花陽「お酒……お酒……」back

花陽「お酒……お酒……」


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ごくごく
花陽「ぷはーっ!」
にこ「おっさん臭いわよ……」
花陽「うーっ……」
にこ「それで、悩みってなんなの?」
花陽「……」
にこ「ほら、黙ってちゃわかんないでしょ」
花陽「それが!!!!」
にこ「うわっ、びっくりした……」
花陽「凛ちゃんのことだよ!!!凛ちゃんの!!!!」
にこ「も、もうちょっと音量下げなさい……」
3:
花陽「凛ちゃんが……最近……よそよそしくて……」
にこ「よそよそしい?」
花陽「大学に入ってから会う機会も減って……だんだん、離れ離れになって……それで……」
にこ「はーっ……よくある話じゃない」
花陽「よくないよぉ!……全然よくないよぉ!」
にこ「要は寂しいんでしょ、それで」
花陽「……高校までずっと一緒だったから……」
にこ「あー……確かにそうね」
4:
花陽「うう……」
にこ「でも、会うことは会うんでしょ」
花陽「最近は二ヶ月に一回くらい……」
にこ「それだけあってたら十分じゃないの」
花陽「でも!凛ちゃんはいつも『久しぶりだねっ!』って言って……」
にこ「うんうん」
花陽「……それが辛いの!」
にこ「え、どうして」
花陽「だって『久しぶり』だよ!……もう凛ちゃんの生活に私はいないってことだよ……うわぁぁん!」
にこ「……」
5:
花陽「だいたい!!二ヶ月に一回なんてのも……少ないよぉ!」
にこ「じゃあ花陽から誘えばいいじゃないの」
花陽「ううん、違うの……」
にこ「何が?」
花陽「それじゃダメなの……」
にこ「あー、なるほどなるほど……つまり、昔は凛から誘ってくれてたと……」
花陽「そう!!そこですっ!!」
ごくごく
花陽「ぷはーっ!」
にこ「顔赤いわよ」
花陽「ううう……」
6:
にこ「凛も花陽が忙しいと思って遠慮してるんじゃないの……いつでも誘って、って言ってやれば……」
花陽「……」
にこ「聞いてる?」
花陽「会った後も……喋ってても、昔と違うの……」
にこ(聞いてないし……)
花陽「前は凛ちゃん、抱きついたりしてきてくれたのに……!今は、距離をとって歩いてるみたいで……」
にこ「凛も大人になったんでしょ」
花陽「私の前にいないうちに、私の知らないところで凛ちゃんが大人になっていく……」
にこ「……」
花陽「私は、凛ちゃんが大人になる邪魔をしてたんだぁ……」グズグズ
にこ「そんなことないし、なんで泣いてるのよ……」
8:
花陽「そんなのやだよぉ……」
にこ「それにしても意外ねー……」
花陽「……?」
にこ「凛と花陽、二人とも別々の大学に行って……てっきり凛の方が寂しがるかと思ったら……」
花陽「……」
にこ「逆だったとは……これは想像してなかったわ……」ニヤニヤ
花陽「わ、わ、笑わないでよぉ、わたしは、ま、まじめに……」
にこ「お酒が入るとすぐ凛、凛って……」
9:
花陽「ねぇ……」
にこ「……?」
花陽「凛ちゃんは私のことなんて言ってる……?」
にこ「あんまり凛と二人で会ってないから知らないわ」
花陽「どんなことでもいいから……最近、凛ちゃんが私のこと、何か言ってなかった……?」
にこ「別に……」
花陽「やっぱり……うわぁぁん……」
にこ(どうしろっていうのよ……)
10:
花陽「……真姫ちゃんにも会ったんだ、この前……凛ちゃんのこと言ったの、そしたら、そしたら……」
にこ「そしたら?」
花陽「にこちゃんと同じようなこと言うの、何言っても『はいはい』って感じで……全然聞いてくれなくて……」
にこ「まぁ、それは……」
花陽「なんでみんなわかってくれないのぉ……」
にこ「……横から見てたらなんか」
花陽「……?」
にこ「その、そんなことで悩んでるの?……って感じで……」
花陽「そんなことどころじゃないよぉ!!!大問題だよぉ!!」
にこ「……えーっと……」
花陽「うわぁぁん……」
12:
にこ「あんたらの仲の良さを見てたら……別に大丈夫じゃない?……って感じがするんだけど……」
花陽「見たの!?」
にこ「何を?」
花陽「最近の私と凛ちゃんの……その……やりとりとかっ!昔と全然違うんだよぉ!見たらわかるよぉ……!」
にこ「見たわよ」
花陽「いつ?最近じゃないよね……」
にこ「最近よ、年末に一回、元μ'sの9人でで集まったじゃない」
花陽「じゃあ、じゃあ……凛ちゃんと私を見て……にこちゃんはどう思ったの!」
にこ「別に……昔のままだなぁ……って」
花陽「はぁぁぁっ……」ガクッ
13:
にこ「なによその反応……」
花陽「やっぱりそうなのかな……この微妙な気持ちは……私にしかわからないのかなぁ……」
にこ「じゃあもう帰っていいかしら……」
花陽「待ってよぉ!」
にこ「花陽にしかわからないんでしょ……」
花陽「そ、そういう意味じゃなくて……ただ、にこちゃんに話を聞いて欲しくて……」
にこ「はーっ……それで?この話、これ以上どう続くの?」
15:
花陽「あれは凛ちゃんと初めて会ったときのこと……」
にこ「さかのぼるわねぇ!?」
花陽「えーっと、えーっと……」
にこ「……?」
花陽「思い出せないよぉぉぉ……!うわあぁぁぁぁん!!」
にこ「……」
花陽「私の中からも、凛ちゃんの思い出はもう消えかかってるの?そんなの、やだよ、やだよぉ!」
ごくごく
花陽「うわぁぁん!!」
にこ「初めて会った時のことなんか、覚えてる方が怖いわよ……」
17:
花陽「……じゃあ!じゃあ!逆に聞くよ、にこちゃん……!」
にこ「?」
花陽「にこちゃんは、私と初めて会った時のこと、忘れちゃったの!?」
にこ「いや、まぁ、それは覚えてるけど……」
花陽「ほら、ほら、覚えてる!やっぱり、やっぱり……」
にこ「だから……それはたった5年くらい前のことでしょ?ワケが違うんじゃないの……」
花陽「違わないよぉ、そんなの、同じだよぉ……」
にこ「違うわよ」
花陽「同じだよぉ、同じだよぉ……同じだよぉ!うわぁぁん!!」
にこ「……」
19:
花陽「だからね、私が悪いの……私が凛ちゃんのことを忘れ初めてるから……だから、凛ちゃんも私のことを忘れ初めてて、それで、それで……」
にこ「……」
花陽「知らないうちに、私から距離を置き始めて、でも、凛ちゃんは、えーっと……そんなこと、全然、意識してなくて……」
にこ「……うん」
花陽「だから!!……凛ちゃんは、傷ついてなくて、私だけが、こんなに、その、勝手に、寂しいとか、そんなこと考えて」
にこ「……」
花陽「だから、凛ちゃんを責めることは、私には出来なくて、だけど、じゃあどうすればいいのかって、わかんなくて、聞いても、誰も教えてくれなくて……」
にこ「ああっ、もう!」
20:
花陽「……?それでね、それでね……」
にこ「ストップ」
花陽「?」
にこ「もういいわ……」
花陽「なんで、なんで?それでね、私がね……」
にこ「ストップ!ストップ!……もうこれ以上は……その……なんていうか……」
花陽「……?」
にこ「疲れてきたっていうか……」
花陽「ああっ!!」
にこ「なによ」
花陽「真姫ちゃんと同じこと言う……」グズグズ
にこ(誰でも言うわよ……)
21:
にこ「だからね、そんなに一人のことで悩んで、長く喋れるってことは……」
花陽「?」
にこ「花陽の中から凛が消えてない証拠でしょ……むしろ、凛のことしか喋れないの?って感じよ……」
花陽「凛ちゃんは消えてないの?」
にこ「そうよ」
花陽「私の中にいるの?」
にこ「いるいる」
花陽「ほんとうに?」
にこ「本当よ」
花陽「えへへ、えへへへ……そっかぁ、そっかぁ……」ニヤニヤ
にこ「……」
22:
花陽「あっ、でもでも!でも!だよ!にこちゃん!」
にこ「どうしたのよ」
花陽「もしそうだとするよね、そうだと!」
にこ「そうって?」
花陽「凛ちゃんは、私の中にいる、とするよね!」
にこ「うんうん」
花陽「だけど、現実の凛ちゃんは、やっぱり、私によそよそしいんだよぉぉ……何も解決してないよぉ!」
にこ「……」
花陽「結局、どうすればいいのぉ、教えてよぉ、教えてよぉ、にこちゃん……」
にこ「はぁ……」
23:
にこ「なんども言うけど、別によそよそしくないって……」
花陽「違うよ、違うよ!昔の凛ちゃんは……もっと……」
にこ「昔の凛と比べても仕方ないでしょ」
花陽「なんで、なんで……?だって……」
にこ「花陽。聞きなさい」
花陽「……?」
にこ「人は成長する、これはわかるわよね?成長しなきゃ、世の中は赤ちゃんばかりになるわ、いいわね?」
花陽「……うん」
24:
にこ「成長したら、いろんなことが変わるの、ものの扱い方、考え方、それに、人との接し方……ここまではいい?」
花陽「うん、うん」
にこ「だから、凛も成長して、花陽との接し方が変わってきただけ、それだけの話よ」
花陽「……でも、でも」
にこ「でもどうしたの?」
花陽「だって、凛ちゃん、全然違うんだもん、全然……」
にこ「ちょっとの間会ってなかったからよ」
花陽「わかってるけど、それでも、全然違うんだもん……」
25:
にこ「じーっと見てるうちは変化に気がつかないものよ、ほら、あるじゃない、じわじわ映像が変わっていって、『どこが変化したでしょう』ってクイズ……あれと同じよ」
花陽「……?」
にこ「ありゃ、伝わらなかった……?」
花陽「……やっぱり、やっぱりダメなんだぁ、うわぁぁぁん!!」グズグズ
にこ「……はぁ」
花陽「うっ、うっ、うっ……」
にこ「……」
27:
にこ(……せっかく相談に乗ってあげても、酔っぱらってるから話が通じないわ……)
花陽「うっ、うっ、うっ……」
にこ(……もうちょっと冷静になりなさいよ)
花陽「……」
にこ「花陽?」
花陽「……」
にこ「どうしたのよ」
花陽「……死なせてください」
にこ「……はぁ」
花陽「……死ぬんです、死んだほうがマシです……」
にこ「死んだら凛が悲しむわよ」
花陽「それでも、私の方に振り向いてくれるなら……うっ、うっ、う……」
にこ「……」
28:
5分後
花陽「うっ、ううっ、うっ、うっ」
にこ「……いつまで泣いてんのよ」
花陽「もう嫌です、何もかも嫌です、もう……うううう……」
にこ「明日、学校あるの?あんまり遅くなると……」
花陽「うっ、うっ……」
にこ(無さそうね、この様子だと……じゃあ……)
29:
花陽「……うう」
にこ「あぁ、もう」
花陽「……」
にこ「しょうがないわね、ほんとに……」
花陽「……」
にこ「友達一人でそこまで泣けるなんて……幸せ者だってこと、気づいてないのかしら」
花陽「わたしは、わたしは……うっ、うっ……」
にこ「はぁ……」
30:
………………………………
花陽「……」
ユサユサ
かーよちん……
花陽「……?」
凛「かーよちん」
花陽「……うぅん?」
凛「ほら、起きて、かよちん」
花陽「……?えっ、えっ?なんで?なんで凛ちゃん?えっ」
にこ「呼んだの、今さっき」
花陽「えっ、えっ?」
にこ「すぐ来れる?って聞いたら、来れるって言ったから……」
凛「もう、にこちゃん、かよちんをひとりじめして、ずるいよっ!」
にこ「はいはい、だから呼んだんでしょ」
31:
花陽「……」
凛「ビールひとつ!」
花陽「……凛ちゃん」
凛「?」
花陽「……ううん、あのね……」
凛「どうしたの?」
花陽「覚えてる?初めて会ったときのことって……」
凛「かよちんと凛が?」
花陽「うん」
凛「初めて会ったとき?」
花陽「うん」
凛「えーっとね……」
花陽「……」
凛「うーん……?」
花陽「あはは……やっぱり……」
凛「どっちのこと?」
花陽「え?」
32:
凛「凛が初めてかよちんを見たときのこと?……確か、公園で……それとも、初めて喋ったときのこと?あっ、これも公園で……」
花陽「……」
凛「どっちかなぁ?」
花陽「……ううん、どっちでもいいや」
凛「?」
花陽「ふふふ……」
凛「……あはははっ……」
花陽「あはははっ……」
にこ(完全に蚊帳の外と化してしまったわ……)
にこ(何がよそよそしいよ……しょうもな……)
33:
凛「かよちん、にこちゃんと何喋ってたの?」
花陽「え!……そ、それは……」
凛「教えてよ、なになに?」
花陽「……それは、ひみつだよ、凛ちゃん……」
凛「あーっ、ずるいよぉ」
花陽「ふふふ……」
にこ「凛のことよ」
花陽「!?」
凛「えっ、凛のこと!?」
にこ「最初から最後までずーーーっとね。うんざりしたわ……」
花陽「ちょ、ちょっ、にこちゃん、にこちゃん!!」
にこ「凛に会いたい、会いたい、会いたい、寂しい、凛に会えないなら死ぬって……」
凛「……」アゼン
花陽「……い、い、言い過ぎだよぉ!」
にこ「ふふふ……」
34:
花陽「……ぁぁぁ」
凛「かよちん!」
花陽「……?」
凛「凛も、いつでも会いたいよ!だからいつでも呼んでね、待ってるよ!」
花陽「……凛ちゃん」
凛「……えへへ」
花陽「凛ちゃぁん!」
にこ(はぁ……しょうもな……)
にこ(あの愚痴に付き合わされた私、なんの意味が……)
にこ(お酒、お酒……)
にこ(私だって、飲まなきゃやってられないわよ……)
35:

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