唯「これで567521251回目の高校生活かぁ」back

唯「これで567521251回目の高校生活かぁ」


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1:
平沢唯は、高校生活3年間を無限にループし続けている。彼女はもはやまともな人間としての心を失いつつあった。
唯「入学式行かなきゃ…」
4:
唯は入学式を終えると、すぐさま職員室に向かう。
唯「山中先生、軽音楽部を設立したいので、申請をお願いします」
6:
唯がかつてさわちゃんと呼び、慕った山中さわ子は、すでにただの先生という認識しかなかった。必要以上に仲良くなる事は、唯の心に重い負担となるためだ。
9:
4月の終わり、田井中律、秋山澪、琴吹紬が部員として入部した。
律「平沢さん、私の事はりっちゃんって呼んで!で、こっちは澪!そっちはムギ!これからよろしくね!」
彼女達は唯が何度高校生活を繰り返して、どんな道を辿ったとしても友人となった。運命ってあるんだね、と唯は内心ずっと思っていた。
11:
澪「平沢さん、何か楽器できるの?よかったら弾いてみてくれないかな」
唯は567521251回の間にありとあらゆる楽器を経験してきた。カスタネットからコンゴの民族楽器シロフォンまで、彼女は音楽の神とも呼べる存在にまで昇華していた。
13:
律「信じられない…本当に未経験なの?」
紬「素晴らしいわ!こんなに上手な人がいたらとっても楽しくなりそうね」
15:
平沢唯は567521251回の時の中で、このループから抜け出すありとあらゆる手段を講じた。だが、そのすべては失敗に終わった。諦めた彼女は300回ほどの高校生活を自宅に引きこもりひたすら神に祈りつつギターの練習に費やした。
気付いた時には彼女の指は
音を置き去りにしていた。
19:
唯が軽音部メンバーと繋がりを持つのは大きな理由があった。それは、彼女が命よりも大切だと思ったギター、ギー太を手に入れるためであった。お小遣いでは到底届かないそのギターを、琴吹紬のコネにより手に入れること。
唯はいつも、心の中で紬に謝罪を続けている。
24:
軽音楽部での1年はあっという間に過ぎ、唯達は2年へと進級した。
澪「何とかみんな進級できたな!」
律「当たり前だろ!私が唯より低い点数取るわけないじゃん!」
唯「りっちゃんひどい!」
唯は道化を演じるのは息をするよりも簡単だ。その気になれば彼女は学年トップ、いや全国トップの点数を取ることもできる。だが、その結果が周囲の好奇の眼差し、そして秋山澪の嫉妬の末、軽音楽部の瓦解に繋がることを知っている。
28:
梓「はじめまして、中野梓です」
あずにゃん、いつからか唯はそう呼ぶのを止めた。馬鹿らしくなったからではなく、彼女を愛しく思えば思うほど辛くなるからだ。
30:
梓「平沢先輩…すごいです!こんな演奏が出来る人、日本どころか世界にも滅多にいませんよ!」
律「それだけじゃないぞ、唯はベースもドラムもキーボードも、私達の誰より上手いんだからな!」
澪「それを自慢してどうするんだ馬鹿!私達も唯に追いつけるよう努力しなきゃいけないだろ!」
紬「とりあえずお茶にしましょう」
31:
唯は最初にこのループの原因を自分自身のせいかと疑い、4520回その検証に費やした。だがその成果は全くと言っていいほど出なかった。
33:
彼女は次に琴吹紬を疑った。自分は彼女について何も知らなかったからだ。
だが琴吹紬は、純粋に軽音部とその仲間を愛しているただの少女であった。475863回目、平沢唯はひたすら彼女に謝り続けた。
37:
梓「平沢先輩ってなんていうか大人びてますよね。達観してるというか」
唯「ありがとう中野さん」
梓「私、そんな平沢先輩も好きなんですけど、なんか…こう、平沢先輩ってもっと別の一面もあるんじゃないかなーって思ったり…」
梓「すいません!こんなこと言って!失礼します!」
唯は表情こそ変えなかったが、内心驚いていた。今の梓は本当の唯を知る由はない。永久とも思える時間を過ごし、失いかけていた本当の自分を思い出した気がしたからだ。
唯「もしかしたら今回は…このループから抜け出せるかもしれない」
38:
唯はこのループから抜け出す方法を5664717523回目から思いついていた。音を超えた彼女のギター演奏、そのさを光にまで到達させることで、時空を歪ませられないかと考えたのだ。
39:
本来の地球に…それどころかただの一介の女子高生が光を超えた運動を行うなど、宇宙全体にとってあり得ないことのはずだ。
宇宙から異物として排除され、この時空間から脱出すること。それが平沢唯が567521251回目でループを終わらせるために用意した策であった。
40:
だが、梓の言葉は唯の心に残っていた。出来ることなら、中野梓、田井中律、秋山澪、琴吹紬…彼女たちと別れずに済む方法がないだろうか。
既に唯は、3年生になっていた。
52:
唯「なんとかしなきゃ…なんとかしなきゃ…」
唯は3年生になってから、寝る間も惜しみギターの練習に打ち込んでいた。ループを抜け出す光の演奏…未だ彼女の技量はそこには届いていなかったからだ。
唯「なんとかしなきゃ…なんとかしなきゃ…」
55:
律「唯の奴…なんか最近すごいやつれたよな」
紬「それに、学校にもたまにしか来ないし…」
澪「まさかなにかあったんじゃ…」
梓「私、平沢先輩の家に行ってみます!」
梓のこの判断は、唯にとっては不幸としか言いようがない。今の唯はセンチメンタルな気分で梓に泣きつく暇などないのだ。
56:
唯「できた…ついに、光の演奏…」
憂「お姉ちゃん!中野さんが来てるよー!」
唯は油断していた。中野梓の思いがけない、今まで取ったことのなかった家えの来訪。
気付けばループが始まる1分前になっていた。
57:
唯「あずさ…あずにゃん!ごめん!」
唯は今までのありったけ演奏を掻き鳴らした。
その演奏は家にいた梓と憂だけでなく、きっと世界の全員に伝わったであろう。
平沢唯は今ひとつの次元を超えたのだ。
唯「あずにゃん…きっと…また会える…よね、」
59:
唯「これで567521252回目の高校生活かぁ」
79:
平沢唯は、高校生活3年間を無限にループし続けている。彼女はもはやまともな人間としての心を失いつつあった。
唯「入学式行かなきゃ…」
唯は入学式を終えると、すぐさま職員室に向かう。
80:
4月の終わり、田井中律、秋山澪、琴吹紬が部員として入部した。
律「平沢さん、私の事はりっちゃんって呼んで!で、こっちは澪!そっちはムギ!これからよろしくね!」
唯は彼女たちの話はほとんど上の空で聞き取ってはいなかった。三度ほど話しかけて唯が反応しないのを見て、三人は「平沢さんはこういう人だ」と思うようになった。
81:
澪「平沢さん、何か楽器できるの?よかったら弾いてみてくれないかな」
唯は567521252回の間にありとあらゆる楽器を経験してきた。だが、567521251回目の光の演奏が時空の壁を超えるという絵空事を思い出し、1人で嘲笑した。
82:
律「みんな未経験みたいなもんだしさ、一緒にがんばろう!」
紬「私も、ピアノは経験あるけど、キーボードって初めてで」
83:
平沢唯は567521252回目、ギー太と呼んだギターを欲しがらなくなった。彼女は音楽の無限の可能性の限界を憎んでいた。
唯「音楽じゃなにも変えられない」
軽音楽部を作ったのはただの惰性であったのか、彼女の本当にやりたかったことなのかはわからない。
86:
軽音楽部での1年はあっという間に過ぎ、唯達は2年へと進級した。
澪「何とかみんな進級できたな!」
律「当たり前だろ!私が唯より低い点数取るわけないじゃん!」
唯は新たな視点、哲学的なアプローチにより状況の打破が叶わないかを考え、1日の大半を費やした。学校の成績など思考の片手間に書き上げた解答に過ぎない。今や弥勒菩薩の到来をとうに越えているはずなのに、彼女は救いの手からは溢れている。
87:
梓「はじめまして、中野梓です」
梓「はっきり言いますが、平沢先輩はもっと真面目になるべきです!」
律「確かに後輩も入ってきたんだし、唯もしっかりしてくれよ」
澪「そうだぞ…頼むよ唯…」
紬「唯ちゃん…」
90:
唯はごく初期の、彼女が思い付いたループの原因について考えていた。自分が事故に遭い、意識を失っているのかもしれない。これはすべて夢なのだと。
梓「…?」
94:
唯は梓をじっと見つめた。567521251回目にほんの小さな変化を見せた梓に期待した。
梓「あの…私、皆さんと練習があるんで…」
梓「すいません!こんなこと言って!失礼します!」
唯はあぁそうかと思った。
あれは本当に、天文学的な数字の中で起こったただの偶然だったんだ。
唯「また、だめだな」
96:
唯はこの高校生活、567521252回目の高校生活を諦めた。楽だった。ただ、涙は止まらなかった。
唯「諦めたくない、諦めたくないよぉ…」
既に唯は、3年生になっていた。
97:
唯は思考を止めた。
命はある。ただ哲学的解決策が矛盾に到達し、どちらが正しいのかの判断をできなかったからだ。
99:
律「私さ、変な夢みたんだ」
紬「どんな夢なの?」
律「唯がボケキャラって感じでさ、私達の輪の中で自然に溶け込んでるの。おかしいよな、あいつ3年になってから一回も顔合わせてないのに」
澪「律も…か?」
紬「実は私もそんな夢を見ることがあるの…唯ちゃんがいっつも笑ってる夢」
律「不思議なことってあるもんだよな」
梓「…」
梓だけは、それを「不思議なこと」では終わられられていなかった。
長い部活の、ほんの数分の馬鹿げた話。
梓はいつか、平沢唯にじっと、見つめられたことがあったのを思い出した。
102:
唯「567521253回目の高校生活かぁ」
105:
中野梓は正直なところ、軽音楽部に入部したことを少し後悔していた。
いつもふざけてばかり、練習よりもティータイムを優先する姿勢に苛立ちを感じていたからだ。
107:
律「じゃあチョコレートは私とムギのだな!」
唯「りっちゃんひどいよぉぉ!」
澪「練習…」
梓「まったくこの人たちは…」
108:
梓「みなさんふざけすぎです!特に律先輩と唯先輩!こんなんじゃ学園祭ライブなんてできっこないですよ!」
紬「まぁまぁ梓ちゃん、みんな今までこれでやってこれたんだし」
梓「ムギ先輩は甘やかしすぎです!」
110:
澪「梓の言うとおりだ。真面目に練習しなきゃ、いつまでたっても上達しないぞ」
唯「へーい」
律「へーい」
なんだろう。これが普通なのに、なにかおかしい。梓の視点は、上から自分自身を見ていた。
113:
唯「そうだね、これが本当の本当にあった、私達の思い出だよ」
唯は梓に抱き付いて耳元で囁いた。
梓は勿論意味がわからず、「えっ?」と問うたが、唯は紬が入れたお茶に飛び付いていた。
梓の思考は混乱する。
私は、今まで私だったはずなのにと
115:
中野梓を襲った違和感は、それから日増しに大きくなっていった。
そしてそれは、野良猫を見つけて、懐かれたら面倒だと思い避けたことで決定的となった。
梓「私は…あの猫、家に連れ帰るはずだったんだ」
梓は気付く。これから起こること全てが、既に決まっているという運命論の世界に。
118:
梓はいてもたってもいられず、「平沢唯」へと電話を掛けた。
彼女は全てに気付いている。いや、もしかしたらこれから起こることを全て彼女が決定しているのかもしれない。
梓は平沢唯に神に等しいものを見た。
だが、電話に出た唯の一声はとてもそんな神々しいものではなかった。
唯「あずにゃん、アイス買ってきて」
121:
梓は渋々、平沢家にアイスを土産にやって来た。
唯の間の抜けた話し方がしゃくに触ったので、一番安いアイスだ。
憂「ようこそ梓ちゃん」
梓「唯先輩は上?」
憂「梓ちゃん」
憂「唯先輩って誰?」
126:
梓の血の気が引いた。
持っていたアイスの袋がぐしゃりと音を立てて落ちる。
梓「憂…何言って…」
唯「なんちゃってー実は私でしたー!」
唯「憂は買い物中だよ」
梓はそれから何をしたか覚えていない。ただ泣きじゃくりながら、唯に掴みかかり、叫びに近い声で感情を吐き出した。
131:
梓が我に帰ったのは、唯に抱き締められ、頭を撫でられている時だった。とても安心する、優しいはずなのに、唯の眼の奥にある得体のしれないものに梓はまだ心を許していない。
梓「唯先輩…私、最近変なんです」
梓「これから何が起きて…それがどんな結果を起こすのか…わかってしまうんです」
梓「唯先輩言ってくれましたよね。これが本当の思い出だって」
梓「唯先輩の知ってること、全部教えてください。もし言えないなら、私は納得するまで帰りません」
136:
唯は迷っていた。
かつて、567521253回の内、梓を始めとする仲間たちには4263719回、自分が高校生活の3年間をループしていることを告げていた。仲間たちは助けようと必死になってくれた。
だが、その努力が無駄となっていったことを、唯は全て覚えている。
いつからか、唯は1人で…自分だけで全てを背負う覚悟をしたのだ。
138:
唯「あずにゃん…明日、学校の屋上で全部教えてあげる。りっちゃんたちにもね」
梓「唯先輩…」
唯「だから、今日は帰って。大丈夫、あずにゃんのこと、1人にしたりしないから」
梓はこの時気付かなかった。予知のような能力に目覚めた自分に、「1人にしない」と言った唯の本意を…
144:
翌日、朝一番に中野梓は音楽室の横の屋上へ駆け込んだ。
それから少し遅れて琴吹紬、田井中律が現れた。
平沢唯は、震える秋山澪の肩を抱きながら屋上へと訪れた。
梓「唯先輩、教えてもらいますよ。唯先輩が隠してる本当のこと!」
唯「それ、懐かしいな。5638回目だったかな。『中野梓』はいつでも私のことを、不器用だけど考えてくれてたよね」
紬「唯…ちゃん?本当にあなた唯ちゃんなの?」
147:
唯「ムギちゃん、私はね、みんなとの楽しい青春を567521253回過ごしたんだよ。一度きりだってみんなで笑ってる時も泣いてる時も、そこにいたのは567521253回目の私なの」
律は何も言わなかった。拳を握り締め、ただ唯を睨むでもなく、かと言って憐れむでもない、ただ平沢唯という存在だけを見ていた。
澪は唯に、「嘘だと言ってくれ」とすがっていた。
149:
平沢唯は各々の動きには眼もくれず、話し始めた。
唯「567521251回目、私は光でギターを弾けば、世界が変わると思ってたの」
唯「馬鹿だよね、どんなに練習しようが、そんなの出来るわけないのに」
唯「でも567521251回目の私は本気だった」
平沢唯はそう言いながら指で宙にある透明なギターを抑え始めた。まるでそこに本物のギターがあるかのように
150:
唯「567521252回目は、もうなんかあきらめちゃったんだ」
唯「あーやっぱり私はこの地獄から抜け出せないんだって」
唯「でも567521253回目…私のことに気付いてくれたね」
唯「あずにゃん」
151:
紬「みんなで…何とかしましょう!きっとなんとかする方法があるはずよ!!」
紬は泣いていた。
梓「そうです!私、何だってします!だから!だから!」
唯「そうだね、今まではだめだったけど、もしかしたら今度は上手くいくかもしれない」
唯「でも、もう時間切れだよ」
152:
唯「567521254回目の高校生活かぁ」
153:
平沢唯は、高校生活3年間を無限にループし続けている。彼女はもはやまともな人間としての心を失いつつあった。
唯「入学式行かなきゃ…」
何度も繰り返す同じ行為…だが、今回は違った。中野梓がいる。平沢唯は希望というものにすがる他正気を保てなかった。
154:
唯は入学式を終えると、すぐさま職員室に向かう。
唯「山中先生、軽音楽部を設立したいので、申請をお願いします」
158:
梓「唯先輩!」
突如職員室の入口から大声で呼ばれた。まだ私一年生なのに、唯はケタケタ笑った。
間違いない。中野梓だ。
奇跡が起こった。彼女は覚えていたのだ。
セーラー服を着た彼女を、唯はひっそり音楽室へと連れて行った。
160:
唯「自己紹介からだね、私は平沢唯。って知ってるか」
梓「いえ、本当は私、唯先輩が誰かわからなかったんです。ぼやーっとしか覚えてない会ったこともないはずのあなたを探さなきゃ!って何故か思って…」
梓は完璧に記憶を持っているようではない。
だが、今はこの奇跡に感謝する。
唯は567521254回の中で、久しぶりに心から笑った。
162:
正直なところ、唯はループの原因はどうでもいいと思うようになっていた。
今一番唯が守らなくてはならないもの、それは何度かの繰り返しの中で、ようやく出会うことの出来た、中野梓という奇跡。
164:
梓はそれから、軽音部の部室に、よく顔を出すようになっていった。
そして、田井中律、秋山澪、琴吹紬も入部し、あの時、567521253回目に全てを明かしたメンバーが揃った。
律は能天気に、「じゃあ今よりもーっとこれからを楽しんだらいいんじゃないか」と言い出した。
それはもう6825回聞いたよ。と唯は思ったが、よくよく考えるとそれは盲点でもあった。
あの日、ループが始まる3年生の卒業式の日、唯は、今となっては曖昧だが、「今がずっと続いて欲しい」と願ったのを思い出した。
166:
律の6825回の提案を、唯はその時、悲観的に捉えていた。どうせ無理だと思っていた。
だが今は違う。
唯のことを覚えていた梓がいる。
中野梓という希望がある。
唯はそれを信じようと思った。
唯「いっぱい笑って、いっぱい泣いて、今を精一杯生きる…か」
澪「唯…?」
唯「りっちゃん、私、大事なことを忘れてた」
唯「1番長生きしてるはずなのに、やっぱ私ってダメだね」
紬「そんなことないわ」
梓「唯先輩、今はみんないます」
律「私達を信じろ、辛い時は頼れ、って感じかな」
170:
唯は、忘れていた気持ちである信じるということに賭けた。
もう次はない。そう思い、今まで思い残していたことをして。
精一杯に今を生きた。
そして平沢唯は、3年生に進級した。
唯「なんかこの3年間は、今までで1番長かったような気がするし、1番短かったような気もする」
律「どっちやねーん!ってツッコミ入れるとこ?」
澪「まぁこうして梓含め、5人でやってきたんだ。きっと唯も、大丈夫だよ」
紬「あら、梓ちゃん顔色が悪いわ…大丈夫なの?」
梓「すいません…何か最近頭痛がひどくて…今日は帰ります」
唯「…送っていくよ、あずにゃん」
172:
梓「すいません唯先輩…」
唯「平気だよ!後輩の面倒を見るのは先輩の務めだからね!」
梓「なんか唯先輩が言っても説得力ないです…」
唯「ひどっ!」
しばらくの間…静寂が続いた。
唯「気付いたんでしょ?」
唯「あずにゃんの思い出の中の私と今の私が…違ってることに」
梓は黙ってコクンと頷いた。
175:
唯は梓を抱き締めると、猫を撫でるような優しい声で問うた。
唯「あずにゃん、思い出の私と今の私、どちらか選ばなくちゃならなくなったら…あずにゃんはどっちを選ぶ?」
梓「ずるいです…唯先輩」
梓「私に選べるわけ、ないじゃないですか」
178:
中野梓はそれから、学校を頻繁に休むようになった。唯はその理由を知っていたが、そのことを敢えて誰かに言うこともなかった。
中野梓は今、平沢唯の567521254回に及ぶ高校生活を終えるかどうかの選択に迫られているのだ。
179:
だが、実際には中野梓には平沢唯の生殺与奪の権利はなかった。
このループを終わらせるのはあくまで唯であり、梓の気持ちは付随的なものでしかない。
ただ、平沢唯はそこにこだわっている。
梓がもしも、思い出の唯を選べば、唯は躊躇うことなく567521255回目の高校生活を送る覚悟があった。
平沢唯にとって、中野梓は希望なのだ。
181:
澪「唯、これからも私達は、ずっと友達だからな」
唯は笑っている。
567521254回の中で、色々なことがあったが、今はみんなのことを愛してると言える。悟りにも近い気持ちだった。
梓は結局、卒業式の日まで唯と顔を合わせても、あの日の唯の問いには答えなかった。
時間は、刻一刻と近づいていた。
182:
律「梓、もうすぐ唯が時間が戻るって言ってた時間だ。会わなくてもいいのか?」
梓「いいんです…会えばきっと…」
梓はわかっていた。唯を目の前にして、自分は答えを決めかねる。唯は未練を残し、きっとまたループを繰り返す。
会わないことが、その時間にさえ会わなければ、梓の思い出の中の唯と今の唯を失わずに済むと考えたからだ。
183:
唯は、律たちと屋上にいた。
唯「みんな、本当に3年間ありがとう。私にとって、この3年間は特別な3年間だよ」
紬「そんな…お別れみたいなこと言わないで」
唯は首を横に振る。
唯「あずにゃんは、思い出の私を選んだんだ。だからさ、私、567521255回目はあずにゃんの思い出の私になれるよう…頑張るよ」
澪「何を言ってるんだ!それじゃあ…私達の気持ちはどうなる!私達だって、唯のことを大好きなんだぞ!」
189:
唯「みんな、ありがとう」
唯「さようなら」
唯は、覚悟した。これから何度繰り返すかわからない迷宮への旅立ちを。
梓「待ってください!」
191:
唯「あずにゃん…」
梓「すいません唯先輩、遅くなってしまって」
梓は涙をぬぐいながら、力一杯の声で叫ぶ。
梓「私は、思い出の中で、いつも笑ってくれてる唯先輩が大好きです!」
梓「でも!今ここにいて、すぐ側にいてくれる唯先輩のことはもっと、大大好きなんです!」
梓「だからお願いします…」
梓は小さく、「いなくならないで」とつぶやいた。それが梓の精一杯だった。
皆が唯を見ていた。
唯は泣いていた。
193:
梓「何言ってるんですか先輩!怒りますよ?」
唯「ごめんあずにゃ?ん。なんかこれが本当に現実なのかって思って」
195:
平沢唯は567521254回の高校生活を抜け出し、初めての朝を迎えた。
怖いから、という理由で梓に泊まってもらったのは部員の皆には内緒だ。
199:
それぞれの歯車が、やっと回り始めた。
唯達4人は某女子大に進学し、梓もまた、新たな軽音部作りに精を出している。
唯「ほんの少しの奇跡と、信じる心が…私の宝物です!」
唯は大学で自己紹介の時にそう言い放ち、周囲から笑われたが、律達は知っている。
彼女が、人類史上最長の時間を孤独に耐え抜いて、奇跡を勝ち取った。スーパースターなのだと
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