千早「怪異……?」back

千早「怪異……?」


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1:
765プロ事務所
P「なぁ春香。千早はどうした?」
春香「あ、なんだか今日は調子が悪いようなので休むそ うですよ」
P「そうなのか?」
春香「はい。朝方メールが来てましたし……ほら」
携帯「本日は体調が優れないのでお休みさせて頂きます 。なお、見舞いなどは必要ありませんので」
P「……本当だ」
春香「プロデューサーさんには連絡入ってないんですか ?」
P「千早はいつも電話連絡だからメールの確認はしてな かったな……」ゴソゴソ
P「……メール来てたわ。春香よりも先に」
2:
春香「もう、こまめにメールは確認してくださいよ?」
P「スマン。電話対応ばかりだからどうしてもメールは 後回しになってな」
春香「だからいつも返信が遅いんですね?」ジトー
P「……もともとメール打つの苦手なんだよ」
春香「冗談ですよ、冗談。それはともかく千早ちゃん大 丈夫かなぁ」
P「スケジュールは珍しく空いているから平気だけれど 、電話できないほど体調が悪いなら心配だな……」
春香「お見舞いは不要ってのも、気を使ってる感じがし ますね」
P「大方、病気がうつるのを懸念してるんだろうけれど ……うん、やっぱりお見舞いは必要だな」
P「ただ、今日は俺も春香もスケジュールが詰まってる んだよなぁ……」
春香「仕事が終わってからだと結構な時間になりますし ね」ウーン
P「最近は千早、伸び悩んでいるようだったし。できれ ばじっくり話をしたいんだけどなぁ……」
3:
貴音「お話は聞きました」ヒョコ
P「うお!」
春香「ビックリした!」
貴音「……面妖な」
P「唐突に現れたからつい……」
春香「完全に気配がなかったよ……」
貴音「それはそれは、申し訳ありません」ペコリ
P「いや、頭を下げる必要はないから……で、突然どう したんだ?」
貴音「如月千早のお見舞いの件です。あなた様も春香も 本日は予定が詰まっているのでしょう?」
春香「そうなんですよ……だから四条さんが行ってくれ るのなら」
P「とてもありがたいな」
貴音「ふふ……のぅぷろぐれむでございます」
5:
P「おお!それじゃあ都合の良いタイミングでいいから 行ってやってくれ。それでどうだったか報告も頼む」
貴音「その場合は電話で、ですか?」クスクス
春香「プロデューサーさんはメール返しませんからねー 」クスクス
P「その話はもういいだろ……」
貴音「冗談ですよ、あなた様。さて……早い方が良いと 思いますので、これから訪問してまいります」
春香「あれ、四条さん。今日は仕事ないんですか?」
P「そういや貴音はオフだったな。なんで事務所に来た んだ?」
貴音「……虫の知らせ――――いや、この場合は鳥の知ら せ、でしょうか」ボソ
P・春香「?」
貴音「とっぷしぃくれっと、です。それでは悪は急げと 言いますので、これにて……」スタスタ
ガチャ
P「悪は急げって……」
春香「善は急げ、ですよね……相変わらず不思議な人で すね」
P「まあ、お見舞いに行って貰えるだけありがたいよ。 それじゃ、今日も頑張ろうな。春香」
春香「はい!」
6:
数十分後・千早マンション
貴音「ここですね……」
貴音「さて、杞憂であれば問題ないのですが」ピンポーン
貴音「……」
ガチャ
千早「……」ソー
貴音「おはようございます。千早」
千早「……」
貴音(っ……ああ、やはり)
千早「……」オドオド
貴音「心配することはございません。ある程度、状態は 把握しております」
千早「!?」
9:
貴音「家柄、とでも言えばいいのでしょうか……とにかく 、千早のソレはどういったモノなのか、 そして千早がどんな状態なのかは分かっております 」
千早「…………」ビクビク
貴音「脅えなくとも、大丈夫です。取りあえず中に入れ て頂けませんか?」
千早「……」コクリ
貴音「……対話の為に必要な道具は、揃えてきましたから 」
千早「………………」
貴音「如月千早。あなたは今――」
貴音「声が、出ないのでしょう?」
11:
室内
貴音「さて、ノートとペンはこちらです」ガサガサ
千早「…………」
貴音「詳しい話を、訊かせて頂けませんか?時間は幾ら 掛ってもかまいません」
貴音「このような事態に一番必要なものは、対話ですか ら」
千早「……」コクリ
千早「……」サラサラ
千早『お察しの通り、今の私は喋れません』
千早『ただ、どうしてと言われてもお話出来ません』
貴音「それは、原因が分からないから、でしょうか?」
千早「……」コクリ
千早「……」カキカキ
千早『ただし、全く喋れないという訳ではありません』
千早『四条さん、「おはようございます」と言って貰っ ても?』
12:
貴音「……おはようございます」
千早「おはようございます」
貴音「……なるほど」
貴音「声質、声量、抑揚……全てがわたくしと同じ」
千早「声質、声量、抑揚……全てがわたくしと同じ」
貴音「そのまま全てを、繰り返すという訳ですか」
千早「そのまま全てを、繰り返すという訳ですか」カキカキ
千早『その通りです。喋ろうと思うと勝手に繰り返して しまう』
千早『異変に気がついたのは朝のニュースを見ている時 でした』
千早『ニュースキャスターの言葉をそのまま全て繰り返 してしまったんです』
千早『何度も、何度も』
貴音「千早……」
14:
千早『おはようも、良い天気ですねも、全て借り物の言 葉で。プロデューサーや春香に電話も出来ない』
千早『……歌うことすらも』ギリッ
貴音「……それは」
千早『正直、未だにパニックです。自分自信が気持ち悪 い』
千早『ねぇ、四条さん。これって病気なんですか? 私 、ずっとこのままなんですか?』
千早『そんなの……耐えられない』
貴音「…………」
貴音(歌えなくなったあの時とは状況が違いますからね ……狼狽するのも無理はありません)
貴音(しかし、実際にわたくしがどうこう出来る問題で もない)
貴音(とにかく、今は対話。そしてあのお方に助力を頂 きましょう)
貴音(……彼の言葉は決まっているでしょうが)
貴音「勝手に助かるだけ、ですか」ボソ
15:
千早「?」
貴音「いえ、何でもございません。そして、案ずること はありませんよ、千早」
貴音「わたくしの力を全てお貸しします。なのでこの現 象――――」
貴音「怪異と向き合うことから始めましょう」
千早『かいい?』
貴音「ええ、怪異です。怪しくて異なるもの、と書きま す。砕いて説明するならば妖怪変化の類とでも言いまし ょうか」
貴音「とにかく、怪異という現象です。そこには居ない けれど、どこにでも居る。怪異は、世界と繋がっている のです」
千早『ええっと、イマイチ状況が把握できないんですが 』
貴音「理解できなくてもかまいません。ただ、信じてく ださい。わたくしの言葉を」
千早「……」コクリ
貴音「助かります。それでは怪異という存在を念頭に置 いて、これから幾つか質問していきます」
貴音「まず昨日、事務所でわたくし達と別れた後に起き た『いつもと違う出来事』を教えてください」
貴音「帰り道を変えたり、何か拾ったり、誰かと出会っ たり、何でもいいのです」
16:
千早「…………」ウーン
千早「……」ッハ
千早『胸囲が増してた気がするわ!!』
貴音「それは夢です」
千早「」
貴音「……失礼。で、実際には増えてたのですか?」
千早「……」フルフル
貴音「でしたら、関係がありません。もっと他に何か…… そう例えば自室に鳥の巣が出来ていたり、とか」
千早「!!」カキカキ
千早『鳥の巣ではないけれど、ベランダで変わった鳥を 見ました』
貴音「変わった、鳥」
千早『はい。青色の鳥で、珍しいなって思っただけでし たけれど』
貴音「……その鳥は、喋りましたか?」
17:
千早『……鳥が喋るはずないでしょう?』
貴音「怪異には、喋るモノもございますので」
千早『そうですか……とにかく、鳥は喋ってません。代 わりに私が歌っていたぐらいで』
貴音「ベランダで鳥に歌を聴かせていた、と」
千早「……」コクリ
千早『一曲歌ったら、そのまま何処かへ飛んで行きまし た。それくらいですね、いつもと違う事は』
貴音「……ふむ」
千早『でも、それがこの現象と関係あるんですか?思い 当たる節はないんですけれど』
貴音「怪異というのは気まぐれですからね。それが、そ うなってしまうことも多々あります」
千早『それで、どうにかなるんですか!?また歌えるよ うになるんですか!?』ドン
貴音「落ち着きなさい!」
千早「……」ビク
19:
貴音「……申し訳ございません。そうですね、あなたが一 番不安なのですから」
千早「……」フルフル
千早『こちらこそ、迫ってしまってごめんなさい』
貴音「いいのですよ。わたくしの配慮が足らなかったこ とです」
千早『……ありがとうございます』
貴音「ふふ……問題ありませんよ。同じ765ぷろの仲間 じゃないですか」
貴音「しかし、時間がないのも事実。ここは急ぎ足で行 くとしましょう」
千早「……?」キョトン
貴音「蛇の道は蛇、とでも言いますか。とにかく、専門 家に意見を頂くとしましょう」
20:
都内・廃墟ビル
千早『あの……ここは?』
貴音「専門家――忍野メメという御仁のねぐらです。変 わり者ですので、彼はこう言った場所を好んで住みつく のですよ」
千早『それは変人じゃ……』
貴音「……否定はしません」
千早『それに、トップアイドルの四条さんがこんな所に 来て大丈夫なんですか?』
貴音「千早もとっぷあいどるでしょう……心配は無用です 。ここは簡単に人に見つかる事はありませんので」
千早『ならいいけれど……しかしメメってさぞかし萌え そうな名前ね』
貴音「千早。その下りは本家でやりましたので割愛しま しょう」
千早「……?」
千早(本家ってなんだろう)
21:
貴音「さて、到着いたしました」
千早『ここに忍野、さんという方が?』
貴音「ええ。それでは、入りましょう」
ガラガラ
??「やあ、お姫ちゃん。待ちかねたよ」
貴音「……相変わらず見透かしたような物言いですね、 忍野殿」
忍野「うん、なんのこと?」
貴音「……いえ、なんでもございません」
千早「…………」サラサラ
千早『この方が、忍野さん?』
貴音「はい、s忍野「お姫ちゃんから訊いたのかな?そ う、僕が忍野でーす」
貴音「……」イラ
忍野「なんだいお姫ちゃん、睨みつけてきて。元気いい なぁ、なにか良いことでもあったのかい?」
忍野「いやいや、まさか短期間にこんな可愛い女性とお 会いできるなんて、全く彼を思い出すよ」
22:
貴音「……阿良々木、という男性のことですか」
忍野「ん、ああ、そうそう。まぁ彼のことはどうでも良 いんだよ。いや、阿良々木くんは手際が悪いからねぇ」
忍野「それに比べてお姫ちゃんは彼と違って優秀だから 、僕はとってもやりやすいんだ」
忍野「もう、対話は終わってるんだろう? なら話は早 い。さっさと終わらせよう。僕だって暇じゃないんだ」
千早「……」
千早『助けてくれるんですか?』
忍野「助けない。君が勝手に助かるだけだよ、お嬢ちゃ ん」
千早「…………」キッ
忍野「……まったく元気いいなぁ、本当に」
忍野「それじゃ、噺を訊かせてくれ。お姫ちゃん?」
23:
説明後
忍野「ことなき鳥」
忍野「梁塵秘抄という平安時代の書に詠われた鳥。枝先の、鳥に詠えば、こ とがなき……まあ続きがあるんだけれど 省略しよう。とにかく、お嬢ちゃんのソレは鳥の怪異だ。間違いない」
千早・貴音「…………」
忍野「カメラの逸話は知ってるかい?」
貴音「撮られたら魂が吸われる、という」
忍野「そう、それだ」
千早『唐突にどうしたんですか?』
忍野「唐突でもなんでもないさお嬢ちゃん。とにかく昔の人は得体の知れない モノには理由を付けて恐怖の対象にするもんさ。 怪談なんて、その最たるもの」
貴音「……なるほど、おうむですか」
千早「?」
忍野「賢いね、お姫ちゃん。いやぁその賢さが阿良々木くんに一割でもあれ ば、僕ももっと早くこの街に来れたんだけどね」
24:
忍野「話を戻そう。お姫ちゃんの言うとおり、ことなき 鳥ってのはオウムの事だ。ことなき鳥は地域によっては 、 事無き鳥、言鳴き鳥とも呼ばれることもある。オ ウムってのは知っての通り言葉を鳴くだろ?」
忍野「はっはー昔の人の考えは面白いよね。言鳴き――言亡き。つまり言葉亡き鳥さ」
千早「…………」
千早『じゃあ、その鳥の怪異を退治すれば声は戻るんで すか?』
忍野「退治だなんて物騒だな、お嬢ちゃん。何か良いこ とでもあったのかい?」ッス
千早「!!」カキカキ
千早『煙草は、吸ってほしくありません』
貴音「千早。忍野殿は咥えるだけで、火は点けません。 ご安心を」
千早『そう。ならいいんですけど』
千早(じゃあなんで咥えるのかしら)
忍野「おや、随分と気にかけるんだね?ひょっとしてお 嬢ちゃんもアイドルなのかい?」
千早「……」コクリ
忍野「へぇーそうなんだ。僕ってこの通り世俗には疎い からね。ま、頑張ってよ」
千早「」イラァ
25:
千早『いい加減にしてください!私は一刻も早く声を取 り戻したいんです!!』
忍野「元気がいいなぁ……でも、僕にはどうしようもな いぜ?」
貴音「…………」
千早「??????!!」
千早『だったら、結論を言ってください!早く!』
忍野「甘えるな」
千早「」ビク
忍野「勘違いしちゃあいけない。コレはお嬢ちゃんの問 題だ。そして怪異は何もしていない……お姫ちゃんなら 分かるだろう?」
貴音「そう、でございますね」
忍野「怪異は世界と繋がっている。求められたから、答 えただけだ」
千早「…………」
貴音「千早――如月千早。考えるのです。自分が何を求 めていたかを」
26:
貴音「そして、幸せの青い鳥はどこに居たのかを」
千早(私が、何かを求めていた……?)
千早(何を……)ビクンッ
千早(何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を 何を何を何を何を何を何を何を――――)
忍野「……タイムアップだ、お姫ちゃん。今晩の零時、 またここに来てもらってもいいかな?」
貴音「……承知しました」
千早「」ガリガリ
27:
数時間後・765プロ事務所
音無「……千早ちゃん、どう?」
貴音「よく眠っておりますが、直に目を覚ますでしょう 」
音無「いやぁ、最初はビックリしたわ。なんせ眠ってる 千早ちゃんを背負って事務所に入って来るんだもの」
貴音「申し訳ございません」ペコリ
音無「いいのよ、責めてる訳じゃないから。それにして も、皆が直帰で助かったわね」
音無「プロデューサーさんとか春香ちゃんが居たら大変 だったわよ?きっと大騒ぎしてただろうし」クスクス
貴音「千早は愛されていますから」クスクス
千早「……」スースー
音無「ホント、よく眠ってるわね。どんな夢みてるのか しら」
貴音「きっと苦しい夢でしょう……ですが、答えを出し た千早はより強くなってるに違いありません」
音無「ふふふ。なぁに、それ?」
貴音「とっぷしぃくれっとでございます」
29:
――――――――――――――――――――
千早「……」パチ
貴音「おはようございます、千早」
音無「おはよう、千早ちゃん」
千早「…………」カキカキ
千早『おはようございます』
貴音「答えは、出ましたか?」
千早「……」コクリ
音無「事情は分からないけど、いい顔してるわね」フフ
千早「///」
貴音・音無「なにこれかわいい」
千早「//////」ブンブン
貴音「ふふ、わかっておりますよ。では、参りましょう か」
音無「いってらっしゃい」フリフリ
千早「……」ペコリ
30:
深夜零時・廃墟ビルの一室
忍野「それじゃ、始めようか」
忍野「なに、緊張する必要はないさ。もう分かってるだ ろう? ことなし鳥はただの観客だ。君が歌えば姿が見 える」
忍野「もう、ここに居るんだ」
忍野「怪異は――世界と繋がっている」
忍野「求められたから、答えただけだ」
忍野「お嬢さんが何を求め、ことなし鳥が何を答えたか 」
忍野「それをしっかりと念じるだけでいい」
忍野「さて、場違いな司会は黙るとしよう。ここから先は、君のステージだ」
忍野「じっくりと、魅させていただくよ」
31:
千早(声が出なくなった時、初めはあの事件を思い出し た)
千早(私の事で、皆に迷惑をかけて、歌が歌えなくなっ たあの時を)
千早(でも、事務所の皆のおかげでまた歌う事が出来た 。優だって笑ってくれてただろう)
千早(怪異という存在を知って、初めはあの青い鳥の仕 業だろうと決め付けた)
千早(自分に非は無いと、被害者ぶって思っていた)
千早(最近伸び悩んでいた自分の悩みを、押しつけてい た)
千早(そう。あの時ベランダで、たった一羽に願って歌 った。私の歌をもっと多くの人に届けてほしいと歌った )
千早(四条さんが言ってたのは、あの有名な青い鳥の童 話だろう)
千早(幸せの青い鳥は、自分の家に――そう、自分の居 場所に居た)
千早 (そして、私の願いを受け取ってくれただけ)
32:
――怪異は求められたから、答えただけだ
千早 (本当に、その通りだ)
――怪異は世界と繋がっている
千早 (あなたは、ここに居たのね)
ことなし鳥「……」
千早(ありがとう。そしてごめんなさい)
千早(やっぱり、私の歌は私が届けるわ。だからあなた は聴いてくれるだけでいいの)
――それじゃあ、歌うわ
33:
千早「?♪」
忍野「……本来、ことなし鳥は言葉を広めるだけの怪異 だった。伝書鳩みたいな役割で、短歌なんかを記録させ てね」
忍野「ただ、文化の移り変わりによって言葉を広める怪 異から、言葉を奪う怪異へと変わっていった」
忍野「いや、別にそれは珍しいことじゃないんだ。怪異 のキャラ設定が変わる事なんか幾らでもある」
忍野「だけれど、本来の性質を取り戻すってのは珍しい んだ」
忍野「はっはー、実に良い噺を蒐集させてもらったよ。 さすがはアイドルってところかな」
貴音 「千早が歌ったのも蒼い鳥というのは、いささか出 来すぎてますね」
忍野「案外、この曲じゃなかったら影響なんて無かった かもしれないね」
貴音「そうなのでございますか?」
忍野「そうなんだよ。怪異ってのはいい加減だから、さ 」
忍野「さて、そろそろライブも終わるみたいだ。報酬は この曲ってことにしよう。久しぶりに気分がいいからね 」
貴音「ありがとうございます」
忍野「お姫ちゃんも、そろそろ答えを出さないといけな いよ」
貴音「……存じ上げております」
――こうして一夜限りのステージは幕を下ろしたのであ ります。
34:
如月千早の声が戻った後に、忍野殿へお礼を言いわたく し達はそれぞれの家へと帰りました。 休日だというのに全く休めなかったけれど、翌日からは 通常通りに仕事があるので即刻就寝いたしました。 そして翌日。
貴音「おや、なにやら騒がしいですね」
亜美「お→お姫ちん!」
真美「ビッグニュースだよ!」
律子「こら、朝から騒がない」
響「765プロに新しい仲間が増えたぞ!」
真「プロデューサーが連れてきたんだ」
雪歩「とっても可愛いですぅ」
あずさ「うふふ、さっそく大人気なのよ?」
やよい「うっうー!名前はpちゃんです!」
伊織「あの馬鹿にしては、珍しく良いことしたわね。に しし」
美希「今誰が一番早く言葉を覚えさせるかきょーそーし てるの」
貴音「……競争?」
35:
美希の言った言葉に不安を覚え人込みを掻き分けて中心 へと向かいます。 そこにはあなた様と春香が嬉しそうな表情を浮かべてお りました。
P「おー貴音。昨日はありがとうな」
貴音「い、いえ……お礼を言われるようなことは何もし ておりません――して、それはまさか……」
事務作業を行うですくの上に置かれたのは小さな籠。そ してその中にいるのは――
春香「貴音さん。オウムですよ!オウム!今日の朝事務 所に迷い込んでたらしくて」
音無「朝一で飼育セットを買ってきたピヨ!」フンス
青い色のおうむでした。
貴音「……面妖な」
千早「おはようございます――貴音」
一同「!?」
36:
後日談というか、今回のオチ。
アレイマヨビステデ……
キマシタピヨー!!
ピヨコウルサイゾ
一層、騒がしくなる事務所。ああ、そういえば昨日の帰り道に千早から名前で呼びたいという 提案を受けたのでした。
わたくしは何もしてませんし、忍野殿の言葉を借りるなら『一人で勝手に助かっただけ』なので恩を感じる必要はないのですが、
それとは関係なく、そう呼びたいという事だったので了承したのでありました。
貴音「おはようございます。千早――しかし、これは昨日の……」ボソ
千早「さあ、どうでしょうね? だって怪異はいい加減なんでしょう?」ボソ
貴音「……まあ、そうなんでしょうが」
それにしてもいい加減過ぎやしないでしょうか。 しかし、特に害もなさそうなので千早が良ければそれで良いのでしょう。
こうして鳥に運ばれた千早の声は無事に帰ってくることができました。 これから一層、千早は頂点目指して走り抜けていくのでしょう。その姿を最後まで見届けたい ものです。
ちなみに余談ではありますがおうむのpが最初に口走った言葉は、
まるで急に距離が縮まった わたくしと千早を 見て戸惑っていた一同の気持ちを汲み取ったのか、こんな言葉でございました。
p「メンヨーナ」
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