あきつ丸「スパイ大作戦であります!」back

あきつ丸「スパイ大作戦であります!」


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あきつ丸(○月×日、晴れ)
あきつ丸(開戦から二年が過ぎ……)
あきつ丸(自分が横須賀鎮守府に来て、一年少しが過ぎた)
あきつ丸(新進気鋭の天才と謳われた提督の下、)
あきつ丸(我々は日々、深海棲艦どもとの戦いに明け暮れているのであります)
あきつ丸(戦いは概ね順調に推移しており、)
あきつ丸(内地では勝戦気分が漂っているそうだが……)
あきつ丸「はあ……」
あきつ丸(勝利を重ねる度に、提督殿や仲間たちと親交を深めるごとに、罪悪感が増していく……)
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2: 以下、
あきつ丸(そう、自分は陸軍の間諜)
あきつ丸(勢力を増していく海軍の内情を探るべく、)
あきつ丸(また、艦娘の製造技術を盗み出すべく、)
あきつ丸(横須賀鎮守府に派遣された内偵なのであります!)
あきつ丸(初めのうちは使命感に燃え、)
あきつ丸(海軍の増長にストップをかけ、国内のバランスを保つという意識の元、)
あきつ丸(精力的に任務に励んでおりましたが……)
あきつ丸(最近、自分の行いに疑問を持つようになったのであります)
3: 以下、
提督「ああ、あきつ丸。大発動艇の整備か? ご苦労様」
あきつ丸「提督殿! 見回り、お疲れ様であります!」シャキッ!
提督「楽にしていい。大規模作戦にもひと段落ついたんだ」
提督「しばらくは艦娘たちに休養を取らせるつもりだ」
提督「もちろん、あきつ丸。貴様もだ」
あきつ丸「そんな……今回は自分、何もできませんでしたのに……」
提督「以前の作戦では人一倍頑張った」
提督「それに、次の作戦では何度も出撃を命じるかもしれない」
提督「今のうちに休んでおけ」
あきつ丸「提督殿……」
4: 以下、
大体陸軍が悪い(偏見)
5: 以下、
吹雪「あっ、提督! あきつ丸さんも」
吹雪「ちょうどいいところにいましたね!」
吹雪「これから間宮で初夏の甘味試食会があるんですよ!」
吹雪「お二人とも、いっしょに行きませんか?」
あきつ丸「いや、自分は……」
提督「ほら、遠慮するな。私はこれから会議があるので行けないが……」
提督「お前に私の分まで楽しんできてほしい」
提督「後で感想を聞かせてくれ」
あきつ丸「あっ、提督殿!」
6: 以下、
吹雪「提督、行っちゃいましたね……」
吹雪「少し残念ですが、また今度誘いましょう!」
吹雪「さっ、あきつ丸さん、行きましょう」グイグイ
あきつ丸「あっ、あっ、自分は……」
あきつ丸「あ???……」ズルズル
7: 以下、
?夜 私室?
あきつ丸「うぷっ、食べ過ぎたであります」
あきつ丸「甘いものは当分見たくもないでありますな……」ヨロヨロ
あきつ丸「皆、よくもあれほど食べられるものであります」ドサッ
あきつ丸「……」
あきつ丸(やはり、自分とは違うということか)
あきつ丸「………………」ゴロリ
9: 以下、
あきつ丸(深海棲艦に対抗するための秘密兵器)
あきつ丸(海軍主導で製造された、人型の戦艦)
あきつ丸(深海棲艦とは似て非なる存在。強く、気高い、人類の守護者)
あきつ丸(彼女らの活躍はあまりに眩しく、華々しく……だからこそ陸軍は)
あきつ丸(艦娘もどきの自分を作り、何とか自分たちの発言権を守ろうとした)
10: 以下、
あきつ丸(横須賀鎮守府に派遣される前、将校殿たちにこう言われた)
あきつ丸(『今や海軍は自らの野望を隠しもしなくなった』)
あきつ丸(『パワーバランスを自らに傾け、際限なく艦娘の増強を行う』)
あきつ丸(『その暴走を、誰かが制止しなければならない』)
あきつ丸(『このままでは、深海棲艦を殲滅したところで、待っているのは世界の海軍同士の戦いだ』)
あきつ丸(『白紙に戻った海図を塗りつぶすように、海軍は海を支配していくだろう』)
あきつ丸(『海は再び、血に染まる。それは現在の比ではない』)
あきつ丸(『それを止めるための力が、我々にも必要なのだ』、と)
11: 以下、
あきつ丸(……)
あきつ丸(……それは本当のことなのだろうか?)
あきつ丸(本当は、海軍に嫉妬しているだけではないのだろうか?)
あきつ丸(自分が艦娘の製造技術を盗み出したところで……)
あきつ丸(それは果たして、平和のために使われるのだろうか?)
あきつ丸(……)
12: 以下、
あきつ丸(提督殿はお優しい。理知的で、日本の将来を見据えて動いている)
あきつ丸(艦娘たちもそうだ。皆、お国のために働いている)
あきつ丸(それに比べて、陸軍のしていることは……自分のしていることは……)
あきつ丸(……)ウトウト
あきつ丸(正直に話せば、提督殿は力になってくれるだろうか)
あきつ丸(それとも、裏切り者として自分に処罰を与えるだろうか)
あきつ丸(分からない……分からないが……)ウトウト
あきつ丸(……提督殿……)zzz
13: 以下、
?深夜?
あきつ丸「……はっ!」
あきつ丸「いつの間にか寝ていたようであります」
あきつ丸「服も着替えず、なんとだらしない……」
あきつ丸「寝汗がひどい……風呂に入らなければ」
あきつ丸(時間は……大丈夫でありますな)
あきつ丸「ならば、手早く汗を流すであります」スクッ
14: 以下、
?艦娘用大浴場?
あきつ丸「……」キョロキョロ
あきつ丸「誰もいないでありますな」
あきつ丸「今日は出撃もない。急な入渠もないはず」
あきつ丸「今のうちに……」パサッ
あきつ丸「……」ポロン
あきつ丸「はあ」
17: 以下、
あきつ丸(華奢な体。貧弱な肉つき)
あきつ丸(少女のような自分の体)
あきつ丸(そして、股間にぶら下がる男の象徴……)
あきつ丸(一体、いつまで隠せばいいのか)ハァ
あきつ丸(自分が男であることを。厳密な意味では艦娘ではないことを)
あきつ丸(この鎮守府にも人が増えた)
あきつ丸(こっそりと湯を浴びたところで、そのうちバレてしまう)
あきつ丸(その時、自分はどうすればいいのか……)
15: 以下、
おと……こ……?
18: 以下、
あきつ丸(見よう見まねで作られた自分は、)
あきつ丸(陸軍の技術力の拙さと、艦娘製造技術のなさで、)
あきつ丸(男型の艦娘として生まれ――そのくせ、駆逐艦にさえ及ばないほど非力だ)
あきつ丸(自分が盗み出した技術によって、女型のまるゆを作れるようになったようだが……)
あきつ丸(やはり非力だ。あれでは物資輸送しかできず、そのくせ難点が多いと聞く)
19: 以下、
あきつ丸(陸軍は海軍に追いつけ追い越せと声高に叫んでいる)チャプン
あきつ丸(だが、どうやってパワーバランスとやらを取るつもりなのだろうか)
あきつ丸(これでは足を引っ張るのが関の山で……)
あきつ丸(そんなことをしている場合ではないのに……)ホゥー
あきつ丸(……)
あきつ丸(……垢を落として出よう)
あきつ丸(誰が来ないとも限らない……)
20: 以下、
あきつ丸(……)カララ
あきつ丸「ふう」
あきつ丸(鬱々している時も、風呂は気持ちいいものでありましたな)シュル
あきつ丸「はあ……」フキフキ
提督「あきつ丸……?」
あきつ丸「っ!!!!!!」
21: 以下、
提督「あきつ丸、貴様……」
提督「男、だったのか……?」
あきつ丸「ち、ちがっ!」バッ
提督「い、いや、しかし……」
提督「見慣れたものが……股間に……」
あきつ丸「こ、これは、そのっ!」
22: 以下、
あきつ丸(しまった! 油断していた!)
あきつ丸(艦娘の使用しない時間帯に、提督殿が大浴場を利用されることもある!)
あきつ丸(失念していた……! 使用中の札もかけていなかった!)
あきつ丸(ど、どうする……!? この場をどう切り抜ける!?)
あきつ丸(考えろ……考えるであります、あきつ丸!)
あきつ丸「あの、その……!」
提督「……」
提督「何か事情が、あるのだな?」
23: 以下、
あきつ丸「えっ……」
提督「なるほど、以前から他の艦娘とは何かが違うと思っていたが……」
提督「そうか、あきつ丸は男型の艦艇だったか」
あきつ丸(……もう、誤魔化せない)
あきつ丸(このことについては、認めるしかない)
あきつ丸「そ……そうであります」
提督「……そうか」
提督「深海棲艦を参考に建造されたのが艦娘だ」
提督「だから、男型がいるとは……その、思わなかったぞ」
24: 以下、
たまげたなぁ・・・
25: 以下、
あきつ丸「……」
提督「……聞いていいか?」
あきつ丸「……はい」
提督「どうして男であることを隠していたんだ?」
提督「どうして艦『娘』であると偽装して、この鎮守府に来たんだ?」
あきつ丸「それは……」
あきつ丸「自分の存在は異質そのものであります」
あきつ丸「それが不協和音を生むより、艦娘として振舞った方が……」
あきつ丸「艦隊に一体感が生まれる。将校殿は、そう考えておられたそうです」
提督「……なるほど」
26: 以下、
あきつ丸「……」
提督「……」
あきつ丸「それで、その」
提督「なんだ?」
あきつ丸「自分の処遇は……どうなるのでありましょう?」
提督「処遇か……」
27: 以下、
提督「……今まで通りで構わない」
あきつ丸「なっ!?」
あきつ丸「じ、自分は男であります!」
あきつ丸「それが艦娘の中にいるのは問題では……!?」
提督「なんだ、貴様は問題を起こすつもりなのか?」
あきつ丸「まさか!」
提督「なら、いいじゃないか」
提督「貴様が言った通りだ。男であると皆に明かしたところで、艦隊の協調性を損なうだけだ」
提督「それならば、終戦まで隠し通すべきだ。私はそう考えた」
あきつ丸「ですが……」
30: 以下、
提督「少し驚いたが、何が変わるわけでもない」
提督「私は何も気にしない。協力を求めるのであれば応じよう」
提督「大浴場が利用できない日は、私の部屋の内風呂を使ってくれて構わない」
あきつ丸「い、いえ、そのような……」
提督「ともかくだ」
提督「今まで通りでいこう。いいな?」
あきつ丸「は、はい……」
29: 以下、
あの胸は偽物だったのか
31: 以下、
あきつ丸(こうして、一つ目の秘密がバレた)
あきつ丸(意外なほどにあっさりと……そして、意外なほどにすんなりと受け入れられた)
あきつ丸(分かってはいたが、提督殿は度量の広いお方だ)
あきつ丸(自分が男であるか、女であるかは、あの方にとっては些細な事なのかもしれない)
あきつ丸(それどころか、協力するとまでおっしゃってくれて……)
あきつ丸(……)
あきつ丸(そんな提督殿に、自分は嘘をついた)
32: 以下、
あきつ丸(自分が男であると隠していたのは……)
あきつ丸(男であると明かせば、艦娘の中に紛れ込めなかったからだ)
あきつ丸(近くにいて、各種データを取り、艦娘と同じ整備を受ける)
あきつ丸(そうすることが、間諜である自分の役目)
あきつ丸(それが提督殿に言えなかった、本当の理由)
33: 以下、
あきつ丸(汚い。汚い。自分は汚い)
あきつ丸(一心にお国のために戦っている彼らに比べ、自分はあまりに汚れている)
あきつ丸(何をしているのだ、自分は……)
あきつ丸(自分がしていることは、本当に正しいことなのか……)
あきつ丸(……いっそのこと、自分が間諜であると提督殿に打ち明けようか?)
あきつ丸(………………いや、それは駄目だ!)
あきつ丸(もしも、提督殿や、艦娘たちに軽蔑の目で見られたら……)
あきつ丸(自分は……自分は……)
34: 以下、
?一ヵ月後?
あきつ丸(相変わらず、自分は艦娘と間諜、二重の生活を送っている)
あきつ丸(提督殿は自分に良くしてくれている。以前に比べ、グッと生活しやすくなった)
あきつ丸(陸軍からは以前にも増して指令が送られてくる)
あきつ丸(戦艦の作り方。空母の作り方。艦娘の弱点。新型装備の設計図)
あきつ丸(提督殿との距離が縮まったと報告したら……)
あきつ丸(得られるはずもない重要機密を、盗み出すように命じてくるようになった)
35: 以下、
あきつ丸(自分はどちらを信じるべきなのだろうか)
あきつ丸(全てを打ち明けて、提督殿の庇護下に入るべきなのだろうか)
あきつ丸(それとも陸軍の文言を信じ、間諜に徹するべきか――)
あきつ丸(……)
あきつ丸(…………)
あきつ丸(………………)カサッ
あきつ丸(新しい指令書が、届いた)
あきつ丸(そこには、『自分の体を使ってでも、提督を篭絡しろ』と書かれていた)
36: 以下、
上官がホモを強要するとはたまげたなぁ……
37: 以下、
あきつ丸(陸軍は狂っている)
あきつ丸(そう思った)
あきつ丸(だからこそ、自分は――)
?夜 提督の私室?
あきつ丸「お風呂、助かったであります」
提督「いや、構わない」
提督「昨日、今日と入渠する艦娘が多かったからな」
提督「特に赤城や加賀が居座っていては、入ろうにも入れなかっただろう」ハハハ
39: 以下、
提督「それで、どうする?」
提督「茶でも飲んでいくか? それとも、また一局、つきあってくれるか?」
あきつ丸「いえ、今日は素直に帰るであります」
あきつ丸「あまり入り浸っていては、不審に思われますゆえ」
提督「そうか。分かった」
提督「では、また明日。おやすみ」
あきつ丸「はい……」
あきつ丸「……」
40: 以下、
あきつ丸「提督殿」
提督「ん? なんだ?」
あきつ丸「聞いてもらいたいことが……あるであります」
提督「……聞こう」スッ
あきつ丸「実は……」
あきつ丸「じ、実は、自分は……」
41: 以下、
あきつ丸(それから、自分は提督殿に全てを打ち明けた)
あきつ丸(自分は陸軍の間諜であること)
あきつ丸(過去、何度も海軍の情報を盗み出したこと)
あきつ丸(自分の悪行から、陸軍の思惑まで――)
あきつ丸(堰を切ったように吐き出していった)
42: 以下、
提督「……」
あきつ丸(提督殿は、自分を怒鳴ることもなく、戸惑うこともなく、)
あきつ丸(ただ、黙って、自分の話を聞いてくれた)
あきつ丸(彼は自分を打ち据えていい。憲兵を呼び、連行させてもいい)
あきつ丸(そうするだけの権利が彼にはあり――)
あきつ丸(そうされて然るべきことを、自分はした)
あきつ丸(だというのに、提督殿は――)
あきつ丸(ただただ、黙って、自分の話を――)
43: 以下、
あきつ丸「……以上であります」
あきつ丸(話を終えた時、自分の心は不思議に穏やかとなっていた)
あきつ丸(これまで抱えていた荷物を降ろした。そのような気分だった)
あきつ丸(自暴自棄になったのではなく、後はもう、どうなってもいいと――)
あきつ丸(神妙な気持ちで、提督殿の返事を待った)
44: 以下、
提督「……」
あきつ丸「……」
提督「……知っていた」
あきつ丸「え……」
提督「知っていたのだ。私は全て」
あきつ丸「な、なんと……?」
45: 以下、
提督「我が鎮守府から陸軍へと情報が漏れていたこと」
提督「そして、それは貴様の手によって行われていたこと」
提督「全て承知の上だった」
あきつ丸「な、なぜ……!?」
あきつ丸「ならばなぜ、自分を捕縛しなかったのでありますか!?」
提督「それでいいと思ったからだ」
提督「仕事もなく、活躍する場もなく、腐っている陸軍が……」
提督「クーデターを起こすでもなく、『権謀術数ごっこ』に腐心するのなら」
提督「それでいいと思った」
あきつ丸「……!」
46: 以下、
提督「押さえ込むばかりでは、いつか大きな爆発を起こす」
提督「人間とは……特に権力を持つ者なら、なおさらそうだ」
提督「だから私は、意図的にガス抜きをさせることにより、」
提督「間違えても内乱が起こらないよう、配慮した」
あきつ丸「そう、だったので……ありますか……」
あきつ丸「ならば、自分は……陸軍は……」
あきつ丸「なんと愚かであったことか……」ガクッ
47: 以下、
提督「承知の上でのことだったのだ」
提督「私は陸軍を責めないし、海軍は陸軍を弾劾しない」
提督「今は人類同士で争っている場合ではないのだ」
提督「仲睦まじく、とまではいかないが、ある程度は配慮しないとな」
あきつ丸「はい……」
提督「――だが、貴様は別だ」
提督「あきつ丸。陸軍の間諜」
提督「貴様の行ったことは、赦されることではない」
あきつ丸「……え?」
48: 以下、
提督「あきつ丸。愚かな陸軍の犬め」
提督「未練がましく陸軍にすがりつき――」
提督「今となってようやく、海軍に下った」
提督「名目上は一年も前から海軍の一員であるにも関わらず、だ」
あきつ丸「提督……殿……?」
提督「この裏切りは赦しがたい」
提督「処罰は免れないぞ――あきつ丸!」モミィ!
あきつ丸「提督殿っ! な、何をっ!」
50: 以下、
提督「躾けてやるぞ、あきつ丸」グッ
提督「今日、この日から、貴様は身も心も――」
提督「海軍の船へと変わっていくのだ――!」グイッ
あきつ丸「ああっ!」ドサッ
あきつ丸「どうされたのでありますか!? 提督殿! 提督殿!」
あきつ丸「このようなこと……じ、自分は男であります!」
提督「――それが?」
あきつ丸「なっ――!?」
51: 以下、
次回、「鎮守府レイプ! 野獣と化した提督!」は、明日の夜、当スレッドに投稿します。
お楽しみに!
55: 以下、
乙いいゾ?これ
52: 以下、
イメージに反して、実は海軍より陸軍の方が風通しはよかったとかなんとか
57: 以下、
提督「海軍には男色を嗜む者が少なからずいてな」
提督「士官学校にいた頃は、私も経験を積んだものだ」
あきつ丸「そういう問題では……!」
提督「なに、気を楽にするといい」
提督「自慢ではないが、腕には少々自信がある」
提督「すぐに気持ちよくしてやろう」シュルシュル
あきつ丸「あっ、ふ、服がっ……!」
58: 以下、
提督「案の定、胸は詰め物か」
提督「くだらない……その下に、もっと素晴らしいものを持っているというのに」スルリ
あきつ丸「ひっ……!」
平たく、色白な胸板を、提督の手が滑っていく。
男の官能を引き起こす、繊細なスライドタッチ。
だが、今のあきつ丸にとっては嫌悪感を催すものであり、彼は思わず身をすくめてしまった。
その間にも、提督は手際よくあきつ丸の衣装を脱がせ、陶磁器を磨くように、彼の肌をなぞりあげていく――。
60: 以下、
提督「ふむ、いい形の尻だ」シュルッ
あきつ丸「っ!」ビクン
提督「感度も良さそうだ……だが、無理は禁物だな」
あきつ丸「そ、それは……?」
子兎のように縮こまったあきつ丸は、どろりと粘つくものを見上げた。
筒状の容器から垂らされ、提督の指にはめられたコンドームに絡みつくそれは――。
アナルセックス専用に開発されたローションである。
女性器には到底使えない、粘度の高すぎる液体は、しかし、硬く締まる菊門にはうってつけの潤滑剤だ。
61: 以下、
あきつ丸「な、何を……!」
あきつ丸「止めてください……止めてください、提督殿!」
艤装を解除した艦娘は、見た目通りに非力だ。
ましてや『もどき』であるあきつ丸は、か弱いと言えるほど力がない。
日に焼け、引き締まった体を持つ提督に襲われれば、力ずくで手篭めにされる他ない。
――だが、提督はあくまで快楽によってあきつ丸の動きを封じ、
あきつ丸は、湧き上がる未知なる感覚に、力なくベッドに横たわるばかりだった。
62: 以下、
あきつ丸「あ、あ、あ……?」
あきつ丸「やっ、あっ! て、提督殿!」
不意に、あきつ丸の中に、ぬるりと提督の指が入り込んできた。
ローションを伴い、肉をほぐすように蠢くそれに、あきつ丸は一瞬、体を震わせる。
あきつ丸「ぁっ!?ビクン
だが、恐怖は快楽に上書きされ――そのように感じた自分に、あきつ丸は驚いた。
それもすぐさま、甘く、むずがゆいような感覚に流されていき、あきつ丸はすぐにも抵抗の意思を失っていく――。
64: 以下、
士官学校では、同級生に手を出し、下級生を貪り、上級生さえ蕩けさせ――。
教官さえ翻弄した提督にとって、あきつ丸の体を『開かせる』のは、造作もないことだった。
あきつ丸「ひ、ぃ……! あ……?」
同時に、この容易な相手は、提督にとってかけがえのない宝玉であった。
提督「ここが貴様の前立腺だ。分かるか?」
あきつ丸「ぜ、ぜん……?」ハァハァ
男を食い漁ったとはいえ、提督自身はバイセクシャルだ。
人並み以上の性欲を持ってはいたが――それは、男女平等に向けられるものだった。
そんな青年が士官学校を出て配属されたのは、艦娘ばかりの横須賀鎮守府。
間違いがあってはならない相手。決して孕ませてはならない戦乙女たち。
提督は、耐えなければならなかった。
出自の確かさから、娼婦を――ましてや男娼を買うことは、彼には許されなかった――。
65: 以下、
提督「分かるだろう? ここが貴様の秘所だ」
提督「甘く疼くしこりが、貴様の中のメスの部分だ」
あきつ丸「そ、そんな……自分は男であり、ま、ああっ!」ビクン
提督「そのような嬌声を上げて……ククク、よく言えたものだ」
長きに渡る禁欲生活の中、あきつ丸はまさに舞い降りた天使だった。
手を出していい相手。それが問題にならない相手。その事実を、内々に揉み消せる相手――。
提督は、自身の獣欲が荒ぶるのを自覚していた。すぐにもひくつく菊門に突き入れて、乱暴に腰を動かしたかった。
――だが、あきつ丸は大事な大事な掌中の玉だ。
壊すわけにはいかない。丁寧に扱い、長く、長く、愛用するべきだ――。
67: 以下、
あきつ丸「ひぃ! あ、ああっ!?」
あきつ丸「んはっ! ぁ、あぁ!!」ビクン!
提督「可愛がってやるぞ、あきつ丸」
提督「蕾から満開の桜となるように――」
提督「私が直々に調整してやろう」グリリッ
あきつ丸「あ、ああああっ!!」
執拗なまでに前立腺を刺激され、あきつ丸は少女のように喘いだ。
断続的にドライオーガズムの波が来る。その度に、とろり、とろりと鈴口からカウパーが垂れる。
それでも提督は指の動きを止めず――あきつ丸は汗だくになりながら、弓なりに腰を浮かせ、シーツを握って戦慄いていた。
68: 以下、
?翌朝?
あきつ丸「……」
あきつ丸「……む、う」
あきつ丸「いつの間にか寝て……」
あきつ丸「っ!?」
跳ね起きたあきつ丸は、まず、自分の体を見下ろし、次いで、周囲をぐるりと見回した。
自分は寝巻きを着ていて――そして、ここは自分の部屋だ――。
そのことを何度も確認したあきつ丸は、ほっと体の力を抜き――。
下腹部の甘い疼きによって、現実へと引き戻された。
69: 以下、
あきつ丸(玩ばれた……)
あきつ丸(男に……提督の手で、何度も何度も逝かされて……)
あきつ丸(最後は射精まで……)
尻穴を弄られて、女のような絶頂を味わわされたことよりも。
男であるあきつ丸にとって、『男に射精させられた』ことの方が、よほど屈辱であった。
――過敏になった男根をしごき上げられ、意識が飛ぶほどの射精をさせられた。
漫然と生きていては知り得ない快楽だった。今なお余韻が残るエクスタシーだった。
だが、そのようなもの――あきつ丸は知りたくなかった。
73: 以下、
あきつ丸「……」
あきつ丸「出勤、しよう……」
あきつ丸「朝礼が……」
男としての尊厳が損なわれようと、そのことで深いショックを受けようと、それは周囲には窺い知ることさえできないことだ。
いや、察せられたらまずい。まさか、男色に浸ったなど――。
知られるわけにはいかなかった。
あきつ丸の立場は、それを許さなかった。
75: 以下、
あきつ丸の予想通り――。
そして、提督の宣言通り。
あきつ丸は、密かに『開発』されるようになった。
あきつ丸「ん、ああっ!」
提督「まだ固いな……ククク」
提督は狡猾でしたたかだった。
執務を疎かにせず、艦娘たちとの交流を絶やさず、無理なくあきつ丸に手を出した。
彼が時と場所をわきまえない人物であったのならば、もしかすると、あきつ丸にも救いの道があったのかもしれない。
しかし、提督は優秀なオスだった。己の獣欲を手なずけつつも、獲物は容赦なく追い詰めていく。
全てを水面下で進め、そのことを周囲の者に悟らせなかった。
76: 以下、
己の欲望を優先せず、提督は自らの男根をさらけ出すことさえしなかった。
あくまであきつ丸を愉しませ――細心の注意を持って、彼には悦楽しか与えなかった。
苦痛はない。痛みはない。あきつ丸の肢体には、メスの悦びだけが刷り込まれていく。
あきつ丸「ああっ! あ?!!」ビクンビクン
提督「指を二本に増やしただけで……ふふふ、そう嬉しがるな」
異常な状況に馴染んでいく心と身体。
あきつ丸は百戦錬磨の業師によって、彼のオンナとして開花しつつあった――。
77: 以下、
墜ちたな
78: 以下、
?数週間後?
あきつ丸「……」
あきつ丸(もう、限界であります……)
あきつ丸(最近は、提督殿に抗えないどころか……)
あきつ丸(彼との逢瀬を、愉しんでいる自分を感じる……)
あきつ丸(彼は優しくしてくれる……最近では、簡易空母に改造してくれて……)
あきつ丸(『空母に改造する』技術情報を流させることで、陸軍での地位を向上させてくれた……)
あきつ丸(間諜としての仕事は順風満帆。艦隊決戦の際にも出番が増えた)
あきつ丸(提督殿に身を委ねれば、何もかもが上手くいく……)
あきつ丸(だが、自分は男であります)
あきつ丸(腐っても日本男児なのであります……!)ポロポロ
79: 以下、
?その夜 提督の私室にて?
提督「……ほう?」
提督「私を告発する、と?」
あきつ丸「ええ」
あきつ丸「これまでの行い、そのいくつかを録画させていただきました」
あきつ丸「これを公開すれば……さしもの提督殿も、言い逃れできないであります」
提督「なるほど……ふふっ」
提督「だが、相手は誰だ? お前だろう?」
提督「それに、私は指と道具しか使っていない」
提督「客観的に見れば、同意の上の……少し変わったプレイにしか見えないと思わないか?」
あきつ丸「戯言を……!」
80: 以下、
提督「それに、よく考えてもみろ」
提督「その映像を公開するということは、貴様が男であると明らかになるということ」
提督「そうなれば、艦娘からは軽蔑の視線で見られ、陸軍からはあっさりと切り捨てられるだろうな」
提督「告発などしても、貴様も破滅するだけだ。そうは思わんか?」
あきつ丸「……死なば諸共であります」
あきつ丸「これまで自分を散々玩んだ報い……」
あきつ丸「受けるがいいであります……!」ポロポロ
81: 以下、
提督「……」
提督「…………」フゥー
あきつ丸「っ!」ビクッ!
提督「あきつ丸。私は貴様が好きだ」
提督「愛している、と言っても過言ではない」
提督「そのような相手が自暴自棄になっているのは、心苦しく思うぞ」
あきつ丸「事ここに至って、なお……!」
あきつ丸「獣め……野獣めぇ……!」ボロボロ
あきつ丸「自分は男であります! このような形(なり)でも、男なのであります!」
あきつ丸「それが男に寵愛され、何度も気をやることの惨めさが……!」
あきつ丸「貴様に分かるか……!」ボロボロ
82: 以下、
提督「……」
提督「あきつ丸」
提督「認めるんだ。そうすればその苦しみはなくなる」
あきつ丸「な、何を……!?」
提督「私に愛でられる悦びを」
提督「陸軍の無能さと愚かさを」
提督「全て認めて、私のものになれば――」
提督「楽になる」
提督「そうは思わないか――あきつ丸」
あきつ丸「ち、ちが……」
84: 以下、
提督「あきつ丸」グイッ
あきつ丸「あっ……」
提督「もう一度言うぞ」
提督「私のものになれ」
提督「――いいな?」
あきつ丸「提督……殿……」
提督のたくましい腕に抱かれ、あきつ丸の身体からはたちまち力が抜けていく。
提督の顔が近づくにつれ、抗議の声は掠れて消えていった。
あきつ丸の中で、多くのことが渦巻いていた。
有能な提督のこと。目先のことしか考えない陸軍のこと。胸の高鳴りと、じくじくと疼く下腹部のこと。
返事はない。言葉にならない。
代わりに、あきつ丸はこれまで許さなかった唇を提督に差し出して――。
その夜、自身の全てを、提督に捧げた。
85: 以下、
oh...
83: 以下、
あれ……?
ノンケの筈が……
めちゃ面白いやんけ……
86: 以下、
純愛だな!
87: 以下、
?数日後?
将校『素晴らしい……素晴らしいぞ、あきつ丸! よくやった!』
あきつ丸「はっ」
将校『これで艦娘研究は飛躍的に進む。このデータさえあれば、海軍を上回るがさえできる!』
将校『ふ、ははっ! 忌々しい海猿め。いつまでも大きな顔をさせるものか……!』
将校『人が住まうは土の地面。陸がなければ人は生きていけない』
将校『そのことを、思い知らせてやるのだ……なあ、あきつ丸よ!』
あきつ丸「んんっ……あっ、はっ」
将校『……あきつ丸?』
88: 以下、
あきつ丸「いえ。誰かがそばを通ったと思いましたが、気のせいでした」
あきつ丸「ですが、これ以上は危険と判断し、これで通信を終わります」
将校『そうか。そうだな。これからはより一層、気をつけなければな』
将校『それではあきつ丸。次回の報告も楽しみにしているぞ』
あきつ丸「はっ」
プツン
あきつ丸「……」
あきつ丸「ああっ!」ビクッ
あきつ丸「ふ、ふふ。危なかったでありますな」
あきつ丸「提督殿」
89: 以下、
提督「ふふふ、興奮していたくせに何を言う」
提督「うねるように締まっていたぞ。思わず射精するところだった」
あきつ丸「あ、んっ♪ 出していただいて結構でしたのに……」
提督「いや、夜は長い。もっと愉しまないとな」
あきつ丸「そうでありましたな……あっ、んはっ!」グリグリ
提督「おっ、いいぞ……貴様も慣れた動きをするようになった」
あきつ丸「提督殿の教育のおかげであります」フフッ
90: 以下、
あきつ丸「あっ、あっ、はっ、んはっ……」グイグイ
提督「ふ、ふふふ……それにしても」
あきつ丸「?」
提督「将校殿とやらは随分とのん気なお方だな」
提督「取らぬ狸の皮算用というか……その計算の元になるものさえ、私がわざと流したというのに」
提督「あのようにもろ手を挙げて喜んで……」クックッ
あきつ丸「ふふっ、仕方がないでありますよ」
あきつ丸「陸軍のお偉方は、海軍憎しで凝り固まっておりますゆえ……」
あきつ丸「本当の脅威である深海棲艦でさえ、目に入ってはいないのでしょう」フフッ
提督「貴様も言うようになったな」ククク
92: 以下、
提督「まあ、これで貴様も改めて納得できただろう」
提督「やつらは害虫だ。自浄作用を無くし、陸軍内でさえ争いあう権力の豚だ」
提督「深海棲艦との戦いに勝利した暁には――」
提督「駆除しなければならない対象だ」
あきつ丸「その通りであります」
提督「内輪揉めをしている場合ではないので、生かしておかねばならないが……」
提督「あきつ丸。その時が来たら、貴様にも存分に働いてもらうぞ」
あきつ丸「当然であります」
あきつ丸「自分は提督殿のもの。提督殿のオンナでありますゆえ」
あきつ丸「望まれれば、いかようにも――」
93: 以下、
そう言うや否や、あきつ丸は提督にしなだれかかり――。
彼と濃厚な口付けを交わしながら、腰の動きを再開させた。
提督の上に跨り、彼の雄々しい男根を呑み込んだ菊門は――。
媚びるように腸壁を絡みつかせ、射精を促すように蠢いた。
あきつ丸「あっ、胸をっ……!」
あきつ丸の身体も随分と女らしくなった。
華奢ではあったが色気のなかった肢体は、肉付きがよくなり、艶やかさを増し――。
簡易空母へ改造したためか、はたまた、提督の『指導』の賜物か。
胸はふくらみ、提督の愛撫を歓喜をもって受け止めていた。
94: 以下、
――天窓から月明かりが差し込む、提督の寝室。
簡素なベッドの上で、あきつ丸は――提督のオンナは、一心に腰を振る。
玉のような汗が飛び散り、シーツに落ちては染みを作る。
二人の身体からは熱気が立ち昇り、部屋の湿度を上げていく。
それでも構わず、あきつ丸は腰を動かし――。
自分の中で提督の分身が震え、精を吐き出したのを感じた瞬間。
彼もまた、提督の腹の上へと吐精し、絶頂の余韻を味わった後、白濁に汚れるのも構わず倒れこんだ。
95: 以下、
あきつ丸「はぁ……はぁ……」
提督「ふう……」
荒い息を吐く二人。
ぼぅ、と天窓の向こう、星空を見上げる提督と、彼の胸板に頬を寄せ、うっとりと目を細めるあきつ丸。
情事を終えた、オトコとオンナ。
次の一戦に備え、息を整える提督と艦『娘』。
天窓から注ぐ月明かりは、火照った彼らの身体を照らし――。
その薬指にある指輪を、キラリと光らせていた。
?完?
98: 以下、
おしまい
……次はレーベかマックスが餌食だな!
大穴でもがみん。ダークホースに島風くん。
ああ?、夢が広がるんじゃあ?^^
97: 以下、
最上お願いします(迫真)
100: 以下、
なんだ、ただの純愛か
男の娘ならなんも問題は無い 乙でした
102: 以下、
ホモ特有の文章力。
名作だって、はっきりわかんだね。
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