【やれやれ】村上春樹風プロデューサー【モバマス】back

【やれやれ】村上春樹風プロデューサー【モバマス】


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1:
千川ちひろが持って来たカフェ・オ・レを一口啜った。
今日もアイドルの相手をしなければならない。
思春期の女の子たちの嬌声を聞きながら、レッスン風景を眺める。
大人からすれば他愛もないが、少女たちからすれば重大な悩みの相手をする。
真剣な面持ちで少女たちは悩みを僕に打ち明ける。
こうした僕の仕事がまた始まろうとしている。
やれやれ、と僕は思った。
「プロデューサーさん。一緒にお茶しませんか?」
島村が部屋に入って来て言った。
彼女の長いくせ毛は今日もゆるやかに波打っていた。
良く晴れた日の砂浜の波のように。
2:
僕はアイドルたちが集まる部屋に行った。
そこでは、三村を中心に茶会の準備が進められている。
ふくよかな丸みを帯びたティーポットは、持ち主の三村にそっくりだと僕は思った。
甘い菓子のような微笑みを浮かべながら、三村は紅茶を淹れる。
少し渋みを感じるダージリンの香りが、僕を刺激した。
「今日は美味しい紅茶を持って来たんですよ。
それと、パンケーキを作ったので持ってきました」
三村は嬉しそうにタッパウェアからパンケーキを取り出した。
何も掛かっていないパンケーキを。
パンケーキをそのまま食べるつもりか!
やれやれ。
3:
「三村さん。パンケーキの美味しい食べ方を御存じないのですか?」
僕は呆れながら言った。
「美味しい食べ方ですか? このままじゃいけないのですか?」
三村は首をかしげた。
「そのままでも美味しいかもしれない。でも、もっと美味しい食べ方があります」
そう言って僕は立ち上がった。
そして、部屋の隅に置かれた冷蔵庫からコカ・コーラの瓶を一本取り出した。
「まあ、見ていてください」
呆然としている女の子たちを無視して、僕はパンケーキにコカ・コーラを掛けた。
「プロデューサー! 何をしているんですか!」
島村が驚いて素っ頓狂な声を上げた。
僕は島村に構わず瓶入りコーラを一本まるごと注ぎ込んだ。
4:
コーラを吸ったパンケーキは、
海から上げたばかりの軟体動物のようにふやけた。
そんなパンケーキを眺めた三村は、今にも泣きそうになった。
「そんな……せっかく作って来たのに……」
傍にいた三村の友人の緒方が、三村の肩に手を当てた。
「プロデューサー! あんまりですよ!」
島村は怒った様子で僕を非難した。
そんな様子を眺めながら、緒方が弱弱しい声で僕に訊ねた。
「これ……美味しいんですか……」
「美味しいかもしれないし、美味しくないかもしれない。
味の好みは人それぞれだからね」
僕は当り前の事をあえて言った。
5:
「私、プロデューサーさんが、こんなことする人だなんて思っていませんでした!」
眉を吊り上げた島村が僕に抗議した。
やれやれ、コーラを掛けた位でそこまで怒らなくてもいいと思った。
「とりあえず食べてみよう。僕への非難はそれからでも遅くないだろう」
島村、緒方、三村は、フォークでコーラ・パンケーキを切り取った。
口に含んだ少女たちは皆、
未知との遭遇を果たしたような複雑な顔をした。
「意外と食べられなくはないかも」
怒りが収まった島村が言った。
怒ってはいないが、決して嬉しそうな顔ではなかった。
「こういうのも有りなんでしょうか……」
緒方が僕に訊いてきた。
「あるいは」
僕はやる気のない返事を返した。
「すごく甘いです」
三村が感想を言った。
「これは糖分補給に最適な食べ物です。三村さん。甘いのはお好きでしょう」
僕は疑問符のない疑問を発した。
「ええ……まぁ……」
三村は困惑した様子で僕を眺めた。
14:
「おっはよー!」
ハウリングを起こしたスピーカーみたいな甲高い声が大音量で響いて、
本田が部屋に入って来た。
「え? みんな辛気臭い感じでどうしたの?」
ル・コルビジェがデザインした黒革張りのカッシーナ製ソファが部屋にあり、
モダニズム様式のそのソファに荷物を置きながら、
本田はテーブルを囲む皆に訊いた。
「プロデューサーさんが、かな子ちゃんが作ってきたパンケーキにコーラを掛けたんです」
「なにそれ!? コーラ?」
本田は呆気に取られてきょとんとした。
パンケーキとコーラという組合せは、
本田にとって予期せぬ物だったようだ。
好天の中を進む船が不意に座礁したような意表だったらしい。
「未央ちゃんも食べてみてください」
三村が申し訳なさそうな表情を浮かべた。
その顔からは、トラブルの中に本田を巻き込む罪悪感が見て取れた。
三村はコーラ・パンケーキの味を本田にも知って欲しかった。
それが良い事だとは思わなかったが、三村はあえて食べさせようとした。
プロデューサーの所業を知る者が増えることで、
自分達が被った被害を一人でも多くの人に共有して欲しいからだ。
15:
フォークを取った本田は、恐る恐るパンケーキに近付いた。
震えるフォークが徐々に近づく様子は、本田の躊躇いを表していた。
僕から見た本田は、初めて敵と対峙した兵士が銃剣を敵に向けている様に見えた。
「これ、本当に食べられるのか??」
本田は戸惑いながら言った。
「私たちは皆食べました!」
島村が強い口調で言った。
明らかに本田にコーラ・パンケーキを食べさせることを急かしている。
「未央ちゃん! 一気に!」
三村が本田をはやし立てた。
本田は周りに乗せられてコーラ・パンケーキを口内に放り込んだ。
口を閉じた本田の目は、コンパスで描いたように丸くなった。
それから、急降下するジェットコースターみたいな勢いで、口内の物を飲み込んだ。
「うわー! なんかビミョー! まずくもないけど美味しくもない!」
島村は本田を見て肯いた。
「かな子ちゃんのパンケーキをプロデューサーさんがそうしたんですよ」
島村は、きのこが生えてきそうなくらい湿っぽい眼で僕を見た。
「ひどいことするな?」
口直しのダージリンを啜りながら、本田は僕を見つめた。
その目は失態を犯した道化師でも見るかのような目だった。
18:
「プロデューサーさん。かな子ちゃんに謝りましょう」
島村は言った。
とてもべたついた声色だった。
まるでコーラに浸したパンケーキの生地のように。
「プロデューサーさ、こんなのウケると思ったわけ?」
本田は困惑しかない笑顔を向けて言った。
レシピを披露して空振りした僕に呆れ果てた様子だった。
緒方は理解できないクリーチャーを見る目で僕を見つめた。
僕は、友達が持って来た手作りパンケーキを台無しにした怪人なのだろう。
三村は困惑の表情を僕に向け続けた。
眉を下げ、口を固く結び、頬を膨らませ、僕へ無言のクレームを送り続けた。
少女たちは僕に心底呆れている様子で、
僕は絶海に漂流するいかだに乗っている気分になった。
「す、す、すまなかった」
圧力に耐え切れず僕は謝った。
沸騰した鍋から煮汁が溢れるように、僕は謝罪した。
それでも少女たちは沈黙を保って雄弁に抗議の意思を伝えた。
19:
やれやれ。
僕の評判はリーマンショック時の株価のように下がってしまったようだ。
僕がパンケーキをコーラの沼に沈めたことで、
女の子たちの茶会はすっかり冷めてしまった。
その冷たさと連動するように、
僕に向けられる彼女たちの目線も冷たくなって行く様に思えた。
そして、僕は居場所をすっかり失ってしまったようだ。
何としてでもこの場から離れたいと思った。
「そうだ。仕事の続きがあるから、そろそろ自室に戻るよ」
僕はワゴンセールの靴下みたいに安っぽい嘘をついた。
戦略的撤退の為にはチープな嘘も必要だと自分に言い聞かせた。
足早に部屋を出てドアを閉めた。
ドアを閉めた後、何気なく元居た部屋を振り返った。
すると、ドアの向こうから黄色い声が聞こえて来たので、
僕は自分の事を言われている気がして立ち止まった。
悪趣味だと思ったが、好奇心には勝てなかったので、
僕はドアに耳を当てて女の子たちの会話を盗み聴いた。
21:
「かな子ちゃん。ごめんね。私がプロデューサーさんを連れてきたせいだよね」
三村を慰めるように、島村が言った。
「ううん。卯月ちゃんは悪くないよ」
島村をかばうように、三村が言った。
「まさかコーラ掛けるとは思わないもんね。普通は予想外じゃない?」
ドア越しでも良く聞こえる大きな声で、本田が言った。
「もうプロデューサーさんをティータイムに誘うのは止めにします」
呆れた口調で、島村が言った。
その一言は僕の心を大きく抉った。
巨大重機のバケット・ホイール・エクスカベーターみたいに。
「そうだよね。いきなりパンケーキにコーラなんか掛ける人だもん。最低だよ」
さも当たり前の様に、本田が言った。
声の大きさも相まってか、ドアを貫通した本田の声が僕の鼓膜に響いた。
その一言は、物理的にも心理的にも、徹甲弾のごとく僕に突き刺さった。
鼓膜から入った声が認識へと溶け込んで行き、僕の心を傷つけた。
鎧を貫いた後の銃弾が体の中でうずく様な気分になった。
22:
それ以上はつらくて聞いていられなかった。
ドアから耳を離した僕は、自分の部屋へ戻ることにした。
ノモンハンの荒野を歩く敗残兵の様に失意に満ちた重い足取りで、
僕はうな垂れながら孤独に廊下を歩いて行った。
そうしてドアの前までたどり着くと、
僕の部屋の前に、銀髪で猫目の少女が立っていた。
「プロデューサー。待っていました」
「アナスタシアさん」
アナスタシアは僕の帰りを待っていたと言った。
「何の用でしょうか?」
「ダー……はい。新曲について相談に来ました」
アナスタシアは言った。
彼女は、ロシア語と日本語を混ぜた独特の喋り方をする。
「お入りください」
僕はアナスタシアと一緒に部屋の中へ入って行った。
23:
「それで、どういった相談でしょうか?」
「はい。新曲のイメージについてです」
「イメージ」
「コースマス……宇宙をイメージした曲です」
「そういえば、今朝データを受け取りました」
「まだ聞いていませんか?」
「今すぐ聞きましょう」
アナスタシアを見ながら、僕は言った。
僕は、パソコンのMP3プレイヤーを起動し、
千川から今朝預かった新曲を流した。
大河のようなリズムを持った曲で、何か神秘的な感じがした。
曲を聞き終わった頃、一瞬の放心状態が訪れた。
その後も美しい旋律が僕の心に固着した。
船底に固くこびりついた牡蠣のように。
「プロデューサー。どうですか?」
アナスタシアが言った。
「うん。良い曲だと思います」
僕は肯いた。
24:
「この曲、どういうイメージで歌いますか?」
アナスタシアが僕に訊ねた。
「エカテリーナ宮殿のようにエレガントに」
「エレガント」
「ツンドラみたいな涼しい広がりも大事でしょう」
「広がり……宇宙みたいですか?」
「宇宙の事はよく知りませんね」
「それはとても大切な事ですね?」
「旋律が生み出すケミストリーを大事にするわけです。
 風の中でマッチの火を消さないように」
「ケミストリー?」
「曲が生み出す場の力です。それは突如大きく拡がるのです」
「ビッグバンみたいなものですか?」
「ビッグバンの事もよく知りません」
「えーと……広くてエレガントでしたっけ?」
「広範囲に輝く感じです。銀河みたいに」
「ガラクーチカ……銀河ですか。何か分かった気がします」
そう言ったアナスタシアは、満足そうな顔で一礼してから部屋を去った。
25:
アナスタシアが去った後、
部屋に残った僕は書類整理に勤しんだ。
ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」を掛けながら、
ピアニストのような手つきでキーボードを叩いた。
こうしている時間が何より幸せだ、と僕は思った。
「失礼します」
そう言いながら、渋谷が僕の部屋に入って来た。
「渋谷さん」
「プロデューサー。聞きたいことがあるんだけど」
やれやれ。
今日は相談が多い日だ、と僕は思った。
「この仕事が終わったら早めに夕食を食べる所です。
 もし良かったら、食事をしながらお話しませんか?」
「いいよ」
少し嬉しそうな顔をしながら、渋谷は言った。
「プロダクション併設のカフェでパスタでもどうですか?」
僕の問いに対し、渋谷は肯いた。
30:
プロダクションの施設内にあるカフェに入り、
僕と渋谷は向かい合う形で席を取った。
渋谷は、緑色で薄手のサマーセーターを着ている。
それがぴったりと体に張り付いているので、
上に突き出た美しい形の乳房が、服の上からでもよく分かった。
渋谷の顔は、緑がかった色をした大きな目が特徴的で、
真っ直ぐな鼻筋とともに大人びた印象を醸し出している。
「プロデューサーは何を食べるの?」
真っ直ぐ伸びた長い黒髪を片手で撫でながら、渋谷が言った。
「ハムのパスタがいいですね」
「それ好きなの?」
「大好物です。家でもよくパスタを茹でていますから」
「へえ、プロデューサーって料理するんだ」
意外そうに渋谷が言った。
「料理は得意ですよ。ハムのパスタは特に美味しい」
「そうなんだ。それじゃあ、私もそれにするよ」
二人ともメニューが決まったので、店員に注文を出した。
31:
注文した料理を待っている最中、渋谷が僕に訊ねた。
「プロデューサー。私、和風な感じを学びたいんだ」
「和風」
「そう。今度のライブは和風がテーマだから」
渋谷は、そう言ってから何冊かの本を鞄から取り出した。
「蘭子や文香に相談したら、日本文学を読んでみると良いって言われた」
渋谷が言った。そして、机の上に本を並べ始めた。
「川端康成、三島由紀夫あたりが有名かと思って買ってみた」
川端に三島だって!
どうして僕の前にそんなモグラの糞みたいな本を並べるのだ。
やれやれ、と僕は思った。
「川端も三島もおすすめ出来ませんね」
「どうして」
渋谷は疑問符のない疑問を発した。
「文章が下手だし、まわりくどいし、鬱陶しいだけですよ」
「そうなんだ……」
残念そうな顔をして、渋谷が言った。
32:
「日本文学なら漱石や谷崎のほうがおすすめですよ」
僕は言った。
「それってプロデューサーの好みじゃない?」
「あるいは」
僕は、回答に隠された真意を否定はしなかった。
「まあ、いいけど。どうせなら全部読んでみるよ」
「それも良いかもしれません」
「私は完璧なライブにしたいから、やれることは全部やる」
「そんなに意気込む必要はありませんよ」
「そうかな?」
「完璧なライブなど存在しません。完璧な絶望が存在しない様に」
「なんだか……よく分からないな」
困惑した顔で、渋谷は言った。
そうこう話している内に、注文したハムのパスタがやって来た。
テーブルに置かれたそれを、僕と渋谷は無言で食べた。
33:
食事が終わって会計を済ませてから、僕と渋谷は店を後にした。
「今日は相談に乗ってくれて助かったよ。ありがとう」
「お役にたてれば幸いです」
「じゃあ、私は先に帰る」
そう言って渋谷は帰って行った。
去って行く渋谷を眺めていたら、
突如ケータイが鳴った。
メールが来たようだ。
やれやれ。誰からのメールだ。
差出人を見ると、高垣楓の名前が表示されている。
「高垣さん」
僕はそのメールを見た。
「今夜、いつものバーで一緒に飲みませんか?」
メールにはそう書いてあった。
僕は「付き合います」とメールを返した。
36:
仕事を終えた僕は、高垣がいるバーへ入って行った。
M.J.Qのレコードが流れる薄暗い店内は、
人が多く賑やかだが、落ち着いた雰囲気だと思えた。
こういう店もジャズも高垣によく似合っている、
と僕は思った。
「高垣さん」
僕は、先に席に着いていた高垣に挨拶した。
高垣は、コム・デ・ギャルソンのチュニックを着て、
椅子の脇にコーチのハンドバッグを置いていた。
「プロデューサーさん」
高垣に挨拶された僕は、彼女の対面に腰かけた。
僕と彼女は、赤いベルベット貼りの座椅子に座って向かい合う。
よく磨かれて光沢を放つチーク材のテーブルの上には、
アペタイザーのアヒージョが置かれていた。
「今日は飲みながらゆっくり語り合いましょう」
僕は言った。
「そうですね。まずは何か頼みましょう」
高垣が言った。
37:
「それじゃあ……カティサークをボトルで」
「ウイスキーですか」
高垣が僕に訊いた。
「ウイスキーは嫌いですか?」
「いえ。たまには日本酒以外も良いですね」
高垣は笑顔で答えた。
僕と高垣は今日の出来事を話し合った。
「まあ、卯月ちゃん達に嫌われてしまったんですね」
「そうです。僕がパンケーキにコーラを掛けたせいで」
「コーラを掛けてこーらって怒られたんですね」
高垣は駄洒落を言った。
ノルウェイの森に吹きすさぶ寒風の様な駄洒落だが、
女の子たちに付けられた僕の心の傷には心地が良かった。
「僕は孤独ですよ」
「まあ、そんなことないですよ。私はプロデューサーさん好きですから」
「女の子たちを傷つけてしまった。プロデューサー失格です」
「傷」
「そして僕も傷ついてしまった」
38:
僕は、かなり情けない顔をしてしまったかもしれない。
高垣は、そんな僕を気の毒そうに眺めていた。
「そんなに気にすることじゃないですよ」
「いつもだったら、もっと気楽に飲みに来るのですけどね」
「一人でも飲みに行かれるのですか?」
「チーズやナッツを摘まみたい時に、よく行きますよ」
「こういうお店にも慣れているんですね」
「そうかもしれません」
世間話をしていると、カティサークのボトルが運ばれてきた。
僕は、高垣と自分のグラスにカティサークを注いだ。
もちろん、オン・ザ・ロックで飲むつもりだ。
「乾杯」
はにかみながら高垣がグラスを掲げた。
「乾杯」
高垣に応えて、僕もグラスを掲げた。
「……あの、卯月ちゃん達は、謝ったら許してくれそうですか?」
「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません」
39:
「ちゃんと謝れば大丈夫だと思いますよ」
「そうだと良いのですが……」
僕はとにかく自信を失くしていた。
「マカロンでも差し入れしたら、見直してくれるかもしれませんね」
「あるいは」
「かな子ちゃん達、マカロンが大好物ですから」
「それで傷が癒されれば良いですね」
喪失感がマカロンで埋まるなら、
それは簡単な事だ、と僕は思った。
「とにかくやってみる事ですね」
僕は言った。
「そうです。プロデューサーさん。前向きに行きましょう」
高垣が僕を励ました。
「明日、マカロンを持って謝りに行きます」
僕は言った。
「それがいいでしょうね」
高垣が微笑んだ。
40:
酔いが回ってきた頃、高垣が突然訊ねた。
「プロデューサーさん。今、欲しい物があるんです」
「何でしょうか?」
「拳銃」
何の抵抗もなさそうに、高垣が言った。
「冗談でしょう?」
狼狽しながら、僕は言った。
「もちろん、本物じゃありませんよ。玩具のです」
「なんだ……」
僕は一安心した。
「今度、アクション物の劇に出るので、役作りの為に欲しいのです」
「練習熱心なのですね」
「私、モデルガンの事はよく知りません。男の人なら詳しいかなって」
「僕はガンマニアって程じゃありませんが……」
「何かお手頃な価格のモデルガンはありませんか?」
「そうですね……ヘッケラー&コッホのピストルでも買って来ます」
41:
「ありがとうございます」
嬉しそうに高垣が言った。
「ただ、大事なことがあります」
勿体ぶった様子で、僕は言った。
「何でしょう?」
「物語の中に拳銃が出てきたら、それは必ず発射されなければならない」
「そうなんですか?」
「チェーホフの言葉です」
「うーん、それじゃ、買ったら撃たないといけませんね」
「高垣さんは物語の人物じゃないですから、別に良いのでは?」
「それもそうですね」
「何となく言ってみたかっただけです」
微笑みながら、僕は高垣に言った。
「プロデューサーさんって本当に親切ですよね」
高垣が言った。
「プロデューサーとして当然の仕事をしているだけですよ」
「その謙虚さが貴方のレゾンデートルですね」
42:
「そこまで言われると照れますね」
僕は言った。
「あなたの良さ、きっと卯月ちゃん達も分かってくれます」
高垣が言った。
「高垣さんに言われると自信が湧いてきます」
「うふふ、ありがとうございます」
僕は高垣との酒席を楽しんだ。
気が付けば、終電間際まで飲んでいた。
やれやれ、今日もあまり眠れなさそうだ。
43:
翌日、僕は昼休みにマカロンを買った。
それを島村達に持って行った。
「プロデューサーさん……」
島村は怪訝そうな顔で僕を見つめた。
「あの、昨日のお詫びにお持ちしました」
僕は、両手で持ってマカロンを前に差し出した。
「それ大好物です!」
大喜びしながら、三村が言った。
「昨日はすいませんでした」
僕は謝った。
「プロデューサーさん……ありがとうございます……」
緒方が言った。
「また一緒にお茶会しましょうね」
満面の笑みを浮かべ、島村が言った。
4

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