八幡「贈り物には想いを込めて」back

八幡「贈り物には想いを込めて」


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乙でございます
53: 以下、
乙です
なんか原作読んでるようだ
55: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:08:51.24 ID:9WL6O8ki0
冬が寒いのは変わらない。夏が暑いのと同じくらい不変の真理だ。
昨日到来の寒波はなりを潜め、本日は一転穏やかな朝だ。
結局あの後は誤魔化しきれず、小町から親が帰ってくるまで延々と質問責めをくらった。
なんでああいう話が好きなんだろうか?
女子が他人の話に一喜一憂し、キャーキャー騒ぐのはもはやどこでも見られる光景でもあるけれど。
昨日吹きすさんだ強風は夜のうちに止み、本日は穏やかな晴れ模様ではあるが、朝の寒さの中を自転車で登校するのは慣れない。
慣れても結局寒いと言う方が近いだろうか。
寒い寒い言ってるから寒くなるんだ!寒いなんて言うな!とかいう超理論があるが意味わからん。
寒いもんは寒い。心の持ちようで変わるもんじゃない。
それと限界を超えろ!とかいうのも頻繁に聞くが、あれも正直意味不明で理解に苦しむ。
それ以上の力を出せないから限界なのであり、それを超えるというのはどう考えてもおかしな話である。
超えられちゃったやつは最初から本気出してなかっただけなんじゃないの?俺みたいに。
なんなら最後まで本気を見せないまである。
誰に言ってるのか自分でもよくわからなくなりつつ、いつも通りの時間に通用門を潜る。
ぱらぱらと校舎に向かう生徒たちから少し外れ、校内の駐輪場へ向かった。
いつも通りの決めている場所に自転車を停め、スタンドをかけて施錠する。
強風の影響か、枯れ葉が駐輪場内にひしめいている。
積もった落ち葉が踏まれてざくざくと音を立てた。
トタン製の屋根に開いた穴を風が吹き抜けるヒューヒューという何とも寒々しい音も聞こえてくる。
カゴから鞄を手にして肩に掛け、両手をポケットにつめて暖を取る。ふぃー暖かいぜ。
56: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:12:12.00 ID:9WL6O8ki0
さあ行こうかと校舎へ脚を向ける。
がさりと、誰かと落ち葉を踏む音が重なったかと思うと、不意に後ろから右肩をぽんぽんと叩かれた。
はて?と何の気なしに首を右方向にめぐらすと、細くしなやかな、女の子特有の人さし指が頬にささった。
「せーんぱい。おはようございます♪」
「……おお」
やーい引っ掛かったーと言わんばかりの楽しそうな調子に、うげぇーとか思ってしまった。
何でこんなとこにいんだよ……。自転車通学始めちゃったの?ヒーメヒメヒメ?。
「先輩テンション低いですよー?せっかく朝からわたしと会えたんだから、もっとアゲて下さい!」
「いやそうは言ってもだな……。歩きながらにしようぜ。遅刻するぞ」
アゲるって何だろう?サゲるのなら得意だ。主に場の空気を盛り下げる方向で。
一色を伴ってもいいからさっさと下駄箱へ行こうと体を翻すと、ついと腕が引かれた。
そちらを見ると一色がコートの肘の部分を握り、俺の動きを制止させている。
顔をちらと見るとうっすら赤い。え、なんなのこの雰囲気?
いつもとは違う彼女の表情に呆けていると、ゆっくりと一色が口を開いた。
「今日が何の日かはさすがにわかってますよね?」
「……まあ、それくらいは」
あれだけこの日のことについて一色と話した上で、昨日の小町との会話だ。意識しない方が難しい。
一色は鞄をごそごそ探ると、中から青のチェック柄が入った小さなラッピング袋を取りだした。
こちらを真っ直ぐに見つめる瞳にたじろいでしまう。
普段のあっけらかんとした態度とは違い、その瞳には強さと覚悟を感じた。意を決したように彼女の口が開かれる。
57: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:16:07.08 ID:9WL6O8ki0
「先輩。いつもありがとうございます。生徒会のことも、あとその……個人的な悩みも聞いてもらっちゃって……。
とってもお世話になってます。だからこれは感謝の気持ちです。受け取って、もらえますか?」
顔が赤い。彼女も、そして多分自分も。
上目遣いで自信なさそうに問うてくるその姿は、何故か在りし日の小町を連想させる。
作られた一色の「可愛さ」を知っているからこそ、その恥ずかしがる所作はとても新鮮で、そしてこれこそが彼女の
女の子としての素の顔なのかもしれないと感じた。
ここで受け取らない、という選択肢なんて存在しない。今の目の前の道は一つだ。
受け取らないということは想いから逃げることであり、それではただの臆病者だ。
卑屈で、最低で、陰湿でも構わない。だが臆病者は、もう嫌だ。
一歩こちらから近づき、中途半端に上げられた一色の手から袋を受け取った。
「その、なんだ、……ありがとう?」
「何で疑問形なんですか……?」
はぁーと溜息を吐きつつも、その顔を晴れ晴れとしている。
クスッと微笑むと、瞳を閉じて安堵の表情を浮かべた。
「仕方ないだろ……。こういうの慣れてないんだよ」
「まあ、なんとも先輩らしい理由ですねー」
しかし、まさか本当に貰えるとは思わなかったぜ。
昨日無駄に色々考えてたのが馬鹿らしくなってきてしまう。
そしてこういった経験、小町以外の異性からチョコを貰ったことがないからこそ気になった事がある。
そう、袋の中身だ。
58: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:18:30.58 ID:9WL6O8ki0
「これ開けてみていいか?」
「へっ? こ、ここでですか? うーん、まあいいですけど……」
貰ったものだが、本人を目の前にして開けていいものか一応許可を取ってみる。
渋々といった様子の一色から許可を貰うと、綺麗に折りたたまれた袋のシールを少しづづ丁寧に剥がしていく。
その様子をじーっと見られているので、若干やりづらい。
なんかさっきからすっごいモジモジしてるし。か、かわいいとか思ってないよ?ほんとだよ?八幡ウソつかない。
シールを綺麗に剥がし終えて、袋の口を広げて中身を確認する。
黒色のパッケージに入っているのが見えたので、ひっくり返して掌の上に出した。
朝日に輝くパッケージには黒い稲妻・ブラックサンダーの文字。
確かにこれなら一目で義理と分かる潔さだな。うむ。本命貰えるなんて思ってないけど。
これは世の男子を勘違いさせない素晴らしいチョイスだ。
ふむふむやるなと感激しつつ、礼を述べておく。
「一色ありがとな。お前の気持ちは痛いほど伝わったぞ」
「えへへ、そんな恥ずかしいですよぅ……って、あれ!? 何で何で!?」
What’s happen!と言いたくなるようなあわあわと慌てた様子で、一色は鞄の中を確認した。
次いで、あっちゃーという声が漏れる。
居住まいを正し、右手を口にやりつつコホンとひとつ咳をして呼吸を整える。
こちらを再び見据えつつ言った。
「あのー先輩? 実は渡すの間違っちゃいまして……先輩のはこっちです」
そう言うと改めて青色の、どちらかと言えば水色に近い袋を渡してくる
59: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:21:27.34 ID:9WL6O8ki0
そのまま空いている手で受け取った。
思わずどういうことだ?と怪訝な顔をしていると身振り手振り付きで一色から補足が入る。
「さっき渡したのはクラスの便利な……あっ、お世話になってる男子に渡す用なんですよー」
「あ……そうなの」
テヘペロッ☆とまたまた悪びれなく言い放った。
いやだから言い直さなくていいから。むしろ言っちゃってるし便利って。
せっかく最近いろはすに感心してたのに、これは評価を改めなくてはいけないかもしれませんね……。
台無しだよ!
「あ、あとですね先輩。さっきは思わず許可しちゃったんですけど……。出来ればわたしがいないところで
今度は開封してほしいかなー?って思いまして」
「? わかった」
簡潔に了解という旨を伝えると、一色は小さく礼を述べる。
その時予令が鳴った。登校までの猶予はあと僅かだと教えてくれる。
「名残惜しいですが遅刻しちゃうのでそろそろ行きますね。わたし下駄箱こっちなので」
1年生用の下駄箱を指さして言う。俺もそれに呼応するように言葉を返した。
「ああ。あとな一色」
「はい?」
はて?というか、ぽかんとした表情をして俺の言葉を待っている。
こんな事を言うのは無粋かもしれない。
ただの自己満足かもしれないけれど、それでも言っておきたかった。
勇気ある彼女に、臆病な俺なりのエールを。
「……頑張れよ」
「……はい!」
一体何に対しての言葉なのか。そのあまりに短いエールは無事一色に伝わったのか、大きくうなずき今度こそ
背を向けて歩いて行く。
太陽を受けた背中が、とても眩しく見えた
60: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:26:00.29 ID:9WL6O8ki0
一色を見送り、2-Fの下駄箱へ向かった。
外履きを脱ぎ、内履きに履き替えて教室までの道を行く。
ふと左手に持ったままの一色からの贈り物に目を落とすと、何か四角いカードのようなものが入っているのが見えた。
誰も見てないよな……。
周りをざっと確認する。
もう予令もとっくに鳴り終えたからか、周囲に生徒は確認できなかった。
気になったので、教室に入る前に太陽が差し込む階段の踊り場で封を開けることにする。
綺麗な形のチョコレートクッキーと、案の定ピンク色の紙のようなものが入っている。
中に手を入れて件のものを掴もうとするが、2つ折りの小さなものなので掴みにくい。
器用に指だけでつまむように取り出すと、折り目に合わせて紙がはらりと開いた。
61: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 22:28:40.11 ID:9WL6O8ki0
女の子らしい丸文字で、短いメッセージが書かれているのがすぐに目に入る。
左から右に目をめぐらし、内容が頭で理解されると、瞬間顔が熱くなる。
「反則だろ……」
独り言が思わず口をついて出てしまった。マフラーを片手で緩ませパタパタと扇ぐ。
それでも顔の熱はなかなか引いてくれない。
誰にも見られないように右手で口許を隠しながら教室へ急いだ。本令がもう鳴ってしまう時間だ。
何かを伝える方法は色々ある。今回のケースなら気持ち。
直接声に出して伝えることもあるし、今回のようにメッセージカードや手紙を送るのも一般的な方法だ。
だが、得てしてうまく伝わらないことも多い。
伝えたいことが多ければ多いほど、要点をかいつまんでわかりやすくしてやる必要がある。
大事なのはシンプルさ。
一言に気持ちを詰めること。過度に装飾された言葉は必要ない。
そういう意味ではこのメッセージカードはお手本だな。
本当に、あざといやつ……。
『大好きですからね♪ せーんぱい!』
可愛い後輩のしたたかな笑い声が聞こえた気がした。
―――――
―――
――

64: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 23:18:04.96 ID:9WL6O8ki0
バレンタイン当日の教室は昨日以上に落ち着かない空気、というかピリピリした殺気までもが
漂いまくっており、常に冷静沈着でクールなニヒルを気取る俺もさすがに限界である。
おかげで休み時間の度に外に出ては自販機まで行って無駄に往復してきたり、行きたくもないトイレに行って時間をつぶしたりもした。
午後を迎えた今となっては暇つぶしの限界を超え、もはや机に突っ伏すしかない。
左目で教室内の様子を確認する。
この空気を作り出している一端を担っているのは葉山隼人と言える。
休み時間になるたびに他クラスの女子がクラスを訪れ、葉山にチョコを渡しているからだ。
瞬く間に大き目な手提げ袋がチョコレートで埋まっていく。それ全部食うの?死んじゃわない?
「マジぱねーわー隼人くん。ぞれ何個目よ?モテすぎっしょ! チョーうらやまだわー」
「それな」
「はは、そんなことないよ」
葉山がチョコを貰うたびに戸部がいつもの調子で茶化す声が教室に響き、大岡だが大和だか、あれどっちだっけ?それに同調する。
戸部は何か言うたびに海老名さんのほうをチラッチラッ見ている。なんて分かりやすいんだ……。
海老名さんは気が付くことなく、いや気が付かないフリだろうか?由比ヶ浜と談笑を続けていた。
しかしそんだけチョコ貰っといてモテてないって俺はいったい何なんだ。
もはや人間じゃない何かにカテゴライズされそう。
あ、でも今年はすでに小町以外に一個貰ってるわ。
なんとか人間は辞めずに済みそうだ。本当にありがたいろはす?。
65: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 23:19:31.44 ID:9WL6O8ki0
「戸部ぇ、あんたうるさい」
「あ、優美子マジごーめんって! 怒らしちった? 反省しまくりんぐだわ?」
「黙れ」
「うぃ……」
あれだけうるさかった戸部をシュンとさせるとは……。
上述の教室の空気をピリピリさせている最大要因は三浦優美子だろう。
なんせ、女子が葉山にチョコを渡すのを邪魔はしないまでも超ガン付けまくりんぐなのだ。
あ、戸部の口調が移った。っべー!マジベーわ。
三浦のプレッシャーでたじろぎすぎて渡せない女子とかもいたし、あーしさん半端ないっす。
プレッシャーかけちゃうとかニュータイプかよ。
そんな事を考えていると、また顔も名前も知らん女子の2人組が入って来て葉山にチョコを渡す。
受け取る葉山の顔を見やると、いつもの柔和な笑顔を浮かべてはいるものの、どこか困っているようにも見えた。
66: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 23:24:27.41 ID:9WL6O8ki0
三浦の無言のプレッシャーに押し出されるように2人組は教室を出ていくと、戸部が葉山の持つ、受け取ったばかりのチョコをまじまじと見つめながら再度茶化し始める。
「かー、隼人くんまーた貰っちゃってるじゃん。去年より多いんとちゃう?」
反省していない様子の戸部に三浦がキッと睨みつける。
葉山はその様子を見て苦笑しながら言葉を発する。
その笑みは届かぬ何かを想っているようで、声には僅かだが諦観が滲み出ている、そんな気がした。
「そうだな……ただ、数じゃないんだ。俺が本当に欲しいのは……」
「隼人くん? どーしたん?」
最後の方は声が小さく、こちらの耳にははっきり届いてこなかった。
それでも何となくニュアンスは伝わった。
葉山は視線を教室内をめぐらした後に、こちらの方をじっと見つめてくる。こっち見んな。
話を聞いていたのがバレただろうか?まぁばれても別に困ることはない。それに、あんな大声で話す方が悪いのだ。
それよりまずいのは……あれだ。
腕を枕にして、完全に机に突っ伏すスタイルに変更しておく。
あれの相手をする気にはさらさらなれない。
67: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 23:26:50.06 ID:9WL6O8ki0
「ぐ腐腐……隼人君の意味ありげな視線がヒキタニ君に……。俺が本当に欲しいのは女の子のチョコじゃなくて
お前のチン……ぶはっ!!」
「海老名マジで擬態しろし」
「あはは……」
危惧していた通り、腐のオーラの持ち主に目ざとく発見されてしまった。
三浦は慣れた様にポケットティッシュを取りだすとオカンっぷりを発揮して垂れてしまった鼻血をふく。
それでも未だ妄想世界から帰還しない海老名さんを、由比ヶ浜は引き笑いで見ている。
まあ、知り合い同士がそうなってるのを想像して普通にしている方がおかしい。
勝手にカップリングするのはやめていただきたい。許可を取られても絶対に嫌だ。
はぁ、もう諦めて寝ることにしよう。
目を閉じて暗闇の中で思考を巡らす。
あいつが本当に欲したものは何だったのか。今日という日を考えれば、チョコ。
それも葉山が想いを寄せるYというイニシャルの持ち主のものだろうか。
そして、あの諦観に満ちた顔が表わす意味は?
これに関してはいくら考えたところで答えが出るものでもない。
俺は葉山ではないし、誰にもなることなんて出来ない。故に人の考えていることなんてわからない。
言葉の裏を読んで、計算して、予測を組み立てることは可能だ。
それでも正確性には欠ける。結局わからないことだらけなのだと突き付けられる。
何でも持っていると思っていた完璧な彼にも強く欲するものがある。
何かを欲するということは、それを持っていないから。
持っていないから手に入れようとするのだ。もがいて、苦しんで、手を伸ばす。
伸ばした先には掴むものなどないかもしれない。
それでも欲する葉山はとても泥臭くて、ただの人間らしかった。
そんな考えに耽りつつ、最後の休み時間を消化していった。
68: ◆D04V/hGKfE 2015/06/16(火) 23:55:06.28 ID:9WL6O8ki0
時は放課後。
部活に行くものもいれば、友達と連れ立って帰るものもいるし、教室でたむろしておしゃべりに興じるグループもいる。
その括りで言えば、俺は部活に行くグループに属していることになる。
こんな俺だってグループには属しているのだ。
さらに言えばクラスに属し、学校に属し、あとは地球人というカテゴリーにも何とか属している。俺のグループって大枠すぎないか。
無駄に壮大な思考を頭の隅に追いやり、部室への道を一人で歩く時のい歩調で進む。
由比ヶ浜はグループ内でおしゃべりをしていたので、邪魔をするのも悪いと思い一人で教室を出ることにした。
自分の知り合いが誰かと話しているときに割り込んで行く時のドキドキ感は異常。
え、お前誰?みたいな目が痛くて仕方ない。
俺には知り合いも少ないからそんな経験はほぼないとは言えるのだが。
部室に到着し、右手でドアを開け放とうとして力を込める。
いつもはするりと開かれる扉に、本日は固い抵抗を感じた。
その抵抗の正体が、部室にかけられた鍵なのだと気が付くのに時間は要しなかった。
69: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:01:14.69 ID:bJtf1eDj0
早く来すぎてしまっただろうか?
確かに平素よりはややいペースで来たが、今まで部室が開いていなかったことはなかった。
そのまま体の向きを変え、部室前の扉にとんと背を付けて雪ノ下の到着を待った。
廊下の窓から西日が差しこみ、眩しさから目を細める。
滲んだ赤い夕陽がじりじりと高度を落として、地平線の彼方へ沈み込んでいくのをぼーっと
目で追い続けていると、間も無く由比ヶ浜がやって来た。
「やっはろーヒッキー。なんで外で待ってるの? 中入ろうよ」
「鍵が閉まってんだよ。だから雪ノ下待ちだ」
「え、ゆきのん来てないの? 珍しいね?。なんかあったのかな?」
そう言うと由比ヶ浜は携帯を取り出し、何かを確認しだした。
恐らく雪ノ下からのメッセージか来ていないかを確認しているのだろう。
あいにく彼女の連絡先は由比ヶ浜しか知らないので、自然手持無沙汰で回答を待つだけになってしまった。
こういうことは今まであまりなかったので意識していなかったが、雪ノ下と俺の通信手段は未だない。
クラスも違うので部室や、廊下ですれ違う時に直接話すだけだ。
なのでこうした事態ではもっぱら由比ヶ浜頼りになってしまう。
連絡先を知っているから友達とか、まったくそういうことではない。
ただ少し歯がゆい、そんな感情を抱いた。
「うーん特にメールとかもないし……どうしよっか?」
「……とりあえず職員室行って鍵だけ借りてくるか。平塚先生に言えば大丈夫だろ」
雪ノ下がこの時間になっても現れず、遅刻する旨や部活中止の連絡もない。
普段の彼女を知る身としては違和感を覚えることばかりだ。
だからといってここで待っていても仕方がない。
俺の提案に由比ヶ浜もうん、と首肯する。
連れ立って職員室までの道を歩き出した。
70: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:05:36.92 ID:bJtf1eDj0
失礼します、と決まりきった挨拶をしつつ職員室の扉を静かに開ける。
目的の人物はすぐに見つかった。
自席で煙草を左手で持ち、煙を燻らせている。
ふーっと吐き出すと、少し疲れ気味な表情を浮かべた。
「すんません先生」
「おっ比企谷に由比ヶ浜か、珍しい。どうかしたかね?」
俺と由比ヶ浜が連れ立ってきたのに気が付くと、体をこちらに向けるようにくるりと椅子を回す。
火をつけてまだいくばくも経っていないであろう、まだ吸う余裕のある煙草を灰皿に押し付けて火を消した。
フィルターに残る薄紅色のリップが妙に艶めかしい。
「ゆきのんってこっち来ませんでした? 鍵が開いてなくって……」
「ああ、そういうことか。雪ノ下は君たちにまだ何も言ってないようだな」
ピクリとその言葉に反応する。やはり何かあったのだろうか。
由比ヶ浜と顔を見合わせるが、彼女も首を横に振って知らないというポーズをとった。
そうなればもう聞くしかない。
「どういうことっすか?」
「うーん、言っていいのか? いやでもなぁ……」
うーんと唸るだけでいまいち正鵠を射ない、そんな態度だ。そんなに言いにくいことなのだろうか。
しばしの黙考の後に、うんと決心をつけたように先生は話し出した。
71: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:11:35.92 ID:bJtf1eDj0
「実はだな、雪ノ下は午後の授業中に体調不良を起こしてな……」
「えっ! ゆきのん大丈夫なんですか!?」
「まあ落ち着け由比ヶ浜」
話途中に割り込んでしまった由比ヶ浜をなだめる。心配をする気持ちはわかるが、今は正しい情報を得る事だ。
情報を得た上で、最善の行動をする必要がある。
ごめん、と呟くと、再び先生の話を聞く体勢を作る。先生は俺たちを交互にしげしげと眺めつつ言葉の先を続けた。
「……それでだ、今は保健室で眠っているはずだ。私が見た時は辛そうだったからな、君たちに連絡を入れる余裕があまりなかったのかもしれん」
「……体調不良ってのは具体的にどういう感じなんですか?」
体調不良と言っても、それではただ単に体調が万全でないことを示しているだけだ。
雪ノ下の症状が気になり問いかけるが、横から由比ヶ浜に鋭く射すくめられた。
「ヒッキー? ちょっとデリカシーないかも」
「はぁ?…………そういうことなの?」
少し考えると由比ヶ浜が何を言いたいのかわかった。
家族に姉や妹がいるやつならわかりやすいかもしれない。
気恥かしさで首筋を抑えていると、俺たちの会話を聞いていた先生がまるで面白いものを見たかのように、気さくに笑いかけてくる。
72: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:16:42.64 ID:bJtf1eDj0
「はは、そういうものではないよ。ただ少し熱があるだけだから安心したまえ。最近寒かったから、その影響かもしれん」
確かに昨日はもの凄く寒い1日だった。それで風邪を引いてしまったと、なるほどそういうことか。
雪ノ下細いもんなー、主にどこがとは言わないけど。
体脂肪少ないアスリートとかは風邪ひきやすいっていうもんな。
体の一部に立派な体脂肪を蓄えてるこいつは元気そうだし、と由比ヶ浜を見やる。
「どしたのヒッキー?」
「いんや何でも。それで、先生。保護者に連絡とかは行ってるんですか?」
ふと気になって尋ねてみた。あいつは一人暮らしだし、帰りの交通手段のこともある。保健室で寝込むくらいなら尚更だ。
「それ何だが……こちらが電話しようとするのを頑なに拒んでな。自分で電話はするからいいです、と聞かないんだ」
「ああ、そういう……」
さてどうしたものか、と困ったような呟きが聞こえた。
何となくその光景は想像できた。雪ノ下が安易に家族に頼るとは思えない。
本来家族にこそ弱みを見せても良いのだと思うが、彼女は逆だ。
弱みを見せないことに必死になっている。隙を見せればやられるとでもいうような、まるで狩られてしまわないような必死さだ。
彼女にとっての外敵から身を守るバリケードが、あの一人暮らしのマンションのようにも思えてくる。
そして自分で電話するというのも恐らく嘘だ。体調がある程度回復し次第、一人で帰ろうという算段だろう。
73: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:19:35.46 ID:bJtf1eDj0
「ゆきのん……電話とかしなそうだよね。家族とあんまり仲良くなさそうだったし・・・・・・」
「……だな」
短く同意する。由比ヶ浜も俺と同様の考えを持っているようだった。
こいつはこいつで、友達だから当たり前のことなのかもしれないが、雪ノ下のことをしっかり見ている。
思考の共有は済ませた。ならばあとは行動するだけだ。
「見舞いに行くのは構わないですよね?」
「別にかまわないが、真っ先に君が言い出すのは意外だな。部活が休みになったぜラッキーとか言いそうなのに」
「そこまでクズじゃないっすよ……」
俺ってそんな薄情な人間に見られてるのかしら?根性が曲がってるだけで情にはあつい……かどうかは、うん微妙だな。
少なくとも全員にはこうはならない。
比較的近しい人間限定だな。小町とか、戸塚とか。
「軽い冗談だよ。今の君はそんなことは言わないのは知っているからね。行ってあげなさい、その方が彼女も喜ぶだろう」
「……うす」
子の成長を喜ぶ親のような、優しい微笑みだった。つい照れくさくてぶっきらぼうに答えてしまう。
確かに平塚先生くらいの年なら子供がいてもおかしくないな。そういう意味では年相応な、大人の女性の顔だ。
これだけ生徒思いのいい先生なのにな、もったいない。早く誰か貰ってあげてくれないかなー?
74: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:21:49.65 ID:bJtf1eDj0
「比企谷? 今何かの波動を感じたぞ?」
「ヒッ……なんでもありません……」
ゴゴゴ……と背景にオーラが見えた。新手のスタンド使いかっ!!
「まぁいい。……そうだ、これを持っていきなさい」
「?」
掌を出せというジェスチャーをされたので、疑問に思いつつ黙って右手を差し出す。
開いた手の上に四角い物体が落とされた。こ、これは……。
「チョコ……っすか」
「今日はバレンタインだからな。由比ヶ浜、君にもあげよう」
「わー! ありがとうございます!」
まさか先生からも貰えるとは……。この瞬間、過去の記録(1個)を塗り替えました!
その1個は毎年毎年健気に作ってくれる小町のものというのは言うまでもない。
由比ヶ浜は元気に礼を述べ、うやうやしく受け取ったチョコレートを背負ったリュックにしまい込んだ。
「礼には及ばんよ。おっと、では私はこれで」
他の先生に声を掛けられ、平塚先生は書類を手に席を立った。
職員室内の様子を見るとどうにもせわしない。これから会議でも始まるのだろうか。
由比ヶ浜は再びリュックを背負い直し、こちらを覗きこむように意思を問う。
「じゃあ……行くよね」
「そうだな、顔くらい見せるつもりだ」
問いかけに首を縦に振り、俺の意思を伝えた。あちらもうなずきを返す。
そのまま揃って職員室を出て、雪ノ下のいる保健室へ向かった。
―――――
―――
――

75: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:27:27.95 ID:bJtf1eDj0
職員室から歩いて間も無く、目的の場所は見えてくる。
保健室は奉仕部の部室と同じ特別棟に設置されている。
廊下にいても、保健室独特の消毒液の匂いが鼻についた。
由比ヶ浜が扉を控えめにノックをして、中の人間に対して入室の意を告げる。
しかし、こんこんという軽い音が響いたきり、何も返答はない。
由比ヶ浜がやや困ったように、意見を求めてくる。
「どうしよっか? 寝ちゃってるのかな?」
その可能性は大いにあり得る。体調が悪い人間がやることは寝ることくらいしかないはずだ。
もしくは本を読んだり、携帯ゲームをしたり……これって普段の俺じゃないの?
つまり逆説的に、俺は常に体調が悪いと言える。だからもっと労ってくれ。
「静かに入れば大丈夫だろ。そーっとな」
「うん。そーっとね」
由比ヶ浜と目配せして、そろそろとゆっくり扉を開けて室内に入った。
保健室内は養護教諭が気を利かせてか、かなり暖かい空気に満ち溢れている。
冷え冷えとした廊下との温度差からか、ここは立っているだけでふわりと暖かい布団に包まれているようだ。
入って左側にベッドが並べられているのだが、その一番奥のカーテンだけが閉ざされているのがわかった。
そこにそろりと足音を忍ばせ近づくと、漏れるような規則的な呼吸音が耳に届く。
『やっぱり寝てるみたいだね』
『だな。起こすのも悪いから、起きるの待って挨拶して帰るか』
『そうだねー』
起こさぬよう小声で密談をすると、由比ヶ浜の顔がすぐ近くに見えた。
それは、ここで雪ノ下から治療を受けたあの時間を思い起こさせるような、息が顔をくすぐるような近さだった。
ふい、と顔を背けて誤魔化し手近な椅子を手繰り寄せて腰掛け、文庫本を開いた。
由比ヶ浜もそれに倣ってか、空いている椅子を持ってきて左隣に腰を掛けた。
76: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:30:18.39 ID:bJtf1eDj0
やっていることは変わらない。
普段と場所は違うが、ここでも穏やかな時間が流れている。
結局場所が重要ではないのだろう。大切なのは、誰と共にするかだ。
ここに来て1時間ほど経っただろうか。
雪ノ下の浅い規則的な呼吸音が、心地の良い環境音のようにも聞こえる。
『ゆきのんずっと寝てるね?。どんなこと考えてるんだろ?』
『さあ? てか寝てる時に考え事なんてすんの?』
『え、しないの? あたし結構考えてるよ。朝ごはん何かなーとか。それで朝起きて食べたいなって思ってたメニューだったら超テンション上がるし!』
由比ヶ浜と顔を寄せ小声でやり取りをする。
普通寝てる時に何も考えられなくない?夢とか見るなら全然わかるんだけど……。
ふーんそういうもんなのかと考えていると、ぽつりとトーンを落とした呟き声が左から聞こえた。
『あとね……ヒッキーのことも……』
『はい?』
え、どういうこと?寝てる間も俺のこと考えてるってことなの?つまり……どういうことだってばよ。
俯いて保健室の床を見つめる彼女に、意を問う様にじっとした視線を向けた。
77: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:38:11.21 ID:bJtf1eDj0
『言葉のままだよ。あたし、さ。ヒッキーのこといつも考えてるんだ。今なにしてるのかなーとか、なに考えてるのかなーとか?
授業中の暇な時とか、部活中とかもさ。色々ね 』
『……そうか』
やめてくれ、そう思っても口に出ることはなかった。いや口に出すことができなかった。
それほどまでに由比ヶ浜の顔から目が離せない。言葉に射すくめられてしまう。
『でもね、考えても考えても、やっぱりわかんないことの方が多くて……人の考えてることは簡単にはわからないって、もうわかってたはずなのにね?
それでも、あたしはヒッキーのことわかりたいって思うんだ』
『…………ああ』
やめてくれ。口が渇いて声がうまく出せない。
ゆっくりと、本当にゆっくりと言葉を紡いでいく。
わかって欲しい。理解されたい。その想いが滲み出る。
『あはは……何言ってんだろあたし。でもね、大変だけど、それでも“わからない”で考えを終わらせっちゃったら、やっぱりダメなんだと思う。
ヒッキーのこと知りたい、わかりたい。それで……あたしのこともわかって貰いたい。この想いはあたしの特別なんだ』
視界が靄が掛かっているようだ。何故か景色が滲んで見える。
『だから、ね……』
カバンのチャックを広げて、中から綺麗に包装された箱を取り出す。
一切音が聞こえない保健室内に、その音ははっきり響いた。
「いつもありがとう。あたしの傍にいてくれて。大切な想いを教えてくれて。本当に、ありがとう」
綺麗な笑顔だった。
溢れた涙が、一筋流れる。
そのまま頬を伝ってスラックスを濡らした。
78: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:43:30.03 ID:bJtf1eDj0
保健室内は静謐な空気が流れていた。
時たまエアコンが暖かい空気を流す、僅かな駆動音が聞こえるだけだ。
由比ヶ浜からチョコを受け取った後お互いどうにも余所余所しくなってしまい、現在は一人待ちぼうけだ。
飲み物を買ってくると先ほど出て行ってから、まだ帰ってくる気配はない。
今しかないか。
「雪ノ下、もう起きてるだろ」
カーテンの内部で、ごそと人が動く気配があった。
先ほどまで聞こえていた浅い呼吸はもう聞こえない。
反応を窺っていると、カーテンを通してくぐもった声が響いた。
「……ええ」
やはり起きていたか。予想通りといえばそうだ。
少し鼻にかかるような声での返答で、彼女が風邪をひいていること再確認させられる。しかしカーテン挟んで会話するのも妙な感じだ。
向こうが透けて見えそうなカーテンなのに、静けさと部屋の暗さも相まってやけに重苦しく感じてしまう。
「いつ頃から起きてたんだ?」
「由比ヶ浜さんがあなたに何かを渡す前、くらいかしら」
嘘は言っていないだろう。ちょうどあの時くらいから寝息が聞こえなくなっていたと思うから、辻褄は合う。
それに、こんなことで嘘を吐くメリットはない。
「起こして悪かったな。うるさかったか?」
「そうでもないわ。少し微睡んでいたらあなた達の声が聞こえて、それで起きたの」
「そうか。体調は?」
「今は熱も下がってきたみたい。少し楽になったわ」
「なら良かった」
そこで会話が一旦途切れた。
ただでさえ会話は苦手なのに、カーテン越しで表情が見えないというのはここまで話しづらいものなのか。
目は口ほどにものを言うというが、視覚的な情報も会話には重要な要因となるらしい。
何かを思い出したのか、ふいに雪ノ下が口を開く。
79: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:47:41.87 ID:bJtf1eDj0
「こちらこそごめんなさい……連絡が遅れてしまって。待たせたでしょう?」
そう言って反省の弁を述べる。表情は窺えないが、声の調子からなんとなくどんな顔をしているかは推察できる。
こういうところは本当になんというか律儀で、雪ノ下らしいなと微笑んでしまう。
「部室にいてもここにいても本読んでただけだからな。お前が気にすることでもねーよ」
「……そうね。あなたらしいわ」
くす、と笑い声が響いた。
そこから再びの沈黙。今日の雪ノ下は刺がなくて少しやりづらいなと、頬をかいた。
体調が悪いようだし、話すこともないならと椅子から腰を上げた。
「それじゃ、もう帰るわ。あんまりここにいても悪いしな。そのうち由比ヶ浜も戻ってくるから」
「待ちなさい、比企谷くん」
そう言って扉の方に向かって歩き出した俺を、雪ノ下の静かな少しくぐもった声が押しとどめる。
何だろうかと、その場で脚を止めて続きを待った。
「顔くらい見せていきなさい。見舞いに来たのなら、病人に顔を見せるのが最低限のマナーだと思うのだけれど」
え、そういうマナーってあるの?八幡わかんない。
雪ノ下が言うならきっとそうなのだろう。きっと間違いなんかじゃないはずだ。
彼女の言う事だから無条件に信頼するわけではない。
ただ、行動するには充分すぎる理由を貰い俺は動いた。
カーテンの前まで進む。中には人の気配が当然ある。
薄布越しに確認を取った。
80: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:53:50.77 ID:bJtf1eDj0
「開けるぞ?」
「ええ」
はらりとカーテンを開ける。こんなに薄いものなんだなと、ふと手で触って感じた。
中に入ると、久方ぶりに見る彼女の姿。ベッド上で上半身を起こしてこちらを待っている。
熱でやや上気した顔。ベッド脇の机を見れば綺麗に畳まれて置かれたブレザーとカーディガン。
3番目のボタンまで開けられた、リボンタイのついていない真っ白なブラウス。
寝汗をかいたせいだろうか、僅かに肌に張り付いている。ちらりと普段は目につかない彼女の鎖骨まで見えてしまう。
制服を着崩さない彼女が見せるその姿は、とても新鮮で違う一面を伝えてくる。
「立っていないで座ったら?」
正直顔を見せたら帰ろうと思っていたので、この提案は意外だった。
特に断る理由もみつからず、ベッド脇の丸椅子にゆっくりと腰を降ろす。
もう静かに行動する理由もないのに、無意識下でそういう動き方になっているのが少し可笑しかった。
椅子に座ると、ベッド上にいる雪ノ下と視線が同じくらいの高さになる。
目を合わせて懸案事項を投げかけた。
「そういえば家に連絡は入れたのか?」
「…………いえ、特には」
合わせた綺麗な目がすーっと横滑りした。
案の定というか、予想通りだから特に驚きはない。
雪ノ下はやましいことがあるような、そんな態度でこちらの方を真っすぐ見て来ない。
「平塚先生には自分で連絡入れるって言ったんだろ?嘘になっちゃうぞ」
「嘘にはならないわ。これから電話すれば」
「屁理屈だ……」
屁理屈だよね?雪ノ下がそういうことを言うのはあまり見たことがない。
先ほどから随分楽しそうにクスクス笑いが止まらない。熱に浮かされちゃってるのかしら?
81: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 00:57:29.51 ID:bJtf1eDj0
「あなたはいつもこんなことばかり言ってるのだから、少しは聞く側の立場にもなってみなさい」
「そうっすか……」
それから2つ、3つ会話をして、再び静かな時間が流れる。
俺も彼女も多弁ではない。言葉が少なくて間違えることもあった。
ただ、この沈黙は不思議と苦痛じゃない。それを彼女も感じているかはわからないのだが。
目の前の穏やかな笑みを見れば、きっと悪くは思ってないのだろう。
「ところでチョコは何個貰ったのかしら?」
「……お前がそういうこと聞いて来るの初めてだな」
「あら、それはこの前のお返しのつもりかしら? 他意はないわ。純粋な興味よ」
マラソン大会の日の保健室でのやりとりの意趣返しのような気持ちで言葉を返したが、それはしっかり伝わったようだった。
他意はないと言いつつ、雪ノ下の目は意地悪そうに輝いている。
俺はふぅと息を吐くと右手の指を3本すっと立て数をアピールした。
「聞いて驚け……現時点で既に3つだ。もうすぐ4つになるから歴代の記録を大きく塗り替えるな」
胸を張って自慢気に答える。実際嬉しいから仕方ない。
家に帰って小町から貰えればそれで4つになる。すごいな今年の俺。去年の4倍だぞ、4倍。
「あら、すごいじゃない? 自称ぼっちのモテ谷くん」
「おいなんだそのあだ名」
目を丸くして心底感心したような声で変なあだ名をつけてくる。少しだけ言葉に棘が垣間見えたのは気のせいだろうか?
こちらもチクリと反撃する。
82: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:01:59.88 ID:bJtf1eDj0
「で、お前は? 誰かにあげたの?」
ニヤリと少し意地の悪い顔になっている自覚があった。
雪ノ下は少し視線をこちらから外して窓の外を眺める。何かを憂うような表情に思わず惹きつけられる。
「私は……これから渡すわ」
「へっ?」
表情に見入っていたのと、その予想外の答えに変な声を上げてしまった。
雪ノ下はむっと不機嫌そうに端正な顔立ちを歪めて文句を垂れる。
「私がバレンタインに贈り物をする事がそんなにおかしい? 今年はあげるつもりって部室でも言ったじゃない」
「ああ、そんな事言ってたな」
いけないいけない忘却の彼方だったぜ。刹那で忘れちゃった☆
確かに部室でバレンタインの話題になった時に今年は少し考えているような事を言っていた事を思い出した。
「まあ、あれだな、お前から貰えるやつは幸せもんだな。料理とか上手いしさ」
何となく思ったことを口に出してしまった。
夕暮れが迫り薄暗い室内、エアコンから流れる暖かい空気、何より2人きりというこの状況が心を弛緩させている。
気を許している、のだろうか。
何よりも手拍子の会話が苦手だ。つい言葉の裏を読んでしまうし、真意を悟られないように言葉を濁してしまう。
今まで気の置けない友人は持ったことがない。
だから、わからなかった。
83: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:06:58.04 ID:bJtf1eDj0
暫時心ここに在らず状態の俺の顔の前に、いつの間にか綺麗な包装紙に包まれた箱が差し出されていた。
その元を辿れば、雪ノ下が穏やかに微笑みを浮かべている。
「そうね、比企谷くんは本当に幸せものね。私からチョコレートが貰えるのだもの」
「……俺に?」
声が詰まる。
まったく期待していなかったと言えば嘘になる。期待するのは怖いことなのに、可能性を捨てきれなかった。
だから、つい素直に受け取れなかった。
そんな卑屈さに呆れたような、それでいて優しさに満ちた声が、狭い室内にこだまする。
「せっかくあなたのために作ってきたのだから、素直に受け取りなさい。……それとも迷惑、だったかしら?」
「迷惑、なんかじゃない」
「え……?」
自分でも驚くほど芯の通った声が出た。
常とは違う様子に、雪ノ下は僅かばかりに戸惑いの声を漏らした。こちらをじっと見据えてくる。
手はベッドの上に両手を揃えて置かれており、答えを聞く体勢は整っていることを知らせているようだった。
俺は先ほどの言葉をそのまま繰り返す。
「迷惑なわけあるかよ」
今まで、人から色々な気持ちを向けられることがあった。
蔑視され、嘲弄され、軽侮され、卑しまれ、語ればきりがない。
悪意の奔流に流されぬよう、自己という杭を地面に突き刺し必死に耐えていたと思う。
俺は俺なりに考えて、選んで、そうして生きてきた。
その生きてきた結果として、向けられた悪意に屈してしまったら?
俺は今までの自分を否定することになる。
自己否定。それがたまらなく嫌だ。とてつもない屈辱だ。
自分が自分を肯定してやらないなんて間違っている。
そんな負の感情にまみれた俺に、今日だけでどれだけ暖かな感情が向けられただろうか。
曰く、バレンタインは異性に親愛の情を伝える日だという。
親愛の情。辞書通りならば、親しい人を大切に想う気持ちのことだ。
そんな気持ちを向けられて、迷惑だなんて思えるはずがなかった。
「あんまこういうの慣れてないから……まぁ慣れててもうまく言える気がしないけど、その、あ、ありがとう」
どんどん自信を失くして小さくなっていく声で何とか言いきった。
俯いて顔を見られないように、がしがしと側頭部を掻いて誤魔化す。
こんな簡単なお礼の言葉を伝えるのにこんなに勇気がいるとは、告白とかしたら死んじゃうんじゃないの俺?
くす、と小さな笑みが零れた気がした。
84: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:10:45.83 ID:bJtf1eDj0
「……じゃあ、はい」
そちらを見やれば、先ほどと同様に包装された箱がこちらに差し出されている。
「……おう」
今度はしっかりと受け取る。
落としてしまわぬように、失ってしまわぬように、鞄にしっかりとしまい込んだ。
鞄を改めて地面に置き直したタイミングで、計っていたかのように保健室の扉が開けられた。
「……ゆきのん起きたかな? あれヒッキーどこ行ったんだろう?」
由比ヶ浜からはカーテン内にいるこちらの様子を確認することはできない。そのせいで気が付かないのだろう。
カーテンから少しだけ顔を出し、位置を知らせた。
「由比ヶ浜こっちだ」
「あ、やっぱゆきのん起きたんだね。よかったぁ」
由比ヶ浜がカーテン内に入りやすいよう、入口のカーテンを広げたまま抑えておく。
ありがと、とこちらに小さく目配せし、雪ノ下に近づいていった。
しかし、この狭い空間内に3人。しかもうち2人は女子だと、ものすごく甘ったるい香りが漂っている。
何で女子ってこんな良い匂いするんだろう?
女の子独特ともいえる匂いに内心ドギマギしていると、心配そうな声で雪ノ下に声が掛かる。
「やっぱちょっと顔赤いね。もう大丈夫そう?」
「ええ、寝ていたおかげで楽になったわ。由比ヶ浜さんにも迷惑をかけてしまって……ごめんなさいね」
「ぜーんぜん迷惑なんかじゃないよ! あ、そうだゆきのん……」
「……?」
85: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:12:46.54 ID:bJtf1eDj0
そう言って由比ヶ浜は雪ノ下にどんどん顔を近づけていく。
垂れた髪をすっと片手で耳に掛けてそれはまるで接吻でもするかのようなうっとりとした表情だ。
なっ!何をするだァーーーーッ。ガチゆりか?ガチゆりなのか?
実際キスなんてするわけもなく、雪ノ下の耳元でこそこそと話しを始めた。
両手で声が漏れぬよう耳をしっかり覆っている。
聞かれたら困る話なのだろうか?ならば口をはさむ様な無粋な真似はしない。
そう思って雪ノ下を見ていると、由比ヶ浜が何かを伝えた瞬間僅かに目を見開いた。
次には遅れたように、顔に紅が差す。
由比ヶ浜と目を合わせると、こくりと頷いた。
それを見た由比ヶ浜は満足げに顔を離すと、両手を後ろに組んで満面の微笑みを向ける。
「良かったねゆきのん。本当に良かった……」
「……あなたには敵わないわ」
顔を見合わせると楽しそうにくすくすと笑い合う。
何なんだ一体……。そう呟いて両者を交互に見ていると、声が重なった。
「ヒッキーは気にしないの!」
「比企谷くんは気にしないで」
女の子同士の秘密の話に口をはさむのは確かに無粋な行為だ。
でも気になるものは気になる。
しかし、それに踏みこむには勇気が足りない。ただ勇気ばかりあって考えなしに踏みこむのも駄目だ。
踏み込み過ぎればただのウザいやつになってしまう。
要はバランスだ。空気を読むとも言っていい。
今回はそうだな、空気を読むとしようか。
「……おお」
日はすっかり暮れ、夜が近づいてくる。窓の外を見やれば、落ち葉がからからと地面の上をスライドしていくのがわかった。
どこかの隙間からかヒューヒューと風が漏れるように吹き込む音もする。今日も夜にかけて風が強くなってきた。
そんな冬らしい景気を目にしていても、不思議とここは暖かい。
暖房のお蔭だけではないと、はっきりとそう感じた。
―――――
―――
――

86: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:16:10.99 ID:bJtf1eDj0
「さみぃな……」
「寒いね……」
自転車を押して、由比ヶ浜と並んでバス停までの道を歩く。
やっぱさっき暖かいと感じたのは暖房のお蔭ってのが多分にあるなと再認識させられる。えーそれでいいの?
寒いものは寒いのだ。それ以上もそれ以下もない。
あの後も引き続き話していると、様子を見に来た平塚先生と養護教諭に帰るよう促された。
雪ノ下は先生の車でマンションまで送られるらしい。俺も、と同乗したかったが自転車を置いて帰ると通学に不便なので
しぶしぶ諦めることにした。
結局あいつは家族に頼ろうとしなかった。
駄々をこねる子供のように電話を拒否する雪ノ下を見るのは中々新鮮だったが、そこまで抵抗するのはやはり上手くいっていないんだろう。
だからと言ってそこに深入りするのはおかしな話で、それこそ正に空気を読めというやつだ。
家族の問題に他人が顔を突っ込むのと、女の子のお喋りに口をはさむのでは訳が違う。
だから、基本は待つしかない。待ちガイルだ。ちょっと違うな、うん。
待って、待って、待ち続けて。それで向こうが話してくれたら、それでいいと思う。
校門を出て、停留所まではあと少しだ。
いつものように他愛もない話をしつつ、のんびりとしたペースで進んでいく。
87: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:18:47.79 ID:bJtf1eDj0
停留所に到着し、由比ヶ浜が立ち止まる。
自転車の左レバーを握り込むと、キィと微かなブレーキ音が無人の停留所に響いた。
由比ヶ浜はくるりとその場で回ると、俺と真正面に向き合う格好になった。
「ヒッキー、ゆきのんにも貰ったでしょ?」
「……貰ったけど、お前に言ったか?」
正直もうバレンタインの話は勘弁して欲しかったが、聞かれたことには答えよう。
何を?とかそういう煩わしい事は聞かなかった。今日この日という限定ならば、聞かずともわかる。
うーんと考え込むと由比ヶ浜は口を開いた。
「言われてないけど……まぁいいじゃんいいじゃん!」
「何なんだ一体……」
あははとバシバシ肩を叩いてくる。過剰なボディタッチはやめなさい、勘違いが止まらなくなっちゃうだろうが。
そういえばと思いだしたことがあったので、由比ヶ浜の手を制しつつ尋ねる。
「そういや飲み物買ってくるって保健室出てったけど、やたら時間食ってなかったか?
自販機ならすぐ近くにあっただろ。結局飲み物買ってきてないし」
「うえっ!え、えーっと……」
保健室から歩いて1分ほどのところに自販機は設置されているはずだ。そんなに時間がかかる道理はない。
それに戻って来た時に由比ヶ浜は手に何も持っていなかった。
飲み物を全て飲みきってから戻ってきた可能性もあるが、わざわざ寒い屋外でのんびりと飲んで帰って来るというのも季節柄不自然に感じた。
そしてこのしどろもどろな反応。
導かれる答えは決まった。
「……聞いてたのか?」
「ごめんっ!」
88: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:22:09.94 ID:bJtf1eDj0
ガバッと頭を下げて謝る。やはりそうだったか。
ちょっとカマ掛けてみたつもりだったけど見事にビンゴしてしまったようだ。
「別に気にしなくていい。聞かれて困るようなことは話してないしな」
「でも……」
気にするな、と言われて、はい気にしないです、と言える奴なんていない。
そんな奴がいたら見てみたい。どんだけ面の皮が厚いんだよって話だ。
だから、そういう意味では由比ヶ浜の今のばつの悪そうな顔は正しい。
彼女のころころ変わる表情からは、本当に生きている人間らしさを感じさせてくれる。
「あー、ほらお前もチョコくれただろ。それでチャラだ」
ぶっきらぼうに一気に言い放った。あの保健室でのやりとりを思い出してしまい顔が熱くなる。
由比ヶ浜はきょとんとした顔になったと思うと、優しく微笑んだ。
「なんていうかヒッキーらしい励まし方だな、って思ったよ」
「いや別に励ますとかそういうんじゃ……」
ごにょごにょ言っていると、通りの向こうから路線バスがやって来るのが見えた。
交差点の赤信号で止まったが、到着までは時間の問題だろう。
「バス来ちゃったね。ほんとに今日はありがとう。ヒッキーはやっぱり優しいと思うよ?少なくとも、あたしはそう思ってるから」
多分ゆきのんも、と付け加える。
面と向かってそんなことを言われると、なんて返したら良いのかまったくわからず、当たり障りのない答えを返すしかなかった。
「……どういたしまして」
89: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:25:21.48 ID:bJtf1eDj0
バスが到着した。ハザードランプを点灯しつつ、停留所にぴたりと停車する。
先に前方の降り口が開き、運賃を清算しつつ数人が降りていった。
今度は乗車口が開き、由比ヶ浜が乗り込む。
車内アナウンスが備え付けのスピーカーから聞こえた。
夜間で道が空いているせいか、出発予定時間前に到着をしたため時間調整を行うらしい。
時間を確認すれば、もうあと1分も無いくらいか。
「ヒッキー」
「ん?」
入口に立ったままの由比ヶ浜を見る。
「あたしも頑張って作ったからさ……その、ちゃんと食べてね?」
不安そうな顔だった。単純に、そんな顔は見たくはないと思った。
明るく楽しそうに笑っているのが彼女らしいのだから。
そんな普段の顔が見たくて、俺も普段のように小馬鹿にしたように返す。
「そうだな。死なないように注意しなきゃな」
「あっもう!またあたしのことバカにしてるでしょ! バカヒッキー! ばーかばーか!」
「低レベルすぎるだろその返し……」
やれやれと呆れていると、アイドリングストップしていたバスにエンジンがかかる。
もうお別れだ。
扉から一歩離れて別れを告げる。
「じゃあな。また学校で」
「うん。またねヒッキー」
プシュという音とともに入口のドアが閉まり、彼女を乗せたバスは走り出した。
笑顔で、胸の前で小さく手を振る由比ヶ浜を 見えなくなるまでその場で見送った。
バスが角を曲がって完全に見えなくなってから、自転車に跨って家に向かって走り出す。
90: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:30:23.26 ID:bJtf1eDj0
冬の夜道を行く。
自転車が小さな段差を越えるたび、それに合わせて鞄が跳ねる。
鞄の中には、渡す人それぞれの想いを込められた贈り物が詰まっている。
バレンタインの形は様々だ。
友チョコ、義理チョコ、はたまた逆チョコ、なんでもござれ状態である。
それは細かく枝分かれした木を想像させる。
枝分かれの数だけ、人への想いがある。
ではその幹は?枝葉が存在するのは根幹があるからだ。
バレンタインの根幹にあるのは、やはり……好意、だろうか。
今日彼女らが何を込めたのか、それを知る由はない。
人の気持ちなんて、他人がどれだけ考えたって正確に理解できるものじゃない。
それは自分が一番良くわかっている。
もしも、仮の話だ。
知ってしまったら?
俺はその時逃げ出さずにいられるだろうか?
逃げるなよと、そうどこかから聞こえた気がした。
かつて彼の背中に掛けた言葉が、自らを苛む。
逃げずに立ち向かうには勇気が必要だ。でも背中を見せて逃げるのは、もっと勇気がいるんじゃないか? 
だったら、俺の答えは一体何なんだろうか。
未来を憂いても、過去を悔やんでも、結局何がわかるわけでもないし、何も変わらない。
だったら、今は少しくらい浸っていたいと思った。
このぬるま湯のような、幸せな気分に。
<了>
91: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:32:35.02 ID:bJtf1eDj0
以上です。
感想くれた方はありがとうございました。
93: 以下、
乙でした!
何回も読み返したくなるわ
>>1に聞くけど11巻なんで1週間も伸びたの?
締切間に合わなかった?
95: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:46:15.49 ID:bJtf1eDj0
え、伸びたんすか?
公式バレンタインと内容被ったら嫌だなーと思って頑張って書いたのに……
もちろん僕はわたりんじゃないです。
94: 以下、

ところでボタン3つも開けたらおっπが見えると思うんですがそれは
96: 以下、
>>94
ヒント:貧乳
97: ◆D04V/hGKfE 2015/06/17(水) 01:51:19.78 ID:bJtf1eDj0
>>94
2つか3つか悩んで、3つにしました。気にしないで下さい。
100: 以下、
めっちゃ面白かったよ。
乙彼さーん
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最近のオススメSS
清麿「強くてニューゲームか…」ヌァァァァァァ!!
一夏「ドゥフッw拙者織斑一夏でござるwwww」ギャプッwwwコポォwwww
佐天「またレイプされた…」初春「佐天さんも大変ですね」黒髪美少女のレベル0が性的過ぎてヤバイ
佐天「すごいテニスが出来る能力かぁ」間違いなく攻撃的な能力だなぁ
浜面「女の子になれる能力かぁ」アイテムで性別逆転して……
オーキド「ここに3人の女性がおるじゃろ?」 レッド「は?」僕はナツメちゃん!!
【※ネタバレ注意】エレン「同期にホモとレズしか居ない……」確かに
ボーボボ「黒の騎士団入団希望のボーボボでぇす!!」ゼロ「ほう?」死ねやぁ!!!!!
桐乃「そうです!私はブラコンの変態ヤローです!」きゃわわ!!!!!!!
岡部「紅莉栖をひたすら愛で続けたらどうなるか」うわぁぁああぁ!!(AA略
クリリン「やっぱりオレも、サイヤ人の子供欲しいな・・・」スレタイのインパクトェ……
ゆうしゃ「くらえー!まおー!!」魔王「くはははは!!」ゆうしゃちゃん!!!!
俺「グヘヘヘ……」 女騎士「早くこの手錠を外せ!」お○んぽなんかには絶対負けない!
鍛冶師「今日中に仕上げるぞ」弟子「はい」雰囲気が良いSS
「ついに地球はウリ達の物ニダー」ニダニダ
みんなのいちおし!SS
よく耳にするとか、印象的なSS集ダンテ「学園都市か」"楽しすぎて狂っちまいそうだ!"
一方通行「なンでも屋さンでェす」可愛い一方通行をたくさん見よう
インデックス「ご飯くれるとうれしいな」一方通行「あァ?」"一方禁書"凄まじいクオリティ
フレンダ「麦野は今、恋をしているんだね」通称"麦恋"、有名なSS
キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」珍しい魔術側メイン、見るといーの!
垣根「初春飾利…かぁ…」新ジャンル定温物質ウヒョオオ!!
美琴「……レベル5になった時の話ねえ………どうだったかしら」御坂美琴のレベル5に至る努力の経緯
上条「食蜂って可愛いよな」御坂「え?」ストレートに上食。読めて良かった
一方通行「もっと面白い事してモリモリ盛り上がろォぜ」こんなキャラが強い作者は初めて見た
美琴「週末は アイツの部屋で しっぽりと」超かみことを見てみんなで悶えましょう
ミサカ「たまにはMNWを使って親孝行しようぜ」御坂美琴のDNAは究極に可愛くて凄い
番外個体「  」番外通行SSの原点かな?
佐天「対象のアナルを敏感にする能力か……」ス、スタイリッシュアクションだった!
麦野「どうにかして浜面と付き合いたい」レベル5で楽しくやっていく
ミサカ「俺らのこと見分けつく奴なんていんの?」蒼の伝道師によるドタバタラブコメディ
一方通行「あァ!? 意味分からねェことほざいてンじゃねェ!!」黄泉川ァアアアアアアアアアア!!
さやか「さやかちゃんイージーモード」オナ禁中のリビドーで書かれた傑作
まどかパパ「百合少女はいいものだ……」君の心は百合ントロピーを凌駕した!
澪「徘徊後ティータイム」静かな夜の雰囲気が癖になるよね
とある暗部の軽音少女(バンドガールズ)【禁書×けいおん!】舞台は禁書、主役は放課後ティータイム
ルカ子「きょ、凶真さん……白いおしっこが出たんです」岡部「」これは無理だろ(抗う事が)
岡部「フゥーハッハッハッハ!」 しんのすけ「わっはっはっはっは!」ゲェーッハッハッハッハ!
紅莉栖「とある助手の1日ヽ(*゚д゚)ノ 」全編AAで構成。か、可愛い……
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
遊星「またD-ホイールでオナニーしてしまった」……サティスファクション!!
遊星「どんなカードにも使い方はあるんだ」龍亞「本当に?」パワーカードだけがデュエルじゃないさ
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」ただでさえ天使のミクが感情という翼を
アカギ「ククク・・・残念、きあいパンチだ」小僧・・・!
クラウド「……臭かったんだ」ライトニングさんのことかああああ!!
ハーマイオニー「大理石で柔道はマジやばい」ビターンビターン!wwwww
僧侶「ひのきのぼう……?」話題作
勇者「旅の間の性欲処理ってどうしたらいいんだろ……」いつまでも 使える 読めるSS
肛門「あの子だけずるい・・・・・・・・・・」まさにVIPの天才って感じだった
男「男同士の語らいでもしようじゃないか」女「何故私とするのだ」壁ドンが木霊するSS
ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」読み返したくなるほどの良作
犬「やべえwwwwwwなにあいつwwww」ライオン「……」面白いしかっこいいし可愛いし!
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1927年に開催された物理学の学会のメンツがヤバ過ぎてワロタwwwwwww (※画像あり)

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