ヘレン「ヘーイ!」 智絵里「へ、へーい……?」back

ヘレン「ヘーイ!」 智絵里「へ、へーい……?」


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2:
ヘレン「Pから頼まれてあなたの矯正をすることになったわ」
ヘレン「まゆに影響を受けすぎたようね。瞳に光が灯っていないわ」
智絵里「は、はあ……よろしくお願いします」」<●> <●>
ヘレン「ハイライトを消すという小手先の技術に頼らずとも、あなたはもっと輝ける。世界レベルであるこの私に師事すればね」ドヤッ
3:
ヘレン「世界レベルを目指すための秘訣は3つあるわ」
ヘレン「ひとつは、自分だけの武器を見つけることよ」
智絵里「武器、ですか?」
ヘレン「ええそうよ。たとえば私の武器は、この身体中から溢れる美のオーラ」
智絵里「お、おーら?」
ヘレン「フッ、智絵里にはまだ見えないかしら。青いわね……けれど、あなたが高みを目指していれば、いつか必ず見えるようになるはずよ」
ヘレン「この」←背筋を伸ばす
ヘレン「私の」←その場でターン
ヘレン「美が!」←左手を突き出してポージング
智絵里「(よくわかんないよぉ)」
4:
智絵里「でも、私に武器なんて」
ヘレン「あら、あなたには立派に誇れるものがあるじゃない」
智絵里「え?」
ヘレン「Pがいつも言っているわ。智絵里の笑顔は天使のようだと」
ヘレン「私も一理あると感じた」
智絵里「そ、そんな。天使だなんて……」カアァ
ヘレン「私が目指すのはヴィーナスだから、エンジェルとは方向性が異なる。けれど智絵里、あなたならエンジェルになることは可能よ」
智絵里「そ、そうですか……? というか、ヘレンさんはヴィーナス希望なんですか」
ヘレン「ええ、美ーナスよ」
5:
ヘレン「秘訣のふたつめよ。ポジティブに物事を捉えなさい」
智絵里「ポジティブ……前向きってことですよね」
ヘレン「ザッツライト。病は気からというでしょう? 逆に言えば、ポジティブに考えれば身体の方もそれに伴ってくるということよ」
智絵里「そういうものでしょうか……でもわたし、なかなか前向きに考えるのが苦手で」
ヘレン「そう……ならあなたには、この言葉を授けましょう。もっとも、他人からの受け売りだけど」
ヘレン「あれは、私が芸術の街・パリを訪れていた時のこと」シミジミ
7:
ヘレン「エッフェル塔の近くを歩いていると、只者ではないオーラを纏った男と出会った」
智絵里「た、ただでものではない……いったいどんな人だったんですか」
ヘレン「豆腐を持っていたのよ」
智絵里「……はい?」
ヘレン「パリの真ん中で、明らかに場違いな作務衣姿。ボウルに豆腐を入れたその男からは、なぜか有無を言わさぬ空気を感じたわ」
ヘレン「その瞬間、私と彼の目が合った」
ヘレン「互いに一瞬のうちに理解したわ。目の前の相手は世界レベルだと」
智絵里「(本当に向こうもそう思っていたのかな……)」
8:
ヘレン「その時彼はこんなことを言っていたわ」
ヘレン「世界は自分を中心に回っている。そう思ったほうが楽しい、と」
智絵里「なんだか、すごく自信満々な言葉ですね」
ヘレン「あなたのようなマイナス思考に陥りやすいタイプは、このくらいの気構えで臨んだほうがいいと思うわ」
智絵里「自分を中心に回っている……ですか。その人、日本の方だったんですか?」
ヘレン「ええ。天の道を行く男だと言っていたわ。まさに世界レベルね」
智絵里「(うわあ、反応に困る……)」
9:
ヘレン「最後の秘訣よ。これがもっとも単純で、それでいて大事なこと」
智絵里「ごくり」
ヘレン「智絵里。大口を叩きなさい」
智絵里「大口?」
ヘレン「そう。たとえば私は、常々世界レベルと口にしているでしょう。これと同じよ」
智絵里「え……(大口だと思っていたんだ……)」
ヘレン「智絵里。私達はなに?」
智絵里「なにって……アイドル、ですか?」
10:
ヘレン「その通り。アイドルはファンに夢と希望を与える存在。だとすれば、大言壮語を現実のものにするくらいのミラクルは起こすべきでしょう?」
ヘレン「それでこそ、アイドルというものよ」
智絵里「……なるほど。それは確かに、わかるような気はします」
ヘレン「でしょう? だからあなたも、大言壮語の内容を決めなさい。そして自信を持って突き進みなさい。まずはそこからよ」
智絵里「は、はい……」
ヘレン「……第一に直すべきは、その弱々しい返事ね」
11:
ヘレン「今から練習をするわ。私のあとに続いて声を出して」
智絵里「わ、わかりました」
ヘレン「では早。ヘーイ!」
智絵里「え? へーい、なんですか」
ヘレン「声が小さい! 疑問を挟まない!」
智絵里「へ、へーい!」
ヘレン「どもらない! もう一度、ヘーイ!」
智絵里「へーい!」
ヘレン「まだまだよ! しっかりできるまで続けるわ!」
12:
翌日
P「おかえり、智絵里。レッスン頑張ってきたか?」
智絵里「ヘーイ! Pさん! 世界レベルにかわいいわたしにかかれば、レッスンなんて朝飯前です!」
P「そ、そうか……うん、元気なのはいいことだ」
智絵里「………」ニコニコ
P「? どうしたんだ?」
智絵里「いえいえ。世界レベルにかわいいわたしの笑顔を見てPさんが癒されれば、と」
P「あ、あははー。そりゃーうれしいなー。癒されるなー」
智絵里「そうでしょうそうでしょう。笑顔はわたしの武器ですからねー」フンス
13:
P「ヘレンさん。智絵里をもとに戻していただけないでしょうか」
ヘレン「あら。あのくらい自信を持っているほうがいいんじゃないかしら」
P「自信持つのは結構ですけど……ちょっとウザいです」
まゆ「今度はヘレンさんの影響を受けすぎたみたいですね」
ヘレン「待ちなさいあなた達。それはつまり、普段の私がウザいということ?」
P「というかあの手のウザかわいさ、どこかで見たことあるような……」
ヘレン「ねえちょっと」
14:
幸子「おはようございまーす! カワイイボクの登場ですよー」
P「あ、こいつだ」
まゆ「ああ、納得ですねぇ」
幸子「? どうかしましたか、みなさん」
智絵里「ヘーイ! 幸子ちゃん。今日もかわいいですね!」
幸子「智絵里さん。ふふーん、まあ当然ですよ。ボクはいつでもカワイイですから!」
智絵里「わたしの笑顔も世界レベルですけど、幸子ちゃんのかわいさも世界レベルです。一緒に高みを目指しましょう!」
幸子「なんだか今日の智絵里さんは話がわかりますね! いいでしょう、ふたりでトップへ行きましょう!」
P「めっちゃ盛り上がってる」
まゆ「意気投合ですねぇ」
15:
ヘレン「幸子が2人に増えたみたいね」
P「自信満々な智絵里も十分可愛いが、もう少しだけおとなしくしていてほしい……」
まゆ「そうすると、また助っ人を呼ぶ必要がありますね」
ヘレン「でも、うちの事務所におとなしめの子なんてほとんどいなかったような」
凛「おはよう」ガチャ
P「………」
まゆ「………」
ヘレン「………」
凛「え、なに? 入るなりいきなり無言で見つめられると怖いんだけど」
P「凛……頼みたいことがある」
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