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にこ「えりぎつね」


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むかしむかし、村のはずれの山の中に、「えりぎつね」という小ぎつねが住んでいました。
えりは、ひとりぼっちの小ぎつねで、いつも村にやって来ては、いたずらばかりしていました。
穂乃果「あー! また、お店のおまんじゅうとられたー!」
えり「しめしめ。穂乃果の家のおまんじゅうはおいしいな?♪」
海未「畑のいもが掘り返されています! えりのしわざですね!」
えり「うふふ、海未、ガードが甘いわね?」
ことり「マケミちゃん人形にヒゲが書いてあるよぉ・・・・・・うぇーん」
えり「やっぱりいたずらは楽しいチカ♪」
いたずら好きのえりのいたずらに、村の人たちは、いつも手を焼いていました。
3: やわ銀になりましたが>>1です(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 00:38:36.57 ID:wIgj2fKJ.net
あるとき、えりが川に行くと、川の中に人がいて、なにかやっているのが見えました。
えり「あら、にこじゃない」
川の中にいたのは、村の百姓のにこでした。
にこは着物をまくしあげ、川の中で、魚をとる「はりきり」というあみを動かしています。
えり「魚でもとってるのかしら。隠れて見てるチカ」
にこは、はりきりあみの一番後ろの、ふくろになった部分を川から上げ、中身をびくの中へ入れました。
それから、びくを土手に置き、なにかを探しにか、川上の方へとかけていきました。
えり「にこ、行っちゃった。よーし、びくの中になにが入ってるのか、のぞいてみるチカ」ソロリソロリ
えり「なにかななにかな・・・・・・?」ノゾキ
4:
バシャーン
えり「わ、ひっくりかえっちゃった!」
ニュルニュル
えり「きゃっ、なにか巻きついてきた!? ・・・・・・うなぎだわ!」
えり「いやーん、にゅるにゅるして気持ち悪い・・・・・・」
タタタタ
にこ「こらー! そこのあんた、なにやってんのよ!!」
えり「まずいわ、にこがもどってきた! 逃げなきゃ!」
えり「ああん、うなぎがはなれてくれない・・・・・・このまま逃げるチカ!」
にこ「この、どろぼうぎつねー!!」
えりは、うなぎを体に巻きつけたまま、いっしょうけんめいに逃げました。
しばらく走って、後ろをふりかえってみましたが、にこはもう追いかけてはきませんでした。
6:
十日ほどたって、えりがいつものように村にやってくると、にこの家におおぜいの人があつまっていました。
えり「なにかしら? お祭りでもなさそうだし。みんな、暗い顔をして・・・・・・」
えり「もしかして・・・・・・お葬式かしら?」
えり「にこの家のだれかが、死んじゃったの・・・・・・?」
えりが、そっと家をのぞくと、だれかが横になっているふとんの前で、にこが元気なく座りこんでいました。
にこの両どなりには、小さな双子のにこの妹たちが、にこにしがみついて、わんわん泣いています。
にこは、必死に涙をこらえているようでしたが、体が小さくふるえていました。
えり「そうか・・・・・・死んじゃったのは、にこのお母さんね・・・・・・」
7:
凛「・・・・・・まったく、ひどい話だにゃー」
真姫「ほんとよ。にこちゃんが、かわいそう・・・・・・」
にこの家にあつまった友人たちがなにかを話していて、えりは聞き耳をたてました。
凛「にこちゃん、お母さんのために、うなぎをとりに行ったらしいにゃ」
真姫「でも、あのいたずら好きのえりぎつねが、うなぎをとっちゃったんでしょ?」
花陽「にこちゃんと、にこちゃんのお母さんの気持ちを思うと・・・・・・」グスッ
えり「・・・・・・・・・・・・」
8:
その夜、えりは住みかの穴の中で、考えました。
えり「病気でとこについていた、にこのお母さんは、うなぎを食べたいと言ったにちがいないわ」
えり「だけど、私がいたずらをして、うなぎをとっちゃったから、にこはお母さんに、うなぎを食べさせてあげられなかった」
えり「お母さんの、さいごの望みをかなえてあげられなかったにこは・・・・・・やっぱり、悲しくてくやしい気持ちなのかな」
えり「あんないたずら・・・・・・しなきゃ、よかった」
えりは、ごろり、と体を丸くして、思いました。
えり「そういえば、おばあさまや、ありさも、私が「あわ」の粉をねって作ったペリメニが、好きだったな」
えり「でも、にんげんの狩りで、もうおばあさまも、ありさも・・・・・・」
えり「にんげんなんて、大きらいだけど・・・・・・でも・・・・・・」
えり「今のにこも・・・・・・私と、同じ気持ちなのかな・・・・・・」
9:
ある日、にこが、家の井戸の前で、麦をといでいました。
ここあ「お姉ちゃん、ごはんー」
こころ「おなかすいた・・・・・・」
にこ「待っててね。今、用意するからね」
えり「お母さんがいなくなって・・・・・・にこは、ひとりで、小さな妹たちのめんどうを見ないといけないのね」
物置のかげから見ていたえりは、そう思いました。
そのとき、外の通りから、おにぎりを売る声が聞こえてきます。
花陽「おいしいおにぎりですよ?。とってもおいしいですよ?、ひとついかがですか?」
10:
凛「かよちーん! 凛におにぎり、いっこくださいだにゃー!」
花陽「凛ちゃん! いいよ、具はなにがいい?」
花陽は、おにぎりが入ったかごを道ばたに置いて、大きなおにぎりを持って凛のうちの中へ入っていきました。
えりは、そのすきに、かごの中からおにぎりを2、3こつかみ出して、もと来たほうへかけだしました。
そして、にこの家のうら口から、家の中へおにぎりを投げこんで、住みかに向かってかけもどりました。
えり「うなぎのつぐないに、まずひとつ、いいことができたわね」
えり「あのおにぎりで、にこと妹たちが、少しでも喜んでくれるといいけれど」
えり「たまには、いいことするのも、悪くないわね」
11:
次の日には、えりは、山でくりをどっさり拾って、それをかかえて、にこの家に行きました。
うら口からのぞいてみると、にことふたりの妹は、茶わんを持ってお昼ご飯を食べているところです。
えり「にこ、あのおにぎり、食べてくれたかしら」
にこ「・・・・・・それにしても、いったいだれが、おにぎりをうちへほうりこんでいったのかしら」
こころ「わるいいたずらをする人がいるんですね」
ここあ「お姉ちゃん、うたがわれちゃって、かわいそう・・・・・・」
にこ「そうね。どろぼうと思われて、あやうく花陽と仲がわるくなっちゃいそうだったわ」
にこ「希がちゅうさいしてくれたおかげで、なんとかなったけど・・・・・・」
12:
えり「・・・・・・しまった」
えり「にこ、どろぼうとまちがわれちゃったのね。わるいことをしたわ」
えりはそう思いながら、そっと物置の方へ回って、その入り口に、くりを置いて帰りました。
次の日も、その次の日も、えりは、くりを拾っては、にこの家へ持っていきました。
ときには、くりばかりでなく、大切にとっておいた、大こうぶつのチョコレートも持っていきました。
14:
ある月のきれいな夜、えりは、ぶらぶら遊びに出かけました。
えり「月もお星さまも、とってもきれいね。こんな夜は、なんだか歌いだしたくなっちゃうわね」
そんな、いい気持ちでくるくるまわっていると、なにやら細い道の向こうから、だれかが来るようです。
話し声が聞こえてきて、えりは、道のかた側にかくれました。
話し声はだんだん近くなり、見ると、それはにこと、にこの友だちの希という占い師でした。
16:
にこ「そうそう。ねえ、希」
希「どうしたん? にこっち」
にこ「このごろ、にこのまわりで、とてもふしぎなことがあるのよ」
希「なにが?」
にこ「ママが亡くなってから、だれだか知らないけど、くりやチョコレートなんかを、毎日、毎日、くれるのよ」
希「ふうん、だれが?」
にこ「それがわかれば苦労しないわよ。にこの知らないうちに置いていくんだもの」
希「ほんまに?」
にこ「ほんとだって。うそだと思うなら、あした見に来てみなさいよ。そのチョコを見せてあげるわよ」
希「へえ、ふしぎなこともあるもんやね」
えり「なんだか、私のくりやチョコレートのことを話してるみたいね」
えり「にこ、うれしがってくれてるのかな?」ワクワク
えりは、ふたりの後を、そっとついていきました。
17:
しばらく歩いたあと、希が言い出しました。
希「にこっち、ウチ、思うんやけど・・・・・・さっきの話は、ひょっとして神様のしわざやない?」
にこ「えっ? 神様?」
希「ウチ、考えてたんやけど、きっとそれは、人間やない。きっと神様なんよ」
希「神様が、にこっちのお母さんが亡くなったのを、あわれに思って、いろんなものをめぐんでくださるんよ」
希「なんだか、すごくスピリチュアルやね」
にこ「そうなのかしら・・・・・・」
希「きっとそうやん。だから、毎日、神様にお礼を言うんよ、にこっち」
にこ「そうしてみるわ」
19:
えり「えー、なによそれ・・・・・・なんだかつまらないわね」
えりは、ちょっとがっかりして、思いました。
えり「私がくりやチョコを持っていってあげてるのに、神様にお礼を言われたんじゃ、なんだかがっかり」
えり「そんなの、みとめられないわあ」
20:
その明くる日、えりはひさしぶりに、あわの粉をねって、ペリメニを作りました。
えり「神様は、ペリメニなんて作らないだろうからね。今日は、これを持っていってあげましょう」
えり「にこ、よろこんでくれるかしら・・・・・・?」ワクワク
えりは、いっぱいのペリメニと、チョコやくりを持って、にこの家に出かけました。
にこは、物置でないしょくのボールペンを作っていました。
それで、えりは、家のうら口から、こっそり中へ入りました。
21:
そのとき、にこは、ふと顔を上げました。
と、きつねが、うちの中へ入ったではありませんか。
にこ「あいつ・・・・・・! このあいだ、うなぎをぬすんだえりぎつねが、またいたずらをしに来たのね・・・・・・!」
にこ「ようし、見てなさい・・・・・・!」
にこは立ち上がって、なやにかけてある火なわじゅうを取って、火薬をつめました。
22:
えり「?♪」
えり「こんどこそ、よろこんでくれるといいな、にこ」
にこ「ばれないように、そっと近づいて・・・・・・」
にこ「・・・・・・今よ!」
ドンッ
23:
にこは、戸口を出ようとするえりを、ドンと、うちました。
えりは、ばたりとたおれました。
にこは、かけよってきました。
にこ「よーし! とうとう、あのいたずらぎつねを・・・・・・あら?」
と、土間に、ペリメニがかためて置いてあるのが目につきました。
ほかにも、チョコや、くりがたくさん置いてあります。
にこ「え・・・・・・これ、なんで・・・・・・まさか」
にこは、たおれているえりに、目を落としました。
24:
にこ「えり、あんただったのね。いつも、チョコをくれたのは・・・・・・」
えりは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
にこは、火なわじゅうをばたりと、取り落としました。
青いけむりが、まだ、つつ口から細く出ていました。
25:

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