花陽「サンドイッチ」back

花陽「サンドイッチ」


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1:
凛「わぁ?!気持ちいいにゃ?!」
それはもうすぐ7月になろうかというある日の昼休みのことでした。
最初は涼しくていいね、なんて言っていた夏服ですら息苦しくなってくるようなジメッとした日々の合間。
雨の日は嫌いじゃないけど、さすがに毎日続くといやになっちゃう。
だから、4時間目のちょっと眠たい古文の授業中に空がさあっ、と晴れて、思わず――
「「おお?っ!」」
というどよめきが教室から上がった時、花陽は凛ちゃんがこの後に言い出すことがすぐにわかったんだ。
凛「かよちん!今日は外でお弁当食べよう!」
うん、私も賛成!
2:
凛「か?よちん!真姫ちゃんも!早く早くー!」
凛ちゃんに急かされながら屋上のドアを開けると―そこに広がっていたのは青い青い綺麗な空!
真姫「確かに、気持ちいいわね。」
風になびく髪をおさえながら真姫ちゃんがつぶやく。
花陽「本当、キラキラしててとっても綺麗。」
雨上がりの空は好き。世界をまるごとお洗濯したみたいに何もかもがピカピカで、空気まで新品みたいな気がするもの。
凛「さっ、早くお弁当食べよ!」
凛ちゃんが部室から持ってきたレジャーシートを広げる。
凛「わわっ、真姫ちゃん、そっち座って!」
雨はやんでも、まだまだ強く吹いてる風にシートを持って行かれないように慌てて腰を下ろす。
9人でも座れるこのおっきなシート、折りたたんでも3人だけだと少し大きいみたい。
花陽「ふう…」
ようやく腰を落ち着けてお弁当を並べる。
それから、他愛もない話をしながら、いつものお弁当タイムが始まる。
3:
凛「――わあ?!何それ!」
真姫「これ?最近お気に入りなの。フルーツトマトって言ってね、フルーツみたいに甘くておいしいのよ。」
真姫ちゃんがどうぞ、と差し出した小さなタッパーから一つずつおすそ分け。
凛「わあっ!おいしいっ!さすが真姫ちゃんは良い物食べてるにゃ!」
真姫「別に…普通でしょ。」
花陽「そんなことないよ!すっごく美味しい!花陽のお弁当にもピッタリだよ!」
真姫「そういえば…花陽ちゃん、今日はごはんじゃないのね。」
凛「ん?確かに言われてみればそうかも。」
花陽「あ、うん。今日はなんだかサンドイッチの気分だったから。」
そう、今日はいつものお海苔ぐるぐる巻のおにぎりでもなければ、お祖母ちゃまの特性梅干しの日の丸御飯でもなくってサンドイッチなんです。
真姫「クス、花陽ちゃんがお弁当にサンドイッチを食べてるの見るの、初めてかも。」
花陽「え?そ、そうかな…」
真姫「そうよ。さっきから何かおかしいな、って思ってたら、これだったのね。ふふ。」
花陽「あう…」
なんだか、急に恥ずかしくなってきちゃった…
4:
真姫「あ、ごめんね。別に馬鹿にしてるわけじゃないの、ただ、その、なんだか可愛らしいなって。」
花陽「え、かわいい…?」
真姫「ええ。そうやって両手でサンドイッチを持ってハムハム、って、なんだか小動物みたい。」
花陽「え、ええ…?」
真姫「それにね、いつものあんぐり大きな口を開けてむしゃむしゃとおにぎりを食べてる花陽ちゃんとは別人みたいで―」
え、ええ…?それって、いつも花陽のことそんな風に見てたってこと!?
花陽「もう!ひどいよ真姫ちゃん!」
真姫「ふふ、ごめんなさい。ふふっ。」
凛「…う?ん?」
あれ?私と真姫ちゃんがじゃれあってる横で凛ちゃんが何か考え事をしている。
花陽「どうしたの?」
5:
凛「ううん。かよちんがサンドイッチってそんなに珍しいかなって思って…」
真姫「珍しいわよ。少なくとも、こうして一緒に食べるようになってから初めてじゃない?」
凛「うん。確かに珍しいのはわかるの。でも、かよちんがサンドイッチを食べてるのって他にも…」
花陽「?」
思わず花陽もサンドイッチを口から離しちゃう。
確かに、凛ちゃんの言うとおり。こんなこと前にもあった気がする――
青い空、レジャーシート、サンドイッチ――
「「 あーっ!! 」」
真姫「な、何!?」
「「 な か よ し 遠 足!!」」
思わず、二人そろって声をあげて、お互いに指差し合っちゃった――
6:
――音ノ木坂小学校は小さな学校で、年に一度学校みんなで遠足に行く行事があったの。
もちろん、小さいって言ってもそんなに大勢が一気に動いたら大変だから、縦割り班で1年生から6年生までがひとつの班になって目的地までいくんだ。
って言っても、小さな低学年の子達はそんなに歩けないから、行き先はあの川向うの運動公園なんだけどね。
穂乃果「――ぜったいパンがいいよ!ほのかたちのグループのおべんとうはサンドイッチにけっていね!」
ことり「ほ、ほのかちゃん。そんなのかってにきめたらだめだよ。」
海未「そうです!そもそも、このたてわりのリーダーは6年生のえりなんですから。」
穂乃果「えーっ、みーんながパンにしたら、いろんなしゅるいのパンが食べられると思ったんだけどなあ。」
絵里「クスクス、まったく穂乃果ちゃんは面白いわね。―でも、おにぎりが好き、っていう人もいるから、お弁当は自由にしましょうね?」
凛「よかったね!かよちん!」
花陽「うん!」
絵里ちゃんの鶴の一声に花陽は思わず笑顔になっちゃった。
7:
6年生の絵里ちゃんをリーダーに、5年生の穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん。
それから4年生の凛ちゃんに花陽の縦割り班の『さくせんかいぎ』(今考えるとすっごい偶然!)
低学年のちっちゃな子達はお姉さん達のにぎやかなやりとりをぽかん、と見ていて、ちょっと緊張しているみたいだった。
穂乃果「ちえー、じゃあ穂乃果はパンにするから!ことりちゃんと海未ちゃんもパンね!」
ことり「うん!いいよ!」
海未「はあ…しかたないですね。」
穂乃果「やったね!絵里ちゃんは?」
絵里「はいはい。私もパンにしてあげる。お祖母様にロシア風のサンドイッチを作ってもらうわ。」
仕方ないわね、といった感じで絵里ちゃんが頷く。
絵里「ねえ、君たちは何が好きなの?お母さんにどんなお弁当を作ってもらうのかな?」
背の高い絵里ちゃんが少し頭をさげて、気後れしている低学年の子達にお話してあげる。
からあげ!玉子焼き!と口々にいうのを、うんうん。とにこにこ聞いてあげる絵里ちゃん。
すごいなあ、やっぱり6年生だなあ。花陽はあんなお姉さんになれるのかなあ…そんなことを考えていると
9:
凛「じゃありんとかよちんはおにぎりね!」
突然凛ちゃんに話しかけられたの。
花陽「え?う、うん!」
穂乃果「えー?凛ちゃんたちもパンにしようよ!いまならパンチームに入れてあげるよ?」
凛「いいの!かよちんのおにぎりすっごくおいしいんだから!ほのかちゃんもびっくりするニャ!」
穂乃果「そうなの?」
花陽「あ、いや、べつに…」
穂乃果ちゃんがビー玉みたいにキラキラした目でこっちを見てくる。
うぅ…凛ちゃん。プレッシャーだよぉ…
穂乃果「じゃあほのかにもはなよちゃんのおにぎりちょうだいね!いや?っ、たのしみだなぁ?!」
海未「こら!ほのか!」
10:
真姫「――何それ、今と全然変わらないじゃない。」
呆れたように真姫ちゃんがつぶやく。
凛「あの頃から穂乃果ちゃんは強引だったにゃ?!」
凛ちゃんもおかしそうに笑う。
真姫「それで?花陽ちゃんはおにぎりを持っていくつもりだったんでしょ?それがどうしてサンドイッチになったの?」
花陽「うん。ちょうど遠足の日も夜更けまで雨が降っていてね、今日みたいに綺麗な晴れた空だったんだ――」
11:
―――
――――――
―――――――――凛「てるてるぼうずさんいっぱいつくっておいてよかったね!」
花陽「うん!」
当日。少し強く吹く風が気持ちよくって、土手には小さなお花が咲いていて、空はどこまでも青くて―
まっすぐに伸びていく川べりの道をどこまでも歩いていけそうな気分になっちゃうそんな素晴らしい日。
穂乃果「あ、る、こー!あ、る、こー!ほのかはっ、げんき?♪」
少し先では穂乃果ちゃんが落ちていた棒をフリフリしながらリズムよく歩いてる。
ほのかおねーちゃんちがうよ!なんて言われながら、ぞろぞろと小さい子達を引き連れていて、まるでマーチングバンドみたい。
海未「じてんしゃがきますよ!みちのはじによってください!」
時々はしゃぎすぎてバラバラになりそうなのを海未ちゃんがしっかりと抑えている。
12:
絵里「ほらほら、頑張って。お姉ちゃんが手をつないであげるから、ね?」
ことり「あっ、みえてきた?!あそこまでだから、ね?」
一番後ろでは、もう歩けないって半べそをかく1年生の面倒を絵里ちゃんとことりちゃんが見ている。
まるで昔の花陽みたい。もう疲れた、歩けないよぅ、って家に帰りたくなっちゃって―
ああ、でも家に帰るにはまた歩かないといけない。どうしようどうしよう―
凛「かーよちん!なんのおにぎりにしたの?」
花陽「えへへ、それはついてからのおたのしみ、だよ!」
そう、それでも苦労してたどり着いた公園で食べるおにぎりがとってもおいしくって。
それで次の年からは頑張って行こう、って思えるようになったんだよね。
13:
凛「えー?おしえてよー!」
花陽「りんちゃんこそ、なんのおにぎりなの?」
凛「え?…ふふふ、りんだってないしょだよ!きっとかよちんびっくりするにゃ?!」
そう言って凛ちゃんはいたずらっぽく笑ったの。
ちなみにその時花陽が用意したのは真っ白な、何も入っていない塩むすび。
何も入ってなくてもいいお米とお塩が効いてるからすっごく美味しいの!
これを食べたらきっとみんな驚いちゃうよ。御飯だけでもこんなにおいしいの!?って!
―ふふ。楽しみだなあ。
公園まであと少し。リュックの重みにワクワクしながら歩いたの。
―――でもね。
凛「じゃ??ん!」
凛ちゃんがそう言って取り出したのは、
お弁当箱にぎゅうぎゅうにつめられた サンドイッチだったんだ。
14:
真姫「――はぁ!?何それ!意味分かんない!」
花陽「あの時はびっくりしたよぉ?。」
凛「あはは…ごめんね。かよちん。」
真姫「ごめんね、じゃないわよ。なんで約束破ってるわけ?」
花陽「ま、まあまあ真姫ちゃん…子どもの頃の話だし、ね?それにね、実は…」
凛「待ってかよちん!ここからは凛が話すね!」
お弁当箱の蓋をパタンと閉めた凛ちゃんが話しはじめた―
19:
凛「――おやつはなんにしよっかなあ??チョコに、ポテチに、ガム…はごみがでるからだめなんだよね。」
遠足っておやつを買いに行くところから始まってるよね?
お気に入りのあれは絶対持って行きたい!それから甘いものは2種類はほしいし、交換用の駄菓子だっていくつかは―
そんなことをアレコレ考えながらお菓子屋さんに歩いて行くと、道の向こうにとっても目立つあの子を見つけたんだ。
凛「おーい!えーりちゃーん!」
絵里「あら?凛ちゃんじゃない。お買い物?」
凛「うん!えんそくのおかし!えりちゃんは?」
絵里「私も今から行くところなの。一緒に行く?」
凛「うん!」
わあ?っ!嬉しいなあ!もし凛が犬だったらしっぽをブンブン振ってるところだよ。
あれ?でも凛は猫が好きなんだけど…まあいいや!
20:
それから、絵里ちゃんに教えてもらったお店で珍しい海外のお菓子を買ったりして、早くかよちんに見せたいなって思ってた帰り道。
「おや、お友達かい?」
絵里「おばあちゃん!」
絵里ちゃんのお祖母ちゃんは外国の人で、初めて会った凛はちょっと怖かったけれど、どこか絵里ちゃんと似ている人だった。
「元気な子猫ちゃんにはミルクをあげようかねえ」
なんていう絵里ちゃんのお祖母ちゃんに連れられて、お祖母ちゃんのお店に行ったの。
それから、まるでお伽話か童話に出てくるようなお店の中で甘いミルクティをごちそうになって―
凛「ふわあ…」
まるで日本じゃないみたい―そんな風に夢見心地でいると。
「お店にあったもので悪いけど」
お祖母ちゃんがちょっと黒っぽいパンで作ったサンドイッチを出してくれたんだ。
21:
絵里「わあっ、ありがとう!ちょうどおなか減ってたの!もうペコペコよ!」
「そうかいそうかい。ちっちゃいエリチカがおっきくなるようにいっぱいお食べ。子猫ちゃんもね。」
そう言うとお祖母ちゃんは奥のドアに戻っていった。ふふ、なんだか絵里ちゃん学校で会う時よりずっと子どもみたい。
そう思いながらサンドイッチを食べようとすると。
凛「あれ?これひょっとしておさかなさん?」
パンに挟まれた具が目に入ったんだ。
絵里「ん?ええ、そうよ。白いのはチーズね」
凛「うぅ…」
どうしよう、凛お魚は苦手だニャ。でもでも、そんなこと言うのさすがに失礼だし―
絵里「嫌いなの?」
凛「きらい、っていうか…にがて。」
絵里「どうして?魚っておいしいし、体にもいいのよ?」
凛「だって、ほねがいっぱいあるから…」
絵里「え?…ああ!ふふっ、これは大丈夫よ。骨はぜーんぶぬいてあるから。食べてご覧なさい。」
凛「うー…」
本当はいやだったけど、凛、我慢して食べたの。そしたら、ね。
22:
凛「…なにこれ!おいしいニャ!」
絵里「でしょ?」
凛「ねえねええりちゃん!これなんていうおさかなさん?」
絵里「スモークサーモンね。日本語で言うと…鮭ね。」
凛「さけ?さけってあのあさごはんででてくるおさかな?」
すごいすごい。こんなに美味しいなんて知らなかったよ!
凛は夢中でサンドイッチを平らげて、ミルクティのおかわりまでしちゃった。
こんなにおいしいものがあるなんて。世の中にはまだまだ凛の知らないことがたくさんあるニャ!そう思ったんだ。
23:
真姫「――ああ、なるほど。なんとなく読めてきたわ。『こんなにおいしいんだからかよちんにも食べさせてあげたい!』…でしょう?」
凛「正解!さっすが真姫ちゃん!」
真姫「別に、誰でもわかるわよ。…それで?そのことを話して一件落着?」
花陽「ううん。そうじゃないの。」
凛「かよちん、すごかったよね?!『どうして!どうして!凛ちゃんの嘘つき!』って!」
花陽「り、凛ちゃん―」
凛「凛、すっごく驚いちゃった。あんなかよちん初めて見たもん。」
花陽「だ、だってそれは…おべんと、すっごく楽しみにしてたし…」
凛「凛、今でも覚えてるよ。かよちんが顔真っ赤にして広場の向こうへ駈け出して―凛はびっくりしちゃってそれをながめてて…」
花陽「うぅ…恥ずかしいよぉ…」
真姫「あれ?それじゃあどうやって仲直りしたの?」
花陽「えっと、その、それは、ね――」
24:
―――
――――――
――――――――ばか、ばかばかばか!凛ちゃんなんて大嫌い!
なんのおにぎりがいいか一生懸命考えたのに。
お母さんと一緒に朝早くからアツアツのごはんを我慢して握ったのに。
みんなに食べてもらいたくてたくさんたくさん作ったのに。
―あれだけ楽しみにしていたお弁当だってもう食べる気になれないよ。
もうやだ。早く帰りたい。
この茂みの中にずっと隠れていたらみんなに見つからずに、忘れられちゃうかな。
そしたら、こっそり帰ってもバレないかな。
そんなことを考えていると。
穂乃果「あ?っ!はなよちゃんみ?っけ!」
花陽「ひっ!」
穂乃果ちゃんに見つかっちゃったんだ。
25:
穂乃果「あれ?はなよちゃんないてる!?どうしたの?どこかいたいの?」
穂乃果「どうしようどうしよう…あっ、先生よんでくるね!」
花陽「ま、まって…!」
穂乃果「え?」
花陽「…ちがうの。どこも、いたくないから…」
穂乃果「じゃあどうして―」
『なんでもないからほっといて』 そう言おうとしたんだけれど
ぐぅ ? ? っ
――ああ、もう。私ってどうしていつもこうなんだろう。
なんにも入れてないお腹が大きく抗議の声をあげた。
26:
穂乃果「な?んだ!おなかへってたんだね!」
花陽「う、うぅ…」
あまりの恥ずかしさとカッコ悪さに顔がみるみる熱くなってきちゃう。
せめて、早く穂乃果ちゃんがいってくれるように―そう思いながら小さくなって膝を抱えていると。
穂乃果「はい!」
穂乃果ちゃんがハンカチに包まれたおまんじゅうをくれたの。
穂乃果「えへへ、かくれんぼしながら食べようと思ってたんだ!はなよちゃんにもあげるね!」
花陽「あ、ありがとう…いただきます。」
おまんじゅうはとっても甘くて美味しくて、泣き疲れてクタクタになった心にじんわりと染みこんでいくみたいだった。
穂乃果「いただきまーすっ…もぐもぐ……あっ!!…もー!またあんこだよ!」
花陽「え?」
こんなにおいしいのに、どうして怒ってるんだろう?
穂乃果「ねえ、はなよちゃん。チョコまんじゅうって知ってる?」
花陽「え!?」
27:
突然、何を言い出すんだろう。
穂乃果「穂乃果ね、この前テレビで見たの。おまんじゅうの中にチョコが入ってるんだよ!」
花陽「あ、うん。それならおかしやさんに…」
穂乃果「ダメなの!食べてみたんだけどぜんぜんおまんじゅうがおいしくないの!あ、中のチョコはおいしかったよ?」
穂乃果「なんだこんなものかあ、って思ったんだけどね。穂乃果はかんがえたんだ。これ、うちで作ったらもっとおいしいのに、って。」
呆気にとられる私を尻目に穂乃果ちゃんは一人でしゃべり続ける。
穂乃果「だからね、ずっとお父さんに言ってるの!『おねがい!チョコまん作って!』って!」
穂乃果「でもお父さんってば『そんなもんうまいわけがねえ!』ってちっとも―」
花陽「は、はあ…」
穂乃果「そんなの食べてみないとわからないじゃん!なんでもやってみないとわからないよ!」
穂乃果「だから、今日こそチョコが入ってるんじゃないか、今日こそ入ってるんじゃないかって思ってるんだけど―」
28:
力説する穂乃果ちゃんに気圧されながらも私は穂乃果ちゃんの言葉が気になっていた。
「食べてみないとわからない。やってみないとわからない。」
私は凛ちゃんのお話もよく聞かないで飛び出しちゃったけど―
凛ちゃんは訳もなく約束を破る子じゃないない。そんなの、私が一番良く知ってるはずなのに―
穂乃果「…ね、はなよちゃんもそう思うよね!」
花陽「え!? う、うん!」
あわてて穂乃果ちゃんに返事をした その時―
凛「がよち゛ぃぃぃん゛!!! どごにいる゛のぉぉぉ!!」
凛ちゃんの声が聞こえてきた。
29:
凛「ごべんね゛ごめんねがよぢぃぃん!!」
涙でくしゃくしゃの顔で必死に謝る凛ちゃんの前で、それでも、素直になれない私がいたの。
絵里「花陽ちゃん、凛ちゃんのこと許してあげて。もとはと言えば私も責任があるんだし。」
さっきお弁当を広げた場所に戻った私を絵里ちゃんがとりなしてくれた。
本当を言えば、私だって凛ちゃんに謝りたい。でも、体がこわばって、なかなか素直な言葉が出なくって。
凛「これ、ね゛!これ!かよちんに、たべてほしくって!」
そう言って凛ちゃんが差し出したサンドイッチをよく見ると
絵里「…焼き鮭?」
そう、凛ちゃんのサンドイッチには焼き鮭が挟まっていたの。
30:
凛「ほっ、ほんとうはっ、ヒック、すもーくっ、さーもんがよかったんだけどっ、ひっ、そんなのっ、ないって、おかあさんがっ。」
凛「だからっ、しゃけやいてっ、ヒッ、グスッ、おかあさにっ、ばれないようにっ、ぱんにはさんでっ…」
凛「えりちゃんにもらったっ、サンドイッチがっおいっ、おいしかったっ、からっ!かよちん、にもっ、グスッ、たべて、ほしかったからっ」
凛「ごめんねっ、ごめんねかよちんっ、ごめんなさいっ…ごめんなさい…」
―― ずっと ひたすら謝る凛ちゃんを見てたら私も自然に涙が出てきちゃって
花陽「ううんっ…!わたっ、わだしこそっ!ごめんねっ…ごめんねりんぢゃぁぁん…!」
凛ちゃんとぎゅーって抱き合いながら大泣きしちゃった。
32:
――それから、凛ちゃんの焼き鮭を花陽の塩むすびにのっけて。
凛ちゃんのパンに花陽の持ってきたおかずの唐揚げやサラダをはさんで。
私はサンドイッチ。凛ちゃんは塩むすび。
二人で取り替えっこして食べました。
泣いた後だから少ししょっぱかったし、凛ちゃんは「骨があるニャ」って言ってたけど。
やっぱりこうして一緒に食べるお弁当は美味しかったです。
それから、みんなで鬼ごっこして、隠れんぼして、帰りはまた穂乃果ちゃんが歌を歌って、
夕暮れ、二人の家の間で凛ちゃんと「また明日ね」って約束して。
「ただいま!」って家のドアを開けたんです。
33:
―――
――――――
――――――――
真姫「――ふうん。そんなことがあったの。」
二人の話が終わって私…西木野真姫は感想をもらす。
凛「あの時はもう、かよちんに嫌われたんじゃないかと思って必死だったんだよ?!」
花陽「ふふ、でも焼き鮭サンドのおかげだよね。仲直り出来たの。」
楽しく思い出話を話す二人――
そんな二人を見ていると。
ああ―やっぱり感じる。疎外感。
…しょうがないわよね。私は所詮ここ数ヶ月の間に知り合った新参者。
かたや二人は小さい頃から一緒の幼なじみなんだもの。
34:
凛「ニャ?真姫ちゃんどうしたの?」
ヤバ、顔に出てたのかしら。
真姫「…別に。そういうの、いいな、って思っただけ。」
花陽「え?」
真姫「だって、二人はこの先、サンドイッチを食べるたびにそのことを思い出すんでしょう?それでその思い出話で盛り上がって―」
ああ、もう。私何言ってんだろ。こんなのマッキーらしくない。クールに、なんでもないって風を装わなきゃ。
真姫「…私には、そういうのないから…」
あー…言っちゃった。最低。何よこれ、低気圧のせい?それともヤキモチ?まさか、クールで冷静沈着な私がそんな―
凛「…」
花陽「…」
ほら、二人とも鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる―
35:
花陽「…あるよ。」
真姫「え?」
凛「真姫ちゃんとの思い出。今出来てるもん!」
真姫「な、何を―」
凛「きっとね、凛が大人になってトマトを食べる度に思い出すよ。真姫ちゃんとこうして一緒にお弁当を食べたこと。」
花陽「そうだよ、それでね、その時一緒にいる真姫ちゃんと笑ってお話するの。あの頃こんなだったね、って。」
―花陽ちゃん、凛ちゃん―
やだ、もう。やめてよ、そういうの。泣きたくなっちゃじゃない。
凛「あのとき真姫ちゃん照れてたよね、いつも素直じゃなかったから凛達は苦労したニャって!」
真姫「ちょっと!誰が素直じゃないのよ!それに、苦労してるのは私の方よ!失礼ね!」
36:
にこ「――あっ、やっぱりいた!も?、部室の鍵閉め忘れたらダメニコ!」
希「なんや、考えることは同じやね。」
絵里「私達もお邪魔していい?」
穂乃果「…あー!みんないるー!」
海未「こら、うるさいですよ、穂乃果。」
ことり「よかった?。ちょうどクッキー焼いてきてたの!」
いつの間に来たんだろう、μ'sのメンバーが屋上に集まってきていた。
37:
一気に賑やかになった屋上。
――そうかも、思い出なんてこれから作っていけばいい。
きっと、これもいつか思い出すだろう。
雨あがりの空、雲があんなにもく流れていて、風にはためくシートをおさえながら語らった日のことを。その時の切なさを。
――いつか、遠い未来に。
? おしまい ?
39:
乙ー
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4

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