【エヴァss】どこまでも続く空の下でback

【エヴァss】どこまでも続く空の下で


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1:
まいったなぁ…人が多いなぁ……
サマーシーズン真っ盛りの空港。
家族連れの人々で賑わっていた。
こんなに人が多いんじゃどこがどこだかわかんないや…
えっと…どこに行けばいいんだっけ
そこへ大勢の人々がなだれ込んでくる。
「えっ…ちょっ……」
2:
人混みにまきこまれ、右も左もわからなくなり、混乱する
「ちょっと!どいて下さい!通して下さい!!」
半ばパニックになり無理矢理出ようとする。右手に下げていたハンドバックを落ちてしまった。
「ああ!」
3:
中身が飛び出してそこらじゅうにバラバラになる。
あぁ、もう最悪……早く拾わなきゃ…
そう思っていると誰かが中身を拾ってくれている。
いつの間にか人混みは少なくなっていた。
「え…あっ……」
4:
目線を上げてその人物の顔を見る。
「あ、ありがとうござ……います」
その顔を見てハッとする。知ってる顔だ。薄く無精ヒゲをアゴにはやし、センスのないTシャツを着ている。いかにも人と話すのが苦手って感じがする。
「ああ。いいよ別に」
5:
「ゲンドウ君……」
「え?」
少しの間沈黙が訪れた。
「な、なんで俺の名前を…?」
びっくりした様子でぎこちなく尋ねてきた。毎日、大学で会ってたっていうのに……ま、無理もないか。髪もまとめてるし。なによりメガネを掛けてるから。
「あ!いたいた!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。憎たらしい憎たらしいあの声。
「よかったぁ。間に合って」
6:
「……見送りはいいって言ったじゃないですか」
朝急いで出てきたのか寝ぐせが治ってない。化粧もガサツ。もう、何もかも憎たらしい。
「だってー何年も会えないかもしれないじゃない」
「手紙くらい出しますよ……」
こんな所まで見送りに来て……逆に辛いのはこっちだってわかってるくせに……
「じゃあ、もう飛行機の時間なんで行きますね」
「あ、待って!これ、渡したくて」
「えっ?」
7:
ユイ先輩の手には髪留めがあった。かわいい猫の髪留め。
「かわいいでしょ?この髪留め、私が高校の時に使ってたものなの。あなたにあげる」
「…いいんですか?」
「うん。私はもう使わないし」
「ありがとうございます…」
「ふふ…どういたしまして。大事にしてね」
「はい……」
8:
何かこみ上げてきそうな想いをぐっと飲み込み、耐える。
ゲンドウ君はまだ少し状況がわかっていないらしくポカーンとしている。そんなゲンドウ君を指差して言う。
「ゲンドウ君!」
「あっ……えっ?」
「もし、ユイ先輩を悲しませるようなことがあったら…」
「絶対許さないからにゃ!!」
9:
……………噛んだ。
「プッ……」
「アハハハハハハハ!!」
「先輩!!」
「だって、だって……『にゃ!!』って猫みたい……アハハハハ!!」
「ふっ……ふふふ…ハハハハハ」
「ゲンドウ君まで!!」
10:
ったく……あんなに笑うことないのに……
でも……あんなに笑ったユイ先輩見たの初めてかも。ゲンドウ君も。
窓の外を見る。必死に手を振る憎たらしい顔と、仏頂面がならんでる。
「………ほんと、憎たらしい……」
飛行機が飛び立った。もう2人は見えない。
11:
『ユイ先輩、ゲンドウ君、2人の幸せを祈ってますよ』
『ありがとう、真希波 マリさん……あなたも幸せにね』
『まぁ、その、なんだ……元気でな…』
『それじゃ……』
『さよならにゃ!!』
『ブッ!!』
『ちょっ…それは卑怯でしょっ…アハハハハハハ!!』
『だから笑いすぎですって!』
12:
「…………行っちゃった」
「あぁ………」
「あの娘…大丈夫かな」
「きっと大丈夫だろう…ユイに励まされて元気が出ない人間はいないからな」
「何言ってんのよ…フフ……」
「………でも、そうよね。うん、きっと大丈夫」
13:
「……幸せは…歩いて来ない」
「だから歩いて行くんだね……」
「一日一歩、三日で三歩……」
「三歩進んで二歩下がる……」
「人生は……ワンツーパンチ……」
「さよなら、ユイさん……ゲンドウ君……」
終劇
1

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