【R-18】少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」【19〜20話】back

【R-18】少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」【19〜20話】


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ヒーラの一人称編だなんて素晴らしい
41: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:18:09.07 ID:6igliURno
傭兵「だっ。久しぶりに殴られたな」
僧侶「きゃーごめんなさいっ! …いやっ、見ちゃヤですっ」ぶくぶく
傭兵「ヒーラちゃん水着どうした」
僧侶「わかんないです…いつの間に脱げちゃったんでしょう」
傭兵「…」キョロキョロ
傭兵「あっ」
ソル様の視線の先では、私のビキニが波間をゆらゆらと漂っていました。
僧侶「あんなところに」
僧侶「どうして…」
傭兵「よし、取ってくるから」
僧侶「ま、まってくださいっ。一緒に…」ぎゅ
傭兵「ちょっ、のんびりしてたらどこかに流されちゃうぞ」
僧侶「だってぇ…ここちょっと深いんです!」
傭兵「大丈夫足つくから」
僧侶「でも波が…あぷっ、えほっ、波がきたら顔…あぷっ! えほっえほっ」
傭兵「わかった。背中に掴まってくれ」
僧侶「はい」
42: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:23:28.17 ID:6igliURno
傭兵「くそっ、この」
傭兵「あっ、畜生。逃がすか」
僧侶「ソル様…また深いとこまで来てますよぉ」
傭兵「なんで浜のほうに流れていかないんだこいつ」
僧侶「ううう…」
傭兵「ダメだ。どこいった」
水のなかで動きの鈍るソル様は、悪戦苦闘してついには私の水着を逃してしまいました。
傭兵「ごめん」
僧侶「いえ…しっかり着用できなかった私が悪いんです」
僧侶「はぁ…買ったばっかりなのに」
傭兵「可愛い水着だったのにな」
傭兵「まぁ、そのうち浜に流れ着くだろう。回収できる可能性はある」
僧侶「…いまはどうしたらいいですか」
傭兵「…え…っと」
43: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:28:08.09 ID:6igliURno
僧侶「まさか胸を丸出しのまま浜辺に戻るなんて言いませんよね!」
僧侶「人があんなにたくさんいるのに…」
傭兵「だよな…じゃあ俺が何か身に付けるものをとってくるから、ちょっとここで待っ――――」
僧侶「だからそれはイヤなんですっ!」がぶっ
傭兵「痛いっ、わかったわかった!」
僧侶「がうがう。それで溺れちゃったらソル様のせいですからっ!」
傭兵「どうどう。ちょっと落ち着こうな。動物みたいになってるぞ」
僧侶「ぐすっ…申し訳ありません。でも海の中は不安で」
傭兵「向こうの岩場に移動しよう。あの辺りなら人はほとんどいないはずだ」
僧侶「そうですね…あそこで待ちます」
【岩場】
傭兵「よっと、上がれるか?」
僧侶「はい…ん、しょ…登れ…な」
傭兵「お尻押し上げていい?」
僧侶「はい…んやっ、ん…しょ」
傭兵「ふー、これでやっと一息つけるな」
僧侶「ううう…私の水着…もう海なんてこりごりです」
44: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:36:19.17 ID:6igliURno
ソル様がひょいと軽い身のこなしで私の隣にあがってきます。
私はこの岩場に登るのにあんなに苦労したのに…。
私は男の人との身体能力の差を痛感し、なおさらナイーブになっていました。
傭兵「はぁ…ほんとに見失っちゃったなぁ」
傭兵「あとちょっとで捕まえられるってなったときにサッと逃げちゃうんだよなぁ」
僧侶「やっぱり何かいたのでしょうか」
傭兵「ウミヘビか何かが誤ってひっかけて持って行ってしまったのかな」
僧侶「…」
私は丸見えになっている胸を抱きかかえるように隠して、ソル様を窺い見ると、
ソル様は笑顔で頭をなでて慰めてくださいました。
僧侶「はぅ…」
傭兵「さて、そろそろ羽織るものを取りに行ってくる」
傭兵「シャツでいいよな?」
僧侶「はい」
立ち上がって屈伸運動をするソル様をみて私はふとあることに気づきます。
僧侶(ソル様…あなたという方はこんな状況なのにもしかして…)
ソル様の海水パンツは誰が見てもあきらかなくらい、ふっくらとお山を作っていました。
45: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:41:35.40 ID:6igliURno
傭兵「…ど、どうした。なんだか視線を感じるんだけど」
傭兵「まさか俺の筋肉に見惚れた? ふふ」
僧侶「…」ジトー
傭兵「はぁっ…そんなマナみたいな目しないでくれ」
僧侶「あの。私の勘違いなら申し訳ないのですが」
傭兵「な、なにかな」
僧侶「ソコ。そんなお姿で浜辺に、人前に戻る気でしょうか」
傭兵「…」
僧侶「否定しないんですね。もうっ」
傭兵「だってなぁ、ヒーラちゃんがそんな格好だから。俺は男なんだからこうもなるよ」
僧侶「これはハプニングなんですよ!?」
傭兵「むしろそのほうが」
僧侶「がぶっ」
傭兵「あいたたたっ、なんで噛むんだよ」
僧侶「ソル様って、私程度の力で叩いてもこれっぽっちも効いてませんもの」
46: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:47:45.30 ID:6igliURno
傭兵「でもなぁヒーラちゃん…あたってるよ」
ふにっ
僧侶「…!」
傭兵「確かに。こんな状態じゃユッカたちのもとにも戻れないな」
傭兵「浜辺でおっ勃ててる不埒な野郎を取り締まるのも今回の俺の仕事だからな」
僧侶「ご自分がそうなってちゃ立つ瀬がないですよ」
傭兵「じゃあ、どうしたらいい?」
僧侶「…」
僧侶「脱いでそこの岩に腰掛けてください…」
傭兵「いいの?」
僧侶「は、はい…。いい…ですよ」
傭兵「じゃあお願いしようかな」
僧侶「終わったらすぐに取ってきてくださいね…?」
傭兵「おう。だんだん日も落ちてきたしはやめに終わらせよう」
47: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 22:55:43.92 ID:6igliURno
ソル様は海水パンツをするすると下ろして、大きな岩の上に腰を下ろしました。
股間には赤く大きくいきり立ったモノが私を威嚇しながら待ち構えています。
僧侶「こんなにおっきくして…」
傭兵「ヒーラちゃんのおっぱいがすっごくエッチにみえた」
傭兵「やっぱこう、外でってのは良いな」
僧侶「何言ってるんですか」
私はソル様の足元に膝立ちし、彼の両足の間に身体を割り入れ、
眼前で天をつくように固くそびえ立つおちんちんを両手でそっと掴みました。
さきほどまで冷たい水の中にいたのに、それはとても熱くたぎっていて
その大きさに魅せられた私はおもわず鼻をくんと鳴らして、唇を近づけていきました。
ちゅっと唇のさきっちょがソル様の敏感な赤い部分に触れます。
傭兵「ヒーラちゃんそこにキスするの好きだね」
僧侶「…んっ、ちゅ」
僧侶「ソル様の大切なとこだから、優しくしないと…ちゅ」
48: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:02:59.23 ID:6igliURno
私は左手の指でぎゅっと根本をつかんで、右手ですこし竿の部分をこすりながら、
かわいいさきっちょを口に含んで唾液をからませていきました。
僧侶「ちゅる…ちゅっ、ちゅむ」
僧侶「ちゅ…うふ。ちょっと塩辛いです」
傭兵「そりゃ海水だからな」
僧侶「ん…む、ちゅっ」
そのままおちんちんの裏っかわのすこし複雑な形をしている部分に
舌をぺっとりと這わせて、口内でひくひくとした脈動を感じながら、筋の部分を丁寧に舐めます。
するとソル様はすこしくぐもった声をあげて、私の頭をなでてくれました。
僧侶「ここ、すひれふか?」
僧侶「はむ…れろ、れろ…ちゅ、れろ」
傭兵「あぁ…ヒーラちゃんの舌がざらざらしてて気持ちいいよ」
僧侶「よかった…ちゅ」
この行為を俗にフェラチオと呼ぶそうです。
私は実は何度か練習を重ねていました。
相手はマナちゃんにもらった4号とよばれる木の棒です。
49: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:08:55.64 ID:6igliURno
僧侶(4号よりも…ずっと熱くて、硬いのにどこか柔らかくて…おいしい)
僧侶(ずっと…我慢してたんですね)
僧侶「はむ…ちゅっ、れろ、れろ…えろ、れろ」
舐め続けているとソル様のさきっちょの小さい穴から、とても粘度の高いおしるが少しずつ溢れてきました。
私がそれを舌先でぺろりとなめとると、ソル様はあからさまにびくんと身体を跳ねさせて反応します。
私はその反応がうれしくっておもしろくって、何度も何度も小刻みにさきっちょを責め立てました。
傭兵「ひ、ヒーラちゃ…」
僧侶「…? れろれろ、れろ…あむちゅ…ちゅむ、れろぉ…♥」
傭兵「なんとなく…上手になったな」
僧侶「うふふ…はむ」
僧侶「竿の部分もうちょっと強くごしごしして大丈夫ですか?」
傭兵「あ、あぁ…」
僧侶「…♥」
 しゅっしゅっ しゅっ
 しゅっ しゅっ しゅっ
僧侶「あぁむ…ちゅ…れろ、れろ、れろ…」
僧侶(ソル様が私なんかのテクニックで喜んでくれてる…えへへ)
50: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:15:18.96 ID:6igliURno
だんだんとソル様のおちんちんは大きく膨らんできて、
いよいよ限界が近いのかなと私は感づきました。
ソル様は依然として小さな声をもらすだけで、なにも教えてはくれません。
 しゅっ しゅっ しゅっ 
 しゅっ しゅっ しゅっ
僧侶「…? いっひゃっていいんれひゅよ」
僧侶「…ん、ちゅ…む…れろれろれろれろ」
傭兵「…ぁっ、あ」
だんだんと口のなかがソル様の匂いが満たされてきます。
唾液とおしるをぐちょぐちょに混ぜあわせて私はいやらしい音をあえて立てながらおちんちんを舐め続けました。
するとソル様は思いもかけず、私の頭を数度タップして、行為を中止するよう指示を送ってきました。
僧侶「…? ソル様?」
僧侶「もうちょっとだったのに…どうしちゃったんですか」
傭兵「…あのさ」
僧侶「…?」
傭兵「口の中でも出したいんだけど、今日はどっちかっていうと…」
ソル様はやや申し訳なさそうな顔で、私の何もまとっていない胸元をすっと指差します。
51: 以下、
パイズリだあああああああああああああああああああああああああああああああ
52: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:23:23.88 ID:6igliURno
それが一瞬なにを意味するのか私にはわかりませんでした。
しかし私の胸をじっと見つめる彼の目をみてようやく理解します。
僧侶「えっと…? も、もしかして…おっぱい…で」
傭兵「ヒーラちゃんに舐めてもらいながら、ずっと思ってた」
傭兵「それで挟んでもらったら、とっても気持ちいいだろうなぁって」
僧侶「…」
傭兵「…だめ?」
僧侶「…ぷっ。あはは」
傭兵「なんで笑うんだよぉ」
僧侶「ソル様おっぱい好きですか? 男の人ってそういうものですか?」
僧侶「うふふ…だったらぁ」
私は普段邪魔でしかたない大きな胸をそっと持ち上げて、ソル様の大切なところにそっと乗せました。
胸の谷間にはぴくぴく脈打つおちんちんがすっぽりとおさまって、真黒い顔をのぞかせます。
僧侶(あっ、なんかかわいい…)
傭兵「うあ…すげっ」
僧侶(これが嬉しいなんて…だめだめ、笑っちゃいそう)
傭兵「ヒーラちゃんのおっぱいあったかい…」
僧侶「ソル様のおちんちんのほうが熱いと思いますよー…?」
53: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:28:38.57 ID:6igliURno
傭兵「頼む」
ソル様は普段見られないような情けない顔をして、私におねだりしてきました。
私は甘えてくれる彼がとっても愛おしく感じ、胸のお肉をきつくよせて彼自身をさらに強く包み込みます。
傭兵「おお…」
僧侶「これでどうしたらいいですか?」
傭兵「ごしごしできる?」
僧侶「はい…♪」
そして、私は胸でソル様のぬるぬるべたべたになったおちんちんをこすり始めました。
胸の谷間でとても熱く硬い肉棒が嬉しそうに跳ねます。
 
 ぬちゅっ ぬちゅっ
 ぬちゅっ ぬちゅっ
僧侶「…どうですか?」
僧侶「ちょっと…難しいです。リズム…よく」
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
54: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:34:44.20 ID:6igliURno
僧侶「こんなのが気持ちいいんですか?」
たしかに肉の弾ける卑猥な音は立っているのですが、私にはこれがどうも気持ち良い行為には見えませんでした。
手や口でしたほうがよっぽど強い刺激を与えられているような気がしてたまりません。
しかし頭の上から聞こえるソル様の吐息は熱っぽく、
どうにも興奮しているように思えました。
僧侶(うふふ…気持ちいいなら良かった)
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 
 ぬちゅ…ぬちゅ…
 
次第に粘液が乾いて滑りが悪くなってきました。
おっぱいでごしごしするだけでは、フェラチオやエッチとは違って汁気が十分に出ません。
ソル様のおちんちんのさきっちょから出るお汁だけでは物足りないのです。
僧侶(どうしようかな…)
55: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:40:03.75 ID:6igliURno
行為をつづけたままチラと上を向いてソル様のお顔を伺うと、
ソル様は小さく舌を突き出して、ちょいちょいと指でつつくジェスチャーを見せてくれました。
僧侶「えっと…」
私は間違えていたらどうしようという不安を抱えながら、
おそるおそる唾液を胸の谷間に垂らします。
傭兵「正解」
僧侶「えへへ…」
こうして新たに潤滑剤を得て、また滑らかにおちんちんをこすることができるようになりました。
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
僧侶「はぁ…ソル様ぁ、いつでも出してくださいね」
僧侶「私のおっぱいを真っ白な精液で汚してください」
僧侶「遠慮せずに、たっぷりと…♪」
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
56: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:47:58.85 ID:6igliURno
傭兵「うっ…ヒーラちゃん」
ソル様の焦り声とともに、胸の間で感じる熱い肉棒が激しく鼓動し、
おちんちんの先っちょの穴から熱い精液が噴火のように吹き出ました。
傭兵「…く、ぁ」
僧侶「…うふふ。イッちゃいましたね」
僧侶「うあっ、すご…止まりません」
僧侶「こんなにビューってしちゃって…気持ちよかったようでなによりです♪」
勢い良く飛び出た白濁液は私のあごや口元まで盛大に飛び散り、
胸元全体を汚していきます。
むわっと立ち込めるソル様の濃い素敵な匂いを目の前で嗅いで、私は頭がくらりと蕩けそうになりました。
ドロっとした精液は胸の間にもたくさん流れ込み、滑りは更によくなります。
 ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
 ぬちゅぬちゅぬちゅ
傭兵「なっ、なんで…まだ」
僧侶「ほんとに全部出ましたか? まだ…残ってるんじゃないですか」
僧侶「全部出しましょうね。ほら、ほら♥」
 
57: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/04(木) 23:55:14.52 ID:6igliURno
そしてすぐさま二度目の射精。
次は小さく震えるようにぴゅっぴゅと白い塊が飛び出て、予め構えていた私のお口の中に飛び込んできました。
私はソル様の濃厚な味を舌でしっかり味わってから、粘っこいそれをゴクンとのどの奥に流し込みました。
僧侶「〜〜っ♪」
傭兵「…」
ふと顔をあげるとソル様は呆れ顔でこちらを見ていました。
僧侶「あ、あの……っ」
傭兵「君はいつのまにそんなエロい子になったんだ…」
僧侶「うっ…!」
僧侶「そ、そんなの…っ!」
私は彼の太ももにパチンと手をついて、勢い良く身を乗り出し、油断だらけの唇を奪いました。
僧侶「はむ…んっ、ちゅぅ♥」
傭兵「!?」
僧侶「ぷは……あなたのせいですよ♥」
傭兵「…ヒーラちゃん」
傭兵「げぇほっ、げほっ、やめてっ精子飲んだ直後でキスはダメだ…まじでダメだげほ」
僧侶「えぇー……」
どうやら禁止らしいです。
58: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 00:02:02.72 ID:WcVlSk1vo
 ・ ・ ・
傭兵「それじゃシャツをとってくる」
僧侶「はい」
傭兵「少し戯れすぎたな」
僧侶「秘密のデートってことでお願いします…♪」
傭兵「わかった」なでなで
僧侶「んっ…ほんとは時間があれば…もっと」
傭兵「そうだな。帰ったら…続きしようか?」
僧侶「…っ! は、はい…! ご、ご無沙汰ですもの…ね?」
僧侶「って…ソル様はここのところ毎晩ユッカ様やマナちゃんと…」ズーン
傭兵「大丈夫! ちゃんと今晩はヒーラちゃんだけを愛します」
僧侶「本当ですか…?」
傭兵「約束する。ヒーラちゃんと二人っきりで寝ます」
僧侶(やったぁ…♥)
僧侶「…♪」ぎゅ
傭兵「いい子だ。しばらくここで待っててくれな」
傭兵「俺は岩場伝いで動けるから、取りに戻るのはすぐだ」
僧侶「いってらっしゃいませ!」
59: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 00:08:42.34 ID:WcVlSk1vo
ソル様はぴょんぴょんと軽快に岩場を飛びながら去って行きました。
僧侶「いいなぁ…私もあんなふうに動けたらきっと足をひっぱらずにすむのに」
僧侶「…胸洗っておかなきゃ」
私は岩場に前のめりに伏せ、ぐっと手を伸ばして海の水を掬おうとします。
僧侶「もうちょっと…もうちょっと…」
僧侶「ん…しょ…」
僧侶「うわわっ、滑って落ちちゃうかも。やめとこう」
しかし岩場と海面の距離は思った以上に広く、私の指先は水面を弾く程度しか叶いませんでした。
僧侶「胸が邪魔…」
僧侶「…あれ?」
気づくと目の前には見慣れた布切れがふよふよと漂っていました。
僧侶「…どうして」
60: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 00:19:30.13 ID:WcVlSk1vo
僧侶「見つけた! やった…!」
僧侶「んーーっ」
すくい上げようにもギリギリのところで手が届きません。
もどかしさに私は歯を食いしばって大きく身を乗り出し、腕をめ一杯伸ばしました。
そしてなんとか指先でビキニの紐をつかむと、
突然腕に何かが絡みつき、そのまま引っ張らり込まれ、
私の身体はあっという間に水のなかに真っ逆さまに落ちてしまいました。
僧侶「んぅ…ぶ、ぶく」
うまく呼吸ができませんでした。
天地の感覚を失い私は完全にパニックになっていました。
うっすらと目を開くと、目の前にはぼやけた黒い影。
はっきりと姿をとらえることはできません。
腕には依然何かが絡みついていて、私をぐいぐいと引っ張ります。
そしてその謎の影は私の背後に回りこみ、ぴったりと背中に張り付きます。
人のようなわずかな温かみを感じました。
僧侶(何…怖い…助けて…)
私は薄れゆく意識の中で不思議な声を聞きました。
 『手に入れた…スキュのお嫁さん…♪』
第19話<ヒーラの受難>つづく
68: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:03:58.89 ID:WcVlSk1vo
第19話<ヒーラの受難>つづき
僧侶「……けほっ、けほっ」
僧侶「う…私は…」
僧侶「確か…海に落ちて…」
僧侶「ここ…どこでしょう」
気づけば上下左右ゴツゴツとした岩肌。
おそらく洞窟のような場所でしょう。
目の前に大きく開いた入り口から見える風景は、一面のオレンジに染まった海と鮮やかな夕日。
ほんとうにただそれだけ。
僧侶「海…」
僧侶「って! あ、あれ!? 私さっきまで浜辺の側の岩場に…あれ?」
僧侶「どうして…陸地が見えなくなってるんでしょう…」
僧侶「ここに流れ着いちゃったのかな…」
僧侶「ソル様! いらっしゃらないのですか! ソル様!」
69: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:09:57.24 ID:WcVlSk1vo
???「スキュのお嫁さん」
僧侶「!」
ふいに背後から声がしました。
おそろおそる振り返ってみるとそこには…。
???「お嫁さん! 元気なった!」
私と同じくらいの歳の女の子が顔をほころばせて嬉しそうに両手をあげていました。
しかしその姿は明らかに異形で、下半身に人の足はなく、代わりに無数の太いタコの足がうごめいています。
僧侶「!」
僧侶「タコ…!? あ、あなたは魔物ですよね…」
???「スキュのお嫁さん」
僧侶「スキュ…?」
???「スキュはスキュラ。お嫁さん手に入れた」
僧侶「な、なにを言ってるのかよくわからないです」
70: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:15:40.74 ID:WcVlSk1vo
私は恐怖心に駆られながらもしばらくの間そのたどたどしく喋る魔物に問答を繰り返し、ようやく得られた情報は、
この子はスキュラという蛸の魔物で名前はスキュ。
私を海に引きずり込んだのはこの子ということ。
ここはこの子の住処で、陸から離れた小さな島の入江だということ。
そしてこの子は、私をお嫁さんとして連れてきたということ。
蛸娘「…」ぬるぬる
僧侶「…ちょ、ちょっと待って下さい」
僧侶「お嫁さんってなんですか」
蛸娘「スキュのお嫁さんはスキュのお嫁さんになるためにスキュがつれてきた」
僧侶「えっ、えっと…ややこしいですね」
僧侶「私はヒーラといいます」
蛸娘「ヒー…ラ…。スキュのお嫁さん」
僧侶「…」ガクッ
蛸娘「ヒーラ、スキュのお嫁さんになる。スキュのお嫁さんになると嬉しい」
71: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:23:11.30 ID:WcVlSk1vo
僧侶「それより、水着…返してくれませんか」
蛸娘「はい!」スッ
僧侶「これあなたが盗ったんですよね」
蛸娘「?」
僧侶「私を誘拐するために…おびき寄せたんでしょ」
蛸娘「スキュのお嫁さんだよ」
僧侶(うう…話が通じない)
僧侶(この子は間違いなく魔物でしょう。聖性を感じませんし、女神の類ではないはず…)
僧侶(オクトピアの町長さんの依頼の幻の蛸娘って…もしかしてこの子のことなのかな)
蛸娘「…?」ぬるぬる
僧侶(とにかく、帰る方法を考えないと)
僧侶「あの、私っ、元の場所に帰りたいんですけど!」
蛸娘「スキュのお嫁さんはここでスキュのお嫁さんしなきゃだめ」ぬるぬる
72: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:30:41.81 ID:WcVlSk1vo
無数のタコ足が私の体へと忍び寄ります。
逃げようとしても足を取られ、私はあっという間に捕まってしまいました。
ぬるぬるとした感触に身の毛がよだち、気丈に保っていた心がだんだんと崩れ始めてきました。
僧侶(私…一体どうなっちゃうの…)
僧侶(ソル様…助けて)
蛸娘「ヒーラ。スキュのお嫁さんにふさわしい。スキュと赤ちゃんつくる」
僧侶「いっ、いやっ!」
僧侶「帰りたいんですっ! 私は人間なんです!」
蛸娘「…」うねうね
僧侶「くっ…あんまり変なことすると、やっつけちゃいますよ!」
僧侶「私は聖職者なんですから魔物なんて簡単に…!」
どれだけすごんでみても杖をもたない私なんて赤子も同然、
さらにさきほどのビーチバレーで魔力を使い果たし、
ソル様との泳ぎの訓練で体力まで消耗していました。
そんなへとへとの私がこの太いタコ足をふりきれるはずもなく、ただされるがままに抱き寄せられて、
スキュちゃんに頬を寄せられてしまいました。
73: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:35:59.05 ID:WcVlSk1vo
僧侶「あうっ、やだ! まってください」
蛸娘「お嫁さんなでなで」
ぬちょぬちょ
僧侶「お嫁さんになんてなりません!」
僧侶「だいたい女の子同士ですよ! おかしいじゃないですか!」
蛸娘「でもスキュはヒーラがお嫁さんになってほしい」
僧侶「いやですっ」
蛸娘「抵抗したらだめ。おしおきする」
僧侶「…! なっ」
蛸娘「おとなしくして」
僧侶「なにをするっていうんですか…」
蛸娘「ヒーラ、海のなかで息できない。スキュのいうこと聞くまで海の中ざっぷんする」
僧侶「え…」
とても嫌な予感がしました。
その予感は的中して、私はスキュちゃんに絡め取られたまま、海の中へと再びひきずりこまれていきました。
74: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:40:06.92 ID:WcVlSk1vo
僧侶「ごぼっ!? ごぼ…」
僧侶(水…! 息が…助け…)
蛸娘「スキュのお嫁さんなる?」
僧侶(…!)
僧侶「ごぼ…ごぼ…」
僧侶(イヤです…)フルフル
蛸娘「…」ぬるぬる
蛸娘「ヒーラ息できない。スキュ、お嫁さんが死んだらかなしい」
僧侶(苦しい…)
僧侶「ごぼっ…ごぼぼ…ん」
蛸娘「お嫁さんがんばる。スキュお嫁さんにひどいことしたくない」
蛸娘「スキュのお嫁さんになるなら息できるようにしてあげる」
僧侶(苦しい!苦しい!空気!空気!)
僧侶(死んじゃうっ! 死んじゃう)
蛸娘「スキュのお嫁さんなる?」
僧侶「!!」コクコク
75: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:45:35.54 ID:WcVlSk1vo
ざばっ
僧侶「はぁーはぁー…ごほっ、げほ」
僧侶「な、なんてことを」
蛸娘「スキュのお嫁さん♪」ぎゅ
僧侶(私なんかじゃ到底逆らえないってことですか…)
僧侶(どうしたらいいんでしょう…)
僧侶(あぁ日が暮れてしまう…ここまさか真っ暗になるんじゃ…)
蛸娘「お嫁さんあったかい」ぴとっ
僧侶「ううう…」
僧侶(得体のしれない魔物と知らない場所で夜を過ごすなんて)
僧侶(私は帰れるのでしょうか…もしかして一生ここで…?)
僧侶(もう二度とユッカ様たちと会えない…そんなの…)
僧侶「ぐすっ。うええええん…ぁぁああ。うぇぇぇ」
堰を切ったように涙があふれ、とどまることはありませんでした。
蛸娘「…なかないで。スキュお嫁さんと仲良くしたい」
僧侶「わぁああん」
76: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:50:47.03 ID:WcVlSk1vo
【浜辺】
傭兵「くそっ、どこに行ったんだ」
勇者「ヒーラ…どこなの」
傭兵「ユッカ、お前の魔覚で探せないか」
勇者「さっきからやってるよぉ…けど、ぐすっ、ヒーラの感覚がどこにもつかめなくて」
勇者「浜辺には人がおおすぎてわからないよ…」
勇者「どうしよう…ヒーラ溺れちゃったのかな」
傭兵「…俺のせいだ。くそっ」
ざばっ
宿屋の少女「この辺りを潜ってさがしてみましたが、ヒーラさんの姿はありませんでした」
宿屋の少女「どこへいったのでしょう…」
勇者「勝手に街にもどったのかな…」
傭兵「いや、そんなわけはない…そんなことをできる子じゃない」
77: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 22:55:21.42 ID:WcVlSk1vo
魔女「念のため捜索してみる」
宿屋の少女「街はとても広いですよ。どうするのですか」
魔女「この子たちを使う」
魔女「出てきて、魂達」ボッ
▼魔女は無数の火の玉を呼び出した。
傭兵「これは…いつぞやの」
火の玉「…」ぐるぐる
勇者「いっぱい増えてる…」
魔女「館で私が手に入れた子たち」
魔女「ヒーラを探して。行って」
火の玉「…」ふよふよ
魔女「街の中は私が探す。あなたたちは海辺を」
傭兵「ああ」
勇者「ヒーラ…どこいっちゃったの…やだよぉ」
78: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:01:06.40 ID:WcVlSk1vo
勇者「ヒーラがいなくなったら…ボク…ボクっ」
傭兵「すまない…俺のミスだ」
傭兵「また…失ってしまうのか…大切な人をこんなことで」
サキュバス「グッドイブニング。やぁねぇ、しみったれた顔して」
傭兵「淫魔…」
勇者「サキュ…」
サキュバス「なに? とうとうあたしの出現に身構えなくなったのね」
傭兵「お前の相手をしている時間はない」
サキュバス「事情はしってるわよぉ。勇者とあたしは心がつながってるのよ!」
サキュバス「だからさ、そんな悲壮な感情をもたれるとめんどくさいのよねぇ。あー湿っぽい」
勇者「あっちに…いけ」
サキュバス「手を貸してあげるって言ってるの!」
勇者「え…」
サキュバス「あんたたちいっつもあたしのことを蚊帳の外にするんだからぁ。心外よね」
79: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:06:08.76 ID:WcVlSk1vo
サキュバス「えーっと、あの乳のムカつく子が消えちゃったのよね」
勇者「…」
サキュバス「よね?」
勇者「そう…ぐすっ、うえええんヒーラあああああっ」
サキュバス「あらら…」
サキュバス「あたしとしてはあんな子いないほうがせいせいするんだけど。ま、しかたないか」
サキュバス「ほらコレを見なさい」
勇者「…なにこの球」
サキュバス「水晶球よ。あたしは占いも得意なの」
サキュバス「あの子の今の様子を占って、ここに映してあげる」
勇者「ほ、ほんと!?」
サキュバス「できるかどうかはわからないけどね、相手魔力の反応をたどるわけだから」
勇者「でもボクの魔覚にすらひっかからないのに…そんなの無理だよ」
サキュバス「そうねぇ…」
サキュバス「あんたのその兜にはまってる宝石貸しなさい」
80: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:12:38.38 ID:WcVlSk1vo
勇者「虹の珠?」
サキュバス「あの乳も今おんなじの持ってるでしょ」
勇者「う、うん! 持ってる!」
勇者「ねぇソル、ヒーラは腕輪に珠をくっつけてるはずだよね!」
傭兵「あぁ! 腕輪をしていれば、必ず側にあるはずだ!」
サキュバス「もともとこの珠は4つで1つのようね」
サキュバス「魔力の波動は強く結びつき…互いにひかれ合う」
サキュバス「珠を強く握りしめて、あの子のことを想いなさい」
勇者「やってみる…」ぐっ
魔女「私も…」ぐっ
傭兵「お、俺も!」
サキュバス「あなたは多分意味ないけどねぇ」
勇者(ヒーラお願い…無事でいて)
魔女(あなたがいないと私達は暮らしていけない)
傭兵(ヒーラちゃん…俺は君との約束を果たしたい。応えてくれ)
サキュバス「さぁ、映すわよ」
81: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:20:26.69 ID:WcVlSk1vo
傭兵「何か見えてきたな」
勇者「暗くってよくわからないよ」
魔女「見づらい」
サキュバス「ここはどこかしら。この場所にあの子の珠があるはずなんだけどね」
勇者「あっ! ヒーラいた! ここ!」
傭兵「動いてる…よな?」
勇者「よかったぁ…生きてる。ヒーラぁ」ぺちぺち
サキュバス「こらこら。水晶球には触らない」
宿屋の少女「これ…洞窟かもしれませんね」
傭兵「洞窟? そういえばそんな感じだな…」
宿屋の少女「波が穏やかに見えますので、どこかの入江の洞窟かも…」
傭兵「洞窟…このあたりではないのか」
宿屋の少女「そうですね…このあたりの崖にこんな大きな洞窟はなかったはずです」
82: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:25:21.18 ID:WcVlSk1vo
傭兵「ヒーラちゃんはどうやってこの場所に来たんだ」
傭兵「泳げなきゃ来られないだろ?」
宿屋の少女「そうですね…」
勇者「ねーなんかぼんやりしてきたよ」
勇者「サキュ! もっとはっきり映せないの?」
サキュバス「無茶言わないで。魔力の反応が鈍いわね、相当遠くってことかしら」
サキュバス「なんにせよ、無事そうでよかったじゃない」
勇者「うううよくないよぉここがどこかわからなきゃダメじゃん」
サキュバス「そんなのあとはあんた達で探しなさい」
サキュバス「あたしは、あのムカつく乳娘がいなくなってせいせいしてるの」
サキュバス「あの子の魔力、だいっきらいだから」
勇者「…ぐすっ」
サキュバス「あ……」
傭兵「おい」
サキュバス「ぐ、グッナーイ! 水晶球は一応おいて行ってあげるから! 消えるまで見てなさい!」パタパタ
83: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:30:34.65 ID:WcVlSk1vo
傭兵「つってもなぁ。こんなぼやけた風景から探すなんて無理だろ」
宿屋の少女「…この広さ、もしかして」
傭兵「ローレさんはなにかわかるのか?」
宿屋の少女「あ、いえ…」
魔女「…」つんつん
宿屋の少女「はい?」
魔女「あなたは悪魔をみてびっくりしないの?」
宿屋の少女「えっ、あ!? そ、そういえば…いまの方、おかしな羽や尻尾が生えてましたね…あはは」
傭兵「今頃気づいたのか」
魔女「……」
傭兵「それで、なにかわかるなら教えて欲しい」
宿屋の少女「ええと。ここ、例の海賊が使っている入江かもしれません」
傭兵「海賊?」
傭兵「たしかに…船を隠すには十分な広さだな」
傭兵「だとするとヒーラちゃんは海賊にさらわれてここに軟禁されているのか」
勇者「た、たいへんだよ…ヒーラが殺されちゃう」
84: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:37:00.05 ID:WcVlSk1vo
傭兵「まて落ち着け。ヒーラちゃんを誘拐したとしたら、目的は身代金だろう」
傭兵(いやヒーラちゃん自身を目当ての可能性もあるがそれは考えたくない…)
傭兵「とにかく俺はこの話を警備隊に持っていって、なんとか明日から捜索に加えてもらえるように打診をする」
勇者「うん!」
傭兵「お前たちはこの入江の情報を集めてくれ」
魔女「わかった」
宿屋の少女「お手伝いします」
傭兵「いいのか?」
宿屋の少女「ヒーラさんは大事なお客様です! それにこのオクトピアで人さらいなんて…許せませんっ」
宿屋の少女「必ず犯人を見つけて三枚に下ろします!」
傭兵「た、頼もしいな…ほどほどに頼む」
勇者「ヒーラ、すぐに助けに行くからね。もう少しだけ、我慢してね」すりすり
85: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/05(金) 23:43:54.58 ID:WcVlSk1vo
魔女「もしたまたま流れ着いただけなら、ヒーラの命は時間の問題」
傭兵「急いだほうがいいな」
勇者「ヒーラ、きっと不安で寂しくて泣いてるよね…だって女の子だもん」
勇者「できれば…ヒーラの声が聞けたらいいんだけど」すりすり
 『はぁーーおいしい♪ これが取れたての海の幸なんですね!』
勇者「…んぅ?」
 『こんなに身がぷりっぷりで、何も調味料がなくてもおいしいなんて!』
 『おいしい? ヒーラ元気になってよかった』
 『あとは綺麗なお水があれば良いのですが。私、海水でべたべたで…喉も乾いちゃったし』
 『そっち、岩肌からお水…ピューって吹き出てる。飲んでいい』
 『ほんとですか? よかったぁ…』 
 『お湯じゃないのは残念ですけど、これでもないよりマシですね!』ぬぎぬぎ
勇者「…」
傭兵「えらく元気そうだな…」
魔女「図太い」
勇者「ソルは見ちゃだめ!」べしっ
傭兵「いってぇ! こんなのぼやけすぎで見えねぇって!」
第19話<ヒーラの受難>つづく
90: 以下、
乙!
ユッカに続いてヒーラまでポンコツにww
91: 以下、
楽しんでるじゃないですかー

92: 以下、
乙、ヒーラ強いな
93: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:08:38.76 ID:NVkLYbhOo
第19話<ヒーラの受難>つづき
<夜>
【スキュラの洞窟】
僧侶「ん…ふぁー…」
僧侶「そろそろ寝むたくなってきちゃった」
僧侶「それにしても…こんな洞窟にランプから包丁までなんでもそろってるなんて幸運…」
僧侶「これはスキュちゃんの私物なんでしょうか…」
僧侶「魔物も人型ならお料理くらいするのかな…??」
僧侶「私にはスキュちゃん以外の誰かがここで生活していた名残のように感じるのですけど…気のせい?」
僧侶「今晩どこで寝よう…」
ざばっ
蛸娘「スキュのお嫁さん。もう寝る?」
僧侶「え、はい…真っ暗ですし、灯りも心もとないので。寝ます」
蛸娘「…」ぬるぬる
蛸娘「ヒーラはスキュのお嫁さんだからスキュと一緒に寝る」
僧侶「う…まだ言ってる」
94: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:13:26.95 ID:NVkLYbhOo
僧侶「一緒には寝ません」
僧侶「朝になったら私を元の場所に返してもらいます」
蛸娘「……またザブザブする?」
蛸娘「夜はお水冷たい。ヒーラザブザブしたら死ぬ」
僧侶「ひっ」
蛸娘「スキュ、ヒーラと仲良くなりたい」
僧侶(魔物と仲良くなんて…そりゃ顔はどうみても人間ですけど…)
蛸娘「スキュのこときらい?」
蛸娘「スキュのお嫁さんになってほしいのに」
僧侶「何度もいいますけど、あなたに必要なのはお婿さんですよ。女の子なんですから」
蛸娘「?」
蛸娘「スキュはお嫁さんがほしい。ヒーラがお嫁さん」
蛸娘「スキュの赤ちゃんいっぱい産んで!」ぬるぬる
ぞわぞわ
僧侶「きゃっ」
僧侶「ちょっと打ち解けたと思ったらこれなんですから…っ!」
95: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:18:58.76 ID:NVkLYbhOo
スキュちゃんの自由自在にうごめく触手のようなタコ足が私の体に絡みついてきます。
さきほどまで海の中にいたのでそれはとてもつめたく、ぞわぞわとした悪寒が背筋を走り、私はおもわず素っ頓狂な声を上げてしまいました。
蛸娘「どうしてスキュと赤ちゃんつくりたくないの?」
僧侶「あ、あたりまえじゃないですか!」
僧侶「赤ちゃんは…好きな人どうしでつくるんです」
蛸娘「?」
蛸娘「好きなひと…スキュ!ヒーラ好き! 赤ちゃんつくろ」
僧侶「ちがいますっ、相思相愛ってわかりますか」
僧侶「お互いに好きじゃないとダメなんです」
蛸娘「ヒーラはスキュのこと嫌い?」
僧侶「…」
スキュちゃんは哀しそうな目でじっと私のことを見つめてきました。
ここで下手に拒絶したら、また海に沈められてしまうと予感した私は曖昧な返事を返すことしかできませんでした。
僧侶「きらいじゃ…ないですけど」
僧侶「赤ちゃんをつくりたいほど好きじゃないです」
蛸娘「じゃあスキュのこと好きになって!」ぬるぬる
96: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:25:48.91 ID:NVkLYbhOo
完全に体はタコ足に拘束され、私は身動きひとつとれなくなってきます。
8本もあればかよわい女一人の全身の自由を奪うことなんて容易いことでした。
その上大きな吸盤が肌のいたるところに吸い付き、離そうとしてくれません。
首元にも太い足がまきつき、呼吸が乏しくなった私はだんだんと思考が鈍ってきました。
蛸娘「スキュのこと好き好きにしてあげる」しゅるしゅる
僧侶「う…えほっ、やめ…」
ぬるっとした粘液に包まれた触手足がビキニの中に簡単に潜り込み、
私の乳首にぷちゅりと吸盤で吸い付いてきました。
下の方にも潜り込んで、まだ何も準備のできていない秘部を上からぬるぬるとなぞります。
僧侶「あっ、いやっ…」
蛸娘「いやじゃないよ。スキュね、ここ触ると気持ちいい。スキュのお嫁さんもきっときもちいい」
蛸娘「スキュのこと大好きになるよ」
僧侶「だめなんです…そこはイヤです」
97: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:31:48.60 ID:NVkLYbhOo
蛸娘「ヒーラの赤ちゃん出てくるところに、スキュの足をいれるの」
僧侶「なっ、なんでそんなことを…っ」
僧侶「やめてください。足をいれたってなんにも」
蛸娘「そしたらね、スキュの足の先っちょから真っ白な体液が出るの」
蛸娘「それでね、ヒーラはスキュのお嫁さんになって赤ちゃん産むの」
僧侶「ま、まさか…」
そのまさかでした。
私の眼前をうねうねとうごめくタコ足の先っぽをよく観察してみると、
先端には小さな穴が空いていて、そこからトロリとやや白みがかった液体がこぼれ落ちています。
この時私はこのスキュラという種族をようやく理解しました。
オスなど必要なく、多種族のメスを捕まえて、妊娠させるのがこの子たちの生殖行為なのだと。
そしてこれがいま、私のあそこを撫でている…。
蛸娘「スキュのお嫁さん♪ かわいいかわいい」
僧侶「い、いやぁぁあ…」
99: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:39:25.16 ID:NVkLYbhOo
拒絶する私の口に目の前のタコ足が入り込んできました。
そして間髪入れず、生臭いドロドロとした液体が口内に吐出されます。
僧侶「おぶっ!? んぐぅうう」
僧侶(喉が…焼けちゃうっ)
蛸娘「スキュの赤ちゃんのおしる。お嫁さんにいっぱい食べさせてあげる」
蛸娘「お魚だけじゃお腹いっぱいならないでしょ」
蛸娘「体力いっぱいになって、元気な赤ちゃん生む!」
その体液は元気にビチビチと跳ねるように喉奥で暴れ、胃の中に落ちていきました。
こんなものを膣内に射精されたら間違いなく妊娠してしまいます。
僧侶(やだ…私はソル様の…)
ソル様の赤ちゃんがほしいと、いつか打ち明けるつもりでした。
旅がおわって、一時の平和が訪れたら、真っ白なドレスに身を包んで、
大神殿ではなく小さなチャペルで慎ましい挙式をあげて、
そしてやわらかいベッドで身も心も彼のものになりたい。
それが私がここ最近思い描いた淡い理想でした。
100: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:45:54.72 ID:NVkLYbhOo
やがて、下着に潜りこんだタコ足の先が、ちゅくりと私の陰唇をかき分ける感触がしました。
僧侶「!!」
僧侶(こんな誰もしらない薄暗い洞窟で)
僧侶(魔物の女の子にはらまされて、一生蛸の赤ちゃんうみつづけるなんて…)
僧侶(そんなの、そんなの!)
どうあがいても、手も足も動かせませんでした。
口だって大きなタコ足に封じられ、呪文を詠唱することすら叶いません。
仮に唱えられても、いまは杖をもっていません。
だけど私の心と体にははっきりとした火が灯っていました。
火照った体からたくさんの魔力があふれてくるのを感じます。
蛸娘「!」
蛸娘「スキュのお嫁さん…元気になってきた」
蛸娘「スキュの赤ちゃんのおしる飲んで元気でた」
僧侶「んぐぅ、んぐっ」
僧侶(私は…あなたのものにはならない!)
僧侶(私の体は私のもの! 大好きな人に捧げるものなんです!)
101: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 22:52:48.00 ID:NVkLYbhOo
僧侶「かぷ」
蛸娘「! 痛い…噛んじゃ嫌い」
僧侶「がぷ…」
蛸娘「痛い…スキュのお嫁さん、悪い子」
蛸娘「おしおきするよ?」
僧侶「がぶっ」
蛸娘「!!」
私の剣幕におされ、スキュちゃんはタコ足を私の口から引き抜きました。
ドロリとした精液が口の端からたくさんこぼれて、私の胸元を白く汚していきます。
僧侶「えほっ、えほ…」
蛸娘「おとなしくなしないとスキュ怒るよ」
蛸娘「ざぶざぶする? ざぶざぶしながら、スキュの赤ちゃんのおしるいっぱいいっぱい注いであげるね」
蛸娘「そうしよっか」
僧侶「くっ」
蛸娘「嫌ならごめんなさいして。そしたらここで優しく赤ちゃん産ませてあげる」
蛸娘「つめたいお水の中がいい?」
僧侶「どのみちそうするつもりなんでしょ…!」
僧侶「私は…あなたのお嫁さんにはなりません!」
腕に嵌めていたブレスレットの蒼珠が強く輝きだし、洞窟の中を真っ青な光に染めてあげました。
スキュちゃんが一瞬目をくらませた隙に、私は詠唱をはじめます。
102: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:00:27.57 ID:NVkLYbhOo
僧侶(この純度の高い魔宝石なら、きっと私の魔力を伝達して魔法を発現してくれるはず)
僧侶(そうですよねマナちゃん、キュウさん…信じますよ!!)
僧侶「せ、聖守護結界!」
僧侶(お願い…私を守って!)
▼僧侶は光の壁を創りだした。
蛸娘「!」
バチッ バチバチッ…
蛸娘「…っ!?」
蛸娘「うううっ」ぬるぬる
▼蛸娘は逃げ出した。
僧侶「ハァ…はぁ…」
僧侶「出来た…?」
僧侶「で、できました…杖もないのに!」
僧侶「やったぁ」
蛸娘「…」じーー
僧侶「う…まだいる。私の本気がわかりましたか!」
蛸娘「…」つんつん
バチバチッ
蛸娘「!」
僧侶「これで魔物は近づけませんよ。ここから先は立ち入り禁止です!」
103: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:05:46.42 ID:NVkLYbhOo
蛸娘「…」ぬるぬる
蛸娘「スキュのお嫁さん…スキュの赤ちゃん産んでくれない」
僧侶「私は、自分より強い相手のお嫁さんにしかなりません!」
僧侶「というかもう相手は決まってます!」
僧侶「つまりあなたの赤ちゃんを産むことはありませんし、子作りだってしません!」
蛸娘「…」うねうね
僧侶「わかってくれましたか?」
蛸娘「ヒーラ、強い。スキュのお嫁さんにしたら、丈夫な赤ちゃん産む」
蛸娘「だからますますお嫁さんにしたくなった」
僧侶「…」ガクッ
僧侶「あ、あのですね…この状況では私には手出し無用なんですよ?」
僧侶「この光の壁がわかるでしょう? 魔物が触れたら痛いですよ?」
蛸娘「…」つんつん
バチバチッ
蛸娘「…痛い」
僧侶「これ以上痛い目にあいたくなかったら、私の言うことを聞いてください!」
蛸娘「…はぅう」
104: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:14:52.45 ID:NVkLYbhOo
僧侶「ふ、ふふ…これで逆転です」
僧侶(まぁ、所詮ただの防護壁なので魔力が切れるまでの脅しにしかなりませんけどね)
僧侶(どうして私攻撃魔法つかえないんでしょう…)
僧侶(早く誰か助けにきてください…)ぐすっ
<翌朝>
僧侶(うー…ろくに眠れなかった…)
蛸娘「…zzz」
僧侶「! なんで側に…」
蛸娘「スキュのお嫁さん…zzz」
僧侶「そんなに私のことを…ダメだって言ってるのに」
僧侶「…他に仲間はいないのでしょうか」
ぐー
僧侶「う…お腹が…」
僧侶「そういえば奥に備蓄があったような…」
洞窟の奥には明らかに人の住んでいた痕跡があり、物であふれていました。
大きな棚にはたくさんの海図が収まっていて、小さなテーブルは物で散乱しています。
私は昨夜そこからランプやナイフを見つけ出し、難を逃れることができました。
105: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:22:40.85 ID:NVkLYbhOo
僧侶「明るいうちに…探しちゃおう」
洞窟の壁にはところどころにまるで窓のように穴が空けられて、そこから日が差し込んでいて、外をうかがう事ができます。
これの穴をスキュちゃんが空けたとは到底思えません。
この洞窟が人為的に手が加えられていることは間違いありませんでした。
僧侶(だとしたらここは一体)
棚から無造作に一枚の海図を引っ張り出します。
たくさんの島が描かれ、ところどころに赤いインクでバツマークが書き記されていました。
僧侶「せめてここがどこかわかればいいんですけど…」
僧侶「どうやって知らせましょう…」
僧侶「スキュちゃんを脅して連れて帰ってもらうのが現実的ではありますが」
僧侶「おそらく、海に出ると私の分は悪いでしょうし…またざぶざぶされたらもう身を守る術はないかも…」
なにか使えるものはと辺りを見渡すと、古びたサーベルや盾、
男物とみられる日褪せした色のシャツなどが箱にぎゅうぎゅうに押し込められていました。
僧侶「シャツ…着ようかな。いつまでもこんな格好嫌ですし…」
106: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:29:45.33 ID:NVkLYbhOo
ごそごそ
僧侶「うーん使えそうなものはないですね…」
僧侶「こんなボロっちい剣じゃスキュちゃんと戦うのは難しいし、盾も使い方がわかりません…」
僧侶「せめて杖があれば…」
そう思って広くもなく狭くもない洞窟をうろうろと散策していると、私は壁になにか茶色い出っ張り棒のようなものを見つけました。
僧侶「これは…?」
そこは昨夜私が水を飲んだり、シャワー代わりにつかった真水の吹き出る岩盤でした。
大きな亀裂の中にそのとても長い木の棒は深く突き刺さっています。
僧侶「…? なんでしょうこれ」
僧侶「昨晩は暗くて気づかなかったのかな」
蛸娘「おはようスキュのお嫁さん」
僧侶「! ひっ、スキュちゃん…」
僧侶「だ、だめですよ近づかないでください! また痛い壁張りますよ!」
蛸娘「…」ぬるぬる
蛸娘「その棒、スキュ知ってる」
僧侶「えっ?」
107: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:38:19.24 ID:NVkLYbhOo
蛸娘「スキュたちの大事な棒」
僧侶「なんなんですか?」
蛸娘「命の湧き出る棒。それがあるから、おいしいお水ここにジャボジャボ出てる」
僧侶「へぇ……?」
なにをいってるのかさっぱりわからなかったのですが、とにかくこれは私にとってもここでの暮らしに欠かせない大切な棒になりそうなので、
とりあえず手を合わせてスキュちゃんと一緒に拝むことにしました。
僧侶「…あれ」
この深々とつきささった謎の棒をみていると、不思議と手首の辺りががじんじんと熱くなってくるような気がしました。
僧侶「…?」
僧侶「私の珠が、共鳴してる…一体どうして」
珠はまるで私になにかを伝えるかのようにキラキラと蒼く輝きます。
蛸娘「スキュがお嫁さんをここに連れてきた意味があった」
蛸娘「ヒーラはやっぱりスキュのお嫁さんになるにふさわしい人」
それはどういう意味、と彼女に問おうとした瞬間、
洞窟の入り口のほうからたくさんの足音と笑い声が聞こえてきました。
108: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:47:38.46 ID:NVkLYbhOo
やがてずかずかと複数の男性が洞窟の中に入ってきました。
彼らはみんな上半身裸で、頭には赤いバンダナ、腰には大きなサーベルを携え、同じ格好をしていました。
僧侶「あ、あなたたちは…」
海賊A「おんやぁ? 俺たちのアジトにこんなべっぴんさんがいるたぁ」
僧侶「あ、アジト!? こ、ここはあなたたちの…」
海賊B「ひゃはは、どうしたってんだお嬢ちゃん。知らねぇで迷い込んだのか」
海賊C「おいそっちの女…足がねぇぞ!」
海賊A「げぇ、こいつは蛸のバケモンだっ。こいつら魔物か!」
僧侶「ち、違います! わたしは人間です! お願いっ助けてください!」
僧侶「魔物にここに連れて来られて困ってるんです!」
海賊A「ああん?」
私達をみた彼らは思う思うに言葉を投げかけ、顔を見合わせた後、ニタリと笑いました。
そして腰の剣をひきぬき、私達に突きつけ――
海賊A「こりゃラッキーだ。ちょうど女に飢えていたところだ」
海賊B「片方はどうみても魔物だがまぁいい、こんなかわいいお嬢ちゃん…きっとお頭喜ぶぞお」
海賊C「ふひひ…ようこそ俺たち海賊のアジトへ。たっぷりかわいがってやるぜぇ…」
僧侶「そ、そんな…」
蛸娘「…」ぬるぬる
109: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:53:41.84 ID:NVkLYbhOo
海賊B「にしてもかわええ子だ」
海賊C「乳でけぇ…こりゃ上玉だぜ」
海賊A「おいおい待てよ。楽しむのはまずはお頭からだ」
僧侶「…楽しむって」
蛸娘「ヒーラはスキュのお嫁さん。人間にはあげない」
海賊B「こいつは一体なんなんだ?」
海賊A「バケモンだ。襲ってくる前に切っちまおう」
海賊の頭「なんだ。なんの騒ぎだ」
海賊A「おうお頭、無断の侵入者ですぜ。それもべっぴんの」
海賊の頭「あん? 女か…」
僧侶「…」ぶるぶる
海賊A「かわいいねぇ。お頭の顔みて震えてやがる」
海賊B「へへへ、心配しなくても俺たちがその魔物から助けてあげるよ」
海賊C「その代わり、ちーっと航海に付き合ってもらうけどな」
僧侶「い、いや…っ」
僧侶「スキュちゃんここあなたのお家じゃなかったんですかっ!」
蛸娘「…? スキュのおうち」
海賊の頭「どうやらしばらく離れている間に頭の悪い魔物に住みつかれちまったようだな」
110: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/06(土) 23:58:13.95 ID:NVkLYbhOo
海賊の頭「蛸の魔物は不要だ。切り刻め」
海賊A「へいっ」
蛸娘「…」ビクッ
僧侶「…だ、だめ!」
海賊B「おいおい、魔物から助けてくれっていったのはお嬢ちゃんの方だぜ」
海賊C「いまとれたてのタコの刺身をごちそうしてあげるよ」
僧侶「こ、殺すのはだめです! そんな方法を望んでいません!」
海賊A「なーに都合の良いこと言ってやがる」
海賊A「お嬢ちゃんはただでさえ、俺達のアジトに勝手に入り込んだ侵入者なんだぜ?」
海賊A「その柔肌を傷つけたくなかったら、下がりな」
僧侶「!」ビクッ
蛸娘「スキュ…ヒーラお嫁さんにする」
海賊の頭「なにをいってるのかわからねぇが、人を襲う魔物にはうんざりだ」ジャキ
僧侶「スキュちゃん逃げてっ!」
111: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 00:06:36.86 ID:g8IWeCd6o
屈強な男たちはスキュちゃんの正面に立ち、一斉にサーベルを振り上げました。
スキュちゃんはまだ状況を理解できていないようで、タコ足をうねうねと動かしているだけで逃げようとしません。
相手が魔物とはいえ、言葉を交わし、ほんのわずかでも心を通わせた子を私は見捨てることはできませんでした。
僧侶(きっとユッカ様なら…身を立てにしてでも守るはずっ)
私は無我夢中で何か抵抗できるものを、と探しまわり、
とっさに壁から突き出た棒を引き抜きました。
その棒の先には青く輝く珠が埋め込まれていました。
僧侶「これは…!」
その杖とおぼしき棒をしっかりと握り、小さく詠唱をはじめます。
僧侶(すごい…昨日よりずっと強い力があふれてくる…)
海賊の頭「なっ…おまえ」
僧侶「正守護結界!」
▼僧侶は光の壁を創りだした。
112: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 00:13:51.40 ID:g8IWeCd6o
私とスキュちゃんを囲うように現れた蒼い光の壁は海賊たちの凶刃を弾き、私達の身を護りました。
僧侶「ハァ…はぁ…危なかった」
蛸娘「また痛い壁…? スキュこれきらい」
僧侶「そうじゃなくてっ、こっち来てください」ぐいっ
蛸娘「もしかしてヒーラ…スキュのこと守ってくれたの?」
僧侶「と、とっさにですよ!」
海賊A「なんだこの壁!」ガキンッ
海賊B「かてぇ!」ガキンッ
男たちは激しくサーベルで光の壁を切りつけます。
しかし、強固な聖守護結界はいつもの結界のように簡単にパリンと割れることはなく、
あっという間にサーベルの刀身をぼろぼろに破壊してゆきました。
海賊C「なんだこれは…! 俺の剣がこんな簡単に壊れるなんて!」
海賊の頭「…」
僧侶「ち、近づかないでください! 私が敵と判断したものはそれに触れるだけで痛い目みますよ!」
海賊C「さわってみるか?」
海賊の頭「やめておけ。指が消し飛ぶぞ」
海賊A「か、頭…どうすりゃ。こんな女2匹に手出しできねぇなんて」
113: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 00:22:48.73 ID:g8IWeCd6o
海賊の頭「…」
僧侶「な、なんですか…近づかないでください」
僧侶「私を、オクトピアの浜につれていきなさい!」
僧侶「じゃ、じゃないと…あなたたちを、やっつけます」
それは私のできる最大限の脅し文句でした。
やっつけてしまったら帰る手段がなくなってしまうのは重々承知していましたが、
いまの私に取れる選択は多くありませんでした。
頭とよばれる強面の大男は依然私をじっと見つめています。
そして少し目を伏せたあと、なんと彼は突然その場にひざまづきました。
海賊の頭「まさか、その杖を引き抜く者が現れようとは」
海賊の頭「全てあなたの仰せのままに。我々海の一族はあなたに使役いたします」
僧侶「え…」
海賊A「か、頭…?」
海賊の頭「頭を下げろ。この方は、現代に蘇った海の女神様であられる」
僧侶「は、はい…?」
海賊の頭「数百年もの間誰も引き抜くことの出来なかった海鳴りの杖を手に取り、魔物を操るその姿」
海賊の頭「まさしく古くから伝説にある海の女神そのもの! おお、女神様! 我々を配下にお加えください!」
蛸娘「…」うねうね
僧侶「え、えええ!?」
私の災難は、思わぬ方向へと転がって行きました。
第19話<ヒーラの受難>つづく
127: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 22:59:47.74 ID:g8IWeCd6o
第19話<ヒーラの受難>つづき
海賊の頭「女神様、我ら海の一族をどうかお導きください」
僧侶「ぁ、あなたたちは…海を荒らす海賊ですよね!」
僧侶「オクトピア近海で商船を襲ってたくさんの被害が出ていると聞きましたよ!」
海賊の頭「…」
海賊A「あちゃーやっぱ誤解されてんスねぇ」
海賊B「か、頭ぁ。やっぱやりかたがまずかったんですって」
海賊の頭「…だがな、ああでもしないと陸の頑固者たちはいうことを聞かねぇ」
僧侶「なにを言ってるかわかりませんが、私は無法者達に肩入れなんてしません!」
僧侶「さぁ、いますぐ私をオクトピアに連れて行ってください」
海賊A「調子にのってますぜこの女」
海賊B「このアマ、光の防壁がなくなったらめちゃくちゃな目にあわせてやる」
僧侶「ひっ」
海賊の頭「馬鹿野郎、女神様だって言ってんだろ、頭がたけぇんだよ。言葉を慎めぇ」ぼかっ
海賊A「あいたっ。けどよぉ…」
海賊C「確かに俺の怪力でも抜けなかったあの不思議な杖を簡単に抜いちまったが…」
海賊B「その程度でほんとに女神なんですか?」
僧侶(違います…)
128: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:06:05.35 ID:g8IWeCd6o
海賊の頭「この方のお姿をみてみろ」
海賊A「…金髪だな」
海賊B「みたところ魔法使いだな」
海賊C「蛸とセットだな」
蛸娘「…」うねうね
海賊の頭「そしてこのふくよかな母性あふれる体! 命を育む母なる海のような大きさ!」
僧侶「ど、どこみてるんですか…」サッ
海賊A「確かに…」
海賊B「うむ…」
海賊の頭「ここらに伝わる女神伝説の通りだろうが!」
海賊C「本当だ! 頭すげぇええええ!」
海賊B「うおおおお!!!」
僧侶(なんなんですかこの人たち…)
海賊の頭「失礼でなければ、お名前をお聞かせください」
僧侶「えっと」
蛸娘「ヒーラ。スキュのお嫁さん」
僧侶「まだ言ってるんですか」
海賊の頭「ヒーラ様。すばらしいお名前だ…。ヒーラ様、どうか我々にお力添えを」
僧侶「い、一体何させようっていうんですか! 私には何の力もありませんよ!」
129: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:14:23.62 ID:g8IWeCd6o
海賊の頭「実は…ここ最近オクトピアの近海に化け物が出没するようになりましてね」
僧侶「化け物…?」
海賊A「それはそれはでっけぇ蛸なんです。大きさで言うと、俺達の船よりデカイ」
海賊A「そいつが暴れまわって行き交うたくさんの帆船が沈められちまった」
僧侶「あなたたちがやっていたのではないのですか?」
海賊の頭「とんでもない! たしかに俺たちの先祖は陸の民と武力抗争をおこしたようだが」
海賊の頭「それはこの母なる海で暴虐の限りを尽くす陸の民を懲らしめるためと伝え聞いている」
海賊の頭「決して略奪や虐殺などを好んでしたわけではないのです!」
僧侶(じゃあ村長さんの言ってた昔話って…)
海賊の頭「何か陸の野郎どもによくないことを吹きこまれているようですね」
僧侶「…」
僧侶(いえ、こんな人達を信じてはダメ。だってどうみても悪い人達なんですから)
僧侶(スキュちゃんのことも殺そうとしましたし…私のことだって…)
海賊の頭「たしかに、俺達は気性が荒い。海賊と呼ばれてもしかたねぇ」
海賊の頭「だが海の民として守らなくてはいけないものはある」
海賊の頭「母なる海を荒らす野郎は人であろうが魔物であろうが成敗してやる」
130: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:21:28.29 ID:g8IWeCd6o
僧侶「その蛸の怪物とやらは、魔物なのですか」
海賊A「あぁ。どうせそこの蛸女の仲間かなにかだろう」
蛸娘「?」うねうね
海賊A「くそっ、あいつに俺たちは仲間を…」
海賊の頭「人を襲う魔物は切り捨てる」
僧侶「す、スキュちゃんはそんなことしません」
蛸娘「…スキュのお嫁さん」ぬるぬる
僧侶「うぎゅっ…ちょっ、大事なお話をしている最中に絡みつかないでください」
海賊A「襲われているではないか!」
僧侶「ちがいます! 懐いてるんです!」
僧侶「ねっ!?」
蛸娘「…?」うねうね
海賊の頭「ということは、やはりヒーラ様の使役する使い魔なのですよね?」
僧侶「そ、そうです!」
蛸娘「…お嫁さん、好き」ぬるぬる
僧侶「うう…」
131: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:27:24.93 ID:g8IWeCd6o
海賊の頭「話を戻します。我々としては、至急ヤツを退治しなくてはならない」
海賊の頭「だが、その巨体を前になすすべもなく、仲間がやられてしまった」
海賊の頭「せめてこれ以上被害が増えぬようにと、周辺で他の行き交う商船共を脅して、海域全体を通行止めしていたのです」
僧侶「事情はわかりました…」
僧侶「本当に、あなたたちは商船を襲ったりしていないのですね?」
海賊の頭「…あぁ。ここにある物はすべて沈んだ船から引き上げたものだ」
僧侶「…そうですか」
僧侶「ですが、私にできることはありません」
海賊の頭「そんな! お力添えをお願い致します!」
海賊の頭「我々だけではもうどうにもならないのです!」
海賊の頭「どうか、女神様の魔法であの大蛸を鎮めることはできませんか」
蛸娘「…」うねうね
僧侶「わ、私にできることなんて…」
僧侶「こんな魔法壁を貼ったり、傷を癒やしたりするくらいで、魔物と戦う力なんてないんですよ」
僧侶(それに海の上で戦いなんて絶対嫌です。もし転覆しちゃったら溺れちゃうし…蛸に食べられちゃう)
132: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:33:31.89 ID:g8IWeCd6o
蛸娘「…」うねうね
僧侶「スキュちゃん離れてください」
蛸娘「スキュ。お友達」
僧侶「えっ」
蛸娘「スキュのお友達。ぷんぷんしてる」
蛸娘「ずっと前、海に悪いの来た。悪いの、海にもっと悪いのいっぱいばら撒いた」
蛸娘「スキュのお友達、クラ君戦った。そしたらクラ君、悪い子になった」
蛸娘「スキュ寂しい。クラ君がムカムカでスキュ会えない」
僧侶「えっと…?」
海賊の頭「やはりあの大蛸の仲間か!」
僧侶「スキュちゃん、そうなんですか?」
蛸娘「クラ君。スキュのお友達。いい子、でもいま悪い子」
蛸娘「スキュのお友達、みんないなくなった」
蛸娘「クラ君もローレもみんないなくなった…スキュ寂しい」
僧侶「え…」
蛸娘「でもヒーラいる! スキュのお嫁さん! スキュ寂しくなくなった!」ぬるぬるぬるぬる
僧侶「ひゃううっ」
海賊の頭「……破廉恥な蛸め。我々の女神様になんてことを、羨ましい」
133: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:39:54.32 ID:g8IWeCd6o
僧侶「スキュちゃん。クラ君っていうのは、おっきい蛸さんですか?」
蛸娘「クラ君はクラ君。クラーケンっていうよ」
海賊の頭「伝説に伝わる巨蛸の名前ですね。間違いない…あの蛸だ」
海賊A「となると、その蛸女のいうことには」
僧侶「クラーケンはなにかに操られている…?」
海賊の頭「いえ、怒り狂っているといったほうが正しいでしょう」
僧侶「…」
僧侶「一度、近くまで行ってみないとダメかもしれませんね」
海賊の頭「女神様! おお! お力を貸していただけますか」
僧侶「その女神様っていうのやめませんか…むず痒いです」
海賊の頭「ならヒーラのアネさんって呼ばせてもらうぜ」
僧侶「え…」
海賊の頭「いやぁ慣れない言葉遣いは難しいもんだ」
海賊の頭「さぁアネさん、怪物退治に出港ですぜ」
僧侶(男の人って万国みんなこうなのかな…)
僧侶(ソル様…いまごろどうなさってますか)
僧侶(きっと心配してますよね…)
135: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:46:30.64 ID:g8IWeCd6o
【ローレライ2階・大部屋】
傭兵「くっそ、このポンコツ球め」コツコツ
勇者「うつれーうつれー」ナデナデナデ
魔女「無駄。魔力が切れてる。あの淫魔にしか起動できない」
勇者「もうっ、ヒーラお魚食べたあとどうなったの!」
傭兵「唯一の救いなのは、案外元気にしてたってことだな」
傭兵「だが早急に捜索しないと場所が場所だけに危ないかもな」
宿屋の少女「私も今日は宿をお休みさせていただいて、ヒーラさんの捜索にあたります」
傭兵「悪いな」
傭兵「俺は海を探してみる」
勇者「ボクも船にのる!」
傭兵「あぁ。昨日警備隊と話はつけておいた」
傭兵「さぁ、ヒーラちゃん探しに出発だ」
勇者「まっててヒーラ! どれだけかかっても必ず助けだすからね!」
勇者「それまで絶対元気でいてね…」
136: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:51:59.48 ID:g8IWeCd6o
【洋上・海賊の船】
僧侶「どこまでも蒼い海…澄み切った青空…ここちよい潮風…」
僧侶「はぁ…なのにどうして私は」
僧侶「海賊の船に乗っているんでしょう…」
海賊B「アネさん! こっちきて飲みましょうや!」
海賊A「まだ海域につくまで結構ありますぜ。ほらほら、ここすわってくださいぜひ俺の隣に」
海賊C「あっこの野郎ずりぃぞ! アネさん、お酒注ぎますよ! こっちきてください」
僧侶「はぁ…カモメになりたい」
海賊の頭「馬鹿野郎お前ら! アネさんを困らすんじゃねぇ」
海賊の頭「すんませんウチのもんどもがご迷惑おかけしています」
僧侶「いえ、船におじゃまさせていただいてるのは私のほうなので…」
僧侶「できればこのままオクトピアに連れて行ってくれるとありがたいんですけどね」ブツブツ
海賊の頭「重ね重ねすんません。俺たちの海賊船はあの辺りをうろつくだけで警備隊に包囲されてしまうのでそれはできません」
僧侶「はぁ…私はどうやって帰ればいいんですか」
僧侶「せっかくあの洞窟から脱出できたのに…次は船に軟禁ですか」
137: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/07(日) 23:59:32.11 ID:g8IWeCd6o
海賊の頭「部屋でおくつろぎください」
海賊の頭「まるまる一室アネさんのためにこしらえました」
海賊の頭「それとも食事を用意しますか」
僧侶「結構です。あなた方から施しはうけたくありません」
ぐーー…
僧侶「…」
海賊の頭「体力つけなきゃクラーケンと戦えませんぜ」
僧侶「戦うなんて言ってないじゃないですか。遠くから様子をみるだけですよ」
僧侶「絶対に船を近づけないでくださいね!!! 絶対ですよ!!!」
海賊の頭「は、はい…どうしたんですかアネさん」ビクッ
海賊の頭「とりあえず、なにか軽く食べられそうなものを用意させます」
海賊の頭「景気付けに蛸でも食いますか?」
僧侶「結構です」
海賊の頭「そういやあの手下の蛸女は」
スイーー
蛸娘「♪」
僧侶「しっかりついてきちゃってますね…」
海賊の頭「さすがアネさんの使い魔だ」
138: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:05:32.42 ID:Ydr9QoQwo
蛸娘「ヒーラ。スキュと一緒に泳ぐ。海きもちいい」
僧侶「嫌です! ざぶざぶされた恨みは忘れてませんよ」
蛸娘「スキュもうひどいことしない」
蛸娘「ヒーラ女神になった。海の女神」
僧侶「なってません!」
海賊の頭「いえ…その杖を引きぬいた以上、アネさんは俺たち海に生きる者にとって永遠の憧れですぜ」
海賊の頭「きっとアネさん号令があれば、暴れ狂うクラーケンも鎮まるはず…」
僧侶「そううまくいくでしょうか。私としてはなんの実感もないんですけどね」
海賊の頭「いざとなったらお願い致します!」
僧侶「私の新しい結界で船を守れるでしょうか…不安です」
 ・ ・ ・
僧侶「あーおいしかった! やっぱり生魚もいいですけど、調理してある方がほっとしますね」
海賊の頭「食べ方ならいくらでもしってますぜ。俺たちは海の恵みで生きてきましたからね」
僧侶「着くまですこしレシピを教えてくれませんか!」
僧侶(これユッカ様たちのたべさせてあげたら喜びそう…♪)
139: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:11:56.73 ID:Ydr9QoQwo
 ・ ・ ・
【オクトピア近郊・とある海域】
僧侶「……」
海賊の頭「アネさん、感じますか」
僧侶(なんでしょう。風がピリピリする)
さきほどまで穏やかだった海が波立ち、海全体にどこか重苦しい雰囲気が立ち込めていました。
陽気に酒を飲んで合唱していた海賊さんたちは一同に慌ただしく作業にもどり、
船上はにわかに緊張感に包まれました。
海賊の頭「ここらにいる。俺たちの海の民の勘ですがね、外れたことはない」
海賊の頭「幸い鈍くてバカな陸の商人たちは近くにいねぇ」
海賊の頭「アネさん、足手まといがいない今、やっちまいましょう」
僧侶「本当にここにクラーケンが…」
ふと船の下をのぞきこむと、スキュちゃんが海面から半身をだして荒れ始めた海の先をジーっと見つめていました。
140: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:18:07.31 ID:Ydr9QoQwo
海賊A「2時の方向! でっかい足だ! 野郎が出やがった!」
僧侶「!」
海賊の頭「ちっ、距離が近すぎたか」
海賊の頭「野郎ども、絶対に真下に潜り込まれるなよ。一発で沈むぞ」
僧侶「クラーケン…なんて大きさ」
海賊の頭「小さい船なんてちょっとぶつかっただけでひっくり返っちまう」
海賊の頭「いままであのばけものと遭遇して生きて帰れたのは俺たちだけだ」
海賊の頭「陸のやつらに何を言っても信じやしねぇ」
海賊の頭「だから、どんな手段をつかっても、汚名を被ってでもここに船をこさせるわけには行かなかったんです」
僧侶「たしかにあんなのがいるなんて言われても、穏やかなオクトピアの海を見てたら想像もつきませんね…」
僧侶「どうしよう…襲ってきますか…?」
海賊の頭「もう俺達には気づいていると思います」
蛸娘「クラ君…またぷんぷんしてる」
蛸娘「クラ君!」すぃー
僧侶「あぁっ、スキュちゃん行っちゃダメです!」
141: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:23:00.16 ID:Ydr9QoQwo
海賊の頭「海を自在に泳げる蛸女なら逃げ切れるでしょう」
海賊の頭「だが俺たちはだめだ。海に落ちたら一貫の終わりです」
僧侶「そうですねそうですねっ、ぜっっったいに海には落ちたくありません」
海賊A「攻撃、きます!」
海賊の頭「回避ー!」
天高くふりあげられた巨大なタコ足が海面を叩きました。
炸裂するような大きな音ともに大量のしぶきがあがり、船上はあっという間に水浸しになりました。
僧侶「きゃっ」
海賊の頭「大丈夫ですあたってません」
海賊の頭「さぁアネさん、野郎が体勢を立て直す前にやっちまってください」
僧侶「そ、そんな…無理ですよ」
僧侶「ほんとに攻撃魔法なんてないんです!」
海賊の頭「なにかあるでしょう、火を飛ばすとか、雷を降らせるとか」
僧侶(うう…マナちゃんがいてくれたらぁ)
142: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:28:06.69 ID:Ydr9QoQwo
海賊A「次が来ます!」
海賊の頭「回避ー!」
海賊A「だめです…あたっちまう!」
僧侶「…! なんとか船を守らないと!」
僧侶「聖守護結界!」
▼僧侶は光の壁を創りだした。
海賊の頭「防いだ!」
僧侶「間に合った…よかったぁ」
僧侶「それにあんな攻撃をうけても割れないなんて…本当にすごい強度、これが私の力…?!」
海賊の頭「よし、大砲で迎え撃て」
僧侶「だ、だめですよ。スキュちゃんだってあのあたりにいるんですから。間違えてあたったら大変です!」
僧侶「それにこれ以上怒らせたらだめです!」
僧侶「私の魔法で攻撃を防げるのはわかりましたから、少しだけ船を近づけてください」
海賊の頭「はいっ、仰せのままに」
143: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:35:32.20 ID:Ydr9QoQwo
船を近づけると巨大蛸の全貌が明らかになってきました。
船の大きさをはるかに超える海の中の大きな影、私はそれを見ただけで肝をつぶすました。
先ほどの結界を殴りつけたのが痛かったのか、クラーケンは攻撃をの手をゆるめてこちらを伺っているようでした。
僧侶「クラーケンさん、私はあなたを倒しにきたわけではありません!」
僧侶「あなたを助けにきたんです!」
大蛸「…」ゴゴゴ
僧侶「…さすがに伝わりませんよね」
蛸娘「スキュにまかせて。クラ君にヒーラのことば伝える」
蛸娘「クラ君のことば、ヒーラに伝える」
僧侶「スキュちゃん…間に入ってくれるんですか? お願いします!」
僧侶「クラーケンさん、なにかあったのなら教えてください」
僧侶「ここで暴れて、海を荒らしてはいけません」
僧侶「怒りをおさめてお家へ帰りましょう」
大蛸「…」ゴゴゴ
僧侶「…スキュちゃん、何か言ってますか?」
蛸娘「人間、殺ス…」
蛸娘「クラ君、だめっ」
僧侶「殺すだなんて…」
144: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:43:27.79 ID:Ydr9QoQwo
蛸娘「ワレ…やみのじゅじゅつし…従ウ。って言ってる」
蛸娘「悪いのに負けちゃダメ!」
僧侶「闇の呪術師…?」
蛸娘「クラ君の中に悪いのいる! 悪いのと戦った時に悪いの入れられた」
海賊の頭「やはり何かに洗脳されているのか」
海賊の頭「こうなったらもうこいつを倒すしか俺たちの海に平和は無い」
海賊A「やっちまいましょう頭!」
僧侶「洗脳…おそらく呪いをかけられているんですね」
僧侶「苦しいでしょう。呪いがあなたの心と身体を蝕んでいるんですよね」
僧侶「…」
僧侶(私のいまの力なら…解呪の魔法陣でなんとかできるかも…)
僧侶(けど、ここからじゃだめ)
僧侶(あの巨体を包み込めるくらいの魔法陣を描かないと…どうやって、どこに!?)
海賊A「6時の方角! 帆船だ!」
海賊の頭「なにぃ、なんてタイミングだ」
海賊A「まずいぜ頭、ありゃオクトピアの警備隊の船だ」
海賊の頭「くそっ、何度言ってもわからねぇ頑固者共め」
145: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:49:49.47 ID:Ydr9QoQwo
【警備船上】
勇者「あれみてよ! おっきいタコ!!」
傭兵「な、なんだありゃ…バケモンじゃねぇか…」
勇者「ずっと遠くの方からぞわぞわいやな予感がしてたんだ。こいつだったんだね」
警備隊「…あの船は。例の海賊もいるな」
勇者「海賊!」
傭兵「ユッカ、ヒーラちゃんを魔覚で探知できないか」
勇者「探ってみたいけど、あのタコを中心にここらへんの魔力がぐちゃぐちゃに渦巻いててわからないよ」
警備隊「あの船に行方不明の仲間がいるのか?」
傭兵「そうあってほしくないがな。あんな距離、いまにも沈められちまうぞ!!」
警備隊「海賊どもめ、自業自得だ」
警備隊「巨大タコが海賊船に襲っている間に我々は一旦距離をとる」
勇者「えーー。あのタコはどうするの!」
警備隊「あの大きさだ、手に負える相手ではない。我々のほうが沈められるぞ」
勇者「で、でも人が乗ってる船があんな近くにいるのに!」
警備隊「ダメだ。助けられない命もある。海賊となればしかたもあるまい」
勇者「そんな…ヒーラがいるかもしれないのに」
146: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 00:54:39.09 ID:Ydr9QoQwo
勇者「ヒーラ…そこにいるの…?」
勇者「ぼ、ボク泳いででも」
傭兵「やめろっ」ガシ
勇者「離してよソル! あそこにヒーラがいたらタコに食べられちゃうよ!!」
勇者「それに他の人達も!」
傭兵「落ち着け…落ち着いてくれ。お前が泳いで行ってもどうしようもない」
傭兵「くっ…ヒーラちゃん」
僧侶「あの船…そのまま近づいてこないでくださいね」
海賊A「アネさんどうします。いくらなんでも船底から攻撃されたら防げませんぜ」
僧侶「いま考えてます!」
僧侶「…広大な魔法陣を描く方法。それも海に…できるわけない」
サキュバス「できるわよ」
僧侶「!! 淫魔! どうしてここに」
海賊の頭「うわっ、なんだお前は」ジャキン
149: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 01:01:32.97 ID:Ydr9QoQwo
サキュバス「暇だから勇者についてきたら…」
サキュバス「ぷぷ、あんたすごい格好ね。しかも磯くさっ」
僧侶「う、うるさいですね。あなたには関係ないです」
サキュバス「あるわよ」
僧侶「えっ」
サキュバス「あんたのことは大大大っ嫌いだけど、あの子に泣かれるとあたしとしてはちょっと面倒なの」
サキュバス「だから未熟なあんたが生き残れるようにアドバイス」
サキュバス「魔法陣は、地面と同じように海面にもかけるわ」
サキュバス「安定させるのはとっても難しいけどね?」
僧侶「海面に…なるほど。あっ、でも私泳げません!」
僧侶「そうだ! ならあなたが私を抱えて空を飛んでそこから」
サキュバス「無理だってば。あんた重いもん」
僧侶「重……くっ、じゃあ結局描けないじゃないですか」
サキュバス「やり方はあんたが考えなさい。さぁて、タコ足の触手は趣味じゃないから退散するわ」
サキュバス「バーイ♪ 海の藻屑にならないようにね♪」スゥ―…
150: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 01:05:43.09 ID:Ydr9QoQwo
僧侶「海の藻屑…ほんとそれだけは嫌です」
僧侶「あんな苦しい重い二度としたくありません」
蛸娘「…」ジー
僧侶「ざぶざぶ……はっ!」
僧侶「スキュちゃん!」
蛸娘「? スキュのお嫁さん、どうしたの」
僧侶(うまくできるかどうかわらないけど、これは賭け!)
僧侶「お願いします! 私をキャッチしてくださーい!」
そして私はシャツを脱ぎ捨て、船の上から激しく波立つ魔の海へと身を投げ込みました。
第19話<ヒーラの受難>つづく
154: 以下、
乙、内容が濃くて楽しい
156: 以下、
冒険要素わくわくするね。乙!
162: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 22:54:47.70 ID:Ydr9QoQwo
第19話<ヒーラの受難>つづき
海賊A「アネさん!」
海賊の頭「なんて無謀な…こんな荒れ狂った海、俺達でも簡単に溺れちまうぞ」
ざぷっ
僧侶「ぷはっ…えほっ、えほっ…」
蛸娘「ヒーラ」ぎゅ
僧侶「ありがとうございます。私をつかんだまま、言うとおりに進んでくれませんか」
蛸娘「うん。クラ君、助けたい。苦しんでる」
僧侶「任せて下さい…」
僧侶(これは私にしか出来ないこと…私がやるしか無い!)
海賊A「アネさーん! 平気ですか!」
僧侶「大丈夫です! ここから船を離してください!」
海賊の頭「しかし…」
僧侶「はやく! もうあなたたちの船を守ることは出来ません!」
海賊の頭「わ、わかりました」
海賊A「かしらぁ…」
海賊の頭「アネさんを信じろ……あの人は、杖に選ばれた女神なんだ」
163: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:01:23.45 ID:Ydr9QoQwo
勇者「あっち! 誰かが海に落ちちゃった!」
警備隊「無理だ。この荒れた海では小舟すら出せん」
傭兵「あれは…金髪…? おい、双眼鏡を」
警備隊「あ、あぁ…」
傭兵「……」
傭兵「うそだろ……ヒーラちゃん…?」
勇者「嘘!? あれヒーラなの!? そんな!」
警備隊「なんてことだ、海賊どもめ。人質を囮として海に投げ捨て、自分たちは逃げ出すつもりか」
警備隊「許せん…」
勇者「ヒーーラァーーー!!」
勇者「ぼ、ボク助けに行くっ」カチャカチャ
傭兵「やめろっ、冷静になれ。お前が飛び込んでも無駄だ」
勇者「でもっ、ヒーラがぁ」
傭兵「…泳いでる」
勇者「えっ」
傭兵「なんだ…あの動き…ヒーラちゃんは泳げないはずじゃなかったのか」
勇者「ボクにもレンズ貸して!」
166: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:08:05.63 ID:Ydr9QoQwo
勇者「嘘でしょ…ほんとにヒーラがスイスイ泳いでるや」
勇者「で、でもおかしいよ! どうやって杖を持ったまま泳いでるの」
警備隊「あれは一体なにをしているんだ」
傭兵「本当にヒーラちゃんなのか…?」
勇者「あぁヒーラ危ないっ! かわしてっ!!」
下半身をスキュちゃんに抱きかかえられた私は大きな推進力を得て、
この混沌とした海を突き進み、クラーケンと対峙していました。
いまもまた大きな足が私たちに向かって振り下ろされようとしています。
僧侶「左へ!」
蛸娘「うん」
間一髪、真横に巨足を打ち付けられ、大量の飛沫があがりました。
僧侶「う……もう少しだけ近づいてください」
蛸娘「これ以上、あぶない」
僧侶「大丈夫です。直撃しそうになったら結界で防ぎます」
167: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:16:07.32 ID:Ydr9QoQwo
蛸娘「また来た」
一瞬で視界に影がかかり、見上げると再び、吸盤だらけの大きな足が私を捉えていました。
そして足元にも黒い巨大な影。
蛸娘「下からも来てる。よけられない」
僧侶「だったら…」
僧侶「集中……精度は、私次第…」
僧侶「聖守護結界!」
▼僧侶は自らを覆う球状の光の壁を創りだした。
私達をぐるりと包み込むように大きな球状の結界が現れ、上下からの同時攻撃を完全に弾くことに成功しました。
僧侶「やった!」
僧侶「でも魔力の消費が多すぎる…このままじゃジリ貧です」
僧侶「スキュちゃんもっとく! 急いでっ」
蛸娘「…わかってる」スィー
168: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:23:24.53 ID:Ydr9QoQwo
蛸娘「スキュ、怖い」
僧侶「大丈夫です…絶対にあなたもクラーケンも救います」
蛸娘「ヒーラ…」ギュウ
僧侶「よし、まずは魔法陣の外周から」
蛸娘「何をするの」
僧侶「クラーケンを囲うように浄化の魔法陣を描きます」
私は蒼い巨大な魔宝水晶の輝く杖先を海面にひたし、
魔力を海中に溶かすように流し込んでいきました。
私の魔力が混じった海水は激しい泡と共に発光しはじめて、真っ白に輝いています。
僧侶「…大丈夫」
僧侶「スキュちゃんはこのまま一緒にぐるっと一周回ってください」
蛸娘「わかった!」
勇者「あわわ、ヒーラなにやってるのぉ…なんで近づいていっちゃうの」
傭兵「まずいな…なにか遠距離武器はないのか」
警備隊「迫撃砲なら積んでいるが、むやみに使うのは危険だ」
傭兵「俺に遠距離魔法があれば…」
傭兵「マナを留守番させたのは失敗だったな」
169: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:29:57.69 ID:Ydr9QoQwo
僧侶「魔法陣を描いている間、私は結界を張ることができません!」
僧侶「最高度でお願いします!」
蛸娘「…スキュ、そこまで泳ぐのくない。お嫁さんギューしてたらなおさら」スィー
僧侶「う…」
僧侶(おねがい…何もしてこないで)
しかし私の願いは虚しく、また天高くタコ足が突き上げられました。
僧侶(あんなもので殴りつけられたら海の藻屑になってしまいます…)
僧侶(一体どうしたら。結界? けど、魔法陣が途切れてやりなおしになっちゃう)
僧侶「うう」
一瞬の逡巡の間に、無情にも足は振り下ろされました。
目の前に巨大な影がみるみるうちに迫ってきました。
僧侶「!!」
勇者「あぁっ! ヒーラ!!」
傭兵「よけてくれ!!」
170: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:39:06.33 ID:Ydr9QoQwo
僧侶「う……あれ」
轟音とともに押しつぶされて命を絶たれたと思いました。
しかし痛みはやってきません。
反射的に閉じた目を開くと、そこには今もなお同じ景色が広がっていました。
僧侶「どうして」
蛸娘「…? スキュ、い…?」
私が海面を移動する度はさきほどまでとは比べ物にならないくらいにあがっていました。
それはもう、水の上を華麗に滑るように。
通りすぎた跡には綺麗な波紋が広がっていきます。
僧侶「スキュちゃん…?」
ふと足元を覗くと、私をだきかかえるスキュちゃんに更に何かが抱きついていました。
171: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:44:36.89 ID:Ydr9QoQwo
僧侶「え…」
蛸娘「ローレ。ローレ!」
僧侶「ローレさん…?」
大きな尾ひれで水を蹴り、優雅に泳ぐその正体は、私のよく知った人物でした。
宿屋の少女「なんとか、間に合いましたね」
僧侶「あ、あなた…どうして。その姿は…!?」
宿屋の少女「いまは事情を説明している時間はありません」
蛸娘「うにゅ…スキュのお嫁さん。助けてあげて」
蛸娘「スキュだけじゃ無理だから…おねがい」
宿屋の少女「安心してください。そのために来ました」
宿屋の少女「いきますよヒーラさん」
宿屋の少女「指示をください。私の度ならアレに捕まりはしません」
蛸娘「スキュもスイスイする」
僧侶「…! わかりました、大きな魔法陣を描きます」
僧侶「このままぐるりとクラーケンを囲うように海面を泳いでください」
172: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:52:58.08 ID:Ydr9QoQwo
警備隊「なんだ…あの少女は」
警備隊「タコ足に…尾ひれ…? 魔物なのか…いや、まさか伝説の…」
傭兵「ヒーラちゃん…」
勇者「い! あんな状況で魔法陣を描いてるんだ…すごい!」
勇者「ヒーラすごいよ!」
僧侶「これで一周!」
大蛸「…」ゴゴゴ
僧侶「もうこの円から逃げ出すことはできません」
宿屋の少女「この後は!」
僧侶「円の中に正三角形と、逆三角形の組み合わせです!」
宿屋の少女「…ひょっとして六芒星ですか。やってみます」
蛸娘「スキュも手伝う」
僧侶「ですが、この先はあの巨体の真横を通らないといけません」
僧侶「なにか気を引ければ…」
173: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/08(月) 23:59:17.82 ID:Ydr9QoQwo
海賊の頭「アネさーん!」
海賊A「うおおアネさん無事ですかー!」
僧侶「あ、あなたたちっ、どうして戻ってきたんです」
海賊の頭「アネさんのやりたいことがわかりました!」
海賊の頭「てめぇら、小舟で散ってやつの気を逸らせ!」
海賊達「へい!」
僧侶「き、危険です!」
海賊の頭「こちとら海の男だぜ。荒波やたかがタコなんぞに負けてたまるか」
海賊の頭「いいか、アネさんが魔法の儀式を終えるまで手出しさせるな!」
僧侶「死んじゃいますよ!」
海賊の頭「へへ、海に沈めばもれなく海神様方の仲間入りだぜ。てめぇらアネさんのこと死んでも守れ」
海賊達「へい!」
僧侶「みなさん…」
宿屋の少女「急ぎましょう。魔法の効力が弱まってきています」
僧侶「えぇ!」
174: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:06:11.54 ID:SAL07a4ho
僧侶「いきます…!」
私は魔法陣の残りを描くために再び杖を強く握りしめました。
僧侶(みんなが力を貸してくれている…私がみんなを助けなきゃ)
僧侶「ローレさん、この角度で直進を!」
宿屋の少女「はい!」
六芒星を描くために私達はクラーケンのわき横数メートルを通過する必要がありました。
その神秘的とも言える巨躯に圧倒されながら、私は海面に杖を走らせます。
僧侶「近づくと、やっぱり大きい…」
宿屋の少女「ヒーラさん、大丈夫ですか」
僧侶「みなさんが気を逸らしてくれているおかげです。でもそれもいつまでもつか」
僧侶「はい、ここでターンをしてください!」
宿屋の少女「わかりました!」
私は神に祈りながら、クラーケンを取り囲むように六芒星を徐々に完成させてゆきました。
175: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:12:01.04 ID:SAL07a4ho
勇者「すごい…あんなおっきな魔法陣みたことないよ」
サキュバス「やるじゃない。あたしのアドバイスのおかげね」
勇者「う、うあっ、サキュ…!」
サキュバス「にしても、めんどくさい物手に入れちゃったわねあの子」
サキュバス「これからはもっと気をつけないと…!」
サキュバス「油断したらジュワっと消されちゃうかも♪」
勇者「ねぇ、ヒーラに会ってきたの!?」
勇者「ヒーラ…ちゃんとヒーラのままなんだよね!?」
サキュバス「どういう意味よ」
勇者「だ、だって…あそこまで膨大な魔力を持ってるヒーラなんてしらないよ!」
傭兵「しかもすごい度で泳いでるしな」
サキュバス「ぷぷ…」
宿屋の少女「これで…!」
僧侶「完成です! ふたりとも協力ありがとうございました」
大蛸「…」ゴゴゴ
176: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:21:16.75 ID:SAL07a4ho
僧侶「ローレさんは、海賊さんたちのフォローにまわってください」
僧侶「もしかしたら落ちちゃった人がいるかも!」
宿屋の少女「はい」
蛸娘「スキュ、一緒にいる。ヒーラの足になる」
僧侶「…」コク
僧侶「術式…聖浄化六芒星!」
▼六芒星から放たれた聖なる光がクラーケンを包み込んだ。
大蛸「…!」ゴゴゴ
僧侶「あなたに巣食う魔を祓います!」
僧侶「浄化を――――」
杖の先から光の柱が天に向かってのび、クラーケンの頭上で弾けてシャワーのように降り注ぎました。
辺り一帯は目もくらむような真っ白な光に包まれます。
177: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:28:17.29 ID:SAL07a4ho
僧侶(…ここは)
気づいた時には私は蒼い海のなかにいて、
目の前にはさきほどまでとは打って変わって
暖かく優しい魔力を帯びたクラーケンがいました。
彼はゆっくりと一本の太い太いタコ足を伸ばしてきて、私の目の前につきつけます。
僧侶(よかったです…)
私はそっとその足に触れました。
僧侶(…!)
すると頭の中に何かぼんやりとした映像が浮かび上がってきました。
僧侶(これは…)
黒いローブを着た何者かが、船の上から邪な魔力を海へと流し込んでいました。
僧侶(ひどい…なんてことを!)
178: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:35:53.96 ID:SAL07a4ho
僧侶(まさか…この人が闇の呪術師…)
大蛸「…」ゴゴ…
僧侶(これはあなたの記憶なんですね)
その映像の中で、クラーケンは確かにその謎の呪術師と戦っていました。
しかし、圧倒的な魔力を前に為す術はなく、やがて海は真っ黒に染まってしまい、
そこで記憶は途切れました。
その後、邪な魔力にあてられたクラーケンは人を襲うようになったのでしょう。
僧侶(けど、あなたは海の生き物たちを守ろうとした)
僧侶(そうですね)
大蛸「…」ゴゴゴ
僧侶(もう大丈夫ですよ。懺悔の必要はありません)
僧侶(全部、教えてくれてありがとうございます)
僧侶(さぁ、あなたは元の棲家へお帰りなさい)
僧侶(あとは私が…私達にまかせてください)
その呪術師は、おそらくこの先私達に牙を向くでしょう。
私はこの時、はっきりと自分の対峙すべき敵といえる存在を認識しました。
179: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:41:26.52 ID:SAL07a4ho
僧侶「ぷはっ…」
海面に顔を出すとすっかり海は穏やかさをとりもどし、曇天には晴れ間が覗いていました。
僧侶「はぁ…良かった」
蛸娘「ヒーラ…ありがとう」
僧侶「えへへ。やりましたね。みんなのおかげです。スキュちゃんありがとう」
僧侶「ローレさん、ありがとうございました」
宿屋の少女「うふふ。いまでも心臓がドキドキしてます」
海賊の頭「おーいアネさん! こっちです!」
僧侶「あっ」
海賊さんたちは船に私をひきあげてくれました。
僧侶「みなさん無事ですか!」
海賊の頭「ええ。おかげさまで」
海賊の頭「ありがとうございました」
僧侶「こちらこそ。あなたたちの協力なしでは魔法陣を描くことはできませんでした」
180: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:47:33.59 ID:SAL07a4ho
海賊の頭「それで、アネさん…」
海賊の頭「これから、どうします」
僧侶「…」
海賊の頭「よければ俺たちのことを今後も導いてくれませんか!」
海賊の頭「お願いします!」
僧侶「そ、それは…」
海賊の頭「アネさんの部屋はとびきり豪華にします」
海賊の頭「野郎どもが扉に触れることすら許しません、アネさんのプライベートを保ちます」
海賊の頭「飯も風呂も不自由させません!」
海賊の頭「そうだ、あの蛸女も一緒に…!」
僧侶「…」
海賊の頭「それでも…だめですか」
海賊の頭「俺たちには女神のアネさんが必要なんです!」
海賊A「おかしらぁ…警備隊の奴らがもうそこまで来てますぜ」
181: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:51:06.64 ID:SAL07a4ho
警備隊「あーこちらは警備隊だ。海賊ども、応答せよ」
警備隊「お前たちが人質を連れていることは知っている」
警備隊「すぐに解放しろ」
海賊A「野郎、好き勝手いいやがって」
海賊A「この方は俺たちのアネさんだぞ…」
海賊の頭「…アネさん」
僧侶「…わ、私は。すでに仲間がいるので、同行はできません」
海賊の頭「そう……ですか」
海賊A「うおおんせっかく俺達の女神をみつけたのによぉ」
警備隊「人質を解放せよ」
警備隊「それとも、その女はお前たちの仲間か」
警備隊「そうとなれば、砲撃を開始する!」
傭兵「お前何言ってやがる!」
勇者「ヒーラはほんとにボクたちの仲間だよぉ! 海賊たちに誘拐されたんだ!」
警備隊「だが、そうは見えんぞ」
182: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 00:57:07.82 ID:SAL07a4ho
海賊A「まずいぜ頭、この距離で撃たれたら直撃しちまう」
海賊B「大丈夫だ。こっちにはアネさんの結界がある! 大砲なんていちころよ」
海賊の頭「…アネさん。お願いします、俺達と共に」
僧侶「でも…それはできません」
勇者「ヒーラーーー!!」
勇者「ヒーラなんでしょ!! ボクだよ!!」
僧侶「! ユッカ様!? あの船にユッカ様が!」
海賊の頭「あれがアネさんのお仲間ですか」
僧侶「そ、そうです! 私の仲間です!」
僧侶「うぇぇん…ユッカ様…ぐすっ」
僧侶「よかった…みんなと…また、ずずっ」
海賊の頭「…」 
警備隊「攻撃を開始する」
海賊の頭「!」
183: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:04:11.14 ID:SAL07a4ho
傭兵「やめろっ!」
勇者「うっちゃだめだよぉ! ほんとにヒーラはボクたちの仲間なんだよぉ!」
警備隊「我々の目的はこの海域を荒らす海賊どもの駆逐である」
警備隊「各砲座、構え!」
海賊の頭「まちやがれ!!」
警備隊「…む」
海賊の頭「これが見えねぇのか!」
海賊のお頭さんは腰のサーベルを引き抜き、私の首元に触れない程度にそっと当てました。
海賊の頭「ご無礼をアネさん…いえ女神様」ボソボソ
海賊の頭「この人質の女の命が惜しければ、俺たちを見逃してもらおうか。交換条件だ」
警備隊「くっ。やはり人質だったか…姑息な手を」
警備隊「わかった。いますぐ婦人を解放せよ!!」
海賊の頭「あぁ。小舟でそっちに向かわせる!! 砲撃すんじゃねぇぞ!」
184: 以下、
頭ぁ・・・
185: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:10:31.86 ID:SAL07a4ho
海賊の頭「…行ってください」ボソボソ
僧侶「あなた…」
海賊の頭「俺達は言い逃れもできねぇ海賊」
海賊の頭「オクトピアから来た商船をおどしたのは事実なんです」
海賊の頭「へっ、やっぱりアネさんはここにいちゃいけねぇな」
海賊の頭「さぁ仲間が待ってんでしょ」
海賊A「下に船を用意してます。そこのロープを伝って海に降りてください」
僧侶「…お世話になりました。そうだ、この杖…返します」
海賊の頭「それはアネさんが海に認められた証だ。俺達は受け取ることはできねぇ」
海賊の頭「持って行ってください。もともと誰のモンってわけでもねぇ」
僧侶「でも…」
海賊の頭「ほら、グズグズしてると陸のバカどもがまた疑っちまう」
海賊の頭「お元気で。ヒーラ様」
海賊の頭「頭を下げちゃいけませんよ。いかにも怯えた人質を装ってください」
僧侶「あっ、ありがとうございました…!」ギクシャク
187: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:16:04.01 ID:SAL07a4ho
私は海に降りて小舟に乗りました。
オールの漕ぎ方がわからなかったのですが、不思議と小舟は前へ動いていきます。
僧侶「あ、あれ…?」
蛸娘「ヒーラ…」
僧侶「スキュちゃんが押してくれてるんですか…?」
蛸娘「そう。スキュ…ヒーラのこと好き」
蛸娘「でも、ヒーラ帰るとこある。ヒーラお嫁さんにできない」
蛸娘「スキュ悪い子だった。ごめんなさい」
僧侶「謝らないでください。もう済んだことです」
僧侶「それに…楽しかった。知らない世界を知れてすこしだけ、うふふ」
蛸娘「でも…」
僧侶「スキュちゃんは寂しかっただけですよね」
蛸娘「クラ君元気にもどった。もうぷんぷんしてない。ヒーラのおかげ」
蛸娘「ローレにもひさしぶりに会えた。うれしい」
蛸娘「ありがとう。ありがとう。ヒーラ好き」
僧侶「うふふ」
そして、小舟は大きな警備隊船の前までたどり着きました。
189: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:25:04.34 ID:SAL07a4ho
蛸娘「あのね。スキュ、ヒーラに幸せになってほしい」
僧侶「スキュちゃん…」
蛸娘「ヒーラをお嫁さんにする人、きっともっと幸せになる」
蛸娘「スキュもがんばって幸せになる」
蛸娘「ばいばい…」
僧侶「…行っちゃうんですか」
蛸娘「スキュのお友達助けてくれてありがとう」
蛸娘「ばいばい。ヒーラばいばい」
僧侶「あっ…スキュちゃん、最後に顔がみたいです」
蛸娘「だめ。ヒーラ、スキュと一緒のとこみたれたらスキュの仲間とおもわれる」
蛸娘「ヒーラ、人間。スキュと違う」
蛸娘「だからヒーラ、ばいばい」
僧侶「…!」
そうして、スキュちゃんはスィーっと波間に消えてゆきました。
僧侶(…ありがとう)
僧侶(さようなら…スキュちゃん)
勇者「ヒーラぁぁああ!」
ユッカ様が勢い良く縄梯子から降りてきて、私に激しく抱きつき小舟がぐらぐらと揺れました。
僧侶「ユッカ様…泣かないで」
そう慰めた私の頬には、たしかに一筋の涙が伝っていました。
190: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:32:57.93 ID:SAL07a4ho
その日、疲れきった私はローレライに一旦帰ることとなりました。
事情聴取を含めた事後処理は明日以降おこなわれるそうです。
僧侶「…」
私は2階のテラスで潮風に吹かれながらぼーっと夜の海をながめていました。
僧侶「…」
勇者「ヒーラ!」
ユッカ様は私の側から離れようとせず、ずっとくっついたままです。
ソル様もマナちゃんも私の帰還を喜び、何かと世話を焼いてくれました。
傭兵「腹減ったろ。これ、晩飯買ってきた」
勇者「あーなにこれ唐揚げ?」
傭兵「タコだけどな。うまいぞ」
勇者「えータコ…」
僧侶「タコ…」
191: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/09(火) 01:38:39.56 ID:SAL07a4ho
傭兵「タコはこの街の名物なんだぞ! なんたって蛸女伝説の残るオクトピアなんだからな」
勇者「それって罰当たりじゃないのかなぁ」
勇者「…はむ…。うわぁ、これサクサクだね! ぶにぶにしてない!」
傭兵「お、ついにお前もタコのうまさに気づいたか」
勇者「こんな調理法があるんだねー」もぐもぐ
魔女「おいしい」
傭兵「あれ、ヒーラちゃん食べないの?」
勇者「お腹へってないのー?」
僧侶「い、いえ…」
傭兵「ヒーラってタコ嫌いじゃなかったよね? もしかして…今日のあのおっきいタコとの戦いで嫌いになった?」
僧侶「…」フルフル
僧侶「タコは決して嫌いじゃありませんよ!」
僧侶「ただ…なんとなく今は食べづらくって」
傭兵「それもそうか。悪いな…なんか違うのすぐ買ってくる!」
僧侶「あっ…そこまでしなくていいのに」
僧侶「タコ…」
僧侶(スキュちゃん…元気でね)
第19話<ヒーラの受難>おわり
212: ◆PPpHYmcfWQaa 2015/06/11(木) 22:56:34.57 ID:isF+/wsEo
▼前回のあらすじ
蛸娘<スキュラ>に誘拐されて行き着いた海賊のアジトにて、海鳴りの杖に選ばれた僧侶<ヒーラ>は海の女神として祭り上げられる。
そして状況に流されるままに、海で暴れる大蛸<クラーケン>と対峙することになった。
スキュラと宿屋の少女<ローレ>、そして海賊達の力を借りたヒーラは新しい杖の力で
邪な魔力に支配されたクラーケンを浄化し、無事ユッカ達の元へと帰還したのであった。
213: 以下、

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