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モバP「なっちゃんと後輩アイドル」


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1:
1作目 モバP「なっちゃんという同級生」
2作目 モバP「なっちゃんという担当アイドル」
3作目 モバP「ナナ先生のメルヘンデビュー」
4作目 モバP「なっちゃんと恋人ごっこ」
の、続きです。少なくとも1作目を読まないと登場人物の関係がよくわからないかもしれません。
2:
とある休日 スーパーにて
P「欲しいものは全部買えたな」ガサガサ
P「あとは本屋にでも寄って、適当に新刊を漁ってみるか」
??「Pくーん」
P「ん? おう、奇遇だな。なっちゃんとこんなところで会うなんて」
茄子「こんにちは♪」
P「なっちゃんも買い物?」
茄子「いえ、私は近くをぶらぶらしていただけです。そしたら外から見慣れた顔が見えたので」
P「そっか。ここは袋詰めするスペースが窓際になってるからな」
3:
茄子「ところでP君。そのポケットからはみ出しているものは……」
P「これか? さっきもらった福引券だよ。あっちのカウンターで引けるらしい」
茄子「福引きですか。ふふ、なんだか懐かしい光景を思い出します」
P「一枚しかないから、今回は俺しか引けないけど」
P「なっちゃん。俺に幸運のおすそ分け頼むわ」
茄子「4等くらいでかまいませんか?」
P「やる気なさすぎだろ」
茄子「じゃあ3等で」
P「なっちゃんには頼らないことにした」
P「こうなれば、自分の力だけで1等をつかんでみせる!」
4:
帰り道
茄子「3等でしたね」
P「6等まであった中での3等なら、まあまあかな」
P「さすがに本気で1等引けるとは思ってなかったし」
茄子「それで、景品としてもらったのが……なんですか、これ?」
P「おもちゃ」
茄子「おもちゃなのは見てわかりますけど……」
P「より正確に言えば、ウルトラマンの変身アイテムだな」
P「懐かしかったからこいつを選んできた」
茄子「ウルトラマンですか?。小さい頃に少しだけ見てましたね」
P「俺は毎週見てた。ウルトラマンに仮面ライダーに戦隊に、ヒーロー番組見るのが好きだったなあ」
P「このアイテムは確か、こうやって空に掲げて変身するんだ」
茄子「あっ、光りました」
P「これを使って、近所の友達とよくヒーローごっこをやったもんだ」
5:
茄子「ということは、P君はもう同じ物を持っているんですか?」
P「そうだな。今のアパートにはないけど、実家を探せば残ってるはずだ」
P「……だから、一通り思い出に浸ったら、正直これはいらないんだよな」
P「いつぞやの江ノ島の時みたいに、小さい男の子にでもあげようか」
茄子「……あ、P君P君」チョンチョン
P「どうした。物欲しそうな顔でこっちを見る少年でも発見したか」
茄子「はい。でも……」
茄子「男の子じゃなくて、女の子です」
6:
少女「ホントにこれ、アタシがもらっていいのか?」
P「いいよ。俺は同じの持ってるし」
少女「ありがとう! 前から欲しかったんだけど、お小遣いの問題で後回しになってたんだ!」
茄子「好きなんですか? ウルトラマン」
少女「もちろん。というか、ヒーロー物全般が大好物!」
P「へえ。女の子なのに珍しいな」
少女「正義を愛する心に、男も女も関係ないからなっ」
P「ほう。言うじゃないか、お嬢ちゃん」
少女「お嬢ちゃん……なんだかむずがゆい呼ばれ方だ」
少女「アタシには南条光っていう名前があるから、そう呼んでくれ」
P「俺はPっていうんだ。南条光ちゃんか。かっこいい名前だな」
茄子「鷹富士茄子です。確かに、ヒーローの名前みたいですね♪」
光「アタシもこの名前は気に入ってるんだ」
7:
P「………」
光「ん? どうかしたのか?」
P「いや……うん、そうだな」
P「一応、ダメ元で聞いてみるけど……君、アイドルをやってみる気はないか」
光「……え、アイドル?」
8:
P「実は俺、アイドルのプロデューサーなんだ。これが名刺」
光「本当だ」
P「んで、こっちの彼女はうちの事務所のアイドル」
茄子「まだまだ未熟者ですけどね」
光「そうなんだ。驚いた」
光「でも、アイドルってヒラヒラの衣装とか着たりするんだろ? アタシには合わないかなって……」
P「別にヒーローっぽい衣装を着ることだってできるんだぞ。俺の見立てでは、そういうタイプのアイドルに対する需要は結構あるし」
P「たくさんの人に、元気を与えることができる」
光「………それ、ちょっとヒーローに似てるかも」
P「だろう?」
10:
P「時に南条ちゃん。君は『真のアイドル』になるための条件を知っているか」
光「真のアイドル? 聞いたことないな」
茄子「(私も聞いたことないんですけど)」
P「大勢のファンを愛し、向き合っていくための優しさ」
P「厳しいレッスンをくぐり抜ける強さ」
P「そして、努力の成果を本番で100パーセント出し切るための勇気」
P「この3つが真のアイドルたる条件だ」
P「優しさと強さと、そして勇気。聞き覚えはないかな」
光「……はっ! そ、それは、慈愛の戦士・ウルトラマンコスモスが力を発揮するために必要なもの!」
P「その通り!」
光「まさか、アイドルとウルトラマンにそんな共通点があったなんて!」
茄子「(私も初めて聞きました。さてはP君、半分思いつきで話してますね)」
茄子「(あながち間違った意見でもないのがまた……)」
11:
光「考えてみたら、アイドルになったら、そのうちヒーロー番組の主題歌とか歌えるかもしれないんだよな」
P「君が人気アイドルになれば、ありえない話ではないな。もちろん、そこまでたどり着くには相当な時間と努力が必要――」
光「うおおおっ、燃えてきた! 決めた、アタシアイドルやってみる!」
P「お、おう……やる気が出たようでなによりだ」
P「じゃあ、早事務所までついてきてくれるかな。いろいろ詳しい話を説明して、そのうえでもう一度判断してもらおうと思う」
光「わかった!」
12:
事務所にて
凛「――なるほど。そんなことがあったんだ」ヒソヒソ
茄子「ああやって女の子を手籠めにしていくんですね?」ヒソヒソ
凛「実は私もそんな感じでスカウトされて……」ヒソヒソ
P「そこ。妙な話をしない」
13:
P「というわけで、これからみんなと一緒に頑張ることになった――」
光「南条光、14歳! よろしくお願いします!」ペコリ
凛「渋谷凛、15歳。よろしく」
茄子「先ほども自己紹介しましたけど……鷹富士茄子、20歳です」
菜々「安部菜々、17歳ですっ」
菜々「17歳です!」
光「(なんで2回言ったんだろう)」
14:
P「ここのメンバーはみんな君の仲間だから、気軽に接してくれ」
P「何か質問とかあるか?」
光「質問か……じゃあ早」
光「みんなは、ヒーロー番組見るのか……じゃなかった、見るんですか?」
茄子「苦手なようなら、敬語は使わなくてもいいんですよ?」
凛「私も茄子さん達に敬語使ってないしね」
光「そうか? なら改めて……みんなはヒーロー番組見るのか?」
凛「ヒーロー番組……それって、仮面ライダーとかのことだよね」
光「そうそう」
凛「うーん、小さい頃はプリキュアと一緒に見てたんだけど……今やってるのとかは知らないかな」
凛「時々、クラスの子が役者がイケメンだーって言ってるのは聞いたことあるけど」
茄子「私も最近のはよくわからないですね?。昔やっていた……えっと、クウガ? でしたっけ。あれとか、ちょっとだけ記憶に残っています」
光「クウガ! いいなあ、リアルタイムで見れたんだ。アタシはその時生まれたての赤ちゃんだったから」
菜々「ナナは結構覚えてますよ? 小さい頃にテレビで見たウルトラマンパワード、かっこよかったですねー」
光「おお、パワードか! アメリカっぽい雰囲気が出ててかっこいいよな!」
光「あれなんてアタシが生まれる5年前に放送しててさ」
茄子「ということは、私やP君がまだ赤ちゃんだったんですね」
光「そう。今の19歳が0歳だったころで……」
光「………」
光「あれ?」
光「(何かがおかしい気がする。でもみんな特にツッコんでないし……気のせいなのか?)」
26:
1週間後
光「うん、やっぱり何度見てもかっこいいなあ」
凛「おはようございます……光、何見てるの?」
光「おはよう、凛さん! 今、ウルトラマンのDVDを見てるんだ」
凛「ウルトラマン……あ、本当だ。ちょうど変身したところだね」
光「凛さんも見ないか?」
凛「いいけど、途中からじゃ話の流れがわからないかも……」
光「このマックスは1話完結のエピソードばかりだから、途中から見ても全然大丈夫さ!」グッ
凛「そうなんだ。なら、見てみようかな」
27:
『どうやって操縦するんだっけ?』
『どうやって変身するんだっけ』
凛「ぷっ……結構面白いね、この話」
光「マックスは笑いあり感動ありだから、最初にお勧めするのに結構いいウルトラマンなんだ」
光「アタシが最初に見たウルトラマンでもある」
凛「そうなんだ」
光「そこからいろんなウルトラマンのDVDを借りていったんだ。どの作品にもそれぞれのよさがあって、全然飽きなかったなあ」
凛「光は本当にヒーローが好きなんだね」
光「もちろん!」
28:
しばらく経って
P「おーい、そろそろレッスンの時間だぞー」
光「じゃあ凛さん。続きはあとで見ようか」
凛「そうだね」
P「なんだ。二人でウルトラマン見てたのか」
凛「うん。マックスってやつ」
P「マックスなら俺も知ってるぞ。面白かったか?」
凛「……まあ、悪くないかな」
光「よし、今日もレッスン頑張るぞーっ」
凛「ふふっ、光はいつも元気だね」
光「元気なのは大事なことだからな! 今日は凛さんより上手く踊ってみせる!」ビシッ
凛「それは、先輩としては負けられないね。そう簡単には勝たせないよ」
光「高い壁を乗り越えてこそ、ヒーローに近づけるんだ」
29:
P「仲良くレッスンに向かったな」
茄子「光ちゃんと一番仲がいいのは、凛ちゃんですね」
茄子「凛ちゃん、最近生き生きしているような気がします」
P「年が近い子が入って来たからな。なっちゃんも菜々さんもだいぶ年上だし」
P「凛みたいな子は、年下の元気な後輩がいたら負けじと頑張ろうとするタイプだし」
茄子「……ひょっとしてP君、そのあたりも考えて光ちゃんをスカウトしたんですか」
P「一応は」
茄子「すごいです。なんだかP君が頭がいいように見えます」
P「なっちゃん、時々俺に対してだけ毒舌出るよね」
茄子「そうでしょうか?」キョトン
P「うん。結構」
茄子「……まあ、昔から人のことはよく見ていますもんね」
30:
茄子「光ちゃんは、ヒーローを目指しているんですよね」
P「正義の味方、みんなの味方になりたいんだってさ。本気でそう願ってるらしい」
茄子「大きな夢ですね」
P「そうだな」
茄子「P君も、小さい頃は似たような憧れを持っていたんじゃないですか?」
P「確かにヒーロー願望はあったよ。でもそれは、単純に『カッコよく悪役を倒したい』って思いの表れだった」
P「でも、光の場合は違う。あの子は人の役に立ちたがっている。立派なもんだ」
茄子「……P君、この前光ちゃんに言っていましたよね。ファンに元気を与えるアイドルは、ヒーローに似ているって」
P「まあ、そんな感じの話はした」
茄子「ということは、私もヒーロー?」
P「んー、かもな。正義のヒーローなっちゃんだ」
茄子「くすっ。それもいいかもですね♪」
31:
茄子「でも、考えようによってはP君もヒーローですよ」
P「え?」
茄子「ファンに夢を与えるのはアイドルですけど、そのアイドルの夢を叶えるのはプロデューサーですから」
茄子「願いを叶えてあげるのも、ヒーローのお仕事のひとつ、ですよね」
P「ふむ。そうなると、ヒーローである俺にとってのヒロインはなっちゃん達ってことになるのか」
茄子「3人のヒロインですか……ちなみに、メインヒロインは誰なんでしょう?」
P「メインヒロイン?」
茄子「はい♪」
32:
P「………」
P「……菜々さん?」
茄子「あー、そこで私以外の人の名前を挙げちゃいますか……」
P「いや、だって現実的な問題としてあの人のプロデュースが一番神経使うし。おもに年齢的な問題で」
P「こう答えると、駄目だったか?」
茄子「別に、駄目じゃないですよ。ただ、P君は女心がわかってないな?と思っただけです」
P「む、なんだよその女心って」
茄子「秘密です。ぷいっ」
P「ぷいって……自分で口に出す音じゃないだろ」
茄子「まあ、それはそれとしてですね」ケロリ
P「はあ」
33:
茄子「きちんと全員、ハッピーエンドに導いてくださいね? 私達のヒーローさん♪」
P「……ああ、そうだな」
P「頑張るよ」
P「(そんな風にお願いをされては、やる気を出さざるをえなくなるというものだ)」
P「(男って生き物は、なんだかんだで年甲斐もなくヒーローに憧れてしまうものだから)」
おしまい
34:
おまけ
光「さて、無事マックスを最終回まで見終わったわけだけど」
凛「最後まで勢いを失わないストーリーだったね」
凛「最終回の展開はなかなか燃えたよ」
光「そうなんだよ! 凛さんにもマックスのよさがわかってもらえたようでなにより」
35:
光「それで、次からは別のウルトラシリーズのDVDを持ってこようと思うんだけど」
光「とりあえず平成ウルトラシリーズの1巻だけ持ってきたから、パッケージ見て決めてくれ」
凛「うわ、こんなにたくさんあるんだ」
光「昭和も入れたら倍に増えるよ」
凛「……あ。このウルトラマン、青いね」
光「ああ、コスモスか。主役のウルトラマンで基本モードが青いのは、そのコスモスが初めてなんだ」
光「Pも、コスモスには詳しいみたいだったなあ」
凛「ふーん……蒼のウルトラマンか」
凛「じゃあ、これにしようかな」
そんな感じで、徐々に特撮への理解を深めていく凛であった。
3

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