーチャー「我が住んでやってるのだぞ?光栄には思えど――」
凛「あらぁ?アーチャーってば財宝財宝言ってるくせに食事代や宿代も出せないぐらい貧乏なの?」
アーチャー「何だと?」
凛「そうよねえー、そんな金ぴかの鎧作っちゃったらもう一文も残らないわよねえ」
アーチャー「良いだろう!!褒美を受け取るがいい!!」
士郎「うわあ!?どこに入れてたんだこの大量の宝石!?」
アーチャー「ふははは!!思い知ったか雑種、我が財宝の凄さを!!」
凛「ちょろいわー」
アーチャー「む?何か言ったか?」
凛「いいえ?うわあ流石英雄王様ー、態度だけじゃなくて懐も大きいのねー」
アーチャー「ふはははは!!我を敬う気になったか雑種!!」
士郎「赤いあくま…」
凛「何か言ったかしら衛宮君?」
士郎「い、いや何でも……」
51:以下、
士郎「取りあえず今日は買ってきた食材で我慢してくれ。無駄にはできないからな」
アーチャー「今の我は気分がいい。特別に許す!」
凛「ふ…ふふ……これだけあれば衛宮君と山分けしても100年…いや200年は遊んで――いえ魔術の研究を…うふふ」
士郎「……」
大河「たっだいまー!!って何このお宝の山!?」
アーチャー「我からの褒美だ、存分に受け取るがいい!!」
大河「本当に!?すっごーいアーチャーさんお金持ちなのねぇ…これなら新しいバイクを――」
アーチャー「バイク?」
大河「アーチャーさん知らないの?」
アーチャー「知識としては知っている。原典も我の宝物庫にあるはずだが――」
セイバー「昔切嗣に用意してもらったものを使っていましたが…あれは良いモノです」
アーチャー「ほう、セイバーが言うのなら間違いなさそうだ。雑種、明日我をそのバイクとやらを売ってる店に連れていけ」
大河「仕事あるから連れて行くのは無理ねー。お店の位置なら教えてあげられるけど」
アーチャー「では場所を教えろ」
セイバー「……」ソワソワ
士郎「セイバーも行って来たらどうだ?」
セイバー「で、ですが私にはシロウを護衛する任務が――」
凛「大丈夫よセイバー。私がついてるし、それにアーチャーの宝物もあるんだし」
セイバー「リンがついているのなら安心ですね。それでは私も――」
52:以下、
凛「今夜はちょっと出かけるから魔術を見てあげられないけど今のうちに聞いておきたい事ある?」
士郎「そうだな……そういや令呪って何ができるんだ?」
凛「サーヴァントを律する三回だけの命令権、サーヴァントに三回絶対に逆らえない命令をできるんだけど、中には効果の薄れる命令があるわ」
セイバー「例えば必ず聖杯を手に入れろ、必ずマスターの命を守りきれ等という命令はほとんど効果はありません」
アーチャー「マスターの命令に全て従え等というモノもな、なあ雑種」
凛「う、うるさいわね」
セイバー「サーヴァントに対しそのような命令をする事等あまり考えられませんが――リン?」
凛「な、何かしら」
セイバー「いえ、貴女の様子が少し変でしたから」
凛「そんなことないわよ?」
士郎「そういえば遠坂、前にアーチャーが令呪をはねのけたって言ってたよな?」
セイバー「私のように対魔力を持っているサーヴァントならばある程度は抗う事ができます」
アーチャー「この雑種は恐れ多くもこの我に、マスターに絶対服従等とふざけた命令をしたのだ」
セイバー「なるほど、リンは令呪を一つ無駄にしたのですね」
凛「」
士郎「ああ、だから令呪を無駄な命令に使うなって――」
アーチャー「本来ならそのような命令等令呪をもってしても不可能だ。第一雑種の分際でこの我を従わせよう等と万死に値するのだが――」
士郎「だが?」
53:以下、
士郎「だが?」
アーチャー「この雑種は特別だったようだ。不安定だがこの我をわずかばかり縛っている」
士郎「それってお前が――アーチャーが遠坂の命令に逆らえないってことか?」
凛「逆らいまくってるわよこいつ」
アーチャー「王であるこの我が雑種ごときの命に従う道理はなかろう」
士郎「じゃあ何でアーチャーは遠坂に何もしてないんだ?万死に値するんだろう?」
アーチャー「む――」
凛「どうかしたアーチャー?」
アーチャー「我の宝物庫を開けた盗人――いやこの感じは――」
凛「だからどうしたのよ、何かあったわけ?」
アーチャー「――くく、面白い事になりそうだぞ雑種」
凛「どういう事よ?」
アーチャー「今はまだ気にすることはない。お前はただいつも通り我の臣下として動いておればいい」
凛「もったいぶらずにさっさと言いなさいよ」
アーチャー「楽しみは後に取って置く方が良かろう?なに、心配せずとも直にわかるだろうさ、生き残ってさえおればな」
凛「へえ…やる気がなさそうだったあんたがそんな顔するなんてよっぽど良くない事なんでしょうね」
アーチャー「斯様な偶然、二度と巡り合えんぞ?此度の聖杯戦争、我が本気を出す価値となりそうだ」
54:以下、
夜中――
士郎「ふぅ、昨日と一昨日はやれなかったからな」
土蔵の中、二日ぶりに魔術の鍛錬を再開する
士郎「――同調、開始(トレース・オン)」
いつも通り、自分自身に対する暗示の言葉を述べある魔術を発動させる
士郎「――基本骨子、解明。――構成物質、解明」
ここまではいつも成功するが、ここから先で失敗する
士郎「――構成物質、補強」
だがあの日の晩、ランサーに襲われたときは成功した
あの時の感覚を思い出せ――
士郎「――っ、失敗か。……また気分転換でもするか、――投影、開始(トレース・オン)」
手元に思い浮かべた見た目の部品が落ちるのを感じる
士郎「……やっぱり中身のない空っぽか」
アーチャー「ほう、なかな面白い芸当をするではないか」
士郎「ッ!!アーチャー!?遠坂と一緒に出掛けたんじゃ――」
アーチャー「何故我が凛に付き合わねばならん」
士郎「お前、遠坂と一緒にいないときは遠坂の事名前で呼ぶんだな」
アーチャー「あれは雑種と呼んだときの反応が面白いのでな」
士郎「確かに雑種って呼ばれる度に変な顔を――」
アーチャー「ほう。ただの人形かと思うたが、愉悦はわかるようだな」
55:以下、
士郎「なんで俺が人形なのさ?」
アーチャー「お前は人間の真似事をしようとする人形といったところか」
士郎「なんでさ?」
アーチャー「ふむ、贋作か……これらも貴様が作ったものか?」
士郎「聞いてないし。…ああ、そうだけどそれがどうかしたのか?」
アーチャー「ただの贋作というわけではない…か」
士郎「何だよ、何か変か?」
アーチャー「投影魔術は本来長時間残るものではない、長くても数刻で完全に消え失せる」
士郎「そうなのか?でも俺が作ったヤツは全部残ってるぞ?」
アーチャー「多少貴様も特別なようだな」
士郎「どういう事だよ?」
アーチャー「贋作やその作成者は気に食わんが、我は貴様に興が湧いたぞ贋作者(フェイカー)。特別に誅さずにおいてやろう」
士郎「そりゃどうも、用がないなら気が散るからどこか別の場所に行ってくれないか?」
アーチャー「ふ、我に目が眩むは森羅万象の摂理であるから仕方あるまい、気をきかしてやろう。ふははははは!!」
士郎「……何しにきたんだあいつ?」
56:以下、
翌朝――
大河「新都でまたガス漏れだってさ、あんた達も気をつけなきゃダメよー?」
士郎「わかってる」
大河「それじゃあ行ってくるわねー」
凛「アーチャー」
アーチャー「ほう、あの攻撃で生き長らえたか」
士郎「何の話をしてるんだ?」
凛「気がついてなかったの?最近のガス漏れ事故、あれは全部キャスターのサーヴァントの仕業よ」
士郎「でもキャスターはアーチャーが倒したんじゃなかったのか?」
凛「何でちゃんと確認してこなかったのよ!!無駄に偉そうにして慢心してるからよ」
アーチャー「はっ、慢心せずして何が王か!」
凛「何が王か、じゃないわよ。ったく、昨日龍洞寺に行って魔力が残ってると思ったら」
士郎「龍洞寺…キャスターの本拠地に行ってたのか?それでキャスターはいなかったのか?」
凛「階段のところにアーチャーの攻撃の跡と着物の切れ端みたいなの。本殿の近くにもアーチャーの攻撃の跡が残ってたけど」
アーチャー「あの女狐は住処を移したというわけか」
凛「一時的なものでしょうね。あの土地はそう簡単に手放せるものじゃないもの」
57:以下、
士郎「キャスターが今どこにいるのかわからないのか?」
凛「わからないわ」
士郎「キャスターの居場所が龍洞寺ってわかった時と同じ方法で調べられないのか?」
凛「前はキャスターは同じ場所から街の人たちから魔力を集めていたの。それでその魔力の筋が龍洞寺に向かってたからわかったんだけど――」
士郎「今は違うのか?」
凛「さっきのニュースでやってたガス漏れ事故の現場、キャスターがいたであろう場所に行ったけど何の痕跡もなかったわ」
士郎「それじゃあ何の手がかりもないってわけか」
凛「そうとは言い切れないわ」
士郎「なんでさ?」
凛「龍洞寺は霊脈的に優れた土地なの。さっきも言ったけどそう簡単に手放せないほどにね」
士郎「すぐに戻るって事か?」
凛「それか同じぐらいの場所に行くかね」
士郎「そう何か所もあるものなのか?」
凛「龍洞寺程のものはないけれど――聖杯が召喚されるような場所は全部で四か所あるの」
士郎「一つが龍洞寺?」
凛「そう、そして前回聖杯が現れたと思われる新都の公園、私の家、そして教会よ」
士郎「隠れ家にできそうなのは――」
凛「敵陣営の私の家は考えられないし、教会だけってわけよ」
62:以下、
放課後
士郎「なあ、本当にセイバーとアーチャーを連れてこなくてよかったのか?」
凛「今回はあくまで様子見よ。キャスターがここにいるとはまだ断定できないし、いたとしてもどんな罠を張ってるかわからないもの」
言峰「凛、こんなところで何をしている?まさか聖杯戦争を降りて教会に逃げ込みにでも来たのか」
凛「そんなわけないでしょ」
言峰「それじゃあ君が降りるのかね?衛宮士郎」
士郎「俺は自分で戦うって決めたんだ。途中で投げ出すなんてことするもんか」
言峰「両方降りる気はない…と。それでは何故お前達は中立の立場である私の元に来たのだ」
凛「散歩してたら偶然近くを通りかかっただけよ」
言峰「ほう、まだ7騎のサーヴァントが残ってる中、サーヴァントを連れずに散歩していたと?呑気なものだな」
凛「そんなの私の勝手でしょ……ってちょっと待って。今7騎って言った?」
言峰「今残ってるサーヴァントは7騎だ、まだ誰一人倒されていない」
凛「まさかあいつ、アサシンも倒し損ねていたの?でも……」
言峰「何か気になる事でもあるのか」
凛「別に……何でもないわよ」
言峰「7人目のサーヴァントが召喚されてから4日目だ。戦局が動き出すとしたらそろそろだろう」
63:以下、
士郎「悪いな、買い物に付き合わせちゃって」
凛「下宿させてもらってるもの、このぐらい当然でしょ?」
士郎「アサシンとキャスターは手を組んでいるんだろう?アサシン側の拠点に隠れてるとは考えられないか?」
凛「その可能性はないわね」
士郎「なんでさ?」
凛「道の邪魔ってアーチャーが言ってたことから階段にいたのはアサシンだと思うわ。そのアサシンは確実に倒されている可能性が高い」
士郎「何でわかるんだ?それに言峰はまだ七人のサーヴァントが残ってるって」
凛「アーチャーは『偽のアサシン』って言ってたわ。つまり――」
士郎「偽のアサシンとは別に本物のアサシンがいる――?」
凛「綺礼がどこまで把握してるのかはわからないけれど、綺礼が知ってるのが龍洞寺にいたアサシンじゃないのなら辻褄は合うわ」
士郎「それじゃあ8人のサーヴァントが聖杯戦争に参加してたってことか」
凛「でもわからないのはあの着物の切れ端ね、消えずに残ってたからサーヴァントの物じゃないと思うけど」
「おっそーいお兄ちゃん」
士郎「この声は――」
凛「イリヤスフィール!?」
64:以下、
イリヤ「もう、こんな時間まで何してたの?――私のこと放っておいてリンとデート?」
凛「まだ日も暮れないうちからやろうってわけ?」
イリヤ「なに、リンはもう殺されたいわけ?」
士郎「待ってくれ二人共。イリヤ、ひょっとして俺を待っててくれたのか?」
イリヤ「お兄ちゃんがまた話したいって言ったんじゃない。リンはいらないから帰っていいわよ」
凛「敵のマスターを信じて衛宮君と二人きりって?お生憎様、そんなわけにはいかないわ」
イリヤ「ねえお兄ちゃん、お兄ちゃんの名前教えてよ。そっちだけ知ってるなんて不公平だわ」
士郎「ああ、衛宮士郎だ」
イリヤ「エミヤシロ?変わった発音するのね」
士郎「それじゃあ笑み社じゃないか。衛宮は苗字で、士郎が名前だ」
イリヤ「シロウ、お兄ちゃんらしい良い名前ね。これからは私もシロウって呼ぶね」
凛「どういうつもりイリヤスフィール、裏切り者の子供の衛宮君とただ意味もなく呑気にお喋りってわけじゃないでしょうね」
イリヤ「それを何処で――そう、セイバーね?」
凛「ええ、セイバーに聞いたわ。あなたのお母さんのアイリスフィールの事もね」
イリヤ「やっぱりあの時のセイバーだったのね。じゃあシロウの中に聖遺物が入れられてるのかしら」
凛「聖遺物…衛宮君の中にセイバーとの縁の物が?」
イリヤ「それでバーサーカーの攻撃から生き延びる事ができたのね」
65:以下、
士郎「何を言ってるのかさっぱりなんだけど」
凛「サーヴァントを呼び出すにはその英霊に縁のあるものが必要なのよ」
イリヤ「私の場合は神殿の礎となっていた物、バーサーカーの斧剣よ。それで召喚されたのがヘラクレス」
士郎「真名を教えてしまっていいのか?」
イリヤ「バーサーカーが負けるはずないもの。それにシロウのセイバーの真名がアーサー王だってこっちだけが知ってるのって不公平だもの」
士郎「セイバーがアーサー王!?」
イリヤ「知らなかったの?」
凛「アーサー王の聖遺物で治療ができる…失われたはずの聖剣の鞘――」
イリヤ「そういえば私まだリンのサーヴァントを見たことないわ、アーチャーでしょう?」
凛「そっちのも聞いちゃったしね。王の中の王、英雄王ギルガメッシュよ」
イリヤ「古代ウルクの王…セイバーだけじゃなくアーチャーも前回と同じ物で召喚されたってことかしら」
凛「そうなるのかしらね。家の地下にあったものだし。こっちが教えたのも絶対に負けないって自信があるからよ」
辺りに幾度か甲高い音が鳴り響く
士郎達の周りに幾何学模様の装飾が施された数枚の円盤展開されが飛び周り、地面に数本の短剣が落ちる
士郎「な――」
凛「敵襲ね、こんな目立たない方法を取るってことは――」
66:以下、
「ギ……」
夕暮れの公園に白い髑髏が姿を現す
凛「本物のアサシン……」
イリヤ「嘘…こんなサーヴァント、私知らない――」
白い髑髏は何十という短剣を放つ――
が、それは全て士郎達を囲むように飛ぶ円盤に弾き落とされる
真アサシン「ギ……バカ、な……ダガ――」
白い髑髏の面をつけたアサシンが包帯の巻かれた右腕を振りかぶる
その右腕が何もない空間に伸びてゆき――
何処からともなく飛んできた剣に切り落とされた
真アサシン「ガ……ッ!!」
アーチャー「二人目の、真のアサシンというわけか。しかし正式な召喚をされたわけではないようだな」
凛「アーチャー!?」
アーチャー「その防御壁が展開されたのでな」
セイバー「シロウ、リン、怪我はありませんか?」
士郎「大丈夫だセイバー」
セイバー「何故イリヤスフィールと共にいるのかと聞きたい所ですが、まずは目の前の敵を」
真アサシン「ギギ……遂行、失敗…逃ゲ――」
アサシンの体を無数の剣や槍が貫く
67:以下、
アーチャー「我の前から去る事を誰が許した?」
真アサシン「ア…ガギャ――」
アーチャー「まだ生きているか、だがもう動けんようだな。ならばそのまま無残に散るがいい」
アーチャーの背後から大量の剣と槍が射出され――その全てが弾かれる
アーチャー「――ほう、どうやらあの攻撃を生き延びたというわけではなかったようだな」
凛「あれはキャスターのサーヴァント?」
アーチャー「中身は全く異なるようだがな。消える前の残骸を何者かに利用されたか」
「ふむ、此度の聖杯戦争ではエミヤともトオサカとも手を組んだようじゃな、アインツベルンの娘」
イリヤ「マキリ…」
凛「マキリ?まさか間桐臓硯!?」
臓硯「どうやらちゃんとした聖杯の器は用意できたらしいのぅ」
士郎「間桐ってもしかして慎二の爺さんか?」
臓硯「遠坂も衛宮も父親と同じサーヴァントか、今度は裏切られないといいのお?」
凛「どういう事?」
臓硯「それにしてもその若さでその力、やはり姉の方が良かったのお」
凛「その破れた着物の柄、柳洞寺にあったのはあんたのだったのね」
臓硯「死にぞこないの癖に健気に門番の役目を果たそうとしての」
アーチャー「いつまでもべらべらと悪臭をばらまきおって――さっさと消え失せるがいい」
臓硯「おお怖い怖い、騎士王と英雄王相手に今のままでは分が悪い。ここは退かせてもらおう」
臓硯はキャスターと真アサシンと共に公園の影に消えていく
68:以下、
アーチャー「……逃げたか。くだらん雑種の相手をしているうちにすっかり日が暮れたな」
イリヤ「ああ――っ!!」
士郎「どうしたんだイリヤ?」
イリヤ「日が暮れちゃった……セラに怒られる――そんな事より殺し合わなくちゃ」
アーチャー「サーヴァントも連れていないこのままでか?」
アーチャーの背後に一本の剣が現れる
士郎「ま、待ってくれ――」
士郎の静止等意に介さずそのまま剣はイリヤの頭目掛けて射出される
至近距離でくり出された一撃に凛や士郎はおろか、セイバーすらも反応できない
イリヤ「――!!」
甲高い音を立てて宙を舞った剣は公園の砂浜に突き刺さる
士郎「――へ?」
イリヤの周りには先ほど真アサシンの攻撃を弾いた円盤が飛び回っている
アーチャー「おおっと、我の宝物が勝手に攻撃を弾いてしまったか。だがこの数ならどうだ」
何十という数の伝説級の剣や槍がありとあらゆる方向からイリヤに襲い掛かるが全て円盤に弾かれる
アーチャー「ほう、これではいくら攻撃をしようとそこの小娘を殺す事等できんではないか」
イリヤ「え――?」
69:以下、
アーチャー「特別に見逃してやると言っているのだ。我の気が変わらぬうちにさっさとここから消えるんだな」
凛「素直じゃないわねアンタ」
イリヤ「でも――」
士郎「アーチャーもこう言ってるんだしさ。今日は休戦としようイリヤ」
イリヤ「……わかった、でも次に夜に会ったら容赦しないからねリン、シロウ」
アーチャー「待て」
イリヤ「なに?早く消えろと言ったのはそっちでしょう」
アーチャー「さっきの連中がいつ襲ってくるかもしれん、特別に我が送ってやろう。後ろに乗れ」
黄金のバイクが現れアーチャーがまたがる
凛「さっきから聞こうと思ってたけどその服装何なのよ」
アーチャー「らいだーすーつというヤツだ。店主が鎧では乗れんと言うのでな、さあ人形さっさと乗るがいい!!」
イリヤ「えっと……」
凛「イリヤ乗ってあげて、新車に早く乗りたくてたまらないのよ」
イリヤ「う、うん」
アーチャー「では行くぞ人形」
イリヤ「うん――え、何、はや――いやあぁああああああ!!」
アーチャー「振り落とされぬようしっかり掴まっておれよ、ふはははは―――!!」
凛「」
70:以下、
セイバー「シロウも後ろに乗ってください」
士郎「え」
凛「……セイバーはスーツ?」
セイバー「はい、バイクのお金はアーチャーが。さあシロウ」
士郎「いや…そうだ。ほらさ遠坂がいるし――そうだ遠坂が乗れよ。俺はあとから帰るからさ」
凛「私は家に用があるから先にセイバーと帰ってていいわよ」
セイバー「リンもこう言ってる事ですし」
士郎「いやでもさ、ほら買い物したヤツもあるし――」
凛「アーチャーの宝物でもう衛宮君の家の冷蔵庫に入れといたわ」
士郎「えっ」
セイバー「それでは何の気兼ねもなくいけますね」
士郎「いやちょっと待って――」
セイバー「シロウ、振り落とされないようにしっかり掴まっていてくださいね」
士郎「いやだ待ってく――うわあぁあああああああ!!」
セイバー「そんなに喜んでもえらえるとは――ではもっとスピードを上げましょう」
士郎「なんでさぁああああああああああ」
凛「……乗らなくてよかった」
71:以下、
凛「何で郊外の森までイリヤを送っていった筈のアンタが私と着くのがほとんど同じなのよ」
アーチャー「凛、バイクというヤツは凄いぞ?途中不遜にも止まれと我を追いかけてきた多数の赤い光をつけた四輪車がおったが全て振り切ってやったわ」
凛「何してんのよアンタは。イリヤは無事だったんでしょうね?」
アーチャー「我が送ってやったのだぞ?向こうに着いたときはその栄誉に泣いて喜んでいたわ」
凛「ごめんイリヤ、敵ながら同情するわ」
アーチャー「我は腹が減った、飯の準備はできているか雑種」
セイバー「アーチャー、シロウはバイクではしゃぎ疲れたのか眠っています」
アーチャー「あの程度でそこまではしゃぐとは、魔術師のはしくれといえど所詮まだ子供というわけか」
セイバー「そうですね、夢の中でもバイクに乗ってるみたいです」
士郎「ま…待って…許してくれセイバー……」
凛「一番はしゃいでるのはアンタらでしょうに」
セイバー「何か言いましたかリン」
凛「いいえ何にも」
セイバー「はっ!!シロウが寝ているという事は私の食事はどうなるのでしょう!?」
アーチャー「しょうがない、この我自ら食事を用意してやろう!!」
凛「アンタご飯作れるの?」
アーチャー「全自動調理器だ、シュメールの誇る超古代テクノロジーで作られた至高の食事を生み出す高性能なからくりだ」
80:以下、
夜中
士郎「――っ!!」
手に持ったビーカーが砕け散る
凛「……はあ、これで36個目。割れてないのは16個、そのうち強化できてるのは3個で他は変化なし」
士郎「最近は成功率上がってたんだけど」
凛「これで?集中足りてないんじゃない?」
士郎「それは遠坂が――」
凛「私が?」
士郎「何でもない」
凛「何よ気になるじゃない。言いなさいよ」
言えるはずがない、遠坂がこんなに近くで見つめてくるからなんて――
遠坂は昔から憧れていた女の子なのだ。それが自分の家で、こんなに近くにいて緊張しないわけがない
凛「はあ、衛宮君やる気あるの?」
士郎「やる気はあるさ」
凛「……まあいいわ。さっきから気になってたんだけど、衛宮君毎回魔術回路を作ってるわよね?」
士郎「ああそうだけど――それって普通じゃないのか?」
凛「普通じゃないわよ、あなたそんなこと続けてると死ぬわよ。いい?衛宮君、既にある魔術回路に魔力を流すのよ」
士郎「今ある魔術回路に……同調、開始――構成物質、補強」
81:以下、
凛「へえ、今までで一番いい出来じゃない。今の感覚を忘れないでもう一度――」
士郎「ちょっ遠坂ちか――」
アーチャー「待て雑種」
士郎「うわぁああ!?」
アーチャー「何を慌てて立ち上がったのだ?」
凛「何アーチャー、アンタセイバーと飲み比べしてたんじゃなかった?」
アーチャー「セイバーが酔い潰れてしまったのでな。我は酔わなくなる宝物を使っていたが」
凛「だから何やってんのよアンタ。で、何で止めたわけ?」
アーチャー「その小僧の本質は強化等ではない」
凛「強化じゃないって、衛宮君は強化の魔術しか使えないのよ?」
アーチャー「これを模造してみろ雑種、一度その身に受けた槍だ。本質はよおく理解していよう?」
凛「ランサーの槍?模造してみろってどういう――」
士郎「――投影、開始(トレース・オン)」
理由はわからない。だけど何故か、その槍がどういう仕組みで出来ているのか、どのような効果を持つのかはすんなりと理解できた――
士郎「うぐ――」
全身が焼け付くような痛みが走る、それでも工程を続け――
士郎「――投影、完了(トレース・オフ)」
手にずっしりとした重みが握られるのを感じた
82:以下、
凛「うそ――」
アーチャー「ほう、もしやとは思ったが一発で成功したか」
士郎「はあ…はあ……」
アーチャー「質の悪い模造品だな、これでは実戦には到底使えまい」
凛「でもこれ中身がちゃんとある…いったいどういう事?」
士郎「俺もよくわからない。今まで投影したのは全部空っぽだっ――ぐ…ああっ――」
全身に凄まじい痛みが走り投影した槍が消える
激痛だけではなく左腕に力が入らない、むしろ左腕だけに感覚がない
凛「ちょ、衛宮君!?何これ、腕の皮膚の色がどんどん紫に――これ壊死していってる!?」
アーチャー「投影の反動か、いきなり宝具の投影には無理があったようだな」
凛「とにかく壊死を抑えないと――大丈夫衛宮君?」
士郎「……あ、ああ……腕も何とか動く」
凛「これで明日にはほとんど元通りに戻ると思うわ」
士郎「ありがとう遠坂」
凛「今日はもう休みましょう。詳しい事は明日聞くわ、痛むとこがあったらすぐ言う事」
士郎「わかった……」
83:以下、
翌朝
キッチンにて皿の割れる音が響く
大河「もうこれで四枚目よ?士郎、熱でもあるんじゃない?よそうの手伝おうか?」
士郎「大丈夫、少し寝違えただけだ。それに藤ねえが手伝った方が皿が割れるだろ」
大河「何おう?私だってそこまで割らないわよ、こんな時に桜ちゃんがいたら――そういえば何で最近桜ちゃん来てないの?」
士郎「それは――」
凛「わたしが断ったんです。三人も急に下宿させてもらっているのに間桐さんに食事を用意してもらうのは悪いですから」
大河「そうなんだー。あ、でも遠坂さんもセイバーちゃんも美人さんだから……桜ちゃん負けちゃう!!」
士郎「何に負けるんだよ。ほら、藤ねえ今日はいつもより早いんだろ?」
大河「そうなのよー、昨日からうちの生徒が一人行方不明で――あ」
士郎「行方不明?家出か?それで昨日の夜来なかったのか」
大河「士郎も遠坂さんも無関係じゃないから言うけど、家出したっていう生徒は美綴さんなのよ」
士郎「美綴が?って何で遠坂も無関係じゃないんだ?」
凛「わたしと綾子は同じクラスだし、結構仲良いのよわたし達。でも綾子が家出するとは思えないわね」
大河「でしょう?だから何かあったんじゃないかって昨日から警察にも相談して探してるんだけど」
士郎「最後に誰か見たりしてないのか?」
大河「学校で間桐君と揉めてるところを一年の子が見たらしいんだけど、間桐君は何も知らないらしいのよね。じゃあ行ってくるわね、道中にはちゃんと注意すること」
84:以下、
士郎「慎二がか――」
凛「気になるわね。慎二の家には間桐臓硯がいるし、キャスターかアサシンか……」
士郎「それともライダーか」
凛「何でライダー?」
士郎「何でって慎二のサーヴァントじゃないか」
凛「ライダーが慎二のサーヴァント!?」
士郎「知らなかったのか?学校の結界だって慎二が張ったヤツだぞ?」
凛「迂闊……慎二がマスターだなんて可能性全く考えてなかったわ」
士郎「間桐が魔術の家系だって遠坂は知ってたんだろう?聖杯戦争の御三家の一つだって」
凛「慎二に魔術回路はないのよ。だから慎二がマスターになれる可能性なんて考えられなかった」
士郎「慎二に魔術回路がない?」
凛「そうよだから桜が――とにかく慎二がマスターっていうなら考えを改めないと」
士郎「ちょっと待てなんで桜の名前が出るんだよ?それに遠坂と桜は知り合いなのか?」
凛「衛宮君に関係な――。…そうね、桜とわたしは姉妹なのよ」
士郎「へ?それってどういう――」
凛「魔術師の家系はね、長子にしか魔術を教えないの。だからどんなに才能があっても長子以外は魔術を教えないか、余所の魔術師の家に養子に出すの」
士郎「ちょっと待ってくれ。ってことは桜は間桐の魔術師なのか!?」
85:以下、
凛「魔術回路は持ってるわよ。でも間桐の魔術は学んでない」
士郎「何で言い切れるのさ?」
凛「多少は間桐の魔術教育を受けてるでしょうね、だってわたしと同じ色だった髪も目も変わってるもの」
士郎「なら魔術を使えるんじゃ?」
凛「だって慎二がマスターなんでしょう?桜にちゃんと魔術を教えてたら、何の才能もない慎二をマスターにする必要はないもの」
士郎「桜が召喚したけど令呪を慎二に譲ったってことは?」
凛「ありえないわ。令呪は人に譲れるものじゃないし」
士郎「良かった。それじゃあ桜と戦う必要はないんだな」
凛「そういうこと。慎二がライダーのマスターなら結界が完成する三日後まで何もしてこないと思うわ」
士郎「なら今気をつけなきゃならない敵は間桐臓硯とランサーか」
凛「イリヤを忘れてるわよ」
士郎「俺はイリヤとは話せばわかりあえると思うんだ」
凛「相変わらず甘いわね。衛宮君にその気はなくてもあの子は殺しにくるだろうし、それにいつかはわたしとも戦わないといけないわよ」
士郎「なんでさ、俺はお前みたいなヤツとは戦いたくないぞ?」
凛「衛宮君がその気じゃなくてもセイバーは違うわよ。聖杯を手に入れるまで闘い続けたアーサー王だもの」
90:以下、
いつもより30分程早い、生徒もまだ登校してこないような時間
正門の前の道路で後ろから聞き覚えのある、あまり聞きたくない声がした
ランサー「おっ、いつぞやの小僧じゃねえか」
士郎「この声は――誰?」
振り返ると二月という肌寒い季節にも関わらず、季節感等気にしないアロハ服を着た男が立っていた
凛「まさか…ランサー!?」
ランサー「そういやこの恰好で会うのは初めてだったな」
前に戦った時とは想像できないような快活さで喋るランサーの後ろから見慣れた少女が出てくる
綾子「おっ遠坂、この人と知り合いなのか?」
凛「綾子!?アンタ行方不明だったはずじゃ!?」
綾子「いやあ昨日変な女の人に追いかけられててさあ、追い詰められたところをこの人に助けてもらったんだ」
凛「どういう風の吹き回し?」
ランサー「何、ライダーとは前にやり合った事もあったしな。何より一般人を襲うってことが俺の流儀に合わなかっただけだ。じゃあな」
綾子「あれ!?急に消えた!?やっぱりあの人は何かしらの達人だったのか!!」
凛「はあ、先生達にはわたしから報告しといてあげるからアンタはさっさと家に帰りなさい。親御さんが心配してるらしいわよ」
綾子「あー、さっき藤村先生に説明しといた……今日も衛宮と登校?まさかあの賭け…くっそう!!」
凛「何か盛大な勘違いをされた気がするわ」
士郎「何はともあれ無事で良かったじゃないか」
凛「良くないわよ。ライダーが襲ってたってランサーが言ったばかりじゃない」
士郎「やっぱり慎二が――」
98:以下、
慎二「僕がどうかしたって」
士郎「慎二!!お前ライダーを使って美綴を襲わせただろう!!」
慎二「はあ?何で僕が美綴を襲わなきゃいけないのさ」
士郎「白をきるな。昨日お前と美綴が揉めてたって聞いたぞ」
慎二「お前は馬鹿か?いくら僕でも素人の美綴相手にサーヴァントをけしかけたりするもんか」
凛「学校にあんな結界を張っておいてよく言えるわね」
慎二「あの結界はあくまで保険だよ。それにもう代わりがいるらしいから必要ないみたいだし」
凛「代わり……キャスターのこと?」
士郎「とにかくお前がライダーに美綴を襲わせたのはわかってるんだ、目撃者もいる」
慎二「目撃者?誰だよ」
士郎「ランサーだ」
慎二「ランサーってあの青いヤツか……あの釣竿高かったのに……」ガクガク
士郎「慎二?」
凛「まさかライダーが勝手にやって知らないなんて言わないでしょうね?マスターならサーヴァントの動きを把握してるでしょう」
慎二「爺さんに聞いたけど遠坂のアーチャーだって勝手に動きまくってんだろ?それと同じさ」
凛「うっ。…まさか本当に知らなかったわけ?」
91:以下、
慎二「僕には魔術回路がないんでね。お前らよりサーヴァントの繋がりは薄いんだよ」
凛「念話も通じてないってわけ?それなら――」
桜「先輩?それに兄さん、……遠坂先輩も。こんな朝早くに何を話されてるんですか?」
慎二「桜……」
士郎「おはよう桜」
凛「おはよう間桐さん」
桜「おはようございます先輩、遠坂先輩」
慎二「お前には関係ないからさっさとどっか行けよ。それに何で朝練もないのにこんな早くに登校してんだよ」
桜「ご、ごめんなさい。兄さんの姿がどこにも見えなかったから」
慎二「僕がどこで何をしてようがお前には関係ないだろ。さっさとどっか行けよ!!」
士郎「慎二、桜はお前を心配して――」
桜「良いんです先輩、兄さんは何も悪くありません。では失礼しますね」
頭を下げ桜は校舎に向かう、その際慎二の横で一瞬立ち止まり――
慎二「っ!!わかってるよ、一々鬱陶しいんだよ!!」
凛「ちょっと慎二待ちなさい!!まだ話は――」
士郎「遠坂、もうすぐ他の生徒たちも登校してくる」
凛「……そうね、また今度にしましょう」
92:以下、
昼休み終了後屋上
士郎「なあ、授業ほんとにサボっちまって良かったのか?」
凛「偶にはいいでしょう?何か引っかかるのよ」
士郎「何かってなんだよ?」
凛「ライダーの事よ。衛宮君が慎二がマスターって知った時はずっと慎二の後ろにいたんでしょう?なのに今は慎二と一緒に行動していない」
士郎「慎二が嘘をついてるだけか、この前は俺がマスターってわかってたから側に置いてただけなんじゃ」
凛「敵が誰かもわからない状況でサーヴァントを側に置かない方が変でしょう?」
士郎「遠坂が慎二がマスターってわからなかったように周りも気づかないって思ったんじゃないか?」
凛「それもそうかもしんないけどさ」
士郎「とにかく今は臓硯の事だろ?慎二は結界が完成するまで何もしてこないだろうし」
凛「気付いてないの?結界はもう――」
遠坂が言い終わる前にその異常は発現した
空が赤く染まり、その空気を吸っただけで魔術師じゃない人間は昏睡し死に至るだろう
士郎「遠坂――」
凛「わかってる、急ぐわよ衛宮君!!」
93:以下、
校舎は一面赤だった。血のように赤い空気と廊下
四階の階段に一番近い教室に飛び込む
凛「……っ!!」
士郎「――息はある。まだ間に合わないわけじゃない」
教室の中の人間は例外なく地面に倒れていた
大部分が意識を失い、全身を痙攣させ口から泡を吹き――、一部の人間は肌が溶け始めていた
士郎「――桜!!良かった息はある」
凛「倒れた時に引っかけたのね、包帯がほどけかけてる」
士郎「とにかく早く慎二を見つけて結界を解かさないと」
凛「この手首――」
士郎「多分慎二にやられたヤツだ、今は早く慎二を――」
凛「いえ、止めるのはライダーよ」
士郎「遠坂?」
凛「見て桜の手首、令呪よ」
士郎「ッ!?」
凛「魔術回路のない慎二はマスターになれない。もっと早くに気付くべきだったわ」
士郎「ライダーのマスターは桜だっていうのか!?」
凛「そうよ。そしてマスターの桜も巻き込むような結界を使ってる」
士郎「……セイバーを呼ぶ。令呪の使い方を教えてくれ」
94:以下、
数分前、商店街――
セイバー「たい焼きですか、これは先程のとどう違うのでしょう」
アーチャー「店主、全種類寄越せ」
店主「はいよ」
アーチャー「さあセイバー、存分に食うがよい!!」
セイバー「おお、これはなかなか――」
アーチャー「そうか美味いか!!では我の分も買うとしよう――む?」
セイバー「どうかしましたかアーチャー」
アーチャー「お前はマスターからの魔力提供と念話はできんのであったな。凛との繋がりが切れた、魔力提供もなく念話も通じん」
セイバー「リンの身に何かが起こったという事ですか」
アーチャー「我の宝物が発動しなかったという事は結界か、――っ!!」
セイバー「今度は何が?その方面はアインツベルンの――」
アーチャー「あの雑種、この我を倒すつもりか。良いだろう、その策に乗ってやろうではないか」
セイバー「アーチャー何処へ」
アーチャー「我は用ができた。貴様はいつ令呪で呼ばれてもいいように準備をしておけ」
セイバー「リンの元ではなく、イリヤスフィールのところへ?」
アーチャー「凛を頼むぞ騎士王、デートはまた今度だ」
セイバー「でえと?わかりました、この身に変えてもリンを守ります」
95:以下、
学校
目を閉じ左手の令呪に集中する
士郎「――頼む。来てくれ、セイバー!!」
躊躇うことなく一画目の令呪を使う
左手の甲が熱く焼けるような感覚と共に、銀色の騎士が出現した
セイバー「召喚に応じ参上しました。マスター、状況は」
士郎「見ての通りだ、サーヴァントに結界を張られた。一秒でも早くこいつを消したい」
セイバー「承知しました。確かに下のフロアからサーヴァントの気配を感じます」
凛「結界の基点と同じね。もうっアーチャーのヤツ何で返事しないのよ!!」
セイバー「先ほどまでアーチャーと同行していましたが、この結界はマスターとサーヴァントの繋がりも完全に遮断するようです」
凛「完全にって事は魔力提供も?それなら何であいつは来ないのよ、あいつの宝具ならすぐに――」
セイバー「アインツベルンが襲撃を受けているようです。アーチャーはそちらに向かい、私はリンを任されました」
士郎「イリヤが!?」
凛「昨日の今日だし、間桐臓硯……」
士郎「慎二の爺さん…ってことはまさかこの結界は――」
セイバー「アーチャーの魔力の枯渇と、私とアーチャーの分断が目的でしょう」
凛「急ぐわよ士郎、早くライダーを倒さないとアーチャーの魔力が尽きちゃう」
99:以下、
慎二「何を勝手に結界を作動させてんだよ!!」
ライダー「私に貴方の指示を仰ぐ必要がないのはよくご存知でしょう」
慎二「今のマスターはこの僕だぞ!!」
ライダー「それが?そのようなものいつでも破棄できます」
士郎「慎二!!今すぐ結界を解くんだ!!」
凛「痛い目にあいたくなかったらおとなしく言う事を聞きなさい」
ライダー「来ましたねアーチャーのマスター」
凛「ライダーのサーヴァント……」
ライダー「セイバーとそのマスターここは退いてください、あくまで私の目的はアーチャーのマスターです」
凛「あくまでアーチャーを倒すことが目的ってわけね」
ライダー「当然です。彼が本気を出されては敵うサーヴァント等いませんから」
凛「それにしては愚鈍な策ね。アーチャーがイリヤの方に向かわなかったらどうしたわけ?」
ライダー「アーチャーが確実にあちらに行くように餌はちゃんと撒いてありますから」
凛「餌?」
ライダー「ここで死ぬ貴女には関係のない事です」
セイバー「ここで倒れるのは貴女だ」
100:以下、
少し前。郊外の森、アインツベルンの城
巨大なサーヴァントと少女、そして少女を守るように立つ二人の女性を囲む大量の骨の化物と二つのサーヴァント
イリヤ「アサシンとキャスター、その程度でバーサーカーに勝てるとでも思ったの?」
臓硯「固いのう。大英雄ヘラクレス、Aランク未満の攻撃は全て弾くか、じゃが――」
イリヤ「影?キャスターの魔術…ッ違う!!避けてバーサーカー!!」
アサシンとキャスターの攻撃をことごとく弾いてきたバーサーカーの肉体が鋭利に伸びた影に貫かれる
臓硯「思ったよりあっけなかったの」
バーサーカー「■■■■■■■――ッ!!!」
臓硯「ほう、再生じゃなく蘇生か。じゃが――終わりじゃ」
イリヤに背後から無数の影が襲い掛かる
イリヤ「――っ」
イリヤの周りに現れた円盤が影を弾く、が何個かは砕け散る
イリヤ「これ、昨日の――」
臓硯「やはりあったか。これで来ないという事はないじゃろう?」
アーチャー「ああ、雑種の分際でこの我を呼び出そう等という愚行、死をもってして詫びるがいい」
イリヤ「……アーチャー?どうして――」
アーチャー「幼童ならば何も気にせず我の威光に目を輝かせておけ」
何十、何百という剣や槍が現れ地上に降り注ぎ、辺りの骨の化物達を一掃する
臓硯「これはこれは、最初からそのように飛ばして大丈夫かの?」
地面から新たに表れてくる先程以上の数の骨の化物達と揺らめく影に一瞬目をやり、その背後に立つ老人を不快そうに眺め――
アーチャー「あまり我を退屈させるなよ、雑種」
数千という数の武器が降り注いだ
101:以下、
それは戦闘とはとてもではないが言えない物であった
セイバーを無視して遠坂凛に襲い掛かったライダーは一瞬でセイバーに斬り伏せられた
凛「ライダー、あんたが桜のサーヴァントだってのはわかってんのよ。あんた桜を巻き込んでまでこの結界を張ったわね!!」
ライダー「……ばれてしまった以上あれはもう邪魔でしかありませんか」
凛「あれ?まさかあんた桜を――」
慎二「うわあっ!?」
慎二の持っていた一冊のノートが燃え落ちる
セイバー「くっ!?」
セイバーの見えない剣を押しのけライダーが起き上がる
仮初の契約を破り、本来のマスターを得たライダーは先程までとは比にならない物を秘めていた
ライダーの動きは完全に変化し、セイバーを押し始める
セイバー「この動き――はあッ!!」
ライダー「!!」
セイバーの剣に纏われていた風がライダーを弾き飛ばし、今まで隠れていた黄金の剣が露わになる
「聖剣…それもかの有名なエクスカリバー、アーサー王の剣か」
士郎「なっ!?」
102:以下、
凛「――桜?」
桜「「昨日は世話になったの。遠坂の娘と衛宮の小僧」
士郎「桜?何を言って――」
桜「昨日の様子からセイバーは聖剣を開放しないと思っていたが」
凛「まさか――間桐臓硯」
士郎「え?」
桜「理解が早いの遠坂の娘。このような形ですまないが今は他の用事があるのでな」
凛「アーチャーは単独スキルAがあるもの。わたしからの魔力供給がなくても一週間は戦えるわよ」
桜「それでもあれだけの宝具を使うからすぐにバテるとふんでおったがのぅ。まさか魔力をほとんど消費してないとは」
凛「残念だったわね。あれは単純にただ投げてるだけだもの、魔力の消費なんてないに等しいわ」
桜「消費がないのなら使わせればいい。その間マスターを隔離すればよいだけじゃがライダーでは騎士王を止められないじゃろうからな」
凛「それがわかっててどうしようっての?」
桜「アーチャーが倒れるまでおとなしくしてもらおう」
凛「そんなことに素直に従うとでも?」
桜「従う以外の選択はない。敵のイリヤを助ける程甘い人間じゃ、妹を死なせたくはないじゃろう」
凛「っ!!」
桜「抵抗しなければお前さんらも殺しはせん、学校の連中は保障できんがのう?」
107:以下、
アーチャー「ふはははは!!どうした雑種、もう茶番は終いか!!」
無数の骨の残骸の真ん中に串刺しとなったキャスターとバーサーカー
イリヤ「ちょっとアーチャー!!バーサーカーも巻き添え食らっちゃってるじゃない!!」
アーチャー「2回程死なせてしまったか?」
イリヤ「5回よ!!」
アーチャー「あの影にも3回殺されたか、狂犬となり衰えたな」
キャスターが消滅し串刺しにしていた剣が落ちると同時に骨の残骸も消える
アーチャー「あとはそこの影とアサシンだけか」
影「ア――、アア――」
影の中に人影のようなモノが現れる
イリヤ「あれは――」
アーチャー「ようやく姿を現したか、だがよもやそこまで成長しているとはな」
バーサーカー「■■■■■■――ッ!!」
イリヤ「ダメバーサーカー!!私の中に戻って!!」
イリヤの全身に巨大な令呪が浮かびあがるが――既に遅い
影に殴りかかったバーサーカーは影に縛られ暴れながらも飲み込まれていく
アーチャー「あの影に触れると有無を言わさず飲み込まれるか」
アーチャーの後ろから数本の鎖が伸びバーサーカーに巻きつくが、そのまま影に飲み込まれていく
108:以下、
アーチャー「鎖ごと飲み込む気か、だが生憎我は貴様と綱引する気等毛頭ない。手荒くなるぞ」
無数の剣がバーサーカーを巻きついている影ごと切断し、既に飲み込まれている腹から下を両断する
そして頭と胸だけとなったバーサーカーを上空に放り投げる
イリヤ「戻ってバーサーカー!!」
影と鎖から解放されたバーサーカーは今度こそイリヤの命令通りに消える
アーチャー「斯様な仕組みか。一度死なせてしまったようだがそうしていれば時期に回復するであろう」
イリヤ「あの影はサーヴァントを取り込む…アーチャー、絶対に触れちゃダメ」
アーチャー「わかっている。そこまで我に魔力を消費させたいか」
セラ「逃げてくださいお嬢様!!ここは我々が――」
アーチャー「お前らごときでは何もできん、犬死にしたいのか?」
イリヤ「影に囲まれた…何とかできないのアーチャー」
アーチャー「できなくもないが、このような雑種相手から逃げる事も本気を出す事も我のプライドが許さん」
セラ「そんな事言ってる場合ですか!?」
リズ「えーゆーおーのいいとこ見てみたい」
アーチャー「何?」
リズ「イリヤもえーゆーおーのカッコいいとこ見たい?」
イリヤ「え、ええ。私も英雄王の実力がどれほど素晴らしいものか見てみたいわ」
アーチャー「く、くくく、ふはーっはっは!!良いだろうそこまで言うのなら見せてやろう!!」
アーチャーの手に異様な形の剣が握られる
アーチャー「本来ならあのような雑種には拝謁する価値すらないが――、一掃せよエア!!」
109:以下、
桜「ぐ…やはり英雄王は別格か」
士郎「何だ?いきなりどうしたんだ!?」
凛「どうやら魔力を消費させようとして一瞬でやられたみたいね。本体がやられてしまえば桜を操る事ももうできない!!」
セイバー「はあっ!!」
凛の言葉を聞いたセイバーがライダーを斬りとばす
桜「確かにこれでは桜を死なせる程の動きはできんが――やはりアーチャーは邪魔じゃなのうライダー」
ライダーの鎖がセイバーに巻きつき、その一瞬の隙にライダーが凛に襲い掛かる
士郎「遠坂!!投影、開始!!」
いつかの夜にアーチャーが使っていた剣を投影し、ライダーの一撃を受ける
士郎「ぐ…あっ」
しかし力の差は大きく吹っ飛ばされる
セイバー「シロウ!!」
凛「士郎!!あんたまだ左腕治ってないのに――」
桜「投影魔術…時間がないのにめんどうくさいのぅ。ならライダー、令呪をもって命ずるアーチャーのマスターを殺せ」
ライダーが凛に向かって跳ぶ
セイバー「させると思いますか?」
それをセイバーが間に入って止める
桜「――令呪を重ねて命ずる、宝具を使ってセイバーもろとも殺せ」
110:以下、
ライダーは壁に巨大な穴を開け外に飛び出す
士郎「逃げた…?」
セイバー「違う、宝具を使う気です!!」
凛「まさか、私やセイバーだけじゃない。士郎や桜ごと吹き飛ばす気!?」
大きく開いた空間から見えるのは、神話の中でしか聞いた事のない伝説上の神秘――
士郎「――天、馬……?」
ライダー「ここは私の結界の中、誰にも見られる心配はない。それに今はキャスターが集めた魔力があります、消えなさいセイバーとアーチャーのマスター!!」
セイバー「自分のマスターをも巻き込む気ですか!!」
ライダー「そんなもの私には関係ありません。騎英の――手綱(ベルレフォーン)……!!!!!」
落雷のように光の奔流となり迫るライダー、このままでは自分達だけでなく学校の生徒も巻き込まれて死ぬだろう
士郎「頼む、ライダーを倒してくれセイバー!!」
左手の甲が熱くなり令呪が消費される
セイバー「了解しましたマスター。この結界の中、それに相手が上空なのだから地上を巻き込む心配はない」
セイバーの持つ黄金の聖剣に黄金の光が集まってゆき――
セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――!!!!!」
黄金の光と銀色の光が衝突する
黄金の光は銀色の光を飲み込んでゆき――結界を破壊して上空に消えていった
111:以下、
桜「ここまで…か、やはり今は――」
ライダーの消滅に呼応したかのように桜が倒れ、それを凛が受け止め腕を確認する
凛「令呪がない。全部使い果たしたのね」
士郎「おつかれセイバー、セイバー?」
セイバー「……」
セイバーは剣を振り降ろしたまま動かない
意識を失っているのだ、その額には大量の汗をかきかなり苦しそうに息をしている
士郎「おいセイバー!!セイバー!!」
凛「結界が完全に消えた、とにかく綺礼に連絡して――」
凛がふらつき床に座り込む
士郎「遠坂!?」
イリヤ「セイバーもリンも魔力切れね。リンったら情けないわね」
士郎「イリヤ!?」
アーチャー「少し張り切り過ぎたか、それにしてもあの程度でその様か雑種」
凛「うるさいわね、こっちだってライダーの結界で魔力もってかれてんのよ。とにかく今は家に帰りましょう」
アーチャー「む、そこの雑種――まだ生きているか」
凛「アーチャー、桜は私の妹よ。一緒に連れて行って」
アーチャー「……勝手に動かれるよりはマシか」
112:以下、
衛宮邸
凛「で、何でイリヤがここにいるのよ」
イリヤ「アーチャーが私のお城を壊しちゃったんだもの」
凛「アーチャーも宝具を使ったってことね、で、後ろの二人は誰?」
イリヤ「私のメイドのセラとリズよ」
セラ「ここがあの衛宮切嗣が住んでいた屋敷ですか」
リズ「セラ、ここ壊す?」
イリヤ「壊しちゃったら住めなくなるでしょ」
凛「待って、あんた達ここに住む気?」
イリヤ「リンのサーヴァントが家を潰したんだもの、責任は貴女が取るべきでしょう?」
士郎「ここの家主は俺なんだけど……」
凛「桜の様子はどう?」
士郎「今はまだ眠ってるけど、特に問題はなさそうだ。セイバーはどうなんだ?」
イリヤ「お世話になるお礼として私とリンが何とかしてあげるわシロウ」
士郎「なんとかできるのか!?」
イリヤ「ええ、セイバーは今魔力が足りてないだけだもの」
凛「そうだ士郎、人数が増えたから食材が足りないんじゃないかしら」
士郎「ああそうだな、買ってくるよ。ってさっきから気になってたけど士郎って――」
リズ「シロウだっけ?買い物、手伝う」
士郎「えっとリズ?助かるよ」
イリヤ「それじゃあシロウがいなくなったところで始めましょうか、リン」
凛「やるしかない、か」
113:以下、
士郎「ただいまー」
セイバー「ご心配をかけましたシロウ」
士郎「セイバー!!もう大丈夫なのか?」
セイバー「はい、その…り、リンのおかげで……」
士郎「そっかありがとな遠坂、でもどうやって」
凛「私とセイバーでパスを通したのよ、つまりセイバーは今私から魔力の提供を受けてるわけ」
士郎「マスターは俺なのにそんな事できるのか?」
イリヤ「普通より魔力の多いリンと私がいてできた芸当ね。中々良いモノを見せてもらったわ」
士郎「いいもの?」
凛「ああもうその話はいいでしょ!!」
イリヤ「そうね。さっシロウ、調理はセラに任せてシロウを治しましょうか」
士郎「えっ?」
イリヤ「何だ、眠っていた回路が起きただけなのね。これなら、はい終わり」
士郎「ちゃんと動く…それに痺れも――」
イリヤ「これで今日はもう魔力を使わずにいれば明日には完全に治ってるはずよ」
士郎「ありがとなイリヤ」
イリヤ「シロウの腕も治ったことだし、リンとセイバーのパスをどうやって繋げたか説明してあげる」
凛「その事はもういいでしょう!?士郎も帰ってきたんだから戦況を確認するわよ!!」
114:以下、
凛「状況を把握するために私の視点で聖杯戦争を振り返るわ。初日1/31アーチャー召喚、2/2ランサーと対決」
士郎「その日に俺がランサーに襲われてセイバーが来て、その後イリヤに襲われたんだっけ」
アーチャー「そして我が偽のアサシンとキャスターを誅した」
凛「2/3に士郎と同盟組んで、2/4にアーチャー奮発、昨日の2/5にアサシンとキャスターと戦って」
士郎「今日2/6、学校でライダーに仕掛けられてセイバーの聖剣で倒した」
イリヤ「私の城にアサシンとキャスター、臓硯が襲いかかってきたわ」
アーチャー「そして我がキャスターを倒し、バーサーカーが九度死んだか」
士郎「9回死んだ?」
イリヤ「バーサーカーの宝具、十二の試練、バーサーカーは十二回殺されないと死なないの」
凛「つまりあと3回殺さないといけないってわけ?」
イリヤ「残念ねリン、1日に3個回復するからリンと戦う時は全快してるかもしれないわ。もっとも6回はアーチャーにやられたのだけど」
アーチャー「あの程度避けれぬとは、狂犬となったことで技術が衰えたな」
凛「で、あんたが宝具を使わないといけない程の相手だったんでしょ?」
アーチャー「我の宝物は全部宝具だが?あの程度の雑種相手にエアを使う気等なかったが」」
イリヤ「私とリズが見たいって言ったら見せてくれたの。まさか城まで壊すとは思わなかったけど」
アーチャー「加減はしたぞ?それに真に解放はしておらん、まあいづれ真の力を見せる時は来るだろうがな」
凛「それって前に言ってた楽しみってこと?」
アーチャー「まあな。さて、今宵は祝杯をあげようではないかセイバー」
セイバー「ふぁい?」モキュモキュ
アーチャー「それは昼間に買ったたい焼きとやらか」
リズ「あーん」
セイバー「むぐ、これも中々、はい、食べ物を粗末にしてはいけま――はっ、ちゃんと話は聞いていましたよ!?」
119:以下、
凛「待ちなさいアーチャー、話はまだ終わってないでしょう?」
アーチャー「終わっただろう」
凛「いいえ、あんたさっきキャスターを倒したって言ったけどアサシンは?」
アーチャー「マスターもろとも逃げよった。所詮逃げ足だけの雑種よな」
凛「あんたのそのエア?で倒したのはキャスターだけなのね?」
アーチャー「エアでは誰も倒しておらん、鬱陶しいあの影と城を払っただけよ」
凛「影?」
イリヤ「臓硯の吸収の魔術だと思うけど、触れたサーヴァントを吸収するバカみたいに巨大な影よ」
アーチャー「あまりに巨大すぎると思うたが逃げるための目くらましだったようだな」
凛「ってことは臓硯もアサシンも無傷なのね?祝杯なんてあげてる場合じゃないじゃない!!」
アーチャー「エアの威光を目の当たりにしたのだぞ?二度と出てこよう等と思わんだろう」
凛「エアってそんなに凄いの?」
アーチャー「当たり前だ。億をも超える我の宝物の中で一番のお気に入りだ」
イリヤ「あの光景は地獄だったわ……少しの解放であれだもの多分あれは対界宝具よ」
凛「対界!?そんなのありえるの!?」
アーチャー「世界を分けた覇者にのみ扱える剣だからな、我以外に扱える者などおらん」
士郎「タイカイ宝具ってどういうことだ?」
凛「そのまま世界相手用の規模の攻撃をできる宝具ってこと、セイバーのエクスカリバーは」
セイバー「対城宝具です。しかし私の聖剣は制約が多く、ライダーへ放った一撃は真の威力とは程遠い」
凛「セイバーってもしかして負けず嫌い?」
イリヤ「制約の一つに鞘があるかってのもあるのかしら?」
120:以下、
士郎「鞘?」
セイバー「私の聖剣の鞘です。確かにあれを私が所持していれば聖剣の威力も多少は上がりますし、通常の戦闘力も大幅に上がるでしょう」
士郎「でも聖剣の鞘って永遠に失われたんだろう?ないものの話をしたって意味ないんじゃないか?」
凛「あるわよ?昨日話してたじゃない」
イリヤ「もう昨日の話を忘れたちゃったのシロウ?」
セラ「可哀相に、その年でもうボケが……」
リズ「アハト翁と同じ」
士郎「皆して憐みの視線を向けるのはやめてくれないか!?」
セイバー「私の鞘があるとはどういう事ですか?鞘は今どこに?」
凛「士郎の体の中よ、士郎のあの回復力は聖剣のおかげってわけ」
セイバー「なるほど、でも何故シロウの中に?」
イリヤ「元々前回の聖杯戦争のためにアインツベルンが見つけてきたの、だからキリツグがシロウに渡したんじゃないかしら」
セイバー「前回の時既に?キリツグはそんな大事な事も黙ってたんですね……」
イリヤ「お母様を裏切るような男だもの」
セイバー「聖杯で生き返らせないでしょうか、聖剣の錆に――いえ聖剣が穢れる」
リズ「何回も生き返らせるのならアインツベルンの悲願達成?その場合私も」
セラ「お嬢様を裏切った報いを――ふふふ……」
イリヤ「殺して生き返らせて殺して生き返らせて、ふふ、楽しそうね」
凛「うわー何か衛宮君のお父さんに対する恨みで団結してるわねあの四人、衛宮君?」
士郎「…いや、何でもない。その鞘ってのは俺が持っていても意味がないんだろう?どうやってセイバーに返せばいいんだ?」
セイバー「その鞘は私の魔力で効果を発動します。今はシロウが持っているべきでしょう」
121:以下、
凛「学校は暫く休講だって」
士郎「セイバーとライダーの宝具のぶつかり合いで大分壊れちまったもんな」
セラ「おっといけない、衛宮切嗣をどのように殺すかに夢中で食事の支度が終わったと伝えるのを忘れていました」
セイバー「丁度100通り決まったところですし食事にしましょうか」
凛「アンタ達すっかり仲良しね、桜起こしてくるわ」
アーチャー「その必要はないだろう」
凛「え?」
桜「先輩?いつの間にか私お邪魔して寝てしまったみたいで――」
凛「おはよう桜、気分はどう?」
桜「え?あ、はい、大丈夫です」
凛「何があったか覚えてるかしら」
桜「えっと授業を受けていて――あ、ご、ごめんなさい。そこから先は何も覚えていなくて――」
凛「謝る必要はないわ、あなたはただ操られていただけだもの」
桜「え?」
凛「端的に言うわ。あなた今日から暫くここに住みなさい」
桜「へ?ええっ!?」
士郎「いきなり何を言い出すんだよ遠坂!!」
凛「臓硯は明確な敵、その本拠地に桜を置いとけって言うわけ?」
122:以下、
士郎「いや俺は全然かまわないんだけど…ほら、アーチャーが――」
アーチャー「我もかまわん。雑種が一匹増えたところでたいして変わらんからな」
桜「でも――」
凛「あなたがライダーのマスターだったって事は知ってるわ」
桜「ッ!!あれ、令呪が――」
凛「あなたは覚えてないようだけど、私達は臓硯に操られたあなたと既に戦ってライダーを倒してるわ」
桜「……それならなおさらここに置いとけないんじゃないですか」
凛「逆よ。あなたがまた操られたら面倒だからここで監視するって言ってるのよ」
士郎「おいそんな言い方――」
桜「わかりました、先輩が迷惑じゃないのなら……」
士郎「迷惑なんかじゃない、むしろ大歓迎だあいだぁ!?」
イリヤ「私がここに住むって言った時はうれしそうじゃなかったくせに」
士郎「そんなことないよ」
リズ「シロウ、誰が好き?」
士郎「いきなりなんだよ!?」
リズ「答えて、さもないと」
士郎「うわあっ!?どっから出したその斧!?」
123:以下、
リズ「はやく」
士郎「待って言う!!言うから!!」
リズ「そう、誰が好き?可愛い子ばかり、まさか選べない?」
士郎「そ、そりゃ可愛い子は誰でも好きだよ俺は」
凛「うわあ」
桜「先輩……」
イリヤ「さいってー」
リズ「さいてー」
セラ「屑ですね」
士郎「」
アーチャー「気が多いなあフェイカー。どうだセイバー、我のはんr」
セイバー「お断りします」
アーチャー「いやまだ言ってるt」
セイバー「寝言は寝て言ってください」
アーチャー「」
124:以下、
慎二「ライダーを勝手に使いやがって!!どういうつもりなんだよ!!」
薄暗い空間に慎二の怒声が響く
慎二「聞いてんのかジジイ!!聞こえてるならなんとか言えよ」
かれこれ一時間近く慎二は怒鳴り続けているか、間桐臓硯は微動だにしない
慎二「ライダーは僕のサーヴァントだぞ!!」
臓硯「……聖杯に選ばれもしん蛆虫は黙っておれ。いや、まだ命令をちゃんと達成できる虫の方がお前よりも賢いかもしれん」
慎二「なんだって?僕が虫よりも劣るって言うのか!?」
臓硯「比べることすら烏滸がましいかもしれんのぅ?」
慎二「ッ!!てっめえ――」
臓硯「間桐の血を繁殖させるぐらいには使えるかと思うたが――器官さえありゃ虫にでもできる」
慎二「おいジジイ何のつもりだよ――ひっおいやめろ!!やめろって言ってるだろ!!」
臓硯「サーヴァントでも魔術師でもない屑じゃが、少しは足しになるか?」
慎二「やめろって――グボッ!?」
這い上がってくる虫をはたき落としていた慎二は一瞬何が起きたかわからなかった
鼓動の音が聞こえない、変わりに胸元から大量の血が噴き出ている
アサシン「……技術の足しにはなりませんが少しの知識の足しにはなりましたな」
臓硯「そうか、少しは役に立ったようじゃな慎二っともう聞こえてはおらんんか」
129:以下、
翌朝、道場
士郎「うおおお!!」
セイバー「甘い!!」
士郎「くそっ、なら――」
イリヤ「セイバーはすっかり元通りみたいね」
セイバー「隙あり!!」
セイバーの一撃をくらった士郎は壁に叩きつけられる
士郎「ぐあっ!!いつつ…セイバー、この前までと動きが違い過ぎないか?」
セイバー「そうですね、前よりも体が随分と軽い」
イリヤ「ちゃんとした魔力が提供されるようになってステータスが上がったみたいね」
士郎「ステータス?」
セイバー「サーヴァントのステータスは強い順にA?Eまでで表現されます、中にはEXという特殊なものもありますが」
イリヤ「前に戦った時のセイバーは筋力B耐久C敏性C魔力B幸運B宝具Cと、本来の能力より制限がかかってたわ」
士郎「い、今は?」
イリヤ「筋力B耐久B敏性B魔力A幸運A宝具A+ね。リンがマスターってわけじゃないからまだ制限はあるみたいだけど」
士郎「そんなに強くなったのにまだ本来とは違うのか」
イリヤ「リンが正式にマスターになればもう少しあがるでしょうけど、リンにはアーチャーがいるもの」
士郎「ちなみにアーチャーのステータスってどんなもんなんだ?」
イリヤ「筋力B耐久B敏性B魔力A+幸運A++宝具EX、全てにおいてセイバーと同等かそれ以上ね」
セイバー「私の剣技はアーチャーには負けて等いません」
130:以下、
イリヤ「単純な打ち合いの勝負ならセイバーの方が強いかもしれないわ。でも英雄王には私のバーサーカーを除いてサーヴァントじゃ絶対に敵わないわ」
士郎「宝具の数が違い過ぎるからか?」
イリヤ「間違ってはいないけど正解でもないわ。アーチャーの宝物庫には世界中全ての原典があるわ」
士郎「全て――つまりその英霊の弱点となる武器が全部あるってことか?」
イリヤ「そういうこと、偉いわねシロウ。お姉ちゃんが誉めてあげる」
イリヤが士郎の頭をなでる
士郎「や、やめろよ。それにお姉ちゃんってイリヤは俺よりも年下だろう?」
イリヤ「私、シロウより年上だよ?こうみえて18歳だもの」
士郎「流石に騙されないぞ。それに会ったばかりのころは俺のことお兄ちゃんって言ってたじゃないか」
セイバー「シロウ、イリヤスフィールの言ってる事は事実です」
士郎「セイバーまで何を言い出すんだよ」
セイバー「十年前の時点でイリヤスフィールは8歳でした」
士郎「……本当に?」
セイバー「はい、キリツグと舞弥が話しているのをキリツグを通して聞きました」
士郎「親父を通して?」
セイバー「サーヴァントとマスターは見てる映像や音声を共有することができます」
士郎「そうなのか、って――」
セイバー「そのシロウ、貴方は男性なのである程度そういう事は仕方がないと思いますが、魔術師のせ――」
士郎「うわあああっ!?セイバーそれ以上言わなくていい!!」
セイバー「?、わかっているのならばよいのですが――」
イリヤ「――ねえ、舞弥って誰?」
134:以下、
セイバー「舞弥ですか?」
士郎「そういや俺も聞いたことないな」
セイバー「知らないのは無理もないでしょう、舞弥は前回の聖杯戦争の途中で命を落としましたから」
士郎「ってことはマスターだったのか?」
セイバー「いえ、彼女はマスターではなくキリツグの助手です。私とは誇りが違いましたが素晴らしい戦士でした」
イリヤ「そう、女の人だったんだ。キリツグとは仕事の関係だけだったのかしら」
セイバー「いえ、身体の関係もあったと思いますが。アイリスフィールも気づいていたようです」
イリヤ「そう…お母様を聖杯戦争の途中から裏切ってたのね……殺す!!キリツグ殺す!!」
士郎「落ち着けイリヤ、切嗣はもう死んでる!!」
イリヤ「何のための聖杯だと思ってるの!!」
士郎「アインツベルンは何か目的があって聖杯戦争やってたんじゃないのか!?」
イリヤ「失われた第三魔法、魂の物質化…つまりキリツグを生き返らせる事は第三魔法への到達と同じ事だわ」
士郎「それでいいのか…ってサーヴァントも聖杯で願いを叶えたいんだろう?そんないくつも叶えられるようなものなのか?」
イリヤ「……そうね、叶えられない願いなんてないぐらいたくさん叶えられるわ」
士郎「だったら戦わずに皆で願いを叶えちまえばいいんじゃないのか?」
セイバー「リンが言っていたでしょう。サーヴァントが残り一体になるまで聖杯は呼び出せないのです」
士郎「そういやそんなこと言ってたような」
135:以下、
セイバー「ところでシロウ、今日は朝からリンの姿が見えませんが。朝食の際にもいませんでしたし」
士郎「ああ、遠坂は桜と買い物に行ってるんだよ」
セイバー「買い物?」
士郎「桜の家は臓硯の本拠地だろう?うちに泊まるのに服とか必要だけど、桜の家に取りに帰らせるわけにはいかないからってさ」
イリヤ「セラとリズも一緒に行ってるわ。あの恰好はこのお屋敷には合わないもの」
士郎「聞こうとは思ってたけど、あの服装ってなんなのさ?」
イリヤ「アインツベルンのメイド服よ」
士郎「メイド服?メイド服って普通は――」
ミニスカメイド姿のセイバーを想像する
桜だったらロングスカートかな
遠坂ならどちらでも似合いそうだ――
イリヤ「……シロウ、鼻の下伸びてる」
士郎「はっ!?」
イリヤ「やらしーこと考えてたでしょ?」
士郎「そ、そんなことはないぞ?」
セイバー「シロウ、処理には十分注意を。知らぬうちに子供を作られる可能性もありますから」
士郎「流石にそんなことは――あっ」
イリヤ「そういえばセイバーは寝ている間に生やされた上に勝手に子供を作られて、その子供に国を滅ぼされたのだったかしら」
137:以下、
士郎「セイバーの息子…円卓の騎士の一人、モードレットだっけ」
セイバー「私は認めていませんが――それに正確には娘ですね。彼女も私と同じく男として生活していましたから」
イリヤ「へえ、他にも実際には女だった円卓の騎士とかいるのかしら」
セイバー「私の知る限りではいないと思いますが」
士郎「そういやセイバーとアーチャーは前回の聖杯戦争でも召喚されてたんだよな?」
セイバー「ええ、前回のアーチャーと今回のアーチャーでは多少性格が違うように感じますが」
士郎「知り合い同士の英霊が召喚されたりするってこともあり得るのか?」
セイバー「そうですね、確率はかなり低いでしょうがありえるでしょう。実際前回の聖杯戦争でも円卓の騎士がいましたし」
士郎「円卓の騎士がいたのか!?」
セイバー「ええ、宝具で姿を隠していたのとバーサーカーとなり狂化されていたので気づきませんでしたが……」
士郎「セイバー?」
セイバー「いえ、この話はもうやめましょうか。シロウお腹が空きました、ご飯にしましょう」
士郎「あっもう昼か。材料買いに行ってくるよ」
イリヤ「私も行くわ、家に居ても暇だもの」
セイバー「それでは私もお供しましょう。また間桐臓硯が襲ってこないとも限りませんし」
138:以下、
セイバー「さてシロウ、お腹も膨れたことですし午前中の続きといきましょうか」
士郎「ああ、頼むセイバー」
イリヤ「ところで何でシロウはセイバーと剣の打ち合いしているの?マスターが鍛えたところで何の意味もないじゃない」
セイバー「確かに魔術師がいくら体を鍛えたところでサーヴァントに勝つ事は不可能でしょう。でも自身の身を護ることはできます」
士郎「それに実戦のように打ち合う事で勘も鍛えられるしな」
イリヤ「ふうん、いくら勘や技術を磨いたところでバーサーカーの一撃で死んじゃうと思うけど」
セイバー「イリヤスフィールはシロウをどうしようと思っているのですか?」
イリヤ「わかんない」
セイバー「わからないとはどういう事ですか?」
イリヤ「最初は裏切り者のキリツグの息子だから殺そうと思ってたけど、シロウは優しいしそれにセイバーもキリツグの被害者だし」
士郎「イリヤ……」
イリヤ「でももし最後に残っているのがバーサーカーとセイバーだったらセイバーは殺さなくちゃいけないもの」
セイバー「そうでしょうね。私も私の目的のために貴女とバーサーカーを倒さなければいけない」
士郎「戦わなくちゃいけないのか?」
セイバー「ええ、例え貴方が戦う事を拒否しようと」
139:以下、
アーチャー「真実をフェイカーに教えなくてもいいのか人形」
イリヤ「聖杯戦争の仕組みに気付いたの?流石英雄王ね。シロウやセイバーに教えたところで意味ないもの」
アーチャー「ああ、確かにあの聖杯ならばどちらにせよ苦悩するだけだろうよ」
イリヤ「それよりアーチャーこそリンに言わないでいいの?あの間桐の黒い聖杯のこと」
アーチャー「キャスターもライダーも貴様が回収できたのであろう?」
イリヤ「ええ、キャスターは近かったし、ライダーが倒れた時は貴方の剣であっちは怯んでいたものね」
アーチャー「ならばまだ言う必要はない。無暗に不安を煽る事はないだろうよ」
イリヤ「暴君が甘くなったものね」
アーチャー「人が苦悩する姿も中々に面白いがな、此度はそれ以上の余興があるのでな」
イリヤ「余興?」
アーチャー「ああ、我には此度の聖杯戦争にもあの影にも興味はない。あるのはただ一つの余興よな」
イリヤ「私を助けたのもその余興のためかしら」
アーチャー「素晴らしい余興にはそれに見合った舞台を準備せねばな。それに――」
イリヤ「それに?」
アーチャー「我の庭を雑種に荒らされるのは癪であろう?特にあの己が目的さえ忘れたような者にはな」
イリヤ「マキリの目的?」
アーチャー「もっとも目的と手段が入れ替わってるようでは先はないだろうがな」
140:以下、
凛「随分と手荒いお迎えね」
服を買いに新都へと出かけた遠坂凛と間桐桜は教会の奥で縛られていた
綺礼「こうでもせんとお前は素直に話を聞かんと思ったのでな」
凛「で、いったい何の用なのかしら。それに後ろにいるそいつは何なのよ」
綺礼「彼女か、紹介しよう魔術協会から今回の聖杯戦争のために派遣されたバゼット君だ」」
バゼット「どうも、バゼット・フラガ・マクレミッツです。以後お見知りおきを」
凛「バゼット?あの封印指定の執行者!?何でそんなヤツが――」
綺礼「お前も話ぐらいは聞いたことがあるようだな、彼女は元ランサーのマスターだ」
凛「元?それどういう事?」
バゼット「私は冬木に来てすぐ言峰神父に協力を要請しました」
凛「中立の監督役と協力?不正もいいところじゃない、魔術師としての誇りはないわけ?って何で綺礼は笑っているのよ」
綺礼「いや、その言葉を前回の参加者の一人に聞かせてやりたいものだと思ってな」
バゼット「私は言峰神父との待ち合わせ場所に先に着きましたがそこで不意打ちを食らいました」
言峰「私が着いた時はサーヴァントと令呪を左腕ごと奪われてしまっていた」
凛「そう。それで?そんな話をするためだけにここに連れてきたわけじゃないんでしょう?」
綺礼「無論だ。間桐臓硯が動いていると聞いてな、おそらくランサーを奪ったのはあの老人だろう」
141:以下、
凛「何それ、つまり今臓硯はアサシンとランサーの二体のサーヴァントを連れてるってわけ?」
綺礼「現在残っているサーヴァントは五体だ。そしてそのうち二体をマキリが、残り三体はお前達というわけだ」
バゼット「魔術師殺しの衛宮と御三家の遠坂とアインツベルンが手を組んでるのでしょう?」
凛「悪いけど私はアインツベルンと手を組んだ覚えはないわ。それに衛宮君は魔術師殺しとしての技術は持ってないわ」
綺礼「しかし現在一つの場所に三体のサーヴァントが揃っているのは確かだ」
凛「それで?さっさと本題に入りなさいよ」
綺礼「監督役として指令を出そう、全マスター協力して間桐臓硯を討て」
凛「今度は何を企んでいるわけ?」
綺礼「間桐臓硯は民間人に多くの被害を出している」
凛「臓硯の操るキャスターは倒したはずよ」
綺礼「あの老人は今もな一般人から魔力を集めている、影を使ってな」
凛「影……アーチャーが言っていた吸収の魔術……」
綺礼「吸収の魔術を使って延命しているというのは本当だったか」
凛「で、協力してって言うけど具体的な作戦はあるわけ?」
綺礼「あの老人は数百年も生きていると聞く。戦術等練ってもあちらはその上を行くだろう」
凛「ならどうするのよ」
バゼット「簡単な話です。こまごまとした作戦が意味をなさないなら圧倒的な力でねじ伏せればいい」
凛「そう、ようはゴリ押しってわけね」
綺礼「そういうことだ。臓硯は虫の性質上昼間より夜に動く可能性が高い。今夜から手分けして探そうではないか」
145:以下、

イリヤ「何で私がリンと一緒に行動しなきゃいけないわけ?」
凛「こんな街中じゃバーサーカー出したら大騒ぎになるでしょう」
セラ「安心してください、お嬢様の身は私達が守ります」
リズ「イリヤ、守る」
凛「士郎にはセイバーが着いてるから大丈夫でしょ、それより――」
バゼット「何か?」
凛「何か、じゃないわよ。何であんたが着いてくるのよ」
バゼット「サーヴァントを連れてる組と連れていない組にわかれたのだから私がこちらに着くのは当然でしょう」
凛「いつそんな風にわかれたかしら。それに執行者といえど片腕を失ったあなたに戦闘ができるのかしら」
バゼット「ご心配なく、片腕ぐらいなくても貴女達全員ぐらい簡単に相手できますよ」
セラ「なめられたものですね」
リズ「ここで倒す?」
イリヤ「放っておきなさい。あれにわざわざ相手をする価値なんてないもの」
バゼット「やれやれ、会ったばかりだというのに随分と嫌われたものですね」
凛「執行者とわかってて自分から近づく魔術師なんてよっぽどのバカか変人だけよ」
バゼット「それもそうでしょう。私も言峰神父の指示がなければ、遠坂やアインツベルンと手を組む等しないですから」
凛「随分あのエセ神父を信頼しているのね」
バゼット「当然です、彼ほど素晴らしい人材は他に存在しないでしょう」
146:以下、
数時間後――
士郎「この時間になると全く人が見当たらないな」
セイバー「シロウ、今日はここまでにしようとリンが」
士郎「そっか遠坂から魔力供給があるから遠坂と連絡が取れるのか」
セイバー「ええ、リン達は先に帰るそうです」
士郎「今日は収穫なしか、じゃあ俺達も帰るか――」
セイバー「どうかしましたか?」
士郎「今誰かがいたような……気のせいか?」
セイバー「シロウ?」
士郎「いや、多分気のせい――」
瞬間、全身に寒気が走る
目の前に黒い影が立っていた
知性もなく理性もなく、おそらく生物でさえないその黒い影が蜃気楼のように立ち続けるその光景を
何故、懐かしいとさえ、思ってしまったのか
士郎「あれが、イリヤやアーチャーが言っていた影……なのか?」
セイバー「間違いないでしょう。しかしあれはまるで――シロウ、私から離れないでください」
士郎「ダメだ…あの影には――」
サーヴァントでは絶対に敵わない、そう直感が告げていた
あの影にはサーヴァントは絶対に触れてはいけない
士郎「セイバー!!」
147:以下、
吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気
がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする
吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気がする吐き気
がする気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ちが悪い気味が悪い気味が悪い
――体が溶ける、心が融ける
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね――
148:以下、
士郎「う……あ?」
頭が痛い
枕元にある時計を見る
九時過ぎ――
士郎「まず――」
完全に寝坊した
慌てて立ち上がろうとしてふらつく
士郎「何だこれ……」
体が重い
セイバー「シロウ!!気がつきましたか!!リン、イリヤスフィール!!」
士郎「セイバー?一体どうしたんだ」
セイバー「覚えてないのですか?昨夜貴方は影に――」
士郎「影?あっ」
思い出した
伸びた影からセイバーを庇おうと突き飛ばして――
その後に感じた気持ち悪さを思い出し喉元まで来た吐き気を何とかこらえる
凛「その様子からするとあの影には呪いか何かの効果があったようね」
149:以下、
士郎「呪いの効果があるなんてそんな生易しいもんじゃない。あれは――」
呪いの塊
それ以外に当てはまる言葉など存在しない
士郎「そうだ、あの影はどうなったんだ?」
セイバー「影から伸びた触手のような影の上にシロウが立った途端に何処かに消えました」
士郎「そっか」
イリヤ「触手…バーサーカーを何度も貫いたあれね。本体に触れたわけじゃないから死ななかったってとこかしら」
凛「吸収の魔力があって、あのバーサーカーの肉体を何度も貫くような攻撃力、そして呪いでできてるかのような中身か」
士郎「あんなのどうやって倒せっていうんだ?何となくだけどあれにはサーヴァントじゃ勝てないと思うぞ」
イリヤ「シロウも気づいたんだ。そうあの呪いはサーヴァントに害を与えると思う」
凛「害?具体的には?」
イリヤ「キャスターを臓硯は操っていたでしょう?多分だけどあの影にサーヴァントが飲み込まれればそういう風になるわ」
凛「サーヴァントを奪う影ってわけか…じゃあやっぱり臓硯を直接叩くしかないわね」
士郎「でもどうやって?」
凛「影は臓硯の魔術なんだから絶対影の側にいるはずよ」
イリヤ「マキリはアーチャーを倒すための戦力としてセイバーかバーサーカーを狙ってくると思う」
凛「そこで私とイリヤ、そしてセイバーが囮として影を呼び出すわ」
イリヤ「シロウとリズとセラ、そしてあの執行者がその間にマキリを探し出して叩くの」
151:以下、
士郎「危険だ、囮なら俺が――」
凛「あの影は衛宮君を殺さなかった。つまり衛宮君には一切の興味がないってことよ」
イリヤ「シロウとセイバーが一緒に囮になったって昨夜の繰り返しになるだけよ、無駄に相手の戦力を増やすだけかもしれないわ」
セイバー「リンとイリヤスフィールの言う通りです、シロウはシロウに出来ることを」
士郎「わかった…それは今夜やるのか?」
凛「色々と準備が必要なの、それに衛宮君今は戦える状況じゃないでしょ?」
士郎「このぐらい大丈夫……うっ」
凛「ほら見なさい、あんたは今あの影の呪い受けた上に魔力も盗られた状態よ。今日はしっかり休んで魔力を回復させなさい」
士郎「……わかった、確かに今のままじゃ足手まといにしかならない」
凛「決行は明後日の昼間よ、夜だとあの影がどこから来るかわからないし」
士郎「昼間は臓硯は動かないんじゃなかったのか?」
凛「だからこそ準備するんじゃない、今夜と明日の夜に私とイリヤで餌を撒く。そうすれば必ず臓硯は現れるはずよ」
士郎「餌?」
凛「そう、間桐は慎重過ぎるけど動ける時は大胆に動く。それを利用させてもらうわ」
イリヤ「そういうわけで今日から私達とリンはここを出るわ」
士郎「俺はどうすればいいんだ?」
凛「今日と明日は家から一切出ないでちょうだい、そして明後日の12時過ぎぐらいにアインツベルンの城に来て」
士郎「待ってくれ、俺は場所を知らないぞ?」
152:以下、
イリヤ「後で暗示で場所を教えてあげるね」
凛「ちょっと痛いし明日の夜ぐらいまではろくに動けなくなるでしょうけど我慢してね」
士郎「ちょっと待て。明日の夜まで動けないってどういう事さ」
イリヤ「シロウの令呪はここね」
士郎「おいイリ――ぎっ―――!!」」
イリヤが手首を掴むと同時に激痛が走る
士郎「ぐ、づっ――――!?」
イリヤが手を離す、そこにあった筈のものがなくなっている
士郎「なっ――」
イリヤ「ごめんねシロウ、令呪もらっちゃった」
桜「先輩?今凄い声聞こえましたけど――」
イリヤ「衛宮も遠坂もちょろいものね、こんなに簡単にいくなんて」
凛「ようやく本性を現したわねこの性悪女!!」
イリヤ「あら、それは貴女の事じゃなくて?リン」
士郎「おい急にどうしたんだよ?」
凛「Neun,Acht,Sieben――――Stil,sciest,Beschiesen、ErscieSsung……!!」
凛が呪文と同時に宝石を投げ、その宝石が爆発する
153:以下、
士郎「くっ…遠坂いきなり何を――」
イリヤ「あらリン、遠坂の当主ともあろう者がその程度?」
イリヤの前には銀色の糸で出来た二羽の鳥――
その鳥が凛に向かって攻撃を放つ
その攻撃をアーチャーの宝具である円盤が弾く
凛「その程度の攻撃が効くと思ったかしら?」
イリヤ「その言葉そっくりそのまま返すわ」
リズ「イリヤ」
巨大な斧を持ったリズがイリヤを護るように立つ
そしてセラが放った魔術が円盤に辺り跳ね返る
桜「っ!?」
士郎「危ない桜!!」
桜「せ、先輩ありがとうございます。一体何が――」
士郎「おいお前らやり過ぎだぞ――」
凛「ここじゃ狭いわね、セイバー!!」
セイバー「了解しましたマスター」
セイバーが凛を抱きかかえ、窓を割りながら外に飛び出す
イリヤ「追うわよ、リズ」
リズ「わかった」
士郎「おい待て――」
追手のイリヤを狙ってか凛が放ったガンドは士郎の額に直撃し――
155:以下、
士郎「う……」
桜「先輩!!良かった……」
士郎「桜…一体何が……」
桜「姉さんとイリヤさんが戦闘を始めたんです。そして姉さんが放ったガンドが先輩にあたって」
士郎「ガンド…呪いか……」
桜「はい、先輩はずっと寝てたんですよ?」
士郎「桜、今は何日の何時だ?」
桜「はい?えっと九日の夜の8時です。先輩は一日半ぐらいずっと寝てたんです」
士郎「夜までってそういう事か……くそ、あいつわざと俺に当てやがったな」
桜「わざとって姉さん達と喧嘩でもしたんですか」
士郎「いや……」
左手の甲を見る
そこにあったはずの令呪は見当たらない
士郎「セイバーは?」
桜「姉さんと一緒に出ていったきり帰ってきてませんけど……先輩令呪が――」
士郎「ああ、遠坂にセイバーを奪われたみたいだ」
桜「そう、つまり今は姉さんがアーチャーさんとセイバーさん両方のマスターを……」
士郎「くっ、まだ体は動きにくいか」
桜「あ、今ご飯を用意しますね?」
156:以下、
バーサーカー「■■■■■■――っ!!!」
巨人が咆哮える
無数の飛んでくる剣を叩き落としながら、接近してくる騎士の攻撃にも対応する
イリヤ「二体のサーヴァントを使ってその程度?期待外れにも程があるわリン」
凛「うっさいわね…やっぱり二体分に魔力を提供すると火力が落ちるか」
アーチャー「この我が支援してやってるのだ、もっと踊れよセイバー」
背後から襲い掛かる無数の剣を己の直感でセイバーは避け、そのまま剣はバーサーカーに突き刺さる
セイバー「私ごと狙っておきながら何が支援ですか!!」
動きが止まったバーサーカーに斬りかかろうとする
が、リズとセラの二人の攻撃がき、それを躱している間にバーサーカーは再び動き出す
アーチャー「その程度もいなせんようでは聖杯を手にする価値もない」
再びアーチャーはバーサーカーにセイバーごと攻撃を仕掛ける
かれこれこの三体のサーヴァントにおける戦闘は前日も含め十時間を超えている
日が変わるよりも前から始められた戦闘は日が昇った後も場所を変えながら続けられていた
凛「城の残骸…ここは郊外の森?まんまとアインツベルンの工房の地に引きずりこまれたってわけね」
イリヤ「二人もサーヴァントを使っていて魔力は大丈夫かしら?」
凛「お生憎様、あんたに心配される程軟じゃないのよ。あんたのバーサーカーこそ大丈夫かしら、もう何回も死んでるはずよね」
イリヤ「それこそ心配される必要はないわ。だってバーサーカーは誰よりも強いもの」
二人共強がってはいるが疲労を隠しきれていない
動きの鈍っている彼女達に影が迫る
160:以下、
アーチャーが残していった宝具で郊外の森に一瞬で移動する
士郎「ここがアインツベルンの城があった場所か…確かにここなら人は来なさそうだ」
自分の風邪?(呪い)がうつったのか家で寝込んでる桜を置いてくるのには躊躇いがあったがここに来ないわけにはいかない
士郎「遠坂達は――あっちか」
金属音が響きわたる方向に木々に隠れながら近づく
士郎「――いた」
バーサーカーとセイバー・アーチャーが戦っている
士郎「餌ってこういう事か、臓硯とアサシンは――」
アーチャーの宝具でここに来たから遠坂はここに着いた事を気付いてるはずだ
イリヤも当然、自分の工房に侵入者がいたのだから気づいているはずだ
なら自分がすることは一つ
士郎「――いた」
協会から派遣されたというバゼットとかいう女と戦闘から離れたセラがアサシンの近くで気配を殺している
リズ「臓硯はあそこ、合図来たらシロウが押さえて私が斬る。」
士郎「わかった」
悪寒で影が現れた事を察知する
影がセイバー達に伸び――
凛「セイバー!!」
リズ「今!!」
157:以下、
一瞬の出来事だった
アーチャーの射出した剣によって、振りかぶったセイバーとバーサーカーが動きを止めた
その瞬間に木々の影から現れた影が三体のサーヴァントを飲み込もうとした
凛「今よセイバー!!」
セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)――!!」
セイバーはそのまま神々しい光で影を薙ぎ払い――
影に潜んでいたアサシンをバゼットが殴り飛ばし――
同じく側に潜んでいた臓硯を士郎が押さえつけ、リズがそれを切り裂こうと振りかぶった
そのまま臓硯を倒せばそれで全て終わるはずだった
想定外だったのはただ一つ
聖剣の斬撃、その魔力の塊さえその影は飲み込んでしまった
その光景に目を取られた一瞬のうちに臓硯は束縛から逃れ影の中に消え
聖剣の膨大な魔力を吸収した呪いの塊としか思えないその影は一気に膨張し
その光景がまるで水風船のようだと間抜けな事を考えているうちに
それは一気に広がり、
視界と知覚が黒一色に染め上げられた
163:以下、
黒く染まった視界が徐々に回復してゆく
力を使い果たしたのか黒い影は溶けて完全に消え去った
イリヤが叫んでいる
聴覚がいかれたのか何を言ってるのかが聞き取れない
感覚もいかれたのか自分の体がどうなったのかもわからない
ただ光の粒子となって消えてゆくバーサーカーと何かを叫んでるイリヤを見て何が起きたのかは理解できた
バーサーカーはイリヤを護る為に身を挺して盾となった
そしてあの攻撃はあのバーサーカーをすら一撃で葬り去った
なら何故……自分は生きている?
セイバー「あ…あ……無事で…かった……シロ……」
士郎「セイ、バー……?」
すぐ目の前の地面でボロボロになったセイバーと持ち主のいなくなった巨大な斧が倒れている
セイバーとリズが盾となってくれたのだ
サーヴァントのセイバーはかろうじて肉体を保ったが、生身のリズは耐えきれずに消滅した
あのバーサーカーさえ何度も死ぬ程の威力だったのだ、生身の人間が耐えきれるわけなど――
士郎「とお…さか――?」
辺りを見回す
影のいた場所を中心に自分とイリヤのいる場所を除いて大きく抉れた地面
自分の他には倒れたセイバーと遠くでへたり込んだイリヤ、他に人影どころか木々は消し飛び遮蔽物すら見当たらない
遠坂はイリヤやバーサーカーよりも影に近い位置にいた――
164:以下、
士郎「嘘だろ…?遠坂っ、遠坂―――!!!」
凛「遠坂遠坂うるさいわね」
士郎「遠坂っ、良かった無事だったんだな」
凛「ギリギリだったけどね。聖剣の魔力量に耐えきれず爆発四散したって感じかしら」
アーチャー「狂犬とあの二体の人形は死んだか」
士郎「でもどうやってあの距離から?」
凛「アーチャーの宝物で咄嗟に飛んだのよ、士郎は距離があったしセイバーは士郎とこに走りだしちゃったから間に合わなかったけど」
士郎「飛んだ?空にか?」
凛「転移したのよ、とはいってもそう遠くじゃなかったからもうちょっと爆発の範囲が広かったら危なかったわね」
アーチャー「……無様な格好だなセイバー」
セイバー「アー、チャー……リンは無事ですか……よかった……」
凛「酷い傷…核は何とか無事みたいだけど……これじゃあもう」
士郎「そんな……」
アーチャー「いや、まだ諦めるのは早いかもしれんぞ雑種」
凛「どういう事?」
アーチャー「狂犬が消滅する程の威力だというのに何故まだセイバーは生き長らえていると思っている」
凛「……セイバーの鞘!?」
アーチャー「真名を解放したわけではないから防御までとはいかなかっただろうが、フェイカーの側にいたことから多少の恩恵はあったのだろうよ」
凛「そっかそれだったら…衛宮君、今すぐ鞘をセイバーに返して。そうすればまだ助かるかもしれないわ」
ランサー「悪いがそれはさせられないな」
165:以下、
凛「ランサー!?このタイミングで出てくるって事は――」
ランサー「こういう弱ってるとこを狙うなんて真似は趣味じゃねえが令呪を使われてんだ、悪く思うな」
アーチャー「今のセイバーなら令呪等なくても楽に消せるだろうに、お前のマスターは随分慎重なようだな」
ランサー「ここでセイバーとアーチャーに消えてもらえばオレ達の勝利は確定するらしいんでな。あくまで保険ってわけだ」
アーチャー「ここでセイバーが消えようか我には関係ないが――」
凛「アーチャー、ランサーを近づけないで、できるならここで倒して」
アーチャー「――というわけだ。不本意ながらお互いマスターには逆らえんようだな」
ランサー「テメエも令呪を使われてるってわけか」
アーチャー「一度や二度の令呪ならはねのけるのだが――六度重ねられているのでな」
ランサー「六回だあ?何でそこの嬢ちゃんが六個も令呪をもってやがる」
アーチャー「令呪のストックならいくらでも我が持っている、バイクの免許の偽造と引き換えに渡すのではなかったがな」
ランサー「そんなのありかよ、まあオレのマスターも人のこと言えねえしな。お喋りは終いだ、前と違って邪魔はねえからな」
アーチャー「ほう、前回は実につまらぬ余興だったからな。此度はせいぜい我を楽しませるため踊るが良い」
ランサー「てめえを楽しませる気なんかさらさらねえよ。そういや前のあの趣味のわりい金ぴかの鎧はどうしたんだ?」
アーチャー「バイクに乗るには邪魔だったのでな、あれさえ着ていれば令呪を幾度重ねられようと関係なかったものを」
ランサー「ありゃ頑丈なだけじゃなく対魔力もあったってのか。まああれがないならオレの槍でてめえを簡単に貫ける」
アーチャー「ふん、鎧がないぐらいでは貴様ごときたいしたハンデにもならんな」
ランサー「なめるなよ」
166:以下、
跳躍したランサーの一撃をアーチャーは取り出した剣で受ける
そして両者は何度も武器を打ち合う
士郎「近接戦!?アーチャーはあんな戦い方もできたのか!?」
凛「衛宮君、今はセイバーを助ける事に集中して、体から鞘を出すのよ」
士郎「助けるって言ったってどうやって鞘を出せばいいんだ?」
セイバー「形は、私が形成…します……シロウは鞘の魔力を、一か所に――」
凛「セイバーはわかるのね。それじゃあ士郎とセイバーに任せるわ、私はイリヤを見てくる」
セイバー「…わかりました。準備はいいですか…シロウ」
士郎「ああ、遠慮なく始めてくれ」
セイバーの手が士郎の胸に沈み込む
心なしかセイバーの傷の治りが少しばかりか早くなったように感じた
いつの日か夢に見たセイバーの姿を思い描き、その時彼女が持っていた鞘の形をイメージする
戦場を行く騎士王に相応しい黄金の鞘――
……体が熱い、神経が焼かれるような感覚が襲い掛かる
それでも、寸分狂うことなく精密に鞘を再現する――
セイバー「っ―――!」
――体から、何か、長く自分を縛っていた物が抜けていくような感覚がした
セイバー「凄い…見事ですシロウ、こんな完全な姿に戻せるなんて――」
体の余熱にのぼせ地面に座り込む
鞘を取り戻したセイバーは一命を取り留めたのか、先程まで荒かった息も治まっている
士郎「傷は治ってないのか?」
セイバー「いくら聖剣の鞘といえど致命傷をすぐに治す事はできません、しかしこれでまた戦えます」
167:以下、
ランサー「だあっ!!」
アーチャー「ぐっ!!」
ランサーの一撃を受けたアーチャーが吹っ飛ばされ、士郎達の近くに着地する
アーチャー「敏性はヤツが上か」
アーチャーの後ろから追撃しようとするランサーに数十の武器が飛ぶが全て弾き落とされる
士郎「あの数を一瞬で!?」
アーチャー「矢避けの加護よ、あやつには宝具であろうと飛び道具は通用せん――数で圧倒すれば別だがな!!」
数百という武器が襲い掛かり、捌き切れずにランサーの体に傷が増えていく
ランサー「くっそ、相変わらずデタラメな数だなおいっ!!」
再び接近してきたランサーとアーチャーが再び打ち合いに入る
セイバー「アーチャー、貴方では接近戦は不利だ。私が――」
アーチャー「無理をするなセイバー、お前はまだろくに動けんだろう。それにようやく――体が温まって来たので…な!!」
アーチャーの一撃がランサーを吹っ飛ばす
ランサー「そう来なくっちゃな!!――あ?何だよ今いいとこ……ちっわかったわかった、やりゃあいいんだろやりゃあよ」
アーチャー「マスターからの念話か。我々の戦に横槍を入れるとは無粋なヤツよ」
ランサー「悪いなアーチャー、いつまでも遊んでずにさっさととどめを刺せってよ」
アーチャー「そうか、では散り際で我を愉しませよ!!」
ランサー「死ぬのはテメエだ。その心臓――貰い受ける!!」
169:以下、
バゼット「ふう、もう少し地面に掘った穴が浅ければ危なかった――あれは!!」
ランサー「――刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)!!」
凄まじい魔力をもって放たれた、確実に心臓を貫く槍は――
アーチャー「――螺旋剣(カラドボルグ)!!」
光の斬撃によってランサーもろとも吹き飛ばされた
その斬撃の威力はセイバーの聖剣と
ランサー「が――」
アーチャー「貴様は誓約によってこの剣に一度は敗れなければならぬのだろう?」
ランサー「ぐ――、てめ…そんなもんまで持ってやがったのかよ」
アーチャー「ほう、まだ動くか」
ランサー「ったくマジで嫌んなるよな――だが、その誓約は一度までだ。二度目はねえ」
アーチャー「先ほどの技はその距離からは撃てぬのだろう?範囲内に貴様が入るより我の剣が貴様を貫く方が早い」
ランサー「今度はさっきのと違うぜ?セイバーもろとも消えな――突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!!」
刺し穿つ死棘の槍が一人に対する命中を重視した一撃ならば、突き穿つ死翔の槍は威力を重視した対軍への一撃
それがランサーの手から放たれようとするその一瞬に――
ランサーごと槍は鎖に絡め取られた
ランサー「なっ!?」
士郎「何だあの鎖――」
170:以下、
アーチャー「天の鎖!!我の無数ある宝物の中でも他とは比べようのない一番の鎖(とも)よ」
ランサー「くそっ、何だこりゃあ。全然動けねえ……」
アーチャー「その鎖は神性が高ければ高い程餌食となる、逃げよう等と思うな。より一層締まるだけだぞ?」
ランサー「くそっ、刺し穿つ死棘の槍ならとっくにてめえの息を止めれてたものを」
アーチャー「本来の使い方の方が因果への干渉は弱いようだな。喜べよ狗、我が鎖を使う程に貴様を認めてやったのだ」
ランサー「そりゃどうも……って誰が狗だ!!」
アーチャー「さてと、カラドボルグはもう使ってしまったし、貴様にはどのような最期が似合うか」
ランサー「さっさとやれよ、身動きを封じられた時点でオレの負けは決定したんだ」
アーチャー「そうだな、せめてもの情けだ自分の宝具で死ぬか?」
ランサー「なに?」
鎖で巻き取られていたランサーの槍がランサーの手元を離れ――
ランサー「かはっ――」
ランサーの心臓を貫き、そのまま鎖によって砕け散った
アーチャー「思っていたよりは愉しめたぞ雑種」
凛「終わったアーチャー?」
アーチャー「ふん、残っていた二個と追加でくれてやった三個の令呪を全て使って三日間絶対服従とかいうつまらん命令をしおって」
凛「あんたがやる気出さないからでしょうが」
171:以下、
ランサー「はっはっは!!期限切れでこいつに殺されるとか考えなかったのか?」
凛「ランサー!?」
ランサー「安心しな、オレはもう戦えねえよ。マスターの令呪ももう残ってねえしな、そのうち消える」
凛「臓硯は今日で倒せる予定だったしね。あとはセイバーを倒すだけなのに殺されたりしないと思ったのよ」
ランサー「はっやっぱりマスターにすんなら嬢ちゃんみてえのが良かったな、美人で強情で肝が据わってるときた」
士郎「遠坂に近づくなよ」
ランサー「いつぞやの小僧か、嫌われたもんだな」
士郎「当たり前だろ」
ランサー「生憎昔から良い女には縁がなくてな、少しぐらい良いじゃねえか」
バゼット「ランサー」
ランサー「あん?お前生きてたのかよ、ちゃんとお前がマスターのままならもうちっと戦いを楽しめたのによ――」
士郎「消えた…」
凛「これで残るサーヴァントはアーチャーとセイバーだけね」
士郎「あ――」
凛「でもどうしようかしらね。セイバーの魔力供給は私がしてるんだし」
セイバー「リンには悪いですが私は聖杯が欲しい。戦うのならば今からでも――」
凛「あなたまだ戦える体じゃないでしょう。戦うのはまた今度、あなたが完全に治ってからにしましょう。行くわよアーチャー」
士郎「おい遠坂――」
バゼット「私は教会で神父と共に聖杯戦争の結末を見届けましょう」
172:以下、
士郎「セイバー、どのくらいで治るんだ?」
セイバー「明日の昼までには治ると思います。シロウ、イリヤスフィールをどうするつもりですか?」
士郎「どうするって――」
バーサーカーだけじゃない。セラとリズも死んだ
士郎「イリヤにはもう俺しかいないんだ。切嗣の果たせなかった約束の代わりにも俺が最後までイリヤを護る」
セイバー「そうですか、……シロウが決めた事なら私は何も言いません」
士郎「助かる。さて帰るか…イリヤは気を失ったままだし俺がおぶらなきゃいけないけど、セイバー歩けるか?」
セイバー「はい、今日はもう戦闘の必要もないですし。私の事は心配しないでください」
士郎「あれ?」
セイバー「どうかしましたか?」
士郎「あそこに誰か――蟲!?」
こちらが気づいたことに気がついたのか人影は蟲を放ってくる
セイバー「はあっ」
その人影をセイバーが斬り伏せる
セイバー「これは――」
両断されて倒れた人影はよく知っている者だった
断面からは蟲が逃げようと足掻いている
士郎「慎二……中は蟲が詰まってるだけ――臓硯にやられたのか。桜に何ていや良いんだよ……」
セイバー「帰りましょうシロウ。貴方も疲れたでしょう」
176:以下、
桜「おかえりなさい先輩、もう急にいなくなっちゃいましたから心配しましたよ」
士郎「ただいま桜、悪いな」
桜「まだ体調が良くなったばかりなのに――先輩?顔色悪いですよ…?ひょっとしてまだ体調悪いんじゃ」
士郎「いや、大丈夫だ。桜はもう大丈夫なのか?」
桜「はい、この通り」
士郎「そうか、良かった――セイバー!?」
セイバー「スゥ……スゥ……」
士郎「何だ寝てるだけか…桜、セイバーを布団に寝かせるのを手伝ってくれないか?」
桜「あ、はい」
イリヤ「シロウ」
士郎「イリヤ、気がついたのか」
イリヤ「うん、シロウ左手出して」
士郎「ん?こうか?」
イリヤ「えい」
士郎「がっ!?」
イリヤが手の甲の肉を引きちぎる
桜「先輩!?イリヤさん何を――」
士郎「あれ?ちぎられたはずなのにもう痛くない――って令呪!?」
イリヤ「魔力を通さない特殊な礼装を擬態させて令呪を隠してたの。驚いた?」
士郎「あのなあ、それならそうと初めから言ってくれよ」
イリヤ「だってシロウ顔に出るじゃない。さ、セイバーを寝かせたら食事にしましょう?」
177:以下、
士郎「さてすっかり遅くなっちまったな、桜用意しててくれたのか」
桜「はい、ところで姉さんとリズさんとセラさんはどうしたんです?」
イリヤ「セラとリズは死んだわ、わかってるでしょう?」
桜「え――?」
士郎「?、遠坂はもうここには来な――」
凛「ただいま、あら丁度食事の時間?」
士郎「遠――坂?何でここに――」
凛「何でって決まってるじゃない。イリヤスフィールがここにいるからよ」
士郎「まさかアインツベルンだからってここで殺す気なのか?そういう事なら――」
凛「違うわ、イリヤは聖杯を持ってる。私の狙いはあくまでもそれよ」
士郎「イリヤが?でもそんなもんどこにも――」
凛「セイバーの鞘と同じ。イリヤの身体の中にあるの」
士郎「イリヤの…?」
イリヤ「ええ、そのような物よ」
綺礼「ふむ、麻婆豆腐はないのかね?」
士郎「!?」
バゼット「丁度人数分ありますね、ありがたい」
桜「――えっと?」
士郎「何でお前らがここにいるんだ!?」
凛「私が連れてきたのよ、話は食事をしながらにしましょう」
178:以下、
綺礼「まずは報酬を渡そう。衛宮士郎、令呪のある方の腕を出したまえ」
士郎「なんだよ」
綺礼「報酬と言っただろう」
士郎「なっ!?令呪が一画増えた!?」
綺礼「過去の聖杯戦争で脱落した者の物だ。あの老人を倒した報酬としては丁度良かろう?」
アーチャー「雑種が何の躊躇いもなく令呪を使いきったのはこれがあると知っていたからか」
凛「そういう事、綺礼どうかした?」
綺礼「――いや、たいした事ではない。アインツベルンの娘はサーヴァントを失ったようだが」
イリヤ「報酬なんていらないわ。私もマキリとは色々あったもの」
綺礼「そうか。ところでイリヤスフィールよ、アサシンは君の中かね?」
イリヤ「違うわ。アサシンは死んでないのか、向こうに取られたかどっちかまではわからないけど」
バゼット「話はよくわかりませんが間違いなく死んでるかと、あの位置ではあの爆発は避けれなかったでしょう」
凛「あんた逃げ切ってたじゃない。ってアサシンよりあんたの方が身体能力高かったわね」
綺礼「凛とバゼット君の言うとおり影の中に隠れた臓硯は影の爆発に巻き込まれて跡形なく消し飛んだとなれば例え生き延びていたとしてもそう長くは保ちまい」
士郎「臓硯はまだ生きてると思う」
綺礼「何?」
凛「何でそう思うのよ?」
士郎「――慎二だったんだ」
179:以下、
凛「どういう事?何でそこで慎二の名前が出てくんのよ」
士郎「遠坂達が去った後、俺達は蟲を使う人影に襲われた。それをセイバーが斬ったら慎二だったんだ」
桜「っ!!」
凛「それって前の桜みたいに臓硯が慎二を操っていたってこと?それとも――」
士郎「慎二は中身は全部蟲だった。あれは死んだ後に中に蟲を詰め込まれたんだ」
桜「……やっぱり…兄さんはお爺様に逆らったから……」
綺礼「間桐慎二は蟲の皮にされ、その上に臓硯の皮を着せられていたということかね?」
士郎「……ああ、服装とかは臓硯だった。顔もセイバーが斬ったから臓硯の皮が捲れて慎二の顔が覗いてたんだ」
綺礼「あの老人は用心深いからな。身代わりで向かったのだろう。凛」
凛「何よ」
綺礼「父君と同じで詰めが甘いな。お前は肝心な場面ではいつもそうだ」
凛「うっさいわね、アーチャーが気付かない方が悪いのよ」
アーチャー「我は宝と人間の目利きはできるが、薄汚い蟲の違い等わからん」
凛「何開き直ってんのよ!!」
綺礼「お前も他人に責任を擦り付けているではないか」
凛「うっ」
アーチャー「第一我にあのような命令をしたのだ、首をはねられていないだけマシだと思え」
綺礼「ともかく間桐臓硯の討伐は失敗というわけだ。私は一度教会に戻り対応策を練るとしよう」
180:以下、
凛「臓硯を倒せてなかったって事はまた暫くは休戦ね」
士郎「そうなるか…って令呪貰ったままで良かったのか?」
凛「別にいいでしょ、そう何度も簡単に外せるもんでもないし」
士郎「臓硯はまたあんな風に魔力を集めるのか?」
凛「多分それはないわ、あの影は消し飛んだ。そうすぐにあんなとんでも魔術使えるはずがないわ」
士郎「それじゃあ臓硯が次にするとしたら――」
凛「聖杯、イリヤを狙ってくるでしょうね。どうする衛宮君?衛宮君が守るか、綺礼に任せるか」
士郎「俺が守る、あんなヤツに任せられるか」
凛「そ、取りあえず士郎はセイバーが治るまでは家でイリヤと大人しくしておいてもらおうかしら」
士郎「遠坂はどうするんだ?」
凛「私もセイバーが治るまでは動かないわ、近くにいた方が魔力供給しやすいし。イリヤがセイバーと契約した方が早くなると思うけど」
イリヤ「嫌、私のサーヴァントはバーサーカーだけだもん」
凛「そういうこと。で、桜は今まで通りここにいてちょうだい」
桜「……」
凛「桜?」
桜「あ、はい。……わかりました」
凛「安心して桜、あんたは何があっても私が守るわ。大事な……だし」
桜「――はい、姉さん。便りにしてますね」
凛「――っ、ああもう。お風呂入ってくる」
士郎「あの二人はもう完全に仲直りしたみたいだな」
181:以下、
翌朝――
凛「調子はどうセイバー」
セイバー「鞘があるにもかかわらず傷の完治が遅いですね。完治までまだ半日程かかるかと」
凛「そう、でも魔力量はだいぶ回復したというか上限が上がったわね」
セイバー「貴女の魔力供給のおかげと鞘の効果です。私の鞘には魔力量を上げる効果がある」
凛「今ならエクスカリバーを五回は撃っても大丈夫そうね、でも六回目はきついかも。それに鞘がどのぐらい魔力を消費するのかわからないわね」
セイバー「鞘の真名の開放にはそれ程魔力は必要ありませんから問題はないかと」
凛「そう、そういやセイバーは前に死んでないって言ってたけどそれってどういう事?」
セイバー「私はかつて聖杯を手に入れる事を条件に世界と契約しました」
凛「英雄になるために世界と契約したんじゃなくて、聖杯を手に入れるために?」
セイバー「私は英雄になるのに世界と契約する必要はありませんでしたから」
士郎「自力で英雄の座まで辿りついたってのか」
セイバー「はい、しかし死の間際となっても私は聖杯を手に入れる事はかなわなかった」
凛「それじゃあ矛盾が生じるじゃない」
セイバー「はい、なので私は死の間際で止まっているのです。そして聖杯を手に入れるまで何度もこうして繰り返す」
凛「死の間際で時間が止まってるってより、時間に止まってるって感じか」
士郎「ちょっと待て、それじゃあ聖杯を手に入れて元の時代に戻っても待ってるのは死だけじゃないか」
セイバー「そうですがそれが何か?」
182:以下、
凛「ちょっと待って。自分の時代に聖杯を持ち帰るって使うって事?」
セイバー「はい」
凛「それって時間の改竄じゃない、時間旅行にしても平行世界にしてもそれは魔法の域よ、そんなのできるわけ――」
セイバー「それを可能にするのが聖杯でしょう。そうして聖杯が使えるのなら死後を渡しても構わないと私は契約したのです。たとえそれでアルトリアが消えようとも」
――アルトリア・ペンドラゴン、騎士王、アーサー王と呼ばれたセイバーの本当の名前
どうしてそれが聖杯を使って消えるという事になるのか
士郎「セイバー、お前は自分を――自分を救うために聖杯を使うんじゃないのか?」
セイバー「?、何故そのような事を言うのですシロウ。私の望みは国を滅びから救う事だけですが」
士郎「な――なん、で?」
セイバー「何故も何もないでしょう。私は国を守るために王になったのにその債務を果たせなかった。
その時に思ったのです。――岩の剣は、間違えて私を選んでしまったのではないかと」
士郎「それはつまり――」
セイバー「私は聖杯で王の選定のやり直しがしたい」
士郎「ふざ――けるな!!」
そんなことをして過去を改変して過去のアルトリアが王にならなくても、目の前のセイバーは王であり続ける
セイバー「シロ…ウ?」
士郎「――そんなことに聖杯を使うな。聖杯はセイバーが戦って手に入れるんだから、セイバーは自分の為にその奇跡を使うべきだ」
セイバー「ですから自分のために使うと言ってるではありませんか。私――アルトリアは、王として――」
アーチャー「呼んだか?」
183:以下、
セイバー「アーチャー?」
士郎「誰もお前の事なんか呼んでない」
アーチャー「王と聞こえた気がしたが?王とはこの我だけよ、勝手に名乗る事は許さん」
凛「はあアンタちょっとは空気読みなさいよ」
アーチャー「何故我が空気を読んでやらなければならぬ?そういうのは貴様ら雑種の仕事であろう、王であるこの我を引き立てるた――」
凛「あーもううっさい!!」
凛の魔力で強化された蹴りがギルガメッシュの顔をとらえる
アーチャー「き、貴様女子の分際で男子を足蹴に!?おのれ、どうやら本気で死にたいようだな雑種ゥウウウウ!!!!」
凛「アーチャー四つ這いになりなさい」
アーチャー「な!?体が勝手に――!?」
凛「無様ねアーチャー!!私は令呪を5回使ってまでアンタに三日間絶対服従しろって命じたのよ、まだ72時間経過してないわ!!」
アーチャー「このような命令ごときにこの我が――」
凛「最初に期限なしで絶対服従って言った時は鎧もあったから全然効果なかったけど、期限ありで鎧もなしで五重ならほとんど逆らえないみたいね」
アーチャー「お…のれぇ…!!」
凛「折角の機会だからとことん主従関係について叩き込んでやるわ、期限が切れるまでのあと13時間そうして椅子になってなさい」
アーチャー「どういうつもりか知らんが、貴様こんな事をしてただで済むと思うなよ――」
凛「知ってるアーチャー?私自分が楽しいと思う事しかやらない主義なの。そういやあんた、蛇苦手だったわよね?」
アーチャー「待て貴様それをどうする気――や、やめ――」
士郎「あかい悪魔…」
セイバー「先ほどの話を続ける空気ではなくなりましたね」
184:以下、
アーチャー「くぅ…このような屈辱を受けたのは初めてだ……もうこんな茶番に付き合ってられん!!」
アーチャーは王の財宝から取り出した黄金の瓶の中の液体を一気飲みする
凛「え?」
「うわっ!!」
アーチャーが突然小さい子供に代わり、その上に座っていた凛ごと倒れる
士郎「えっと……大丈夫か遠坂」
凛「なんとか……」
「いたた…お姉さんおも――いや何でもない。早くどいてくれないかな?」
凛「あんた誰?」
「何言ってるのさマスター、僕だよ。ギルガメッシュだよ、正確には子供の頃のギルガメッシュだけどさ。まあギルって呼んでよ」
凛「――あんた本当にあのアーチャーの子供の頃なわけ?」
子ギル「信じられないのも無理ないけどねー。自分でもどうしてああなっちゃったのかわからないもん」
士郎「取りあえず服を着ないか?」
子ギル「大人の僕が急に変わるから。まあマスターが苛め過ぎるから、あれじゃあ暫く拗ねて出てこないよ」
凛「う…確かにやり過ぎたかも……ってあんた大人の頃の記憶あるわけ?」
子ギル「まあね、でも大人の僕を召喚するために縁として使った聖遺物を飲み込ませるなんてさ」
凛「だってあれもう壊れちゃってたし」
子ギル「確かにあれじゃあもう縁として使えないだろうけどさ」
188:以下、
凛「それでアーチャー……ギルは縮んだ今もサーヴァントなのよね?」
子ギル「当然さ、マスターとの繋がりは切れてないでしょ。それに令呪の縛りも今だ健在さ」
凛「そう、なら早く服を着なさい。何であんたは恥じらいもなく堂々としてんのよ」
子ギル「僕の身体に恥ずかしいとこなんて何処にもないからさ、この肉体はもはや芸術だと言っても――」
凛「良いから早く着なさい!!」
子ギル「いたっ、もう相変わらず乱暴なんだから。これでいいかい?」
凛「それであんたは戦えるの?」
子ギル「勿論さ、いつも慢心してる大人の僕より、今の僕の方が強いんじゃないかな」
凛「へえ、それじゃあ最後に一つ。あんたは私と一緒に戦う意思はあるわけ?」
子ギル「愚問だね、大人の僕と今の僕は正反対だけど根っこは同じさ、彼が認めた相手を僕が認めない理由はないさ。暴力は勘弁して欲しいけどね」
凛「そう、ならもう何も言う事はないわ。出かけるから付いて来なさい」
子ギル「セイバーが治るまでは動かないんじゃなかったのかい?」
凛「少し気になる事があるのよ。セイバーもここまで回復してたら今日一日一緒にいなくても明日の朝には完治してると思うわ」
士郎「遠坂、それは俺も行った方がいいのか?」
凛「士郎はセイバーと一緒に家にいてちょうだい、明日の夜までには戻るつもりだけど――」
士郎「明日の夜?まだ昼間にもなってないってのに何処まで行くつもりなんだ?」
凛「色々回りたいとこがあるのよ。セイバー、くれぐれもイリヤの側を離れないで」
セイバー「イリヤスフィールのですか?そう言えば今日はイリヤスフィールはまだ起きてきてませんね」
凛「……ええ、ここは頼んだわよ。あと桜に気を付けて、無茶はしないようにね」
セイバー「わかりました。桜もイリヤスフィールもこの身を盾にしてでも守りましょう、凛も無茶はしないように」
189:以下、
士郎「……」
セイバー「……」
――気まずい、桜達がいた時はまだマシだったのだが
遠坂が家を出てから数時間経ち、日はすっかり暮れてしまった
桜は最近眠れなかったらしく既に寝にいっており、イリヤも昨日の疲れが取れていないのか夕食の後すぐに寝に行った
今朝の事もありセイバーは朝から一度もこちらを向こうとしない
士郎「――投影、開始」
気を紛らわすために投影の練習をする
昨日、聖剣の鞘を体から出してから投影の負担がわずかばかり減ったような気がする
聖剣の鞘を体の外に出すときにその仕組みにじっくりと触れたためだろうか――
士郎「それでもアーチャーの本物には遠く及ばないか…前にアーチャーに言われた通り実戦には使えないな。せめて遠坂の宝石みたいにこう……」
イリヤ「リンの宝石がどうかしたの?」
士郎「悪い起こしたか?いや、遠坂の宝石って爆発するじゃんか?俺もあーいう魔術を使えたらなーって」
イリヤ「爆発する宝石?ああ、あの魔弾ね。あれぐらいならシロウにも簡単にできると思うわ」
士郎「イリヤにとってはそうでも俺には簡単じゃない。あんな魔術どうやってるのかすらさっぱりだ」
イリヤ「爆発だけなら簡単よ、宝石に溜めこんだ魔力を爆発させてるだけだもの」
士郎「物に魔力を溜めるってのが難しいだろ」
イリヤ「宝石魔術は遠坂の得意魔術、シロウはシロウの得意な魔術でやれば良いの」
190:以下、
士郎「俺の得意な魔術って…投影と強化か?でも投影した武器なんてそう長く保てないぞ」
イリヤ「長く保つ必要はないじゃない、シロウには碌な魔力はないけど、シロウが投影した武器にはちゃんとした魔力が入ってるもの」
士郎「剣を爆発させろって言うのか?でもそんなのどうやってやるのさ」
イリヤ「イメージが崩れると投影したものも崩れるんでしょ?」
士郎「ああ、あと集中や魔力が切れた時かな」
イリヤ「意図的にわざとイメージを崩すの。そして形が崩れる瞬間に剣の魔力を一気に開放したら爆発するはずよ」
士郎「簡単に言うけどそれって難しくないか?」
イリヤ「そんなに簡単に新しい魔術を身に着けれるなら魔術師は探究なんてしないわ」
士郎「それもそうか、よし……イメージを崩して…魔力を一気に――解放する」
先程投影した剣を持ち、目を閉じ集中する
イリヤ「待ちなさいシロウ、家の中で、しかも手に持ったまま爆発させる気?」
士郎「そっか、どれぐらいの規模になるのかわからないし、俺は遠坂と違ってコントロールできないもんな」
イリヤ「今から練習しに行く?」
士郎「どこにさ?」
イリヤ「郊外の森、あそこなら人目を気にする必要はないわ」
士郎「こんな時間だともうタクシー乗せてもらえないぞ?今から歩いて行ったら着くのは朝になっちまう」
イリヤ「良いじゃない別に、リンも明日の夜まで帰って来ないらしいし、私にはもう時間がないもん」
士郎「時間がない?それってどういう――」
イリヤ「早く行こ?サクラには置手紙でも残しとけばいいわ」
193:以下、
翌晩――
士郎「いつつ……」
セイバー「大丈夫ですかシロウ?」
士郎「ああ、全部かすり傷だ」
イリヤ「良いアイディアだと思ったんだけどな」
セイバー「確かに弓で剣を飛ばして爆発させるというのは良いアイディアでした。シロウは弓術だけは優れていますし」
士郎「だけで悪かったな。剣がと矢と形が違うから飛ばしにくいんだよなあ」
イリヤ「そんな少しで変わるものなの?全然飛ばずに爆発に巻き込まれてたけど」
士郎「全く違うさ。それに形だけじゃなくって重さも全然違うし、弓の強度も変えなきゃ弦も切れちまう」
セイバー「弓はともかく剣を矢の形に変えて撃つというのはできないのですか?」
イリヤ「投影は士郎のイメージで出来てるんだからできない事もなさそうだけど」
士郎「無理だ、投影だけでも精一杯なのにその上爆発も意識してるんだ。そこまで気を回す余裕なんてない」
イリヤ「やっぱり一日やそこらで使える程甘くはないようね」
セイバー「そもそも日々の精進を怠って必殺技を覚えようという考えが甘いのです」
士郎「良いじゃないか、必殺技を覚えて俺がサーヴァントと戦えるようになったらもうセイバーは戦わなくても済む」
セイバー「私が戦わなくて済む?何を馬鹿な事を」
士郎「だってセイバーは女の子じゃないか」
セイバー「撤回してください、その言葉は私を愚弄している」
「どうしたセイバー、そこの雑種が何かしたのか」
194:以下、
セイバー「アーチャー何の用ですか。これは私とマスターの問題だ」
アーチャー「十年振りだというのにつれないな、騎士王」
セイバー「っ!?貴様は――シロウ下がって!!」
士郎「どうしたんだいきなり――」
アーチャー相手に武装までして何をそんなに警戒をしているのだ――
セイバー「シロウ!!彼は――」
イリヤ「知らない…私はこんなヤツ知らない……」
士郎「アーチャー、いきなり何の用だ――」
アーチャー?「――馴れ馴れしいぞ雑種」
何処からともなく打ち出された一本の剣が目の前で円盤に弾かれる
士郎「な――」
アーチャー?「ここ数日畏れ多くも我の宝物庫から財宝を盗み出す不届者がいると思ってはいたが――貴様か!!」
体が吹き飛ぶ
いきなり現れた巨大な鉄槌が円盤ごと自分を殴り飛ばしたのだ
士郎「が――あ……」
イリヤ「シロウ!!」
セイバー「イリヤスフィール!!シロウを連れて逃げて!!」
アーチャー?「薄汚い盗人を庇うか騎士王、そこをどけ。どかぬと言うのなら貴様であろうと殺すぞ」
セイバー「何故貴方がここにいるアーチャー!!いや英雄王!!貴方は十年前に――」
195:以下、
英雄王「驚く事はない、ただ十年前から残っていたそれだけであろう?」
イリヤ「十年前?まさか――」
セイバー「くっ!!」
英雄王「我にかなわぬと知ってどかぬか、ならば疾くと消えるがよい!!」
全方向から無数の剣や槍が襲い掛かる、それが自分に突き刺さるのを気にせず士郎に当たりそうな物を全て弾く
士郎「セイバー!!」
何故アーチャーが襲いかかってくるのかはわからないがこのままではセイバーは死ぬ
士郎「くそっ――」
さっきの一撃のせいで体はほとんど動かない、それでも――
士郎「令呪をもって命ずる、逃げろセイバー!!」
セイバー「シロウ!?くっ――それはできな――があっ!!」
令呪に抗い動きが鈍くなったセイバーの体を無数の剣が貫く
士郎「セイバー!!」
英雄王「くだらん邪魔をするか雑種!!」
アーチャー…英雄王が掴んだ剣に魔力が集まっていく――
セイバー「ぐっ…約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」
二つの光がぶつかり巨大な爆発を起こす
セイバー「バカな……相殺しただと――」
英雄王「それが風に聞く聖剣か、その聖剣に免じて少しだけ本気を見せてやろう――」
英雄王が空中から奇妙な剣を取り出す
視えない、あの不気味な剣の構造だけは視えない――
196:以下、
英雄王「起きろエア――」
英雄王の持つ剣が風を纏い周囲から魔力を集めてゆく
セイバー「約束された (エクス)――」
それに負けじとセイバーの聖剣にも魔力が収束されてゆき――
英雄王「天地乖離す、開闢の星(エヌマ・エリシュ)」
セイバー「――勝利の剣(カリバー)!!」
両者同時に剣を振り降ろした
巨大な光と光がぶつかり合う
しかしさっきとは違い、セイバーの聖剣の光はあっさりと飲み込まれた
どさっと背後に何かが落ちる音がする
士郎「せい……」
鎧の一部が砕け、腹部から大量の血を出しながらセイバーは立ち上がる
セイバー「敵から――目を離さ、ないでくだ…さいシロウ!!」
英雄王「加減したとは言え、エアの一撃を受けてなお立つか」
セイバーの傷が塞がり、再び黄金の剣に魔力が集まっていく
英雄王「ほう…そういう事か。溜める時間をくれてやる、全力で来い騎士王!!」
アーチャーの持つエアという剣が再び魔力の暴風を起こし始める
197:以下、
肌に当たる空気だけで、そのエアという剣が先程のとは比べものにならない程の魔力を溜めているのがわかる
そしてセイバーの聖剣も――
聖剣が放つ黄金の輝きはそれだけで辺りを焼き尽くしそうだ
アーチャー「存分に貯えたか?ならば採点の時間だ、名高き聖剣の真の力を見せてみよ!!」
セイバー「言われるまでもない!!」
アーチャー「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」
セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」
再び光がぶつかり合う、しかし聖剣の斬撃は徐々に飲み込まれ――
英雄王「む?」
セイバーは剣を振るうと共に聖剣の斬撃の中を一直線に進む
英雄王「死ぬ気かセイバー!!」
セイバー「――全て遠き理想郷(アヴァロン)!!」
英雄王「何!?」
セイバーの目の前に出され、真名を開放されたそれは――
世界を切り裂いたという剣の斬撃を全て弾く――
英雄王「――!!」
英雄王の攻撃を無視しながら一気に近づき、そして――
セイバー「――約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」
英雄王目掛けて一気に聖剣を振り降ろした
198:以下、
巨大な爆発と共に発生した煙で視界が隠れる
イリヤ「一回目の宝具はただの目くらましだったってこと……」
士郎「やった…か?」
煙が徐々に晴れてゆき、立っている金髪の人影がうっすらと見える
士郎「セイバー!!やった…な……?」
ジャラジャラという耳障りな音と共にセイバーが逆さまに吊り上げられる
士郎「セイバー!!」
英雄王「耳障りだ雑種、そこで大人しくこの女が我の物となるのを見ておけ」
士郎「バカな…あの距離で――」
――何故アーチャーは鎧に亀裂が入る程度で済んでいるのか
セイバー「な…ぜ……?」
英雄王「お前の傷がすぐに治ったのでな。鞘があることとカウンターを狙ったのはわかった、ならば対応するまでよ」
セイバー「なるほど…最初から勝ち目はなかったというわけか……」
英雄王「どうしたセイバー、もっと抵抗してみせよ。それではあまりに退屈だぞ?」
セイバー「く……」
聖剣を四回使って魔力をほとんど使い果たしたのかセイバーは鎧も消えている
士郎「令呪を以て命ず、逃げろセイバー!!」
先程はセイバーに拒まれたがこの状況なら――
士郎「なん…で……?」
200:以下、
英雄王「無駄だ、天の鎖!!この鎖から逃れる事のできる者等存在せん。令呪で逃げるなどこの我が許すものか」
士郎「くそっセイバー!!」
弓と剣を投影し――
イリヤ共々、手足を鎖で拘束された
士郎「ぐ…!!」
英雄王「我の宝物庫に入る盗人というだけでも万死に値するというのに、その上薄汚い贋作者だと?」
士郎「っ!!」
イリヤ「あ……」
殺気だけで人を殺せる程の英雄王の殺気――
英雄王「存分に苦しんで死ぬがいい雑種」
鎖が一気に締まり、全身の骨が砕かれてゆく――
士郎「があああああ!!」
イリヤ「シロウ!!」
セイバー「シロウ!!やめろ英雄王!!私を好きなようにするがいい!!だからシロウだけは――」
士郎「だ…めだ……せい…ば…ぁっ!!」
英雄王「ふん…」
鎖から解放され地面に落ちる
英雄王はセイバーに近づいてゆき――
士郎「や…やめ……」
セイバー「……」
英雄王「……つまらん」
辺りに大量の血が飛び散った
201:以下、
士郎「あ…ああ……セ、セイ――」
締め上げていた物を失っい血まみれの鎖は地面に落ちる
そこには人影など見当たらない
しかし、血に染まった僅かな青い布きれが金色の粒子となり消えてゆくのだけは見えた
士郎「セイバァアアアアアアッ!!!!」
英雄王「全身の骨を砕かれまだ立ち上がるか、その心意気は認めてやらんこともないが――」
士郎「が――ッ!?」
体に飛んできた剣が突き刺さりそのまま地面に張り付けられる
イリヤ「シロウ!!」
英雄王「何を呆けている、さっさと開け。折角の五人目なのだからな、あの汚らしい偽者に奪われるぞ」
イリヤ「あ――――や、だめっ――」
イリヤは大きく震えた後地面に倒れこんだ
士郎「イリ…ヤ、てめえイリヤに何をしやがった……」
英雄王「さて、次は貴様の番か。薄汚い贋作者め、疾く消えるがいい」
士郎「くそっイリヤ――」
せめてイリヤだけは守る、その思いに反して体は全く動かない
そんな中で、英雄王の背後から大量の剣と槍が射出された
202:以下、
大量に射出された英雄王の武器は、同じく大量に飛んできた武器によって撃ち落された
英雄王「……どうやら貴様の他に盗人がいたようだな」
子ギル「盗人?何を言ってるのさ、これは僕の財宝でもあるんだよ」
英雄王「な――!?」
子ギル「それにしても堕ちたものだね、この僕の存在に全く気付かないなんてさ」
英雄王「……」
士郎「アーチャーが…ふた……り?」
子ギル「セイバーさんは間に合わなかったか、まあ弱かったってことだし仕方ないよね」
英雄王「――く」
子ギル「ん?」
英雄王「くくく…ふふふ…ふはーっはっは!!なるほど、斯様な奇跡に巡り合うとはな。これも我が王である証というわけか!!」
子ギル「やれやれ、本当に何でそうなっちゃったんだろうね。でも残念だけど君の相手をするのは僕じゃない……この我だ」
光に包まれアーチャーは本来の、大人の姿に戻る
アーチャー「貴様も我ならばわかっていよう?」
英雄王「ああ、問うまでもない。我は我であり、貴様も我だ。聖杯も中々に良い趣味をしている」
アーチャー「我は我自信が好きだが――」
英雄王「――同時に我は我自信が嫌いだ」
アーチャー「己自身であるが故に殺す事はできなかったが――」
英雄王「――二度とないであろう今ならば存分に殺し合える。これぞ正に――」
「「愉悦よな。くくくくく、ふははははははは!!」」
203:以下、
凛「五月蠅いヤツが二人になってより五月蠅くなったわね……」
アーチャー「遅いぞ雑種!!」
凛「ただでさえ魔力ほとんど残ってなかったのに、セイバーの聖剣四発で魔力がすっからかんなのよ」
英雄王「そこの贋作者がマスターというによくあれ程聖剣を撃てたと思ったが、そやつが魔力を提供していたか」
アーチャー「そのおかげで今の我は本気で戦えんが……貴様もエアを数回使って魔力がほとんど残っておらぬのだろう?」
英雄王「ここはお互い一旦出直すとしようではないか。我らの戦いには相応しい場を用意せねばな」
英雄王は笑いながら立ち去ってゆく
士郎「ま、待て……」
アーチャー「やめておけ雑種、お前ごときに何ができる。セイバーが守ったその命、無駄に散らそうというのなら我が消すぞ」
凛「それで、あんたの言ってた楽しみってあいつの事だったのかしら」
アーチャー「雑種、我との戦だ。万全の準備を整えよ、地下に二晩埋まれば十分であろう?」
凛「そうね、そのぐらいしないとあいつには勝てないかもしれない。でも臓硯達はどうすんのよ」
アーチャー「あちらの我が場を用意すると言ったのだ。我らの戦に相応しいのは決戦だ、あやつが仕留めてくるだろう」
凛「他人任せってわけ?」
アーチャー「あれは我だ。それにあれと我の違いは受肉してるかどうかだ」
凛「あいつが前回の聖杯戦争で受肉したってわけ?」
アーチャー「そうだ、だからヤツは魔力供給なしで戦えるが、我は雑種の魔力がなければ話にならん。行くぞ雑種」
凛「ちょ、ちょっと。イリヤとシロウどうすんのよ」
アーチャー「案ずるな、家に転送しておく」
204:以下、
士郎「うぐ――」
全身に走る痛みで目を覚ます
イリヤ「良かった、気がついたんだ」
士郎「イリヤ…一体何が――そうだ…俺のせいでセイバーが……」
イリヤ「シロウのせいじゃない、セイバーはリンの魔力のおかげで本来に近い実力を出せてた。ただ相手が強すぎたの」
士郎「骨折が治ってる…そうだ、イリヤはもう大丈夫なのか?」
イリヤ「うん。アーチャーに薬貰ったから、シロウの怪我もアーチャーが治してくれたのよ」
士郎「――あいつは……何者なんだ?見た目も喋り方もアーチャーとうり二つだった。それにあの鎖だってアーチャーが使っていたのと同じだ」
イリヤ「当たり前よ、だってあいつもアーチャーだもの」
士郎「偽物とかじゃなくて、本当にアーチャーが二人だって言うのか?」
イリヤ「ええ、リン達の会話から察するに敵の英雄王は第四次聖杯戦争で召喚されたアーチャーが受肉したものよ」
士郎「それで遠坂のアーチャーは今回の聖杯戦争で召喚されたアーチャーだってか?でも同じ時空に同じ存在が存在できるはずがない」
イリヤ「本来ならありえない。でもこうして実際に存在してる、きっとあっちは受肉してるからもう違うものとして世界に捉えられてるのよ」
士郎「同じ存在なのに違うっていうのか?」
イリヤ「そうね、例えばシロウが将来英霊になったとするでしょう?そのシロウは今のシロウと同じかしら」
士郎「英霊ってのはセイバーみたいな規格外を除いて、世界と契約しないとなれないんだろう?だったら同じじゃないんじゃないか?」
イリヤ「正解。人間のシロウと英霊のシロウは同じ魂でも別の物として認識されるから理論上だけでは同じ空間に存在できるわ」
士郎「つまり俺がもしまた聖杯戦争みたいのに出くわしたら違う自分と会う可能性もあるってことか」
イリヤ「そうなる可能性は限りなく0に近いけどね」
205:以下、
桜「先輩、気がつかれたんですか?」
士郎「桜」
桜「先輩ずっと寝ていたんですよ?」
士郎「日が変わってもう夕方になったのか…何かこんなのばっかだな」
桜「あ、ご飯食べられますか?お腹空いてますよね?食べやすいようにお粥作っておきました」
士郎「ありがとな桜」
桜「い、いえ、お役に立てて光栄です」
士郎「うん、美味い」
イリヤ「シロウ、リン達は明日の午前三時ぐらいあっちのアーチャーと戦いに行くらしいわ」
士郎「戦いに行くってどこで戦う気なんだ?」
イリヤ「さあ?私が聞いたのは終わるまで家で大人しくしてろって事だけよ」
士郎「じっとなんてしてられない。俺はセイバーの仇を討たないと」
イリヤ「そうね、シロウはきっとそう言うんじゃないかなって思ってた」
士郎「……ごめんイリヤ」
イリヤ「謝らないでいいよ、シロウはそういう人間だって嫌って程知ってるもの。あれ…桜は?」
士郎「さっきまでここにいたはずなのに……何処行ったんだ?」
突如部屋の電気が消え真っ暗になる
士郎「停電?ブレーカーが落ちたのか?」
イリヤ「違う!!」
臓硯「久しぶりじゃのう、衛宮の小僧」
206:以下、
士郎「間桐臓硯――」
臓硯「アサシン」
アサシン「……」
士郎「――投影、開始(トレースオン)!!」
臓硯「ほう、投影魔術か」
アサシンの一撃を何とか受け流す
士郎「逃げろイリヤ!!」
イリヤ「でも――」
士郎「こいつの狙いはイリヤの持ってる聖杯だ!!遠坂の家まで走れ!!そうすれば絶対に助かる」
イリヤ「う、うん!!」
アサシン「私から逃げられると?」
士郎「今までのお前の戦闘を見てればわかる、お前は他のサーヴァントと比べると弱い!!」
アサシン「ギ――」
臓硯「確かにお前さんがアサシンの攻撃をいなすというのは名案だが――あの娘から離れるべきじゃなかったな」
士郎「何――?」
走って行ったはずのイリヤは数メートル程離れたところで息を切らして座り込んでいる
臓硯「あの娘は聖杯になるため作られたからの、運動などの余分な機能はついておらん」
士郎「くそ――」
そして臓硯に気を取られたうちに既にアサシンはイリヤの心臓をその体内から抜き取っていた
213:以下、
士郎「イリヤ――!!」
セラとリズの代わりに最期まで側で守り続けるとあの日誓ったはずなのに――
何故、自分はイリヤの側を離れてしまったのか
アサシン「魔術師殿」
臓硯「これがアインツベルンの聖杯か、ちゃんと五体入っているのお」
士郎「くっそお!!な――」
臓硯に殴りかかった士郎の拳が受け止められる
士郎「慎二――?でもお前は――」
臓硯「真っ二つになったはずなのに、か?そやつはもう死んでおる、ただの蟲の入れ物よ」
士郎「お前自分の孫を…人の命を何だと思ってやがる!!」
臓硯「利用するにもたいして役に立たなかったゴミじゃ、こうして使ってもらえるだけ有難く思うべきじゃろう?」
士郎「てめえ――」
臓硯「さて、お前さんにもう用はないが――邪魔されると面倒だ。ここで――何?」
窓を二つの人影が突き破って飛び込んでくる
士郎「何だ!?」
バゼット「……間に合わなかったようですね」
臓硯「これはこれは綺礼」
綺礼「バゼット、アサシンは任せよう」
バゼット「承知しました」
214:以下、
綺礼「マキリ臓硯よ、最期に主に懺悔をする気はあるか?」
臓硯「執行者の娘か――アサシン宝具を使いさっさと倒せ――」
アサシン「御意――妄想心音(ザバーニーヤ)」
アサシンの長い右腕の包帯がほどけ
確実に心臓を掴みとる必殺の毒手が伸ばされる
バゼット「それを待っていた――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)」
臓硯「バカな――」
確実に勝つはだったアサシンは光を散らしながら消えてゆく
必殺の一撃は必殺のカウンターを前に敗れ去った
綺礼「相手が悪かったな」
言峰綺礼は間桐臓硯の頭を掴み、床に叩きつけ全身の骨を砕く
臓硯「そうか、あの執行者の武器は宝具――」
綺礼「私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない」
言峰は臓硯を引きずりながら詠唱を始める
臓硯「カカカ…数少ない現存する宝具の使い手があんな小娘か。しかし明らかに後で放ったというに何故死んでおらん」
バゼット「どうせ死ぬ身だ、私の宝具フラガラックは因果を歪ませ相手が攻撃する前に既に当たっているという結果を生み出す」
臓硯「なるほど、斯様な仕組みか――」
慎二の皮を被った蟲が言峰に襲い掛かるが言峰はあっさりそれを倒す
綺礼「――許しはここに。受肉した私が誓う。――“この魂に憐れみを(キリエ・エレイソン)”」
215:以下、
間桐臓硯は跡形もなく消えた
士郎「言峰、今のは――」
綺礼「洗礼詠唱だ、マキリ臓硯のような霊体を殺すための術だ」
士郎「じゃあ臓硯は」
綺礼「今度こそ完全に倒したと言えるだろう。これは――」
士郎「返せよ、それはイリヤの心臓だ」
綺礼「……アサシンは持って行かれたか。この状態では無理もないか
士郎「聞いてるのか言峰」
綺礼「これが聖杯だ衛宮」
士郎「何だと?イリヤの心臓が聖杯だっていうのか」
綺礼「そうだ、この小聖杯に大聖杯を降臨させるのがこの聖杯戦争の目的だ」
士郎「それがどうやったら聖杯に変わるっていうんだ。サーヴァントは後はアーチャーしか残ってないはずだ」
綺礼「聖杯の降臨は大聖杯の出現する場所でしかできん。最も回路から離れたこの状態では機能せんがな」
バゼット「回路?それを魔術回路に繋げるのですか?」
綺礼「そうだ、そして代わりの入れ物に君は選ばれた」
バゼット「が――」
言峰はバゼットの心臓を貫き、そこにイリヤの心臓を置く」
士郎「何を――」
綺礼「見てわからぬか?彼女に聖杯となってもらったのだ」
216:以下、
バゼットの肉体はその中から溢れ出た肉塊に埋もれてゆく
士郎「これが聖杯だっていうのか――」
綺礼「そうだ、正規の物ではないがな」
士郎「バゼットから手を離せ」
綺礼「彼女は既に死んでいる、これは聖杯だ」
士郎「それでも、聖杯はサーヴァントにしか触れられないんだろう。だったらそれは遠坂の物のはずだ」
綺礼「ふむ、いつ私にサーヴァントがいないと言った?」
士郎「いないはずだ、他にサーヴァントが召喚されてるはず――」
英雄王「聖杯を手に入れたか綺礼」
士郎「な――」
英雄王「また会ったな薄汚い贋作者」
綺礼「勝手に出歩いてるとは思っていたが、こやつらに会いに行ってたのか」
英雄王「勘違いするな、我はセイバーに会いに行っただけよ」
士郎「何で……」
綺礼「おや、紹介が遅れたな。これが私のサーヴァントだ」
士郎「前回の聖杯戦争の最後――」
綺礼「そうだ、私は衛宮切嗣と戦い敗れた。そして私は聖杯により蘇り、ヤツは聖杯によって殺された」
士郎「聖杯に殺された……?」
217:以下、
綺礼「そうだ、ヤツは聖杯を否定したのだ」
士郎「聖杯は願いを叶える願望器なんだろう、何でそれが切嗣を殺すんだ」
綺礼「確かにあれは純粋に人の願いを叶える願望器だった。だがこの肉塊を見ろ」
士郎「っ!!」
いつか感じた不快感
影の中で感じた呪いの塊――
士郎「まさか――」
綺礼「そうだ、あの影は臓硯が盗んだ聖杯の欠片から放たれた聖杯の中身の一部だ」
士郎「聖杯の中身は全部人を殺す呪いだってのか」
綺礼「そうだ、第三次聖杯戦争の最中にこの聖杯の中身は汚染された泥となった」
士郎「汚染された泥――」
十年前、衛宮士郎の人生を狂わせた厄災の映像が頭に浮かぶ
綺礼「気付いたか。そう汚染された聖杯が起こしたのがあの十年前の火災だ」
士郎「っ!!」
十年前に突如発生した消えない火災、500人以上もの人々が死んだあの厄災を――
綺礼「中身があの泥だと気付いた衛宮切嗣は聖杯をセイバーに破壊させたのだ」
士郎「それを知っていてお前は聖杯を呼ぶつもりなのか」
218:以下、
綺礼「今聖杯の中の物は産まれようとしている。それを見届けるのが私の役目だ」
士郎「それがどんな惨劇を産むかわかっているのか」
綺礼「無論だ、あれが産まれて生き残る事が出来るのはそこの英雄王ぐらいだ」
英雄王「これを大聖杯の元へと持ってゆくとしよう。いつまでもここで肥大されると面倒だ」
士郎「待て――」
英雄王の宝物庫から何か巨大な物が飛び出た
その衝撃で衛宮邸は吹き飛ぶ
士郎「ごほっ……何だあれ」
飛行艇のような物が肉体を吊るしながら山の方に飛んでゆく
綺礼「咄嗟の判断でイリヤスフィールの死体を護ったか…む?その宝石は――」
士郎「お前には関係ない」
綺礼「それは私の師、遠坂時臣が凛に遺したものだ」
士郎「遠坂の親父の形見?」
綺礼「どのような経緯を経てお前の手にあるのかは知らんが、それは一生肌身離さず持っておいた方が良い」
士郎「そんな事お前に言われたくない」
綺礼「柳洞寺は知っているな?」
士郎「当たり前だろう」
綺礼「聖杯の降霊の地はあそこだ。逃げると言うのなら止めはせんがな」」
言峰はそう言って瓦礫と化した衛宮邸を去っていく
士郎「悪いイリヤ、全部終わらせてくるから……だからそれまで待っててくれ」
土蔵に布を敷きその上に彼女を寝かせ、戦の地へと向かう
220:以下、
柳洞寺階段下
士郎「この上にギルガメッシュと言峰が……」
凛「士郎!?どうしてここに――って聞くまでもないか。聖杯があそこにあるって事はイリヤが攫われたのね」
士郎「いや、イリヤは臓硯に殺された。今の聖杯は言峰が臓硯から奪ってバゼットに埋め込んだ物だ」
凛「そう、やっぱり綺礼はあの女を裏切ってたのね」
士郎「やっぱりってお前気付いてたのか?」
凛「まあね、バゼットは片腕がなかったでしょう?傷跡を見せてもらったけど、綺礼のやり方にそっくりだったのよ」
士郎「って事はランサーを奪ったのは言峰だったのか」
凛「そういう事、そして私の父親を殺したのもね」
士郎「なっ――?」
凛「アーチャーの宝物庫ってね、本当に色んな道具があるのよ。過去の映像を見れる物とかね」
士郎「遠坂お前――」
凛「時間がないわ、早く上に行きましょう。士郎は綺礼を倒すのと聖杯の破壊を手伝って」
士郎「でも俺は――」
アーチャー「セイバーの仇等をほざいて我の戦を邪魔をするというのなら容赦はせんぞ」
士郎「――わかった、聖杯を壊す当てはあるのか?」
凛「ないわ、今打てる最大火力の攻撃を叩きこむだけよ」
士郎「わかった」
凛「綺礼は昔聖堂教会の代行者をやってた強敵よ、正攻法じゃまず勝てない」
士郎「じゃあどうするんだ?」
凛「私が接近戦を仕掛けるから士郎は綺礼に何とか作って」
221:以下、
英雄王「待っていたぞ…我、いやアーチャーと呼ぶべきか」
アーチャー「好きにしろ、では二度と起こり得ん神話となる戦いを始めようではないか」
英雄王「言峰は奥にいる、聖杯を止めたいのなら好きにするがいい」
凛「行くわよ士郎」
士郎「わかってる」
大量の金属のぶつかり合うが止むことなく響き渡る
後ろを振り向くと何千という武器がぶつかり合っている
その中には一つたりとも同じ物は存在しない
凛「士郎早く!!」
士郎「ああ」
アーチャー、ギルガメッシュは宝物庫に自身も覚えきれない程大量の財宝を持っている
しかし、英霊ギルガメッシュの宝具は宝物庫の中に入っている無数の宝具ではない
召喚されたギルガメッシュが持っている宝具はただ一つ
王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)と呼ばれる、バビロニアにある黄金の宝物庫に繋げる鍵剣だけである
その鍵剣は持ち主の宝物庫に繋がるだけのもの
ギルガメッシュの戦い方は宝物庫に繋げ、そこから投げるか、手に取り使うか――
しかし鍵剣は二つあっても、その存在が同じであるが故に繋がる宝物庫は一つ
故に片方が使う武器はもう片方は使えない
宝物庫に入っている物はこの世に一つしか存在しない物なのだから――
222:以下、
アーチャー「剣を撃つだけでは埒があかぬな」
アーチャーは剣を射出しながら手に取った剣でギルガメッシュに斬りかかる
英雄王「我らは同じ宝物庫を使い、思考も能力も同じだ」
アーチャー「故にどちらが先に強力な武器を出すか、またその武器に相性の良い物を出せるかが勝敗を決めよう」
英雄王がアーチャーの剣を砕き、アーチャーがすぐに手に取った武器でギルガメッシュの剣を砕く
英雄王「だが、今の貴様では我には勝てん」
アーチャー「何?」
英雄王はアーチャーと距離を取り、アーチャーの背後、柳洞寺の奥目掛けて光の斬撃を放つ
アーチャー「ふん」
アーチャーは巨大な盾でそれを防ぐが――
英雄王「そう、今の貴様にはそれが致命となろうよ」
懐に入った英雄王の一撃を剣への相性が良いように鎧の種類を変える事で何とかダメージを減らす
アーチャー「ぐ……」
英雄王「我は言峰がどうなろうと、いやこの街がどうなろうと気にしはせん、だが貴様はどうだ?」
英雄王が指を鳴らすと同時に冬木の街の上空に現れた爆弾が爆発する
それをアーチャーが出した盾や障壁で爆風から街を守る
そして街の方に気を取られたアーチャーに英雄王の斬撃が直撃し吹き飛ぶ
英雄王「それが答えだ。自身だけでなく周りを気にした戦い方では我には到底勝てん。周りを守ろうとする等、堕ちたものだな」
223:以下、

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