クェス「始まりの物語」 シャア「永遠の物語」back

クェス「始まりの物語」 シャア「永遠の物語」


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1:
元ネタ作品
・「機動戦士ガンダム」
・「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」
・「魔法少女まどか☆マギカ」
・朗読劇「赤の肖像」
ガンダムとまどかのクロスオーバー。
なお、アルパ・アジールに脱出ポッドが装備されていたという設定です。
2:
『ビギニング 始まりの物語』
―宇宙世紀―
―アルパ・アジール脱出ポッド内―
クェス 「猫ちゃん、私……どうなるのかな?」
クェス (アルパ・アジールに脱出ポッドが付いてなかったらと思うとぞっとする。
 もし脱出ポッドが無かったら、ハサウェイを庇ってリ・ガズィに撃墜された時点で私は死んでた)
QB 「このアルパ・アジールの脱出ポッドが回収されればキミは助かるけど、戦局は連邦に有利だ。
仮にこのポッドが回収されるとしたらそれは連邦軍によってだろうね。
そうなるとキミは捕虜になる。あとボクは『猫ちゃん』じゃなくてキュゥべえだよ」
クェス 「猫ちゃん、大佐はどうなったの?」
QB 「……」
QB 「サザビーの識別信号は途絶えた。でもシャアは生きてる」
クェス 「どこにいるの!? 大佐は!」
QB 「アクシズの表面だよ」
クェス 「それじゃ、大佐は……」
QB 「このままだと地球に落下するアクシズに張り付いたまま焼け死ぬだろう」
クェス 「そんな!」
クェス (私は……)
3:
―クェス回想 ニュータイプ研究所 クェス個室―
クェス (ふぅ、帰ってきた。今日の訓練も終わったし、シャワーでも浴びようかな)
クェス (帰り際に大佐が私の手の甲にキスしてくれた……。私は大佐のことを……。ハッ! あれは何!?)
QB 「……」
クェス (ベッドの上に……ぬいぐるみ? 大佐からのプレゼント!?)
QB 「はじめまして、僕はキュゥべえ」
クェス 「喋った!」
QB 「クェス・パラヤ、僕と契約をして魔法少女になって欲しいんだ!」
クェス (私の名前も登録済みなのね。何かのアニメキャラのぬいぐるみかしら? よく出来てるわ)
4:
QB 「――という訳さ」
クェス 「つまりあなたと契約して魔法少女になればどんな願いも叶うのね」
QB 「ああ、そうさ」
クェス (最初はぬいぐるみと思ったけど、生き物だったなんて……。だけど、願いと引き換えに女の子を
 魔法少女にするって……本当かしら?)
クェス 「なら今度の戦争で大佐が……」
クェス 「……」
QB 「どうしたんだい?」
クェス 「やっぱり止めとくわ」
QB 「何を躊躇っているんだい? 君には折角魔法少女の才能があるのに」
クェス 「私、ニュータイプの才能があるって言われているの。魔法に頼らなくても大佐を守ってみせるわ」
QB 「そうかい。普通は二つ返事なんだけどなあ」
クェス 「とはいっても、あなたの話が本当ならいざという時助かるのよね……。そうだ!」
QB 「どうしたんだい、クェス?」
クェス 「私が戦闘に出る時、一緒にコクピットに乗って欲しいの」
QB 「いいよ、戦闘中に危なくなったら契約してくれればいい」
クェス 「まるでピンチになって欲しそうね、でもいいわ。ありがとう! 猫ちゃん」
QB 「僕はキュゥべえだよ」
5:
―アルパ・アジール脱出ポッド内―
クェス (こうして私は猫ちゃんをコクピットに乗せて何度か戦闘に出た……。私がネオジオンの勝利を、
 大佐の無事を祈って契約していたらこの戦争の結果は変わっていたのだろうか)
クェス (今は迷ってる場合じゃない! 私が大佐を救ってみせる!)
クェス 「猫ちゃん、私契約するわ!」
QB (どうやら最後まで僕の名前を覚える気はないようだ)
QB 「ようやく契約する気になったようだね。さあ、クェス・パラヤ。君はその魂を対価にして何を願う?」
クェス 「私は、大佐をジオンの呪縛から解放したい! 大佐と二人で、誰も大佐のことを知らない
 世界に行きたい……それが……私のたった一つの願い……」
クェス (これで大佐を助けられる。それだけじゃない。私は……ララァとナナイを大佐から追い出してやる!)
QB 「契約は成立だ、クェス・パラヤ」
6:
―旧世紀―
―風見野市 病院 病室―
クェス (ここは……知らない天井……)
クェス (人が来た……)
看護婦 「大丈夫! 目が覚めたのね……よかったわ」
クェス 「看護婦さん……ここは……」
看護婦 「あなた路上で倒れてたのよ。先生を呼んでくるわね」
クェス (行っちゃった……。言葉が分からない……私、手に何か握ってる……)
クェス (これは……ソウルジェム! ……じゃあ、願いが叶ったっていうの!?)
7:
―風見野市 病院 病室―
クェス (猫ちゃんの嘘吐き!)
クェス (私は大佐と二人で知らない世界に行きたいと願ったのに……)
8:
―クェス回想 風見野市 病院 廊下―
クェス 「どういうことなの、猫ちゃん!」
QB 「どういうことと言われても願い事は叶っている筈だよ」
クェス 「私は大佐と一緒に居たかったのに、肝心の部分が叶ってないじゃない!」
QB 「君の話を聞いて、君が未来から来たことは分かった。でも未来の僕がどういう形で君の願いを
 叶えたかは直ぐには分からないよ」
クェス 「私、魔法少女辞めるわ! 願いが叶わないなら魔法少女なんて真っ平よ」
QB 「エゴだよそれは」
クェス 「あなたって白い悪魔ね」
9:
―風見野市 路上―
クェス (病院、抜け出して来ちゃった……)
クェス 「エグッ……ヒック……グスッ……」
クェス (大佐……大佐に会いたい……)
杏子 「お前、泣いてるのか?」
クェス 「えっ!」
クェス (女の子? 私と同い年位かしら?)
10:
―風見野市 裏通り―
杏子 「今日も一丁上がりっと」
クェス 「今倒した魔女もグリーフシード持ってたよ」
杏子 「やったじゃん。見返りがないとやってられないもんな」
クェス 「全くよ。魔法少女なんて」
クェスと杏子 「ハハハハハ!」
クェス (あれから1年が過ぎ、私は14歳になった。こうして杏子と過ごしていると、
 かつてクリスティーナとインドを旅していた頃を思い出す)
クェス (自分が旧世紀に飛ばされたことを知るのにそれほど時間はかからなかった。
最初はどうしようかと思ったけど、今はここでの生活にも慣れて来た。日本語も大分覚えた)
クェス (そう言えばハサウェイはお母さんが日本人って言ってたわね。
ひょっとしたらこの国にハサウェイの先祖が居るのかしら)
クェス (ハサウェイ、今頃どうしてるかな。今頃って言い方も変だけど。
この時代ハサウェイはまだ生まれてないんだし)
クェス (そして大佐はどこにいるの……? 風見野の街を隈なく探したけど大佐は見つからなかった……)
クェス (もし大佐がこの時代に来ていたら、この1年、どうやって過ごしてきたんだろう?)
11:
―見滝原市 町工場 応接室―
町工場の工場長 「他に食べる方法を知らないって言われてもねえ……」
町工場の工場長 「ココ最近不景気で、こんな小さい町工場の求人でも結構人は来るんですよ。
  マスさんだっけ。やる気はあるっていっても30過ぎて未経験で仕事の方はこなせるのかな?」
12:
―見滝原市 見滝原中学校 教室―
和子 「いいですか! 女子の皆さんはくれぐれも、昔の彼女の名前を寝言で言う男とは交際しないように。
 そして、男子の皆さんは『ララァ』とか『スン』とか寝言を言う大人にならないこと!」
さやか (『ウン』とか『スン』とかなら兎も角、『ララァ』とか『スン』とかどういう寝言なのよ?)
まどか (和子先生、駄目だったみたいだね)
和子 「先生、世界が滅んじゃうのもいいかなあって思うんです。男女関係とか恋愛とかもう沢山ですし、
 このまま四捨五入して40歳とか言われる位ならもういっそ何もかもお仕舞いになっちゃた方が……」
中沢 「あの……ちょっと、先生……」
和子 「誰か地球に巨大な隕石か小惑星でも落としてくれる人いないですかねえ……」
13:
―見滝原市 廃ビル敷地―
OL 「やだ、私、何で、そんな、どうして、あんなことを!」
マミ 「大丈夫、もう大丈夫です。ちょっと悪い夢を見てただけですよ」
さやか 「一件落着って感じかな」
まどか 「うん」
さやか (魔女の口付けを受けてビルから飛び降りようとしたOLさんも助かったし、魔女もやっつけたし、
 めでたしめでたしってところか)
まどか (マミさんと出会ってまだほんの少しだけど、魔法少女になって人助けの為に頑張るマミさんは
 とても素敵で……)
OL 「助けて貰って有難うございます。お礼と言っては何だけど、これから食事でもどうかしら?」
マミ 「どうか気になさらないて下さい」
OL 「そんなこと言わずに、ね」
まどか 「折角のご好意なんだからご馳走になってもいいかと思うんですが……」
さやか 「そうですよ、これは人助けをしたマミさんへのご褒美ですよ」
OL 「ほら、お友達もこう言ってるし、お願い」
マミ 「分かりました。ご馳走になります」
14:
―見滝原市 レストラン―
さやか 「それって振られたんじゃ―」
まどか 「さやかちゃん!」
さやか 「ごめんなさい……」
OL 「いいの、本当のことだから……。彼、学校の先生と二股かけてて……」
さやか 「酷い……」
マミ (失恋で落ち込んでいるところを魔女に狙われたのね)
OL 「カッコ良くて、素敵な彼だった。今でも彼と、ダイクンさんとヨリを戻したいと思う位よ」
まどか 「大工さんだったんですか」
OL 「いいえ、ダイクンさん。彼、キャスバル・レム・ダイクンっていうの」
まどか (外人さんだったんだ)
15:
―見滝原市 町工場―
町工場の工場長 「そうだよ、俺、駄目なんだ。こんな工場一つ切り盛り出来なかった」
町工場の工場長 「いつだったかなあ。首にした白人今頃どうしてんだろう。でも悪いのは俺じゃない。
  不景気が悪いんだ。恨むなよ、エドワウ・マス」
16:
―見滝原市 列車内―
ホストA 「あの金髪の白人いけすかねぇな」
ホストB 「先月の売り上げ2位になった奴ですか」
ホストA 「他に誰がいる」
ホストB 「すいません」
ホストA 「なんつうか、すました顔して俺ら見下した感じがしてよ。その癖あいつ最近成績良いから
  よけいムカツク。この前『あんたはホストやってるより、10年かけてでも大統領になるべきだ』
  って嫌味言ってやったんだ。そしたらあいつ何て言ったと思う?」
ホストA 「『今の私はクワトロ・バジーナだ。それ以上でもそれ以下でもない』って抜かしやがってさぁ……。
  あんまりムカツイたから殴ってやった」
ホストB 「ショウさん喧嘩っ早いっすねえ」
17:
―風見野市 高層ビル―
クェス (大佐。いつかきっと会えるよね……)
クェス (悲しみと憎しみばかりを繰り返す救いようの無い世界だから、大佐は少しの間だけこの星に
 休んで貰おうとした。それを覚えている。決して忘れたりしない)
クェス (だから私は戦い続ける。あの懐かしい笑顔に再び巡り会う日を夢見て……)
21:
『BEYOND THE TIME 永遠の物語』
―風見野市 裏通り―
クェス (杏子ったらまたあのさやかって新人の魔法少女のところに行って……)
クェス (放っとけばいいじゃない。杏子が帰って来るまで魔女でも狩っておこうかしら?)
ほむら 「失礼」 
クェス 「あなた! この前さやかと一緒に居た子ね」
ほむら 「あなたに話がある」
クェス 「話?」
ほむら 「佐倉杏子が死んだわ」
クェス 「嘘よ……杏子が死ぬ訳が!」
ほむら 「事実よ。彼女は魔女化した美樹さやかを道連れに自爆した」
クェス 「そんな……」
22:
―見滝原市 ほむらの住むアパート―
クェス 「それがあなたの条件?」
ほむら 「ええ。戦いが終われば、この町はあなたが好きにすればいい。これでは不服かしら?」
クェス 「見滝原を労せずして手に入れられるのはいいけど……どういう風の吹き回し?」
ほむら 「もうじきワルブルギスの夜が来る。私も貴方も一人では太刀打ち出来ない。だから共闘したい。
 私の知る魔法少女で手を貸してくれそうな子は皆死んだわ」
クェス 「私が断ったら?」
ほむら 「一人で戦うわ」
クェス 「逃げないんだ」
ほむら 「ええ」
クェス 「もう一つ条件を飲んだら協力してあげる」
23:
ほむら 「シャア・アズナブル……」
クェス 「ええ、大佐……私はあの人のことをそう呼んでいるんだけど、風見野の町には居なかった。
 キュゥべえと契約した時の願いが叶ったのならこの近くに居る筈なのに」
ほむら 「分ったわ、ワルブルギスの夜を倒したら協力してあげる。見滝原の町を探しましょう」
クェス 「そう来なくっちゃ!」
24:
―見滝原市 郊外―
ほむら (遂にこの日が来た……)
クェス 「あれがワルブルギスの夜……」
クェス (あの大きさ……アルパ・アジール以上じゃない?)
ほむら 「手筈通り行くわよ」
クェス 「ええ」
ほむら (今度こそ決着を付けてやる!)
クェス (大佐に会うまで絶対に生き延びて見せるんだから!)
25:
クェス 「落っちろ! 落っちろ! 落っちろ!」
ビーッ!
ほむら (クェスの武器、ファンネルっていったわね)
ほむら (一対多に向いた武器を持つクェスが使い魔を撃破、私は銃火器や爆弾でワルブルギスの夜本体を攻撃)
使い魔 「フフフフフ!」
クェス 「子供は嫌いだ! 図々しいから!」
ビーッ、ビビーッ!
ほむら (これまでの時間軸では出会わなかったクェスというイレギュラーとの共闘。
 それでも連携はうまくいっている。でも……)
ワルブルギスの夜 「ハーッ、ハハハハハ!」
ほむら (ダメージは通っているのかしら?)
26:
―見滝原市 避難所付近―
まどか 「ありがとう、ママ」
まどか (ママが私を送り出してくれた……)
まどか (マミさんもさやかちゃんも杏子ちゃんも死んじゃった。それでもほむらちゃんは今、
 ワルブルギスの夜を相手に戦っている)
まどか (私は、ほむらちゃんのところに行く! そして私は……)
まどか (丁度タクシーが来た。あれに乗せて貰おう。……こっちが手を振っているのに気付いてくれるかな?)
キキーッ
まどか (止まってくれた!)
シャア 「お嬢さん、どちらまで?」
まどか 「見滝原市の○○駅までお願いします。詳しい場所は近くまで来たら説明します」
シャア 「そちらはスーパーセルが近づいている。危ないぞ」
まどか 「でもどうしても行かなくちゃいけないんです」
シャア 「もう一度言う。危険だ。それに……」
シャア 「どうしてもと言うならそのペットだけでも置いていくんだな」
まどか 「ペットって……おじさん、キュゥべえが見えるんですか?」
シャア 「キュベレイ?」
QB 「キュベレイじゃないよ、僕はキュゥべえ」
シャア 「喋っただと!」
QB 「驚いたのは僕の方だよ。成人男子で僕が見えるとは珍しいよ」
27:
まどか 「乗せていってくれるんですか! 有難うございます! 私はまどか、鹿目まどかって言います」
シャア 「自己紹介が遅れた。私はシャア・アズナブル。ご覧の通り……タクシー運転手だ」
28:
―見滝原市 車道 タクシー車内―
シャア 「魔法少女か……にわかには信じがたいが……」
まどか 「信じられないのも無理は無いと思います……あ!」
シャア 「どうした?」
まどか 「あれです! あれがきっとワルブルギスの夜です!」
シャア 「見える、私にも見えるぞ!」
シャア (あの逆さになって浮遊するジオングみたいな物が魔女だというのか!?)
警察官A 「そこの赤いオーリス、止まりなさい!」
シャア 「パトカーだと!?」
シャア 「チイィ! お嬢さん、しっかり捕まってろ、飛ばすぞ!」
まどか 「はい!」
バラバラバラバラ
まどか 「シャアさん、前、前!」
シャア 「瓦礫か!」
まどか 「キャアアアアア!」
シャア 「当たらなければどうということはない!」
29:
警察官A 「何なんだあの赤いタクシー!」
警察官B 「飛んで来る瓦礫を避けながら走行している。人間業じゃない……」
パリーン!
警察官A 「くそ! パトカーのフロントガラスが!」
警察官B 「追跡は無理か……」
30:
―見滝原市 市内中心部―
ワルブルギスの夜 「ハーッハハハハハ!」
クェス 「ハァ、ハァ、ハア」
クェス (この魔女、強過ぎる!)
ほむら 「クッ……」
ほむら (この時間軸でもまどかを救えないの……?)
まどか 「ほむらちゃん!」
ほむら 「まどか!? どうしてここに?」
シャア 「クェス!? クェスなのか?」
クェス 「大佐……? 大佐ァ!」
シャア 「クェス! 生きていたのか!?」
クェス 「大佐……グスッ、会いたかった……」
31:
まどか (女の子が運転手さんに抱きついて泣いてる……)
ほむら 「失礼、感動の再会に水を指すようで悪いけど」
シャア 「落ち着いたか、クェス?」
クェス 「うん……。良かった、本当に良かった……」
ほむら (この男がシャア・アズナブル……)
まどか 「ほむらちゃん」
ほむら 「まどか! どうして来たの!?」
まどか 「ごめんね、でももういいの。私……」
まどか 「魔法少女になる!」
35:
ほむら 「駄目よ!」
クェス 「どうして? もう私達だけじゃキツイよ。戦力が増えるなら――」
ほむら 「駄目ッ!」
まどか 「でもこのままじゃ街が、みんなが!」
ほむら 「聞いてッ!」
まどか 「……」
ほむら 「あなたが仮に魔法少女になっても、その後あなたは魔女化してしまうのよ。
 ワルブルギスの夜以上の魔女に。そうなればもう誰も止められない。この星が滅びるのよ」
まどか 「私、もう願い事を決めたの。その願いが叶えばきっと私は地球を滅ぼしたりしないよ」
ほむら 「その後あなたはどうなるの?」
まどか 「え?」
ほむら 「あなた自身はどうなるの」
まどか 「それは……」
ほむら 「あなたが助からないなら私にとっては無意味だわ」
まどか 「私はほむらちゃんのこれまでの頑張りが無駄にならない願いを考えたから」
まどか 「その祈りは……全ての魔女を生まれる前に消し去りたい」
ほむら 「そんな願いが……叶うの……?」
QB 「まどか程の資質があれば可能だろうね」
ほむら 「でもその後まどかはどうなるの?」
QB 「人間が叶えるにはあまりに大きすぎる願いだからね。願いを叶えた後、まどかがどうなるかは
 僕にも分からないよ」
ほむら (こいつがはっきりした回答を示さない時は何かはぐらかしたいことがある時。
 何を企んでいる、インキュベーター?)
クェス 「他に方法は無いの!? 猫ちゃん!」
QB 「少し前なら無いと答えるところだけど……実はワルブルギスの夜を倒して尚且つ鹿目まどかを
 助ける方法がある」
36:
ほむら 「その方法は!」
QB 「鹿目まどかがワルプルギスの夜を倒した後に、別の魔法少女がまどがを元の人間に戻すように祈るんだ」
まどか 「そんなことしたらその人に悪いよ! 私の為に祈った人は魔法少女になってしまうんだよ」
ほむら (そうね、私も大分前に思いついたけどなかなか実現出来なかった方法……)
シャア 「キュゥべえと言ったな。お前に聞きたいことがある」
QB 「何だい?」
シャア 「さっきお前は『少し前なら無いと答える』と言った。その方法が今、可能になった理由は何だ?」
シャア (まさかとは思うが……)
QB 「まどかを魔法少女から人間に戻すには莫大な資質を持った魔法少女の祈りが必要だ。
 そして全くの予想外なんだけど、もの凄い魔法少女の資質を持った人物が見つかったんだ」
ほむら 「彼女はどこにいるの?」
まどか 「駄目だよほむらちゃん」
クェス 「だからって今から探しに行っても……近くに居るの?」
QB 「探す必要は無い、君達の目の前に居るじゃないか」
一同 「……」
シャア 「私か? そういうことか……」
まどか、ほむら、クェス 「ええっ!?」
37:
QB 「まどか程ではないが、キミの魔法少女の資質もまた破格と言っていい」
シャア 「私に魔法少女の資質が……」
QB 「そうさ。第二次性長期の少女が最も魔法少女に向いているが、因果の量もまた魔法少女の重要な資質だ。
 そしてキミの持つ因果の量は一国の王や救世主を遥かに凌ぐ。キミもまた時間を繰り返して来たのかい?」
シャア 「私にその認識はない」
QB 「確かに、キミは只の人間だったね。ならキミを別の時間軸に移動させた魔法少女が居たのかもしれない」
クェス 「私が……」
シャア 「クェス……まさかお前が!」
クェス 「そう、私はあなたを救いたかったの!」
QB 「クェスがシャアを何度も時間移動させたのかい?」
クェス 「いいえ、一回だけよ」
QB 「それでは彼の膨大な因果の量を説明出来ない」
ほむら 「そんなに凄い量なの?」
QB 「ああ、クェスの話が本当なら彼の持つ因果の量は……。そうだね、この星の全ての人類の生死に
 係わることでもしないと得られない程の量なんだ」
まどか 「シャアさん、前に居た世界で何をしたんですか?」
シャア 「……」
38:
クェス 「魔法少女を普通の人間に戻すなら大佐じゃなくてもいいじゃない?」
QB 「そうはいかないんだ。魔法少女を普通の人間に戻すのにもまたエネルギーが必要なんだ。そしてそれは
 魔法少女の資質の大きさ、すなわち魔女化の際に発生するエネルギーの量に比例する」
QB 「もしまどかを人間に戻せる者が居るとすれば、それはシャアだけだろうね」
クェス 「だからって……大佐が……」
クェス (モビルスーツかモビルアーマーでもあればあんな魔女なんて……)
シャア 「キュゥべえといったな。お前の目的は何だ? お前の企みが分かるまでは魔法少女とやらにはならんぞ」
QB 「それなら見せてあげようか。僕達インキュベーターと人類が共に歩んで来た歴史を。さっきようやく
 未来のボクとコンタクトが取れてね。キミの時代のボク達のことも見せてあげるよ」
シャア 「見せてもらおうか」
39:
QB 「ボク達はね、有史以前からキミ達の文明に干渉してきた。数え切れない程大勢の少女が
 インキュベーターと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねていった……。
 祈りから生まれ、呪いで終わる。これまで数多の魔法少女達が繰り返してきたサイクルだ」
―宇宙世紀―
―サイド3 ムンゾ自治共和国 首都(後のズムシティ)大通り―
―公用車内―
ドズル 「何も殴らなくても……」
サスロ 「その見た目に似合わない人の良さは止めろ。これからの政局は熾烈な殺し合いだ。そんな風では――」
ドゴオオオッ!
護衛A 「車が爆発したぞ!」
護衛B 「テロか!?」
護衛C 「何をしている、消火急げ!」
ドズル (痛い……く、苦しい……お、俺は死ぬのか……あ……あれは)
QB 「……」
49:
―サイド3 ムンゾ自治共和国 首都(後のズムシティ)ザビ家邸宅―
QB 「せっかく願いが叶ったのに何故そんなに悲しそうにしているんだい?」
ドズル 「キュゥべえ、俺はお前に借りが出来た。助けてくれたことにも感謝してる。だが……それでも……」
ドズル (あの時俺は「助けて」とキュゥべえに呼びかけ、キュゥべえは願いを叶えた。誰も怪しまなかった。
 俺が助かったのは人一倍身体が頑丈だったからだと周囲は思い込んだ)
ドスル (それはいい。そんなことより何故、あの時サスロ兄も助けてくれるように頼まなかったのか!)
ドズル 「すまん、サスロ兄。不甲斐無い弟を許してくれ……ウウ、ウウウ……」
41:
―総帥府―
ギレン 「キシリア、サスロの冥福でも祈ってやれ」
キシリア 「……」
ギレン 「それからもう一つ、保安隊長のお前に伝えておこう」
ギレン 「最近市内にスカートを穿いて無数の紐を扱う大男の目撃情報がある。特に被害は出てないようだ。
 寧ろ人助けをしているそうだが、念の為に警戒しろ」
キシリア 「分かりました」
42:
―総帥府―
ドズル 「本気なのか、兄貴!?」
ギレン 「ああ、ペーネミュンデ機関にてザビ家が直々にスポンサーとなって創らせる」
ドズル 「しかし、あれは都市伝説のような物だ」
ギレン 「事実かどうかは重要ではない。多くの人を救ってきた紐使いの大男の話を民衆が信じている」
ギレン 「見返りを求めず、名前も名乗らず人々を救う救世主。彼を正しいスペースノイドのあり方として
 子供向けアニメの主人公にする」
ドズル 「それは考え直した方がいい。噂ではその男はコルセットをつけてミニスカートを穿いているのだろう?」
ドスル 「そいつは正義の味方かもしれんが一歩間違えば『けっ○う仮面』みたいなもんだ。止めたほうがいい」
ギレン 「お前、詳しいな」
ドズル 「ま……まあ、俺も噂に聞いただけだが……」
ギレン 「そうか……だが、ドズルの言うことも尤もだ」
ドズル (ふう、これで兄貴も思い直してくれたか……)
ギレン 「ドズルの言う通り、無理に男にする必要性は無い。アニメ化に際して主人公は美少女にしよう」
ドズル (ええっ!)
ドズル 「兄貴!」
ギレン 「マンガやアニメは時として強力なプロパガンタと成り得る。これから忙しくなるぞ、フッフッフッ」
51:
―総帥府―
ドズル 「兄貴」
ギレン 「どうしたドズル?」
ドズル 「あのアニメ、兄貴は子供向けを創ると言っていたが話が重くないか?」
ギレン 「あがって来たプロットが面白かったので採用したのだ」
ギレン 「交通事故で両親を失い独り生き残った魔法少女が孤独に苛まれながらも正義を貫き悪と戦う。
 その中で徐々に明らかになるヒロインの真実」
ギレン 「女児向けでない、大人を唸らせる魔法少女物を創ってもいいのではないかとな。その為に深夜枠で放送した」
ドズル 「受けるだろうか?」
ギレン 「まあ見ていろ」
52:
―『魔法少女マミ☆マギカ』ムンゾ共和国文化庁メディア芸術祭大賞受賞―
―『魔法少女マミ☆マギカ』ムンゾアカデミー賞作品賞受賞―
―今年のスペースノイド流行語大賞に「ティロ・フィナーレ!」―
ギレン 「フッフッフッ、圧倒的ではないか、我がマミさんは」
ギレン 「共和国への聖地巡礼による観光収入、コンテンツやグッズの売り上げ、そして何よりスポンサーである
 ザビ家のイメージアップ……私の眼に狂いはなかった。ところでドズルよ……」
ギレン 「元ネタとなった紐使いの男に感謝せねばな」
ドズル 「……兄貴のその言葉を聞けばそいつも喜ぶだろう」
ギレン 「そろそろ作戦を第二段階に移行する」
ドズル 「第二段階?」
ギレン 「『アイドルマミさん』プロジェクトだ」
53:
ギレン 「ゲーム『アイドルマミスター』はシングル全5作品がオリコン・シングル週間ランキングのTOP10入りを果たす
 という快挙を成し遂げた」
ギレン 「また『劇場版マミライブ』は特典付き前売券第二弾が即日完売する程の人気を博している」
ギレン 「にも拘らず地球圏全体を対象としたアニメ、マンガ、映画、ゲームの大賞を受賞する作品は
 悉く地球で創られた物である!」
ギレン 「これはアースノイドによるスペースノイドへの差別に他ならない!」
ギレン 「我ら優良種たるスペースノイドがコンテンツを創り続けてこそ、メディア芸術の衰退を免れるのである!」
QB 「このギレンの演説から暫くしてサイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦に対し独立戦争を仕掛けた」
54:
―地球 北米大陸―
―ザク2S型コクピット内―
シャア 「ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。君は良き友人だったが、君の父上がいけないのだよ!
 ハハハハハ!」
55:
―ガウ攻撃空母内―
ガルマ 「シャア、謀ったな、シャア!」
ガルマ (このまま私は死ぬのか、友人と思っていたシャアに騙され、敵に背後を取られたばかりに……)
ガルマ 「私とてザビ家の男だ、無駄死にはしない! ガウを木馬にぶつける」
QB 「ボクと契約すればどんな願いでも叶うよ」
ガルマ 「誰だ? 今は話しかけるな。早く脱出しろ! 私は木馬に一矢報いる!」
QB 「そんなこと言わずにボクの方を向いて話を聞いてよ」
56:
―ガウ攻撃空母内―
QB (このままでは撃墜される)
QB 「ガルマ、早く! 願い事を決めるんだ!」
ガルマ 「ジオン公国に栄光あれェェェェ!」
QB 「それがキミの願――」
ドゴオオオオオオン
ザビ家の末弟ガルマ・ザビの死が急報された 。
時に、ジオン公国の公王、すなわちガルマの父デギン・ザビは、使者の前でその杖を落としたという。
57:
―ホワイトベース内―
ラル 「……間違いない、アルテイシア様に違いないな。私をお忘れか?あなたの父上ジオン・ダイクン様に
 御仕えしたジンバ・ラルの息子ランバ・ラルですぞ」
セイラ 「アルテイシアと知ってなぜ剣を向けるか?」
ラル 「しかし、姫様こそ何故魔法少女の服を?」
セイラ 「それは貴方も同じでしょう、ランバ・ラル」
ラル 「……兎も角、ここを脱出しましょう。私が出引き致します」
セイラ 「ジオンの捕虜になれと言うのか?」
ラル 「いいえ、違います。この木馬を落とした後、姫様を安全な場所に匿います」
セイラ 「ザビ家に仕える貴方の言葉、最早信じられません、退きなさい、ランバ・ラル」
58:
ラル 「ウ、……ガハッ……姫様、お強くなられましたな……」
セイラ 「……」
ラル 「姫様はどんな願いで魔法少女になられたのですか?」
セイラ 「ルシファー、覚えてる?」
ラル 「はい」
セイラ 「子供の頃、車に撥ねられたルシファーを助けたい一心でキュゥべえと契約したの」
ラル 「まさか、猫を助ける為に!?」
セイラ 「ええ、あの時契約していなければ、父が死んだ時に生き還らせることも、母と一緒にサイド3を脱出することも
 出来たでしょうね」
QB 「まるでボクと契約した時期を失敗したと言いたげだね」
セイラ 「ルシファーには悪いけど正直後悔しているわ。キュゥべえ、私にとって貴方は早過ぎて……」
QB 「ボクにとってキミは突然過ぎたんだ」
ラル (魔法少女となった姫様に行く手を阻まれるとは……。バチが当たったのだ。
 主家を見限ったバチが当たったのだ)
ダッ!
セイラ 「ランバ・ラル、どこへ!」
59:
―ホワイトベース内―
―第二ブリッジ―
ラル (ここからならハモンの居るギャロップと通信出来る)
ラル 「ハモンと連絡は?」
ジオン兵A 「周波数合わせました」
ラル 「お前達は退け。作戦は失敗だ」
60:
―ホワイトベース内―
―第二ブリッジ―
ラル 「ハモン、すまぬ。作戦を中止しろ。この船にはアルテイシア様が魔法――」
ドガアアアアン
ラル 「うおっ!」
ラル 「……またモビルスーツのガンダムか」
ラル (ここ最近、砂漠での任務ばかりでグリーフシードの確保が思うように出来なかった。
 人の少ない場所は魔女もまた少ない。この重傷を治癒魔法で治してもソウルジェムの濁りを取る術は最早無い)
ラル (せめて自らの引き際は……この手で……)
ラル 「目に焼き付けて置くがいい。魔法少女になるとは……」
ラル 「こういうことだあああ!」
ドゴオオオン
アムロ 「ランバ・ラルが……ランバ・ラルが死んだんだぞ!」
セイラ 「ラル……」
64:
―ホワイトベース―
―アムロ個室―
アムロ (ランバ・ラルが死んだ)
アムロ (ランバ・ラルにハモン。決して悪い人ではなかった……。一緒に居た人達も、それなのに……)
65:
―アムロ回想―
―砂漠にあるレストラン―
アムロ (ホワイトべースを脱走したが、行き先に当てなんてない。これからどうすればいい?)
ラル 「ほう」
ハモン 「どうしました?」
ラル 「キュウべえの奴、カウンターの方に行きおった。どうやらあの小僧に興味があるらしい」
ハモン 「私にも見えたら、星を見ているよりずっと面白いのでしょうね」
QB 「ねえ」
アムロ 「……」
QB 「キミはボクが見える筈だよ」
アムロ 「……」
QB 「ボクの話を聞いてよ」
アムロ (幻聴が聞こえる……)
ラル 「小僧!」 
アムロ 「え! ハイ!?」
ラル 「そこのカウンターを見てみろ」
アムロ 「?」
QB 「初めまして、ボクはキュウべえ!」
アムロ (こいつ……動くぞ!?)
66:
QB 「――という訳さ」
アムロ 「あの、何ていうか僕には受けられないよ」
QB 「どうしてだい?」
アムロ 「君と契約する理由がないよ」
ラル 「フッ、ハハハハハッ。キュゥべえ、一本やられたな、この小僧に」
QB 「ボクがキミのことを気に入った。それじゃ理由にならないかな?」
アムロ 「そんな……」
ラル 「小僧、キュゥべえに気に入られるなぞ余程の事だぞ」
クランプ 「まったくだ。遠慮したらバチが当たる(俺には見えないけど)」
ジオン兵A 「肖りたいくらいだよ、坊主(俺には見えないけど)」
ジオン兵達 「ウハハハハッ(見えないけど)」
ハモン 「私達の中でもキュゥべえが見えるのはこの人だけなの。何でも願い事が叶うなんて貴方は運がいいわ」
QB 「みんなもこういっているよ。ねえ、僕と契約をして……」
QB 「魔法少女になってよ!」
アムロ 「僕、少女じゃありませんし」
ラル 「気に入ったぞ小僧。それだけはっきり物を言うとはな」
ラル 「何でも願い事を、という訳にはいかんがわしから飯を奢らせてもらうよ。ん?」
76:
―ホワイトベース―
―アムロ個室―
アムロ (ランバ・ラル……)
QB 「そんなに気になるならボクと契約すればラルを生き返らせることが出来るよ」
アムロ 「契約してどうしろっていうんだ!? 敵だったのに!」
QB 「敵だと言うのなら何故死んだら悲しむんだい?」
アムロ 「それは……」
QB 「キミが殺したようなものなのに相手が死んだら後悔するなんて訳が分からないよ」
アムロ 「僕は殺したかったんじゃない。生き延びたかっただけだ」
QB 「生き延びたいのなら尚更契約した方がいい。魔法少女になれば普通の人間とは比較にならない位
 身体能力が増すんだ」
68:
アムロ 「契約はしない」
QB 「どうしてだい?」
アムロ 「ランバ・ラルが最期にあんな死に方をしたのは、きっと僕やホワイトベースのみんなにお前と契約して
 欲しくなかったからだ」
QB 「そうだろうね。ジオンにしてみれば連邦に魔法少女が増えるのは本意ではないだろう」
アムロ 「そういうことを言ってるんじゃないんだ。砂漠のレストランで会った時にあの人は僕やフラウ・ボゥを
 殺さなかった」
アムロ 「損得勘定じゃない。理由がある筈だ。それが分かるまではお前とは契約しない」
QB 「キミがラルに敵愾心や恨みがある訳では無いことは分った。ならば……」
QB 「ボクの同志になればいい。そうすればラルも喜ぶ」
アムロ 「正気か!?」
QB 「キミのような人間を野放しには出来ないんだ」
69:
ブライト 「アムロ、居るか?」
アムロ (ブライトさん?)
アムロ 「キュゥべえ、すまない。またにしてくれ」
QB 「分ったよ。契約したくなったらいつでも呼んでね。ボクは待ってるから」
70:
―地球 オデッサ―
―ビッグトレー艦橋―
レビル (遂にここまできた)
レビル (このオデッサ作戦が欧州戦線はおろかこの戦争そのものの趨勢を決めるのだ)
レビル (ここまで来るのに連邦がどれだけ苦渋を嘗め続けてきたことか)
レビル (この欧州戦線においても……)
71:
―レビル回想―
―地球 北ヨーロッパ戦線―
レビル 「古代ペルシャはエジプトとの戦いにおいて、エジプト人が信奉する猫を盾に括り付けて戦い、
 戦意を喪失したエジプトは敗れたという」
レビル 「ならば同じ手を使わせて貰おう」
72:
―地球 ジオン軍主力本部―
オペレーター 「偵察機からの映像、来ました」
ジオン司令官 「何と破廉恥な……!」
マ・クベ 「これは……いかにも連邦らしい、姑息な手だ」
―地球連邦軍 61式痛戦車―
連邦の主力戦車である61式戦車に、ジオン公国に多くのファンを持つ『魔法少女マミ☆マギカ』のヒロインの
イラストを塗装した戦車。ジオン軍の戦意を殺ぐことを目的とした。
マ・クベ 「全軍に告げよ。『敵は重大な著作権違反を犯した。我らが女神を無断で自分達の物とした連邦に
  鉄槌を下せ』とな」
73:
―Zeon War Propaganda Agency(ジオン戦争宣伝機関)―
アナウンサー 「地球制圧軍指令部、発表!」
アナウンサー 「我が欧州方面軍は、本日、ヨーロッパ北部地域において敵主力部隊に決定的痛打を浴びせた。
  これにより、ヨーロッパの解放は最早眼前へと迫ったのだ!」
74:
―地球 オデッサ―
―ビッグトレー艦橋―
レビル (あの敗戦は大きな痛手だった)
レビル (あの時の敗北により連邦北部欧州方面軍は機甲部隊の半数を失った)
レビル (しかし……後悔は無い)
レビル (作戦開始前に閲覧式で見たマミさん仕様の61式戦車がズラリと並ぶ姿は壮観だった。
 あれを見られただけでも作戦を遂行した甲斐があった)
レビル (ルウム戦役で捕虜になっている間に見せられたのがきっかけでこの歳になってアニメにハマるとはな)
レビル (ザビ家がスポンサーという理由で地球では『魔法少女マミ☆マギカ』も『アイドルマミスター』も
 『マミライブ』も放送されない)
レビル (早くこの戦いを終わらせなければ……)
88:
推敲しているのに誤字の見落としに気付かずに投稿してしまう……
―地球 オデッサ―
―オデッサ基地本部―
プニ
マ・クベ 「いい触り心地だ」
ウラガン 「そ、それは劇場版に登場した『バスタオルマミさん』のフィギュアではありませんか!?」
マ・クベ 「ああ、そうだ」
ウラガン 「しかし、今一瞬だけ凹んだような気が……」
マ・クベ 「胸の部分をプニプニ素材にした」
ウラガン 「既製品でそこまでのリアリティを追求するとは、製造した会社の拘りですな」
マ・クベ 「ウラガン、私の話を聞いていなかったのか?」
ウラガン 「ハッ……申し訳ありません。……何のことでしょうか?」
マ・クベ 「私は『プニプニ素材に"した"』と言ったのだ」
ウラガン 「まさか、ご自身で魔改造を!?」
マ・クベ 「そう、私のオリジナルマミさんだ。ハハハ」
マ・クベ (レビルめ、今頃このオデッサを攻略すると息巻いているだろうが、所詮貴様は痛戦車を造る
  位しか思いつけない無能だ)
マ・クベ (無能な貴様に有効なマミさんの使い方を教えてやるとしよう)
80:
―地球 オデッサ―
―ビッグトレー艦橋―
エルラン 「……」
アムロ 「あなたにも事情があると仰りたいんでしょう? けれど違いますよ。あなたみたいな方のおかげで
 何十人となく無駄死にをしていった人がいるんです。分かりますか? あなたみたいな人のおかげで!」
エルラン 「お前ごとき子供に何が分かる!」
アムロ 「分かりませんよ! 何なんですかこれは!」
初回特典付映像ディスク
フィギュア
フィルムコマ
台本
バスタオル
マグカップ
タペストリー
ポスター
その他諸々グッズ
アムロ 「こんなもの欲しさにあなたは連邦を裏切ったんですか!?」
エルラン 「こんなものとは何だ!? アニメを馬鹿にするのか!」
アムロ 「あなた将軍ですよね? 普通に買えばいいじゃないですか。」
エルラン 「これらは全てスタッフや声優のサイン入りだ。この台本を見てみろ。サインといっしょに
  きちんと『エルラン様江』と書いてあるだろう。金があった処で連邦に居る限り手に入らん物ばかりだ」
アムロ 「……」
エルラン 「こら、勝手に触るな!」
バスタオルマミさんフィギュア(マ改造済み)
アムロ 「こんなもの!」
ベシッ!
エルラン 「アアッ! 何をする!」
連邦士官A 「君、あとは軍事裁判に任せよう」
アムロ 「は、はい」
エルラン 「貴様、待て! この、離せ、離さんか! 私は将軍だぞ!」
連邦士官A 「将軍、あなたには作戦終了まで独房に入って頂きます」
81:
―宇宙―
―グワジン 艦長室―
キシリア 「開戦直前でエルランの内通が連邦に露見、エルランがこちらに寝返ることを前提に布陣していた
  我が軍は防衛線を突破され、オデッサは連邦の手に墜ちた」
キシリア 「それでお前はおめおめと逃げ帰って来たのか」
マ・クベ 「は、誠に申し訳ありません、キシリア様。……恐れながらエルランの内通が連邦に露見したのは
  彼自身の失態です。私はエルランの内通自体は成功させました」
キシリア 「事情は分かっているが戦果だけが問題なのでな」
マ・クベ 「……」
キシリア 「暫く休むがいい。ホワイトベースといったな。あの艦はシャアに相手をさせよう」
マ・クベ 「!」
マ・クベ 「シャアはガルマ様をお守り出来なかった責任を負われ予備役に入れられたのでは?」
キシリア 「ホワイトベースの部隊とあのガンダムというモビルスーツ。ひょっとしたら連中は
  ニュータイプかもしれん。もし敵がニュータイプならニュータイプの可能性がある者を
  ぶつけるしかない。尤も誰かがガンダムを片付けていればその必要もなかったのだかな」
キシリア 「ご苦労だった、マ・クベ。お前には荷が重過ぎたようだ」
マ・クベ 「お待ち下さい、キシリア様! 私には秘策がございます。オデッサを失った失態を補って余りある
  程の秘策が。使い方次第では連邦を転覆させ、この戦争に勝利することも可能でしょう」
キシリア 「一応聞いておこう」
マ・クベ 「単刀直入に申し上げます」
マ・クベ 「私と契約して魔法少女になって頂けないでしょうか?」
82:
キシリア 「……そういう冗談は総統相手に使うのだな。下がれ」
マ・クベ 「下がりませぬ」
キシリア 「下がれと言っている!」
バシッ!
マ・クベ 「グッ!」
マ・クベ 「……私にも面子がございます!」
ギュルン
キシリア (こいつ、眼が赤くなった!)
ギュルルルウ
キシリア (耳が伸びただと!)
キシリア 「貴様、何者だ!?」
マ・クベ 「ご安心下さい、キシリア様。私はキシリア様に危害を加えるつもりはございません」
キシリア (こいつ、人ではないのか……?)
マ・クベ 「ではお望み通り私の正体をお話しましょう」
マ・クベ 「私は人に似せた姿を与えられし契約の獣。『ヒュー『マ』ノイド・イン『キュベー』ター』」
マ・クベ 「略して『マキュべえ』です」
90:
マ・クベ 「私どもインキュベーターは知的生命体の感情をエネルギーに変換する技術を開発しました。
  しかし当の我々に感情がなかったので我々は感情を持つ生命体を探して宇宙を探索し、遂に人類を発見したのです。
  私どもは感情エネルギーの採取対象となった人間に対し、我々の科学力を持って願い事を何でも一つ叶えるという
  契約を古来より交わしてきました」
キシリア 「つまりお前達は宇宙人で、エネルギー問題を解消する為に人類と共存してきたというのか?」
マ・クベ 「共存ではありません」
キシリア 「何?」
マ・クベ 「失礼ですが共存という対等な関係ではないということです」
キシリア 「何だと……」
マ・クベ 「人類の歴史においても同じようなことがいくらでも起きているでしょう。この戦争も元を辿れば地球に住む人間
  による宇宙移民者への圧政が根底にあります。総統閣下はそれに乗っかって戦争を始められただけのことです」
キシリア 「お前達は支配する側だとでも申すか?」
マ・クベ 「少なくともアースノイドがスペースノイドに対するよりも我々は余程人類に譲歩しております。契約という
  双方の合意の上で、契約者の願いを叶えるという見返りも込みで我々は人類を魔法少女にしているのです」
キシリア 「この私に対して大した物言いだな」
マ・クベ 「申し訳ありません。今の話はインキュベーターの総意にて私個人の意見ではありません。何卒ご容赦を」
91:
キシリア 「いいでしょう。さっきから言っている契約について具体的に話しなさい」
マ・クベ 「はい。私どもインキュベーターは資質のある者と交渉し、魔法少女の契約を交わします。この契約を結んだ
  者は魔法少女となり魔女と戦う運命を課せられますが、その代わり私どもは契約者の願い事を一つだけ叶えます」
キシリア (魔女という新しい言葉が出てきたな……)
キシリア 「どのような願いでも叶うのか?」
マ・クベ 「はい、その者の魔法少女の資質に見合った願いであれば」
キシリア 「もし私が『この戦争でジオンを勝たせたい』と願ったらその願いは叶うか?」
マ・クベ 「キシリア様の魔法少女の資質は高いですが、その願いはあまりにも大きすぎます。また願い事が抽象的過ぎると
  お望みの願いとは若干違った形で願い事が叶うことがあります」
キシリア 「もう少し具体的に話せ」
マ・クベ 「例えば契約時に『自分が生きる意味を知りたい』と願い事をしたとしましょう。その場合、契約した者に
  具体的にその者の生きる意味が提示されるのではなく、生きた結果を前もって知る、即ち予知能力が与えられる
  といったことが起こるのです」
キシリア 「ただ『戦争に勝つ』ではお前達の解釈次第で望みとは違う物が与えられるということか?」
マ・クベ 「その通りです」
92:
キシリア 「魔女と戦う運命と言ったな。魔女とは何だ?」
マ・クベ 「魔女とは呪いから生まれ災厄を振りまく物です。原因不明の自殺や行方不明は魔女が原因で起きることが
  少なくありません。魔女に唯一対抗出来るのが魔法少女です」
キシリア 「普通の人間では魔女を倒せないのか?」
マ・クベ 「はい。魔女は結界を張り、その中で行動します。結界を出入り出来るのは魔法少女だけです」
キシリア 「魔法少女が普通の人間を結界に手引きして戦わせることは出来ないか?」
マ・クベ 「手引きするそれ自体は可能ですが、戦わせることは難しいかと」
キシリア 「何故だ?」
マ・クベ 「第一に魔女を視認出来るのは魔法少女の資質がある者のみです。
  第二に魔女には『魔女の口付け』という人を操る能力があります。魔法少女の資質が無いものは真っ先に
  その餌食になります。
  第三に魔法少女になった者は身体能力が大きく上がり、魔法を使えるようになります。だからこそ戦えるのです。
  仮に資質があるものが未契約のまま戦っても勝つことは難しいでしょう」
キシリア 「ほう……もし契約後に魔女退治を怠ったらどうなる?」
マ・クベ 「魔法少女の魔力はグリーフシードにて補充します。そのグリーフシードは魔女を倒さねば手に入りません。
  また、魔法少女になれば日常の生活においても魔力を少しずつ消費する為、定期的に魔女を狩る必要があります」 
キシリア (抜け道は無いということか。……いや、配下の者を魔法少女にして代わりに戦わせればいい)
93:
キシリア 「!」
マ・クべ 「この話をすると多くの者が今のキシリア様と同様の反応を致します。しかしそのリスクと引き換えに人類は
  願いが叶うという奇跡を手に入れて来たのです! 中には願いが叶ったことで歴史にその名を刻んだ者もおります」
キシリア 「旨い話は無いものだな……」
キシリア 「次の質問だ。お前達には感情が無いと言ったな」
マ・クベ 「はい」
キシリア 「お前を見ていると、とてもそうは見えんが」
マ・クベ 「私はインキュベーターの中では例外的に感情を持って生まれて来ました。私どもにとって感情とは極稀に
  発生する精神疾患の一種です」
マ・クベ 「それ故に私は他のインキュベーターとは違う任務を課せられました」
キシリア 「人の姿に化けて人間社会に溶け込むことか?」
マ・クベ 「流石はキシリア様、ご理解が早くて助かります」
マ・クベ 「これまで私は人間社会で暮らし、人類を観察してきました。このような辺境の惑星に飛ばされ、
  失礼ながら我々より遥かに文明の遅れた種族と生活する任務を与えられた時は、なまじ感情があるばかりに
  己が不幸を呪ったものです」
マ・クベ 「実際私は数年前にうつ病を患いました」
キシリア 「そうなのか!?」
キシリア (宇宙人も大変だ……)
94:
マ・クベ 「通常のインキュベーターには感情が無い為、うつ病はありません。その為我々はうつに対する研究も
  進んでおらず、万一うつになってそれが治らなければ処分されます」
マ・クベ 「なぜ自分は感情を持ってしまったのか? そのことで悩んで自殺さえ考えていたある日のこと」
マ・クベ 「偶々テレビを点けたらアニメが流れていたのです」
マ・クベ 「それは家族を交通事故で失い、独り生き残った魔法少女が孤独に震え、他人とは違う我が身に苦悩しながら
  人知れず悪と戦う姿でした」
マ・クベ 「そのアニメが凄く面白かったのです! 同時に私は気付いたのです! このアニメを観て泣いたり笑ったり
  出来るのは自分に感情があるからだと」
マ・クベ 「この星の科学技術は失礼ながら私どもより大分遅れてはいますが、アニメやマンガは実に素晴らしい。
  感情があるからこそフィギュアを愛でる楽しみも生まれました」
キシリア (もうやだこの宇宙人)
マ・クベ 「そしてキシリア様をお慕いする感情も……」
キシリア (何、もしかして今の……告白!?)
マ・クベ 「キシリア様がシャアを重用される時に芽生える感情……人の言葉で『嫉妬』という感情。
  それもまたキシリア様への忠義故に生まれるものと思えば……今はこの心の痛みすら愛おしい……」
95:
キシリア 「お前の話は分かった。突拍子も無い話だが信じぬ訳にもいくまい」
マ・クベ 「ありがたきお言葉」
キシリア 「だが何故オデッサ陥落前に話さなかった?」
マ・クベ 「私はオデッサで勝つつもりでした。それにオデッサを留守にしてキシリア様の元に駆けつける訳には
  参りませんでした。かといって通信回線でこの話をしても信じて頂けたかどうか。キシリア様もこうして
  目の前で私の姿をご覧になったからこそ私の話を信じて下さったのでしょう?」
キシリア 「そうだな」
マ・クベ 「では気を取り直して契――」
キシリア 「待て、他にも色々聞きたいことがある」
マ・クベ 「……何なりとお聞き下さい」
キシリア 「お前がジオンについた理由は何だ? 人間の感情エネルギーを収集することが目的なら連邦についても
  よかったであろう」
マ・クベ 「仰る通りです。恐れながら、総統が掲げるジオニズムなど私からすればマミさんのフィギュア1体分の
  価値もありません。私がジオンにいるのはたまたま最初に配属された場所がジオンの勢力圏だったからです」
キシリア 「人間同士の戦争の行方に興味は無いと」
マ・クベ 「もしキシリア様にお仕えしていなければそうお答えしたでしょう」
キシリア (今のマ・クベの答えには触れない方がいいな)
キシリア 「最後の質問だ。お前の本当の名前は『マキュべえ』と言ったな」
マ・クベ 「はい。『マキュべえ』若しくは間に『・』を入れて『マ・キュべえ』が本当の名です」
キシリア 「『マ・クベ』とは皆が間違えてそう呼んでいたということか?」
マ・クベ 「仰る通りです」
キシリア 「何故間違いを指摘しなかった?」
マ・クベ 「訂正を求める程、間違ってはいなかったので」
99:
―要塞ソロモン―
司令官室
ドズル 「兄貴、どういうことだ!」
ギレン 「ソロモンに送った援軍がビグザム1機なのを怒っているのか? あれは2、3個師団分の戦力になる」
ドズル 「それも腹が立ったが……それよりあの予告PVは何だ!」
ギレン 「お前も見たのか? 新章テレビシリーズの予告映像を。来年1月より放送スタートだ」
ドズル 「入浴シーンが入っていたぞ」
ギレン 「案ずることは無い。湯気で見えなかっただろう。もっともメディアで販売する時はその限りでは無いがな」
ドズル 「あのアニメはエロで視聴者を釣る作品では無かった筈だ」
ギレン 「そうだったな。変身シーンに裸になるという魔法少女モノのお約束すら封印した位だ」
ドズル 「では何故今更路線変更を? 子供が見たらどうする?」
ギレン 「古来、アニメやマンガが性の目覚めになることは少なくない。マミさんで目覚めるのなら大人になった時に
 いい思い出になる」
ドズル 「兄上は……マミに愛着は無いのか……」
ギレン 「私が嫌いな人間を『さん』付けで呼ぶと思うか?」
ドズル 「だったら何故!?」
ギレン 「聞くが良い、ドズル。私は優秀な人間は嫌いでは無い。事実、彼女はジオン十字勲章モノの働きをした」
ギレン 「戦争が始まってからも、彼女をCMに起用すれば戦時国債が売れ、志願兵が集まった」
ギレン 「占領地でテントや戦闘車両に彼女のイラストを入れればゲリラの被害が減った。連邦にも『マミ☆マギ』の
 ファンは多いからな」
ドズル (兄上も認めているのか)
ギレン 「だが、所詮は絵だ」
100:
ギレン 「彼女は、マミ・トモエは架空の人物に過ぎん」
ギレン 「架空の人間に憐憫を垂れないのが冷淡だと言うなら、それは二次元と三次元を混同した者の台詞だ」
ギレン 「お前はまさか、非実在のキャラの裸の絵を児童ポルノと言って私を責めるつもりではあるまいな?」
ドズル 「そのような真似をすれば国中の物笑いの種になる。ただ俺は『魔法少女マミ☆マギカ』が数年後に……」
ドズル 「ミネバと一緒に観られる作品であって欲しいだけだ」
ギレン 「数年先より目の前の心配をしろ。将来愛娘と一緒にアニメを観たければソロモンを守り切るのだな。
 これ以上の会話は連邦に傍受される恐れがある。通信を切るぞ」
ドズル 「ケッ……」
ドズル (兄上にとってあのアニメはプロパガンタと金儲けの道具に過ぎなかったのか……)
101:
―要塞ソロモン―
退避カプセル
ドズル 「ゼナは居るか?」
ゼナ 「貴方、行けないのですか?」
ドズル 「馬鹿を言うな」
ドズル (ゼナのこれ程までに不安な顔……)
ドズル 「ソロモンは落ちはせんて」
ゼナ 「では」
ドズル 「いや、脱出して姉上のグラナダへでも行ってくれ」
ゼナ 「……分かりました。……必ず私とミネバの為に帰って来ますよね。あなたは……」
ゼナ 「魔法少女なのですから!」
ドズル 「!」
ドズル 「知っていたのか……」
ゼナ 「夫婦ですもの。でも出来れば貴方の口から言って欲しかった」
ドズル 「すまん……」
ゼナ 「いいんです。無事帰って来てくれれば」
ドズル 「大丈夫、案ずるな。ミネバを頼む。強い子に育ててくれ、ゼナ」
ドズル 「そうだ、私は魔法少女だ。ザビ家の伝統を創る魔法少女だ。死にはせん」
ドズル 「行け、ゼナ。ミネバと共に!」
107:
―要塞ソロモン―
―ビグ・ザム コクピット内―
ドズル 「最早ソロモンは落ちるか……」
ドズル (将来ミネバと魔法少女ゴッコをするのが夢だった……。ミネバは魔法少女役で、きっと似合うであろう。
 私は……魔女の役が似合いだ)
ドズル (魔法少女となって長い年月の間……サスロ兄を救えなかった分、一人でも多くを救おうとしてお忍びで
 魔法少女に変身し、魔女から大勢の人間を救った。そして私自身もようやくにして我が子を得た)
ドズル (しかし、この戦争で一体何億の人間が死んだのか。私は数百人のサスロ兄を救うと同時に、何億人もの
 ミネバを殺したのだ。この私に人並みの幸せを手に入れる資格は無い……)
ドズル (……)
ドズル (連邦よ、ミネバの代わりとしては役不足だが、お前らには私のマミさんゴッコに付き合って貰うぞ。
 私の道連れに一人でも多く地獄に引きずりこんでやるわ!)
QB (ドズルのソウルジェムが濁り始めた……)
連邦MS兵A 「何機居る?」
連邦MS兵B 「待て、新型は一機だけのようだ」
ドズル 「ティロ・フィナーレ!」
ビビーッ!
連邦MS兵A 「うわぁーッ!」
連邦MS兵B 「ビ、ビームが。ば、化け物だぁーッ!」
ドゴオオオン!
ドズル 「ハハハハハ、見たか! ビグザムが量産の暁には……」
ドズル 「もう何も恐くない!」
109:
ティアンム 「艦砲射撃で撃ち落せ!」
ビビーッ! ビーッ! ビーッ!
ドズル 「絶対領域!」
バシュゥゥ!
ドズル 「ワハハハ、舐めるなよ。このビグザムは長距離ビームなど、どうということは無い」
スレッガー 「い、今、確かにビームを撥ね返した」
アムロ 「ミ、ミサイルしか効かないという訳か。このままにしておいたら損害が増えるだけだ!」
連邦兵A 「巨大モビルスーツ、強力な磁界を発生させています」
ティアンム 「ミサイルだ、ミサイルで迎撃だ!」
ドズル 「ダンサ・デル・マジックブレッド!(魔弾の舞踏)」
ドズル 「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!(無限の魔弾)」
アムロ 「あ、圧倒的だ……」
アムロ (全方位にビームをばら撒けるのか)
スレッガー 「悲しいけど、これ戦争なのよね」
ドズル 「ゼナ、ミネバ、無事に逃げおおせたか?」
ドズル (この戦争に負けたらゼナもミネバも戦争犯罪人の遺族として世間から白い目で見られるであろう)
ドズル (こうして命を投げ打っても、私は……愛する家族すら守れぬのか……)
QB (ドズルのソウルジェムが大分濁ってきた)
110:
―ソロモン宙域付近―
―脱出ロケット内―
ゼナ (ミネバを父無し子にしないで、貴方)
ゼナ (私がミネバを身篭ったと知った時の貴方の嬉しそうな姿、本当に幸せそうだった)
111:
―ゼナ回想―
―サイド3―
―ズムシティ ドスル自宅 リビング―
ゼナ 「これ以上はお体に触りますよ」
ドズル 「漸くにしてわしらに子が授かったのだ。今宵は……飲まずには居られん」
ゼナ 「明日もお仕事なのでしょう」
ドズル 「……」
ゼナ 「貴方……」
ドズル 「ヒック……身重で今は酒を飲めぬゼナの前で……俺ばかり飲むのもなんだな……」
ゼナ 「それは気にしなくてもいいんです」
ドスル 「酒の勢いを借りて言わせて貰うが……俺はお前に感謝している。ゼナは俺の願いを叶えてくれた。
 ……俺のプロポーズの言葉覚えてるか?」
ゼナ 「ええ、勿論。『このドズル・ザビの子を産んではくれまいか』でした」
ドズル 「そうだ。……こればかりは……ヒック……キュゥべえに頼むわけにもいかんからなあ。
 奴に頼みたいとも思わんが……ウィー……」
ゼナ (キュゥべえ?)
ドズル 「どうした、何故そんな顔で俺を見る? まあ、そう勘ぐるな。……そうだ、素面のゼナが
 興冷めせぬ様……面白いものを見せてやろう」
 
ゼナ 「面白いもの?」
ドズル 「そうだ」
ゼナ (立ち上がった? 一寸ふら付いているけど大丈夫かしら……)
ドズル 「変身!」
キュルルルルル、キン、キン、キン、キン、キン!
ゼナ 「え!?」
ポワワワワワ、シャキーン!
ゼナ 「貴方、その格好……」
ドズル 「ハハハハハ、何を隠そう俺は魔法少女だったのだ! 夢と希望を……叶える……存在だ。
 ザビ家の……皆には……内緒だ……ぞ。ウ……」
ドズル (酔いが……回っている時に……ステップなぞ踏ん……で、変……身……したから……)
クラクラ、ガクン、ズテン!
ゼナ 「貴方!?」
ドズル 「グゴー……、グゴー……」
ゼナ (眠ってるわ……)
112:
―ソロモン宙域付近―
―脱出ロケット内―
ゼナ (貴方は覚えてなかったけど、私はあの時貴方の秘密を知った。本当は貴方から真実を知らされていたけど、
 ……酔っ払って口が滑るのでは無くて、普通に教えて欲しかった……)
ゼナ (それでもあの時の言葉が本当なら、魔法少女が夢と希望を叶える存在なら……)
ゼナ (今度は貴方が私の願いを叶えて下さい)
ゼナ (どうか、生きて帰ってきて……)
ゼナ (私も貴方に話さないといけないことがあるの)
113:
―ゼナ回想―
―サイド3―
―ズムシティ 病院 ゼナ個室―
ドズル 「大丈夫だよ。きっと何とかなるって。諦めなければ、きっと、何時か……」
ゼナ 「諦めろって言われたのよ……」
ゼナ 「もう子供は諦めろって、先生に直々に言われたわ。今の医学じゃ無理だって」
ゼナ 「奇跡か魔法でも無い限り治らない……ごめんなさい……」
114:
ゼナ (あの人は奇跡も魔法もあるって言って部屋を飛び出していったけど……こればかりはどうにもならないわ)
ゼナ (窓のところに何かいる?)
QB 「……」
115:
ゼナ 「契約するわキュゥべえ、もう貴方だけが頼りなの」
QB 「返事が早くて助かるよ、ゼナ」
ゼナ 「出来るだけ自分達の手で解決したかったけど……」
QB 「ゼナ、君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?」
ゼナ 「夫と私の間に子供を授かりたいという願い、貴方に託すわ」
QB 「契約は成立だ」
116:
―サイド3―
―ズムシティ ドズル自宅 ゼナ自室―
ゼナ 「キュゥべえ!?」
QB 「何だい、ゼナ、ハァハァ」
ゼナ 「そのお腹、どうしたの?」
QB 「キミが願ったんじゃないか」
ゼナ (え、それって、まさか!?)
QB 「子供を授かりたいという願いをボクに託すっていったから、ボクはこうして……ウッ……プ」
ゼナ 「一寸だけ我慢して! 洗面器持って来るから!」
QB 「つわりって……こんなに辛いのかい……ウゲ、吐きそう……」
117:
ゼナ 「どうして貴方が妊娠するの?」
QB 「契約だからね」
ゼナ 「だから、どうして私が妊娠するようにしてくれなかったの?」
QB 「効率の問題さ」
QB 「キミを無事妊娠出来る母体にするよりも、ボクを妊娠出来る身体にする方が効率が良かったからさ」
ゼナ 「それじゃ貴方の子供じゃない!」
QB 「ボクは只の代理母だよ。ボクのお腹の子は間違いなくキミとドズルの子だ。DNA鑑定でもするかい?」
ゼナ 「それには及ばないわ……」
ゼナ 「でも、私が妊娠してないのにいきなり子供が居たらおかしくない?」
QB 「今のキミは魔法少女だ。ボクが出産するまでの間、魔法でお腹を膨らませて妊娠した振りをすること位、
 造作も無い筈だよ」
ゼナ 「そんな……酷い……」
QB 「ドズルといい、キミといい、折角願いが叶ったのにどうして泣くんだい? 訳が分からないよ」
121:
―サイド3―
―ズムシティ 病院 分娩室―
ゼナ (妊娠してないのに分娩室に入るなんて……陣痛が来る振りまでして……)
ゼナ (我が子を授かるのにまるで隠し事をしているようで嫌だわ)
QB 「ゼナ、それじゃあキミの赤ちゃんを産むよ。彼が諸々やってくれるから」
ゼナ 「貴方はキシリア義姉様の……?」
マ・クベ 「はい、キシリア様配下のマ・クベです。ゼナ様、この度はご懐妊おめでとうございます」
ゼナ (嫌味な言い方だわ)
マ・クベ 「私がゼナ様のお子を取り上げてご覧にいれます。人間の医者では勝手が違うので難しいでしょう」
QB 「安心して、ゼナ。彼も一応インキュベーターだ」
マ・クベ 「『一応』は余計だキュゥべえ」
QB 「彼女の不安を取り除く為に事実を言ったまでだ」
マ・クベ 「フン」
ゼナ (大丈夫かしら……)
122:
オギャア、オギャア、オギャア
マ・クベ 「おお可愛らしい女の子ですぞ、ご覧下さい、ゼナ様」 
ゼナ (この赤ちゃんが私の子……)
ゼナ (ごめんなさい、お母さんが産んであげられなくて)
マ・クべ 「ご苦労だったなキュゥべえ」
QB 「ラマーズ法は使うまでもなかったね」
マ・クべ 「当たり前だ。背中の穴から取り出すのに息む必要もないだろう」
マ・クベ 「ドズル様並びに病院の人間の記憶は我々で操作致します。ゼナ様、この度のこと、くれぐれも
  ご内密に。ザビ家のご一門が宇宙人の胎からお産まれになったと知れては一大事ですので」
ゼナ 「分かっています。恩に着ます」
マ・クベ 「そう言って頂けると私も嬉しいです。ま……孵卵器(インキュベーター)という名前からして
  こやつにはこうした仕事が似合いでしょう」
QB 「こやつとは随分な言い様だね。それにしてもこんなに効率の悪い繁殖方法で何十億人も個体数を
 増やすなんて、君達人類は凄いね」
ゼナ 「……」
123:
―ソロモン宙域付近―
―脱出ロケット内―
ゼナ (あの人が帰ってきたら全てを話そう)
ゼナ (たとえ私がお腹を痛めて産んだ子でなくても、ミネバは私達の子……)
ゼナ (真実を知ってもきっとあの人はミネバを我が子として愛するわ)
124:
―ソロモン宙域―
ドズル 「た、たかが一機のモビルスーツに、このビグ・ザムがやられるのか!」
アムロ (倒した敵機からパイロットが出てきた……)
バン、バン、バン!
ドズル 「やられはせんぞ! やられはせんぞ! 貴様如きに! やられはせん!」
アムロ (な、何者なんだ? 銃を使い捨てにしながら次々と発砲している……。単発銃なのか? 今時……)
バン、バン、バン、バン、バン、バン!
ドズル 「ジオンの栄光、この俺のプライド、やられはせん、やられはせん、やられはせんぞーッ!」
アムロ (幾ら撃っても人間が扱うサイズの銃じゃガンダムの装甲は……)
ドズル 「列車砲展開!」
アムロ (あっ! な、何だ!?)
ドズル (フッフッフッ、掛かったな)
ドズル (至近距離から列車砲でのティロ・フィナーレ。奴の動きは完全に止まっている)
ドズル (この距離なら絶対に外さん。コックピットに直撃させればいかにガンダムといえど!)
ドズル (ガルマの仇、討たせて貰う!)
アムロ (や、殺られる!)
ドズル 「ティロ……!」
125:
ドズル 「フィナー………ア、ア……!?」
アムロ 「?」
QB (遂にドズルの魔女化が始まった)
QB (ただでさえ絶望しかけている時に列車砲なんて現出させたから魔力が尽きたね)
ドズル 「………ア、ア……グアア……」
アムロ 「な、何だ!?」
アムロ (男の背後に悪魔みたいな影が……広がっていく……)
QB (ガルマの時は契約すら出来なかったけど、ドスルからは感情エネルギーが回収出来そうだ)
ドズル魔女 「ウワアアアーッ!」
ドガアアアアン
QB 「魔女化したドズルはビグ・ザムの爆発に巻き込まれ、消滅した」
QB 「例え魔女になっても誰かを殺す前に消滅するなんて、ドズルにして尤もなことと言えるだろう」
126:
―月―
―グラナダ基地―
キシリア 「ドズルの妻子を乗せた脱出ロケットを回収したこと、ザビ家の人間として礼を言わせて貰う」
マ・クベ 「勿体無きお言葉」
マ・クベ (ソロモンは落ちたが、ゼナ様とミネバ様をお救い出来ただけでも良しとするか)
キシリア 「マ・クベ。あなたはソロモンが落ちた後の戦局をどう見ますか?」
マ・クベ 「はっ。ソロモン攻略後、敵はこのグラナダかアー・バオア・クーの何れかに侵攻して来るでしょう。
  ソーラ・レイの照射で敵戦力を削ぎ、それでも敵が向かってくるならグラナダかアー・バオア・クーで
  敵の残存戦力を迎え撃ちこれを撃退する。これ自体は可能かと思われます。問題はその後です」
キシリア 「その後?」
マ・クベ 「ジオンの継戦能力です。資源が枯渇しております」
マ・クベ 「オデッサを放棄するまでにキシリア様にお送りした鉱物資源であと十年は戦える、と言いたい
  ところですが、実際にはあと半年も持ちませぬ」
キシリア 「それ程までに深刻なのか?」
マ・クベ 「はい。公国を存続させる為には和平交渉が必要不可欠です。それも早い段階で」
キシリア (父上が兄上に黙って連邦との和平交渉に向かわれたのはそうした意図か……)
マ・クベ 「キシリア様……?」
キシリア 「マ・クベ。それより父上が連邦との和平交渉について兄上と話し合った形跡はあるか?」
マ・クベ 「はっ。インキュベーターの話ではそのようなことはないと」
キシリア 「……契約しよう」
マ・クベ 「誠ですか!?」
キシリア 「うむ」
マ・クベ 「ありがとうございます。キシリア様。キシリア様はどんな願いでソウルジェムを輝かせますか」
キシリア 「皆が父上の話を聞いてくれる様になって欲しい」
マ・クベ 「キシリア様のその祈り、このマ・クベ、いやマ・キュべえ、しかと承りました」
127:
キシリア 「これがソウルジェム……」
マ・クベ 「はい、キシリア様が魔法少女となられた証です。ところで……一つお聞きしたいことが」
キシリア 「構わん」
マ・クベ 「はっ。キシリア様がご自身の為に祈り、自らの手で和平交渉を成功させれば、キシリア様の名声は
  より高くなったことでしょう。公王陛下にお手柄を譲られたのは?」
キシリア 「父上は息子達に相次いで先立たれ意気消沈している。恐らく今度の和平交渉を最後の仕事として
  父上は引退されるであろう。その花道を飾ってやろうという私からの手向けだ」
マ・クベ 「流石はキシリア様。キシリア様のような孝行娘に恵まれ、公王陛下は幸せ者でいらっしゃいますな」
キシリア 「そうか……」
キシリア (父上は連邦との和平交渉について私にだけ相談し、兄上には相談しなかった。つまり父上は
  兄上とは袂を分ち、この私を後継者にするおつもりだ。……英断ですよ)
キシリア (命拾いしましたな。父上)
128:
―要塞ア・バオア・クー―
司令室
キシリア (私の祈りをもって全てが上手くいく筈だった)
ギレン 「敢えて言おう、カスであると!」
キシリア (カスはお前だ!)
ギレン 「ドロスめ、よく支えてくれる」
キシリア (私が作ったたった一度のチャンスを台無しにしたのだ。この……)
ギレン 「Sフィールドとて、このくらいの戦力なら支えられるな?」
キシリア (父殺しの男が!)
129:
―要塞ア・バオア・クー―
司令室
キシリア 「グレートデギンには父が乗っていた、その上で連邦軍と共に。何故です?」
ギレン 「止むを得んだろう。タイミングずれの和平工作が何になるか?」
キシリア 「死なすことはありませんでしたな、総帥」
ジャキン!
ギレン 「待て、キシリア。その槍はどこから出した!」
キシリア 「意外と兄上も甘いようで」
グサリ!
ギレン 「うっ」
キシリア 「父殺しの罪はたとえ総帥であっても免れることはできない! 異議のある者はこの戦い終了後、
  法廷に申したてい!」
トワニング 「ギレン総帥は名誉の戦死を遂げられた! キシリア閣下、御采配を」
キシリア 「うむ。トワニング、助かる」
キシリア (私の祈りが家族を壊してしまった。勝手な願い事をしたせいで誰もが不幸になった……)
134:
―要塞ア・バオア・クー―
―要塞内部某所―
シャア 「分かるか!? ここに誘い込んだ訳を」
アムロ 「ニュータイプでも体を使うことは普通の人と同じだと思ったからだ」
シャア 「そう、体を使う技はニュータイプといえども訓練をしなければ!」
アムロ 「そんな理屈!」
セイラ (兄さんとアムロがパイロットスーツ姿で戦っている! 二人共、既に機体は失ったっていうの!?)
セイラ (兎に角止めなきゃ!)
セイラ 「止めなさいアムロ! 止めなさい兄さん! 二人が戦うことなんてないのよ。戦争だからって
 二人が戦うことは!」
シャア 「ヤアッ!」
アムロ 「チィッ!」
セイラ (駄目っ!)
ドン!
シャア (何!?)
グサリ!
セイラ 「キャアアアアアア!」
シャア (アルテイシアが私を突き飛ばして……)
アムロ (僕の繰り出した剣がセイラさんの額に!)
135:
アムロ (僕はまた、取り返しのつかないことを……)
シャア 「アルテイシア! しっかりしろ、アルテイシア! 何ということだ……おのれ、アムロ!」
セイラ 「兄さん、止めて下さい。アムロに恨みがある訳ではないでしょう」
シャア (何故普通に話せる!?)
アムロ (生きてる!?)
シャア 「大丈夫なのか、アルテイシア!?」
セイラ 「私は大丈夫です。だからアムロを責めないで」
シャア 「それでも、ララァを殺された」
セイラ 「それはお互い様よ!」
アムロ 「セイラさん、本当に大丈夫なんですか?」
セイラ 「こんなのトレパネーションと思えばいいのよ」
アムロ 「いや、でも、頭に剣が刺さって……」
セイラ 「額の中心に刺さったから……きっと右脳と左脳の隙間に剣が入って脳は無傷だったのね」
アムロ 「いや、いくら何でもそれは……」
セイラ 「本人が大丈夫って言っているから大丈夫です。細かいことを一々気にして、それでも男ですか!?」
シャア (細かいことなのか?)
アムロ 「分かりました。……せめて絆創膏だけでも貼らせて下さい」
セイラ 「そうね、お願いするわ」
アムロ 「じっとしてて下さいね。ズレるといけませんから」
セイラ 「分かったわ」
セイラ (魔法少女で無ければ即死だったわ……)
136:
アムロ 「これで大丈夫です」
セイラ 「ありがとう、アムロ」
アムロ 「いえ、僕の方こそすみませんでした」
ドゴオオオッ!
シャア (近くで爆発が!)
アムロ 「うわぁ!」
セイラ 「キャアアア!」
シャア 「アルテイシア、大丈夫か?」
セイラ 「はい」
シャア (今の爆発であの少年、アムロと逸れたか……)
シャア (アルテイシアに脱出を促したら、私は私の為すべきところに帰ろう。それは……)
137:
―要塞ア・バオア・クー―
―ドック内―
―巡洋艦ザンジバル ブリッジ―
キシリア (兄ギレンは父上が居ると知った上でソーラ・レイをゲルドルバ照準で発射させた。父上を兄が殺し、
  その兄を私が討った。ギレンだけではない。かつてサスロも……)
キシリア (さらにはソロモンに援軍を出すのを遅らせて、ドズルを見殺しにした)
キシリア (ガルマには手を下していないが、ガルマを死に追いやったのがシャアと知りながら奴を重く用いた)
キシリア (さしずめ私はザビ家にとって、呪いを振りまく魔女の様なものだ)
キシリア (何を今更……)
キシリア (後悔はしない。謝るつもりも無い。ただ、自業自得の人生を送ればいい……これまでも、これからも)
キシリア (……あれは? ブリッジの前方に居るのはシャアか?)
シャア 「ガルマ、君への手向けだ。あの世で姉上と仲良く暮らすがいい」
チャキ!
キシリア (バズーカだと!?)
ドウッ!
ドゴオオオオッ!
シャア (父上の唱えたニュータイプによる人の革新。それはそれで見届けたいが、今、私の為すべきことはやはり
 ザビ家打倒だ)
QB 「マ・キュべえと契約してから僅か1日。キシリア・ザビは魔法少女としての実戦経験が皆無だった」
QB 「さらにシャアにバズーカを向けられた時、恐怖に駆られたキシリアは自らが魔法少女であることを
 忘れていた。なまじ感情があるばかりに戦いの中で戦いを忘れるなんて、人類って非効率な生き物だね」
QB 「このア・バオア・クー攻防戦でギレン・ザビ及びキシリア・ザビは死亡し、一年戦争は連邦の勝利に
 終わったんだ」
QB 「宇宙世紀0080、この戦いの後、地球連邦政府とジオン共和国にて『魔法少女マミ・マギカ』新章
 『アラサーマミさん』の放送が開始された」
143:
―旧世紀―
―見滝原市 市内中心部―
ほむら (これが未来の世界……)
まどか (シャアさん、人殺してたの……)
クェス (一年戦争って学校で習ったけど、裏では色んなことがあったのね……)
QB 「今さっき、キミがこの時代に来る直前の時代からもデータが届いた。見るかい?」
シャア 「ああ、見せてくれ」
シャア (妹のアルテイシアが魔法少女だったとは……)
144:
―地球 大気圏外―
―アクシズ付近―
シャア 「フフフフフ、ハハハハハ!」
アムロ 「何を笑っているんだ?」
シャア 「私の勝ちだな。今計算して見たがアクシズの後部は地球の引力に引かれて落ちる。貴様らの頑張りすぎだ!」
アムロ 「ふざけるな! たかが石ころ一つ、ガンダムで押し出してやる!」
シャア 「馬鹿なことは止めろ!」
アムロ 「やって見なければ分からん!」
シャア 「正気か!?」
アムロ 「貴様程急ぎ過ぎもしなければ、人類に『絶望』もしちゃいない!」
アムロ (キュゥべえ!)
QB (アムロ、契約する気になったようだね)
アムロ (ああ、万が一を考えてお前をコックピットに乗せていたが……本当に契約することになるとはな……)
QB (ランバ・ラルと一緒に居た時にキミと出会って以来、キミはこれまでボク達の勧誘を拒み続けた)
QB (父親が酸素欠乏症と知った時も、一年戦争後に軟禁生活を強いられても、ベルトーチカと破局しても、
 キミは契約しなかった)
QB (何といってもララァが死んでも頑なに契約を拒むキミを見て、半ば契約のことは諦めていたんだ)
QB (人間なら『この時を待ってた』とでも言うんだろうね)
QB (さあ、アムロ・レイ。キミはどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?)
アムロ (俺は……)
アムロ (アクシズを地球に落としたくない。世界に人の心の光を見せたい)
QB (キミの祈りはエントロピーを凌駕した)
145:
―地球 大気圏外―
―ラー・カイラム ブリッジ―
オペレーターA 「光の幕の向こう、モビルスーツが跳ね飛ばされています!」
ブライト 「もっとよく観測しろ! 何が起こっているんだ?」
オペレーターA 「アクシズ、進路変更確実! 地球から離れます!」
146:
―旧世紀―
―見滝原市 市内中心部―
シャア 「これは……ナンセンスだ……」
QB 「……」
クェス 「そんな……アムロが……」
シャア 「キュゥべえ……何故だ? 何故今頃になって現れた! 何故あの時、私がアムロと戦っていた時に
 姿を見せなかったのだ!?」
QB 「契約があったからね」
シャア 「契約だと?」
QB 「ララァとの契約さ」
シャア 「ララァ……」
クェス (まさか、ララァって……!)
QB 「そう、ララァがボクと契約した時の願い、それは『大佐と契約しないで欲しい』だった」
147:
QB 「ララァはキミを魔法少女にしたくないと言った。ボクとしてはキミと契約したかったよ。
 でも資質があっても契約してくれるか分からない相手への皮算用よりも、今目の前にある契約を優先したんだ」
シャア (聡明なララァのことだ。この異星人に私が利用されない様、祈ってくれたのだろう)
QB 「でも結果的には彼女の行為はボク達にとってプラスとなった」
シャア 「どういうことだ?」
QB 「因果の蓄積さ」
QB 「キミは元々高い魔法少女の資質を持っていた。ジオン・ダイクンの遺児という時点で既にその因果は
 一般人を大きく凌ぐからね。もしキミが女性だったら幼少期に契約出来ただろう」
シャア (事実アルテイシアは幼少期に契約していたからな)
QB 「その後キミは数奇な運命を辿った。ジオンの士官学校を優秀な成績で卒業し、一年戦争では『赤い彗星』の
 異名を持つエースパイロットになった。さらにキミはザビ家凋落の大きな要因となった」
QB 「しかしここからがキミの凄いところだ。一年戦争後、第二次ネオジオン戦争開戦まであまり因果を溜め込む
 ことの無かったアムロに対し、キミは着実に因果を増やし続けた。アクシズで逃亡生活を送っていた頃、
 後にネオジオン摂政となるハマーン・カーンと関係を持ち、グリプス戦役ではエゥーゴの代表として
 ティターンズとの戦いを勝利に導いた」
QB 「そして極めつけは第二次ネオジオン戦争だ」
QB 「この戦いでキミはネオジオン総帥として地球寒冷化作戦を遂行した。成功すれば地球に核の冬が来て
 人が住めない星になる。これがどれほどの因果をキミに与えたか分かるかい? アムロ・レイとの死闘ですら
 おまけ程度になる程の因果だ」
QB 「おめでとう、ララァがキミをまどかに次ぐ魔法少女にしたんだ」
シャア 「そして私は旧世紀にタイムスリップしたことでララァの祈りの影響を受けなくなった、ということか……」
QB 「そうさ。この時代、ララァは生まれてもいないからね。これで晴れてキミはボクと契約出来るように
 なったんだ」
152:
ほむら 「ちょっと待って。そんな資質の持ち主が契約してその後魔女化したら……」
QB 「この星は滅びるだろうね。だがそれはキミ達の問題だ」
まどか 「それじゃ何の解決にもならないよ!」
クェス 「もう終わりにしよう。ここから逃げようよ」
ほむら 「貴方、何を言っているの!?」
クェス 「このまま戦っても皆死ぬだけよ! 折角大佐に会えたのに死ぬのはイヤ!」
ほむら (そうか、彼女の願いは既に叶った。ならここに留まる理由もないのね)
まどか 「やっぱり私が契約しないと――」
ほむら 「それは駄目よ!」
クェス 「ほら、貴方だって同じじゃない!? 死なせたくない相手がいるから戦っている。
 だったらその相手を連れてここから逃げればいい」
ほむら 「逃げたければ勝手にすれば」
クェス 「言われなくてもそうするわよ! 大佐、行きましょう」
シャア 「すまんな、クェス。私は契約しよう」
153:
クェス 「大佐、何を言っているの? 魔法少女になったら一生魔女と戦う運命を背負うんだよ!」
シャア 「私が今更戦いを恐れると思うか?」
まどか 「シャアさんが契約しても、その後魔女化したら地球が滅びるんだよ!」
シャア 「既に手は考えている」
まどか 「え?」
シャア 「ただそれには君の力が必要だ、カナメ・マドカ」
ほむら 「まどかを契約させる気?」
シャア 「マドカの契約後、私がマドカを人間に戻す」
クェス 「そんな……」
シャア 「安心しろ、クェス。私はお前の前から居なくなったりしない」
クェス 「本当に……」
シャア 「ああ、この時代に来る前に言ったろう。『私はララァとナナイを忘れる』と」
クェス 「大佐……。なら、アルパはもう無いけど私は魔法で大佐を守ってあげる」
154:
QB 「さあ、願い事を言ってごらん」
まどか 「私は、自分の魔法少女の資質をシャアさんに譲りたい」
QB 「契約は成立だ」
パアアアアアアアッ
クェス (これがこの子の魔力……凄い!)
まどか 「シャアさん……私……」
シャア 「気に病むことは無い」
まどか 「ごめんなさい……」
ほむら 「私からもお礼を言わせて欲しいわ。有難うございます」
シャア 「そういって貰えると契約し甲斐もあるというものだ」
ほむら (とはいえ、さっきのインキュベーターの話では、この男は地球を滅ぼそうとした男。
 その彼が本当にこの町を救う気かしら?)
シャア 「それは今に分かる」
ほむら 「?」
ほむら (まさか、私の思考を!?)
QB 「シャア・アズナブル。キミは元々非常に優れた魔法少女の資質を持っていたが、
これで鹿目まどかの魔法少女の資質も手に入れた。キミは最強の魔法少女になるだろうね。
キミはどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい。キミが望めば万能の神にだってなれるだろう」
シャア 「ならば……」
シャア 「私は、孵卵器(うつわ)になろう」
QB 「キミは孵卵器(ボク)になりたいのかい」
シャア 「ああ、そうだ」
クェスとまどかとほむら 「?」
155:
QB 「願い事の内容が内容だからね。キミの真意を聞かせて欲しい」
シャア 「魔法少女になればソウルジェムの輝きをもって時間さえ支配できる、それは夢だ。
魔法少女というニュータイプを凌ぐ可能性を旧世紀から持ちながら人は変わらなかった。
これからも変わることは無い」
シャア 「真理から遠く、光を超える術すら手に入れられず、届く範囲のスペースで増えては滅ぶ、
それが人間だ」
シャア 「導く必要は無い、その価値も無い!」
クェス 「そんな……。大佐はニュータイプによる新しい世の中を作るんじゃなかったの?」
シャア 「私は……世直しなど考えていない!」
ほむら 「正気なの! あなたは孵卵器(インキュベーター)になって何をするつもり!?」
シャア 「空になったこの体に少女達の総意を受け入れ、彼女らが願うところを願うとしよう。
魔法少女? 可能性はもう要らない」
QB 「契約は成立だ」
まどか 「待って、シャアさん! それじゃキュゥべえと同じだよ!」
クェス 「大佐! 愛していたのに!」
ほむら 「謀ったわね、シャア!」
シャア 「ハハハハハ、ハハハハハ!」
シャア 「インキュベーターの科学力を手に入れて私は神に等しき存在となる。
連邦という人工の神に変わる新たなる神の最初の仕事としてワルブルギスの夜は私が倒しておこう!」
156:
ほむら 「させない!」
ビビーッ!
ほむら 「グウッ!」
ほむら (撃たれた……クェスのファンネルか……)
まどか 「ほむらちゃん!」
クェス 「ほむら、あんた大佐を撃とうとしたわね」
まどか 「待って! ほむらちゃんにこれ以上酷いことしないで!」
ほむら 「……目を……覚まして。……あの男は……貴方のことなんて……愛していない」
クェス 「あんたにとやかく言われる筋合いはないわ」
クェス 「大佐。キュゥべえとの融合なんて止めて私と一緒に行きましょう」
クェス 「ほら、これが私のソウルジェム。私は……大佐を救う……」
クェス 「その祈りの為だけに魔法少女になったのよ。このソウルジェムの輝きが私の祈りの証……。
 私は……あなたの為なら死ぬことだって出来る!」
シャア 「クェス、お前はもう死んでいる」
クェス 「えっ?」
157:
シャア 「今の私の意識にはインキュベーターの持つ膨大な情報が流れ込んでいる最中だ。そして知ったのだよ。
 ソウルジェムの秘密を」
ほむら 「駄目よ!? クェス、聞いちゃ駄目!」
シャア 「ソウルジェムこそが器だったのだ」
ほむら 「駄目えぇぇ!」
クェス 「うるさいわね!」
ビビーッ!
ほむら 「ギャアアアア!」
まどか 「やだ……もうやだよぅ……」
クェス (……器って、どういう意味なの? 大佐)
158:
シャア 「どの魔法少女にもテレパシー能力と魔女を探索する空間把握能力は持ち合わせている。
 そしてソウルジェムは魔法少女の魔力に感応して輝く。原理が分かれば納得の行く話だ」
シャア 「人の魂は肉体という器を離れると残留思念となる。インキュベーターはこれを固定すべく
 人の魂をサイコフレームの器に入れ替えたのだ。魔法少女の資質のある者の魂に感応して
 サイコフレームの器が輝く時に起きる奇跡、それこそが魔法だ。
 人智を超えた能力が引き出されるのも無理は無い。魂が直接サイコフレームに触れている上に
 この地球圏の各地にばら撒かれたバイオセンサーがそれを増幅させる仕組みになっていたとは……」
クェス 「じゃあ……私は……」
シャア 「ソウルジェム、即ちサイコフレームの器に魂を移された時点でお前の残留思念は既に肉体を離れた。
 要は死んでいるのだよ」
クェス 「……」
クェス 「イヤアアアッ!」
ほむら (こうして悲しみは繰り返されるのよ……)
163:
魔女化クェス ゴゴゴゴゴ
まどか (酷いよ、あんまりだよ……)
まどか 「……シャアさん」
シャア 「何だ?」
まどか 「キュゥべえが見せた未来のシャアさんの姿、シャアさんは人類の未来に希望を持っていた、私にはそう見えたんです」
シャア 「嘗てはな。だが地球に住む者達は自分達のことしか考えていない」
ほむら 「でも、世界に心の光を見せたいと祈ったアムロという人だって居たのでしょう?」
シャア 「フン、そういう娘の割りにはマドカ以外の人間には冷たかったな」
ほむら 「どうして!? さっきから?」
シャア 「私はニュータイプという特別な人間でな、その能力でお前の歪んだ心が手に取るように分かる。契約して私のニュータイプ能力が更に強化されたようだ」
シャア 「だからお前の魔法の特性が時間操作であることも、その楯の砂時計が落ち切って時間停止が最早不可能なこともお見通しだ」
シャア 「そして時間を支配する絶大な力を手に入れながら、たった一人の人間すら救えなかったことも」
ほむら 「あなたは、人の心にズケズケと……」
シャア 「他の時間軸で何度もマドカを失った苦しみ、存分に思い出せ!」
ほむら 「黙りなさい……黙れ!」
164:
ほむら 「ハァ、ハァ、グッ……そんな……」
ほむら (まどかの魔力まで受け継いだこの男……強すぎる……)
まどか 「もういい」
ほむら 「まどか!? 離れて! ここから逃げて! こんなことに付き合う必要なんかない!」
まどか 「何があってもほむらちゃんはほむらちゃんだよ。私は絶対に見捨てたりしない。だから、諦めないで」
ほむら 「まどか、グズッ、ウウッ……」
シャア 「悪魔の如き業を背負いしその娘に救う価値があるというのか?」
ほむら 「確かに私はそうかもしれない」
ほむら 「でも、まどかは……少なくともまどかだけは違うわ!」
シャア 「ほう……」
165:
シャア (何? この娘、マドカの心には闇が感じられない)
シャア (むしろ、暖かくて、安心を感じるとは)
シャア (これ程の膨大な因果を持ちながら、何ということだ)
まどか 「お願いです、シャアさん!どうか思い直して下さい。私はどうなっても構いません。せめて、みんなの祈りが呪いで終わる世界にだけはしないで下さい!」
シャア (お前は危険だ……)
シャア (この少女には、ララァやアルテイシアのような芯の強さと優しさがある。これでは本気になれない……)
シャア 「……人間なぞ、所詮無為な存在だ」
まどか 「シャアさん!」
シャア 「無為な存在ならそれに相応しく、魔力が尽きた後の君達には円環の理という小さく自足できる環境をくれてやろう」
まどか 「シャアさん、それって……」
シャア 「だが、君がその恩恵に預かることはない。何故なら、君は普通の人間に戻るからだ」
シャア 「ここで起きたことは忘れろ。いい女になるのだな。ホムラ君が呼んでいる」
まどか 「シャアさん……」
まどか 「ありがとうございます!」
166:
見滝原市 見滝原中学校 教室
和子 「ハイ、それでは転校生を紹介します。パラヤさん、いらっしゃい」
ガララ スタスタスタスタ
男子生徒1 「外国人……?」
女子生徒1 「かわいい……」
女子生徒2 「綺麗な子……」
クェス 「初めまして。クェス・パラヤです。パパ……父の仕事の関係でアメリカから来ました。
 よろしくお願いします」
167:
見滝原市 見滝原中学校 屋上
さやか 「驚いたなあ、クェスも魔法少女だったなんて」
クェス 「私も驚いたわ。1クラスだけで魔法少女が何人もいるなんて」
まどか 「あ、マミさんだ!」
マミ 「お待たせ」
さやか 「マミさん遅い?」
マミ 「ごめんなさい。ねえ、お昼ご飯の前にみんなに紹介したい人がいるの」
杏子 「紹介したいって後ろにいる奴か?」
マミ 「仮にも上級生なんだから『奴』とか言わない」
杏子 「へいへい」
まどか 「マミさん、私達も紹介したい子がいるんです。
 今日転校してきて同じクラスになったクェスちゃんです」
クェス 「クェス・パラヤです」
マミ 「初めましてクェスさん。私の名前は巴マミ。奇遇ね、彼女も今日私のクラスに転入してきたの」
ほむら 「そちらの方ですか」
マミ 「そう。凄いのよ、彼女! キャスべえと契約してないのにテレパシーが使えるんだから!」
杏子 「マジモンのエスパーかよ!?」
マミ 「さ、自己紹介をお願い」
ララァ 「皆さん、こんにちは。ララァ・スンです。インドから来ました」
168:
見滝原市 河川敷
QB 「うむ、お前の方が似合ってる」
杏子 「ハハハハハ! エドべえの奴、自分のマスクをララァにかけさせてる」
ララァ 「このマスク邪魔です」
さやか 「ハハハハハ! でも何ていうか、クワべえを抱っこしてるララァさんってまるで子供を
 抱っこしてるお母さんみたいですね」
ララァ 「私中3よ、そんなに老けてるかしら」
さやか 「老けてるというより、大人びてるっていうか、実はララァさんハイティーンとか?」
杏子 「日本人より顔の彫りが深い分、大人に見えるんじゃない?」
QB (年齢から言えばララァは高校に行かせるべきだろうが、彼女には長く学園生活を楽しんで貰いたいのだ。
 それに見滝原中は旧世紀にしては施設が充実している)
マミ 「みんな名前間違えないで、この子はキャスべえよ」
杏子 「何言ってんだ、こいつはエドべえだって」
さやか 「私が契約した時はクワべえって言ってましたよ」
クェス 「彼はシャアべえでしょ?」
ほむら 「結局どれが本当の名前なの?」
QB 「自称他称を含め私には複数の名前がある。その時その名で呼ぶ周囲の人間が、私という存在を
 形作ってきただけのことだ」
170:
まどか 「あの、みんな……」
一同 「……」
まどか 「見えない私が言うのも何だけど、名前が複数あるなら役職で呼べばいいかなって……ハハハ」
マミ 「この子に役職ってあるのかしら?」
QB 「大佐だ」
さやか 「何、あんた軍人なの!?」
QB 「ご覧の通り……といってもこの格好では意外だろうがな」
ララァ 「大佐……」
QB 「そうだ、そう呼んでくれると嬉しい」
クェス 「ララァ、ずるい。私もシャア……大佐抱っこする」
QB 「すまんな、クェス。そろそろ私は失礼する」
クェス 「え、そうなの……」
QB 「ああ。訓練で頭痛は出なかったのか?」
クェス 「ええ、勿論! みんな魔法の使い方や戦い方を教えてくれるの。すごく楽しかった」
マミ 「もう、訓練は遊びじゃないのよ」
クェス 「分かってるわ、マミ」
QB チュッ
クェス 「あ!?」
QB 「今夜はよく休め」スタスタスタスタ
マミ 「まあ、キャス……大佐ったらおませさんね」
杏子 「先に帰りやがった。……それにしてもエド……大佐って変わってるよな。
 見た目は赤毛の小動物なのに声はやたら渋い男の声してんだからさ」
ほむら 「人間なら自意識過剰な二枚目といったところね」
クェス 「……」
さやか 「あれ?? クェスったらクワ……大佐にキスされた手の甲をじーっと見つめちゃったりして。
 さてはあの小動物に惚れたな??」
クェス 「そんなんじゃないわよ!」
さやか 「動物相手にエッチなこと考えている子はこうだっ!」
クェス 「キャハハハ! さやか、くすぐったいよ」
ほむら 「……」
172:
見滝原市 高層ビル屋上
QB 「君の言う魔女の概念は実に面白い」
QB 「さらに言えば私が人間と異星人の融合体という話もな」
QB 「その話が本当だとして、君は世界を改変させたこの私を怨んでいるのか?」
ほむら 「いいえ、あなたが改変させたこの世界のまどかは最早魔法少女の資質を持たない一般人となった。
 あなたがまどかの魔法少女の資質を引き継いだせいで、今のあの子にはあなたの姿すら見えなくなった。
 まどかを魔法少女にすることなくワルブルギスの夜を乗り越えるという私の願いはようやく叶ったわ。
 むしろ貴方には感謝している、大佐」
ほむら 「いいえ、シャア・アズナブルと言った方がいいかしら」
魔獣 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ キュイイイイイン
QB 「今夜はつくづくミノフスキー粒子が濃いな」
ほむら 「瘴気でしょ」
ほむら (私達魔法少女の新たなる使命は魔獣を倒すこと。巨大な機械人形の様な敵だ。
 インキュベーターはモビルスーツと呼んでいる)
17

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