サザエ「ここが毛利探偵事務所ね……」back

サザエ「ここが毛利探偵事務所ね……」


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1:
小五郎「おら! そこだ行けえ!」
蘭「もう、お父さん! せっかくの日曜なのに競馬中継なんか見ないでどこか連れてってよ!」
蘭「ねえ、コナン君」
コナン「う、うん」
小五郎「うるせえ! いつ探偵の依頼が来るともわからんだろ!」
小五郎「こうして家でおとなしくしてるのが一番なんだよ!」
小五郎「あーっ! 負けちまったじゃねえかちくしょお!!」
小五郎「くそっ、今月も赤字だ!!」
サザエ「あの、毛利探偵事務所はこちらでしょうか?」ガチャ
小五郎「おっ! 探偵の依頼ですか?」
小五郎「ほら見ろ、仕事だ仕事! 蘭、お茶をお出ししろ!」
コナン(ったく調子いいんだから……)
――――
――
3:
小五郎「それでどのような依頼ですか?」
サザエ「はい、今朝家の壁に落書きされているのを見つけて……」
サザエ「それで落書きの犯人を捜して欲しいんです」
小五郎「落書き? うーん、この名探偵毛利小五郎、色々と忙しいですから落書き事件くらいではねえ……」
小五郎「落書きなんてどうせ近所の悪がきの仕業だと思いますよ。そんなに心配しなくてもいいのでは?」
コナン(おっちゃん、仕事選んでやがるな……)
サザエ「た、ただの落書きじゃないんです!」
サザエ「とにかく、この落書きの写真を見てください!」スッ
壁に赤いペンキでこう書かれていた
 タラヲ氏ね
5:
小五郎「ほう、これは…………意味が解りませんな………怪文ですか?」
コナン(怪文? もしかして暗号か!? 探偵の血が騒ぐぜ!!)
コナン「ねー、僕にも見せて……」
小五郎「うるせえ! ガキは引っ込んでろ!」
コナン「ちぇっ……」
サザエ「……」
小五郎「うーん……ここに書かれているタラヲ氏というのは誰かの名前か……」
蘭「あ、これって…………」
7:
小五郎「なんだ蘭、お前この文字の意味が分かるのか?」
蘭「分かるってほどじゃないけど、これってネットで使われてる言葉じゃないかしら」
蘭「ほら、オタクをヲタクって書いたり、死ねを氏ねって書いたりするでしょ?」
蘭「これもヲと氏が使われてるからそうじゃないかなって」
小五郎「なるほど、つまりこの文章は『タラオ死ね』ということか」
サザエ「やっぱり、そうですよね……」
コナン(なんだ、暗号じゃなくてただの中傷かよ。期待して損した)
小五郎「じゃあ、あなたはただの落書き事件ではなく、この文章の意味を分かったうえで依頼に来たんですね」
サザエ「はい。もしかしたらと思って……死ねなんて物騒だったもので……」
9:
小五郎「タラオというのはご家族ですか?」
サザエ「はい……タラオは私の息子です……」
コナン「タラオ君は今いくつなの?」
サザエ「3歳です……」
小五郎「ほう、まだ3歳の子供に氏ねと……これは、かなり卑劣な落書きですなあ」
小五郎「警察には知らせましたか?」
サザエ「いいえ。子供のことを考えるとあまり大事にしたくないんです」
サザエ「できれば穏便に解決したくて……それで毛利さんに」
小五郎「なるほど。わかりました、この依頼お受けしましょう」
サザエ「ありがとうございます」
コナン「それじゃさっそく現場に行ってみようよ」
小五郎「ったく、お前に言われなくてもそうするっての」
11:
――
――――
蘭「うわー、素敵なお家ですねー」
小五郎「こりゃ昔ながらの日本家屋だな」
コナン「ねえ、表札は『いその』になってるけど?」
サザエ「この家は私の実家で、今は磯野家とフグ田家が同居してるのよ」
コナン「ふーん」
サザエ「さっ、とりあえず中へどうぞ」
コナン、小五郎、蘭「おじゃまします」
参考画像
12:
―― 客間 ――
マスオ「えぇ?!? あの有名な名探偵毛利小五郎が依頼を受けてくれたのかい!?」
サザエ「そうなのよ。やっぱり何でも言ってみるものね!」
小五郎「…………」
小五郎「……あのぉ、失礼ですが、そちらの方は?」
サザエ「あっ、すみません。この人は私の夫のフグ田マスオです」
マスオ「マスオです。いやあ、毛利さんに会えるなんて光栄ですよ。本当は僕が事務所に伺おうと思ったんですがね」
マスオ「恥ずかしながら昨日は遅くまで飲み歩いてて、今朝家に返ってきたばかりなんですよ」
小五郎「いえいえ。そんなのは私もよくやります」
フネ「お茶をどうぞ」
小五郎「あ、こりゃどうも」
サザエ「こっちは母の磯野フネです」
フネ「フネです。わざわざお越しくださってありがとうございます」
小五郎「私、探偵の毛利小五郎。そしてこっちが娘の蘭と居候のコナンです」
コナン、蘭「こんにちは」
14:
タラオ「ママー!!」
サザエ「タラちゃん! お客さんが居るからタマと遊んでなさいって言ったでしょ!」
タラオ「タマと遊ぶの飽きたです」
タラオ「メガネのお兄ちゃんも一緒に遊ぼうでーす!」
コナン(げっ……!!)
蘭「コナン君は遊んでてもいいのよ」
コナン「あははー、僕はおじさんの探偵術を見学しとくよー」
蘭「あら、そう?」
蘭「じゃあ、タラちゃんはあっちでお姉ちゃんと一緒に遊んでよっか」
タラオ「わーいでーす!」
コナン(ふぅ、危ねえ危ねえ……ガキの相手なんてあいつらだけで十分だぜ……)
15:
小五郎「今の子がタラオ君ですね?」
サザエ「はい」
マスオ「毛利さん、やっぱりタラちゃんの身に何か危険なことが起こりますかねえ?」
小五郎「いや、それはまだ何とも言えません」
マスオ「そうですか……」
波平「ただいまー」
サザエ「あっ、父さんが散歩から帰ってきたわ」
フネ「あなた、ずいぶんと遅かったですね」
波平「ああ、ちょっとノリスケの所にな……」
波平「おっ、これはこれは毛利さん。依頼を受けてくださったんですね」
波平「わしは磯野波平です」
小五郎「はあ、どうも」
17:
小五郎「それじゃ落書きの現場を……」
コナン「ねえ、この家にはタラオ君の他にも小学生くらいの男の子と女の子がいるんじゃない?」
マスオ「えぇー!? よくわかったね坊や! 確かに小学生の男の子と女の子が住んでるよー」
コナン「うん。だって玄関に置いてあった傘立てに子供用の傘が2本あったから」
コナン「2本ともタラオ君の傘にしては大きすぎるし、色が青と赤だったから小学生の男の子と女の子じゃないかなってね」
小五郎(くそっ、コナンのやつどうでもいいことしゃべりやがって)
波平「いやあ、これは驚きました。やはり毛利さんに依頼して正解だったな母さん」
フネ「ええ。毛利さんならきっと事件を解決してくれますね」
小五郎「こいつは私の弟子みたいなもんですからなあ、ガハハハハ」
コナン「その子たちの名前は?」
サザエ「私の弟の磯野カツオと妹の磯野ワカメよ」
マスオ「二人は今、外に遊びに行ってるよー」
小五郎「あのぉ……現場を見ない事には始まらないので、そろそろ……」
サザエ「あっ、そうですね。こちらです……」
18:
―― 庭 西側 ――
小五郎「ん? 壁にブルーシート?」
サザエ「ええ。ご近所に知られたら変な噂が立つので、落書きを隠したんです」
サザエ「上から塗りつぶそうとも考えたんですが、証拠ということで……」
小五郎「なるほど。では今だけでいいので取ってください」
マスオ「はい」ガサガサ
 タラヲ氏ね
小五郎「これが例の『タラヲ氏ね』の落書きですか……」
小五郎「この家の西側には窓が1つもないんですね。住人に気づかれずに犯行に及ぶには格好のポイントだ」
小五郎「この家の造りだと、庭には容易に侵入できますからなあ」
小五郎「おそらく犯人は、夜間あの裏木戸から庭に侵入し、この西側の壁にペンキで落書きをした……」
小五郎「サザエさん、マスオさん、タラオ君のどなたかで人から恨まれるようなことは?」
サザエ「私たちは恨みを買うようなことはしてません!」
小五郎「いや、あくまで可能性の話ですよ……落書きはタラオ君を名指ししてますからね……」
小五郎「それに最近は変な輩が多いですから、気づかない所で恨みを買ってることもあるんです」
21:
小五郎「しかし、手掛かりがこれだけだと犯人の特定は難しいですな。他に何か被害は?」
波平「わしの盆栽が壊されていました。証拠になると思ってそのままにしてあります」
小五郎「おお! それは重要な手掛かりになるかもしれません!」
波平「これです。わしの大切にしてた盆栽の1つです」
小五郎「確かに鉢が壊れてますね」
小五郎「タラオ君だけでなく波平さんの盆栽も被害を受けてるとなると……」
小五郎「こりゃ磯野家とフグ田家の全員を恨んでいるという線もありますな!」
波平「ほ、本当ですか!?」
コナン「でも、なんで壊された盆栽は1つだけなの?」
小五郎「ん……確かにそうだな……」
小五郎「そうか! 犯人は暗い夜に忍び込んだから、盆栽が見えなくてうっかり倒してしまったんだ!」
小五郎「これはフグ田家を狙った事件で間違いない! 犯人は盆栽を壊す凡ミスをしたんです!」
波平「……」
22:
コナン「だったらもっとおかしいよ」
コナン「犯人が北にある裏木戸から入って西の壁に落書きしたのなら、南西に置かれた盆栽の近くは通らないんじゃない?」
小五郎「あー、うるせえなあ! だったらどうだって言うんだよ!」
コナン「犯人はきっと東の正門から侵入して南の庭を通り、暗闇の中で盆栽を倒してから、西の壁に落書きしたんだよ」
小五郎「なるほど…………ん、それなら犯人はなぜ人目に付きやすい正門から入ったんだ?」
コナン「それは僕にもわからないけどねー」
小五郎「わかんねえなら黙ってろ!」ガツン
コナン「痛っ!!」
小五郎「ところで、窃盗などの被害はないんですよね?」
波平「はい。ありません。戸締りはきちんとしてますので」
小五郎「では一応、各部屋を見させてもらってから今日は終わりということで」
波平「わかりました」
コナン(犯人はなぜわざわざ正門を使ったのか……)
コナン(それにあの落書き……何か違和感が……)
コナン(なぜネットスラングを使ったんだ……)
24:
――――
――
波平「部屋はこれで全部です」
小五郎「それじゃ私たちはこれで失礼しますね」
小五郎「まあ、安心してください」
小五郎「文字は『殺す』でも『死ね』でもなく『氏ね』ですから、タラオ君への危害が加わることはないと思います」
小五郎「では私なりに調べてみますので、調査報告は後日ということで」
小五郎「些細なことでもいいので何か気づいたり、もしまた被害にあわれたりしたらご連絡ください」
サザエ「はい。今日は本当にありがとうございました」
蘭「タラちゃん、またね」
タラオ「お姉さん、バイバイですー」
コナン(蘭のやつ、子供の扱いうめえな。タラオ君がすっかりなついてやがる)
蘭「あれ? コナン君、タラちゃんに焼きもち焼いてるの?」
コナン(うるせー!)
26:
―― 1週間後の朝 毛利探偵事務所 ――
コナン「ねえ、おじさん。例の落書き事件で何か分かったことある?」
小五郎「ああ、一応あの家族の中で誰か恨まれるような人物はいないか調べたぞ」
小五郎「フグ田サザエ。主婦。明るく陽気だが、そそっかしくておっちょこちょい」
小五郎「フグ田マスオ。仕事は会社員。お人好しで心配性、特殊な家族構成ゆえに家では肩身の狭い思いをしてるかも」
小五郎「フグ田タラオ。あの歳にしては礼儀正しく比較的いい子。だが好奇心や自尊心が強く、迷惑に思っている者がいても不思議ではない」
小五郎「磯野波平。仕事は会社員。威厳のある父親で頑固者。短気でよく怒鳴っているらしい。双子の兄に海平という人物がいる」
小五郎「磯野フネ。主婦。温厚な性格で良妻賢母。恨まれることはまずないと思われる」
小五郎「磯野カツオ。勉強が苦手でいたずら好きの腕白坊主。よく父親に怒鳴られている」
小五郎「磯野ワカメ。心優しく、学力も悪くない。兄カツオとは対照的な妹」
小五郎「磯野家フグ田家は家庭内の問題もなく、皆うまくやっている。カツオ、ワカメ、タラオは兄弟のように仲が良い」
小五郎「まあこんなところだ」
コナン(ったく、そんだけかよ。相変わらず使えねえなあ……)
28:
小五郎「あと、調査の中で浮かんできた犯人かもしれない人物をピックアップしてみた。ちゃんと写真も撮ってあるぞ」
コナン(そうそう! そういうのを待ってたんだよ、おっちゃん!)
小五郎「波野ノリスケ。近所に住む磯野家の親戚で、出版社に勤めている。よく磯野家に出入りしているそうだ」
小五郎「ずうずうしい性格で波平から金を借りているらしい。タラオの友達のイクラという息子がいる」
小五郎「伊佐坂甚六。磯野家の南側に住んでいる浪人生だ。趣味は車。父に小説家の伊佐坂難物。難物の小説は波野ノリスケが担当している」
小五郎「穴子。マスオの同僚。マスオとは仲が良く、一緒にマージャンや飲みに行っている。恐妻家」
小五郎「中島。カツオの友達。メガネをかけた野球少年。小学生だが自分のパソコンを持っているらしい」
小五郎「堀川。ワカメの友達。奇怪な行動が目立つ。そのせいかワカメから鬱陶しがられることもあるとか」
小五郎「タケオ。タラオの友達。タラオよりすこし年上。1か月ほど前にタラオをいじめて怪我をさせたらしい」
小五郎「以上の6人だ」
コナン(なるほど、この中に犯人がいる可能性はある……)
prrrrrr……prrrrrr……
小五郎「ん、電話か」
小五郎「はい。毛利探偵事務所」ガチャ
29:
目暮『あー、毛利君かね』
小五郎「警部殿ですか。いったい何の御用で?」
目暮『君、磯野さんという家を知っているな?』
小五郎「ええ、磯野さんは私の依頼人です」
目暮『その磯野さんの家で殺人事件が起きたんだ! 大至急来てくれ!』
小五郎「なんですって!? わかりました! 今すぐそちらに向かいます!!」ガチャッ
コナン「どうしたのおじさん!?」
小五郎「大変だ! タラオ君が…………殺されたっ…………!!」
コナン「なにっ!」
蘭「タラちゃんが……」
小五郎「何をやってる、蘭! タクシーだ! 早くタクシーを呼べ!!」
蘭「は、はい」
31:
磯野家の周りは、すでに警察と野次馬でごった返していた。その中には、甚六、中島、堀川、の姿もあった。
―― 磯野家 茶の間 ――
高木「目暮警部! 毛利さんがお見えになりました」
目暮「うむ、こっちへ通せ」
マスオ「タラちゃん、怖がらなくても大丈夫だからね……」
タラオ「なんでこんなにたくさんの人がいるですか……」
小五郎「なーーーーーーーーーーっ!!!!!」」
小五郎「た、タラオ君……!! い、生きてる……!?」
目暮「毛利君! 君は一体、何を言っとるんだね!!」
目暮「殺されたのはフグ田サザエさんだ」
小五郎「えっ!? 死んだのはタラオ君じゃなくてサザエさん!?」
小五郎「電話で警部殿が被害者の名前を言わないので、あたしゃてっきり……」
目暮「わしが名前を言う前に、君が勝手に切ったんだろうが!」
小五郎「へ? そうでしたっけ?」
コナン(しかりしてくれよ……)
32:
タラオ「あ、蘭お姉さんです! こんにちはでーす」
蘭「こ、こんにちは。タラちゃん……」
コナン(タラオ君はまだ死というものを理解できないのか……)
カツオ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ 死ぬ゛な゛ん゛て゛ ひ゛と゛い゛よ゛姉ざあ゛あ゛あ゛ん゛」ボロボロ
ワカメ「わああああああああああん お姉ちゃああああああん」ボロボロ
コナン(あれがカツオ君とワカメちゃんだな……)
フネ「サザエ……」シクシク
マスオ「……」
波平「……」
コナン(子供にあれだけ泣かれちゃなあ……大人たちは意外と取り乱してない)
34:
―― サザエ マスオ タラオの部屋 ――
サザエ「」
高木「亡くなったのはフグ田サザエさん24歳」
高木「犯行時刻は深夜3時頃。マスオさんタラオ君と一緒に寝ているところを、侵入してきた犯人に掛布団の上から心臓をナイフで一突きにされました」
高木「サザエさんが刺された後、物音に気付いて起きたマスオさんが玄関に逃げて行く人影を見たそうです。凶器のナイフに指紋は残っていませんでした」
小五郎「マスオさん、犯人の特徴は何かありませんでしたか?」
マスオ「うーん、僕は寝起きだったから、誰かが玄関へ走って行くってことしか分かりませんでした……」
マスオ「ほら、僕はメガネをかけてるから……寝起きだとメガネがなくてよく見えなかったんです……」
マスオ「でもサザエが刺されてることにはすぐ気付いて、他に家族が襲われるかもしれないから、大声を出して知らせました」
波平「それで、家族全員がこの部屋に駆けつけたんです。警察と救急にはわしが電話しました」
小五郎「そうですか……。警部殿、何か手がかりになるようなものは?」
目暮「ああ、玄関の扉にこじ開けられた痕があった。あと玄関に犯人が残したと思われる紙が落ちていてな……」
高木「これです」
紙には赤いペンでこう書かれていた。
 タラヲ氏ね
35:
コナン、小五郎「これはっ……!!」
小五郎「これは壁に落書きされた文章と同じですよ!」
目暮「ああ。通報後すぐに警察でも怪しい人物がいないか周囲を捜査、聞き込みしたが、なかなか進展がなくてな」
目暮「落書き事件を毛利君が調べていると磯野さんから聞いて、君を呼んだというわけだ」
小五郎「そうだったんですか……」
小五郎「しかし、狙われているのがタラオ君ではなくサザエさんだったとは……」
小五郎「くそっ! 俺が早く犯人を捕まえていればっ!!」
コナン「ねえ、おじさん、『タラヲ氏ね』の紙が残されてるのに、殺されたのがタラオ君じゃないってことはこれって……」
小五郎「……殺害予告だ!! この事件まだ続くのか!?」
コナン(犯人は一体誰なんだ…………)
38:
目暮「とにかく毛利君が調べた情報を警察に提供してくれ」
小五郎「落書き事件の犯人なら目星は数人まで絞り込んでますよ、警部殿!」
小五郎「波野ノリスケ、伊佐坂甚六、穴子、中島、堀川、タケオの6人です!」
目暮「なに、本当かね!? よし、高木はそれらの人物をあたってくれ!!」
高木「はい!」
目暮「わしらは落書き現場に犯人の手掛かりが残ってないか、もう一度捜査だ」
小五郎「わかりました」
―― 庭 西側 ――
目暮「たしか容疑者の中には子供が3人いたな?」
小五郎「ええ。落書きなら子供のいたずらの可能性があります……」
小五郎「しかし、よく見ると無理ですね」
目暮「ん? どうしてだ?」
小五郎「見てください。落書きはかなり大きく書かれていて、子供の身長では高さが足りません」
目暮「なるほど」
コナン(ん? これって…………?)
40:
コナン(そうか! 俺の感じていた違和感はこれだったんだ!!)
コナン(それなら、もしかしてあっちは……………………)タッタッタッタッ
コナン(…………これはっ!!)ピキーン!!
コナン(だとすると犯人は……)
コナン(よし、だいたいは読めてきたぞ!)
コナン(しかし、これだけじゃまだダメだ。他に何かないか探そう……)
―― 台所 ――
コナン(ゴミ箱に何か残ってるかも)ガサゴソガサゴソ
コナン(犯人につながりそうなものは……紙テープ……ロウソク……クラッカー……)
コナン(なんだこれ。変なゴミが多いな)
蘭「あ、これってケーキの箱ですよね? 誰か誕生日なんですか?」
マスオ「そうだよー。昨日はタラちゃんの誕生日だったんだー」
コナン「ふーん」
コナン(それでパーティーグッズのごみが多かったのか)
42:
コナン「ん……蘭姉ちゃん、どうして誕生日ってわかったの? ケーキの箱が畳まれてて厚紙だけなのに?」
蘭「ほら、箱にロウソクの袋がついてるでしょ。普通のケーキにロウソクはつかないもの。あれはバースデーケーキよ」
コナン「あっ、そっか…………」
コナン「…………」
コナン(……いや…………これは、おかしい!!)
―― 庭 西側 ――
コナン(しかし何故……? …………ん……あれは盆栽か…………)テクテク
コナン(そういえば落書き犯は正門から侵入して南側を通り、盆栽を壊したんだったな)
コナン「ねえ、波平さん。壊された盆栽はもう片付けちゃったの?」
波平「そうだよ。壊れたものをずっと置いてると危ないからね」
コナン「壊された盆栽はここに置いてあったんだよね?」
波平「左様」
コナン「でも植木棚のスペースは盆栽2個分あいてるみたいだけど?」
波平「ああ、1か月ほど前に、そこにおいてた盆栽も壊れたんだよ」
コナン(1か月前!? 1か月前って確か……)
44:
コナン「どうして壊れたの??」
波平「ああ、えーっと、あれはどうしてだったかなあ……」
フネ「もうお父さんったら、カツオがボールをぶつけて壊したんですよ」
波平「そうそうカツオが壊したんだった。すっかり忘れてたよ」
コナン「…………」
コナン(確かおっちゃんの調査だと……)
コナン(そうか! 俺は間違ってたんだ!! 落書き犯は正門から侵入したんじゃない!!)
小五郎「私の勘だと波野ノリスケ、伊佐坂甚六あたりが怪しいです」
小五郎「特に伊佐坂甚六は浪人生でストレスも多いはず。最近の若者は何をしでかすかわかりませんからなあ」
目暮「なるほど確かにそれはあるな……」
高木「目暮警部!!」
目暮「おお高木か、それで容疑者の6人はどうだった?」
高木「それが……6人とも犯行時刻に完璧なアリバイがあるんです」
目暮「なにーーーっ!? 本当か!?」
46:
高木「はい。波野さんと穴子さんはそれぞれ夜遅くまで飲み歩いて、家で泥酔して寝てました」
高木「伊佐坂甚六さんは友人2人とドライブに行っていて、今朝家に帰ってきたそうです」
高木「堀川君とタケオ君の家には防犯カメラがあって、二人とも夜に出歩いた様子はありません」
高木「中島君は夜遅くまでインターネットをしていて、その記録も確認済みです」
コナン(やっぱりそうか)
目暮「どういうことだ、毛利君!?」
小五郎「いや、そんな……私に言われましても…………」
小五郎「あっ! わかりました! 犯人は波平さんの双子の兄、海平さんです!!」
小五郎「海平さんなら波平さんそっくりなので、怪しまれずに正門からも入れるし、もし見つかっても波平さんに罪をなすりつけることができます!」
目暮「なるほど!!」
高木「あのぉ……一応親族の方も調べたんですが……海平さんは福岡に住んでいて、昨夜も福岡にいたそうです……」
小五郎「はれ?」ガクッ
目暮「……」
47:
コナン(おそらく犯人はあの人で間違いない。あとはどう崩すかだが……それには決定的な証拠が……)
三郎「ちわー、三河屋でーす!」
高木「あっ! 困りますよ、勝手に入ってきたら!」
三郎「いやでも、磯野さんに頼まれてたビールをもってきたんですよ」
高木「ダメダメ!」
三郎「じゃあせめて、ケースの回収だけでもさせてください」
コナン「ケース?」
三郎「うん。磯野さんには瓶ビール20本入りのケースを1か月おきに持ってくるように頼まれてるんだ」
三郎「新しいビールを持ってくるときに、1か月前のビール瓶とケースを回収してるんだよ」
三郎「ケースは勝手口の中にあるから……」
目暮「殺人事件があったんです! 帰ってください!!」
三郎「そんなあ……」
49:
―― 台所 ――
コナン(ビールケースか……)
コナン(これだな……)
コナン(!? ケースに血がついている!?)
コナン(いや、血じゃない…………これは……ペンキ!!)
コナン(……見つけたぞ……決定的な証拠を!!)
コナン(あとは必要なものを用意して、いつものようにおっちゃんの身体を借りるか)
コナン「あっ、高木刑事!」
高木「何だい、コナン君?」
コナン「小五郎のおじさんがね、メモ帳とペンとビデオカメラを用意して、それで……」ゴニョゴニョ
コナン「……だってさ」
高木「わかったよ」
50:
―― 茶の間 ――
小五郎「犯人はおそらくあの6人以外のまだ捜査線上に上がっていない外部犯でしょうな」
目暮「うむ。こうなると捜査はわれわれ警察が足で稼ぐ方向だ。今回は毛利君の役目はここまでだな」
コナン(よし、この時計型麻酔銃でおっちゃんを狙って……)パシュッ
小五郎「じゃあ、これで私は帰らせていただっ」チクッ
小五郎「あぁぁ……あぁぁ…………」フラフラ フラフラ
小五郎(コナン)『くわけにはいきません』バタッ
小五郎『何故ならサザエさんを殺した犯人が分かったからです』
目暮「おお、毛利君! いつものやつが来たのかあ!!」
小五郎『磯野さんフグ田さんの家族をこの茶の間に集めてください』
目暮「わかった! 今すぐ呼んで来よう!」
――――
――
54:
フネ「毛利さん、犯人が分かったって本当ですか?」
小五郎『はい。事件の真相はすべてわかりました』
カツオ「本当に眠りながらしゃべってるよ!」
ワカメ「…………」
タラオ「眠りながらおしゃべりできるですか?」
マスオ「どうだろう、たぶん眠ってるポーズをとってるだけだと思うよー」
ノリスケ「いやぁ、本物の眠りの小五郎を見られるなんて、うれしいなぁ!!」
波平「ノリスケ!? なんでお前がここにいるんだ!?」
ノリスケ「そんなの決まってるじゃないですか!」
ノリスケ「あの有名な毛利小五郎がいるって聞いたから飛んできたんですよ!!」
波平「バカモーン!! お前ってやつはこんな時にまで!! サザエが殺されたんだぞ!!」
ノリスケ「ひえぇ……いいじゃないですか、おじさん…………」
目暮「毛利君、波野さんはどうする? 外に出てもらうか?」
小五郎『いえ、彼にもいてもらいましょう』
ノリスケ「さすが名探偵!! 懐が深いですねえ?」
56:
小五郎『では、全員そろったようなので私の推理をお話しします……』
小五郎『と、その前にみなさんにはあることをやってもらいます。詳細は高木刑事に伝えました』
目暮「いつの間に……」
波平「ちょっと待ってください! もしかして毛利さんは、私たち家族の中にサザエを殺した犯人がいるって言うんですか!?」
目暮「まあまあ……落ち着いてください、波平さん…………」
波平「まったく失礼な話だ! よし、わしらで磯野家の潔白を証明するぞ!!」
小五郎『いいですか? ……では、今から一人で隣の客間に行って、そこにいる高木刑事の指示に従ってもらいます』
小五郎『前の人がこの部屋に戻ってきたら、次の人が行ってください。順番は年齢の高い方からでお願いします』
波平「それなら、わし、母さん、マスオ君、カツオ、ワカメ、タラちゃんの順だな」
ノリスケ「あのぉ、それって僕もやるんですか?」
小五郎『そうですね、じゃあ、ノリスケさんは一番最後に客間に行ってください』
ノリスケ「わかりました」
高木「毛利さん、準備できましたー!」
小五郎『準備ができたようです。では始めてください』
波平「はい」
57:
――――――――
――――
――
ノリスケ「終わりました」
小五郎『これで全員ですね。では高木刑事、ビデオカメラをテレビにつないで再生してくれ』
目暮「ビデオカメラ? 一体、何のことだ?」
小五郎『高木刑事には、さっき別室でやったみなさんの行動をビデオに記録してもらいました』
小五郎『そのビデオに犯人の証拠が映っているはずです』
磯野家「…………」
高木「つなぎました。それじゃ、再生しますね」ピッ
波平「…………」
目暮「まず部屋に入ってきたのは波平さんだな」
目暮「…………ん? これは!?」
画面の中の波平はペンを手に持ち、紙にこう書いた。
 タラヲ氏ね
59:
小五郎『別室では高木刑事が、みなさんに『タラヲ氏ね』の字を書くよう指示をしたんです』
目暮「こんなことでサザエさんを殺した犯人が分かるのか?」
コナン『まあ見ててください』
ノリスケ「ん?」
波平「どうしたノリスケ?」
ノリスケ「あっ、いや、おじさんの字は上手だな? と思ったんですよ……」
波平「…………」
その後、映像はフネ、マスオの場面に続いた。
目暮「うーん、今のところ気になる点はないな。しいて挙げるなら、波平さん、マスオさんは横書きで、フネさんは縦書きということくらいか」
目暮「玄関に残されたメモと壁の落書きはどちらも横書きだったが……」
小五郎『次はカツオ君の番です。みなさん、よーく見ててください』
カツオ「…………」
画面の中のカツオは横書きで文字を書いた。
 タラヲ氏ね
61:
小五郎『はい、ここで一時停止!』
高木「ああ、はい……」ピッ
小五郎『どうですか? 今の所で何か気づきませんか?』
ノリスケ「おかしなところなんてあります?」
目暮「うーん、わからん……。君はどうだ高木?」
高木「えー、そうですねぇ……」
高木「僕にも普通の『タラヲ氏ね』に見えますが……」
ワカメ「書き順…………」
ワカメ「書き順が違ったわ!!」
ワカメ「お兄ちゃんの書いたタラヲの『ヲ』の字は書き順が違う!!」
一同「!!!???」
62:
小五郎『そうです! カツオ君は間違った書き順で「ヲ」を書くんです!』
小五郎『正しい「ヲ」の書き方は、ヨコ、ヨコ、ハライの3画。波平さんたちは全員この書き方でした』
小五郎『しかし、カツオ君の「ヲ」はまずカタカナの「フ」を書いた後で残りの横棒をつける、2画の書き方なんです!』
目暮「よし、巻き戻して確認だ!!」
高木「はい!!」ピッ
カツオ「…………」
目暮「た、たしかに書き順が違う!」
カツオ「そんなぁ……カタカナの『ヲ』が3画だったなんて…………」
カツオ「そんなの学校で習ってないよ!」
波平「バカモーン!! 嘘を言うな、嘘を!! 習うに決まっとるだろ!!!」
カツオ「ひぃっ…………」
波平「まったく、お前は小学5年生にもなってカタカナの書き方を知らんのか!!!」
小五郎『まあまあ、波平さん。そんなにカツオ君を怒らないでやってください』
小五郎『実際このような間違った書き順で書く人も少なくないそうです』
高木「そういや、僕もどっちの書き方してたか怪しいなぁ……カタカナの『ヲ』なんて滅多に書かないし……」
65:
小五郎『それじゃ、残りの映像も見てみましょう』
高木「続きを再生します」ピッ
ワカメが字を書く。
 タラヲ氏ね
目暮「ふむ。ワカメちゃんは、カツオ君の間違いに気付いただけあって『ヲ』の書き方は正しい」
高木「次はタラオ君です」
タラオは紙にグチャグチャの線を書いた。
小五郎『タラオ君はまだ幼いので字が書けないんですね』
小五郎『わかりました。では、また映像を止めてくれ』
高木「はい」ピッ
68:
小五郎『ご覧いただいたように、磯野家ではカツオ君だけが「ヲ」の書き順を間違っていました』
小五郎『最初にカタカナの「フ」を書くという書き順です』
小五郎『それを踏まえた上で、磯野家の壁に書かれた落書きの写真を見てください。おい、コナン』
コナン「はーい。これだよ」スッ
目暮「これはっ!! 『ヲ』の1画目と3画目が1本の線で続けて書かれている!!」
小五郎『ええ。落書きは刷毛と赤いペンキで書かれていたので「ヲ」の右上がつながっていることが容易に分かります』
小五郎『これは犯人が間違った書き順で「ヲ」を書く人物、という動かぬ証拠なんです!』
マスオ「えぇー!? そうだったのかいカツオ君!? まさか君が……」
波平「カツオ!! 日ごろから勉強してないからこんなことになるんだぞ!!」
カツオ「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
カツオ「いくら磯野家で書き順を間違ってるのが僕だけだからって、落書きが僕の仕業だという証拠にはならないよ!!」
カツオ「さっき毛利さんも言ってたじゃないか! 間違った書き順の人も少なくないって!!」
カツオ「これは間違った書き順をする外部の人間の仕業だよ!!」
69:
目暮「たしかにカツオ君の言う通りだ。これだけで犯人を特定するのは無理がある」
目暮「それに君も言ってたじゃないか、子供の身長では高さが足りないと」
カツオ「ほ、ほら見ろ!! 何が眠りの小五郎だ!!」
小五郎『ビールケース……』
カツオ「!?」
小五郎『カツオ君はビールケースに乗って高さを稼ぎ、大人の犯行に見せかけたんです!』
小五郎『台所に置いてあるケースには赤いペンキが付いていました。ケースが犯行に使われたことは間違いない』
小五郎『そして磯野家は夜間、戸締りをしているので勝手口にも当然鍵がかかっている』
小五郎『外部犯なら台所にあるビールケースには触れることすらできないんです』
小五郎『おそらくケースにはカツオ君の指紋が残っているでしょう』
小五郎『1か月前磯野家に配達されたビールケースに何故赤いペンキが付いたのか』
小五郎『まだ未成年のはずの君の指紋が何故ビールケースに残っているのか』
小五郎『これらをどう説明するんですか、カツオ君!!』
カツオ「…………」
71:
カツオ「そ、そうだよ……」
カツオ「毛利さんの言う通りだ……あの落書きは僕が書いた…………」
フネ「カツオ! どうしてタラちゃんを貶めるようなことをしたんだい!?」
カツオ「…………」
波平「コラッ!! 黙っててもわからんぞ!! 正直に言いなさい!!」
小五郎『お父さんに怒られないようにするためだね?』
カツオ「うん……」
波平「は? どういうことですか……??」
小五郎「波平さん、1か月前カツオ君に盆栽を壊されましたね?」
波平「はい」
小五郎『しかし、そのことを最初にコナンが聞いたとき、波平さんはよく覚えてませんでした』
小五郎『それは何故か。何故いつもイタズラをしてよく叱っているはずのカツオ君が壊したことを波平さんは覚えていなかったのか……』
75:
小五郎『理由は簡単。1か月前のその日、盆栽よりも気にかかることがあり、波平さんはカツオ君を怒る余裕がなかったんです』
小五郎『その日、タラオ君は友達のタケオ君にいじめられて怪我をしました』
小五郎『子供が怪我をすれば、家族が心配するのは当然。ましてや可愛い孫の怪我ともなれば気が気でないはず』
小五郎『波平さんの頭の中はタラオ君のことでいっぱい、盆栽のことなんか微塵もなかった』
小五郎『このようにして、偶然にも盆栽を壊したカツオ君は怒られずに済んだんです』
小五郎『しかし数日後、カツオ君はまた盆栽を壊してしまう』
小五郎『どうにか怒られない方法はないか考えたカツオ君は、タラオ君の怪我で怒られなかったことを思い出した』
小五郎『タラオ君がまた家族から心配されるようなことが起きれば、自分の失敗には注目されない……』
小五郎『そして波平さんの注意を盆栽からそらすため、壁に「タラヲ氏ね」の文字を落書きをした……というわけなんです』
波平「そんなことで……」
カツオ「…………」
77:
フネ「毛利さんのおっしゃる通りなのかい?」
カツオ「うん……」
カツオ「補足すると、高さで大人が書いたように見せかけたのは、より父さんに心配してもらうためで」
カツオ「ヲと氏ねの表現は中島の家でネットをした時に知ったんだ。さすがに直接的な書き方は避けたかったしね」
波平「何が補足だ!! バカモン!!」
波平「盆栽を壊すだけならまだしも、さらに悪事を重ねてどうする!!」
波平「変な所にばかり知恵を回さないで、その頭を少しは勉強に使いなさい!!」
波平「それに、まだ小さいタラちゃんを怖がらせるようなことをして恥ずかしくないのか!!!」
カツオ「ごめんなさい……」シュン
波平「母さん! 今夜はカツオの分の夕食は作らんでいいぞ!」
カツオ「そんなぁ……」
82:
ワカメ「今夜の夕食だけじゃないわ!」
ワカメ「お姉ちゃんを殺したのよ? お兄ちゃんは刑務所行きよ!!」
波平「そうだ……サザエのことをすっかり忘れておった…………」
ワカメ「わあああああん、お姉ちゃあああああん」ボロボロ
フネ「カツオがサザエを…………」シクシク
カツオ「待ってよ! た、確かに壁に落書きしたのは僕だけど、僕は姉さんを殺してなんかない!!」
波平「カツオ!! この期に及んで口答えするとは何事だ!!」
カツオ「信じてよ父さん!」
波平「今更信じられるか!」
波平「心配せんでもよい。たとえ家族を殺そうともお前は磯野家の長男、わしのたった一人の息子だ!」
波平「わしらはお前をいつまででも待つ。お前の居場所は磯野家にあるんだ。きれいになって帰ってこい!」
カツオ「うわあああぁぁぁぁぁ…………」
波平「さっ、刑事さん、カツオを連行してください」
目暮「ああ、はい……」
85:
小五郎『待ってください! 警部殿!!』
小五郎『カツオ君はサザエさんを殺してません!』
目暮「は?? 何を言っとるんだ!? カツオ君を犯人と言ったのは毛利君だぞ!」
小五郎『ええ確かに言いました。しかしそれは、あくまで落書き事件の犯人です!』
小五郎『落書き事件の犯人とサザエさん殺害の犯人は別人なんですよ!』
一同「!!!???」
目暮「なぁーーーにぃーーーーー!!??」
小五郎『その証拠に殺人犯が玄関に置いた「タラヲ氏ね」の紙を見てください』
高木「あーっ!! こっちの紙は正しい『ヲ』の書き順ですよ!!」
目暮「ほ、本当だっ!! 太いペンで書かれているからよく見ると分かるぞ、右上を続けて書いてないのがっ……!!」
88:
カツオ「ほら! 姉さんを殺したのは僕じゃないんだよ!」
カツオ「息子を人殺し扱いして、ひどいや! 謝ってよ父さん!!」
波平「カツオ……すまんかった…………」
波平「……って調子に乗るな!!」
フネ「しかし、それじゃ犯人は誰なんですか?」
カツオ「僕じゃないことは確かだね!!」
カツオ「なんたって僕はカタカナの書き順を知らないんだから!!」
波平「お前と言う奴は、まったく…………得意げに言うようなことじゃないぞ…………」
波平「しかし良かった。殺人は外部犯なんですね? そうですよね毛利さん?」
小五郎『いいえ。残念ながら犯人はこの中にいます……』
小五郎『犯人はあなたです…………』
小五郎『マスオさん!!』
一同「!!!???」
90:
マスオ「えぇー!? 僕がサザエを殺したって言うんですかー!?」
マスオ「冗談はよしてくださいよ! 僕は犯人が逃げて行くところを見たんですよー!!」
小五郎『その証言が嘘だとしたら? マスオさん以外に犯人の姿を見た人はいませんよ?』
マスオ「くっ……」
小五郎『犯行はこうです。深夜、家族全員が寝静まった頃、マスオさんはこっそり部屋を抜け出し、玄関に行った』
小五郎『犯人が外から侵入したように見せかけるため、ドアにこじ開けた痕跡を残したんです』
小五郎『さらに落書き事件と同一犯に思わせるため『タラヲ氏ね』を書いた紙を玄関に置く』
小五郎『こうして殺人を外部犯の仕業に見せかけたんです。普通、自分の家に落書きをする人なんていませんからね』
小五郎『そして自室に戻り、部屋に隠していたナイフでサザエさんを掛布団の上から刺した』
マスオ「…………」
92:
小五郎『サザエさんの死亡を確認すると、侵入者を目撃したふりをして、大声を出し、家族を部屋に集めた』
小五郎『犯人を見たがメガネがなくて特徴が分からなかったというのは落書き犯に罪を着せるためです』
小五郎『誰が落書きの犯人か分からないので、誰にでもあてはまる証言をしたんですなあ』
小五郎『他の家族の方が犯人だとすると、玄関から外に出たと見せかけて庭を通り自室に向かうという方法もなくはないです』
小五郎『しかしマスオさんの証言だとそれは無理があります。マスオさんはすぐに家族を大声で呼び集めたんでしたね?』
小五郎『波平さんフネさん、カツオ君ワカメちゃんは寝室が同じなので互いが犯行時刻に寝ていたという証人になるんですよ!』
マスオ「………」
95:
マスオ「推測だ……」
マスオ「そんなの推測だっ……!!」
マスオ「たしかに僕以外の家族が犯人じゃないという証拠にはなってる……」
マスオ「しかし僕が犯人だという証拠にはなってない!!」
マスオ「やっぱり外部の人間がサザエを殺したんだ!!」
マスオ「僕が犯人だというなら証拠を出せ!! 証拠を!!」
小五郎『…………』
小五郎『わかりました。では、その証拠をお見せしましょう』
マスオ「え!?」
小五郎『高木刑事、一時停止していたビデオを再生してくれ』
高木「あっ、はい! わかりました……」
マスオ「ふんっ、そんなビデオに何が映ってるというんだ!!」
マスオ「どうせ証拠なんてないんでしょ。悪あがきはよしてくださいよ、毛利さん!!」
高木「タラオ君が書き終わった場面からです」ピッ
96:
―― ビデオ ――
高木『はい、ありがとう、タラオ君』
高木『みんなのいる部屋に戻っていいよ』
タラオ『はいでーす!』
高木『次の方どうぞー』
ノリスケ『はい。で、何をすればいいんですか?』
高木『あ、その前にふすまを閉めてください』
ノリスケ『ああ、すみません』スッ
高木『では、この紙に『タラヲ氏ね』と書いてください』
ノリスケ『わかりました。書くだけでいいんですね』
ノリスケ『でも、なんだってそんな言葉書かせるんですかー?』
そう言うとノリスケは右手にペンを持ち紙にこう書いた。
 タラオ死ね
一同「!!!???」
97:
波平「こ、これはどういうことだ、ノリスケ!?」
ノリスケ「いや、どうって言われましてもね……僕はただ言われた通りに書いただけですし……」
ノリスケ「というか、僕にはみんなが書いた『タラヲ氏ね』の方がよっぽど不思議ですよ。何ですかあれは??」
カツオ「……そうか!! 刑事さんは口頭で『タラヲ氏ね』と書くように言っただけだ!!」
カツオ「だからノリスケおじさんは普通の字で『タラオ死ね』と書いたんだよ!!」
小五郎『その通り! 波平さん達はあの落書きを見ているから正しく『タラヲ氏ね』と書けた』
小五郎『当然、ノリスケさんのように落書きを見てない人には『タラヲ氏ね』なんて特殊な表現で書けるはずがないんです!』
小五郎『磯野さんは世間体を気にして、壁の落書きをブルーシートで覆っていました』
小五郎『つまり『タラヲ氏ね』の文字を知っているのは落書き犯とこの家に住んでいる方だけ!』
小五郎『そして落書き犯がカツオ君だと判明した今、『タラヲ氏ね』の字を知ってるのは私たちと警察を除いて磯野家だけです』
小五郎『これは『タラヲ氏ね』の文字を残した殺人犯が磯野家の中にいるという証拠なんですよ! マスオさん!!』
マスオ「……」
101:
マスオ「まいったな……」
マスオ「毛利さん、僕の負けです……」
マスオ「まさかカツオ君が落書き犯だったなんてね」
マスオ「こんな事なら『タラヲ氏ね』なんて書いた紙を置くんじゃなかったなあ……」
波平「ま、マスオ君……どうして君が!?」
フネ「サザエともうまくやってたじゃないですか!?」
マスオ「…………」
コナン『おそらくですが、動機はこの世界の時空のことじゃないですか?』
マスオ「驚いた、そこまで当てるとは……さすが名探偵だ」
波平「マスオ君!! そのことはっ……!!」
マスオ「お義父さん、毛利さんには隠しても無駄だと思います。この人は全てお見通しですよ」
波平「……」
105:
小五郎『この世界の住人は歳を取らないんですね?』
小五郎『いくら歳月が経とうと、いくらテクノロジーが進歩しようとも、同じ年齢、同じ学年を繰り返す……』
マスオ「そうです」
小五郎『私がこれに気付いたのはケーキの箱を見たときでした。昨日はタラオ君の誕生日だと伺いました』
小五郎『箱には付属のロウソクが7本。ゴミ箱にはクリームとスポンジが付いている溶けたロウソクが3本』
小五郎『あれは10本入りだったんですなあ。そしてケーキには3本のロウソクを刺した……』
小五郎『しかしこれだとおかしい。タラオ君は私が最初に会ったときも3歳。本来ならロウソクは4本使っているはずなんです』
小五郎『タラオ君は誕生日を迎える前も、迎えた後も3歳だった。ここから導かれる答えは一つ』
小五郎『磯野家のある世界は時空が歪んでいる……』
磯野家「…………」
マスオ「いつからか、僕たちは奇妙な世界に閉じ込められたんです……」
111:
BGM
マスオ「同じ年齢を繰り返して人生が全く進まない……そのことは数年もすれば家族は皆気付きました」
マスオ「でも、そのことを言ってはいけない空気があるんです。僕たちは気づいてないふりをして日常を過ごすんですよ」
マスオ「何かしら騒動は起きるが、必ず平和なお決まりの日常……そんな永遠に気が狂いそうでした……」
マスオ「そして昨日……もう何回目かもわからないタラちゃん3歳の誕生日の夜……」
マスオ「僕はサザエに言ってやりましたよ。『タラちゃんの大きくなった姿を見たくないのかい?』ってね」
マスオ「そしたらサザエのやつ……」
サザエ『あら、あなたもしかして閉ざされた時空のことを気にしてるんじゃないでしょうね?』
マスオ「って。正直、僕はうれしかったです」
マスオ「やっとこの世界が狂っていることに真剣に向き合って夫婦一緒に悩めると思ったから!」
マスオ「でも、サザエは続けて……」
サザエ『私は結構気に入ってるわよ。いつまでも若くてきれいにいられてるなんて良いじゃない』
マスオ「って言ったんです!!」
マスオ「サザエの奴は自分の事しか考えてなかったんですよ!!」
マスオ「タラちゃんのことは……これっぽっちも…………」
115:
マスオ「だから殺してやったんです!!」
マスオ「前々から思っていました。誰か死ねば……誰かを殺せば、止まった時間が動き出すんじゃないかって」
マスオ「サザエが死ねば抜け出せるかもしれないんです!! この狂った平和から!!」
マスオ「毛利さん! いくら名探偵でも閉ざされた者の気持ち、これだけはあなたにだって分かりませんよ!!」
小五郎『…………』
蘭「分かります……」
コナン(蘭……!?)
蘭「私たちにだって、この世界の人の気持ちは分かります!」
蘭「私たちの住んでる世界も時間の流れ方がおかしいから……」
マスオ「え!?」
蘭「この世界のとは少し違うけど、私たちの世界も時空が歪んでるんです!」
蘭「ある日……私の幼馴染が姿を見せなくなってから…………時の流れ方が変わったんです…………」
コナン(…………)
117:
蘭「でも、だからって人を殺そうなんて気持ちは分かりません!」
蘭「私のいる世界は毎週と言っていいほど殺人事件が起きるんです……」
蘭「そのたびにいつも思います……せめて時空は戻らなくてもいいから、平和な日常が続けばいいのにって…………」
コナン(…………)
蘭「時空を正すために家族を殺すだなんて……やっぱりそんなのおかしいですよ!」
マスオ「……」
蘭「それにこの前一緒に遊んだ時、タラちゃん言ってました……ママとパパは僕の自慢だって……」
蘭「ママにはいつまでもきれいにいて欲しい、パパにはいつまでもかっこよくいて欲しいって…………」
マスオ「え!?」
蘭「きっとサザエさんはそのことを言ってたんだと思います……悩んでるマスオさんのために冗談で……」
マスオ「そ、そんな…………」
マスオ「それなのに僕はサザエに何て事を…………」ガクッ
マスオ「ぅぅ……ぅぅぅ…………サザエ……サザエぇ…………」
一同「…………」
こうして、変わらない時の中で心だけを変えてしまった男の悲しい事件は幕を閉じた……
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