八幡「雪の下の思い出」back

八幡「雪の下の思い出」


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2:
【結婚披露宴場】
司会「それでは新郎新婦の入場です」
パチパチパチパチ
小町「結衣さーん!めちゃくちゃ似合ってて綺麗ですよ!」
姫菜「結衣綺麗だねぇ。それにしても旦那さんは強気攻めって感じ」ジュルリ
優美子「ちょっ、海老名。ここでそんなこと考えんなし」
隼人「結衣もようやく結婚だな」
戸部「っべー!結婚組の仲間入りっしょ!」
材木座「ぽむぅ。確かに美しい…………だがしかーし!我の嫁には劣るな」
彩加「でも由比ヶ……じゃもうないのか。綺麗だよ」
いろは「いやー、結婚組はテンション高いですね。ね、先輩たち?」
八幡「…そうだな」
雪乃「…そうね」
静「ぐぬぬぬ」
3:
八幡(今日は由比ヶ浜の結婚披露宴だ。大学のとき付き合った先輩と結婚したらしい)
八幡(28歳にもなると結婚していく人が周りに増えていくな)
八幡(高校卒業のとき由比ヶ浜には告られ振ってしまったが、ちゃんと新しい恋愛ができていてよかったと思う)
4:
八幡「よ、久しぶりだな」
雪乃「おめでとうございます。綺麗よ。とても似合っているわ」
結衣「あ、ヒッキーにゆきのん!来てくれてありがとね」
雪乃「…………親友の結婚なのだし来ない訳ないでしょう」
結衣「ゆ、ゆきのん」
八幡「ま、おめでとさん」
結衣「ありがと。後悔してる?」
八幡「いやしてない。大丈夫だ」
結衣「それはそれでなんかムカつく!ヒッキーもゆきのんと早くね」
八幡「…………は?」
結衣「え?だから
優美子「結衣ー!こっちにも構えし」
結衣「あ、うん!ならまた後でね、ゆきのん、ヒッキー!」
5:
×××
八幡「…………ふぅ」
雪乃「あなたの正装はいつ見ても違和感があるわね」
八幡「そういうお前は似合いすぎだっつの」
雪乃「葉山くんと三浦さん、戸部くんと海老名さん、小町さんと川崎さんの弟さん」
八幡「材木座は声優と、戸塚は仕事先の人と結婚していったしな」
雪乃「周りの人が先に結婚して、取り残させる気分はどうかしら?」
八幡「まぁ、めでたいよな。それに取り残させることに関しては、今までもそうだったから特になんとも思わんな」
八幡「お前はどうなんだよ?今まで人の前を歩いてたみたいもんだろ」
雪乃「そうね…………私もあなたと同じようなものかしら」
八幡「そんなもんだよな」
6:
いろは「先輩たちなにのんびりしてるんですか?盛り上がりましょうよ」
八幡「柄じゃねーんだよ」
いろは「そうですかー。雪ノ下先輩は?」
雪乃「わたしも柄ではないだしょうね」
いろは「ふーん……。ところで先輩たちはいつ結婚するんですか?」
八幡「……は?」
雪乃「……え?」
7:
いろは「え?その反応何ですか?」
八幡「いや…………え?お前何言ってんの?」
いろは「先輩と雪ノ下先輩はいつ結婚するのかなー、って言ってるんですよ」
雪乃「……ちょっと一色さん?私が比企谷くんと結婚?何でそうなるのかしら?」
いろは「だってお二人付き合ってるじゃないですか」
八幡「……ちょっと待て。なんだその話?俺と雪ノ下が付き合ってる?」
いろは「…………えぇっ!?付き合ってないんですか!?」
雪乃「何故そのような話になっているのかしら…………」
いろは「みんな付き合ってると思ってましたよ」
いろは「そうか、付き合ってないのか」ボソボソ
八幡「どうした?」
いろは「い、いえっ!わたしはちょっと結衣先輩たちのところ行ってきます!」タタタッ
8:
八幡(俺が雪ノ下と?)
雪乃「私が比企谷くんと?)
八幡「…………」
雪乃「…………」
八幡「なぁ」
雪乃「ねぇ」
八幡「…………」
雪乃「…………」
八幡「先にいいぞ」
雪乃「先にどうぞ」
八幡「…………」
雪乃「…………」
9:
八幡「あー、あれだ。不快な思いさせたなら謝る」
雪乃「いえ、別に……噂程度だし。あなたも迷惑しなかったかしら?」
八幡「迷惑も何も今知ったことだしな」
雪乃「…………そろそろクリスマスよね」
八幡「ん?あ、ああ、そうだな。来週だったよな」
雪乃「比企谷くんは
戸部「っべー!もう料理きてんじゃん。うめー!!」モグモグ
姫菜「がっつかないでよねー」
隼人「比企谷たちは結衣のところに行かなくていいのかい?」
八幡「最初に行ってきたよ」
八幡「それで雪ノ下。悪いけどもう一度言ってもらってもいいか?」
雪乃「…………いえ、何でもないわ」
八幡「……そうか」
10:
八幡(その後も由比ヶ浜の結婚披露宴はスムーズに進んでいった)
八幡(由比ヶ浜は泣いていた。自分の幸せを祝ってもらえて嬉しく、そして感動したのだろう)
八幡(雪ノ下は泣いていた……だろうか?下を向いていてよく分からなかったが泣いていたのだろう。親友の幸せが嬉しいのだろう)
八幡(なら俺は。俺はどうだろう?)
八幡(一度振った相手の幸せをどう感じた?答えは簡単だ…………)
八幡(由比ヶ浜の幸せは素直に嬉しかった)
16:
×××
【職場】
八幡(由比ヶ浜の結婚披露宴から数日が過ぎ、いつも通りの家畜ライフが続いていた。いざ行け干物妹ライフが羨ましすぎる)
八幡(クリスマスも近いせいか、仕事先の人はクリスマスの話で盛り上がっていた)
同僚A「えぇっ!?先輩合コン来れなくなったんですか!?」
先輩A「悪りぃな。ちょっと誘われちまってな」
同僚A「クリスマスの合コンどうしようか?」
同僚B「あと1人だろ?人数だけでも合わせないとマズイよな。暇そうなやつ誘うか」
同僚A「……となると」チラッ
17:
八幡(帰るか)ヨイショ
同僚A「ひーきーがーやー!」ドンッ
八幡「いって…………なんだよ?」
同僚A「お前彼女いないだろうしクリスマス暇だろ?人数合わせでいいから合コン来てくれよ」
八幡「いや、その日はちょっとアレだから」
八幡(てか人数合わせって言っちゃうのかよ。まぁ、隠されるよりはっきり言われるだけマシだけど)
同僚B「強がんなって。とりあえずよろしくな。そんじゃお先に」
同僚A「よろしくなー!」
八幡「えぇー…………」
18:
×××
【帰宅中】
八幡(俺が合コンとかはっきり言って無理だ。引き立て役にしかならないだろう…………くそ、引き立てや君を思い出してしまった)
八幡(そう言えばこの前雪ノ下は何を言おうとしていたのだろうか?)
八幡(クリスマスとかなんか言っていたけど…………まぁ、ないよな)
八幡(にしても今日は電車の中は一段と人が多いな。…………ん?あれ一色だよな?)
いろは「…………ん」
おっさん「」スリスリ
いろは(やだ、怖い。声が出ない)
おっさん「ハァハァ」スリスリ
八幡(おいおいマジかよ。こんなことって本当にあるんだな。じゃなくて流石に無視は出来ねぇよな)
19:
おっさん「ハァハァ」モミモミ
いろは「…………や、だ」
いろは(なんで私がこんな目に合うの?嫌だよ)
おっさん「けっこう大きいね」ボソッ
いろは「ひっ」
いろは(やだ、キモい、気持ち悪い。…………助けて。誰か、助けて!!)
八幡「あー、そこら辺でやめた方がいいんじゃないですか?」パシッ
おっさん「……へ?」
いろは「せん……ぱい?」
八幡「それ痴漢ってやつですよね。犯罪ですよ」
おっさん「俺が痴漢?証拠とかあんの?」
八幡「ええ、まぁ。悪いけど写真撮らせていただきました。これです」スッ
おっさん「…………ちっ」
八幡「次の駅で降りましょうか」
20:
×××
八幡(その後一色に痴漢をしていたおっさんを駅員に突き出した)
八幡(あんなことがあった後で一色を1人で帰らせるわけにも行かないので、家まで送ることにした)
八幡「…………」テクテク
いろは「…………」テクテク
八幡「…………」テクテク
いろは「……何も言わないんですか?」
八幡「何を言えばいいんだよ」
いろは「大丈夫か?とかいろいろあるじゃないですか」
八幡「あれ見て大丈夫だとは思えねーよ。だからこうして送ってるんだろーが」
いろは「……ありがとうございます。あと、写真ですが」
八幡「もう消しといたから安心しろ」
いろは「ありがとうございます」
22:
八幡「別にいいけどよ。それよりまだ着かないの?疲れてきたんだけど」
いろは「軟弱ですね。もう着きます。そこのアパートです」
八幡「ならよかった。これからは気をつけろよ。じゃあな」
いろは「」ギュッ
八幡「…………一色さん?」
いろは「はい?何ですか?」ニコッ
八幡「何ですか?じゃなくてさ、何で袖掴んでるんでしょうか?」
いろは「何ででしょうね?」ギュー
八幡「質問で返されても困るんだが」
23:
いろは「……少し上がっていきませんか?」
八幡「……………………はい?」
いろは「あ、いや、その……そ、そう!あれです!助けてもらったお礼でもと思いまして」
八幡「だったら高校のとき生徒会の仕事手伝ったお礼が先だろ」
いろは「む、今さらそんな話を……。それに先輩疲れたって言ってたじゃないですか!少し休憩した方がいいんじゃないですか?」
八幡「んー、でもなぁ」
いろは「」フルフル
八幡(震えてる……のか。まぁ、仕方ないよな)
八幡「なら少しお邪魔するわ」
いろは「はい!行きましょう!」
25:
×××
【いろは家】
八幡(うん、なんか軽い気持ちでお邪魔するとか言っちゃったけど…………)
八幡(女性の家に1人で上がるのとか初めてだから、どうしていいか分からない!!!!」
八幡(なんだこれ、緊張してきたぞ。それにけっこう綺麗にしてるんだな)キョロキョロ
いろは「あの……あまりジロジロ見ないでください」
八幡「す、すまん」
いろは「いえ、別にいいですけど。それと…………着替えてもいいですかね?」
八幡「ならお前風呂入ってこいよ」
いろは「…………へ?」
26:
八幡「だから着替えるならついでに風呂入ってこいって言ってんだよ。なんか変か?」
いろは「ちょっ……え?ちょっと待ってくださいよ!!何するつもりですか!?いきなりそんな///順序と言うものが…………」
八幡「いや、そういうのじゃないから。お前体洗いたくないのか?その……触られただろ?」
いろは「何ですかその言い方?何かやらしいこと考えてません?」
八幡「考えてねーよバカ。お前人が心配してやってんのに」
いろは「……なら少しお風呂に入ってきますね。覗かないで下さいよ」
八幡「何それフラグ?」
いろは「殴られたいですか?」ニコッ
八幡「ごめんなさい調子に乗りました」
27:
八幡「お前が風呂入ってる間暇だから飯作っててやるよ」
いろは「え?いいんですか?いや、でも悪いですよ」
八幡「いいのか悪いのかどっちだよ」
いろは「んー…………」
八幡「まぁ、冷蔵庫の中とか見られるの嫌なら別にいいけどよ」
いろは(……はっ!これは先輩の手料理になるのでは?)
いろは「いえ、別にいいですよ。お願いしていいですか?」
八幡「おう、任せろ」
いろは「それではお願いします。覗かないで下さいね」
八幡「お前どんだけ信用してないんだよ…………」
28:
×××
八幡(さて、何を作ろうか。ひとまずは材料確認だな)
八幡(ふむ、ふむ。こ、これは!!)
八幡(なんか腐ってる…………。見なかったことにしよう)
八幡「よし、作るか」
30:
×××
いろは(先輩がいるのにお風呂に入るなんてわたし何してんだろ)
いろは(それにお礼するとか言いながら、料理作ってもらうってどうなの?)
いろは(…………やっぱり先輩優しいよね。今日も助けられちゃったし)
いろは(うっ、嫌な方も思い出した。しっかり洗っておこなきゃ)ゴシゴシ
いろは(あれ?わたしちゃんと下着用意したっけ?)
いろは(…………してない!してないよわたし!!先輩に風呂入れって急かされたから忘れてた)
いろは(ど、どうしよう。家の中には先輩がいるからなぁ)
いろは(うーん、やっぱり先輩に少し出ててもらうしかないよね)
31:
いろは「せ、せんぱーい!」
シーン
いろは(お風呂場からじゃ聞こえずらいのかな?)
いろは(タオル巻いて、顔だけ出して。よし)
いろは「せーんぱーい!聞こえてますか?」
シーン
いろは(ん?さすがに聞こえるはずだけどな)
いろは「先輩!聞こえてるなら返事しなさい!」
シーン
いろは(むっ、少しムカつく。こっちから出向いてやる)
32:
いろは「ちょっ、何で無視するんですか…………ってあれ?いない?」
いろは(ご飯は作り終わって置いてあるし。でもなぜ一人分だけ?先輩自分の分は作らなかったの?)
いろは「…………もしかして帰っちゃった?」
ガチャ
八幡「再びお邪魔しますだな…………は?お前タオル一枚で何してんだよ!?」
いろは「あ……み、見ないでください!あっち向いて!!目潰しますよ!!!」
八幡「怖い!怖いよ発言が!てか上がったならさっさと着替えろ」
いろは「う、うるさいうるさい!とりあえず外で待っててください!!着替え終わったら呼びますから!」
八幡「はい…………」
33:
×××
八幡「で、お前何でタオル一枚だったんだよ」
いろは「それはもういいんです。それよりどこに行ってたんですか?」
八幡「ちょっとコンビニまで」
いろは「何でですか?」
八幡「何これ?取り調べみたいになってんだけど」
いろは「いいから答えなさい」
八幡「……酒買いに行ってたんだよ
いろは「そうですか。何でお酒を買いに行ったのですか?」
八幡「お前ん家になかったからだよ」
いろは「あったら勝手に飲んでたんですか?」
八幡「いや、俺のじゃなくてお前の分なんだけど」
いろは「へ?」
八幡「嫌なことがあったら酒でもと思ってな。大人の特権だ」
いろは「わたしのため、ですか?」
八幡「いや、んー……どうなんだろうな」
いろは「そこではっきり言えないのが先輩らしいですね」
八幡「なんだよそれ」
いろは「でも、ありがとうございます」ニコッ
八幡「…………おう」
34:
八幡「ようやく俺も帰れるわな」
いろは「……帰るんですか?」
八幡「まぁ、帰るだろ。明日も仕事だから帰って寝たいしな」
いろは「…………傷ついている女性を置いて帰るんですか?」
八幡「なんだその言い方は。俺が傷つけたみたいな言い方すんじゃねーよ」
いろは「むー、仕方ないですね。なら少しだけ一緒に飲みましょう。そしたら解放してあげます」
八幡「はぁ?なんでそうなるんだよ」
いろは「いいじゃないですか。…………どうしても嫌っていうなら別にいいですけど……」
八幡「……なら少しだけな」
いろは「はいっ!」
35:
〜数時間後〜
いろは「しぇーんぱーい。ちゃんと飲んでますかー?」フラフラ
八幡「お前飲みすぎだろ。もうやめとけ」
いろは「しぇんぱいが飲めって言ったんらないれすかー」
八幡「……軽くってつもりだったんだけど。ほら、水飲め」
いろは「はぁ〜〜い」ゴクッ
八幡「少しは落ち着いたか?」
いろは「…………い……すね」
八幡「は?」
いろは「らいたいれすね!なんれわたしがあんな目に合わなきゃいけないんれすか!!」バンッ
八幡「うおっ、なんだいきなり!それとテーブル叩くんじゃねぇよ。ビックリするだろ」
いろは「ビックリしたのはわたしの方れすよ!電車でいきなりあんなことされるんですから!!!」
八幡「いや、俺に言われてもな……。それとお前ろれつ回ってねーぞ」
いろは「答えてくらはい!なんれわたしがあんな目にあったんれすか!!答えなさいしぇんぱい!!」
八幡「だから俺に言われてもな…………」
いろは「こ〜た〜え〜な〜い〜とぉ〜〜、き◯玉潰しますよ」ニコッ
八幡「ちょ、ちょっと一色さん?あなたって酔うとこんなになっちゃうんですか?」
いろは「こ〜た〜え〜な〜さ〜い」ズイッ
八幡「ひぃっ!く、来るな」
いろは「…………」ニタァ
八幡(こ、怖えぇぇ!!)
36:
八幡「あ、あれだ!一色の女性としての魅力が凄かったんだろ。だから理性が吹っ飛んで痴漢しちゃったー、みたいな感じだろうなうん。きっとそうだ」
いろは「…………ぱい………………か?」
八幡「さ、さっきから聞き取りずらいんですが……」
いろは「しぇんぱいもわたしに魅力感じましゅか?」
八幡「…………は?」
いろは「…………しぇんぱいもわたしにあんなことしたいって思いましゅか?理性なくなっちゃいますか?」
八幡「ど、どうだろうな?」
いろは「せんぱい」ズイッ
八幡「は、はいっ!」
いろは「……せんぱいならいいですよ」ヌギッ
八幡「やっ、ばか!何脱ごうとしてんだお前」
いろは「…………女に恥、かかせないでくださいね?」
八幡(はぁぁぁ!?何この展開?正直おいしすぎますよ!…………いいのか?こんなことあっていいの?)
いろは「…………」
八幡「一色さん?」
いろは「…………」zzZ
八幡「……ね、寝てる!?このタイミングで!?」
いろは「…………」zzZ
八幡「まぁ、よかった?のだろうか。むしろ惜しかった?」
いろは「…………」zzZ
八幡「はぁ、帰るか。…………毛布くらいかけといてやるか」
38:
×××
〜翌日〜
チュンチュンチュンチュン
ホーホケキョ
いろは「…………ん、朝?わたし何でこんなとこで寝てるの?」ズキッ
いろは「いっつ、頭痛い。先輩は?昨日のこと…………あれ?何があったんだっけ?」
いろは「何これ?書き置き?」
『朝飯作って冷蔵庫の中入れといたから、温めて食っとけ。あとお前悪酔いしすぎだったからな。飲み過ぎるのは気をつけろよ。どうせ二日酔いするだろうから、頭痛薬置いといた。ちゃんと飲めよ』
いろは「…………先輩」
いろは(わたしの家に頭痛薬なかったのに。わざわざ買ってきてくれたんだ)
いろは(昨日わたし何かしたのかな?また迷惑かけちゃったのだろうか?)
いろは(迷惑かけたとしても、朝ごはんまで作っててくれるなんてやっぱり優しいな)
いろは(やっぱり先輩には迷惑かけてばっかりだな)
いろは(やっぱり諦めきれないな)
いろは(やっぱり………………………………好きだな)
いろは(わたしは先輩のことが、好きだ)
39:
×××
【八幡家】
八幡(昨日は大変だった。仕事後の方が大変ってなんだよそれ)
八幡(まぁ、プチラッキースケベもあったから、疲れた分は返してもらったって考えておこう)
八幡(一色には悪いけどな。そしてあんな事があったら、なんだか少しだけ気まずくなりそうだ)
ピロリン
八幡(一色からメール?)
『朝ごはんごちそうさまでした!美味しかったです。ところで…………昨日のことあまり覚えてないんですけど、変な事とかなかったですか?』
八幡(…………うん、覚えてないならよかった。あいつそういうタイプか。適当に返しとくか。特になんもなかったぞ、と)
ピロリン
八幡(返信はやっ!)
『何もないならよかったです。ところで、先輩はクリスマスに予定があったりするんでしょうか?ないと思いますけど。暇なら付き合ってあげてもいいですよ!』
八幡(クリスマスか。合コン……とはなんだか言いづらいな。会社の奴と飲みに行く予定がある、こんなもんか)
ピロリン
八幡(だから返信はえぇよ。なに?俺が送る前に返信書き出してるの?)
『先輩が会社の人と…………?珍しい事もあるんですね(笑)暇になったらいつでも誘ってくださいね。仕方なく付き合ってあげます』
八幡(はいはいと。さて会社行くか)
44:
×××
【クリスマス】
八幡「……はぁ」
同僚A「何ため息ついてんだよ!今からお楽しみだってのに」
同僚B「合コンだな。可愛い子いるといいな」
同僚A「俺は見た目じゃなくて中身で選ぶがな」
同僚B「とか言いつつ?」
同僚A「見た目がいいにこしたことはない」
同僚B「それな!」
八幡(合わねぇ。こいつらのテンションは俺に合わねぇ)
八幡「本当にここ終わったら帰っていいんだよな?二次会とかあっても行かねーぞ」
同僚A「大丈夫大丈夫!最初の人数さえあっておけばそれでいい」
八幡「……あっそ」
同僚B「それではいざ尋常に……」
同僚A「行くぞー!」
八幡「はいはい…………ん?」
45:
沙希「」テクテク
男A「でさー……」
沙希「そ、そうですか」アハハ
沙希「その、早く行かないとみんな待ってますよ」
八幡(川崎?あいつはクリスマスにデートか?)
八幡(てか彼氏出来てたのか。全然知らなかったな)
八幡(一言くらい言ってくれればいいのに。まぁ、別にいいけど)
同僚A「どうした比企谷?」
八幡「あー…………いや、なんでもない」
同僚B「なら早く行くぞ」
46:
×××
同僚A「あ、いたいた」
女A「遅いよー!女性またせんなー」
同僚A「悪りぃ悪りぃ。こいつらが俺の同僚な」
同僚B「初めまして同僚Bです!」
八幡「ども」
女A「こっちがあたしの会社の人ね」
女B「こ、こんばんわ。あ、初めまして、がいいのかな?女Bです……。よろしくお願いします」
同僚A「……ん?あと1人は」
女A「なんか仕事が長引いてて遅れるらしいよ。後から来るから先に始めてよ」
同僚A「そうか、なら今日の出会いに……」
女A「あたしはあんなとこと知ってるけどね」
同僚A「知ってるから。じゃないと今日集まれてないから」
同僚A「まぁ、いいや。それでは……」
「「「かんぱーい」」」
49:
〜数十分後〜
同僚B「いやー、楽しいな。今年のクリスマスは可愛いこと一緒で最高だな」
女B「な、何ですかそれ。可愛くないですよ」
同僚A「お前相変わらずだな」
女A「あんたもそうでしょ」
八幡(はい、こうなることは分かってましたよ。俺だけ何のためにここにいるんだって話よ)
八幡(別に分かってたからいいんだけどよ。早く終わらねーかな)
イラッシャイマセー
・「」キョロキョロ
女A「あ、来た。こっちこっち」
八幡(あー、残りの一人か。別に俺には関係ないか)
同僚A「お、おい、メチャクチャ綺麗じゃね?」ボソボソ
同僚B「やばい……な」ボソボソ
・「待たせてごめんなさい。思っていたより仕事が長引いたしまって」
女A「全然大丈夫だよ」
同僚A「ど、どうも、同僚Aです」
同僚B「は、初めまして。同僚Bです」
八幡「比企谷八幡です」
・「……え?比企谷くん?」
八幡「……は?」チラッ
50:
雪乃「……結婚披露宴以来ね」
八幡「……雪ノ下?なんでお前が?」
雪乃「……あなたこそ、何故いるのかしら?」
女A「え、え?知り合い?」
同僚A「なになに?どういう関係?」
雪乃「……高校のときの同級生よ。同じ部活でもあったわね」
八幡「そんな感じだな」
女A「そうなんだ。ま、全員揃ったことだし乾杯し直そうよ」
同僚A「それでは改めて……」
「「「かんぱーい」」」
雪乃「比企谷くん、乾杯」スッ
八幡「おう、乾杯」コツン
51:
八幡「……で、なんでお前はこんなとこいんの?」
雪乃「私の意思でここにいるのではないわ。人数不足で困っていたらしいのよ。……まぁ、無理矢理って感じかしら」
八幡「俺と同じだな。こっちも強制参加だよ」
雪乃「そう。それと…………勘違いされるのは嫌だから言っておくわ」
雪乃「私はこういったことに参加するのが初めてなの」
八幡「……そうか」
雪乃「だから……その、普段はこんなところに来たりしないわ」
八幡「俺もだな。てか何をそんなに熱弁してんだ?」
雪乃「べ、別に軽い女だと勘違いされるのが嫌だっただけよ」
八幡「……勘違いするわけねぇだろ。お前のことは……その、なんだ、それなりに分かってるつもりだからよ」
雪乃「…………そう」
八幡「…………そうだよ」
52:
女A「なになに〜?二人だけの世界に入ってない?」
八幡「それはないな」
雪乃「それはないわ」
同僚A「うっわ!息ピッタリだし」
女B「雪ノ下さんのこんな一面見るの初めてかも」
雪乃「彼と息が合うくらいなら数分止めてた方がマシだわ」
八幡「いやお前それ普通にきついだろ。ちゃんと息しろ。空気はうまいぞ」
同僚B「な、何その絡み?」
女A「あはは、比企谷くんだっけ?君面白いかも」
雪乃「!!」
八幡「いや、そんな面白くもないですよ」
雪乃「そ、そうね。あなたが面白い人間だったらもっと友達がいたはずなのにね」
八幡「それはあなたもでしょう。人のことを言えるのかしら?」
雪乃「」ムカッ
女B「に、似てる、かも」
女A「やっぱ面白いじゃん!」
同僚A「比企谷ってそんなキャラだったのか」
同僚B「会社だとそんな素振り見せねーしな」
雪乃「」ギロッ
八幡(やば、調子に乗りすぎてしまった)
雪乃「比企谷くん」ニコリ
八幡「わ、悪りぃ」
八幡(その後なんだかんだで時間は過ぎ、一次会は幕を閉じた)
53:
×××
同僚A「次どうするよ?」
八幡「あ、俺は帰るから」
同僚B「お、そうだったな。じゃーな」
雪乃「……比企谷くん、帰るの?
八幡「おう。その予定だったしな」
雪乃「そう。…………私もここで失礼するわ」
同僚B「えー?雪乃ちゃん帰っちゃうの?」
八幡「…………」ムカッ
八幡(ん?何ムカついてんだ俺は?)
雪乃「え、ええ。それとその呼び方はやめてもらってもいいかしら?」
女A「何か予定あるの?」
雪乃「……そんなところかしら。ごめんなさい」
女A「大丈夫!無理矢理なのに付き合ってもらってありがとね。ならまた明日」
同僚A「バイバイ雪ノ下さーん」
54:
八幡「さて、俺らは帰るか」
雪乃「…………本当に帰るの?」
八幡「は?さっきもそう言ったじゃねーか。それにお前も予定があるんだろ?」
雪乃「…………ないわ」
八幡「……マジ?」
雪乃「…………ええ、本当は何もないのよ」
八幡「雪ノ下が嘘をつくとはな」
雪乃「……そうね、このままだと嘘にるわ」
八幡「そうだな」
雪乃「…………だけど今から予定を入れたら嘘にはならないわ」
八幡「なんかズルいなそれ」
雪乃「あなた程でもないと思うのだけれど」
八幡「で、どうすんの?」
雪乃「今から私と一緒に過ごしてくれないかしら?」
八幡「……俺が?」
雪乃「あなた以外いないでしょう。それとも私とじゃ嫌かしら?」
八幡「別に嫌じゃないけどよ」
雪乃「けど?」
八幡「…………嫌じゃない」
雪乃「だから?」
八幡「お前面倒くさいな」
雪乃「それもあなた程ではないと思うのだけれど」
八幡「……はぁ、付き合ってやるよ」
雪乃「付き合わせてあげるわ」ニコッ
八幡「でもどうする?クリスマスだしどこも人だらけだぞ。俺もお前も人混みは苦手だろ」
雪乃「それもそうね。…………一つ、いいところがあるわ」
八幡「どこだ?」
雪乃「付いて来たら分かるわ」
八幡「??」
55:
×××
いろは(う〜、クリスマスなのにわたし何してるんだろ。何もしてないんだけど)
いろは(先輩も会社の人と一緒だろうしすることないなー。他の男の人と遊ぼうっても思わないし)
いろは(……先輩、楽しんでるのかなぁ?)
八幡「」テクテク
いろは(え!?あ、あれ、先輩?もしかしてもう帰りなのかな?……ふふふ、チャンスかも。よし、声かけちゃおう)
いろは「せーんぱ…………」
八幡「結局どこ行くんだよ?」
雪乃「しつこいわね。懐かしいとろこよ」
八幡「懐かしいところ?」
雪乃「そう。付いてからのお楽しみよ」
いろは(雪ノ下先輩?え、なんで一緒にいるの?先輩は会社の人と一緒じゃなかったの?)
いろは(……なんて考えても分からないよね。いや、考えなくてもクリスマスに一緒にいるなら、普通付き合ってるんだよね)
いろは(そっか………………って、ん?普通はそうだけど、あの二人って言っちゃあれだけど普通じゃないよね?)
いろは(だったらもしかしてまだチャンスはある?)
いろは(気は乗らないけど気になるから後付けちゃおう)コソコソ
いろは(うぅ、わたしクリスマスに何してんだろホント)
56:
×××
八幡(この道ってもしかして)チラッ
雪乃「さすがにもう分かったかしら?」
八幡「あ、ああ。何となくだが。それしかないだろこの先は」
雪乃「ご名答」
八幡「…………でも開いてないだろ?」
雪乃「そこは私がなんとかするわ」
八幡「なんとかってお前…………」
いろは「」コソコソ
雪乃「……比企谷くん」ボソッ
八幡「っ!お前いきなり耳元で囁くな!」
雪乃「静かに。誰かに付けられてるわ」ボソボソ
八幡「マジで?でも誰だよ?」ボソボソ
雪乃「そこまでは分からないわ。でも後ろに確かに誰かいるわ。あ、振り向かないでね」ボソボソ
八幡「……仕方ねぇ。そこの角曲がったら待ち伏せするぞ」ボソボソ
雪乃「危なくないかしら?」ボソボソ
八幡「大丈夫だろ。こっちは二人もいるし。それにいざってときはお前が抑えつければいい」ボソボソ
雪乃「はぁ…………。そこで俺が抑えつけると言わないのね」ボソボソ
八幡「これはあれだ。お前のこと信頼してるから任せるぜ的なやつだ」ボソボソ
雪乃「物は言いようね。それでは行きましょうか」ボソボソ
57:
いろは(な、なんだか近くないあの二人?何をそんなに近寄っているんだろう)
いろは(あっ、曲がった。急がないと見失っちゃう)タタタッ
いろは「っ!!」
八幡「一色!?」
いろは「あ……」
雪乃「一色さんだったのね。私たちを尾行していたようだけど何か用かしら?」
いろは「い、いえ、別にたまたま通りがかっただけですよ?」アセアセ
八幡「嘘はいいから。別に変に疑ってる訳じゃない。なんか用があったんだろ?」
いろは「う…………」
雪乃「一色さん?」
58:
いろは「せ、先輩は今日同僚の人と一緒じゃなかったんですか?」
八幡「……さっきまで一緒だったよ」
いろは「そうですか。それでなんで雪ノ下先輩と一緒なんですか?」
八幡「たまたま会っただけだ。お互い暇になったから一緒にいるだけだ」
いろは(暇になったら誘ってって言ったのに……)
いろは「その、わたし帰りますね。それでは」
八幡「おい、なんか用じゃなかったのか?」
雪乃「…………」
いろは「え、えへへ。何もないですよ」
雪乃「……比企谷くん。一色さんを送って行ってあげなさい」
いろは「!?」
八幡「お前はどうすんだよ?」
雪乃「私は大丈夫よ。ちゃんと送って行ってあげなさい」
いろは「え?え?」
八幡「…………」チラッ
雪乃「…………」コクリ
59:
八幡「……はぁ、分かったよ。一色、行くぞ」
いろは「え?雪ノ下先輩はどうするんですか?」
八幡「あいつは多分大丈夫だろ。それにお前はこの前の件もあるからな。さっさと行くぞ」
雪乃「比企谷くん、少し来なさい」
八幡「?」
雪乃「きちんと向き合いなさいよ」ボソッ
八幡「それってどういう
雪乃「いいから。逃げないでね」
八幡「…………まぁ、よく分からんが分かった」
雪乃「……さよなら一色さん」
八幡(一色にだけか……。まぁ、そういうことなんだろう多分)
60:
×××
【いろは家】
いろは「あ、その、なんかすみません。また迷惑かけちゃって」
八幡「別に大丈夫だ。じゃあな」
いろは「あ……」
八幡「どうした?まだなんかあんのか?」
いろは「…………」
八幡「何もないならもう行くぞ」
いろは「……残りのクリスマス、わたしと過ごしませんか?」
八幡「…………なんで?」
いろは「その、理由という理由は…………」
八幡「…………」
いろは「……ある、んですけど」
八幡「…………」
いろは「その…………先輩と一緒がいいです。先輩と一緒にいたいです」
八幡「……それはどういう意味でだ?」
いろは「…………言わないと、分かりませんか?」
八幡「分からねぇな」
いろは「そうですか…………。分かりました」スーハー
八幡「一色?」
61:
いろは「」スーハースーハー
いろは「よし、先輩!!」
八幡「 ……はい」
いろは「先輩のこと好きになっちゃいました!これからも先輩と一緒にいたいです!隣にいたいです!だから……」
八幡「…………」
いろは「だから!わたしと付き合ってください!!」
八幡「…………」
いろは「お願いします!」
八幡「…………一色」
いろは「……はい」
62:
八幡「…………すまん。お前の気持ちには答えることは出来ない」
いろは「…………」
八幡「その、なんと言う
いろは「ま、だと思ってました!」
八幡「……はい?」
いろは「先輩はなんだかんだで分かりやすいですからね。振られることも分かってました」
いろは「これはわたしの自己満足です!またまた迷惑かけてすみません」
八幡「…………分かりやすいって何がだよ?」
いろは「分かってますよね?」
八幡「分からん」
いろは「またまたー。いい加減素直になれって感じですよ!じゃないとわたしはどうなるんですか?」
八幡「どうなるって……」ハッ
いろは「どう……なるんですか」グスッ
八幡「…………」
いろは「あ、あれ?わたし……泣いてる?」グスッ
いろは「なんでだろ?なんでなんだろう?先輩に振られちゃったからかな?」グスグスッ
八幡「…………すまん」
いろは「許しません…………と、言いたいですけどせっかくのクリスマスですからね。許してあげなくもないです」グスッ
八幡「なんだその曖昧な言い方は。とりあえず涙拭け」スッ
いろは「誰のせいですか」フキフキ
63:
いろは「さて、それでは条件付きで許してあげます」
八幡「条件?変な条件だと嫌だぞ」
いろは「いえいえ、そんなことはないですよ。クリスマスっぽくいきましょう」
八幡「クリスマスっぽく?」
いろは「クリスマスプレゼントください!それでチャラにしてあげます」
八幡「いや、そんないきなり言われても……。俺何も持ってないぞ」
いろは「仕方ないですね……。ならこれがプレゼントで」ギュッ
八幡「ちょ、ちょい、え!?何で抱きついてんの?」
いろは「チャラにするんですからこれくらいサービスしてくださいよ」ギュー
いろは「本当はキスがしたかったんですよ」ボソッ
八幡「……一色」
いろは「はい?」ギュー
八幡「その……聞こえてるから。こんだけ近いんだし」
いろは「…………///」カァァ
いろは「……バカ。聞こえてない振りくらいしてくださいよ」ギュッ
64:
八幡「……その、いつまで続くのでしょうか?」
いろは「…………よく考えたらこれはわたしから先輩へのプレゼントになりますね」パッ
八幡「え?そうなの?」
いろは「そうなのです。なので先輩、クリスマスプレゼントください」
八幡「……なんで目を閉じてんだよ?」
いろは「なんででしょうね?プレゼントまだですか?」
八幡「……動くなよ」
いろは「……はい」
八幡「…………」
いろは「…………」ドキドキ
八幡「」ギュッ
いろは「……へ?」
八幡「……これでいいんだろ」ギュッ
いろは「いや、その……普通ここは抱きしめるじゃなくて。さっき聞こえてたのなら尚更…………」
八幡「……何の話だ?」ギュッ
いろは「先輩はズルいです」
八幡「……そうかもな」ギュッ
いろは「……ありがとうございました」パッ
65:
いろは「少しの間ですけど幸せでしたよ」
八幡「少しじゃなくて、これからも幸せになれよ」
いろは「不幸にした本人が何を言ってるんですか?」
八幡「幸せじゃなかったのかよ」
いろは「……先輩は幸せになってくださいね」
八幡「と言ってもな、今はそんな相手いねーよ」
いろは「本当にそう思いますか?」
八幡「…………」
いろは「やっぱり分かりやすいじゃないですか」
いろは「それでは、送ってくれてありがとうございました」
八幡「じゃーな」
八幡(……さて、俺はどうするかな)
68:
×××
【総武高校前】
雪乃「…………」
八幡「……よ」
雪乃「……あら、来たのね」
八幡「まぁな。てかお前も待ってたじゃねーかよ」
雪乃「一色さんはもういいの?」
八幡「なんの話だ?」
雪乃「しらばっくれてもいいけど、大体分かるわよ」
八幡「さすがは雪ノ下さんだな」
雪乃「それで、いいのかしら?」
八幡「……ああ。もう大丈夫だ」
雪乃「そう。それなら行きましょうか」
69:
八幡「行きましょうかって言ってもここに入るつもりか?鍵閉まってるぞ」
雪乃「私が開けるわ」
八幡「え?お前鍵持ってるの…………何してんだよお前」
雪乃「見て分からないかしら?ピッキングよ」カチャカチャ
八幡「分かった上で聞いてんだよ」
ガチャッ
雪乃「開いたわ」
八幡「お前どこで覚えたんだそんなこと」
雪乃「……社長の金庫を」
八幡「はぁ!?お前何してんの!?」
雪乃「冗談よ。それと大きな声出さないで」
八幡「……変なスペックまで上げてんじゃねーよ」
雪乃「入りましょうか」
71:
×××
【元奉仕部部室】
雪乃「この部屋も懐かしいわね。10年ぶりくらいかしら」
八幡「てかこんなことしていいのか?冷静に考えたら不法侵入だろ」
雪乃「いいわけないじゃない。けれど高校時代に他の生徒と比べてバカやってなかった分を、今この校舎に返してもらいましょう」
八幡「雪ノ下も屁理屈言うんだな」
雪乃「誰の影響かしらね?」
八幡「……さぁな」
八幡「懐かしいな」
雪乃「そうね。懐かしついでにちょっとした余興でもしましょうか」
八幡「余興?」
72:
雪乃「…………そうね、ではゲームをしましょう」
八幡「ゲーム?」
雪乃「そう。ここが何部か当てるゲーム。さて、ここは何部でしょう?」
八幡「お前これって……」
雪乃「」ニコリ
八幡(少しくらい付き合ってやるか)
八幡「他に部員っていないのか?」
雪乃「いないわ」
八幡「……文芸部か」
雪乃「へぇ……。その心は?」
八幡「特殊な環境、特別な機器を必要とせず、人数がいなくても廃部にならない。つまり、部費なんて必要としない部活だ。加えて、あんたは本を読んでいた。答えは最初っから示されていたのさ」
雪乃「はずれ」
八幡「……はははっ」
雪乃「ふふふ」
八幡「本当にただの余興だったな」
雪乃「あなたが初めてここに来た時の会話よ。それにしてもよく一字一句も間違えずに言えたわね。気持ち悪い」
八幡「間違えてないって分かってる時点で、お前も覚えてたんじゃねーか」
73:
雪乃「この部に入ってよかったかしら?」
八幡「……悪くはなかったよ」
八幡「そーえばいつの間にか俺はここが特等席になってたんだよな」ヨイショ
雪乃「私がここだったわね」ヨイショ
八幡「…………」
雪乃「結構離れていたのね。間に由比ヶ浜さんがいたから気づかなかったわ」
八幡「それに二人とも本ばっかり読んでたからな」
雪乃「……そう考えたらお互い下ばかり向いていたのね」
雪乃「あの時のあなたと私は、向かい合えていたかしら?」
八幡「出来てたんじゃねーの?向かい合いすぎてぶつかり合いもしたしな」
雪乃「すれ違いもあったけれど」
八幡「いつの話だ?交通事故?文化祭?」
雪乃「…………素直になれなかった気持ちの話よ」
八幡「…………」
74:
雪乃「…………今はなれるかもしれないわね」
八幡「…………どうだろうな。人は簡単には変われねぇよ」
雪乃「そうね。あなたはそう言うわよね」
雪乃「けれどこんな言葉はあるわよね。『恋は人を変える』」
八幡「……そんなの意識の問題だろ。そいつ自身は変わってねーよ」
雪乃「ねぇ比企谷くん…………」
雪乃「あなたは私を変えたわ」
八幡「……お前、それってどういう意味だ」
雪乃「…………」
八幡「…………本気か?」
雪乃「……嘘はつかないわ」
八幡「雪ノ下……」
75:
雪乃「…………雪」
八幡「は?」
雪乃「雪が降ってるわ」
八幡「ホワイトクリスマスだな」
雪乃「ふふ、あなたには似合わない言葉ね」
八幡「うるせーよ。……てか雪のせいでいっそう寒くなってきたな」
雪乃「……比企谷くん、手を出しなさい」
八幡「なんで?」
雪乃「いいから」
八幡「……はいはい」スッ
雪乃「」ギュッ
八幡「……手を握る必要はあるんですかね?」
雪乃「……寒いでしょ。この方が暖かくなるわ」
八幡「まぁ、そうだけどよ……」
雪乃「それとも紅茶でも飲むかしら?もしかしたらあの頃のが残っているかもしれないわよ」
八幡「飲まねぇよ。腹壊すだろ」
雪乃「…………」ギュッ
八幡「…………」
76:
雪乃「…………」ギュッ
八幡「……その、待っててくれねぇか?」
雪乃「何をかしら?」
八幡「さっきの言葉に対する答えをだよ。その……少しでいいから」
雪乃「……仕方ないわね。待っててあげる。あなたの答えが出るのを」
八幡「……悪りぃな」
雪乃「その時はこの手を握り返してくれるのかしら?」ギュッ
八幡「……それも待っててくれ」
雪乃「そう」パッ
雪乃「そろそろ帰りましょうか」
八幡「……そうだな」
雪乃「比企谷くん」
八幡「……なんだよ?」
雪乃「面倒くさいことを考えずに素直な気持ちで答えを聞かせてね」
八幡「分かってるよ」
雪乃「…………そうじゃないと『本物』ではないのでしょうね」
八幡「……………………言うなよ。恥ずかしいだろ」
雪乃「私は嫌いではないわ。その言葉」
八幡「そうかよ」
雪乃「帰りましょうか」
八幡「送ってくよ」
77:
八幡(そして、雪ノ下を家まで送り俺も帰宅した)
八幡(雪ノ下に答えを求められた。俺はその答えを出す時に、あの手を握り返すことは出来るだろうか?)
八幡(全部俺が決めることだ。これは俺の問題だ)
八幡(だが、やっぱり相談してしまいそうだな。そしてきっと話を聞いてくれるだろう)
八幡(…………あの妹なら)
78:
×××
【比企谷家実家】
八幡(クリスマスも終わり、今年も残すを一日だけとなった。つまり今日は大晦日である)
八幡(俺は未だに雪ノ下への返事をしていない)
八幡(ここ数年、大晦日の過ごし方は決まっていた)
八幡(実家に帰る。小町も帰ってくる。…………普通だとこんなものなのだろう。だが、小町が結婚してからというものの…………)
比企谷母「あ、どうぞ。遠慮しなくていいですよ」
川崎母「毎年お邪魔してすみません。ご迷惑じゃありませんか?」
比企谷母「いえいえ、今年も残り最後を楽しみましょう」
八幡(年末年始には、比企谷家族と川崎家族の大集会が開かれるのである)
79:
大志「お兄さんお久しぶりっす」
八幡「おう、久しぶりだな」
八幡(もうお兄さんと呼ばれるのも諦めがついた。だっていちお義兄さんなんだもん。それに悪いことだけでもない。なぜなら…………)
京華「お義兄ちゃん久しぶりー!」ダキッ
八幡「久しぶりだな。元気にしてたか」
京華「うんっ!お義兄ちゃんは?」
八幡「元気元気」
八幡(義妹が出来たのだから!いやマジ可愛い。小町と張り合っちゃう)
八幡(まぁ、もちろん川崎家といとこになった訳だから、あいつもいるわけで…………)
沙希「け、京華!いきなり抱きついたりしないの。危ないよ」
八幡「危ないって何がだよ。俺か?俺が比企谷菌でもぶり返したのか?」
沙希「……はぁ、あんた相変わらずだね」
八幡「お前もな」
沙希「……久しぶり」
八幡「久しぶり。まぁ、ゆっくりしていけ」
沙希「うん」
八幡(こんな風に過ごすのが毎年恒例の年末年始になっていた)
80:
×××
八幡(比企谷家と川崎家が全集合して時間も少したち、俺たちは年越し蕎麦を食べていた)
小町「お兄ちゃん今年はどうだった?何か変わったことでもあった?」
八幡「ぶふっ!!」
大志「ちょっ、お兄さん!蕎麦かかったっす」
小町「お兄ちゃん。いきなり蕎麦吹き出さないでよ!汚いよ!かかったのが大志くんだからいいけど」
大志「え?小町ちゃん?」
沙希「あんた何してんのさ。ほら、拭いてあげるから動かない」フキフキ
八幡「す、すまん」
小町「」ニヤニヤ
沙希「……なんかあったの?」
八幡「…………まぁ、生きてりゃ誰でもなんでもあるだろ」
沙希「……そ」
小町「ふーん、お兄ちゃんも大変そうだね。主に仕事だけだろうけど」
八幡(な、なんだか小町には話しづらくなってしまった気がする)
81:
八幡「お前らは今年どうだったんだよ?なんか変わったことあったのか?」
京華「あ、京華はクラスの人に告白されちゃった」
八幡「なんだと!?おい、今すぐ連れて来なさい!俺の許可なく京華に手を出すとは身の程知らずめ。大人の力見せてやる」
小町「なんでお兄ちゃんが一番動揺してるの」
大志「しかも大人の力とか言い出してるっすよ。高校生に何する気なんですか」
沙希「そ、それで京華はその人のことどうしたの?」
京華「もちろん振ったよ」
小町「もちろんなんだね」
京華「だって京華はお義兄ちゃんと結婚するんだよ。ね?」
八幡「はっはっは。よく分かってるじゃないか」
沙希「け、京華……。冗談はその辺にして蕎麦食べなさい」
京華「はーい」
八幡「え?冗談なの?」
京華「んー、美味しいね」ズルズル
沙希「当たり前でしょバカ。そんなのあたしが認めないし」
八幡「シスコンはまだ継続中か」チッ
沙希「あんたに言われたくないんだけど」
82:
八幡「川崎はなんかなかったのか?」
小町「お兄ちゃん。ここに川崎はたくさんいるから、誰に話しかけてるかわからないよ?」
沙希「…………」
八幡「川崎沙希はなんかなかったのか?」
大志「まさかのフルネームで対応してきたっすね」
小町「いい加減名前くらい呼べばいいのに。京華ちゃんにも大志くんにも呼び捨てのくせに」
八幡「別にいいんだよ。川崎で呼び慣れてるし。な?」
沙希「あ、そ、そうだね。今さら呼び方変えられても…………分かりづらいし」
沙希「それにあたしは今年特に何もなかったかな」
八幡「ん?お前クリスマスの日誰かと一緒じゃなかった?」
沙希「え?え?ちょっ…………えっ!?何で知ってんの!?」
八幡「何でって…………。見かけたからな」
京華「お姉ちゃん彼氏できたの?」
沙希「違う!違うからね!二人だけじゃないから!会社の人で飲んでたの!それでちょっとしつこい人がいたって話で…………」
八幡「彼氏じゃなかったのか」
沙希「あ、当たり前でしょ!彼氏とかいないから」
八幡「そうか」
沙希「本当だからね!」
八幡「わ、分かったよ。何をそんなに何度も言ってるんだ」
沙希「…………///」
小町「」ニヤニヤ
83:
京華「あー!もう今年も終わっちゃうよ。カウントダウンしようよ」
京華「ごぉーー!」
小町「よーん!」
大志「さぁーん!」
沙希「……に」
八幡「え?あ?い、いち」
「「「あけましておめでとう」」」
小町「よし、年も開けたね!それじゃ初詣行こうか」
京華「行く行く!お義兄ちゃんも一緒に行こう」グイッ
八幡「よし、なら行くか」
沙希「本当妹には甘いよねあんた」
沙希(……あたしだって誕生日はあんたより遅いんだよ)
八幡「どうした?早く行こうぜ」
沙希「……うん」
84:
×××
【神社】
八幡「人が…………多すぎる」グデー
小町「お兄ちゃんダウンが早すぎるよ」
八幡「ちょっ、マジで無理。ここで休憩しとくから、お前ら先に行ってていいぞ」
小町「一人で大丈夫?」
八幡「あー、大丈夫大丈夫」グデー
沙希「……はぁ、本当だらしない。あたしが付いててあげるから、小町たちは心配しないで行った来ていいよ」
八幡「え?いやでも
小町「ホントですか?いやー、沙希さんなら頼りになります」
小町「さ、大志くんも京華ちゃんも行こっ」
大志「それでは先に行ってるっす」
京華「お義兄ちゃんと一緒がよかったけど仕方ないよね。また後でね」
八幡「…………」
沙希「…………」
八幡「迷惑かけてすまん」
沙希「別にいいよ。なんか飲む?買ってきてあげる」
八幡「……すまん、お言葉に甘えさせていただきます」
沙希「何がいい?」
八幡「MAXコーヒーで」
沙希「あんたまだそれ好きなんだ。分かった、待ってて」タタタッ
85:
八幡(新年早々迷惑かけまくりだな俺)
八幡(元旦か……明後日は1月3日、雪ノ下の誕生日だよな。…………どうしよう」
・「何がどうしようなの?」
八幡「……は?」
結衣「やっはろーヒッキー!あけましておめでとう!」
八幡「……由比ヶ浜」
結衣「もう由比ヶ浜じゃないんだけどね」
八幡「あ、そうだったな。えっと……」
結衣「あーもう、由比ヶ浜でいいよ。あ、ゴメン先に行ってて」
結衣旦那「おう。後から連絡くれ」
結衣「うん!」
86:
八幡「……いいのか?」
結衣「大丈夫だよ。だってヒッキー悩んでるんでしょ?どうしたの?」
八幡「あー……まぁ、ちょっとな」
結衣「ゆきのんと何かあったんでしょ」
八幡「んだよ、雪ノ下に聞いてたのか」
結衣「んーん、ゆきのんからは何も聞いてないよ。でも当たってたんだ」
八幡「まぁ、その…………告白、みたいなのをされた」
結衣「みたいなのってなんだし」
八幡「そんな感じなんだよ」
結衣「返事はしたの?」
八幡「…………まだ」
結衣「答えは出てる?」
八幡「どうだろう」
結衣「あたしの時はその場で振ったよね」
八幡「うっ」
結衣「いろはちゃんのときも」
八幡「……なんで知ってんだよ」
結衣「それはいろはちゃんから連絡来ましたので」
八幡「マジかよ」
結衣「それでゆきのんのときは保留なんだよね」
八幡「……そうなってるな」
結衣「ならもう答え出てるんじゃん」
87:
八幡「そう……なんだろうか」
結衣「そうだよ。ちゃんと分かるようにあたしが言葉にしてあげる」
結衣「ヒッキーはゆきのんのことが好きなんだよ」
八幡「…………」
結衣「ね?」
八幡「……そうだな。ありがとう由比ヶ浜」
結衣「んーん、ゆきのんにもヒッキーにも幸せになってほしいから」
八幡「ありがとよ。もう大丈夫だ」
結衣「どういたしまして。うまくいったら報告すること。それじゃね」
八幡「またな」
88:
×××
沙希(あたしが飲み物を買って戻ってきたら、あいつは由比ヶ浜と二人で話をしていた)
沙希(とても入れる雰囲気ではなかった。趣味が悪いようだけど、盗み聞きみたいなことをしてしまった)
沙希(雪ノ下が比企谷に告白した。比企谷も雪ノ下を好きだと認めた)
沙希(そっか。これが失恋という気持ちなのか)
『サンキュー!愛してるぜ川崎!』
沙希(あんな言葉一つであたしはあいつのことを気にかけていた。あたしも単純だなぁ)
沙希(でもこの気持ちはあたししか知らない。そしてこの想いは誰にも伝わることなく終わった)
沙希(なら、ならば、最後まで自分の中で終わらせよう)
沙希(上手くいく恋愛に手を出すのも相手に悪いしね)
沙希(誰かに相談したら言われるかもしれない。『気持ちは伝えた方がいいよ』などと言われるかもしれない)
沙希(なんで伝える方がいいみたいに思うのだろう?伝えない方がいいこともあるのに)
沙希(そしてこの気持ちは伝えなくていい気持ちだ。だからあたしは自分で終わらせる)
沙希(間違ってはいない。間違いなんて言う人は伝えることの間違いを知らないだけだ)
沙希(だからあたしはいつも通りにしよう)
沙希「お待たせ。はいこれ」スッ
八幡「ありがとよ。お参りの前に先におみくじでも引いとくか。そこにあるし」
沙希「うん」
89:
×××
八幡「…………末吉」
沙希「あんたらしい微妙な結果ね」
八幡「お前はどうなんだよ?」
沙希「ふふん」ピラッ
八幡「大吉……だと」
沙希「あんたとは大違いだね」
沙希(神様は何も分かっていない。元旦から失恋したあたしが大吉なわけないのに)
沙希(神様はきっと見ていない。だから大吉などをあたしに引かせるのだ…………ん?)
恋愛:諦めなさい
沙希(あたしのおみくじの恋愛の欄に書かれていた一言に目がついた)
沙希(諦めなさい、か。そっか……そうだよね)
沙希(なんだよ神様。ちゃんと見てるじゃないかい)グスッ
八幡「か、川崎?どうした?」
沙希「何が?」グスッ
八幡「何で泣いてるんだ?」
沙希「…………えっ?」グスッ
八幡「大丈夫か?」
沙希「だ、大丈夫!……目にゴリが入っただけ」
八幡「ゴ、ゴリ!?ゴリラが入ったの?」
沙希「…………ゴミだよ!噛んだんだよ!いちいち突っ込むな」
沙希「……ふぅ。じゃあそろそろ小町たちと合流しよっか」
八幡「……そうだな」
90:
八幡(俺のおみくじは末吉だった。だが一つだけいいことが書いてあった)
恋愛:上手くいくでしょう
八幡(いつもなら流し見みするような項目も今年は目が止まった)
八幡(神に頼ったような結果だけど、少しは自信がついた)
八幡(そして1月3日。雪ノ下の誕生日を迎える)
91:
×××
雪乃「ねぇ、比企谷くん」
八幡「どうした?」
雪乃「いきなり新幹線に乗せられた私は、一体どこに連れて行かれてるのかしら?」
八幡「あれ?言ってなかったか?」
雪乃「言ってないわよ。とぼけないで」
八幡「着いたら分かる」
雪乃「……私の真似事かしら?」
八幡「そんなもんだ。お前もクリスマスに行き先教えなかっただろ」
雪乃「にしても遠出している気がするのだけれど」
八幡「新幹線だしな。近場じゃないだろ」
雪乃「…………はぁ。分かったわ。大人しく着いて行くわ」
八幡「ありがとよ。ほら降りるぞ」
雪乃「京都?」
八幡「おう。京都だ」
雪乃「なぜ京都に…………」
八幡「日帰りだしいいだろ。どうせ来たんだし楽しんでいこうぜ」
雪乃「あなたが一方的に連れてきたのだけれどね」
八幡「さーて、どこか行きたいところあるか?」
雪乃「いきなり言われても…………」
八幡「よし、飯食おう。ラーメンだラーメン」
雪乃「え?ラーメン?」
八幡「そう、ラーメン」
雪乃「ここに来て食べるラーメンってあなたまさか……」
八幡「」ニヤリ
雪乃「…………はぁ」
92:
×××
八幡「ふぅー、食った食った。どうだったよ?」
雪乃「……凶暴な旨味だったわ」
八幡「感想変わんねぇなお前」
雪乃「いきなりこんなところに連れてきて、まさかラーメンが食べたかっただけじゃないでしょうね」
八幡「……まぁ、ラーメンは食いたかったな。だけどそれはついでだ」
雪乃「なら本当の目的は何かしら?」
八幡「次どこ行く?」
雪乃「聞いてるの?」
八幡「聞いてるよ。いいから楽しむぞ」
雪乃「…………仕方ないわね。そこまで言うなら覚悟しなさい。次はここに行くわよ」
八幡「お、おう。いきなり気合い入ってんな」
雪乃「これは気合いでもやる気でもないわ。ヤケクソよ」
八幡「そ、そうか」
雪乃「そうよ。早く行きましょう」
八幡「はいはい」
93:
×××
八幡(そして俺と雪ノ下は京都巡りをした。気づけば日は落ち始め夕日に変わっていた)
八幡「つ、疲れたな」
雪乃「いろいろ回ったからね。修学旅行では二人で回ることもなかったのだし、行きたいところに行けたでしょう?」
八幡「それはお前もだろ。まぁ、お前と二人ってのも悪くないな」
雪乃「…………そう」
雪乃「そろそろ帰らないと夜になるわよ?」
八幡「そうだな。なら最後に一箇所行くか!」
雪乃「まだあるのね」
八幡「最後だって」
雪乃「分かったわ。最後まで付き合いましょう」
八幡(そして俺は雪ノ下を連れてあるところへ向かった)
八幡(それは戸部の告白が届かなかった場所)
八幡(それは修学旅行のときの奉仕部への依頼を達成した場所)
八幡(つまり俺がいろいろなものをぶち壊した場所だ)
94:
雪乃「ここは……」
八幡「さすがに覚えてるだろ?俺たち奉仕部の悪い思い出の場所だ」
雪乃「なぜこんなところに連れてきたのかしら?」
八幡「…………この場所は悪くない。なのに俺たちの中で悪い思い出の場所のままではあるよな」
雪乃「原因はあなただったけどね」
八幡「分かってるよ。だからこの場所を俺たちにとって、いい思い出の地に変えたいんだ」
雪乃「??」
八幡「雪ノ下…………」
八幡「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
雪乃「!!」
八幡「…………」
雪乃「……本気かしら?」
八幡「ああ。本気だ」
雪乃「それにしても言葉も全く変えないなんてどうゆうこと?」
八幡「言葉通りだ。ずっと前から好きだった。憧れなんかじゃない。好きだった」
雪乃「そう……………………」
95:
八幡「返事は…………いつでもいい」
雪乃「馬鹿ね」
八幡「……はい?」
雪乃「私の方が先だったでしょう。今のは比企谷くんが私の告白に返事をしたのよ」
八幡「ということは…………」
雪乃「」スッ
雪乃「今回こそ、私の手を握り返してくれるわよね?」ニコッ
八幡「……当たり前だろ」ギュッ
雪乃「ふふっ」
八幡「はははっ」
96:
雪乃「…………」
八幡「…………雪」
雪乃「えっ?」
八幡「また、雪が降ってきたな」
雪乃「そうね。冷えそうだわ」
八幡「それにしても俺もお前も思い出に浸りすぎたな」
雪乃「私は総武高校へあなたを連れて行った。あなたは修学旅行先であっまた京都へ私を連れてきた」
雪乃「……雪が積もってきたわね」
八幡「俺たちの思い出の分積もってくれてるんだろ」
雪乃「そう…………。けれどまだまだ降り続きそうね」
八幡「そりゃそうだ。新しく始まったばかりだからな」
雪乃「どこまで積もるかしら?」
八幡「どこまでも積もるだろ。これからは二人分雪が降るからな」
雪乃「…………」
八幡「誕生日なのに振り回して悪かったな」
雪乃「構わないわ。楽しかったもの」
97:
雪乃「ところで比企谷くん。私まだ貰っていないと思うのだけれど?」
八幡「…………何をでしょう?」
雪乃「分からない?」
八幡「分からねぇな。雪ノ下がそんなことを自分から言い出すのも意外だ」
雪乃「普通は言わないでしょうね」
八幡「だろ?」
雪乃「でもあなたには言うわ。…………私はあなたの彼女だから」
八幡「…………………彼女の初めてのわがままなら仕方ねぇわな」
雪乃「用意してくれてたの??」
八幡「いやしてなかった」
雪乃「あなたって人は…………仕方ないわね。これでいいわよ」
八幡「これって何ですか?何で目を瞑っているんですか?」
雪乃「…………私の初めてのわがままよ。ダメ……かしら?」
八幡「……ダメじゃねぇな」
八幡(最近こんな光景を見た。今回は間違わねぇな)
雪乃「……なら」
八幡「……おう」
雪乃「…………」ドキドキ
八幡「…………」ドキドキ
雪乃「…………」ドキドキ
八幡「」チュッ
雪乃「……///」
雪乃「…………その、ありがとう」
八幡「…………ど、どういたしまして」
9

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