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【艦これ】提督「心の部屋が覗ける鍵?」


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吹雪
23: 以下、

秋雲
24: 以下、
敷波
25: 以下、
期待
安価なら初霜
26: 以下、
雪風
58: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:03:58.73 ID:FeYTzDZF0
提督「さて次だ次」
吹雪「あっ睦月ちゃーん!ってええ!?司令官!?」
提督「ちょっと待ってどこに間違える要素があったの」
吹雪「いえ、なんというかその」
提督「燃費よさそうなところ?ガリガリで悪かったな!」
吹雪「ち、違うんです!や、優しそうな雰囲気とか!」
提督「遠回しに女々しいとか思ってんだろ」
吹雪「そんなこと!」
提督「だったらお前の心、見させてもらう!」
キラーン
59: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:07:04.84 ID:FeYTzDZF0
提督「三人目っと。さて今回のお部屋はどんな感じかね」
提督「……あれ、扉二つあんだけど」
提督「まさか吹雪の奴二重人格だったのか!?」
提督「いやいやそんなまさか……」
提督「片方は普通の扉だがもう片方は少し小さいな」
提督「まずは普通の大きさの方に入ってみるか」ガチャ
60: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:08:56.44 ID:FeYTzDZF0
提督「部屋の色は……すさまじく薄いが黄色気味か」
提督「しかし、結構汚い……」
提督「加賀や大井は比較的統一感があったが吹雪はぐちゃぐちゃだ」
提督「紙が散らかってるが……どれどれ、『マルロクマルマルに総員起こし?』か」ガサガサ
提督「ルーチンワークにするようにこういう形で覚えようとしてるんだな」
提督「だがこんなに散らかっていては要領も悪くなるわけだ。整理されていないと急にその記憶を取り出せまい」
提督「部屋の隅に転がっているフォークとナイフはなんだ?傍に金が積んであるし……」
提督「あー……もしかしたらこの前秘書艦だった時に外食を奢ってやったときのことを表してるのか?」
提督「ああいう場所の礼儀作法知らなかったみたいだし、勉強しようと思ったのかも。金はお礼をしたいってことか」
提督「しかし様々な場所にうちの鎮守府の艦娘の写真があるな。交流関係はかなり多いみたいだ」
61: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:10:33.02 ID:FeYTzDZF0
提督「あそこの壁の高いところに飾ってある写真は……扶桑姉妹?」
提督「へぇ、あの姉妹を目標にしているのか。確かに最近の扶桑たちの活躍はめざましい」
提督「長門型に匹敵する火力や装甲、おまけに制空値もかなり稼げ、燃費も絶望的というわけでもない」
提督「こう考えると尊敬されるのは当たり前かもしれんな」
提督「うむ、まぁこれくらいにしよう」ガチャ……
提督「……あれ、地面がまだある」
提督「心を全て見るまで帰れないのか」
62: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:12:23.93 ID:FeYTzDZF0
提督「では、次は少し小さいもう一つの部屋だな」ガチャ
提督「……ほぼ似たような感じだな」
提督「だが最初の部屋より少々物寂しいな。写真が少ない」
提督「その分一つ一つの写真のサイズが大きいな。深く付き合っているということなのか」
提督「……ん?こっちには扶桑姉妹の写真が飾られていない……代わりに赤城が大きく飾られてる」
提督「んでその真下に……遺影?」
提督「これは……如月!?」
63: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:13:44.56 ID:FeYTzDZF0
提督「どういうことだ?何故吹雪の中で如月が死んだ扱いに……」
提督「……この辺りからはとても強い意志が感じられる。感覚だが、『守る』といったような」
提督「んーよくわからんな。単純に二重人格という感じではなさそうだ。というか今まで吹雪にそんな様子は一度もなかった」
ドクン……
提督「部屋が、胎動している……?そういえばさっきより部屋がさらに小さくなっているような……」
提督「長居は危険だな。出よう」タッタッタ ガチャ
スカッ
64: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:14:53.86 ID:FeYTzDZF0
吹雪「だから司令官に失礼な気持ちを持ってるわけではなくてですね!」
提督(帰ってきた。よし、これで終わりだな)
提督「なあ吹雪」
吹雪「な、なんでしょう」
提督「自分が自分でないと感じたことはないか?誰かに体を乗っ取られてるとか」
吹雪「え、いえそんなことはありませんよ?」
提督「そうか……」
吹雪「ただ……」
提督「何か心当たりがあるのか?」
65: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:16:05.39 ID:FeYTzDZF0
吹雪「最近夢を見るんです。この鎮守府ではない別の鎮守府で暮らす自分の夢を」
提督「夢ねぇ……どんな感じなんだ」
吹雪「ここより少ないメンバーで、決められた部隊で出撃をこなしたりするんです」
提督「……その部隊には赤城や加賀はいるか?」
吹雪「えっ、よくわかりましたね司令官」
提督「扶桑姉妹は夢では見たか?」
吹雪「んーっと……みてないと思います」
提督「もう一つ、その夢で如月が轟沈したか?」
吹雪「っ!……はい」
提督(ただの夢にしては出来過ぎてるな……)
67: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:17:29.54 ID:FeYTzDZF0
吹雪「司令官、私怖いんです。夢ってわかってても、あまりにリアルで……」
提督「…………」
吹雪「その世界は少し狂ってるんです。現実とは似ているんですが皆の性格が違ったり……」
吹雪「何よりもおかしかったのは、司令官が一度いなくなってしまった時に誰一人として悲しまなかったことです」
吹雪「最初からいなかったみたいに安否を気に掛ける人がいなくて……あの金剛さんですら……そして私自身も」
提督「俺ってばもしかしていらない子?」
吹雪「あ、あくまで夢の中でです!」
提督「はは、分かってるよ」
吹雪「それで、こんなのは私の知ってる世界じゃないってずっと忘れようとしてるんです。でも如月さんの轟沈の姿とか、色々生々しくて……」
68: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:19:17.47 ID:FeYTzDZF0
吹雪「司令官、私どうしたらいいんでしょう……毎日夜が怖くって……ぐすっ」
提督「……良くわからんが、あくまで夢なんだろ?ならそんな深く考えることはない」
吹雪「忘れられないんですよ……どう願っても刻み込まれたみたいに……」
提督「大丈夫だって。なんなら一緒に寝てやるし」
吹雪「ええ!?そんな、駄目ですぅ!心の準備が……!」
提督「い、いやそこじゃなくてだな。というか、その世界とこっちの世界には大きな違いがあるはずだ」
吹雪「ふぇ?」
提督「俺がイケメンだってことさ!夢の慕われてないような提督と一緒にしてもらっちゃ困る!」ドヤァ
吹雪「…………」
提督「無言はやめて!」
吹雪「っぷ、あはは!」
69: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:20:39.06 ID:FeYTzDZF0
吹雪「そうですよね、私たちの司令官が勝手にいなくなったり意味不明な事を言い出す訳ないですもんね」
提督「そうさ。あっちはあっち、こっちはこっち、引きずってたら駄目だ」
吹雪「はい!夢なんかでくよくよせずに頑張ります!」
提督「その意気だ!」
吹雪「ありがとうございました!心が晴れ晴れとしました!」
提督「そりゃよかった。他に悩み事はないか?」
吹雪「大丈夫です!ああ、なんだか体を動かしたい!ちょっと演習してきます!」
提督「行ってらっしゃい。気を付けてな」
吹雪「司令官!私、司令官のこと……大す……い、いえっ信頼しています! はい!」
提督「?お、おう」
70: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:22:58.06 ID:FeYTzDZF0
提督「吹雪のもう一つの部屋は結局なんだったんだろうか」
提督「小さかったり蠢いていたのは忘れようとしていたからだろうが、たかが夢で心が分離するほどのものになるのか?」
妖精「もしかしたら平行世界かもしれないです」
提督「……妖精さんか。急に出てくるのな」
妖精「妖精ですから」
提督「凄い説得力!それで、平行世界っていうのは?」
妖精「詳しくは省きますが、この世界以外の吹雪さんとこちらの吹雪さんが何らかの原因で繋がったのかもしれないです」
提督「繋がった?」
妖精「世界が終わりに近付くと、世界の欠片が他の世界に飛び散ります。それが今回こっちの吹雪さんに夢という形で送られてきたのかもしれないです」
71: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/29(金) 20:24:31.88 ID:FeYTzDZF0
提督「その欠片がこっちの吹雪の心に住み着いてたってことか」
妖精「そうです。欠片と言っても元々は大きな世界の一つ。どんな力を持っているかは未知数です」
提督「ふーん……よくわかんないや」
妖精「そんなことより、吹雪さんのカウンセリングはとてもうまくいったみたいです」
提督「まぁ憑き物が落ちたように元気になったな」
妖精「今の吹雪さんは戦意高揚でとても大きな力を引き出せますです。この調子でどんどん解決していってください」
提督「ま、出来る範囲でな……」
78: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:41:56.76 ID:u2yQ55Dz0
提督「心を癒すってのはあんな感じでいいのか」
提督「でも大井みたいに明らかによくわからない奴じゃなくて、吹雪とか一見普通に見えるのでも闇を持ってたからなぁ。全員怪しく見える」
提督「見かけたやつから次々やっていくか」
秋雲「提督ぅ、何が怪しいって?」
提督「この大和みたいな声は……秋雲か」
秋雲「正解!でもそんなに似てる?」
提督「なんとなくな。しかし今日は色んなやつから声を掛けられるもんだ」
秋雲「何々?なんかあった??」
提督「人の心をね、こうガチャッと」
キラーン
79: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:44:22.02 ID:u2yQ55Dz0
提督「突撃となりの艦娘心っと」ガチャ
ザバァ
提督「…………」ボタボタ
提督「なんじゃこりゃ!?」
提督「入っていきなりペンキが落ちてきたぞ!くっさ!」
提督「ったく、これ現実世界だと治るんだろうな……」
提督「それにしても部屋中ぶちまけられたペンキだらけだ」
提督「色んな色が混ざって、なんかみてると気持ち悪くなってくる……常に絵の配色とか考えてるのか?」
80: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:45:42.99 ID:u2yQ55Dz0
提督「だが頭が絵一色なだけあって分かりやすいな。俺が入ってきた辺りではペンキが定期的にぶちまけられてるが、違う一角では鉛筆とかが置いてある」
提督「入ってきたときには気が付かなかったが扉の色は白。まずはここで構図を考えるんだな」
提督「んで、さっきみたいにペンキぶちまけた後鉛筆の場所で細かいところまで考える」
提督「完成したらあの窓際の所に飾られるわけか」
提督「飾られてる場所に破かれた絵がたくさんあるのは常に様々な絵を新しく書こうという気概からか?」
提督「それにしてもすっごい窓から光出てる……あんまり見てると目が焼かれそうだ」
提督「てか部屋全体が明るい。イラストを描くのにモデルを照らすのは基本ってところか」
81: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:46:59.01 ID:u2yQ55Dz0
提督「まるで工場だな。ベルトコンベアーみたいに決まった作業を決まった場所で繰り返してる」
提督「フォードやトヨタを連想させる。効率的な思考とみるべきか、こういう発想が大事なのには奇抜さも必要だとみるべきか」
提督「正直こんなめちゃめちゃな中でよく普通の思考が出来るもんだと思う」
提督「よく見るとペンキで塗られて分かりにくかったけどあっちこちに布団がある」
提督「秋雲はよく寝てるからな……まぁ健康的ではあるんだが」
提督「傍に牛缶と銀シャリ……オッサンか」
提督「しかしこの一連の動きは見てて飽きないな。プラレールを見続ける子どものような気持ちだ」
82: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:48:04.16 ID:u2yQ55Dz0
提督「……いつまでも居る訳にはいかないし、もう行くか」コツコツ
提督「最後にもう一回だけチラリ」
提督「……!」
提督「部屋全体が、一つの絵になっている……?」
提督「軍艦っぽいのがうっすらと、部屋全てを使って描かれているように見える」
提督「あの形は……陽炎型と夕雲型を組み合わせたような……あーもうぐちゃぐちゃでよくわからん!」
提督「だが、秋雲の中にも戦争を終わらせようと戦う意思がちゃんとあるのだな」ガチャ
スカッ
83: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:48:57.26 ID:u2yQ55Dz0
秋雲「何?その鍵」
提督「ただのキーホルダーさ」
秋雲「ふーん、珍しい形だね」
提督「そうか?」
秋雲「そうだよ。せっかくだからそれ描かせて!」
提督「駄目だ駄目だ。これは大事なものだから手放せない」
秋雲「ぶ?、ちょっとでいいから!」
提督「駄目なものは駄目」
秋雲「だったらさ、提督も一緒に描いてあげる。それならどう?」
提督「俺も?……確かにそれなら手放さなくていいか」
84: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:49:36.26 ID:u2yQ55Dz0
秋雲「でしょ?じゃあそこ座って?」
提督「こうか」
秋雲「あ?なんか違う。もっとこう……いい感じのポーズで」
提督「わからんわ!」
秋雲「ちょっとじっとしてて。秋雲さんが直々におさわりしちゃうから」
提督「うわっ、さ、さわんな!」
秋雲「よいではないかよいではないか?」
提督「アッー!!」
85: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 02:50:40.20 ID:u2yQ55Dz0
提督「あ”?肩凝った……同じポーズで長時間いるとかキツすぎる」
提督「おまけに秋雲はある程度書いたらどっか行っちまうし……全く」
提督「しかし、あいつは何か悩みとかなさそうだな」
提督「最後に見た陽炎型と夕雲型が合わさったようなあの艦の絵……」
提督「もしかしたら秋雲は陽炎型と夕雲型のどっちつかずな感じを気にしてると思ったが、あの様子だとどちらでもいいみたいだな」
提督「そもそも秋雲って正確にはどっちなのかが分かってないみたいだしな……」
提督「まぁ面白いもの見れたしいいか」
91: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:11:13.29 ID:u2yQ55Dz0
提督「次の奴はこっちから声をかけてやる」
提督「お、ちょうどあそこに……敷波!」
敷波「へっ?呼んだ?」
提督「ああ」
敷波「なんだよー。あたしも忙しいんだけど」
提督「挨拶くらいしてもいいだろう。何も言わずに通り過ぎるなんて寂しいじゃないか」
敷波「用がないならいちいち呼び出さないでよー……別に、い、嫌じゃないけどさ」
提督「そっかそっか」
92: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:13:34.71 ID:u2yQ55Dz0
敷波「何ニヤニヤしてんのさ!ふんっ!」
提督「忙しいって言ってる割にはつまらなさそうに外見てるからさ」
敷波「だって雨が降ってるんだもん……外出るのも嫌だし」
提督「だったら俺が面白いことしてやるよ」
敷波「なにさ」
提督「お前の思ってることを言い当ててやる」
敷波「はぁ?そんなことできんの?」
提督「どうせ、一瞬だ」
キラーン
94: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:16:38.75 ID:u2yQ55Dz0
提督「はいはいおじゃまおじゃま」ガチャ
提督「……なんて」
提督「なんて普通の部屋なんだ!」
提督「先に見た三人が結構異常だったから反動が……」
提督「まず部屋の壁紙は淡い茶色のぶち柄。すごくかわいい」
提督「少し散らかってるが吹雪程じゃないな」
提督「中心にある机には何か花が飾ってある」
提督「なんだろうか、たんぽぽ?いや、白い花弁のタンポポなんて無いか」
提督「後で調べてみよう」
95: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:18:55.02 ID:u2yQ55Dz0
提督「同じ机の上にある写真立てには……誰も写ってない?いや、うっすらと影みたいなのは見える」
提督「加賀みたいに俺が映ってるわけじゃないのか。だが部屋の壁には綾波とかの特型駆逐艦のものがある」
提督「んー、この花に関係してるのかね」
提督「敷波は結構な自信家だが、この部屋にはそんな雰囲気がひしひしと伝わってくる」
提督「だからこそ中心の儚い花が際立つな」
提督「こんなところか。普通だからあんまり見るところは無いな。いや、普通はとてもいいことなんだがね」
提督「よーしからかってやるぞ」ガチャ
96: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:20:45.95 ID:u2yQ55Dz0
スカッ
敷波「一瞬だって?出来るんだったら早くやってよ」
提督「そうだな……敷波はこう、たんぽぽみたいな白い花びらの花が何ていうか知ってるか?」
敷波「なにそれ……多分マーガレットだと思うけど」
提督「そう、マーガレットだ。それがお前の中に見えた」
敷波「どういうこと?意味分かんないんだけど」
提督「あーっとえーっと、じゃあマーガレットの花言葉?とか知ってるか?」
敷波「信頼とか秘めた想いとかだったような……まさかそれが言いたいだけ?」
提督「うっ!……ああそうだよ」
敷波「くっだらねー。適当抜かして」
提督「うぅ……本当に見えたんだって」
97: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:22:01.58 ID:u2yQ55Dz0
敷波「もういいよ。お腹空いたし、あたしもう行くから」
提督「……じゃあな」
敷波「ふんっ!そうやって他の人にも声かけてるんでしょ?」
提督「まぁそういう仕事だし……」
敷波「きっとあたしより話し甲斐がある子なんでしょうねっ!」
提督「何怒ってるんだよ……」
敷波「じゃあねっ」
提督「……なんなんだ一体」
98: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/30(土) 18:23:26.37 ID:u2yQ55Dz0
敷波「マーガレット、か」
敷波「あたしにお似合いかもね。司令官に対してピッタリだもん」
敷波「……あれ?だったらあたし、司令官に秘めた想いがあるってことに……」
敷波「な、ないない!」
敷波「別に司令官と他の子が話してるの見てどうも思ってないし!」
敷波「ああもう!何か食べて気分変えよっと!」
敷波「…………」
敷波「あたし、もうっちょっと素直になった方がいいのかなぁ」
103: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:04:03.54 ID:2v2rYsXd0
提督「なんか怒らせちゃったな……」
提督「これじゃこの鍵を使ってる意味がないし注意しないと」
提督「そういえば秋雲の時にぶっかけられたペンキはやっぱり消えてるな」
提督「精神世界だから俺の肉体そのものがあっちに飛んでるわけじゃないってことなのか?」
提督「……深く考えるのはやめよう。ホームアローンの泥棒役みたいな姿にならなくてよかった。それだけでいい」
初霜「泥棒!?何処ですか提督!」
提督「何で君たちは急に現れるかね」
104: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:05:09.96 ID:2v2rYsXd0
初霜「挨拶をしなかったのはすみません!ですが今は泥棒を……」
提督「いやいや泥棒なんていないから。呟いただけだから」
初霜「えっ!ええっ!?」
提督「真面目だよなぁ初霜は」
初霜「わ、私ったらとんだ早とちりを……ごめんなさい!」
提督「じゃあ礼はこれで払ってもらおうか」
キラーン
105: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:08:26.92 ID:2v2rYsXd0
提督「たのもおオオオオオオオオオオオオオオ!!」ガチャ
提督「今回は灰色の部屋か。コンクリートっぽいな」
提督「というか、息苦しさを感じるくらいに無機質だ……生活感がない」
提督「今まで一応どんな形であれ最低限の家具一式があったが、初霜にはそれがない」
提督「代わりにあるのは数々の武器」
提督「部屋の片側に大量の武器が積んである。もう片側には病院にあるようなパイプ式のベッドと鎮守府全体が写ったいくらかの写真……」
提督「こんなにもたくさんの武器が何を表してるのか……」コツコツ
提督「初霜ってそんなに戦闘狂だったかな……?」
グラァ……
106: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:09:39.45 ID:2v2rYsXd0
提督「んん?部屋が傾いた……?」
提督「っとと、危ないな。真ん中へ戻ろう」コツコツ
グラァ……
提督「元に戻ったか」
提督「じゃあもう片側、ベッドのある方に行ったら……」
ギシッ グラッ…
提督「少しだけ傾くが武器のある側ほどではないな」
提督「まるで天秤だ」
107: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:13:03.11 ID:2v2rYsXd0
提督「もしかしたらこの構造は初霜の意思の傾きなのか?」
提督「初霜はこう言っちゃ悪いが、口調は静かだが戦いだと結構怖い」
提督「しかも以前、『私は今は恋愛とか、そういうことには興味がないの』と言っていた」
提督「武器が多い、つまり戦いの方に強く心が揺らぎ、逆に今はベッドしかない、要するに戦い以外を表す方にはあまり揺らがないということか」
提督「……いつか、初霜にも平和な世界で女の子らしく過ごしてもらいたいものだ」
提督「俺もそうできるように最大限サポートしよう」ガチャ
スカッ
108: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:16:11.52 ID:2v2rYsXd0
初霜「鍵?その鍵でどのようにお詫びをすれば……」
提督「大丈夫だ。もう詫びに値するほどのものは見れたよ」
初霜「はぁ……」
提督「なぁ初霜、戦い以外のことはどれくらい興味がある?」
初霜「戦い以外のこと……?そうですね……」
初霜「今は戦争中です。私達艦娘にとって一番すべきなのは、深海棲艦を一刻も早く撃破して平和を取り戻すことだと考えています」
提督「平和か……」
109: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:18:09.77 ID:2v2rYsXd0
初霜「私達の未来のために、今は我慢をする時期なのです。ですから……」
提督「……わかった。でもな初霜、俺はお前に戦い以外のことも楽しんでもらいたいと思ってるんだ」
初霜「…………」
提督「艦娘っていうのは心の力が大事だ。戦闘ばかりでは心がすり減っていってしまう」
提督「だから、適度に息抜きや趣味に走ったりしてもらっても全然かまわないんだぞ?」
初霜「……ふふっ、分かっていますよ」
提督「えっ」
110: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 02:19:32.69 ID:2v2rYsXd0
初霜「そう言うことに興味がないのはあくまで『今は』です」
初霜「だからこの戦いが終わったら自分自身が楽しめることをやっていきたいと思っています」
提督「あっ……はは。そっか、分かってるならいいんだ」
初霜「はい。ですから提督、もしも私が歩みを止めてしまったらどうか叱責してください」
初霜「そして私が皆さんを守って見せます。一隻でも、一人でも多く」
提督「ああ、これからもよろしく頼むよ」
初霜「こちらこそ、よろしくお願いします」
119: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:02:10.28 ID:2v2rYsXd0
提督「初霜は心配いらなそうだな。やっぱりいい子だ」
提督「んで、また一つ分かったことがあるな」
提督「吹雪や敷波の部屋は色々な物が乱雑に散らかっていた」
提督「俺はこれを単純に物を片付けられない子なんだとだけ考えていたが、恐らくそうじゃない」
提督「現実の敷波や吹雪の部屋が汚いなんてことは無いし、それだったら秋雲とかの方が散らかってる」
提督「じゃああれは何か?」
提督「多分だが、心の部屋が散らかっているのは自分のことがまだよくわかってないからだ」
提督「アイデンティティの確立……さっき言った秋雲、他に大井は心の部屋が一つの物で満たされているだけで関係ないものが散らかってる訳じゃない」
120: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:04:43.74 ID:2v2rYsXd0
提督「絵や北上一色だったのは、それが自分にとって大事なのだとはっきり認識しているからだ」
提督「逆に吹雪や敷波はまだ思春期。自分自身をどう表せばいいかわからないから散らかっている」
提督「様々な事を試し、選択し、そして自分なりの心の部屋というものが確立されていくんだろう」
提督「心か……」
提督「……日も落ちてきたし次の子で今日はおしまいにするか」
提督「秋雲に時間を取られ過ぎたかね。取り敢えず腹減ったし食堂いこう」
121: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:06:43.41 ID:2v2rYsXd0
?食堂?
提督「夕方なだけあって混んでるな……どこか空いてる場所はっと」
雪風「あっ、司令!司令も御飯ですか?」
提督「おお雪風。お前もか」
雪風「はい!せっかくなので司令も一緒に食べませんか?隣の席が空いてますので」
提督「助かる。ちょうど空席を探してたところなんだ」
雪風「それは幸運でした!ではこちらです!」
提督「ああ」
122: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:08:06.40 ID:2v2rYsXd0
雪風「司令と一緒だなんて幸運の女神のキスを感じちゃいますね!」
提督「そ、そこまでか?」
雪風「司令は皆に大人気ですから、雪風が独占なんてあまりできませんので!」
提督「そういうもんかねぇ」
雪風「ではいただきます!」
提督「いただき開錠っと」
キラーン
123: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:09:53.97 ID:2v2rYsXd0
提督「本日最後は雪風か」
提督「雪風は明るい子だし楽しそうな部屋だといいな」ガチャ
提督「おお?オレンジ色の部屋か。温かい雰囲気だ」
提督「家具も机、布団、本棚、箪笥と何でも揃ってる」
提督「現実の部屋と言われても分からないくらい完成されているな」
提督「…………」
提督「なんだ……?何なんだこの感じ」
124: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:12:11.81 ID:2v2rYsXd0
提督「確かに心っていうのは千差万別。こういう部屋があっても不思議じゃないはずだ」
提督「だがこの部屋は……完成され過ぎている」
提督「まるで、『こうであるべき』言われて作り上げたような……」
提督「雪風の本能、自然の意思で出来た様には見えない」
提督「仲のよさそうな子との写真も無い」
提督「なによりさっき建てた仮説、物が散らかってるという法則が成り立たない」
提督「俺が間違っている可能性もあるだろうが、塵一つ見つからないほどのものなのか?あの雪風のような幼い少女がだぞ?」
提督「……あの壁にある古時計、短針と長針がそれぞれ逆に動いている?」
提督「繰り返し繰り返し同じように……」
125: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:13:46.91 ID:2v2rYsXd0
提督「駄目だ、どうしても気になる」コツコツ
提督「この時計、なんて気味悪いデザインなんだ……漫画によく出てくるような死神が掘られてる」
提督「んー……?後ろに空間がある……?」サワサワ
提督「動かしてみるか」
提督「おっも……」ズズズズズ……
提督「ようやくどけれた…………!?」
提督「なんだ……これ……」
126: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:14:40.65 ID:2v2rYsXd0
提督「数えきれないほどの鎖と錠前で塞がれた扉……なのか?」
提督「この扉の奥から何かとてつもなく恐ろしいものを感じる……」
提督「鎖は壁に抉られる様に飛び出てる」サワサワ
バキッ!
提督「!?鎖と錠前が全部切れた!?」
提督「少し触っただけなのに……」
提督「この扉……入って、みるか」
ガチャ…ギギギギギ……
127: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:16:25.28 ID:2v2rYsXd0
提督「ゲッホゲホ……さっきまでの部屋とはまるで違う……」
提督「不安、悲しみ、絶望。あらゆる負の感情が満ち溢れている」ゾクゾク
提督「不味いな・・・・・ずっとここにいると押しつぶされそうになる……」
提督「ええい!気をしっかりしろ俺!」
提督「部屋は真っ暗。少し奥へ行っただけで前の部屋の光が届かなくなって見えなくなるだろう」
提督「風が吹いている……この部屋無茶苦茶広いんじゃないか?」コツコツ
提督「駄目だ、もう入口の光以外見えない」コツコツ
提督「50歩ほど歩いたが全く壁があるように思えない……」
128: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:17:47.75 ID:2v2rYsXd0
提督「引き返すか。これ以上の詮索は危険だ」
提督「妖精が言っていた……相手の心をいじくりすぎると壊れるって」
提督「だがそれは俺に対しても言えるんじゃないか?精神体の俺がこの部屋で引き込まれたら、現実の俺はどうなってしまうか……」
ジャラ…ジャラ…
提督「……何の音だ?」
ジャラ…ジャラ…
提督「近付いてくる……?」
ヒュッ!
提督「っ!!あ……っぶねえ!!」
129: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:19:24.19 ID:2v2rYsXd0
『…………』
提督「何なんだコイツは!?」
『…………』ブンッ!
提督「鎌!?くそっ、こっちは丸腰だってのに!」サッ!
提督「さっきの古時計に掘られていた死神かコイツ……」
『……ル……』
提督「あぁ?」
『マモ……ル……』
提督「護る……?」
『ユキカゼハ……幸運ダ、カラ……』
提督「おいおい、まさかこんなのが雪風の幸運の正体だってのか!?」
130: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:21:10.00 ID:2v2rYsXd0
『雪風ガ……皆ヲ……ガアアアアアアアアアアアアア!!』ブンッ!
提督「ヤバイヤバイ!これじゃ女神どころか死神だろ!」ササッ!
『アタシ……幸運……代ワリニ皆……死ヌ……』
『護ル……護……ル?ドウセ皆死ヌノニ……?』
『殺シテルノハ雪風……?』
『護ッテイルノハ……自分自身……』
『ウ、ア、アアアア……!!』
提督「動きが止まった……今のうちに逃げる!」ダダダダ
131: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:22:54.54 ID:2v2rYsXd0
『ドウシテ……幸運ナンテ……沈マナイ艦ナンテ、ナイ……』
『雪風トイルダケデ……皆不幸ニ……』
提督「っく!」ガチャッ!
『辛イ……モウ皆ガ死ンデ、雪風ダケ生キ残ルノハ……』
『嫌……ダ……護……ル』
バタンッ!
提督「はぁ……はぁ……危なかった」
ジャラジャラジャラガチャガチャガチャ!!
提督「!?さっきの扉にまた鎖がと鍵が……」
132: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:24:39.97 ID:2v2rYsXd0
提督「…………」
提督「取り敢えず時計を元に戻して……」ズズズズズ
提督「これで良し、か?」
提督「なんだかどっと疲れた……現実に帰ろう」
提督「さっきのこと妖精さんに聞かないとな……明らかに普通じゃない」
提督「お邪魔したな」ガチャ
スカッ
133: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:25:54.83 ID:2v2rYsXd0
雪風「司令!美味しいですね……!?」
提督「ふぅ……って雪風!どうした!?」
雪風「う、おえっ……かはっ……」ガタガタ
提督「だ、誰か救護を!早く!」
雪風「あ、あたし……どうなって……」
提督「…………」
134: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:30:55.81 ID:2v2rYsXd0
────────────────────────
提督「雪風の様子はどうだ?」
妖精「大分錯乱していたようですけど、なんとかおさまったです」
提督「心当たりはあるが……やはり俺のせいなのか?」
妖精「その通りです。提督さん、かなり心の深いところまで入り込みましたね?」
提督「ああ……雪風の心の部屋の奥にはとんでもないものが潜んでやがった」
妖精「どのような感じでした?」
提督「厳重に鎖や鍵がかけられた扉を壊れた時計の裏で見つけたんだ」
妖精「なるほど」
提督「だがその封は触っただけで解かれ、扉の奥には真っ暗なただっ広い空間と死神がいた」
妖精「死神ですか……」
136: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:33:18.77 ID:2v2rYsXd0
提督「なぁ妖精さん、アレはなんだったんだ?」
妖精「死神というのはよくわからないですが、その扉は雪風さんのトラウマ、触れてはいけない部分だったんです」
提督「トラウマ?」
妖精「誰でも心には闇があるです。普通は何らかの方法でそれを解消したり、できない場合は闇に堕ちるです」
提督「中二……とからかう雰囲気じゃないな。続けてくれ」
妖精「雪風さんは堕ちてもいいほどの闇を抱えてます。それを強靭な精神力で心の奥に隠していたんです」
妖精「ですが今回提督さんが雪風さんの心に侵入したことでその精神力で封じられていた闇が出てきてしまったです」
提督「強靭って……封じ込めていた鎖や鍵は触っただけで千切れてしまったんだぞ?」
妖精「トラウマは少し思い出させただけでも次々と連鎖的に思い出され、蝕んでいくです。触っただけでもきっかけとしては十分すぎるです」
提督「そうか……そしてその封を切ってしまったから雪風は体調を崩したのか……」
137: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:35:13.04 ID:2v2rYsXd0
妖精「その鎖はその後どうなったです?」
提督「部屋から出たらまた同じように出てきて扉が封じ込まれたよ。隠していた古時計も元の位置に戻した」
妖精「なら一安心です。もしふさがっていなければ、雪風さん今後はふとしたことでトラウマが呼び起されて今のような状態になるようになっていたでしょう」
提督「俺が雪風を壊すところだったのか……」
妖精「忠告したはずです。あまり物を壊しては駄目だと」
提督「済まなかった……」
妖精「それは雪風さんに言ってあげてくださいです」
提督「ああ……」
妖精「最後にその死神とやらですが、それは雪風さんがイメージした自身の幸運の形でしょう」
提督「あんなのがか?」
138: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:41:01.67 ID:2v2rYsXd0
妖精「雪風さんは幸運故に生き残り、代わりに周りの艦の沈んでいく様を見ていたはずです」
妖精「勿論ここの雪風さんは他の方が轟沈した姿なんて見たことがありません」
妖精「ですが、艦娘の元はご存じの通り鉄の塊だったころの艦です。その艦の記憶が今の雪風さん自身に刷り込まれていても何ら不思議ではないです」
妖精「古時計は繰り返される歴史、昔の艦の自分と今の艦娘の自分を表しているはずです」
提督「あいつは自分が幸運だなんて本当は思ってないのか?」
妖精「自分が幸運なことで誰かが不幸になる。だから自分は他人を殺す死神だ、とでも考えているのですかね」
提督「……雪風の部屋は普通の方でも人間味を感じさせなかった。アレはトラウマを封じ込めるのにかなり力を使っているということなのかもしれないな」
妖精「まぁこれで大体分かったですね。雪風さんはハッキリ言って最も深い闇を持っているです。そんな方を見るのはまだ早すぎたんです」
提督「もっと配慮すべきだった……」
妖精「まぁまだやり直せるです。今は雪風さんをよく見てあげて下さいです」
提督「ああ、見舞いに行ってくるよ。ありがとうな」
妖精「いってらっしゃーい」
139: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:43:13.59 ID:2v2rYsXd0
────────────────────────
提督「雪風、起きてるか?」
雪風「あっ、司令……」
提督「どうだ体調は?」
雪風「大分よくなりました。でも不思議です、急に気持ち悪くなっちゃって……」
提督「……雪風、無理しなくていい」
雪風「無理なんてしてません」
提督「じゃあどうしてそんな張り付いたような顔なんだ?」
雪風「…………」
141: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:46:34.86 ID:2v2rYsXd0
提督「お前が何に苦しんでいるのかはあえて言わない。だけどそれは一人で抱えていけるものじゃないんだ」
雪風「……怖いんです。自分じゃない誰かの記憶があたしを取り込んでいって、いつか自分が自分じゃなくなるって」
提督「自分が自分じゃなくなる……?」
雪風「頭の中で響くんです。『どんなに願っても叶えられない絶望の中で、唯一自分を保つことのできるもの……それは怨念』と」
提督「怨念……」
雪風「その言葉に従ったら、多分深海棲艦みたいになっちゃいます。それが怖いんです……」
提督「…………」
雪風「だから頭の中も出来るだけ皆がやってることを真似るようにして、違う行動をしないことで変に意識を起こさないようにしてるんです」
142: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:48:16.01 ID:2v2rYsXd0
提督「……誰かに頼ったりはしないのか?」
雪風「自分のことですから……頼ったところで……」
提督「そんなことはない!」
雪風「司令……?」
提督「本当に頼れるやつってのはな、心の中に刻み込まれるんだよ!」
提督「その時点でそいつのことを意識して止まなくなる。でも人はそうやって関係を作って成長していくんだ!」
提督「雪風はただ抱え込んで逃げてるだけだ!」
143: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:49:50.88 ID:2v2rYsXd0
雪風「逃げてる……?」
提督「そうだ!蝕まれるのが怖いなら、抱え込まずに立ち向かうんだ!」
提督「そのための艦隊だろ!仲間だろ!俺がいるんだろう!」
雪風「!!」
提督「俺が、俺たちが力になる。一人で戦うのはもう今日で終わりだ雪風。俺の手を取るんだ」スッ
雪風「……いいのでしょうか。甘えてしまっても……」
提督「何も問題ない!俺はいつもみたいに『しれえ!』って元気よく言う雪風が好きなんだ!」
雪風「しれえ……似てないですよ……ふふっ」
提督「ほっとけ」
145: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:50:56.67 ID:2v2rYsXd0
雪風「わかりました。この雪風、これからは本当の意味で皆さんと共に戦います」ガシッ
提督「OKだ」
グゥ…… グゥ…
提督「……すまん」
雪風「あはは……雪風もさっき食べれなかったからお腹空いちゃいました」
提督「なら、食いに行くか」
雪風「はい!お供します!」
146: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:54:04.53 ID:2v2rYsXd0
提督「こうして俺はその後もいろいろな奴の心を見た」
提督「ある時は『勝利』と掲げられた旗がいくつもあるカツくさい荒々しい場所だったり」
提督「真っ青で暗い、だが天井からは細い光が暖かく差し込む部屋で静かな海底のような気分を味わったり」
提督「入った瞬間壁に叩きつけられ、常に全力ダッシュしてないといけない部屋だったり」
提督「航空戦艦と瑞雲まみれだったり」
提督「入った心の主の分身が、『素直な自分』と『素直になれない自分』とで喧嘩してる部屋でそれを宥めたり」
提督「大量の戦術書類が積まれていると思ったら、横から拳が付いたアームが飛んできて全部吹き飛ばしていたり」
提督「真っ暗な部屋で用意された懐中電灯と武器で迷路を進まされ、夜戦を強制的に味わわされたり」
提督「張りぼての化粧品や高級品の裏を覗いたらお子様ランチやなでなでゾーンとか言うのを見つけてしまったり」
提督「鋼のような部屋と思ったら、段ボールの中に小動物が大事に大事に世話されていたり」
提督「とにかく多種多様なものだった」
147: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:57:00.74 ID:2v2rYsXd0
提督「だがこれのおかげで艦隊の結束は以前よりあるかに強くなったと思う」
提督「自分の弱いところを知り、大事なものを思い出す」
提督「それが心の力だ」
提督「んで、今日大変なことが起きた」
大井「誰に向かって話してるんですか?ってこんなことがちょっと前にもありましたね」
提督「全部バレて拘束された」
148: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 20:58:33.48 ID:2v2rYsXd0
大井「提督……これで私たちのことを見てたんですね……ギョライウチマスヨ」ボソッ
加賀「…………」(気付かれてた……いっそ今すぐ想いを……)
初霜「面白い試みですね」ニッコリ
敷波「あんたサイッテー!」
雪風「雪風はかまいません!」
吹雪「まぁそのおかげで助かったところもありますけど……」
秋雲「これは提督の心の中にも入らせてもらわなきゃね?。スケッチしてやる!」
妖精「そういうと思ったので良かれと思って全員分の一回限りだけ使える色々改良した新鍵を用意しましたです」
提督「妖精さん!?裏切るのか!」
妖精「僕は別にバレたらどうこうなんて知らないですし」
提督「貴様ぁー!!」
149: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 21:00:01.17 ID:2v2rYsXd0
妖精「はーいじっとしてて下さいねー。ついでに提督さんの鍵は全員分見たということでもう壊したです」
提督「まぁ悪用が怖いし……ってそんなこと今はどうでもいい!」
妖精「皆さんあんまり心の中で暴れちゃだめですよ?。対策はしてありますからある程度の破壊くらいならなんやかんやで大丈夫ですけど」
提督「何も大丈夫じゃないわ!や、やめろ入って来るな!!」
大井「それではみなさん行きますよ!」
「「「「「「「「「「「「「「「開錠!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」
提督「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
キラーン
150: ◆o8Jn.8ZlOFsY 2015/05/31(日) 21:04:02.53 ID:2v2rYsXd0
これにて終わりです
ちょうどいい感じに纏めれたのでここで完結。だらだらやるの、良くない。引き際、大事
なお私は心理学も史実もWiki齧りですから責任は持てません
では安価を取っていただいた方、ここまで読んでくれた方、ありがとうございました
151: 以下、
乙乙
楽しかった
152: 以下、

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