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【艦これ】加賀「夜、指令室にて」


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1:
短いです
加賀さんの同人誌読んでいたら、突発的に書きたくなった
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432523015
2:
指令室。ここは鎮守府の指揮を執る提督と彼に任命された秘書艦が仕事をするための場所だ。大規模作戦時や遠征の報告など様々な用途で使用される部屋だけど、それも昼の間だけ。
夜になれば、仕事はない。
提督は私室に戻るし、私たちも自室で体を休めたり、娯楽室で楽しい時を過ごす子もいれば、訓練に励む子も居る。
この鎮守府は定時になればそれ以降、仕事は行わないというルールがある。社会では珍しく、この制度を取り入れている箇所は少ない。
それも彼が真面目で優しい性格の持ち主だからだ。
彼が提督で本当に良かった。心底からそう思える。
――話は逸れてしまったが、つまり、何が言いたいか。
それは定時を超えた夜遅くに私が指令室に呼ばれている今、この状況はおかしいということだ。
需要な問題でもあったのか。本部からの命令があったのか。それはわからない。
だけれど、私には心当たりがある。
秘書官として、書類仕事を片付けている時に目にしてしまったのだ。
『ケッコンカッコカリ』という新制度について書かれた紙を……。
目を通せば、どうやら艦娘の能力を限界突破させるものらしい。それも大切だが、今の私にとって最も大事なのはその装備品だ。
指輪。
提督とおそろいのエンゲージリング。
3:
それは誰にも譲りたくない。
この鎮守府には提督に対して恋心を抱いている子が多い。ライバルはたくさんいるのだ。そして、不幸なことにその子たちはみんな可愛い。端麗な容姿をしている。
そんな中から彼から選ばれて指輪を渡されたい。
そう思っていた矢先だ。
私は昼に提督に命を受けた。
『本日の23:00に指令室に来るように』――と。
そのことを思い出して思わずにやけてしまう。
これは……もう私の勝ちではないでしょうか。
4:
『慢心してはダメ』。
これは私の友人がよく口にする言葉だ。戦場へ赴く時、必ず胸に刻んでいる。
それを今も自身に言い聞かせているけれど、こればっかりはもう間違えようがない。……いや、自分であってほしいと強く願っているからこそ、決めつけたいのだ。
不安げに揺れる心を落ち着かせるために。
「……着いてしまったわね」
気づけば、見慣れた両開きの扉の前。
開けようとして、手がわずかに振るえていることに気づいた。
……緊張している?
……ええ、そうね。緊張している。
これがただの秘書官への報告だとしたら? 
『ケッコンカッコカリ』について説明するだけだったら?
もしかしたら、すでに違う艦娘に指輪を渡していたら?
……怖くて、開けられない。
5:
「……あれ? 加賀さん、何してんの?」
後ろから私を呼ぶ聞き覚えのある声。
左右に分けられた髪をピョコピョコと揺らしながらやってきた彼女は五航戦の妹の方である瑞鶴。
彼女は普段と変わらない屈託のない笑みを浮かべていた。
「……いえ、なんでもないわ。あなたこそ、どうしてここに?」
私がそう聞くと、彼女は笑顔をより一層明るいものにする。
「えへへ……実はね? 提督さんが大事な話があるんだって。この時間に指令室まで来てくれって言われたんだっ」
その瞬間、急に何かが冷めていった気がした。
理由はわかっている。さっきまでそのことで躊躇していたから。
どうして秘書艦でもない彼女が指令室に?
――そんなの、決まっているじゃない。
6:
「なんだろうね? 加賀さんは何か知ってる?」
「……ええ。もちろん、私は秘書艦だもの」
「あ、やっぱり? 加賀さんも提督さんに呼ばれたんだ」
「……そうね」
短くでしか言葉が返せない。上手く表情が作れない。
私は栄えある一航戦。後輩の門出を祝えなくてどうするの。
醜い感情を出してはいけない。涙を見せてはいけない。
せめて、彼女が指令室に入るまでは。
「じゃあ、一緒に入ろう!」
「ええ……えっ?」
瑞鶴は私の手を取って、ドアを開ける。そこには白の軍服を着た提督が立っていた。
愛しい人が立っていた。
手にリングケースを持って。
7:
「――っ」
胸が締め付けられる。言葉にできない想いにかきむしられる。
痛い、いたい、イタイ。
優しい笑顔も、二人だけの空間も、全てが瑞鶴のものになる。
彼女だけのものになる。
そんなのは……嫌だった。
でも、私にそんなことを言う資格はない。
だって、選ばれたのは彼女だから。
「提督さん! 呼ばれてやってきたよー。それで大事な話って?」
「ああ、瑞鶴。これを君に渡そうと思って――」
そう言って提督が瑞鶴にケースの中に入った指輪を渡す。
……そこまでだ。
私がおぼえているのはそこまで。
そのあと、どうなったのかはわからない。
思考が途切れて、記憶にまったくと言っていいほど残っていない。
放心していた。魂が抜けていた。
後ろで閉まったドアの音で意識が戻ったくらいなのだから、そう言われてもおかしくない状態だったに違いない。
そして、あの二人はそんな私に気が付かないほど幸せな気持ちだったのだろう。
8:
「……ぅ……ぁぁっ」
ついに防波堤は決壊する。
塞ぎ止めていた涙が頬を伝い、ポタポタと地に落ちる。
ああ……失恋したのね……私……。
もう止まらない。止められない。
その場に座り込み、声を上げて、泣き始める。
誰もいないはずの空間。
私を案ずる声があった。
「えっ、ちょっ、加賀? なんで泣いてるの!?」
それは大好きな人の声だった。
愛しい、恋しい、男性。
「……提督? どう、してここに……?」
あなたは……さっき瑞鶴と部屋を出ていったはずじゃ……!
私の様子に困惑したように見えた彼だったが、質問には答えてくれた。
「どうしてって……まだ加賀に話をしていなかっただろう?」
「……え?」
9:
……どういうこと? 私への話とは瑞鶴とのケッコンカッコカリではなかったの……?
ダメだ。
上手く頭が働いてくれない。
こんがらがっている。
「……瑞鶴は……? 彼女は放っておいていいのですか? ケッコンカッコカリをした大切な彼女ではないんですか……?」
私がそう言うと、彼はバツが悪そうに目線をそらした。
何故か、その顔はふだんより赤らめている。
ごほんっと大きな咳払いをして、彼は口を開いた。
10:
「……いや、まぁ、そのことなんだけどさ。確かに瑞鶴とはケッコンカッコカリしたよ?」
「でしょう? なら、彼女と一緒にいてあげてください……! 私なんかじゃなくて! ずいか――」
言葉はそこで途切れる。唇に何かが触れた。温かいものが。
それによってふさがれて、続くはずだった言の葉は紡がれない。
永遠のように感じられた数秒間。
至近距離にあった彼の顔は遠のいていく。
「……ぇ……今の……」
自分が何をしていたのか。それを理解すると、ボッと一気に体温が上がった気がした。
鼓動が高まる、まる。
わ、わ、私はなんて破廉恥なことを……!
「ててて提督!?」
裏返る声。恥ずかしくて死んでしまいそうだけど、それ以上に聞きたいことがある。
11:
「な、なぜ、このようなことを!? あ、あなたには瑞鶴という人が!」
「それ、誤解だから」
「ご、誤解? でも、さっきあなたは瑞鶴とケッコンカッコカリしたって」
「うん。でも、あれはあくまで能力を最大限に引き出すだけであって、本当の結婚とは別物だ。当然、そのことも瑞鶴に説明してある」
「で、でも、それじゃあ、私をどうして呼び出したのですか!? 瑞鶴だけでよかったのでは!?」
「あー、それはだね……うん。君にも渡したいものがあったから」
「……渡したい、もの?」
「ああ、俺にとっては一世一代のものさ」
彼はポケットの中に手を突っ込むと、中から一つの小さな、小さなケースを取り出す。
それを私に向けて、蓋を開けた。
姿を現したのは、宝石がはめ込まれた銀色のリング。
12:
「――君が好きだ。俺の一生を君に捧げよう。だから、加賀の人生を俺にくれませんか?」
その言葉はまるで意味が分からなくて
少しずつ、やっと染み込んできて
止まりかけていた涙はまた潤いだした。
ああ、好きだ。私はこの人が大好きだ。
誰よりも、ずっと、ずっと、ずっと、この人のことが――。
その感情のあまり、言葉が出てこない。
だから、私は態度で示すことにした。
はしたなく、彼に抱き着く形で押し倒す。
自然と視線が重なった。瞳を閉じて、吐息が聞こえる距離になり。
そして、私はもう一度、唇に温もりを感じるのであった。
13:
以上です
読んで下さった皆様、ありがとうございました
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