提督「鎮守府晩餐会だ!」back

提督「鎮守府晩餐会だ!」


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1:
叢雲「はぁ?何よいきなり」
提督「いやなに。最近作戦続きで、そろそろ皆にも息抜きが必要だろうと思ってな」
叢雲「……まぁ確かに、ちょっとピリピリしてるのは認めるわ」
提督「うむ、だからこその息抜きというわけだ。一晩ごとに担当者を決め、その者が一番美味しいと思う料理を作る」
叢雲「ふーん、あんたにしては悪くないイベントね」
提督「そうだろう、そうだろう」
叢雲(褒めてないわよ)
2:
提督「それに、メンバーはクジでもう選んである」
叢雲「書類ほっぽって何してるのよ」
──リスト──
霧島 加賀 熊野
叢雲 暁 U-511
提督
3:
叢雲「私も入ってるんだけど?」
提督「これも秘書艦の仕事だよ」
叢雲「……まあいいわ」
提督「いやぁ、実に楽しみだ」
──
4:
──第一夜── U-511
?昼・厨房?
ゆー「提督から晩餐会?に参加するように言われてしまいました……」
ゆー「皆さんとまだ馴染めていなかったから、嬉しいです」
ゆー「でも、一番おいしいって思う料理……難しい」
ゆー「ウィンナー?シュートレン?」
ゆー「どうしよう……」
5:
金剛「HEY!ゆー、こんな所で何してるネー」
ゆー「あ……、金剛さん。実は……」
カクカクシカジカ
金剛「Oh、それならあれがいいデース、ゆーも冬に食べたジャパニーズソウルフード!」
金剛「えーっとレシピはこれネ!」カキカキ
6:
ゆー「これは……。Dankeこれならゆーにも作れそうです」
金剛「ノンノン、お礼なんていいヨー。それじゃあ頑張ってネー」
──ガチャ
ゆー「ありがとう、金剛さん……」
──
7:
?夜・会場?
提督「ふむ、ゆーにトップバッターを任せた時は少々心配だったのだが、どうやらうまくやったようだ」
霧島「これは本格的ですね」
加賀「はい、7人分で大きさも十分です」
熊野「冬に鈴谷達と食べたのを思い出しますわ」
暁「おいしそうね!」
叢雲「へえ、こっちに来て日が浅いのにやるじゃない」
8:
提督「まさか鍋が出てくるとはな」
ゆー「金剛さんに教えてもらいました……」
提督「金剛がか、面倒見の良さは流石長女といったところだな」
提督「さて、それでは早頂こうか」
ゆー「どうぞ……」
全員「いただきます!」
9:
?20分後?
叢雲(マズいわ。いえ、鍋はとても美味しいけど室温がマズいわ……)
加賀(考えてみれば、今は6月)
暁(外は雨が降ってるし!)
提督(ぬかった、食堂を借りられなかったとはいえ、換気の悪い談話室にしたのは失敗だったか……)ムシムシ
霧島(汗と湯気で前が見えません)モワモワ
提督(だがしかし、霧島と加賀の頑張りのおかげで鍋の底が見えてきた)
10:
熊野(あと少しですわね……ん?)
提督「こ、これは!」
熊野(鰹節丸々一本ですって!?)
暁(これ食べるの?)
ゆー「あ……あの。ゆー、ちゃんと出来ませんでしたか……?」オロオロ
11:
提督「い、いやそんなことはないぞ、なあ加賀?」
加賀「そうね、何も問題はないわ」
全員「……」
提督「なあ、霧島」
霧島「……何でしょうか提督」
提督「こんな美味しそうな鰹節だ、私と二人で食べないか?」
霧島「え?」
12:
提督「二人で半分こにしよう、霧島」
霧島「ななな、何を言っているんですか!ふ、二人でなんてそんな恥ずかしいです……」ドキドキ
叢雲(バカね)
加賀(回避成功です)
提督「そうか、なら仕方ない。一人で食ってくれ」
霧島「え?」
13:
?30分後?
霧島「……提督……、後で……殴ります……」
提督「うむ、見事だったぞ。では手を合わせて」
提・加・熊・暁・叢「ごちそうさまでした!」
霧島「……した……」
ゆー(かつおぶし取り出すの忘れてました……)
──
17:
──第二夜── 熊野
提督「昨晩の被害はどうなっている?」
叢雲「霧島の顎が小破、ね。あんた暫く後ろに注意しておきなさいよ」
提督「尊い犠牲だったな。さて、今晩は熊野か、お嬢様の本気を見せて貰うとしよう」
叢雲「不安だわ……」
──
18:
?夜・会場?
熊野「ようこそいらっしゃいました、お待ちしていましたわ」
暁「熊野さん、気合入ってる……」
熊野「当然ですわ。どんな事にも手を抜かないのがレディの嗜みですもの」
暁「うぅ……、すぐにレディになってみせるんだから!」
加賀「さあ、席に着きましょう」スススッ
暁(早い……)
19:
ゆー「とても……楽しみです」
提督「ああ、期待しておこう。ところで霧島はさっきから喋っていないがどうした?」
霧島「……顎が…疲れているんですよ……」ギリッ
提督「ふむ、顎の疲れには入渠は効果無しか」メモメモ
暁(多分、どこの鎮守府でも役に立たない情報だと思うわ)
20:
熊野「さあ!お持ちしました、わたくしの料理はステーキですわ!」
加賀「流石神戸生まれね」
熊野「どうぞご賞味くださいな!」
提督「それでは……」
全員「いただきます!」
──
21:
叢雲「ん?、これは……固いわ……」
暁「ひひひぇにゃひ」
ゆー「あう……」
加賀「ソースが酸っぱいわね」
霧島「……」カチャン
提督「霧島が無言でフォークを置いた!」
22:
熊野「え?えっ?そ、そんな、何かの間違いですわ!」パクッ
熊野「固い……、ど、どうしてですの……」グスッ
加賀「モグモグあなたモグモグ、牛肉をモグモグ焼く前にモグモグ」
叢雲「食べてから喋りなさい」
加賀「ゴックン、牛肉を焼く前にちゃんと包丁の背でお肉を叩いたかしら?筋が残っているようね」
加賀「それに、牛乳に漬け込まなかったわね、少々お肉に臭みがあるわ」
23:
熊野「ううっ、そんな……最初は神戸牛を用意しようとしましたのよ、でもこのご時世では流通してなかったんですの……
仕方なく普通のステーキ肉で代用を……。それに、わたくし実は料理をしたことがなくて……」
暁(鎮守府に住んでたら料理しなくても生活できるものね)
加賀「気にすることは無いわ、誰だって最初は下手ですから。そうね、これから私が料理の特訓に協力します。
ステーキに掛けるソースの作り方も教えてあげますから」
熊野「加賀あああぁぁぁああ!」ダキッ
24:
提督「実に美しい友情だ、これからの熊野の料理に期待するとしよう」
提督「さて、この残ったステーキは……」チラッ
暁・叢・ゆ「……」サッ
──ガタン
霧島「て・い・と・く?」
提督「……私も男だ、覚悟を決めよう」
──
29:
──第三夜── 霧島
叢雲「昨晩の被害はあんたの顎だけね。まぁ、よく頑張ったわ」
提督「……見直し…たか……?」
叢雲「どうかしらね」クスッ
30:
?昼・厨房?
霧島「得意料理・一番美味しい物・得意料理・一番美味しい物・得意料理・一番美味しい物……」ブツブツ
──コソッ
榛名「霧島は一体何をしているのでしょうか」
比叡「分からないけど料理がどうとか言ってるわ……、よーしここは姉の威厳を見せると……」
榛名「! あぁぁぁあああ、比叡お姉さま!」
31:
比叡「ど、どうしたの榛名?」
榛名「たった今、榛名の電探が金剛お姉さまのSOSをキャッチしました!大変危険な状況ですッ!」
比叡「何ですって!金剛お姉さまッ比叡がすぐに向います!」ダッ
榛名(ごめんなさい霧島、今の榛名にはこれが精一杯です……)
──
霧島「あれしかないわ……」ボソッ
35:
?夜・会場?
全員「…………」
(注)
加賀「何ですかこれは」
霧島「さしみよ」
36:
ゆー「さしみ?」
霧島「さしみよ」
暁「こんなのお刺身じゃないわ……」
霧島「さしみよ」
提督「霧島、私の目には刺身ではなく鯵のブツ切りに見えるのだが?」
霧島「さしみです」
37:
叢雲「……」
さしみ「来いよ」
熊野「そうですわ、これはさしみですわ」
霧島「!」
38:
熊野「わたくし思い出しましたの。70年前のあのフィリピンでのことを」
熊野「碌に補給も修理も受けられず、日本への想いだけを募らせて彷徨い続けた、あの日々を」
熊野「ですから、わたくしは逃げません、この魚だってあの時を思えばご馳走ですわ!」バクッ!
暁「た、食べてる……」
叢雲「唯の生魚よ、あれ」
ゆー「熊野さんに……青いオーラが見えます」
39:
?5分後?
熊野「ゲフッ……」
霧島「あ、あなた何故こんな無茶を……、自分でも分かっていたのよ、料理の才能が無いって」
熊野「ウッ……。あなたはわたくしと同じですわ、でもだからこそ諦めたらいけないの。だから、これから一緒に頑張りましょう?」
霧島「熊野おおおぉぉぉおお!」ダキッ
40:
提督「実に美しい友情だ、これからの霧島の料理に期待するとしよう」
暁(デジャヴ)
ゆー「お腹のお薬……持ってきますね」
──
42:
──第四夜── 提督
叢雲「昨晩の被害は熊野が腹痛、以上よ。入渠してもお腹の痛みまでは治せないみたいね、医務室で呻いてるわ」
提督「あの様子では今晩は無理だろう」
叢雲「本人は『絶対に出席いたします……』って言ってたわよ」
43:
提督「そうか、今日は私の番だからな、是非食べて欲しいものだが」
叢雲「あら?あんたも作るの?」
提督「当然だ、部下が作って私が作らないなんてことはあり得ないからな」
叢雲「まぁ、期待せずに待っておくわ」
──
44:
?夜・会場?
叢雲「……で?何か弁解はあるの?」
提督「いや、久しぶりに包丁を握ったが、案外と上手くいかないものだな」
提督「私の母の味を再現しようとしたんだが、なかなかどうして。矢張り料理は難しいものだハッハッハッハッ」
加賀「再現以前に魚が炭になっています」
45:
ゆー「これ……ハンバーグ?」コゲコゲ
暁「お味噌汁は味がしないし、しょっぱいっ!」
叢雲「期待した私が馬鹿だったわ」
霧島・熊野「……」
46:
提督「だが案ずるな諸君!幸いにして米は上手く炊けた、さあ好きな具材を選ぶといい!」
加賀「各種ふりかけ、梅干し、おかか、いりこ、牛缶、納豆、その他諸々」
叢雲「保険は掛けてたのね、でもご飯だけってどうなのよ」
提督「すまんな皆、母に聞ければもっと上手く作れたと思うのだが」
ゆー(無理だったと思います……)
47:
叢雲「あんたねぇ、大体いつもいつ……」
提督「ん?叢雲どうした?」
鳳翔「テイトク」
提督「あ」
鳳翔「ショクザイヲムダニシタノハアナタデスカ?」
加賀「流石に炭は食べられませんね」
鳳翔「オカクゴ」
──
48:
ゆー「提督が連れていかれました……」
暁「ドナドナドナドーナ♪」
霧島「まさか提督も飯マズだったなんて」
熊野「そうですわね、でも何故か提督は特訓仲間に入れたくありませんわ」
霧島「同感ね」
49:
叢雲「と言うか、四人やってまともだったのが、ゆーだけって……(鰹節が丸ごと入ってたけど)ウチの鎮守府の料理事情はどうなってるのよ」
叢雲「今度、鳳翔さんに全員強制参加の料理教室でも開いてもらおうかしら」
加賀「それもいいかもしれないわね。皆、おにぎりが出来たわ」
暁「ありがとう加賀さん!」
叢雲「はぁ、それじゃまた最初の予定と違うけど」
加・霧・熊・叢・ゆ「いただきます!」
──
54:
──第五夜── 暁
叢雲「昨晩の被害は……提督が帰ってこないわ。鳳翔さんにまだ絞られてるのかしら。
まぁ、夜には帰ってくるわよね。多分」
叢雲「今日のホストは暁ね。あの子なら大丈夫だと思うけど……」」
55:
?夕刻・厨房?
暁「どうしよう、悩んでいる内に夕方になっちゃった。今から作り始めないともう時間がないのに……。
でも、アレを出したらきっとまた『暁はお子様だな』って笑われちゃう。うう゛どうしたらいいの」グスッ
那珂「あっれー?暁ちゃんじゃん、何してるのー?」ヒョコッ
暁「那珂ちゃん……、えっとね……」
56:
カクカクシカジカ
那珂「なるほどなるほど。そんなの簡単なことだよ!暁ちゃんがそれを一番だって思っているんなら、恥ずかしがる必要なんかないよ♪」
暁「で、でも笑われたりしちゃったら……」
那珂「だいじょぶだいじょぶ♪料理は愛情って言うんだよ、一生懸命作った料理を馬鹿にする子なんていないよッ」
那珂「それに、那珂ちゃんまだ晩餐会のことは詳しく聞いてないけど、料理を失敗した子がいても誰も笑ったりしなかったんだよね?」
57:
暁「う、うん」(顔は引きつってたけど)
那珂「だったら大丈夫、那珂ちゃんを信じて♪きっと皆喜んでくれるよッ!」
暁「那珂ちゃん……。ありがとう、暁がんばるわ!」
那珂「うんうん。それじゃあ暁ちゃんがんばってねーッ♪」タタタッ
──
58:
暁「さあ、時間もないし。やるわよ!」
暁「まずは、ひき肉と卵……」
──
59:
?夜・会場?
暁「おまたせしたわね、入っていいわよ!」
──ガチャ
提督「ほう、お子様ランチとは。変な意味ではなく暁らしいな、見た目も立派なものだ」
暁「頑張ったんだからッ!」
60:
熊野「見たことはあっても、食べたことはありませんでしたわ」
霧島「艦娘に子供時代はないはずなのに、何なのこの込み上げる懐かしさは」
ゆー「わあっ、とってもかわいいです!」
叢雲(ゆーのテンションが上がってるわ)
加賀「早頂きましょう」
提督「では……」
全員「いただきます!」
61:
?2分後?
提督「このハンバーグの出来は私とは大違いだな、美味しいぞ暁」
ゆー「うん……、とってもおいしいよ暁ちゃん」
暁「ふふん、当然よッ!」
加賀「む……暁。私のエビフライが一つ少ないのだけれど?」
暁「えっ?あっ、ほ、ホントだ。ご、ゴメンなさいっ!」
暁(しまった!急いで作ったせいで数の確認してなかった)ショボン
62:
叢雲「ふん、エビフライの一つくらいで騒がないでよ、子供じゃないんだから」
加賀「ああッ?」
霧島「まあまあ、代わりに私のグリーンピースを上げるわ」ポイポイ
加賀「! 何をするの!それはあなたがグリーンピースを嫌いなだけでしょう!?」ガタンッ!
熊野「ひゃぁっ!」
ゆー「はぁああっ」
63:
熊野「何をなさるんですの!今のでオレンジジュースが零れてハンバーグが水没してしまいましたわ!」
霧島「それくらい除けて食べたらいいじゃない」
叢雲「ハンバーグのオレンジジュース漬けも美味しいかもしれないわよ」
熊野「……あなたたち、黙らせてさしあげますわ」ガチャッ
──
64:
加・霧・熊・叢「ギャーギャー!キーキー!」ドスンバタン!
暁「あわわわわ。な、何でこんなことになっちゃったの……。ゆーちゃんは大丈夫?」
ゆー「うん……、チキンライスのオレンジジュース掛けもおいしいよ……」
暁(ゆーちゃん、何て悲しい目をしているのッ……)
65:
提督「ああ、実に懐かしい。子供の頃、兄弟達とおかずを奪い合って喧嘩したのを思い出したよ」
提督「お子様ランチという物は、人の奥底に眠っている子供心を呼び覚ます食べ物なのかもしれないな」
暁「今回のまとめってそれなの!?」
──
73:
──第六夜── 加賀
提督「暁とゆーからの報告によれば、昨晩の被害は加賀が中破、後の三人は大破と」
提督「まぁ、二人にバケツを持たせたから直ぐに戻ってくるだろう」
提督「さて、今晩の担当は加賀だな。熊野へのアドバイスを見るに料理は得意なようだが、どうだろうか」
──
74:
?夜・会場?
提督「よし、全員揃っているな」
霧島「昨夜の記憶が途中から無いのですが……」
熊野「気が付いたら入渠していましたわ」
叢雲「私もよ……」
提督「ハッハッハ、忘れるということはそれは大した記憶ではないということだ、気にするな!」
75:
ゆー(強引に……終わらせました)
加賀「皆、いいわ。入って」
──ガチャ
暁「カレーだわ!」
霧島「ありそうで無かったですね」
76:
ゆー「日本のカレーはドイツと違うって聞きました……」
提督「なるほど、意外にシンプルな所を突いてきたな」
加賀「ええ。それに、海軍の軍人としての矜持がありますから」
熊野「カレーとサラダとお冷、完璧な布陣ですわね」
77:
暁「えへへ、カッレェ、カッレェ♪頂きまーす♪」パクッ
提督「あ、コラ暁。全員揃ってだと言っ……」
暁「ぴぎゃぁあああぁぁあっ!!」
──ガチャン!
──ドドドドドドドドドドドドド!
78:
提督「暁!?暁いぃぃいい!」
ゆー「あああぁぁ」ガクガク
加賀「それなりに辛口ですが」パクパク
全員「……」
──
79:
叢雲「こ、この辛さは尋常じゃないわ」パク
提督「汗が止まらん……」
霧島「な、何とかサラダとお冷で消火しつつ食べれば」
熊野「加賀?ちなみに、お冷のおかわりは?」
加賀「ここにあるピッチャーだけよ」シレッ
提督「この人数で割ったら一人三杯がいいところだな……」
80:
?10分後?
ゆー「っ……」
ゆー「もう一度、帰りたい……な……」ドサッ
叢雲「許さないんだからぁっ……」ベシャッ
提督「ゆううぅぅう!!叢雲おおおおぉぉぉおおおッ!!」
霧島「ああ……、体力の無い子から順番に……」
熊野「わたくしたち、このまま加賀の料理特訓を受けて大丈夫なのでしょうか」
霧島「多分、カレーだけ警戒しておけば大丈夫よ……」
──
81:
霧島「ぐううぅぅうッ、ようやく半分ッ」
霧島「でも補給物資は後僅か。熊野、こうなったら二人で協力して、……熊野?」
熊野「……」チーン
霧島「まさか、無言で沈んだの……?私を動揺させないために……」
霧島「熊野、あなたの意地確かに引き継いだわ!」クワッ!
82:
──ガツガツガツガツガツガツ!
霧島「ッッーー!」
加賀「そう。なかなかやるのね霧島」
霧島「これで、敵は取ったわ……」ドシャッ
──
83:
提督(残ったのは私だけか。サラダは尽き、水も尽きた。口の感覚も、とっくに無い)
提督(だが何故か痛みだけは感じ続けている、何なのだこれは……)
提督(先に散っていった彼女達の分の水が無かったら、ここまで来れなかっただろう……)
提督(だが皿に残るカレーは後一口!私の勝ちだ加賀!)チラッ
84:
加賀「あら?御代わりかしら?」スチャッ
提督「……グフゥッ」バタッ
加賀「惜しかったわね」パクパク
加賀「ごちそうさまでした」
──
85:
──第七夜──
──入渠報告書──
霧島・大破 熊野・大破
叢雲・大破 U-511・大破
提督・医務室(完治)
88:
──最終夜── 叢雲
提督「ふぅ、一昨日はえらい目にあったものだ……。加賀、これからは作るなとは言わないが、
出来る限り自重するようにしてくれ」
提督「四人が入渠送りの上に、あの後暁の様子を確かめに行ったら、雷達から『どうして暁を泣かせたの!』と、
しこたま怒られてしまった」
加賀「……それで暁は?」
提督「涙目でヨーグルトを食べていた」
89:
加賀「仕方ありませんね、分かりました。今後あのカレーは、辛口カレー愛好会だけで食べることにします」
提督「何だその会は……」
提督「兎も角、一日ズレ込んだが今日が最終夜だ。叢雲、どうか頼んだぞ……」
──
90:
?昼・廊下?
深雪「あれ?あそこ歩いてるのって叢雲じゃないか?」
曙「ホントね、首傾げながら歩いて……何してるのよあの子」
深雪「よぉーし。おーい叢雲ーッ!止まれーッ!」
叢雲「ひゃあっ!」
曙「プッ、可愛い声上げちゃって」ニヤニヤ
叢雲「う、うるさいわね!何なのよ二人して!」
91:
深雪「それはこっちの台詞だぜ」
曙「そうよ、アンタが首を傾げて変な歩き方してたから気になったんじゃない、同じ駆逐艦として恥ずかしいわよ」
叢雲「うっ、悪かったわね……」
深雪「で、何考えてたんだ?」
叢雲「……今日の晩餐会のことよ」
深雪「晩餐会?あーあれか、吹雪達が話してたっけな」
曙「そういえば最近、談話室が騒がしかったわね」
92:
叢雲「そうよ。それで私が一番おいしいと思う料理を作らないといけないんだけど……」
曙「その料理で悩んでたって訳ね」
深雪「! ふふん、叢雲ぉそんなの簡単じゃんか」ニヤニヤ
叢雲「えっ?って、何よその顔」
深雪「叢雲がおいしいと思った料理だろ?じゃあアレしかないって」ゴニョゴニョゴニョ
曙「ああ、確かにそれなら納得だわ」
深雪「だろ??」
93:
叢雲「で、でも晩御飯にそんなの出したら引かれないかしら……」
深雪「大丈夫だって、話を聞く感じじゃ暁のお子様ランチだって皆普通に食べたんだろ?心配するなって!」
曙「まぁ、アンタにはお似合いよね」
叢雲「煩いわね!……まぁ、ありがとう深雪。それじゃあ私は厨房に行……」
深雪「おおっと!それを作るんなら深雪さまと曙も手伝うぜ!」
曙「はあ!?何言ってんのよ!」
叢雲「そ、そうよ。それくらい一人で……」
94:
深雪「いいからいいから!一人で七人分焼くのは大変だろ?その代わり材料が余った分はあたしと曙の取り分な!」
曙「! し、仕方ないわね。私も手伝ってあげるわよ」
叢雲「それが目的か……」
深雪「ぃよーし、それじゃ行こうぜ叢雲ッ!」グイッ
叢雲「ちょっと、走らないで!」
曙「あっ、待ちなさいよーーー!」タタタタッ
──
95:
?夜・会場?
暁「ケーキだわ!」
加賀「意外ね、あなたがケーキを作るなんて」
提督「いや、そんなことはないぞ。クリスマスの時、叢雲が美味しそうにケーキを食べていたのを思い出すな」
霧島「ふふっ、そんなこともありましたね」
ゆー「わぁ……、とってもかわいいです」
96:
熊野「お菓子作りもレディの嗜み、ですわよね」
叢雲「ああッもう。は、早く食べなさいよ!」ドキドキ
提・加・霧・熊・暁・ゆ(かわいい)キュン
全員「いただきます!」
──
97:
霧島・熊野「美味しい(です)わ」
暁「ううっ……、これでカレーの悪夢を忘れられそうだわ」
加賀「反省はしているのよ」
ゆー「叢雲ちゃん、Danke,Leckerです!」
叢雲「あ、ありがと」
熊野「叢雲、今度お菓子の作り方を教えて下さらないかしら?」
暁「あ、暁もッ!お菓子も作れてこそ一人前のレディよね」
98:
叢雲「ええ、いいわよ。スパルタで教えてあげるわ」
熊・暁「ヴェっ……」
提督「しかし、いくら小さめでも七人分を焼くのは大変だっただろう?」
叢雲「そうね。でも深雪と曙が手伝ってくれたから、かなり助かったわ。
と言っても、深雪はあんまり調理の役に立たなかったからオーブンの見張りを任せてたんだけど」
提督「いい姉と友達じゃないか」
叢雲「友達……。まぁ、そういうことにしておくわ」
──
99:
叢雲「あ、そうだ忘れてたわ。ちょっと出てくるわね」
──ガチャ
提督「ふぅ……、それにしても晩餐会が始まって、何事も無く終わるのは今日が初めてか」
霧島「そうですね、叢雲には感謝しないと」
暁「晩御飯には少なかったけど大満足よ!」
ゆー「大変だったけど、楽しかった……です」
──
100:
──ガチャ
叢雲「待たせたわね」
熊野「どこに行かれたんですの?」
叢雲「これを冷蔵庫に取りに行ってたのよ」スッ
提督「ケーキだと……?」
加・霧・熊・暁「……」ピクッ
叢雲「曙達に余った分を上げたんだけど、それでも一つ残っちゃったのよ、だからまだ食べられる人に……」
加・霧・熊・暁「わたし(暁)がッ!」
101:
叢雲「ちょっ、あんた達……」
加賀「……ここは譲れません」
熊野「手加減は出来ませんわよ」
暁「駆逐艦だからって馬鹿にしないでよね!」
霧島「無駄なことは止めておきなさい」
加・霧・熊・暁「ああああああッッ!」
──
102:
提督「結局最後はこうなるのか……。クリスマスケーキも人を子供に戻す何かがあるのだろうな」
ゆー「……だめだこりゃ」
叢雲「最後くらいまともに締めなさいよおおおおおおおッ!」
──
103:
──後日──
提督「それで、今回の件どうだった?叢雲」
叢雲「……悪くはなかったわよ。酷い目にも合ったけど楽しかったのは事実だし」
提督「それならば良かった、私も企画した甲斐があったと言うものだ」
提督「あれから霧島と熊野は、約束通り加賀から料理の特訓を受けているみたいでな。
先日、私に試食してくれとカツカレーを持って来たよ」
叢雲「カレー……、大丈夫だったの?」
提督「ああ、甘口だった」
10

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