万里花を愛でるニセコイSS「オミヤゲ」back

万里花を愛でるニセコイSS「オミヤゲ」


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1:
万里花を看病するお見舞い話、というリクエストをいただいたので。
南国帰り、正月明けの設定です。
2:
「はい……どちらさまでしょう……?」
「おう、橘、大丈夫か?」
バタン、と大きな音を立てて玄関のドアが閉まった。
「おお!?」
「ど、どど、どうして楽様がここに……!?」
ドア越しに、動揺した橘万里花の声が聞こえてくる。
「いや、正月から体調崩してるだろ? だからお見舞いにと思ってな」
「お、お見舞い……! 楽様がわざわざ……」
きぃ、と少しだけドアを開けて、万里花が顔を覗かせる。
「す、すみません、楽様。ほんの少し、ほんっとうに少しだけ……お待ちください!」
バタンと再び閉じられたドアの向こうからはバタバタと走る音と、何やかやのけたたましい物音。
病人があんなにドタバタしてもいいものかと、楽は少し不安になった。
そんな楽の少し後ろで、一緒にお見舞いに着いてきた小野寺小咲は「わかる、わかるよ万里花ちゃん」と、何度も頷きながら涙を流していた。
3:
「お待たせしました、楽様。ささ、どうぞこちらへ」
すっかり身支度を整えた万里花は来客を自分の部屋へと案内する。
「いやいや、どうぞじゃなくて。寝てなきゃダメなんじゃねえのか? 顔色悪いぞ」
明るく振る舞っているつもりなのだろうけれど、調子が悪そうなことは一目瞭然だった。
普段から万里花のエネルギーを正面から、主にタックルという形で浴び続けている楽の目は欺けない。
「楽様がお見舞いにいらしてくださったんですから、あっという間に元気になりますわ。それよりも……」
すとんとベッドに腰掛けながら、万里花は楽の隣にいる二人の少女に冷ややかな目線を向けた。
「どうして楽様お一人ではないのでしょう?」
万里花の視線を受け止めて、同じく一緒にお見舞いにやって来た桐崎千棘の後頭部に怒りマークが浮かび上がる。
「あんたねえ、せっかく私と小咲ちゃんも心配してきてやったのに、そんな言い草はないでしょ」
「ま、まあまあ、千棘ちゃん。万里花ちゃんは体調がよくないんだから……」
楽と二人きりになれるチャンスであるということを思うと万里花の気持ちもわからないこともないだけに、小咲が一生懸命に千棘を諌めている。
「あ、楽様はこちらにどうぞ」
ポンポンとベッドの隣を手のひらで叩きながら、楽を誘う万里花。
しかして万里花は千棘の怒りなど一切意に介してなどいなかった。
4:
「そういえば、本田さん……だっけ? あの人はいないのか?」
「ええ、実は父の仕事の都合で、今日はどうしても出かけなかったらしくて……。代わりに機動隊の一個大隊を家の周辺に配備しようとしたのでさすがに断りましたわ」
「心配なのはわかるが何から守ろうとしてんだよ……」
かくいう自分も万里花のことを心配してやってきたわけだけど、あの島で倒れ伏していた時のことを思えば今の万里花はまだ随分と楽そうだった。
「でもまぁ、それならちょうど良かったよな。家のことは俺たちに任せて、橘はゆっくり寝ていること」
「楽様が隣で添い寝してくださるなら私は永遠にだって眠りますわ」
「このエロもやし!」
「何で俺が!?」
一歩間違えれば永遠に眠らせかねない千棘の鋭いツッコミが楽の後頭部に決まった。
崩れ落ちた楽を足で横に押しやりながら千棘が言う。
「女同士でないと気を遣うこともあるだろうから私たちも来たのよ。たまにはアンタも大人しく言うことを聞きなさい」
「そ、そうだよ、万里花ちゃん。今日はぐっすり休んで、ね?」
「……わかりました、それではお言葉に甘えることにしますわ」
ふう、とため息をついた万里花に向かって、小咲はとびきりの笑顔を浮かべて言った。
「それじゃ、まずは身体を吹こうか」
5:
「わー、万里花ちゃん、真っ白だねー。お肌キレイー」
「ぐぬぬ……鶇といいアンタといい、ど、どうしてこう胸が……」
「ちょ、ちょっと、どこを触ってるんですか!」
「いいじゃないの、あんただって鶇に――」
「はーい、胸の下も拭きますねー」
きゃいきゃいと騒々しい女子たちのあられも無い会話を聞きながら、一枚扉を隔てた廊下で楽は悶絶していた。
刺激が強すぎる。
ここのままここにいたのではいずれどこかから出血してしまいそうだった。
万里花のためにお粥でも作るかと腰を浮かした瞬間、扉の向こうから声がかかる。
「楽様、もう入ってもよろしいですわよ」
意外と早かったなと思いつつ、お粥の具材の好みでも聞いておこうかとドアノブを捻って扉を開けた。
「ちょっと万里花! アンタ服着てから声かけなさいよ!」
千棘の大声に咄嗟に反応して、楽は光の早さで扉を閉めて廊下に戻った。
ホンの一瞬、ちらりと目に映ったのは真っ白な万里花の――。
「えー、私は別に楽様にならば見られても構いませんのですけれども」
「そ、そそ、それは流石に良くないと思うな!」
6:
二人掛かりでどうにか万里花服を着せた後、バトンタッチとばかりに千棘と小咲は看病を楽に任せて出て行った。
突然二人きりの空間に取り残されて楽は戸惑いを隠せない。
何しろ脳裏にはさっき見たばかりの光景が焼き付いて――。
「ふふふ」
「な、なんだよ」
そんな考えを見透かしているのかいないのか、万里花は楽の顔を見つめながら幸せそうに微笑んでいた。
「いいえ、楽様が私の部屋にいらっしゃるのだと思うと、ついつい顔がにやけてしまいまして……」
「な、何言ってんだよ、前にも来たじゃねえか。親父さんに挨拶に来た時とか、テストの勉強を教えにきた時とか」
「それはそうなんですけれど、こうして私がベットに寝ていて、隣にらっくんがいてくれると思うと、何だか昔を思い出してしまうのです」
昔――。
10年前に楽と万里花が初めて出会った頃。
今よりもずっと病弱だった万里花はいつも療養所の部屋にこもりきりで、そこへ楽が訪ねていっては遊んでいた日々……。
長い間忘れてしまっていた記憶だったはずなのに、万里花の言葉に思わず情景が蘇る。
そう言えばあの頃、俺は万里花のことを。
「マリー……」
「えっ!?」
不意に呼び慣れない名前を、それも懐かしい思い出の名前を楽に呼ばれ、万里花はすっかり顔が真っ赤になっていた。
「……って呼んでたんだよな、あの頃は橘のこと」
「そ、そがん風にいきなり呼ばれたら、ビックリするばい……」
珍しく頬を染めて、素の口調を出した万里花の様子に楽もついつい赤面する。
時折見せる万里花のこのギャップは本当にズルい。
「そ、それより楽様!」
慌てて調子を取り戻そうとするように、万里花が話題を変える。
「桐崎さんと小野寺さんはどちらにいらっしゃったんですか? 私と楽様を二人きりにしてくださるのは嬉しいのですが……何だかこう、不気味というかなんというか」
「ああ、千棘と小野寺なら台所で何かの準備をするって――」
口にした楽が固まる。
「だ、台所で……?」
耳にした万里花も固まる。
そのままぱたりとベッドに倒れ臥し、遺言めかして万里花が言った。
「わ、わたしのことは構いませんから……楽様、どうかあの二人を止めてくださいまし……」
7:
「ほら、熱いから気をつけて食べろよ」
ふうふうと唇を尖らせて、楽はレンゲにすくったお粥を冷ますと万里花の口元に運ぶ。
同じくふうふうと息を吹きかけてから、ちょうど食べごろの温度になったお粥を口に含み、万里花は至福の表情を浮かべていた。
「美味しいですわ、楽様……たっぷりの愛情と一緒に煮込まれて、お米さんも喜んでいるみたい」
「まあ、青汁や栄養ドリンクと一緒に煮込まれるよりは米も幸せだろうな……」
栄養たっぷりのオリジナル粥を作ろうと意気込んでいたところに思い切り横槍を入れられた千棘は、
ついさっきまでぶうぶうと不平不満を並べ立てていたが、小咲に連れられて台所の後片付けに駆り出されていた。
ほんの数分目を離しただけで台所があんなことになるなんて。
楽の脳裏に文字通り苦い思い出が蘇る。
「ホント、楽様は私の命の恩人ですわー」
ぱくぱくと楽のお粥を食べながらしみじみと万里花が言う。
「あながち冗談に聞こえないところが怖いんだよな」
あの二人の特製粥の破壊力なら身を以て知っている。
でも、それよりも。
楽はついこの間、万里花の身体の弱さを南の島で思い知らされたばかりだった。
「お嬢様にはもう……あまり時間が残っておりませんから」
唐突に聞かされたあの言葉が蘇る。
時間が無いっていうのは一体どういうことなのだろう。
幸せそうな輝く笑顔でお粥を胃袋に収めていく万里花の姿からは、そんな陰を見て取ることはできなかった。
8:
あーんと最後の一口を万里花の口に収め終え、ふとした拍子にベッドの脇に目をやると、そこにはまるで金魚鉢のようなガラスの器が置かれていた。
その向こうの壁には何やらヘンテコな家が描かれた絵が掛かっている。
他の壁には一面万里花の写真が飾られているだけに、なかなか異質だった。
よくよく見ると、ガラスの器に入っているのは何百枚もの封筒と、お札と、小銭。
「……橘、もしかしてこれって……」
「あら、そうですわ。前にお話しした通り、楽様との結婚資金を貯めておりますの」
レンゲを奪い取り、器の隅に残った米粒一つ残すまいと悪戦苦闘しながら万里花が答える。
「こ、こんなにもか」
大人でも一抱えはあろうかという大きな器の半分近くは既に埋まっている。一体いつから貯めているのだろう。
自分が想像していたよりも、万里花はずっと一生懸命で、そしてずっとずっとまっすぐに自分を想ってくれている。
照れと申し訳なさで居たたまれなくなった楽はガラスの貯金瓶から何となく目をそらす。
と、その隣のサイドテーブルの上にはこれまた部屋に似つかわしくない品物が並んでいた。
古びた飛行機のおもちゃに野球のボール、ミニカーやぬいぐるみ、さらにはビール瓶の王冠からドングリの実までが脈絡もなく整列している。
「橘、こっちは?」
はっとお粥の器から顔を上げると、楽が指差しているものを認めて急に慌て始める万里花。
「あ、そ、そそ、それは……! すみません、私、片付けるのをすっかり忘れていて……!」
「い、いや、別に散らかってるとかそういう意味じゃなくてさ。橘の部屋にしては何ていうか、珍しいなーって思っただけで」
万里花はぎゅうとお布団の端っこを握りしめ、俯き加減のまま、小さな声で答える。
「……その、昔、ら、らっくんが私の所に遊びにきてくれた時に、色々と持ってきてくれたんです」
万里花の言葉に驚いた楽はあらためてその品々を見直した。
確かに、心当たりはさっぱりないが、いかにも男の子が集めて喜びそうなものばかり。
そういえば。
以前に万里花の父親にあった時、万里花が昔のガラクタを今でも大切にしているという話を聞いた、ような。
それじゃ、万里花はこれらをずっと、10年間も大事に取っておいて、今でもベッドのすぐ横にこんな風に飾って――。
「ちょ、ちょっとおかしいですよね。すみません、楽様。でも、私にとっては、楽様との大事な思い出の宝物ですので……」
少しも覚えていない様子の楽を見て、万里花は寂しそうに、でもそれを悟られないようにと気丈にも笑顔を浮かべながら言った。
悲しそうな笑顔に、楽の胸を締め付けられるような痛みを覚えた。
9:
今日は万里花のことを心配してお見舞いに来たはずなのに。
それなのに、俺は万里花のことを何も気遣ってやれていなかったのではないだろうか。
こんなにも一途に。健気に。
自分に想いを寄せてくれるこの女の子に、返せるような気なんて、今の自分に遣えるはずもなかった。
あんな風にして南の島まで自分を連れ出した万里花の気持ちを、いつもの強引さと明るさで片付けて、ちっとも考えようとしていなかった。
「お嬢様にはもう……あまり時間が残っておりませんから」
ぐっと拳を握る。
自分の気持ちのことなんてまだよくわからない。
整理なんてまだまだつきそうにない。
だけど。
今この時だけは。
楽は心から、万里花の気持ちに応えたいと思った。
10:
力を込めた拳を開くと、俯いたままの万里花の頭に手を置いた。
「……橘、そろそろ寝た方がいいと思うぞ」
「……そう、ですわね。ありがとうございます、楽様」
枕の位置を調整して、万里花を横にする。
元気そうに見えても、ついこの前は倒れるほどに体調を崩していたのだ。
無理して元気に振る舞おうとする時ほど、万里花の体調には気をつけないといけない。
布団を胸元まで掛けると、楽の顔を見つめる万里花と目と目が合った。
少し照れたように、微笑む万里花。
本当に幸せそうで。
でも、自分ならもっと、この子を幸せにできるんじゃないのか?
額に手を置くと少し熱い。また熱が出てきたのかもしれない。
そんな万里花を残していくのは心配だけど。
でも……。
「……橘、ちゃんと寝てるんだぞ」
「ら、らくさま……お帰りになられるんですか……?」
「あ、ああ、いや、ちょっとな」
言葉を濁す楽に、万里花は少しだけ考え込んだ後、伸ばしかけた手を引っ込めて布団に戻した。
「そうですか。今日は本当にありがとうございました。おかげでゆっくり休めましたし、それにお粥は本当に美味しかったです」
「ああ、あとはぐっすり寝ればきっと良くなると思うぜ」
「はい、また元気な私の姿をお目にかけませんと。それじゃ、その……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ、橘」
そう言うと楽は部屋の電気を薄暗くして、大きな音を立てないようにそっと扉を開けて万里花の部屋を後にした。
11:
「やっぱり、おかしいと思われてしまったのでしょうか……」
薄闇の中、誰に聞くともなく万里花が呟いた。
自分にとっては楽との思い出がいっぱい詰まった宝物でも、端から見ればただのガラクタ。
そんなものを10年も後生大事にとっておくなんて……。
「らっくん……」
普段であれば楽の口から「おやすみ」なんて言葉が聞けただけで舞い上がる程嬉しいはずなのに。
もしかすると、今日はずっと傍で看病をしてくれるのかもしれない。
お邪魔な二人はいるものの、ひょっとしたらずっと手を握っていてくれたりするかもしれない。
そんな風にほのかに抱いていた淡い期待は、更けていく夜の中に消えていった。
万里花は布団を頭まで被ると、ずっと我慢していた気怠さをベッドに全て預け、やがて少しだけ苦しげな寝息を立てながら眠りに落ちていった。
12:



「う……ん……」
カーテンの隙間から、夜明け前の優しい光が差し込んでくる。
なんだかんだと昨日は随分と早めに寝たわけで、体調が悪くてもこうして早朝に目が覚めてしまったようだった。
何だか喉が渇いたからお水でも飲もうかと、起き上がるために布団をめくりかけた時、万里花はその端っこに何かがのしかかっていることに気付いた。
「ら、楽様……?」
昨日の夜に帰ったはずの楽が、上着を着たままベッドの脇に上半身を預けて眠りこけていた。
「どうして楽様がここに……? たしか昨日、帰られたはずでは……」
様子を見ようと身を乗り出した時、ギシッとベッドが軋んだ。その音か揺れに気付いてか、楽も眠たそうに目を開ける。
「う……ん……いけねえ、すっかり寝ちまってたか……」
寝ぼけ眼を擦りながら当たりを見回す楽の目線が、顔のすぐ脇にある白いふくらみに吸い寄せられる。
ベッドから身を起こして四つん這いで楽の顔を覗き込もうとしていた万里花。
パジャマとネグリジェの中間のような寝間着は胸元が緩く、つまり、その丸みがしっかりと。
「うおおおおおおっ!? す、すまん、橘、俺は別にそんなつもりでは!」
「ど、どうなさったんですの、楽様?」
朝起きたら帰ったはずの楽がいる、という事実に気を取られて、万里花は自分の姿格好など気にも止めていなかった。
「わ、私、てっきり楽様は昨日の夜にお帰りになられたのだとばかり……」
「う、すまん……橘を放っていくのはどうかと思ったんだが、どうしても夜のうちになんとかしようと思ってな……」
「なんとかって、何をですの?」
あー、いや、うーんと妙なうなり声を上げながらしばらくもじもじとしていた楽だったが、ようやく意を決したようにポケットから小さな包みを取り出すと、万里花に差し出した。
「え? 楽様、これは……?」
「ええと、その、お、お見舞いの品……みたいなもんかな?」
「お見舞いの……?」
お見舞いの品物と言えばフルーツや暇つぶしの雑誌など、たいていの場合は見舞いに訪れてすぐに手渡すものと相場は決まっている。
それなのに、一晩経ってから、こんな風に?
怪訝な気持ちと、楽からのプレゼントに心躍る気持ちと、半々のまま万里花は丁寧に包みをほどいていく。
中に入っていた細長い箱の蓋を、そっと開けた。
13:
「こ、これは……」
箱の中には、木の実と貝殻を加工して作られた、南国風の装飾が可愛いネックレスが入っていた。
「楽様……これを私に?」
こくりと楽は頷いた。緊張して声が出ない。けれど、ちゃんと伝えなければ。
コホンと咳をしてから楽は言った。
「こ、これはな、キリバス共和国で作られたネックレスなんだ」
「! キリバスで……!?」
キリバス共和国と言えば、ついこの間、楽が万里花に拉致られて数日をすごした南海の孤島。
世界で一番早く朝を迎える国。
「色々あったけどさ、結構アレはアレで楽しかったっていうか……。じゃなくて、帰りはすげえ慌ただしくて観光とか土産を買うどころじゃなかっただろ?
だからせめて、これが思い出になるかどうかわかんねえけど、何かこう、形に残るものを……お前にあげたいな、と思ってな。急遽、その、買ってきた」
「楽様……もしかして、夜の間中、これを探して……?」
「ああ、まあな。キリバス土産なんてどこを探してもなかなか売ってなくてな、遅くなって悪かった」
千棘の母親の華さんのもとでバイトをしていた時の経験とツテをフル活用し、寒空の下を駆け回った結果、
小さな雑貨屋の店主を叩き起こして倉庫をこじ開けさせてどうにかこうにか手に入れた一品だった。
「あー、あとさ、その、俺があげたいろんなもの、大事にとっておいてくれてありがとな」
「!」
思わぬ言葉に万里花の身体がビクリと震える。
「あんまし覚えてなくって申し訳ねえけど、嬉しかった。……昔は一緒にドングリでアクセサリーを作ったりもしたけど、まさか今更そんなの着けるわけにもいかねえだろうし、その代わりにそいつを使ってくれよ」
「ら、楽様、ネックレスのこと、覚えて……」
10年前。珍しくマリーが欲しがっていたアクセサリー。
一緒に作ろうと材料のドングリを集めていたのに、マリーがドングリの質を厳選するものだからなかなか数が揃わなくて苦労したっけ。
サイドテーブルの上に転がっていたその欠片が、万里花への贈り物を探して走り回っている楽に、思い出させてくれたのだった。
14:
「……それとな」
ごそごそとポケットを探り、楽はもう一つ木の実と貝殻の飾りを取り出した。ネックレスよりは随分と短い。
「今度は俺もちゃんと大事に持ってるからさ。こっちは携帯ストラップだけど……な、マリー。」
懐かしい呼び名と、懐かしい笑顔。
10年前と変わらない、誰かのために一生懸命で優しくて、すごくすごく大好きな男の子。
「う、うう……」
万里花はネックレスの入った箱をぎゅっと胸に抱きしめた。ぽろぽろと涙をこぼしながら。
「らっくん!」
いつものようなスピードも鋭さも勢いも無く。よちよちと這い寄るようにして、万里花は楽の首に抱きついた。
「お、おいい、マリー! あぶねーだろ、お前まだ体調悪いんだし……!」
「うう、らっくん……らっくん……大好きばい……」
全身でもたれかかったまま、うりうりと頭を動かす万里花。
いつものタックルなら経験と勘で避ける自信がついてきていたところだったが、これは、避けられない。
いや、このぐらい受け止められなくては男ではない、のかもしれない。
ポンポンと、万里花の後頭部を撫でながら、万里花が落ち着くまでずっとその身体も気持ちも抱きしめているつもりだった。
15:



「らっくん……らっくん……」
「お、おい、そろそろ泣き止めよ、橘……」
「すーはー……すーはー……」
「ん?」
謎の鼻息に、頭を撫でる手を止める。
「おい、橘?」
「マリー、とお呼びくださいまし、楽様……」
顔を上げると、すっかり血色の良くなった万里花の微笑み。
「お、おまえなあ……って、おい!」
万里花をなだめることに必死だった時は気付かなかったが、ただでさえ隙の多そうな万里花の寝間着は、さっきの抱きつきと、謎のうりうりした動きですっかり着乱れていて。
文字通りの意味で、いろいろとこぼれてしまいそうになっていた。
「あら、楽様……何だかお顔が赤いですわ。それに熱もあるような……」
「な、ななな、ないない! それよりお前、泣き止んだんならさっさと離れてろって!」
「嫌ですわ」
キッパリと言う万里花。
「い、いやいや、すっかり忘れてたけど、そろそろ千棘や小野寺たちが起きて……!」
「起きてきたら、見せつけて差し上げればよろしいのですわ」
今の自分と、らっくんの、この思いの通った有様を。
「お願いします、楽様。もう少し、もう少しだけ、このまま……」
もらったばかりのネックレスの手触りを確かめるように握りしめながら、万里花はあらためて楽の首元に抱きついた。
おしまい
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