魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」【後編】back

魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」【後編】


続き・詳細・画像をみる

7:
スレ立てさんきゅなー。
まだなんも書いてないからまた書き溜めたら来るw
10:
【説明書】
スレタイ
魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」
この度はスレを開いてくださり誠にありがとうございます。
11:
【一レスで解るストーリー】
「はい」と「いいえ」しか喋れない勇者と、魔法が使える魔法使いと、剣で戦う女剣士が、魔王に囚われた魂を解放する為に、ボスである御当地の食べ物を食しながら魔王がいる北の館を目指す、そんなほのぼのとしたお話です。
12:
【キャラクター】
勇者/人間/男
素朴な村の素朴な家に生まれた男児。
無口であり、賢そう。と言われたときに「はい」と答え、両親に勇者の疑いをかけられたと思ったらやっぱり勇者だった。
双子の弟を亡くしている。
口癖は「はい」と「いいえ」
魔法使い/人間/女
食う、寝る、勇者様ぁっ!!
女剣士/人間/女
ブラコン。
魔物に弟を殺された為、弟の魂は魔王に囚われている。
13:
すべすべ夫人
すべすべしたものが、とぉっても大好きなのよぉ!
王様
とっても偉い人。
魔女/綺麗で優しいお姉さん
なんか多分色々知ってる。でも人任せ。
巫女&和の村・青年
なんか多分リア充。
狩人・男
実は女剣士が好き。
国の魔導士達
病んでる集団。
神父
お馴染みの神父様。
その他、大勢。
14:
【歴代のボスたち】
素朴な村の隣街/酒場のマスターのサンドウィッチ
ショックだけど美味しい。
水の都/水檸檬
水を噛むと言うよく解らない感覚が面白いらしい。
首都/王!シュークリーム
シュークリーム。クリームがすべすべしている。
和の村/どぅんご
団子ではなくどぅんご。
なんかどぅるっとしたのが入ってる。
16:
あれはボスって扱いだったのか・・・
20:
【林】
魔法使い「あ、あれ?私達、一歩しか出てないのに……」
女剣士「どこにも、和の村が無いな。いや……見えないだけで、本当はあるのかもしれないが」
魔法使い「なんだか寂しいですけれど、見えちゃうともっと寂しくなりそうだから……良いかも知れませんね」
女剣士「そうだな」
21:
魔法使い「……次期の長様は、今までの長とは違う……。真実を、知っているから」
女剣士「あぁ……どうするかは、あいつ次第だな」
魔法使い「きっと、大丈夫ですよね。勇者様……」
22:
【林を抜けた道】
魔法使い「誰もいない、広い……大地……」
魔法使い「なんだかちょっと、孤独を感じますね。勇者様」
女剣士「だが、一人じゃないだけマシだな」
魔法使い「そうですね!」
女剣士「しかし本当に、自然が続くだけだな」
23:
【どこまでも続く道】
魔法使い「ここでお知らせです」
女剣士「ん?」
魔法使い「なんと、今、お昼時です」
女剣士「そうか」
魔法使い「そうか。……じゃないですよ!そうなんですよ!お昼ですよお昼!ご飯ですよぉ!!」
24:
【どこまでも続く道】
女剣士「勇者殿、そろそろ休憩をいれないか?」
魔法使い「あっ、あー……うっ、うー……ひもじい……さもしい……あさましい……お腹と背中がぁ、くっつくぞ!な、気分……否、なる……なるー……」
女剣士「アレが欝陶しくて適わん」
25:
女剣士「ん?休憩を取るのは構わない……が、食べ物は無い?おい、どう言うことだ?確か、和の村で食料は頂いたのが……」
魔法使い「うぅ……ご飯……」
26:
【どこまでも続く道】
女剣士「貴っ様ぁ!!」
魔法使い「なんですか女剣士さん……空腹で萎れた私に鞭を打つなんて……」
女剣士「何故昼食を朝食のすぐ後に食べていた!?予定より早く食料が無くなって当然だろうがっ!?」
魔法使い「いやいや、美味しそうな物がそこにあったらする事は一つ。食べるしかないじゃないですか!」
27:
女剣士「馬鹿か貴様は!?そのせいで貴様が待ち望んでいるお昼が消えたのだぞ!?」
魔法使い「!?」
魔法使い「なっ!?だっ、誰ですか……!?お昼を消すなどと言う悪逆非道な行いをしたのは!!」
女剣士「貴様だ馬鹿」
魔法使い「あいたっ!」
28:
【大きな木の下】
>>勇者は魔物に切り掛かった!
>>魔物は灰になって風に乗っていった……
魔法使い「魔物が木に集まってると思ったら……」
>>大きな木には橙色のぺとぺとした何かがなっている
29:
魔法使い「これは……なんでしょう?食べられるのでしょうか……?」
女剣士「見た目と触った感じは、グミみたいだがな……」
>>採ってみますか?
勇者「はい」
30:
女剣士「待てっ!勇者殿は触らないでくれ!まずは、ワタシ達が安全かどうかを確認する」
魔法使い「そうですよ勇者様!痺れちゃったりしたら大変ですからっ。勝手なことをしないでください!」
女剣士「貴様が言えることではないぞ、貴様が」
31:
魔法使い「うっ……。で、では、せめてもの罪滅ぼしに、私が先陣を切って毒見役をさせていただきます」
女剣士「うむ」
魔法使い「いざ、ごめんっ!!」
>>魔法使いは橙色のぺとぺとした何かを食べた!
32:
魔法使い「!!」
女剣士「ど、どうだ……!?」
魔法使い「こ、これは!?……い、いや、まだ、解りませんっ……!」
>>魔法使いは橙色のぺとぺとした何かを食べた!
33:
魔法使い「これを、勇者様にっ……!?」
女剣士「やはり、食に適さないか!?」
>>魔法使いは橙色のぺとぺとした何かを食べた!
34:
魔法使い「私は……その……もうちょっと食べてみあぐっ!女剣士さん!?何故、毒味を邪魔するのですかっ!?」
女剣士「貴様のソレは最早毒味ではないだろう。両手で食べるな両手で」
35:
【大きな木の下】
魔法使い「えー……と言う訳で毒味の結果はですね、食べても問題無いと思います」
女剣士「一応ワタシも食べてみたが、問題は無いだろう。味は……にんじんを食べているような気分になる」
魔法使い「私の……採れたての橙色のぺとぺとした何かをどうぞ、勇者様!」
女剣士「待て!ワタシのでもよければ、その……食べるが良い」
36:
>>橙色のぺとぺとした何かを食べますか?
勇者「はい」
>>しかし勇者は食べられなかった!
魔法使い「!!」
女剣士「!!」
37:
女剣士「なっ、なんだ!?今、物凄い早さで何かが駆け抜けて行ったぞ!?」
魔法使い「あぁっ!橙色のぺとぺとした何かが、全部無くなってますよ!?」
女剣士「何っ!?」
38:
魔法使い「勇者様、どうして全部食べちゃうんですかぁ!」
勇者「いいえ」
魔法使い「自分じゃないって……なら、誰が!白状するまで揺さぶりの刑を止めませんからねっ!?」
39:
兎娘「ぎゅみぃ〜!きゃろぎゅみぃ〜!!」
女剣士「こいつだな」
>>女剣士は、兎の着ぐるみを着た娘を掴んでいる
>>兎娘は橙色のぺとぺとした何かを頬張っている……
40:
兎娘「おまえたち!感謝するゾ!お礼にきゃろぎゅみを分けてやろうゾ!」
女剣士「元からそれはワタシ達が採ったものなのだが」
兎娘「違うゾ?きゃろぎゅみは、我らのものだゾ!」
魔法使い「えっと……この大きな木は、兎娘さん達の所有している木と言うことですか?」
41:
兎娘「そうだゾ!きゃろぎゅみは我ら皆のもの!」
魔法使い「そうだったんですね。勝手に食べてしまってすみません。……お仲間さんは、どこにいるんですか?」
兎娘「それはだな、大きな木のし……たおっとぅ!?えーと、ずっと遠い、あっちかあっち側に皆居るんだぞ!あ、あー、でも、それは、内緒なん、内緒だったんだゾっ!我のおっちゃめ〜……」
兎娘「さらばなんだゾ!」
42:
魔法使い「あっ!」
女剣士「逃げ足が早いな。だが……行き先がもろばれだ」
魔法使い「大きな木の裏側ですね。行ってみましょう?勇者様」
43:
【大きな木の裏側】
女剣士「ただの木の幹だな。兎娘が隠れられるような場所も無いが……」
魔法使い「うーん……あっ!」
女剣士「どうした、魔法使い」
魔法使い「この木……中の方から強い、エレメンタルを感じます。もしかしたら、空間魔法が広がっているのかもしれません。ここは、その入り口です」
44:
女剣士「入り口と言うことは……ここから入れるのか?行こう、勇者殿!」
女剣士「…………」
女剣士「おい!木の幹がざらざらとして痛いぞ!?」
魔法使い「いや、そのまま進もうとしても木の幹と仲良くなるだけですよ!あぁもう、勇者様の額に擦り傷出来ちゃったじゃないですか〜!」
45:
女剣士「何っ!?すまない勇者殿、今、消毒を……」
>>女剣士の顔が近付いてくる……
魔法使い「ちょっと何する気ですかっ!?」
>>女剣士の顔は離れた
46:
女剣士「何って……消毒だが?離れては傷口を拭えないだろう?」
魔法使い「あ、水に濡らした布……」
47:
【大きな木の裏側】
魔法使い「はぁ……お腹すきましたね……」
女剣士「この場合一番すいているのは何も食べていない勇者殿のはずだぞ」
魔法使い「うー……兎娘さぁん!」
兎娘「呼んだ?」
女剣士「出た」
魔法使い「嘘っ!?」
48:
【大きな木の裏側】
兎娘「おまえたち、お礼するゾ!」
魔法使い「えっ?」
兎娘「きゃろぎゅみ採れた!話した!リーダー大喜びだゾ!入れていいって、許し出たゾ!」
49:
魔法使い「勇者様、粘り勝ちですよ、粘り勝ち!」
兎娘「おまえたち、木の都に入れるゾ!そやー!」
>>勇者達は兎娘に蹴られた!
>>木の幹が顔前に迫る!!
50:
【木の都】
>>勇者達は大きな葉に乗って浮いている
魔法使い「わぁ……!凄い……!木の中に木があって、たくさんの自然があって、都がありますよ、勇者様!」
女剣士「これは、美しい所だな……」
兎娘「木の都、空気綺麗!おまえたち、汚いゾ!」
51:
女剣士「むっ……確かに旅をしているが、和の村を出たのは割と……」
兎娘「先ずは綺麗にするゾ!風っ!」
魔法使い「わわっ!すごい、葉っぱが風に乗って……どこに行くんですかこれ!?」
兎娘「清浄の葉まで……風っ!」
52:
【清浄の葉】
兎娘「おまえたち、良い言われるまでこの葉に包まるゾ!良い言われるまで、動くダメ!絶対!我、見てるゾ!」
魔法使い「なんだか大きな葉っぱに包まれるなんて……ファンタジーですよ、ファンタジー!」
女剣士「こんな大きな葉が、よくあるものだ……」
53:
魔法使い「勇者様、なんだか楽しくなってきましたね!」
兎娘「おまえたち、どうして笑っていられる?清浄の葉、ボロボロだゾ?」
魔法使い「えっ……?」
>>葉はボロボロと崩れ落ちてしまった……
54:
兎娘「よく生きられたものだゾ……」
女剣士「兎娘……?」
兎娘「う、いや……とにかく浄化は済んだゾ!リーダーの所に連れていく!」
兎娘「乗れっ!」
>>勇者達は大きな葉に乗った
兎娘「風っ!」
56:
【木の都/空中】
女剣士「普通の格好をしている者ばかりだな……」
魔法使い「兎娘さんみたいに着ぐるみを着ている人は、少ないですね」
兎娘「我達は、特殊チームだからな!」
魔法使い「特殊チーム……?」
兎娘「そうだゾ!あっ、リーダーはここにいるんだゾ!風っ!」
57:
【木の都/葉の宮】
兎娘「リーダー!連れてきたゾ!」
リーダー「ありがとう、兎娘。外に行ってきて疲れただろう?部屋で休んできて良いぜ」
女剣士「普通の男だな」
兎娘「いや、あいつら案内するゾ!だからここで待つ!」
58:
リーダー「そうか、ありがとう」
兎娘「ふふん!褒めると良いんだゾ!」
リーダー「偉いぞ、偉い!」
兎娘「おまえたち!この、今、今!我に偉いぞ偉いをしてくれているのがリーダーだゾ!」
59:
リーダー「きゃろぎゅみを回収する際に兎娘が世話になったと聞いてな。……ありがとう」
魔法使い「いえ、私達勝手に食べちゃってて……。皆さんの食べ物だとは知らなかったとは言え、すみません……」
リーダー「気にすることはないぜ。こいつもよく盗み食いしやがるからな!」
兎娘「今回はちょっとだけだゾ!」
60:
リーダー「それより、木に集まっていた魔物を倒してくれたと聞いたんだが」
兎娘「我、見たゾ!強い!」
リーダー「あの魔物達には困っていたんだ。感謝しきれないぜ……ありがとうな!」
兎娘「我、きゃろぎゅみ回収、無傷で戻ってこられた。感謝するゾ!」
61:
リーダー「よければ、今日一日休んでいってくれ」
女剣士「だがワタシ達は……」
リーダー「寝床も食事も勿論用意するぜ?」
魔法使い「わざわざ野宿する必要ないですよ!ね?勇者様、ご好意に甘えましょう?」
62:
勇者「はい」
魔法使い「やったぁー!」
女剣士「まぁ……ちゃんと眠れるのは、良いことだしな」
63:
【木の都/葉の宮】
兎娘「リーダー!難しい話は夜にするんだゾ!こいつかわいそう!」
魔法使い「勇者様が……?」
兎娘「我は、解る!こいつぺこぺこ!食わせるゾ!」
女剣士「ま、待てっ!」
64:
魔法使い「あっ、勇者様!女剣士さんっ!待ってください、私も……!」
リーダー「キミは待ってほしい」
魔法使い「え……?」
65:
【木の都/空中】
>>勇者達は大きな葉に乗っている
兎娘「リーダー、危ない。難しい、長い話始める顔したゾ!それ、面倒臭い!」
女剣士「しかし、魔法使いを置いてきてしまったな……」
兎娘「そう、リーダー、魔法使いと話したがってたゾ!多分、難しい魔法の話!」
66:
女剣士「リーダーは、魔法が使えるのか?」
兎娘「そうだゾ!魔法でここを作った、だからリーダー!なんかどうにかするやつを作ったのも、リーダー!」
女剣士「なんかどうにか、とは?」
兎娘「なんかどうにかは、なんかどうにかだぞ!」
67:
兎娘「我、難しいのは解らないゾ!でも、美味しいぎゅみ、知ってる!今から行くゾ!風っ!」
81:
【木の都/ぎゅみ飯店】
兎娘「気にせず食べろ!我のお礼だゾ!」
女剣士「……グミみたいな、ご飯だな」
兎娘「これ、ふぃしゅぎゅみ!魚と一緒だゾ!こっちは、ぽくびぎゅみ!肉と一緒だゾ!」
兎娘「ぎゅみ、便利!ほんとのと、味、栄養、一緒だゾ!」
82:
女剣士「勇者殿、ありがたく、いただこう。……いただきます」
>>勇者はぽくびぎゅみを食べた!
>>濃厚な肉汁が口の中に広がる……
>>これは……美味しい!
女剣士「凄いな!グミのような食感ではあるが、味は本物だぞ!」
83:
兎娘「気に入ったか?」
勇者「はい」
兎娘「そうか!良かったゾ!気にせず食べる!それ、我、嬉しい!」
>>勇者達は美味しい一時を過ごした
84:
【木の都/ぎゅみ飯店】
兎娘「我は、甘いのを頼んでくるゾ!」
>>兎娘は席を離れた
女剣士「……気付かなくてすまなかったな、勇者殿」
女剣士「何が、って……魔法使いが食べていた分、調整していたのは勇者殿だろう?全く……貴様は魔法使いに対して甘いぞ?」
85:
女剣士「笑い事じゃない。……まぁ今は、魔法使いもいない。気にせず食べろ。だが、最悪ワタシ達は食べなくても死なぬのだから、勇者殿はしっかり食事を摂ってくれ」
女剣士「……死ななくてもお腹はすく。それはそうだが、勇者殿の場合は……!」
兎娘「なんかおまえ、難しい顔!こいつ、困る!甘いの食べる、落ち着くゾ?」
女剣士「あ、あぁ……」
兎娘「あぷるぎゅみ、甘いゾ!食べる!」
86:
【木の都/ぎゅみ飯店】
兎娘「そだ。おまえたち、どうして外にいた?外いた、皆ここ。なのに、おまえたち、いた」
女剣士「ワタシ達は、魔王に囚われた魂を解放する為に、北の館に向かっていたのだ」
兎娘「ううーん……?難しい、嫌い!けど、北は、だめ。解る!」
兎娘「外、北、何もない!死ぬゾ?おまえたち、危ない!」
87:
女剣士「ワタシは……死なないから大丈夫だ。勇者殿も、危なくないようにワタシが守る」
兎娘「でもおまえたち、清浄の葉、ボロボロだったゾ……?」
女剣士「フッ……ワタシ達の身を案じてくれているのだな。ありがとう」
兎娘「!!」
88:
兎娘「ありがとう!!偉い偉い、するか!?我は、いつでも偉い偉いは、良いゾ!」
女剣士「フフッ……あぁ、人の身を案じれるのは偉いぞ。優しいな」
兎娘「ふふん!」
兎娘「ぎゅみ、たくさん食べた!そろそろ戻るゾ!」
89:
【木の都/葉の宮】
魔法使い「ゆ、しゃ、さま……どこ……です、か……あ、あぁ……野兎の、シチュー……がぶー……」
兎娘「痛いゾ!我、ぎゅみ違うっ!!」
女剣士「しっかりしろ、魔法使い!」
魔法使い「マシュマロ……」
女剣士「なっ!?貴様どこを……うあっ!?」
91:
魔法使い「勇者様……」
>>勇者は魔法使いに噛まれた!
女剣士「待て待て!何故勇者殿と認識していながら噛むのだ!」
>>魔法使いは混乱している!
92:
【木の都/葉の宮】
兎娘「仕方ない!おまえ、我の部屋くる!」
魔法使い「野兎のソテー……」
兎娘「ぎゃうっ!!」
女剣士「すまないな、兎娘。魔法使いはワタシが担いで行く。部屋まで案内してくれ」
兎娘「承知!こっちだゾ!」
93:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
兎娘「このぎゅみ、食べる!おまえ、我も、こいつもあいつも食べない!」
魔法使い「はいー…………うぇっ!?」
女剣士「魔法使いが……食べ物を吐いた!?だと!?」
兎娘「おまえ、どうしたっ?」
94:
魔法使い「う、うー……」
猫娘「兎娘ー……って、あんた何してんの!」
兎娘「こいつ、ぺこぺこ!我のぎゅみあげたゾ!出した!」
猫娘「あんたのぎゅみあげたって……馬鹿じゃないの!?あんたのぎゅみには薬が入ってるでしょーが!」
兎娘「こいつぺこぺこ……急ぎだったんだゾ……」
95:
猫娘「しょうがないなぁ!あたいのまふぃぎゅみをあげるわ!」
魔法使い「まふぃ……まーふぃー……マフィンの香り!!」
猫娘「きゃあっ!」
魔法使い「狙った獲物は、ぱくーっ!」
女剣士「すまない、大丈夫か?」
96:
猫娘「えっ……あ、大丈夫、です……。あの、お名前は?」
女剣士「む?」
猫娘「えっと、えっと!あ、あたいは猫娘って言うんだ!」
兎娘「でも男だゾ!」
女剣士「えっ?」
猫娘「あっ、こらっ!!」
97:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
魔法使い「まぁーふぃー……」
猫娘「あんたはちょっと葉の売店に行ってあんぱぎゅみでも買ってきなさい!牛乳も忘れるんじゃないわよ!」
兎娘「解ったゾ!我、急ぐ!風っ!」
>>兎娘は出ていった
98:
猫娘「ごめんね、あの子悪気はないの。今、普通のぎゅみ持ってくるから……」
女剣士「何故ワタシの手を握りながらワタシに言うのだ」
99:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
女剣士「兎娘のぎゅみには薬が入っていると言っていたが……病気なのか?」
猫娘「……病気と言うか……外に、居すぎちゃったの。外の空気は汚染されてしまっているでしょう……?」
女剣士「汚染……?」
猫娘「リーダーが気付いてすぐに清浄の葉で浄化させたけれど、全部抜け切らなくて」
100:
猫娘「あの子、ちょっと言葉がおかしいでしょう?汚染の侵食が頭に回っちゃってるからなの。あの子のぎゅみは、少しでも、汚染の侵食を抑えられるようにってリーダーが調合したぎゅみだから……味はゲロ不味」
猫娘「リーダー、味音痴なのよー」
魔法使い「まぁふぃ、まぁぁーふぃぃー……」
101:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
女剣士「もう一つ気になることがあるのだが……」
猫娘「なんでしょう?……あっ、あたい、今日は昼も夕方も夜も暇だよっ!?」
兎娘「帰ったゾ!これ、食べる!」
魔法使い「もぐもごぉ……」
102:
猫娘「あっ、こら!押し込まないのっ!!」
兎娘「でも、食べるゾ!」
魔法使い「ん……はっ!」
魔法使い「ここ、どこ……!?……あっ、これ美味しいですよ、勇者様!」
>>魔法使いは正気に戻った!
103:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
魔法使い「えへへ……なんだか、ご迷惑をおかけしたみたいで……すみません」
猫娘「兎娘がごめんねー。ゲロ不味食べさせちゃって」
兎娘「リーダーのぎゅみ、美味しい!猫娘、ばか!」
猫娘「あんたの舌と頭が馬鹿になってるんでしょーが!」
104:
魔法使い「どこか具合悪いとかはないかって……心配してくださってるんですね、勇者様。ありがとうございます」
魔法使いは「えっと、そのぉ……ただ、お腹すいているところに頭を使うお話をされたから……限界だったんだと思います……はい」
女剣士「リーダーとなんの話をしていたのだ?」
105:
魔法使い「魔法の術式の話と、あと……」
魔法使い「…………」
魔法使い「あっ!そうそう、今日の夜、一緒にご飯食べたいって言ってましたよ!」
106:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
猫娘「あたい、連れて行きたいとこ、あるんだにゃー」
女剣士「いや、しかし……ワタシは勇者殿の傍を離れる訳には……」
猫娘「貸してほしいなー」
勇者「いいえ」
女剣士「勇者殿……!」
107:
猫娘「きゃっと、だっしゅ!」
女剣士「!?」
魔法使い「わっ!女の子とは思えない力強さで、女剣士さんが連れ去られちゃいましたよ勇者様!」
兎娘「猫娘は男だゾ?」
魔法使い「え?」
108:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
魔法使い「とにかく追いましょう、勇者様!」
リーダー「ここに居たのか。悪いが、ちょっと付き合ってもらうぜ」
魔法使い「えっ!?えぇっ!?あのっ、ちょっ、あ、勇者様ぁっ!!」
兎娘「あいつも連れていかれたゾ!おまえ、どうする?」
兎娘「リーダーは、部屋。猫娘は、解らないゾ。部屋なら、我、教える」
109:
【木の都/葉の宮】
兎娘「リーダーの部屋、一番、ずっと、奥」
兎娘「……う?じろじろ見るゾ?……着ぃぐ、るみ?ああ!これ、リーダー作った!」
兎娘「これ着る、特殊チーム!外、空気、だめだゾ。でも、少し出ても平気!なる!」
110:
兎娘「ぎゅみ、光必要。魔法の、だめ。だから、ぎゅみ、外で作るゾ」
兎娘「ぎゅみ採るは、特殊チーム!我達、魔法だめ!でも、忍術使えるゾ!他、だめ!」
兎娘「特殊チーム、皆の為にがんばるんだゾ!それ、偉い偉い!」
111:
【木の都/葉の宮・リーダーの部屋】
魔法使い「リーダーさんの術式の組み立て方は、素晴らしいです」
魔法使い「貴方の言うことが本当でしたら、ここは素晴らしい所だと、思います」
リーダー「そうだろう?キミのその魔力とエレメンタルがあれば、ここをもっとより良い空間に出来る!」
リーダー「……キミのような人間が、外へ、北の大地へ向かうなんて惜しい。わざわざ死にに行かなくても良いじゃないか。どうか、残ってほしい。ここで一緒に生きないか?」
112:
魔法使い「とても素敵なお誘い、ですね。嬉しいです。でも、きっと勇者様は、そうしないから……」
兎娘「リー……!どうして、口、押さえる?……どこ行く?」
兎娘「おまえ、あいつ、迎え、良いのか?」
兎娘「…………」
113:
【木の都/葉の宮】
兎娘「猫娘とあいつ、戻ってきたゾ!」
猫娘「ここは、空気も綺麗だし良いところでしょー?」
女剣士「そうだな」
猫娘「わざわざ外に出る必要なんて、ないよ」
114:
猫娘「ここは……外ではもう、生きられないの。解るでしょう?あたい、あんたに死んでほしくない!」
猫娘「会ったばかりで、何言ってるんだって、思うかもしれないけれど……」
女剣士「いや……ありがとう。確かにここで暮らせたら、素晴らしいだろうな」
猫娘「なら!」
115:
女剣士「ああ、それも良いのかもしれないな。だが勇者殿は、そうしないだろう……」
兎娘「……おまえ、顔、だめ。こっちきて休むゾ!」
116:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
兎娘「おまえ、ここ、座る!」
兎娘「大人しくするんだゾ!」
>>兎娘は出ていった
117:
魔法使い「……あ、勇者様!良かった、待っててくださったんですね」
魔法使い「もう、急に連れていかれるからびっくりしちゃいましたよぉ!」
魔法使い「……ここは、凄く素敵な所ですね」
魔法使い「えっ?……残りたいなら残っていいって……どうして、そんなことを言うんですか?」
118:
魔法使い「……あ、勇者様!良かった、待っててくださったんですね」
魔法使い「もう、急に連れていかれるからびっくりしちゃいましたよぉ!」
魔法使い「……ここは、凄く素敵な所ですね」
魔法使い「えっ?……残りたいなら残っていいって……どうして、そんなことを言うんですか?」
119:
魔法使い「えへへ。私、勇者様に付いていくって言ったじゃないですか!」
魔法使い「…………」
魔法使い「無理に付いてこられると、迷惑……?それ、本気で言ってるんですか?」
魔法使い「私、勇者様に無理を強いられたことがありましたか……?」
120:
魔法使い「私はいつだって、自分の意志で決めてます!だからさっきだって……!」
女剣士「貴様達、声を荒げてどうした?」
魔法使い「女剣士さん……」
女剣士「すまないな、勇者殿。半ば無理矢理連れていかれてな」
女剣士「…………」
121:
女剣士「おいおい、何を言い出すかと思えば……ワタシも魔法使いもここに残れだなんて……」
魔法使い「……なら」
魔法使い「勇者様も、ここに残りますか?私は勇者様に従います。勇者様が残るなら、残ります」
勇者「いいえ」
122:
女剣士「北の館に向かわなければいけないから、ここで立ち止まる訳にはいかない、か」
女剣士「なんだ。ワタシ達と同じ意見ではないか」
魔法使い「え?……自分のことなら気にするな、二人とも残りたがっていただろう、って……」
女剣士「……?」
魔法使い「……?」
123:
女剣士「とぼけるなと言われてもだな、心当たりが……」
兎娘「あっ!おまえたち、こいつ、近寄るだめ!迎え行く、だめになったゾ!」
魔法使い「え……?」
女剣士「……まさか、話を聞いていたんだな」
魔法使い「えっ?……えっ?」
124:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
魔法使い「え、えへっ!えへへっ!」
女剣士「魔法使い、フッ、そんなに笑っては、勇者、殿に、失礼、だぞ、フフッ」
魔法使い「だって、勇者様、勘違い、して……っ」
女剣士「やはり、可愛げが、あるな……!」
兎娘「こいつ、顔、困る!おまえたち、難しい!」
125:
女剣士「……勇者殿。ワタシ達はここに残らないぞ。勇者殿が立ち止まらないように、ワタシ達もここで立ち止まる訳にはいかない」
魔法使い「そうですよ!確かにここは素晴らしい所ですけれど、勇者様ならきっと、北へ進むと思っていましたから、お誘いはお断わりしました」
女剣士「ワタシ達と同じように。北の館を目指すと思ったからな」
兎娘「おまえ、顔……大丈夫だゾ!」
126:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
女剣士「しかし、猫娘から聞いたが……ここから北は、街も村も無いらしい」
魔法使い「私も聞きました。リーダーさんが、北の地に残っていた人を、拒否した人達以外はこの空間魔法の中に移らせたって……」
兎娘「外の空気、だめ、なった。から」
127:
女剣士「……だが、ワタシ達はなんともなかったんだよな」
魔法使い「そうですよね……」
兎娘「清浄の葉、ボロボロになった、見た」
魔法使い「……ここは、空気が綺麗なんですよね?」
兎娘「そうだゾ!外とは違うんだゾ!」
128:
魔法使い「良くも悪くも、綺麗、すぎるのかも知れませんね。ここは木のエレメンタルも満ちていますし……」
女剣士「成程な……」
129:
【木の都/葉の宮・兎娘の部屋】
猫娘「どばーん!」
兎娘「猫娘!何しに来た!」
猫娘「リーダーが、夕ご飯を食べるから呼んできてって。あたいはお使いよー」
兎娘「猫娘も、一緒、食べるのか?」
130:
猫娘「あんたとリーダーだけに任せたら、あんたとリーダーの夕ご飯しかないでしょーが。ゲロ不味はあんた達しか食べられないんだから!」
女剣士「……そんなに不味かったのか?魔法使い」
魔法使い「……思い出しただけでお口の中が樹海の中に置き去りにされた味になります」
女剣士「よく解らないが……貴重な体験をしたな」
131:
【木の都/葉の宮・リーダーの部屋】
リーダー「おう、来たか!まさか、おまえ達が魔物を倒してくれるとは思わなかったぜ。これは、感謝の印だ」
猫娘「あんた達はぎゅみよりこっちの方が食べ慣れてるっしょ?」
魔法使い「勇者様、普通のご飯ですよ!」
132:
女剣士「そもそも、ぎゅみとはなんなのだ?」
リーダー「よくぞ聞いてくれた!ぎゅみは、次世代食料だ」
魔法使い「次世代、食料?」
兎娘「難しい、始まるゾ……」
リーダー「ここでは場所も資源、エレメンタルが限られている。従来のように畑を耕し家畜を飼い……としていると、全員分の食料を作るには何もかもが足りなさすぎる」
133:
リーダー「そこでまず、俺達は空間魔法で作ったこの場所に移る時に、変換魔法を経由させる。そうするとあら不思議!」
リーダー「大きかった身体は小さな身体になっちゃったぜ!これなら、木のエレメンタルを借りて作った空間魔法に、たくさんの人が移り住めるぜ!リーダー素敵!格好いい!抱き締めて!」
女剣士「あいつ大丈夫か?」
魔法使い「研究肌な魔法使いには多い傾向なので、放っておいて大丈夫です」
女剣士「そうか」
134:
リーダー「そして限られた場所で畑を耕し、家畜を育てる。重要なのは、これ等は変換魔法を通さずに従来通り育てると言うことだ。これだけでも、食料は何倍にも増えた計算になるが……。それだけじゃ飽き足らないのねリーダー!素敵っ!」
リーダー「そうだ!食料の保存性や栄養のバランスを考慮し、魔法と科学を組み合わし再構成させて誕生したのが、ぎゅみだ!」
魔法使い「科学……?」
135:
リーダー「ぎゅみは良いぜ〜。滅多な事では腐らないし、コンパクトながら、栄養はしっかり採れる……!!」
猫娘「あ、適当に聞き流しながらご飯食べてちょーだいね」
魔法使い「んっ!勇者様、これ美味しいですよ」
女剣士「うむ。こっちもお勧めだぞ」
136:
リーダー「そして清浄の葉システムによって外の汚染を防ぎ、この地に残った者達は……」
兎娘「リーダー、皆、聞いてないゾ。我もちょっと向こう行くから、誰も聞かないゾ」
137:
【木の都/葉の宮・リーダーの部屋】
リーダー「しかしお前達、本当に北に行くのか?今なら……まだ、止められるんじゃないか?」
リーダー「おまえが一言、嫌だと。出来ないと否定すれば、システムは産まれないんじゃないのか……?」
リーダー「本当に良いのか?なぁ!俺達の科学は……魔法は……」
猫娘「あたい達が口出し出来る事じゃない。嫌なら、あたい達みたいにすれば良い」
138:
リーダー「……解っているさ。だが、酔い言なら良いだろう?」
猫娘「リーダー、まさか!」
リーダー「……しまった。酒が無い」
猫娘「はぁ……」
139:
>>アイテムを使いますか?
勇者「はい」
>>勇者はレインボーマスカットのワイン(ボトル)を使った!
リーダー「おぉ!良いものを持っているじゃねぇか!」
>>リーダーはボトルごと飲んでいる……
141:
リーダー「ぷはぁっ!酔った!酔ったぞー!酔ったぜぇー!」
リーダー「ほら、前に月が落ちて来ただろう?見たよな?首都の研究室からよぉ!そんでエレメンタルがこの世界に溢れたろ?それと同時になぁ、空気の質が変わって身体に悪影響を及ぼすようになったよなぁー?」
魔法使い「その昔、魔法の前の力……科学が限界に達した時、古の月が落ちてエレメンタルが世界に満ち、魔法が使えるようになった。とは聞いておりますけれど……」
女剣士「だが、空気が汚れているなど、ここに来て初めて聞いたことだぞ?」
142:
リーダー「それでなぁ、お偉いさん達は、シェルターを張って自分達の生活圏を守ったよなぁ!だが、その後のやり方に納得がいかなかったオレ達は、首都には残らず、この地に来た!おまえとは違う!」
リーダー「納得が、いかねぇぞ、あんなシステムなんぞぉ……」
リーダー「あんなのは、オレ達の平和だなんてぇのは嘘だ、あんなのは……なぁ、おまえが、否定すれば済むんだぞ……?」
143:
兎娘「リーダー!管理、魔物!!たくさん、来てる!!忍術、追い付かない!」
リーダー「!?」
リーダー「なっ……居場所がバレたってのか!?」
144:
【死んだ大木の下】
魔法使い「!!」
女剣士「!!」
魔法使い「魔物……!えっ!?あっ、あれ……?」
女剣士「どういう、事だ……?」
>>辺りはまだ明るい
>>レインボーマスカットのワイン(ボトル)が転がっている
145:
女剣士「ワタシ達は酔っていたとでも、言うのか?だが……」
魔法使い「この大木……とても、古い……エレメンタルが枯れてて、死んでる……」
魔法使い「それに……科学、忍術……」
魔法使い「どれも、ずっと昔に使われていた……」
146:
魔法使い「…………」
魔法使い「この大木の中に、ずっと昔に、木の都があったのでしょうか……」
勇者「はい」
魔法使い「勇者様も、そう思いますか……?」
女剣士「ならワタシ達は、古の記憶を垣間見ていたとでも言うのか?」
147:
魔法使い「……恐らく」
女剣士「……木の、都は」
魔法使い「…………」
魔法使い「今は、もう……」
女剣士「……そうか」
148:
【荒れ始めた大地】
魔法使い「…………」
女剣士「…………」
魔法使い「きっと、とっても昔に起きたことだったと思うんです」
女剣士「あぁ」
150:
魔法使い「でも、理解は出来なくて。あの後、皆さんは……」
女剣士「解らん。……ずっと昔の出来事ならば、もう既に皆死んでいるだろうからな」
魔法使い「……そう、ですね」
女剣士「あぁ……」
151:
【荒れている大地】
女剣士「何も、ないな」
魔法使い「私達しか、いませんね……」
女剣士「魔物すらいないとなると、不気味だな」
152:
魔法使い「魔物がいないなんて、平和ですね」
女剣士「そうだな」
魔法使い「人がいないから、魔物がいないのでしょうか……」
153:
【冷える大地】
魔法使い「魔物達が、皆ここに住んだら、平和なのに……」
女剣士「だがあいつらも生きているのならば、食べなければならない。人がいない所では生きられないだろう」
魔法使い「あ、そうか……人間を、襲うから……」
魔法使い「あれ……?」
154:
【冷たい大地】
魔法使い「魔物って、どうして人を襲うのでしょうか?」
女剣士「生きるためだろう」
魔法使い「魔物って、何を食べて生きているのでしょう?」
女剣士「それは……」
155:
女剣士「何を、食べているのだ?あいつらは……」
魔法使い「魔物って……人間を襲いますけれど、食べませんよね……。どうして、そんなことをするのでしょう……」
女剣士「どうして、なんだろうな……」
156:
【凍える大地】
魔法使い「勇者様……寒い、ですね……」
女剣士「北に、来ている証拠だな……」
魔法使い「…………」
女剣士「…………」
157:
【雪の降る大地】
女剣士「これは……」
魔法使い「雪、ですね……。えへへ、自然の雪は初めてみました……」
女剣士「吐く息も白くて……視界も真っ白で……白ばかりだな」
魔法使い「私達、一人じゃなくて良かったですね。近くに、違う色があるから、迷わなくて済みそうです」
女剣士「フッ……そうだな」
158:
【雪の積もる大地】
魔法使い「歩く度に、不思議な足音がしますね」
女剣士「足跡がつくが……新しく降る雪に消されてしまうな……」
魔法使い「私達、ちゃんと歩いてますよね……?進めて、ますよね?」
勇者「はい」
魔法使い「そう、ですよね。よかったぁ……」
女剣士「っ、おい!前方にあるのは……!」
159:
【北の街】
>>罪 見 逃 監視 償
>>石に刻まれている文字は欠けていて読めない……
魔法使い「小さいけれど……街ですね」
女剣士「だが……やはり、誰もいないな」
160:
魔法使い「所々崩れていますし……。でも、当たり前ですよね?魔王のすぐ傍で、暮らせる訳が無いですもん」
女剣士「奥に見える館が、魔王のいる北の館か……」
161:
【北の街/空き家】
女剣士「この家は、他と比べてしっかりしているな。この家を借りよう」
魔法使い「そうですね。この状態で突撃しても、魔王に勝てるとは思えません。今日は休みましょう」
162:
【北の街/空き家】
>>暖炉には暖かい火が灯っている
魔法使い「なんだか暖かくなってきたら気分が明るくなってきました!」
女剣士「フッ……それは何よりだ」
魔法使い「って、女剣士さん、何を抱えているんですか?」
163:
女剣士「ん?あぁ、子熊がいたからな。狩ってきた。ベア汁を作るぞ」
魔法使い「ご飯ですね!」
女剣士「あぁ。水と火は、魔法使い。任せたぞ」
魔法使い「お任せあれですよ!」
166:
【北の街/空き家】
魔法使い「魔法使いと」
女剣士「女剣士の」
魔法使い「お料理教室〜」
女剣士「料理教室!」
魔法使い「女剣士先生、まずは?」
167:
女剣士「小熊を狩り、捌きます」
魔法使い「皆さんも愛用の剣でスパッと行きましょう。お次は?」
女剣士「水に入れて煮る」
魔法使い「はい、水の魔法で水を生み、火の魔法で煮立たせます!」
魔法使い「二つの属性を扱えないよ!ってお友達は、お友達と一緒にやるか、とにかく違う属性の魔法が使える人に手伝ってもらいましょう!」
168:
魔法使い「そして先生、最後は?」
女剣士「食べる!!」
魔法使い「はいっ!ちょっとたまに混じっている小熊の毛が不快なベア汁の完成でーす!」
女剣士「味は保証するぞ」
魔法使い「うんっ!とっても美味しいけれど、毛が不快ですね!」
169:
【北の街/空き家】
魔法使い「いよいよ、明日は北の館、ですね」
女剣士「勇者殿。しっかり頼むぞ」
魔法使い「その為にも、今はしっかり寝ないとですね!勇者様、おやすみなさいっ」
女剣士「おやすみ、勇者殿」
170:
【北の街/空き家】
>>魔法使いは良く眠っている
>>女剣士の姿は無い
171:
【北の街】
女剣士「……顔を見たのは、随分昔のことだから……解らんな……」
女剣士「!!」
女剣士「勇者殿……」
>>女剣士は鏡を持っている
172:
女剣士「あぁ、ちょっと思う所があってな。鏡を見ていた」
女剣士「……ワタシの母は、ワタシが小さい頃に病気で亡くなってな」
女剣士「顔が、よく解らないのだ」
女剣士「だがきっと、こんな顔だったのだろうな……」
173:
女剣士「ワタシは今度こそ大切な者達を護り、そして……弟を魔王から救い出す」
女剣士「……ワタシはもう少し、外の空気を吸うが……身体が冷えて風邪でも引くと不味い。勇者殿、中に入った方が良いぞ」
女剣士「ワタシは貴様が大切だから、案じているのだぞ。勇者だからとかではなく、貴様だから」
女剣士「……貴様が勇者殿で、良かったぞ。さぁ、明日は最後の戦いだ。ゆっくりとは言えぬが、良く休んでくれ」
174:
【北の街/空き家】
魔法使い「勇者様、外に行ってたんですね。……眠れないんですか?」
魔法使い「いよいよ……明日、ですもんね」
魔法使い「私はこの日の為に生かされ生きてきた……」
魔法使い「勇者様、魔王を倒して……囚われている魂を、解放しましょう」
175:
魔法使い「私、勇者様が勇者様で……良かったです」
魔法使い「命の恩人だからって理由だけじゃなくて、好きになれて良かったです」
魔法使い「えへへ……勇者様が優しい人で、良かった……」
魔法使い「優しくないって……私、勇者様がとっても優しいの知ってますよ!」
176:
魔法使い「私のこと護ってくださいますし、女剣士さんの心配もしてますし!それに……水の都で、勇者様、泣いてました」
勇者「いいえ」
魔法使い「……ごめんなさい。私、見てたんです」
魔法使い「えっと、正確には、途中で起きちゃっただけなんですけれど!」
177:
魔法使い「勇者様、宿屋で宝箱から拾った遺品を、道具袋から出して整理されてて……」
魔法使い「その間、ずっと泣いてました」
魔法使い「その時に私、勇者様も私達と変わらないんだって、思いました」
魔法使い「同じ……わわっ!ゆ、勇者様っ、な、な、な!くる、苦しいですよ!」
178:
魔法使い「えっ?あ、恥ずかしがっているんですか?照れ隠し……」
魔法使い「……勇者様がとっても優しい方だって、解りましたか?」
魔法使い「私はそんな優しい勇者様を、本当はお護りしたいんです……」
魔法使い「でっ、でも空回っちゃうと大変ですから、あわよくば、あわよくば精神で!」
魔法使い「えへへ……もう、寝ましょう?勇者様」
179:
【北の街/空き家】
女剣士「朝だな。準備はしっかり整えてから行こう」
魔法使い「北の館は、もう、すぐそこですからね」
180:
【北の街】
魔法使い「勇者様、真っ直ぐ!真っ直ぐですからね!」
女剣士「見えていると思うが、あの館だからな」
181:
【北の館/外】
魔法使い「勇者様……いよいよ、ですよ」
女剣士「必ず魔王を倒し、魂の解放を行うぞ!」
魔法使い「行きましょう、勇者様!」
194:
【北の館/入口】
>>ピィッ……
>>何かが駆け抜けた感じがした……
魔法使い「うぁっ!?」
女剣士「ぐぅっ!?」
魔法使い「な、なんでしょう……今の、何かに、罅が入るような……」
女剣士「あぁ、何かに、引っ掻かれたような、感じがしたな……」
195:
魔法使い「魔王、は……私達が来たことに、気付いたのでしょうか……」
女剣士「そうなのかも、しれないな」
魔法使い「っ、ここが……北の館……」
女剣士「魔王の、いる場所……」
魔法使い「怯んで、いられません。進みましょう」
女剣士「……もうすぐ、迎えに行くからな」
196:
【北の館/廊下】
女剣士「しかし、普通の館の作りと変わらないな」
魔法使い「そうですね。こう、魔物わんさかフェスティバル!!かと思いきや、一体もいないですし……」
女剣士「これも、何かの罠……なのか?」
魔法使い「あ、扉がありますよ!」
197:
【北の館/魔物部屋】
>>部屋の両側に大量の魔物がいる!
魔法使い「ぎゃーっ!!魔物わんさかフェスティバル開催中ー!!」
女剣士「待て!様子がおかしいぞ!」
魔法使い「……あ、この魔物達……試験管みたいなガラスに閉じ込められていますよ」
魔法使い「どうやらここで、魔物を作っているみたいですね……」
198:
>>勇者は試験管を調べた
>>自立型木型二足歩行魔物兵器
>>自立型飛行魔物兵器
>>自立型水型魔物兵器
>>自立型四足魔物兵器
>>たくさんありすぎて訳が解らない……
199:
魔法使い「ウッドマンや、その他見慣れた魔物達に似ていますね……」
魔法使い「初期型、みたいなものでしょうか」
女剣士「襲ってこないのならばそれで良い。先を急ごう」
200:
【北の館/廊下】
女剣士「雰囲気が変わったな」
魔法使い「なんだか……冷たい印象を受けます」
女剣士「む?この鉄の固まりや箱は……」
魔法使い「……機械」
女剣士「機械?」
201:
魔法使い「失われた科学の力、マシン……だと思います。昔、文献で見たものに形状が似ています」
女剣士「こんな、うんともすんとも言わないポンコツがか?」
魔法使い「魔法を使うのに魔力やエレメンタルが必要なように、マシンにも対価であるエネルギーが必要だと聞いています」
魔法使い「多分……エネルギーが無いから、使えないんだと思いますよ」
女剣士「そうなのか……」
202:
【北の館/荒れた部屋】
魔法使い「本や紙が散らばっていますね……」
女剣士「駄目だ。扉が開かないぞ」
魔法使い「どこかに鍵があるのかもしれません。探しましょう、勇者様」
203:
>>勇者は本を調べた
>>地 温 の歴 
殆どの大陸 遂に海に呑まれ 。
人工 埋め 地開発も、最早意味をなさ い。
我々が生き残る為に残さ た土地 少なく、ま 、海に呑まれ 全ての生 物が減少 た。
しかしそ でも、生き残った生き物に対し 、この土地は少なさすぎる……。
魔法使い「……どこのお話なんでしょう?」
204:
>>勇者は本を調べた
>>科学に変 魔法
我々の科 も機械も人 知能も、これ以上の成長は めないだ う。
資源も潰え、 油は当の昔に無くなり、我々は代わり なるエネル ーを生み出し繋いでき が、そ ももう、限界だ た。
し し、ある 空にあ た月が別れ 。
ぴたりと重なって た月から月が、雫でも落ちる のように地上へ 零れ落ち 。
新たなエ ルギー、エレメン ルの誕生 った。
女剣士「……ここにあるのは、昔の、話か……?」
205:
>>勇者は本を調べた
>>刻 た情報、エレメ ル
落ちた月から溢れ出たエネルギ の名はエレメンタルとした。
エ メンタルは、我々の身体に入り込 だ。
我々の持つ情報に新 な情報を書き え、我 はエレメン ルを自在に扱う力を手に た。
個体差はある で、 レメンタルの ネルギーを使うには向き不 きがあった。
魔法使い「古の月の、お話ですね。私達が魔法を使えるようになったきっかけ……」
206:
>> の対価
神の気 れな か、新たなエネル ーエレ ンタルは、素晴ら いエネルギー った。
火力、水 、風力、電力、その全て 補えること 出来た。しかし。
これも の気紛れな か!
エレメン ルが溢れた世界の空気 、変わってし った!
我々の身体に悪 響を ぼしたのだ!
エ メン ルによ て汚染 れてしまった!
我々の身 は徐々に適応し いくだろうが、毒に わりはない。
女剣士「本当に……空気は汚染されているのか?」
207:
>>勇者は本を調べた
>>空 汚染とシェ ター
魔 の力と科 の力があれば、我々はもっと高みを望める。
魔法と科学の力を わせたシェル ーを、 を中心に展開し 。
我々の空に シ ルターが覆われ いるが、光の魔法 それ 解らない。空も太陽も感じられる 、息苦しさ 感じられな だろう。
酸素を生 魔法と科学を組み合 せたマ ンによってシ ルターの中の空気 安全 。
魔法使い「私達……そんなこと、知らないですよ……?」
208:
>>勇者は本を調べた
>>人 調整にあた て
海に まれ限り有る土地 争い く平和に共存す 為には、ある程度 が増えないように調整しなけ ばならない。
しかし普通に殺し は不満が生まれ どころか、破滅しか いだろう。
そ で我々は、一つの憎むべき対象 作れば良いと考え付 た。
そし 、纏め役の後ろに強い悪を作れ 、纏 役の行う政策よ もそち に気が向か だろう。
あとは、こ を組み立てられる者がい かどうかだ……。
女剣士「どこかで聞いたことのある話だな……」
209:
>>勇者は本を調べた
>>突 変異に いて
エレメンタルが身体の に入り込んだこ により、突 異が きたものがいた。
それ は隔離し たが、 都を抜け出 、シェ ターの加護が無い へ逃げ 。
エ フや 精と名乗 ようになっ しいが、シェ ーなくして、長くは生き れないで ろう。
魔法使い「……そう、だったんだ……」
210:
魔法使い「あっ!勇者様、机の上に鍵がありますよ!」
>>勇者は机を調べた
>>勇者は小さな鍵を手に入れた!
女剣士「よし、先に進もう!」
>>勇者は鍵のかかった扉を調べた
>>しかし鍵は合わない
211:
女剣士「使えぬ鍵だな!」
魔法使い「無能な鍵ですよまったく!」
女剣士「しかし、ならばこの鍵に合う錠があるはずだ。探してみよう」
212:
>>勇者は机を調べた
>>特に目新しいものはない
>>勇者は机を調べた
>>鍵のかかっている引き戸がある。鍵を使いますか?
勇者「はい」
213:
魔法使い「あっ、そこの鍵……」
女剣士「机の鍵だから机の上か……」
魔法使い「えへへ……扉のじゃ、なかったんですね」
女剣士「紙束と……ノートが入っているな」
魔法使い「勇者、システム?」
214:
>>勇者システム
悪と正義。
昔から解りやすい例えに、勇者と魔王がある。
それを借りて、俺はこれを、勇者と魔王システム。……いや、勇者システムと名付ける。
最初は馬鹿馬鹿しいかもしれない。だが、今の時代を知っているものが死に、数百年と言う時を経て、この勇者システムは真に完成するだろう。
215:
勇者システムを始めるにあたって、俺達が親しんできた科学は、失われたことにして一部を残し封印する。
この勇者システムの目的は、この世界に一つしかない国の、人類の調整だ。
そして、争いの無い平和な世界を願ってのものである。
216:
現在、国民のフラストレーションは首相に向けられている。
このままでは、民の暴動は避けられない。
フラストレーションを向ける相手を、変えなければならない。
まず、世界に、魔王が現れたと宣告する。
217:
もちろん、そんなお伽噺を始める首相を、民は信じないだろう。
そこで、俺と彼女で作った自立型魔物兵器を放つ。
俺の科学と彼女の魔法を組み合わせて作った兵器だ。
この自立型魔物兵器は、エレメンタルを糧に稼動する。
218:
万が一著しく破損した場合は粒子状になり、エレメンタルを補い再び形成する作りになっている。
この自立型魔物兵器は、人間を襲うように情報を組み立てている。
これが国民に、魔王の存在を知らしめる為の、一つの駒だ。
自立型魔物兵器を目の当たりにした国民は、魔王の存在を信じるようになるだろう。
219:
そして次に、魔物に殺された魂は魔王に囚われると言う情報を流す。
人から人へ流れる話はしっかりと根を張ることだろう。
国民は調べる術を持たない。だが、自立型魔物兵器に殺される人間を見る度に思うだろう。
魔王に魂を囚われてしまった。と。
220:
最初は疑いだとしても、時を経てその思想は定着するであろう。
そして、俺達が研究していた魂だ。
俺達の科学と魔法で、魂をも解析できるようになった。
俺達の身体は魂の器であり、魂は死後、身体から抜ける。
そしてどこかへと消えて転生を繰り返していると言うのが今の意見だ。
221:
魂には、遺伝子情報と同じようにこれまでのことが刻まれている。
だが、魂は幾重にも厳重な殻で出来ている。蓋をすることを繰り返していると言った方が正しいのかもしれない。
一つの生を経験し、また次の生を経験する時には、一つ前の生の情報に蓋をしているのだ。
たまにその蓋が甘かった場合に、所謂前世の記憶がある状態の人間が生まれるのであろうが、今回はその件に関しては触れない。
222:
俺達の魂を捕えて解析することが出来るこの技術を応用して、魔王に魂を囚われる。と言う現象を再現することにした。
自立型魔物兵器に人間を殺させ、魂が抜けた所を魔法と科学の力で閉じ込める。
ここまでは自立型魔物兵器が行う作業だ。
そして、次に各地に設置する予定である自立型大型魔物兵器に取り付けたマシンに、魂を回収させる。
223:
このマシンには転移魔法を備え付ける予定だ。
そして回収された魂は、魔法と科学で作られた檻、マシンに。
魔王へと送られる手筈になっている。
転生と人間の誕生は同位である。つまり、魂が転生をしなければ新たな人間は生まれないのだ。
これで、俺達は人類の調整を行う。
224:
そして、人類が程よく減少した頃には、民の心は首相ではなく魔王に向けられていることであろう。
しかし、一定の救いがなければ心が壊れてしまうのも事実。
魔王がいるのならば、対である勇者も存在しなければならない。
マシン、魔王を止めて魂の解放を行う役割の者を。
225:
最初の勇者は、作り手であるこの俺が。
勇者の役割を果たすつもりだ。
226:
魔法使い「なん、ですか……?これ……」
女剣士「国が作った……とんだ、とんだ茶番劇だったと言うことか!?くそっ!!」
女剣士「ふざけるな……ふざけるなよっ……!?」
魔法使い「……これが、真実なら、魔王は……」
227:
魔法使い「……魂が囚われているのは事実……とにかく今は、魂の解放を行いましょう?」
魔法使い「真実が、どうであれ、今の私達には……それしかできません……」
>>紙束の下に鍵がある
228:
魔法使い「きっと、その鍵が扉の、鍵ですよね」
>>勇者は扉の鍵を手に入れた
女剣士「はぁ……はぁ……行こう、勇者殿。絡繰りがどうであれ、弟が……魂が囚われているのは、事実だ……」
229:
>>勇者はノートを調べた
>>誰かの日記
木の都は素晴らしい所だった。
やっぱりあいつの技術は凄い。でも俺には、国を出る勇気が無かった。
木の都を見付けたのは、本当に偶然だった。
230:
俺達は、あいつに囚われていた訳じゃないのに、国は……!!
あいつと、あいつが救った人間を犠牲にしてまで作った勇者システムだ。必ず、完成させる。
本当は、お前みたいな平和な世界を、俺も作りたかった。こんな、上の人間が楽に生きるためのシステムじゃないシステムを……。
231:
>>勇者はページを捲った
勇者システムは、完成した。
後は、時が過ぎるのを待って勇者になるだけだ。
巻き込んでしまった彼女と姉さんには、悪いと思っている。
北の館の近くに、街を作った。
本当は遠くへ逃げてしまいたい弱い俺の為に。戒めの街だ。
232:
>>勇者はページを捲った
この勇者システムは、俺が思っていた以上に恐ろしかった。
人々は誰も、納税に対しての不満を抱かなくなった。
首相への不満はない。それまで向けていたエネルギーは、全て魔王へと向かったのだ。
233:
一つの共通する適わぬ悪が生まれたことにより、暴動も消えた。
人々は、国の後ろにいる魔王に不満を抱けば抱く程国に対して満足感を得ている。
首相の、国民に対するアメの与え方の手腕にもよるものだろう……。
234:
>>勇者はページを捲った
勇者システム。
魔王に囚われた魂を繋ぐのは、我々の技術だけではなかった。
人々の、魔王に魂を囚われる、囚われていると言う思いが、念が、より強く魔王に魂を繋いでいる……。
本当に、数百年もすれば、この作ったルールが常識で当たり前になってしまうのだろう……。
235:
>>勇者はページを捲った
首相に相談をした。
納得してくれた。
俺が繰り返す。
身体が、流石にもう持たない。だから俺は転生して、新しい器に宿って繰り返す。
236:
>>勇者はページを捲った
俺は、この勇者システムと、魔物型兵器を作ってしまった大罪人だ。
そして、これを見ているということは、お前は俺だ。
俺は……せめてもの罪滅ぼしには、ならないが……この勇者システムは、俺が死んで転生して記憶に蓋をしたとしても、俺が繰り返す。
例え、繰り返していく中で俺が犯した罪を忘れてしまったとしても、俺は永遠に繰り返す。そして何度でもこうして俺の罪を俺に思い出させてやる。
237:
俺は、お前は、大罪を犯したのだ。本来なら、転生することすら許されない。だが、俺は生きて、そのつど、自らの罪を償わなければならない。
俺は自分の魂に、魔法を使って情報を書き加える。これは俺に向けた呪いだ。
そしてこれが、勇者の証とする。
238:
この呪いは……肯定も否定も出来ず……有耶無耶な返事しか出来なかった、俺への戒めだ。
ただ、出来ないと、いいえ。と、はっきり言えなかった俺の……。
俺は、この勇者システムを作ってしまった。それは消せないし変えられない。
お前は、他人の命の犠牲の上で生きている。それを、忘れるな。
>>日記はここで途切れている……
239:
>>勇者は鍵のかかった扉を調べた
>>勇者は扉の鍵を使った!
魔法使い「……行きましょう」
女剣士「……行こう」
240:
【北の館/玉座】
>>玉座の後ろには闇色の霧に包まれた数多の輝きがある
魔法使い「きっと、あれが魔王に囚われている魂です!」
>>闇色が濃くなる……
女剣士「解放するぞ!」
241:
>>ゴウン……ゴウン……
>>鎖に繋がれた、怪しげな音を立てている箱がある
>>助けを求める声が聞こえる……
魔法使い「これが……マシン、魔王」
女剣士「想像していたのと、全然違うな」
242:
>>鍵穴に魂の剣を刺しますか?
勇者「はい」
>>カチリ
>>闇色の霧が消え、数多の輝きも消えていった……
243:
女剣士「これで……解放、されたのか?」
魔法使い「なんだか……呆気ない、ですね」
女剣士「あぁ。あとは、魔王を倒すだけだな……」
魔法使い「倒すと言っても……どうしたらいいのでしょう?」
女剣士「壊すか?」
244:
魔法使い「多分、剣も魔法も効かないと思います……そんな感じが、します」
?『よく……ここまで辿り着きましたね』
女剣士「誰だっ!?」
?『ワタクシは……女神……』
>>神々しい女性が宙に浮いている
245:
魔法使い「女神……?」
女神『よく……ここまで辿り着きましたね。罪深き魂達よ……』
女神『可哀想な、罪深き魂達よ……魔王を倒すことは出来ません。実体があるわけではないのですから』
女神『魔王は北の館にいる』
女神『魔物に殺された魂は魔王に囚われる』
女神『その人々の念によって、魂が囚われてしまうのです』
246:
女神『魔王とは……人々が生み出した妄想に過ぎないのです。言うなれば、貴方方一人一人が、魔王……』
女剣士「ふ、ふざけるなっ!!そんなものを……どうやって倒せと言うのだっ!?」
女神『貴方達は……北の館に囚われた魂を解放するように、言われただけのはずですよ』
女神『あぁ、可哀想な魂達……倒せだなんて、誰が言ったのです?それは貴方達の勝手な思い込み……!』
247:
女神『ですが……貴方達は、無事に魂の解放と言う使命を遣り遂げましたね……とても、素晴らしい事です。貴方達は素晴らしい事をして素晴らしく良い人生を送りました』
女神『さぁ……ゆっくりお休みなさい。きっと次は平和で穏やかな人生を送れるでしょう……大丈夫。怖いことも痛いことも、もうありませんよ……』
女剣士「何を訳の……」
女神『もう……身体が動かないでしょう?数百年の時を経て、耐性が付いた身体でも……首都を出て長くこの北の大地にいては……』
248:
魔法使い「ま、さか……感じていないだけで、空気が汚染されているのは……本当に……?」
女神『あら……?その情報は……どこから知ってしまったのでしょう……?』
女神『でも、もう動けないでしょう……?ほら、貴方達の身体は、地に落ちてしまう』
女剣士「なっ……!」
249:
魔法使い「いや、まだそんな感じしないですよ」
女剣士「……だな」
女神『!?』
魔法使い「なんか貴方、女神様にしては悪者の匂いがぷんぷんしてますよっ!」
250:
魔法使い「勇者様もそう思いますよねっ?」
勇者「はい」
女剣士「ワタシも同意見だ。お前……何者だ?」
女神『フフフ……ワタクシは女神。可哀相に……あぁ、可哀相に!可哀想な魂達に……可哀想な真実を教えてあげましょう……そして、自分の犯した罪に苦しんで死になさい!』
魔法使い「ちょっと待ってください!!」
251:
女神『…………』
魔法使い「勇者様の魂が、この勇者システムを作った魂ってオチなら、私達みんな知っていますからねっ!」
女神『そうですか……どこから知りえたのか……勇者システムのことも……知っているのですね』
女剣士「だが、魂は同じだとしても勇者殿はなんの罪も犯していない!過去の知らん人間が犯した罪など知らんぞ!」
252:
女神『マシン、魔王の再起動条件は、貴方達の魂……これが何を意味するか、解りますか?』
魔法使い「解りませんけど死にませんからねっ!私達っ!」
女神『フフフ……今回の勇者達はどう言う訳か、お元気ですね……』
魔法使い「お元気してますよ!ぜんっぜん死ぬ感じも死ぬ気もないですから!」
254:
女剣士「それに、ワタシ達が死ななければ魔王も復活しないのだろう?なおさら死ぬ訳にはいかないな!」
女神『フフ、フフフ……あくまでも他人の犯した罪だから、貴方達には罪の意識が無いと……そう、言うのですね?』
勇者「はい」
女神『そうですか……ならば、可哀相ですが……貴方達自身が犯した罪を、今一度自覚してもらいましょう……』
256:
女剣士「ワタシ達自身の、罪だと……?」
魔法使い「………」
女神『そうです……解っているでしょう?貴方達自身が……よぅく。さぁ、貴方達がそらし続けてきた真実を……罪を……魂の記憶を!』
女神『見ましょう?そして己の罪の意識に苛まれて』
257:
女神『世界の平和の為に死になさい』
女神『それが貴方達に出来る、罪滅ぼしですよ……』
>>辺りが漆黒の闇に飲まれる……
258:
【魔法使いの魂】
私は、母親のゴミ箱だったんです。
憎悪の捌け口。
精神的にも、肉体的にも、虐待を受けていた。
母親は頭が狂っていたんです。
259:
私に、ごめんねごめんねと、泣いて謝りながら、虐めるのです。
でも、狂っていたのは母親だけじゃないんです。
私の身体もまた、狂っていたのです。
私の身体は普通の人間と、同じ身体じゃなかったのです。
260:
見た目で解る、とんがった耳、小さな羽根。
感覚で解る、逸脱したエレメンタル、魔力。
人間でも、エルフでも、妖精でもない。
その三つを合わせた狂った身体。
それが私。
261:
ある日、母親は私を家の二階から放り投げました。私に飽きたからです。
でも私は死にませんでした。
そう、勇者様の仲間に選ばれたから。
死なない身体。母親にとっては都合の良い身体だった筈なのです。
どんなに私を捌け口にしても、死なないのですから。
262:
何をしても壊れない、便利な道具だったはずなのに。
母親は、虐待をやめました。
その日から母親の顔は厳しい顔になりました。
母親は言いました。
勇者の呪いにかかった子を産んでしまった、と。とんでもない罪だ、と。
263:
母親の罪などどうでも良い。知りません。
でも。
呪い?とんでもない。
どうして勇者様を悪く言うの?
私にとっては救いだった。
264:
私は、勇者様の加護を受けた選ばれし子。
勇者様は、私にとっての命の恩人。
勇者様を悪く言うのは許さない。
ある日母親は言いました。
ここから出て行けと。
265:
だから私は、燃やしました。母親ごと、家を。
でも私の最大の罪は、これじゃない。
勇者様を、欺いていること。
ただ、それだけ。
266:
【女剣士の魂】
ワタシにとって、唯一の肉親である弟。
とても大事だった。ワタシの命が、どうでも良いくらいに。
生きる上で、異常なまでに依存していた。
だから弟が魔物に襲われた時も、ワタシはどうでも良かったのだ。
267:
ただ、弟が生きてさえいてくれれば。
魔物の深々と刺さる爪。
魔物の噛み砕いてくる牙。
魔物が、ワタシの身体を壊して命を奪う。
268:
ワタシは、構わない。
弟が生きてさえいてくれれば。
ワタシは、弟を見た。
気持ち悪いものを見ている目で、魔物ではなく。
ワタシを見ていた。
269:
それから弟は笑わなくなった。
だが、構わなかった。
弟を、護れるならば。
弟を護っているという事実があればそれでよかった。
だからワタシは、弟にどんな目で見られようとも護り続けた。
ワタシが、生きるために。
270:
でもある日、弟が言った。
もう、姉ちゃんに護られるのは嫌だ。気持ちが悪い、と。
弟は走ってワタシの傍から居なくなった。
ワタシは追い掛けた。すぐに追い付いた。
しかし弟は、すでに魔物の手に掛かっていた。
271:
ワタシは弟を見た。
笑っていた。
笑っていたのだ。
ワタシがどんなにこの身を楯にして弟を死から護り命を繋ぎ護っても、あの日以降笑わなかったのに。
死ぬ間際。
弟は笑っていたのだ。
272:
護れなかったワタシを嘲笑っていたのか、気持ちが悪かったワタシから解放されて喜んでいたのかは解らないが。
弟は、笑っていたのだ。
そこでワタシは理解した。
ワタシは、弟の身体だけを護り、心を殺していたのだと。
273:
弟を殺したのは、他ならぬワタシ自身だったのだ。
笑っている弟の瞳からは、喜びの涙が零れていた。
そしてワタシは弟だけでなく、己の父様も殺してしまうような人間だ。
274:
これが罪でなければ罪とはなんなのだろうか。
ワタシは大切な人間を二人もこの手にかけた。
死んで償う以外、この罪が許される道は、ない。
275:
【北の館/玉座】
魔法使い「あ、あぁ、あ……」
>>魔法使いは、とがった耳と羽根を掻き毟っている……
女剣士「ワタ、シは……」
>>女剣士は力なく笑っている
276:
女神『辛い人生だったのね……。大丈夫、次は幸せな人生を送れるわ。魂の解放を遣り遂げた貴方達への、ワタクシから細やかながらのご褒美です。約束しましょう……』
女神『勇者様の為にある死ねない身体……。フフフ、大丈夫よ。勇者様が望めば、貴方達は死ねるのよ……』
女神『勇者よ、この剣で魔法使いと女剣士を刺し殺すのです』
勇者「いいえ」
277:
魔法使い「えへへ、ねぇ、気持ち悪いでしょう勇者様……?私、こんな身体で……ずっと勇者様の傍にいて騙してきたんです……。えへへ……私、勇者様には知られたくなかったんですよ?……この身体のことも、母親のことも……」
魔法使い「ねぇ、気持ちが悪いでしょう、勇者様……?私はこんな身体で、私は母親を殺すような……汚いモノなんです……」
魔法使い「……ごめんなさい、ごめんなさい、私、こんなに気持ち悪い身体なんです。勇者様とも女剣士さんとも、他の皆とも全然違う身体で……」
魔法使い「私、勇者様には知られたくなくて、嫌いになられたく、なくて……っ」
278:
魔法使い「えへへ……でも、もう、知られちゃった……知られちゃったんですね……」
魔法使い「勇者様、私を殺してください。殺してよぉ!!」
勇者「いいえ」
魔法使い「殺してぇ……私は、死ねないんだからぁ……」
女神「あぁ、なんて可哀相な選択をするの、勇者!」
279:
女剣士「もう、良いだろう……?ワタシに護れるものなど、本当は無かったのだ……」
女剣士「勇者殿……ワタシは、殺してくれるよな……?」
女剣士「弟と父様に、そして母様に謝りたいのだ。謝らせてくれ。勇者殿、ワタシを殺して……救ってくれ」
勇者「いいえ」
280:
女剣士「何故……何故だ勇者殿っ!?ワタシは勇者殿に殺してもらわなければ死ねないのだ!このまま生きながらにして死に続けろと言うのか!?」
女神『勇者よ……愛しき仲間達の魂を解放して差し上げるのです』
女神『さぁ!その剣で魔法使いと女剣士を刺し殺すのです!!』
勇者「いいえ」
281:
女神『さぁ!その剣で魔法使いと女剣士を刺し殺すのです!!』
勇者「いいえ」
女神『さぁ!その剣で魔法使いと女剣士を刺し殺すのです!!』
勇者「いいえ」
女神『わたくしの見せた記憶がおかしいと……言うのですか?』
勇者「はい」
282:
女神『辛い事実から目を背けたいのですね。ですが……ワタクシがみせたのは魂に刻まれた記憶……偽りは無いのです』
魔女「全く、よく言うねぇ」
魔女「三回に渡って魂に情報を書き加えた癖に……さぁ!」
女神『!?』
女神『貴方は……!』
283:
魔女「勇者!あたしがコイツを抑えている間に……この子達の目を醒まさしておやりよ!」
>>勇者は真実の鏡を使った!
女神「!!」
女神「まさか、その鏡は……おのれぇ、魔女め余計な事を……っ!!」
284:
【魔法使いの魂/真実】
魔法使い『ここは……お家?』
母「ごめんね……ごめんね……」
母「私達の都合で、貴方は……妖精にも、エルフにも、人間にもなれなかった……」
魔法使い『い、嫌っ!手を伸ばさないでぇっ!!』
285:
母「ごめんね……ごめんね……」
魔法使い『え……?どう、して……打たないの?なんで、抱き締めるの……?』
母「……今日は、あまり泣かないのね。偉いわよ」
魔法使い『あっ!!』
>>魔法使いの母は転んだ!
286:
母「あっ、あぁ!ごめんね、ごめんね、痛かったわよね!?えっと……えっと……」
女性「全く……あんたが母親だなんて、おっかなくて見ていられないわよ」
魔法使い『え……あの人……わっ!?なっ、何!?……あ、場所が変わった……ここは……二階?』
母「わわっ!」
>>魔法使いの母は躓いた!
287:
魔法使い『あっ!私を落とした!』
魔法使い『落とした……?そうだ、私は放り投げられたんじゃなくて……そそっかしいお母さんに、落とされた……』
母「魔法使い!!魔法使いっ!!」
女性「!?」
女性「どうしたんだいっ!?」
288:
母「あっ、あぁ、あ……どうし、どうしよう……血が、血がとまらないのよぉ!!」
女性「これだけ出血が酷いと、も……待って。この子……!!」
母「え……?」
魔法使い『あ、今度は……部屋?』
289:
母「妖精とエルフと人間の血で……更に、勇者の仲間に……」
母「この子は、茨の道を歩む事になる……それを少しでも和らげてあげるには……魔法を仕込む事ぐらいしか、出来ないわ……」
女性「あたしの稽古は厳しいよ?」
母「それが、この子の為になるわ」
290:
魔法使い『待って……確か、この後は……いや、見たくない……!』
母「あぁっ!この場所が見つかってしまった!」
魔法使い「お母さん、あの人達は誰ですか?どうして、火矢なんか……」
母「……っ。光の魔法の術式は、組み立てられるようになったわね?」
魔法使い「う、うん……」
291:
母「早くここから出て行きなさい」
魔法使い「ねぇ、あの人達悪い人?なら、私が火の魔法で追い払うから!」
母「ここから出て行け!!」
魔法使い「え?お母さ」
魔法使い『私が、火の魔法で炎を生み出したと同時に……お母さんは風の魔法で私の身体を飛ばした。私の炎は、その風に乗って……家に、火が点いて……』
292:
魔法使い『私が、燃やしてしまった事に変わりは無いし……勇者様を騙していたことに……変わりはない……』
母「ごめんね……貴方に、辛い道を歩かせることになってしまって……」
母「でも、貴方が産まれてきてくれて、私は嬉しかったわ」
魔法使い『どうして……笑っているの?お母さん……お母さんっ!!』
>>魔法使いの伸ばした手から、全てが消えていく……
293:
【女剣士の魂/真実】
女剣士『ここは……?』
女剣士「だい、じょ、か?」
弟「…………」
女剣士『あぁ、ワタシが初めて、護った時……いや、弟の心を殺してしまった時か』
>>記憶の中の女剣士は倒れた
294:
弟「ねーちゃ?……ねーちゃ!やだぁ!しんじゃやだぁ!!ねぇーちゃあああー!!」
女剣士『!!』
女剣士『あの時は痛みで意識が朦朧としていたが……あんなに、泣いていたのか……』
295:
弟「姉ちゃん、痛くないなんてことは、ないんだよ?」
女剣士「ワタシはお前を護る時ならば、痛くないんだよ。本当だぞ?」
弟「姉ちゃん、姉ちゃんが傷付くの、いやだよ……見たくない……」
女剣士『……弟なりに、罪悪感があったのかもしれない、な』
296:
弟「姉ちゃん、水の森に行こう?行きたいな」
女剣士「フッ……弟の頼みとあっては、行かないわけに行かぬだろう。よし、行こう」
女剣士『待て!駄目だ、行っては駄目だっ!!』
女剣士「ここで木の実を採ったら直ぐに帰るぞ?」
弟「うんっ!」
297:
女剣士『そうだ……弟は、ワタシが、目を離した隙に……!逸らすな、そのまま、見て……』
女剣士「あ、あっちに弟の好きな……」
女剣士『やめろおおおっ!!』
女剣士「弟おおおおおっ!!」
298:
弟「だ、じょぶ……いたく、ないよ。ほんと、だね」
女剣士「弟っ!!」
弟「ねえちゃん、もう、きずつかなくて、いいんだよ。へへ……」
女剣士『あぁ……弟は、ワタシを案じて、自ら死ににいったんだ……それでも、ワタシが弟を死に追いやった事に変わりは無い……』
女剣士『それに、知らなかったとはいえ、ワタシは和の村で…………』
>>女剣士の零した涙から、全てが消えていく……
299:
【北の館/玉座】
魔法使い「勇者様……真実を見た所で、私がした事に、変わりは無いんですよ…」
女剣士「ワタシは、大切な者を……自分が生きる為に、殺したようなものなんだ」
300:
魔法使い「勇者様を、私、騙していたんです。気持ちが悪いでしょう?」
勇者「いいえ」
女剣士「ワタシは二人の命の犠牲の元生きている。おぞましいだろう?」
勇者「いいえ」
301:
魔法使い「勇者様」
勇者「いいえ」
魔法使い「勇者殿」
勇者「いいえ」
勇者「僕は、勇者じゃない」
魔法使い「!?」
女剣士「!?」
302:
魔法使い「ゆ、しゃ……さま?」
勇者「僕は二人を騙していた」
女剣士「ゆうしゃ、どの……?」
勇者「そして僕は、兄弟の命を犠牲にして、生きている」
303:
勇者「魔法使いが気持ち悪いのなら、僕はとても気持ち悪い存在だろう……」
勇者「女剣士がおぞましい存在なら、僕はとてもおぞましい存在だろう……」
勇者「僕は、勇者である双子の兄に、成り代わったのだから」
304:
勇者「ある日僕達は、薬草を採りに出かけた。その時に、魔物に遭遇した……」
勇者「僕は、勇者である兄を死んででも守らなければいけなかった!なのにっ……」
勇者「兄は、兄だからと言う理由で……勇者なのに、弟の僕の命を護ったんだ……!!」
勇者「僕は、兄の命の犠牲の元生きて、勇者と偽っている!!」
305:
ここまで。
ちなみに、魔女のところに寄らなかった場合は魔法使いと女剣士を剣で殺して勇者もその場で死亡のバッドエンドな。
317:
魔法使い「何を……言ってるんですか?」
勇者「理解できないとも、思う……」
女剣士「そうだぞ……?勇者殿が、弟?」
勇者「今まで、騙していてすまない……」
319:
魔法使い「本当に、何、言ってるんですか……?」
女剣士「勇者殿は……」
魔法使い「女の子じゃないですか……」
勇者「……え?」
勇者「何、意味の解らない事を」
320:
女剣士「宿だって部屋が一緒だっただろう?」
魔法使い「そうですよ、女の子だったから龍神さまの社だって……」
勇者「違う……僕は、僕は……!」
>>勇者の持っていた真実の鏡が砕け散る!
321:
>>砕け散り舞う鏡の破片に、勇者の顔が映る……
勇者「おんな、のこ……?」
勇者「わた、しは……」
322:
【勇者の魂/真実】
わたしは素朴な村の素朴な家に生まれた普通の女の子でした。
お母さんとお父さんと、二人の兄さんとわたしの、普通の家族構成。
唯一普通じゃないことと言えば、わたしの二人いる兄さんの片方が、勇者であることでした。
323:
母「良いかい?絶対に勇者を死なせてはならないよ。自分が死んででも、守るんだよ」
それがお母さんの口癖でした。
勇者は、この世界にとって大事な存在だから、死なせてはならない。
わたしが守らなければいけない。でも。
325:
双子の弟「妹は僕達のお姫様だから、僕達が守るんだ!」
双子の兄「はい」
いつも守られているのは、わたしでした。
双子の兄達は、とてもわたしを可愛がってくれました。
326:
双子の兄の分まで言葉で直接優しさをくれる兄さん。
口数は少ないけれど、表情や仕草で優しさをくれる一番上の兄さん。
優しい兄達が、わたしはとても大好きでした。
ある日、兄達が薬草を採りに出かけると言いました。
兄さん達が大好きだったわたしは、わたしも連れていってとせがみました。
327:
双子の弟「大丈夫。置いていったりしないよ。一緒に行こう」
双子の兄「はい」
差し出された兄達の手は温かく、今日も温かさを胸に感じながら、温かい一日が終わる。
そう、思っていました。
328:
離れた、兄さん達の手。
双子の弟「お前なんかにやられるもんか!僕が絶対に護る!!だって……だってだって大事な……僕達のお姫様なんだから!」
双子の兄「はい」
双子の弟「そうだよね!大丈夫。絶対に守るよ。僕達の大切な女の子……妹なんだから!」
双子の兄達は、現れた魔物から、わたしを守ろうとしてくれました。
329:
双子の弟「絶対に、死なせないっ……!!僕の……僕達の……お姫様は!!」
絶対に死なせてはいけないのは、一番上の兄なのに。
二人は、わたしを生き残らせたのです。
330:
最初は二番目の兄さんが。
自分が勇者と、お姫様である妹を守るんだと。
体を張って魔物の爪を受けました。
次は、わたしが兄さんを守らなければいけなかった。
でも。
331:
一番上の兄さんは。
勇者ではなく、自分は二人のお兄ちゃんだから、大事な弟と妹を守るんだ。と。
心の中に兄さんの思いが響いてきたと思うと。
わたしと双子の弟を抱き締めて、その背に魔物の爪を受けました。
わたしは泣きながら二人の兄さんの名前を呼びました。
332:
双子の弟「……大丈、夫、いいんだよ……これで……。だって、護らなくちゃ……君は……僕の……僕達の、大事な……おひめ、さ、ま……」
勇者「はい」
二番目の兄さんは、いつも明るかった瞳を閉じました。
一番上の兄さんは、その瞳から涙を零しているのに、自分ではなく、わたしの頬に手を伸ばしてわたしの涙を拭いました。
333:
わたしは知っていました。
兄さんが。
はい。と、いいえ。しか喋れなくとも、感情があることを。
ただそれを、言葉に出来ないだけで。
痛みも悲しみも、あることを。
334:
でも兄さんが最後に見せたのは痛みでも悲しみでもなく、優しさでした。
離れた兄達の手を再び繋ぐと、あんなに温かかったはずなのに、どんどんと、冷たくなってきて。
それと同時に、わたしの身体は熱いくらいに温かくなり、意識を無くしました。
335:
次に目を覚ましたのは、自分の家でした。
父「勇者を死なせてしまっただなんて……!」
勇者と言う存在が。
死んででも守らなければいけない理由が。
魔王に囚われた魂を解放することが出来る大事な存在だからだと、知りました。
336:
そこでわたしは初めて、兄さんが。
わたしが背負った使命を知りました。
わたしは、お父さんに歩み寄りました。
わたしの口から出た言葉は、いいえ。でした。
337:
勇者は死んでいない。
勇者は双子の弟に守られて生き延びた。
双子の兄弟に、妹などいなかったのだ。
338:
わたしは死にました。
わたしは消えました。
勇者は、生き延びました。
339:
【北の館/玉座】
勇者「わた、しは……わたしは……!」
魔法使い「勇者……さま……」
勇者「そう、わたしは……」
勇者「わたしは、わたしのせいで、兄さん達は……」
340:
>>世界が、よく見えない……
女剣士「しっかりしろ勇者殿!」
勇者「違う……わたしは……」
>>世界が、壊れ始める……
魔法使い「勇者様っ!」
勇者「わたしは……勇者じゃ、ない」
341:
>>音を立てて、世界が……
魔法使い「貴方は勇者様ですっ!!」
女剣士「貴様は勇者だっ!!」
女剣士「ワタシにとっては、勇者は勇者殿だ」
魔法使い「私の勇者様は、貴方なんです……」
342:
女剣士「しっかりしろっ!!」
魔法使い「心を壊さないでっ!!」
魔女「そうだよ、勇者。いや……勇者の魂を、器に入れし勇者」
魔女「あんたが壊れることを、あんたの中にいる二つの魂は望んじゃいないよ」
343:
魔女「身体は魂の器……」
魔女「解るだろう?あんたはずっと、兄さん達に護られてきたんだよ。それなのに……壊れても良いのかい?」
>>身体の奥が、熱いくらいに温かい
勇者「……兄さん達……わたしを、ずっと……?」
345:
魔女「魔法使いと女剣士は、とっくに目が醒めているよ」
魔女「今度は勇者、あんたが目を醒ます番だよ」
勇者「わたしは……」
>>それでも、世界は暗い……
346:
魔法使い「勇者様。貴方は、私が壊させない」
魔法使い「勇者様は、私の命の恩人ですから」
勇者「いいえ」
勇者「救ったのは、わたしじゃない。魔法使いさんを救ったのは、わたしの、兄さん」
347:
魔法使い「最初はそうかもしれない……でも、私を直接護って、傷付いたのは……いつだって勇者様!貴方なのっ!!」
女剣士「身を持ってワタシに護ることを教えてくれたのも、和の村で壊れかけたワタシを繋いでくれたのも勇者殿だ」
女剣士「帰ってこい、勇者殿!」
魔法使い「勇者様ぁっ!!」
348:
>>壊れかけた視界が、滲む……
勇者「まだ……わたしを、勇者と……呼んで、くれるのですか……?」
勇者「怒らないの?わたし……本当は、勇者じゃないのに、優しくしてくれる貴方達が、申し訳なくて、怖くて、大好きになってしまったから……大切になっていたから……怖いの……わたしは、勇者じゃ、ないから」
勇者「本当、は……勇者じゃ、ないから……!」
349:
女剣士「何を訳の解らぬことを言っているんだ」
女剣士「ワタシが知る勇者殿は、貴様しかいないし、貴様だから……ワタシは護りたいと思ったのだ」
魔法使い「私の勇者様は、勇者様だけですよ。勇者様だから……どこまでも付いて行くって決めたんです」
350:
魔法使い「勇者様、貴方は……どこに行くんですか?」
勇者「わた、しは……わたしは!」
勇者「こんな、暗い場所ではなく、皆の、所に……!」
>>世界に光が戻る!
魔女「まったく……世話が焼けるねぇ」
351:
>>魔法使い、女剣士、魔女が居る
魔女「勇者。あんたは、こいつをどうする?」
>>女神は魔女の闇の魔法で拘束されている
女神『ワタクシを……捕らえるなど……」
352:
王様「許されないぞっ!?」
女剣士「王様っ!?」
魔法使い「そうか、光の魔法で……!」
魔女「こいつが、馬鹿げたシステムを提唱した、首相だよ。転生じゃなくて移行で魂を繋いでいたのには……びっくりしたけれどね」
353:
王様「ワタクシは、この勇者システムが間違っているとは思わないぞ?民が!一人でも!国に対して不満を言うものが居たか!?」
勇者「いいえ」
王様「そうだろう?こう言う形の平和もあるのだ!解ったら大人しく……世界の平和の為に死ね!」
勇者「いいえ」
355:
勇者「貴方のそれは、世界の平和ではない……貴方の、平和です」
勇者「民の平和を望むのなら……魔物を……魔王を、消さなければならない!死ぬのはわたし達じゃない……」
勇者「魔王だ!!」
356:
王様「そうか……ならば、ワタクシを殺すが良い!!」
勇者「殺さない」
魔法使い「勇者様……?」
女剣士「勇者殿?」
魔女「…………」
357:
勇者「貴方には、民の中に魔王を生んだ責任がある。だから貴方に……魔王を、消してもらいます」
勇者「貴方が最初にしたように……魔王は勇者によって倒されて死んだと宣告してもらう!」
勇者「その後で、貴方には罪を償ってもらいます。……民は、貴方を信じている。魔王は……消えるはずです」
358:
魔女「そうかい……それが、あんたの選択かい?勇者」
勇者「はい」
魔女「後は……マシン魔王と、魔物ね」
魔女「魔王は、勇者達の魂さえ入らなければ再起動しない。魔物は、あんたがいれば大丈夫よ」
魔法使い「えっ!?私、ですか?」
魔女「あたしが、魔物を止める術式をあんたに教えてあげるわ。大丈夫。あんたなら、必ず出来るさ」
359:
女剣士「ならばワタシ達がやるべきことは決まったな?勇者殿」
勇者「はい」
魔法使い「私達が、魔王を倒したぞー!って言いながら、魔物を倒すんですねっ!」
女剣士「まだまだワタシ達の冒険は続くな」
魔法使い「さぁ!早回らないとですよ!お礼に美味しいもの貰えるかもですし!!」
360:
それから直ぐにして。
王様は、魔王は勇者によって倒されたと民に宣告した。
魔物も勇者達によってその役目を終え、エレメンタルに還った。
魔物もいなくなり、魔王も倒された。
殺される人間はいなくなり。
魂が囚われる要素は、消え去った。
362:
そして王様は、隠し続けてきたこの世界の現状を公表し、国王制度は廃止された。
民は、魔法の力を借りて土地を増やしていくようになった。
ある者は火の魔法を借りて海を蒸発させ。
ある者は水の魔法を借りて海を凍らせて土地にし。
ある者は地の魔法を借りて少しずつ土地を生み出していった。
363:
そして汚染されている空気は、清浄の葉システムと言う文献が発見されたことにより、少しずつ、少しずつ、木と風の魔法で浄化作業が行われている。
僅か一年の月日を経て、既に世界は新しく生まれ変わろうとしていた。
そして。
365:
【北の館/玉座】
魔女「……人間はね、救いがあると頼ってしまうのよ。勇者のように解りやすい救いがあるとね」
魔女「勇者と魔王は対なのよ。だから勇者が消えない限り、真に魔王も消えない」
魔女「人間はいつまでも勇者に頼って救いを求めてしまうから。どこかで勇者が救ってくれるからと、無意識に魔王が居ても大丈夫だと思ってしまう」
魔女「そもそもそれが間違いなのよ」
366:
魔女「それでは魔王はいつまで経っても消えない。繰り返すだけ。同じことを繰り返すだけなのよ」
魔女「だから、終わらせてほしいの。貴方達で、このシステムを」
勇者「はい」
魔女「ここまで来て言うのもなんだけどさ……ちゃんと、意味解っているのかい?」
367:
魔法使い「魔王を本当に消すために、対である勇者も消えなければいけない。そして、魔王を再起動させない為にも……」
魔法使い「私達の魂を、閉じ込めてください」
女剣士「転生、しないようにな」
魔女「……すまないね」
368:
>>勇者は、マシン魔王から魂の剣を抜いた
魔女「辛い役目を、背負わせて。でも、勇者の魂を器に入れた、貴方にしか出来ない事よ」
女剣士「魔物も切れない剣なのに、ワタシ達は殺せるのだな」
女剣士「勇者殿、気にするなよ。一思いにやってくれ。だが……魔女よ。お願いをしても良いか?」
369:
【水の都/南西の民家・隣の部屋】
女剣士「すまないな、勇者殿」
女剣士「ここでワタシを……殺してくれ」
>>女剣士を魂の剣で刺しますか?
勇者「はい」
370:
>>女剣士の身体を、魂の剣が貫く
女剣士「……案外……穏やかな、もの……なのだな……」
女剣士「……勇者殿、多くは語らぬぞ」
女剣士「……ワタシを護り護らせ……生かしてくれて、ありがとう」
371:
【北の館/玉座】
>>傍には器になった女剣士がいる
魔法使い「私、勇者様になら……本望です」
魔法使い「勇者様は、私の命の恩人ですから」
魔法使い「最期も、私の命を救ってください。もうこんな……悲しい繰り返しは、しないように」
372:
>>魔法使いを魂の剣で刺しますか?
勇者「はい」
>>魔法使いの身体を、魂の剣が貫く
魔法使い「泣かないで、ください」
魔法使い「えへへ……勇者様、北の館に来てからずっと、泣きっぱなしなんですもん……」
373:
魔法使い「……勇者様、私……ずっ、と……」
魔法使い「…………」
>>器になった魔法使いの身体の重みを感じる
魔女「……本当に、良いのかい?必要なのは勇者の魂だけ。あんたは、転生しても大丈夫なんだよ?」
勇者「わたしは……二人の、勇者ですから……。それに、わたしが転生したら……魔法使いさん、きっと、付いてきちゃいますよ?」
374:
魔女「そうかい……。それも、そうだねぇ……」
>>身体が重い……
魔女「よく、頑張ったね。勇者……」
>>瞳を閉じますか?
勇者「はい」
375:
魔王を倒し、魔物を消し去る旅を続けた勇者。
汚染された空気を吸い続けながら続けた旅。
毒の空気は、じわりじわりと、勇者の身体を確かに蝕み。
雪が降る冷たい大地、北の館で、その生涯の幕を閉じた。
376:
【北の館/玉座】
>>勇者、魔法使い、女剣士の器がある……
魔女「…………」
魔女「これは……真実の鏡の、破片……」
魔女「……おやおや、あたしの身体は色々詰まっているからねぇ……時差、か」
377:
【魔女の魂】
魔法使い「私のこと魔法使いなんて呼ぶのやめてくださいよ、勇者!こそばゆい!」
勇者「お前だって俺のことを勇者だって言うじゃねぇか。……魔法を自在に扱えるお前の事を、魔法使いと呼ばずしてなんと呼べば良いんだよ」
魔法使い「それは……前、みたいに……あっ、女剣士さん!」
女剣士「弟よ、首相から連絡が入っている。行け」
378:
勇者「解った。ありがとう、姉貴」
魔法使い「ほんとのまおーさっまのーおっよびーだしー。なにしちゃったのかなぁー?」
勇者「うるせぇっ!あ、あとお前、あの訳のわかんねぇ玉座持っていくつもりじゃないよな!?」
魔法使い「いやいや、仮にも魔王の館だからさ、雰囲気出さないと!」
魔法使い「魔王っ!!とかいって乗り込んだらだっれもいないんだけどねぇー!」
379:
勇者「はぁ……とりあえず行ってくる」
>>勇者は部屋を出て行った
女剣士「……それで、うまくいきそうなのか?」
魔法使い「魂に刻む術式は、完成しています」
女剣士「そうか、なら早いところ」
380:
魔法使い「でも……本当に、良いんですか?不死に近い身体に、書き換えるなんて……」
女剣士「それはお前も同じだろう?」
魔法使い「……私は、このシステムを、作ってしまったから」
女剣士「それ、弟の前で言ったら怒るぞ」
魔法使い「解ってます!だから、こそ……彼一人に、背負わせる訳にはいかない。私も、繰り返して彼の罪を、私の罪を償う」
381:
女剣士「そうか……。本当は、この北の地へ向かう旅が無くなれば良いのだがな……」
魔法使い「本当は、彼も、こんなシステム良くないって解ってて……苦しんでる」
女剣士「そうだ……だが、ワタシ達のその意見は……今は、少数だ」
魔法使い「でもきっと、いつか、私達と同じ意見を持ってくれる人が、いるはず……」
382:
魔法使い「それが、多数になったその時には、このシステムを終わらせてほしいと思っているの。終わらせられない、彼の為に」
?「…………」
女剣士「それは……なんだ?」
魔法使い「勇者システムによって作られた平和を見て……それでもこのシステムが可笑しいって私達が思い続けられて、それが、今の多数の意見を上回って私達の意見が多数になった時に……」
383:
魔法使い「勇者システムを、止める手助けをしてくれる子。魔物型兵器の応用で作ったの。どうせなら、綺麗で優しそうなお姉さんの方がテンションあがるでしょ!?」
女剣士「ワタシにはよく解らないな」
女剣士「だがいつか、弟の……本当の意見が多数になって欲しいな……」
魔法使い「それまで……見守っていてね?」
384:
【北の館/玉座】
魔女「…………」
魔女「勇者もその仲間も魔王も、魔王様ももういない……」
魔女「これからどうするか、どうしていくかは……人間達次第だよ」
魔女「マスター……貴方達の意見は……思いは、無事に……」
龍神『…………』
魔女「あんたは……」
385:
【温かい場所】
魔法使い「ここは……真っ白で、何もない……」
魔法使い「貴方は……」
勇者「…………」
386:
魔法使い「勇者様のお兄さんの、勇者さんですね」
勇者「はい」
魔法使い「お礼を、言わせてください」
魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」
勇者「いいえ」
387:
魔法使い「お礼を言うのは俺だ……姫を助けてくれてありがとう。それに、本当に私を助けていたのは、勇者様だから……」
魔法使い「……はい。確かに、そうです。でも、勇者さんにも、確かに助けられましたから」
魔法使い「だから、ありがとうございます」
魔法使い「けれど……私にとっての勇者様は、勇者様だけなんです」
388:
魔法使い「約束があるから、私、行かないと。……え?」
魔法使い「えへへ。勇者様に、どこまでもついていくって、お約束してるんですっ!」
魔法使い「お兄さんも一緒に行きましょう?勇者様が、居る気がするんです」
389:
【温かい場所】
>>辺りは白く、何もない
勇者「皆と居るみたいに温かいのに……一人だと……」
勇者「こんなに、寂しいんですね」
>>勇者の瞳から涙が零れる……
390:
魔法使い「勇者様ぁー!」
勇者「……え?」
女剣士「ほら、あれが勇者殿だ」
女剣士・弟「姉ちゃんの大切な人だね!」
双子の弟「お姫様ー!」
双子の兄「…………」
391:
勇者「みん、な……?」
魔法使い「……さっきは、先にいって、一人にしてしまってごめんなさい。でも、もう一人にはさせませんから」
魔法使い「覚えていますか?ずっとついていくってお約束」
魔法使い「勇者様は、私の命の恩人ですから」
勇者「いいえ」
392:
勇者「わたし、こそ、貴方に、皆に命を救われてきた……」
勇者「ありがとう……」
女剣士「ほら、これで顔を拭け」
勇者「女剣士さん……」
393:
魔法使い「と言う訳で勇者様!どこに行きますか?」
魔法使い「どこまでも、ついていきますよ!私は、出来れば美味しい食べ物がある所が良いです!」
女剣士「まったく貴様は……だが、神の食べ物アイスクリームとやらは、ワタシも食べてみたいぞ」
魔法使い「私も神シリーズで言ったらソフトクリーム食べたいですっ!!」
394:
女剣士「それで勇者殿……」
魔法使い「どこに、行きますか?」
勇者「わたしは……わたしは、皆と幸せに……平和に暮らせる場所に行きたい……!それでっ……皆とっ」
勇者「笑いながら神の食べ物、アイスクリームとソフトクリームが食べたいですっ……!!」
395:
魔法使い「それじゃあ……」
女剣士「冒険開始だな!」
>>温かい光の先へ進みますか?
勇者「はいっ……!」
魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」

396:
乙!
397:
乙、支援、保守、期待、待ちありがとう。
これで終わり。
398:
おつ!(´;ω;`)
399:
乙!
急展開があって面白かった
またあるのなら見たいw
このスレは神スレだな
400:
おつかれ!感動した
神!
ソフトクリームとアイスクリームのどちらも買って帰るか
402:
完走お疲れ様
面白かったよ、ありがとう
404:

すごく面白かった
神!ソフトクリームを買って食べなければ…
405:

感動したわ
406:
読みきったー
王!つかれさまでした
コロッケといっしょにソフトクリーム買って帰るわ
40

続き・詳細・画像をみる


カメラ女子って正直どうおもう?

サトシ「うぅ…モンスターボール…!すごい吸い付きだ…!」

21歳の彼女がスーパーのお惣菜を自分でつくったよーって感じでドヤ顔でだしてくるんだけど反応に困る

「テイルズ オブ」シリーズ20周年記念TVアニメーションが2016年放送開始!「導師の旅路は、ゼスティリアを超える」

スパロボUXがセールやってるけど

猫拾ったったwwwwwwwww

「テイルズ オブ」シリーズ20周年記念TVアニメーションが2016年放送開始!「導師の旅路は、ゼスティリアを超える」

【国際】日本が恐れているのは米国が裏切ってAIIBに参加すること−シンガポールメディア

俺「三角形の面積は底辺x高さ÷2」キリッ キャバ嬢「すごーい、学校の先生みたーい」

SANKYO『機動戦艦 ナデシコ2』はMAX機での登場か?マルホンからゴーダンナーの続編も!さらにクイーンズブレイド2や閃乱カグラも発売予定!

【朗報】おしっこ以外のチンチンの使用法判明した

2世帯住宅で同居してるんだけど旦那弟に「子どもがうるさいから静かにさせて」と文句言われるのが辛い

back 過去ログ 削除依頼&連絡先