海未「にこと初詣。」back

海未「にこと初詣。」


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 …ずっと、この日を心待ちにしていました。私にとってこの日は今年最後の…そして、新年の最初の楽しみでしたから。
…そろそろ、でしょうか?ふふ、なんだか少し緊張しますね。
5:
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「…初詣?」
彼女の声は、いかにも私の言葉が腑に落ちないといった風でした。やはり私からこんな誘いの電話が入るなど予想外のことだったのでしょうか。
「はい。もしにこがよろしければ…」
 にこを初詣に誘うというのは、ことりの提案でした。いつからか私がにこに対して抱き始めていた特別な感情の存在を、私は穂乃果とことりにだけは打ち明けていました。
「あたしが良ければ、って、あんたの方はいいの?毎年穂乃果とことりと行ってるんじゃないの?」
「う…いえ、実は今年は2人とも都合が合わなくて…駄目、ですか?」
 ことりがこの提案をしてくれたときに口にした言葉が、脳裏に浮かびました。
ーことりと穂乃果ちゃんは、神田明神から海未ちゃんを応援してるからね♪
 …正確には「都合が合わない」のではなく、「話をつけてきている」なのですが。
「…うん?まあ、年末年始はお母さんも休みだから、チビ達はお母さんに任せてて大丈夫。行きましょ、初詣。」
「本当ですか、ありがとうございます。あっ、あと、できれば神田明神ではなく、行きたい神社があるのですが…」
 これも嘘です。本当は特別参りたい場所があったわけではありませんでした。神田明神でさえなければ、私はどこの神社でもよかったんです。私たちを、少なくとも私を知る人がいないところであれば…。
6:
 あっけらかんとした返事に、私は拍子抜けしたような気分でした。2人での初詣の約束をとりつけるという目的が、こんなにもすんなりと達成されるなんて。
なにしろ私は電話をかけるまで…いえ、にこに返事をもらうまさにその瞬間までずっと、断られるところばかりを想像していたものですから。
「よかった…。場所はまたお伝えします。では、よいお年を。」
「うん、おやすみ。よいお年を。」
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8:
「待った?」
 待ち合わせの駅ににこが現れたのは、予定の時間の約3分前。
 年の瀬ということもあって、私たちと目的を同じくする人々が多く行き交っていましたが、駆け寄ってくる彼女は遠くからでもすぐにわかりました。いつものツインテールでこそなかったものの、薄桃色のコートがこんなに似合う人は、あなた以外にいないでしょうから。
「ええ、少しだけ、ですが。」
「あれ?まだ時間じゃなくない?」
 私の返事が意外だったのか、にこはポケットから取り出したスマートフォンのホーム画面と私の顔を見比べるようにしながら言いました。
「はい。ですが少し待ちました」
「そう…ごめんね?」
「いえ、怒ってなんていませんよ。」
 確かに、この寒さの中で立ちっぱなしは少々こたえました…が、これは早く着き過ぎてしまった私の自業自得ですから。
 むしろ私はいま、嬉しくて仕方ないぐらいなんです。やっぱりあのとき勇気を出して誘ったのは正解だったのだな、と。
 あのときのおかげで、いまからきっと、とても良い形で今年を締めくくり、新年を迎えられそうな…そんな予感がするんです。
「さあにこ、行きましょうか。」
10:
すごい昔に渋に書いてやっぱりボツにしちゃったやつの供養なんだ…3日ぐらいしか公開になってなかったから見てた人いるとは思わなんだ
21:
「…うっわ、さっきは全然だったのにねぇ…」
 電車から降りた私たちを予想外のーー少なくとも、私はまったく想定していなかった出来事が待ち構えていました。
 私たちの視界に飛び込んできたのは、季節外れの牡丹桜が散るさまを思わせるかのような大粒の綿雪。いつもなら外出前に天気予報はチェックしているのですが、今日はその…それどころではなかったといいますか…。
 私の予感は早々にも外れてしまったのでしょうか。
「…もしかして傘持ってないの?」
 俯く私の視界にひょっこりと飛び込んできた赤い瞳は、曇った私の表情を見逃しませんでした。
「…すみません…」
 降り注ぐ雪を見つめて、さらに自分の顔が険しくなるのを感じました。どうやら、傘なしで歩くのにはなかなか厳しいものがありそうです。
「はぁ、一応、持ってるんだけどねー…」
 そう言ってにこが広げた水色の折りたたみ傘は、小柄な彼女が持っていてもなお小さく見えるほどの大きさしかありませんでした。
 それは子供用では?なんて言ったら怒られるのは目に見えていますし、そもそも傘を忘れた私が言える台詞ではないので黙っておくことにしますが…。
「うーん、やっぱこれに2人はちょっと厳しいかもね…」
 彼女が広げた傘を私の頭の高さに合わせても、やはりこの傘では2人とも傘から肩がはみ出してしまうようでした。
「すみません、そこのコンビニに寄ってもいいですか。傘を買ってきますので。」
 私は駅から道路をはさんだ向かいにあった明かりを指差しました。お気遣いはとても嬉しいのですが…そのせいであなたまで雪に濡れてしまっては元も子もありませんから。
25:
「はぁ…」
 今日が雪だったばかりに…。
 私の溜息は一瞬だけ大きな白煙の塊になって、再び夜の闇へと消えていきました。もちろん、この溜息の原因はコンビニで購入したビニール傘が少しばかり割高だったせいでも、コンビニのレジが混雑していて待ち時間が長引いてしまったからでもありません。
「どうかした?」
「いえ、なんでもありません。」
「そう?ならいいけど。」
 そう、なんでもないんです。今こうしてここに来られたことだけでも十分過ぎるぐらいなのに…少しわがままが過ぎました。
「はい、これ」
 にこが私に突き出した右手にあったのは、オレンジ色のキャップの小さなペットボトル。左手にも、折りたたみ傘の柄とともに同じものが握られていました。
「…これは?」
「ココア。さっき…待ってる間、冷えたでしょ?」
 そっぽを向きながら話すにこの表情を見るのは、私は初めてではありませんでした。巷ではこういうのをツンデレと呼ぶそうですね。普段は強気なのにこんなしおらしい姿を見せられては、少しいじめてみたくなってしまいます。
「…ふふ、すみませんがそれは受け取れません。だって、そもそもにこは遅刻したわけではありませんから。」
26:
「なっ…!」
 彼女は一瞬目を真ん丸に見開いて、
「こういうときはおとなしく奢られとくもんなの!」
 次の瞬間にはむすっとした顔になって、私の胸に無理やり小さな温もりを押し込めます。私は隠した笑みがこぼれないように我慢しながら、突き出された手に自分の手を重ねました。
「…仕方ないですね。では今回はこれで手打ちにしておきましょう。」
「…なんなのよもう、調子狂うわね…」
「さ、もたもたしてたら年が明けちゃうわよ」
 彼女はぷいとこちらに背を向けて、逃げるように早足で歩き出しました。
「あっ、待ってください!まだ時間はありますから!それに、にこは場所を知らないでしょう?」
「ふん!こんなにたくさん人がいれば流れに任せてたら着くわよ。早く来ないと置いてくわよ?」
 …あらら、機嫌を損ねてしまったでしょうか?私は急ぎ足でにこの隣まで追いつき、傘に隠れた顔を覗き込みます。
「…なによ」
 にこはむくれた表情を浮かべていましたが、本気で怒っているわけではないようなので安心しました。
 いただいたココアを一口飲むと、甘みとともにホッとするような温かさが身体に広がります。このココアがあるのもこの雪のおかげなのだと思えば…やはり、さっきのわがままは撤回しなければいけませんね。
 …いえ、並んで歩くと傘であなたの顔がよく見えないのが残念だ、なんて、そうでなくても言えるわけないじゃないですか。
「…なにニヤニヤしてんのよ」
「ふふ、なぜでしょうね?」
…そんなに私の表情に敏感なのなら、私の気持ちにも気付いて欲しいです。
28:
「ふ、ふ、ふ?ん♪」
 さっきまでむっすりしていたにこの機嫌が急に上向いたのが、左手に抱えた小袋にあることは明らかでした。
「いやー、こういう時の夜店といえばやっぱりコレよね?」
 にこは満足げに語りながら、バランスを崩さないよう器用に傘を支えつつ、1つ、また1つとベビーカステラを口に運びます。
「ん?、うま? ほら海未、あんたも食べれば?」
「歩きながら食べるのは行儀が悪いですよ?」
「わかってないわねー、こういうのは歩きながら食べるのがいいんでしょうが。ほら、あーん」
「ええ!?え、あ、あー…」
「あむっ。美味しっ」
「……にこ」
「じょ、冗談にこ?、海未ちゃんそんな顔しちゃやだあ?これあげるから機嫌なおして?ね?」
「…もう…では、いただきます。」
 …まったく、いつの間にか私のほうが振り回されているではないですか。
まるでスライドショーのようにコロコロと変わるにこの表情は見ていて飽きないのに、それでいてどこか安らぎを感じさせるから不思議です。…なんてことを考えていたら、結局もらったベビーカステラの味も、ほとんどわかりませんでした。
「…そろそろ着くころじゃない?」
29:
 にこの言葉にふと見回してみれば、いつの間にか足元の歩道は石畳となり、街灯の明かりは灯籠のそれへと取って代わられていました。
 人の多さは相変わらずですが、近くを通る車のエンジン音や電車の走行音がなくなっただけで、私が知っている東京の街からずいぶん離れた…そう、言ってみれば…スピリチュアルな(?)場所にいるような気分でした。
「もうすぐ本殿のようです。ますます混みあってきましたね。…はぐれないでくださいね?」
「わかってるわよ!」
 にこは口をとがらせますが、かく言う私も忠告以上のことを…手を、なんて言い出す勇気はありませんでした。
 それに、私と似たようなビニール傘を持っている人こそ多く居るものの、水色の折りたたみ傘をさしている人はそう多くありません。私がにこを見失わなければいいだけの話ですから。
 本殿へと続く中門の入り口は、立派な本殿に比べてやや狭くなっており、中門に近づくにつれ、私とにこを含め大勢の参拝客の流れはまるで漏斗にかけられたように細くまとめられていました。
30:
 とん、とん。
 私の傘と、私の隣を歩く人の傘がぶつかり、跳ね返ります。この場にいる人のほとんど全員が自分の肩幅よりも少し大きな傘を持っているわけですから、当然といえば当然のことでしょう。
 普段なら一言お詫びを言っているところですが、この場でも同じように振る舞っていてはキリがありません。周囲の人々もそれは承知の上、傘がぶつかっても素知らぬ顔で隣の人との会話を続けています。
「やはり混み合いますね。にーー」
 私がたわいもない会話を振ろうと横に目を逸らした、その瞬間でした。
「ーっ!?」
 突如、ずるりという音とともに、私の身体は一瞬宙を舞うような感覚に見舞われたのです。
 咄嗟に滑った右足をもう一度階段に向けて差し出し、前のめりに傾く体を支えました。靴底を勢いよく叩きつけられた地面から、パチャリと水が弾けるように散りました。
 危ないーー。間一髪、少し体勢を崩しただけで済みました。雪で濡れた石の階段は、私が思っている以上に滑りやすくなっていたようです。これは気をつけなくてはいけませんね…。
 ですが、派手に転ばずに済んで良かったです。こんな所で転んでしまえば周囲の人をーー彼女まで巻き込んでしまいかねませんから。
 …いえ、たとえ巻き込んでいなくても、そろそろ「気をつけなさいよ」なんて、お叱りが飛んできそうなものなのですが…?
「にこ…?」
31:
 気付いたとき、にこの姿はすでに私の視界にありませんでした。…私が転びそうになっていた隙に?それとも傘がぶつかったことに気を取られていた間に…?
「にこ!にこ!」
 頭で考えるより先に、私は必死にぐるぐると周囲を見渡しました。紺色の傘、赤い傘、半透明のビニール傘……水色は?……あった!
「にこ!」
「ん?ああ海未、そんなに慌ててどうしたの?」
 必死の私に対して、振り向いたにこは焦った様子ではなく…というより、私たちがはぐれそうになっていたことすら気付いていたのか否かわからないような様子でした。
「はあ…どうしたの、じゃありませ…」
 私が言いかけたときでした。
…とんっ。
32:
 私とにこの傘がぶつかり、歩幅にしてあと一歩ほどのところ…寄り添おうと近づく私の足は遮られました。
「?」
 にこが小首をかしげるのも、傘がなければそうだったであろう距離の一歩先。あと一歩ーー。たったそれだけの距離がずいぶん遠く感じて、そして、その距離のためにまたはぐれてしまい、今度は簡単には彼女を見つけられない…そんな気がしました。
 もし今日、この雪が降っていなければ…私とあなたが傘をさしていなければーー私とあなたの距離は私たちの傘2本分、短くなっていたのでしょうか?私はふと、コンビニから出たときに考えていたことを思い出していました。
「にこ」
「ん?」
 雪だから、傘をさしているから…なんていうのは、私の言い訳ですね。
「傘を…閉じてください。」
33:
「えっ?」
「わ、私の傘に入ってください!他の人の傘とぶつかって動きにくいでしょう。そ、それに、その方がはぐれずに済みますから!」
 思わず声がうわずってしまった私に、にこは一瞬いぶかしげな顔をしましたが…どうやら納得してくれたようでした。
「…そうね、じゃあそうさせてもらうわ。」
 動きにくい、はぐれない、などというのはただのこじつけでしたが、今度は見破られなかったようです。にこの傘の上に積もっていた雪がバサリと地面に落ちたのと同時に、私のわがままは達成されたのでした。
「ちょっと、にこをはみ出させたら許さないんだからね?」
 にこの手が傘を握る私の手に重なり、私もろとも傘を引き寄せました。冷えきった手の甲に伝わる温もりにどきりとせずに済んだのは、やはりこの場にお互いの知り合いがいないからか、はたまた別の理由があるのでしょうか。
「…はい、離れないでください」
 神秘的な明かりを灯す本殿に向かい、二礼、二拍、一礼。さあ、後もつかえているようですからすぐに行きましょう。
34:
「…ねえ海未」
「なんでしょう?」
「今年もよろしくね。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。…にこはどんなお願いを?」
「そりゃ決まってるわよ、今年もスーパーアイドル矢澤にこにとっての飛躍の年になりますように、って。」
「…ふふ、にこらしいですね。私もそうなることを祈っていますよ。」
「海未は何をお祈りしたの?」
「私ですか?私は今年一年の健康と…また来年もこうしてお参りできますように、でしょうか。」
「ふーん、なんか地味なお願いねぇ…」
「いいんです。地味でも大切なことですから。」
35:
「…にこ、来年もまた一緒に初詣に行ってくれますか?」
「…紅白の出演が入ってなければね。」
「ふふ、それは心配ですね?」
「…心配してるようには見えないんだけど」
「はい、私は別に大晦日でなくても構いませんから。三が日でも、4日以降でも、にこと来られるのなら気にしません。」
「…そ、ならいいんだけど」
 境内から少し離れ、辺りの景色は見慣れた都会のそれへと戻っていました。さっきの人混みこそ疎らになりましたが、彼女はまだ、自分の傘を開くつもりはないようでした。
36:

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