男(最強の魔女…どんな人なんだろう) 魔女「えへへ、こんばんは」ニコッback

男(最強の魔女…どんな人なんだろう) 魔女「えへへ、こんばんは」ニコッ


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男!魔女を救ってくれ!
72: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:33:00.88 ID:JKYS3MrRO
……………
………

男(──それでも、俺になにができるっていうんだ)
男(陛下の話の真偽もはっきりとせず、まして魔女様はそれを信じておられるはず)
男(俺の不確かな考えを告げても、そんなの心を惑わせるだけ──)
魔女「──男様?」
男「はっ…」ドキィッ
魔女「どうされたのです。…なにか考え事でも?」
男「こ、これは失礼を! ええと…漁の話の途中でありました」アセアセ
73: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:33:42.32 ID:JKYS3MrRO
魔女「……ごめんなさい、連日ここへお呼びしているから疲れも蓄積されているのでしょうね」
男「とんでもない、隊の仲間は日々砦内の警護に立っているのです。それと比べれば楽なものでございましょう」
魔女「ふふっ…最初の頃は緊張ですごく疲れていたように見えましたが?」
男「うっ…気を緩めているつもりはございませんでしたが…」
魔女「いいえ、嬉しいです」
男「……申し訳ございません」
魔女「ここを訪れて頂く事、男様は苦痛ではありませんか?」
男「無論、変わらず光栄の至りと存じております」
魔女「どうか本心をお聞かせ下さい」ジッ…
男「……本心…でございますか」
74: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:34:19.51 ID:JKYS3MrRO
男「私は…大変楽しゅうございます」
魔女「……どのように?」
男「恐れながら魔女様は、やむを得ず外界に出られた事がありません」
魔女「はい」
男「それを私が語り、魔女様は興味深く聞いて下さいます」
魔女「実際にとても興味深いですから」
男「その…失礼かもしれないのですが」
魔女「?」
男「私は、魔女様をそこへお連れしているつもりで語らせて頂いております」
魔女「……ありがとうございます」
75: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:34:55.08 ID:JKYS3MrRO
魔女「本当に連れていって貰えたら、どんなに楽しいでしょうね」
男「連れていきとうございます」グッ…
魔女「私は外では生きられませんから」ニコ
男(……やはり魔女様は、そう信じておられるのか)
魔女「ごめんなさい、困らせましたね」
男「いえ、しかし…」
魔女「なんでしょう?」
男「いずれ、屋外で演習をなさるのでは…? その時、お身体に差し障りは無いのでしょうか」
魔女「!!」ビクッ
男「…申し訳ありません、私が知るべき事ではありませんでした」
魔女「演習は短時間の事ですので、心配には及びません」
男(明らかな動揺が見られたな……やはり演習の意味はご存知みたいだ)
76: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:35:30.94 ID:JKYS3MrRO
魔女「も、もう今宵の時間も少ないですね。なにかお話をして下さいますか?」
男「はい、なんなりと」
魔女「では……ええと、そう…ですね…」
男「漁の話の続きでよろしいでしょうか?」
魔女「……ううん…あ、そうです、歌を」
男「歌…?」
魔女「はい、私は音楽というものをあまり知りません」
男(まずい、俺もあんまり知らない)
魔女「楽譜なども見た事はありますが、音階がよく解らないのです」
男「な…なるほど」
77: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:36:10.46 ID:JKYS3MrRO
魔女「だから、よかったら歌って頂けませんか?」ニコッ
男「ぐ……聴くに耐えられるかどうか…」
魔女「大丈夫です」ワクワク
男(なにが大丈夫なんだろう…)ダラダラ
魔女「できれば覚えたいので、簡単な歌だと嬉しいです」フンス
男「ううむ…それだと、子守歌くらいしか存じません…」
魔女「子守歌! ちょうどいいではないですか、今は就寝前です」パァッ
男「そ、それはあまりに失礼では? まるで魔女様を子供扱いしているようで…」アセッ
魔女「お待ち下さい、私すぐに横になります」イソイソ…ポフッ、ファサッ
男「えっ、えっ…あの…!?」
魔女「これで大丈夫です! さあ!」キラキラ
男「はぁ…どうか笑わないで下さいますよう…」
魔女「笑いません、約束します」コクン
78: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:36:58.63 ID:JKYS3MrRO
男「…ごほん、あー、あー…」
魔女「もう始まっているのですか…?」
男「まだです」
魔女「咳払いは覚えなくて良いのですね」ニコッ
男「金色ーのー麦畑ーにー日が落ちーたーのはー♪」
男「母上ーがー焼くーパンのー香りがー煙突ーからー届く頃ー♪」
魔女「………」
男「今はー星がー昇りてー渡り鳥ーがー休む夜ー♪」
男「髪をー撫でるはー命のー左手♪ 掌をー包むはー魔法のー右手ー♪」
男「母に抱かれー魔法にー誘われー眠る愛児よー♪」
魔女「………」スヤ…
男(本当に寝た…)フゥ…
79: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:37:37.01 ID:JKYS3MrRO
男(……子守歌で眠りにつく魔女様…か)
男(幼い頃は日の光を受ける事もできず、今も満足に世界を見る事すら叶わず)
男(きっと、母の腕に抱かれて眠る事も無かったんだろう)
『──私はその港町で、両親の一人息子として生まれました』
『…その頃の事を覚えておるのか?』
男(あれは、本当に解らなかったんだ)
男(乳飲み子の記憶なんか誰も持っていない、それさえも知らないから)
男(俺が本当に生まれた頃の記憶を語れると思ったんだろうな)
男(……なにが魔女の騎士だ)
男(主を死なせるための務めなど──)
80: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:38:18.75 ID:JKYS3MrRO
カラーン…コローン…
男「……っ…」ハッ
男(いけない、21時になってしまった)スッ…
ギイイィィィ…パタン…
男(急がないと…)
男「!!」
砦長「──次の王都への定期報告書は二週間後に送る事になる」
砦長「私に見せて差し支えないものは一応目を通しておきたい、分けておいてくれ。いや来週で構わん」
砦長「それでは最後は施錠を確実にな、先に休ませてもらおう」…バタンッ
男(この間の部屋……砦長は引き上げたようだけど)
男(あの白衣の職員はまだいるみたいだな)
81: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:38:57.35 ID:JKYS3MrRO
男(…いけない、何を考えてる)グッ
男(俺はただの一兵卒だ、月の国軍に属する騎士だ)
男(でも…俺は──)
『本当に連れていって貰えたら、どんなに楽しいでしょうね』
『私は外では生きられませんから』
男(──魔女の騎士じゃないか)
…コン、コン
《…誰だ? 砦長殿か?》
男「先日立ち入らせて頂いた、白色騎士小隊の男だ」
《ああ…魔女様の付き人の、何の御用でしょうか》
82: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:39:41.92 ID:JKYS3MrRO
男「今後、魔女様に接する上で知っておくべき事があったら、貴方に訊くよう陛下に仰せつかっている。少し話を伺えないか」
《砦長を通して頂けませんか?》
男「陛下は砦長に対しても全てを話してはおられぬようだったが…?」
《………》
男(さっき聞こえた会話からしても、この者は砦長以上に深いところを知っているはず)
《どう言った内容でしょう?》
男「ドア越しに訊けぬ話……と言おうか」
《……少々お待ち下さい》
カチャッ…キイィィ…
男「遅くにすまない、核心に迫る話をする時は砦長にも聞かれないように…と言いつけられていたのでな」
白衣「ふむ…しかし陛下は男殿にどこまで?」
男「陛下が話して下さった事は、さほど掘り下げた内容ではない。しかし中途半端な情報を魔女様ご本人から伺ったのだ」
白衣「…なるほど、それは対応に困るでしょうね」
男「ああ、少し知恵を拝借したい」
白衣「どうぞ、中へ」
男(定期連絡は二週間後…か、下手をしたらその時には首が飛ぶな…)
83: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:40:16.41 ID:JKYS3MrRO
男「魔女様は幼き頃、日の光さえも受けられなかった…それは聞いた話に合わせてある」
白衣「はい」
男「しかし魔女様ご本人も、その事に疑問を抱かれているようなんだ」
白衣「ああ…やはり、そうでしょうな」
男「私も聞いた時から疑問であったからな。まさかこの砦で産まれたというわけではあるまい」
白衣「確かに、今の魔女様がここへ入られたのは二歳の頃でありました」
男「二歳…か、それでは一切覚えていないわけだな。今後も嘘をつき通すことはできるか」
白衣「ええ、是非その方向で。外に出られない事自体が嘘だと知ったら、魔女様は簡単にこの砦を潰せてしまいます」
男(……!!)
84: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:41:02.16 ID:JKYS3MrRO
男「……次の魔女になる者は、もうこの砦に?」
白衣「それについても魔女様がなにか言っておられたのですか」
男「ああ…既に決まっている…と」ゴクリ
白衣「そうですか…やはり察せられるのでしょうな。確かにひとつ下の階に一人の少女が」
男「去年演習を行った、先代の魔女様が使っていた部屋にでも?」
白衣「その通りです。ようやくその少女も地下を脱し、日の光を浴びられた…ということですな」
男(地下…それが窓の無い部屋か)
男(しかしまだその少女の事を魔女とは呼ばないんだな…)
男(だったら、これは賭けだが──)
85: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:41:56.70 ID:JKYS3MrRO
男「──いつ、その少女は魔女に?」
白衣「なんと…そんな事まで」
男(怪しまれた…か…?)
白衣「今までとは事情が違います。高い魔力を持つ方を魔女と呼ぶなら、既に魔女という事に」
男「しかし今現在は私が接している御方こそが魔女…という事か」
白衣「そうですね、全ての行程が終わるまでは。……その様子だとつまり魔力譲渡の件も聞いているのでしょう?」
男「……ああ、ぼんやりとだが」ゴクリ
白衣「はぁ…やはり何も知らない方を魔女様の付き人につけるなどすべきでなかったんだ」
男「魔女様とて人間だ、先入観を持たぬ者に胸中を話したくもなるだろう」
白衣「それは解りますがね……辛い運命を背負わされた方ですから」
86: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 12:42:46.06 ID:JKYS3MrRO
男「大丈夫だ、私は魔女様から聞いた話を広めるつもりはない。ただ、疑問を抱えたままではどうにも話がし辛くてな」
白衣「よかったですよ、せめて貴方のような人で。何しろ魔女様が約束と引き換えに話し相手を求めるなど歴代で初めての事だそうですから」
男「約束…?」
白衣「ええ、それこそ魔力譲渡に同意する…という約束です。失礼ながら貴方は褒美の品というわけですね」
男「その譲渡は、いつ行われる」
白衣「魔力の譲渡は六月末、来週に最初の一回を行う予定です…が、これは魔女様も承知しているとはいえ、改めて話題とはしない方が」
男「…なぜだ」
白衣「年に一度、十年に渡り血を分け魔力を譲渡する…それこそが死を手繰り寄せる行為だからですよ」
男(血を分ける…死を手繰るだと…?)
白衣「もし魔女様が薄々ともその事に勘付かれているとしたら、自らの命を切り分ける事に恐れはあるでしょうから──」
91: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:37:02.59 ID:n4nJk/N9O
……………
………

…1週間後
男「──魔女様、どこか具合が悪くございますか?」
魔女「いいえ…大丈夫です」
男「しかし顔色が優れません」
魔女「明日から少しの間、男様に会う事もできないのです。どうか今宵は今しばらく話をお聞かせ下さい」
男「三日間…でございましたね」
魔女「はい、魔力を高めるための儀式のようなもので」
男「それが顔色が優れぬ理由なのでは?」
魔女「…関係ありません」
男「ならば結構です。またつまらぬ話でも聞いて頂くとしましょう」
92: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:37:46.86 ID:n4nJk/N9O
男「まず外を歩くというのは、存外疲れるものでございます」
魔女「そう…ですか」
男「ましてやずっと同じ部屋におられる魔女様であれば、最初は日に5里も歩く事は望めますまい」
魔女「………」
男「そのくらいの距離しか進めないという事は、満足に日々の湯浴みなどは得られないという事」
魔女「なんの話を…?」
男「無論、食事も携帯に向いた簡素なものとなります」
魔女「男様…」
男「ただし街道は緑も豊かで、時には川の流れや滝、海が見晴らせる事もございます」
魔女「男様、おやめ下さい」
男「夜は天窓に切り取られることなく、満天の星空を見ながら眠りにつく事に…」
魔女「やめて下さいっ!」
93: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:38:47.86 ID:n4nJk/N9O
魔女「私を連れているつもりで話して下さるのは解ります!そういうお話はいつも楽しいです!」
男「………」
魔女「でも、今日はどうされたのですか…? そんな言い方をされたら、それが叶わぬ事が辛くなります」
男「ならば…叶えては如何です」
魔女「できないから辛いのです! 知っておられるでしょう…!?」キッ
男「ええ、存じております」
魔女「ならば──」
男「──明日から三日間、最初の魔力譲渡に臨まれる事も」
魔女「!!」
94: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:39:20.67 ID:n4nJk/N9O
魔女「なぜ…それを…?」
男「魔女様、気づいておいでなのではありませんか」
魔女「……なにをです」
男「その魔力譲渡…次の魔女に血を分ける行為は、貴女様の命そのものを切り取る事」
魔女「そんな事はありません」
男「そう確信されているのですか」
魔女「だって…魔力の引き継ぎとは関係なく、魔女は長く生きられないのです!」
男「二十代の内に亡くなってしまう…?」
魔女「……そうです」
95: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:39:53.41 ID:n4nJk/N9O
男「幼い内は太陽の光を受ける事さえ許されず」
魔女「はい」
男「今も貴女様の世界の全ては、この部屋から望める景色だけ」
魔女「そうです、この砦の外では生きられません」
男「誰にそう教えられたのです?」
魔女「…男様、おやめ下さい」
男「幼少を過ごした窓の無い部屋、決して開かぬよう作られたこの部屋の窓…いつその真偽を確かめられたというのです」
魔女「それ以上言ってはなりません! 反逆罪で罰する事に…!」ダンッ
男「誰に対する反逆ですか」
魔女「国王陛下に対し──」
男「──私は魔女の騎士です」
96: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:40:26.37 ID:n4nJk/N9O
魔女「……男様…」
男「魔女様、お手をこちらへ」
魔女「な…なりません! 如何に貴方が魔力への感応が低くとも、私に触れたら…!」
男「それを教えたのは誰です」
魔女「!!」
男「…お手を」スッ
魔女「………」フルフル
男「失礼致します」
魔女「あっ…だめっ──!」
──ギュッ
97: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/25(水) 21:40:59.12 ID:n4nJk/N9O
男「……どうです?」
魔女「嘘……触れてる…のに」
男「外界を歩いてみたい、世界を目にしたい、死にたくない…」
魔女「あ…ぁ……っ」ツーーッ
男「魔女様、もう一度申し上げます」
魔女「……っ…!」ポロポロッ
男「その望み、叶えては如何ですか」
106: 以下、
魔女と男の道はどう進むのか超期待
111: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:32:46.19 ID:Cgjeuv9AO
魔女「でも……私…は…っ!」グスッ
魔女「自分は…外で生きられない……そういう病だと…!」
魔女「それ…をっ……特別な環境を整えたこの砦で…陛下はっ……私を生かして下さって…!」
魔女「どうやって、ここまで連れて来られたのか…病は本当なのか…っ」ヒック
魔女「疑問に思っても…恩が…あるからっ…!」
男「魔女様…」
魔女「だから…! それを返す…ためにも……魔女になる…って!」グスンッ
男「これまでの時間を思えば、あまりに残酷かもしれません」
魔女「うっ…うぅ……っ」
男「しかし貴女様は病など患ってはいない、本当は外の世界でも生きられるのです」
112: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:33:30.24 ID:Cgjeuv9AO
魔女「じゃあ……どうすればっ…!?」
男「ご命令を」
魔女「命…令……?」
男「私は貴女様の騎士にございますれば」
魔女「騎士…私の…」
男「なんなりと」
魔女「……でも」ギュウッ
男「以前も申し上げました」
魔女「……?」
男「私は語らせて頂いた、その景色を見せとうございます」
113: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:34:31.09 ID:Cgjeuv9AO
魔女「う…ぅ…」
男「貴女様に死んでなど欲しくないのです」
魔女「…でも私は、あと十年足らずしか生きられませんっ」
男「それも偽りだと申しました」
魔女「だけどっ……私が生きるために、自由になるために貴方を巻き込むなど…!」
男「先ほど私は何と言ったか、もうお忘れですか」
魔女「……ぅ…」
男「貴女に世界を見せたい、私自身がそう望んでいるのです」
114: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:35:19.80 ID:Cgjeuv9AO
魔女「………」グッ
魔女「………」フルフル
魔女「………」スゥ…
魔女「男様……私の騎士…」ジワッ
魔女「それでも私は命ずるなど…できません」ポロッ
魔女「だから……お願い…します」ボロボロ…
魔女「私を…ここから」グスン
魔女「連れ去ってください──」
115: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:37:34.56 ID:Cgjeuv9AO
男「──御意に」
魔女「……ぅ…」グスッ
男「では早、参りましょう」スッ…
魔女「え……どちらへ?」キョトン
男「この部屋の出口は、あの扉をおいて他にありません」
魔女「で…でもっ、正面からでは…」
男「魔女様、決して離れませぬよう」
ギイイイィィ……
男「…さあ、早く」
魔女「……ぅ…」
男「大丈夫、ここはまだ砦の中ですし、貴女は外でも生きられます」
116: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:38:21.07 ID:Cgjeuv9AO
男(この階に人の姿はないみたいだな…)
魔女「……あの、私…ずっとここにいても建物のつくりはほとんど解りません」
男「ご心配なく、私はもう半年もここにおります」
魔女「もしかして…隠し通路でも?」
男「いいえ、廊下と階段の位置くらいは解ります」
魔女「ええぇ…」
男「気をつけて、階段です。降りるのも初めてでは?」
魔女「そ、そんな事はありません! 今までもこの廊下は歩いた事があります!」ムッ
男「これは失礼を」
魔女「…でも、ありがとう」ニコ
男(先代の魔女様から魔力を引き継ぐ施術の時…だろうな)
117: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:39:14.95 ID:Cgjeuv9AO
カッ、カッ、カッ…
砦長「──男殿?」
男(砦長殿…!)
魔女「!!」ササッ
砦長「今、誰が後ろに隠れたのだ?」
男「夜の散歩にはちょうどいい季節ですのでね」
砦長「答えよ、貴公の後ろにいるのは誰だ」
男「誰…などと、そのような雑な呼び方をなさいませんよう」
砦長「貴様…まさか」
男「偉大なる我が主、魔女様の御前です。お言葉に気をつけて頂きたい」
砦長「くっ…! 誰かっ、警護隊っ!!」
118: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:39:58.00 ID:Cgjeuv9AO
ダダダダダッ…!
友「砦長殿、いかがなさいました!?」
砦長「おお…あそこを! 男め……魔女様を攫わんとしておる! 斬り捨てよ!」
友「なんと…砦長殿、お怪我はありませんでしたか」
砦長「私の事はいい! 早く反逆者を!」
友「そうですか、ご無事なら何よりでした」…スッ
男「魔女様、お許しを」
魔女「え…?」
男「隊の誰にも話さない…と約束いたしましたが、いたしかたなく」
…チャキッ
砦長「な…!?」
友「動くな、叫ぶ間も与えんぞ」
砦長「貴様も…!」
友「我々白色小隊以外にも僅かといえど常駐の兵がおりますからな。人質は大事かと」ニヤリ
砦長「なんだと…小隊全員が裏切ったというのかっ──」
119: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:40:32.92 ID:Cgjeuv9AO
………

…砦一階
友「──眼帯、首尾はどうだ」
眼帯「はん、一人残らず縛りあげたからね。もう人質に用は無いわ」
砦長「貴様ら…! 魔女様の御力を我が物にするつもりかっ!」
…カッ、カッ、カッ
男「笑わせるな、そうしてきたのはこの国の方だろうが」
友「男、どうだった?」
男「すまん、待たせた。だめだ、部屋は見つけたがどうやっても扉が開かん」
眼帯「次の魔女となる少女…救いたかったけど」
魔女「魔女の部屋は内側からしか開けられません…」
120: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:41:06.12 ID:Cgjeuv9AO
眼帯「…驚いた、貴女が魔女様なの? ただの女の子じゃない」
男「眼帯、口が過ぎるぞ」
魔女「お気になさらず、多くの方を巻き込んでしまってごめんなさい」
友「何を仰います、我々は望んでこうしているのです」
──ザンッ!
眼帯「白色騎士小隊、隊士32名! 砦警護を離れ、只今より魔女様護衛の任につきます!」
魔女「ありがとう…皆さん、男さん」
男「友、あとの一人は?」
友「解らない…昨夜、話をした時から悩んでいたようだが今は姿が見えん」
眼帯「開門するよ!」
砦長「よせっ! 魔女様は外では生きられぬ!」
魔女「……っ…」
男「大丈夫、信じて下さい」
魔女「…はい」グッ
121: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:41:39.96 ID:Cgjeuv9AO
ギイイイィィィ……ゴオオォォン
魔女「………」
男「さあ、魔女様」
魔女「これが…外の世界」
友「光溢れる朝でなく申し訳ありません、今は急ぎましょう」
魔女「はいっ」グスッ
眼帯「魔女様、お手を」スッ
魔女「ありがとうございます──」
──バチィッ!
魔女「きゃ…っ!」
眼帯「痛った…!?」
122: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:42:12.03 ID:Cgjeuv9AO
男「魔女様っ! お怪我は…!?」
魔女「びっくりした……でも私は平気です」
友「よかった…」
眼帯「私は痛かったんだけど?」フリフリ
友「痛いだけでどう心配しろって?」
眼帯「あんた、覚えてなさ…い……うぅっ!?」ゾクゾクッ…フラッ…
男「眼帯…っ!?」
友「!!」ダダダッ……バッ──!
──トサッ
眼帯「う…ごめん、友…なんか突然…」クラクラ
友「もしかしてこれが魔力にあてられる…って事なのか」
123: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:42:47.50 ID:Cgjeuv9AO
男「魔女様、大変失礼ですが私の後ろに」
魔女「も、申し訳ありません…」
眼帯「いいえ、私が不用意だっただけ…です…」
男「すまん、眼帯。俺が『大丈夫だ』と伝えてたから」
眼帯「ありがと、友……もう大丈夫。さっきのはチャラにしたげる」
友「どこも打たなかったな?」
眼帯「うん」コクン
友「まあ、打ってもおつむの出来は変わらないだろうけどさ」
眼帯「やっぱ覚えときなさい」チッ
男「…友は? 魔女様との距離はそう変わらないと思うが、なんともないのか」
友「俺は平気だな、眼帯そんなに魔法に長けてたっけ?」
眼帯「失礼ね、あんたよりは得意よ」
友「はいはい……でも、少なくとも魔法適性のある者は魔女様に触れられないってのは本当だったみたいだな」
124: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:43:20.37 ID:Cgjeuv9AO
魔女「……ごめんなさい」シュン…
男「いいえ、自分が触れて問題がないからと勝手な判断をしたのは私です」
友「まあ元々そうだけど、やっぱり魔女様の付き人は男しか務まらないって事か」
男「……では失礼ながら」スッ
魔女「はい」ソーーッ…
…ギュッ
友「本当になんともないんだな」
男「堀を渡ります、丸太を組んだ橋ですので足元にお気をつけを」
眼帯「おお…姫様って感じ」ニヤニヤ
魔女「お、およし下さい」テレテレ
男「冷やかしてないで、急ごう。夜の内に街道の分岐を幾つかは超えておきたい」
友「だな、どこかで馬車でも調達できればいいが…」
125: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:43:57.73 ID:Cgjeuv9AO
ザッ、ザッ、ザッ…
眼帯「一応、砦屋上にある通信台の日射鏡は壊しておいたよ」
男「砦から一番に通信を中継するのは、あの山の尾根にある連絡塔だ。念の為そこの反射鏡も壊しておけば更に時間が稼げるな」
友「総員で行く必要はないだろ、5人くらいでも送るか」
眼帯「まずは砦から見えなくなるくらいまでは離れなきゃ、そこから進路を予定の方向に──」
??「──動くな、貴様ら」
男「誰だっ!」ザリッ!
??「ふん、誰だとは随分なご挨拶だな」
眼帯「あーぁ…」
友「…やっぱり出てくんのかよ」ハァ…
魔女「あの方は…?」
男「我々の…クソ親父代わりです」
126: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:44:58.96 ID:Cgjeuv9AO
白小隊長「魔女様の拉致、施設の破壊……許し難い反逆ぞ」
男「小隊長…」
友「すまん…打ち明けはしたものの、説得しきれなかった」
眼帯「行動を起こそうとした時には、もう部屋にいなかったんだよね…」
白小隊長「貴様らの馬鹿げた話になぞのると思ったか。これ以上の暴挙は断じて許さん、全員剣を捨て地に膝をつけ」チャキッ…
魔女「男様…」ササッ
友「魔女様、隊の後方へ」
眼帯「みんな、魔女様を囲むように! 魔法に長けた者は一定の距離を保って!」
白小隊長「……聞こえんのか、すぐに剣を捨てろと──」
男「──小隊長、剣を捨てるのはそちらです」
友「そうですよ、これだけの隊士を相手に独りで勝てるとでも?」
白小隊長「勝つか負けるかは問題ではない、我が配下が反旗を翻すなら身をもって正すまで」
127: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/26(木) 21:45:51.58 ID:Cgjeuv9AO
男「この国は魔女様に嘘を教えてまで、その力を武力としていたのです」
白小隊長「我々もその武力、月に忠誠を誓う騎士だ。軍人の誇りも失ったか」スラッ……キンッ
男「我々は魔女の騎士、その誇りは失くしてなどいない」チャキッ
眼帯「やるしかないの…?」
友「…多勢とはいえ、小隊長相手に手を緩め互いに無傷とはいかないだろうな」
男「友、眼帯……俺が相手をする。手を出さないでくれ」
魔女「男様…!」
友「魔女様、男はこの小隊…いや我が軍の誰よりも優れた剣士です」
眼帯「魔法はてんで駄目だけどね」
白小隊長「男……このような形で貴様と対峙するとはな」
男「小隊長、退いて下さい」
白小隊長「それはならん…っ!」ザリッ
男「くそっ…! 分からず屋め!」ヒュッ──!
──キイイイィィン…!!
135: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:30:52.01 ID:i0rEvU0wO
シュンッ…ザザッ、キィンッ!
ギリギリギリ……!
男「小隊長! あんたを斬りたくはない!」シュルッ…ヒュンッ!
白小隊長「ならば我が剣の錆となれ! 反逆の首謀者に対し退く剣など持たん!」ブンッ!
カンッ、キンキンッ!
魔女「あの…押されているのでは…っ!?」
友「男は手を緩めています。くそ…あれで勝てる相手じゃ…」
…ガキィンッ!!
白小隊長「くっ…!」グラッ…
眼帯「やった、体勢を崩させた…! 男、今の内に小隊長の剣を払って!」
友「だめだ! 誘いに乗っちゃ…!」
男「おおぉっ!」ブンッ──
白小隊長「──凍てつけ、小童」チリチリッ!
魔女「凍結魔法…!」
友「男、離れろっ!」
136: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:31:34.39 ID:i0rEvU0wO
男「くそっ…!」ザザッ…!
白小隊長「そら……今度は貴様の懐が空いたぞっ!」ブンッ──!
──キイイィィィンッ!!
男「ぐっ…」
友「危ない…なんとか止めたが…」
眼帯「だめだよ、本気でいかなきゃ勝てない…」ギリッ
魔女「男様…」
白小隊長「口ほどもない、魔法なぞ無くとも負けぬのではなかったか?」グググ…ッ
男「くそっ…たれ…!」グラッ…
白小隊長「知る顔だからと斬る事もできない程度の覚悟で反逆とはな…呆れさせてくれる」ニヤリ
男「小隊長…お願いです…っ」ザッ…ザリッ…
137: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:32:09.59 ID:i0rEvU0wO
男「退いてくれっ! 小隊長……親父殿っ!」ググッ…!
白小隊長「出来の悪い息子を正すは親の務めだっ」シュルッ…
男(離れた……いや、来るっ!)チャキッ
白小隊長「どうしても信ずる道をゆくなら…!」スチャッ…ググッ
男「よせっ!」
白小隊長「ワシを斬ってゆけ!!」バッ…!
男「くそおおぉぉっ──!!」
──ドンッ!
…ポタッ…ボタボタ……ブシュッ
白小隊長「……ふん、甘いな」
男「小…隊長…」
白小隊長「なぜ…殺さんかっ…た……」グラッ……ドサァッ
138: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:33:02.45 ID:i0rEvU0wO
魔女「ぅ…わ……脚が…」ガタガタ
友「魔女様、あまり見ませんよう」
眼帯「片脚を飛ばし戦闘不能にする……そうしかなかった」グッ…
白小隊長「……今からでもいい、殺せ」
男「断る」
白小隊長「部下が反乱を起こし、それを止められず敗れた上官など極刑に決まっておろう」ハァ…ハァ…
男「……俺たちはこれから尾根の通信塔を沈黙させ、東の海沿いへ向かいます」
白小隊長「なにを言う…嘘の情報で撹乱しようなど」
男「いいえ、必ず言った通りに動きます。どうかその情報をもって赦しを乞いて下さい」
139: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:34:03.13 ID:i0rEvU0wO
白小隊長「……ワシを生かすために自らの主を危険に晒す気か、どこまで甘いのだ」
男「俺は、貴方に生きていて欲しい」
白小隊長「………」ハァ…ハァ…
男「孤児だった俺たちの糞親父になってくれて嬉しかった。…俺は──」
友「──みんなだよ」
眼帯「みんな、貴方が好きだった」グスッ
白小隊長「…ふん」
男「おさらばです…親父殿」ペコリ
白小隊長「……馬鹿息子、阿呆娘共が──」
140: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:34:44.20 ID:i0rEvU0wO
………

『──新入り共、名は』
『男であります!』
『友であります!』
『眼帯です!』
『我が隊に配属されたという事は、貴様ら全員孤児であったのだろう』
『はっ…』
『この白色小隊、ワシを含め総員が天涯孤独の身よ。恐らくは戦になれば先陣を切る事となる』
『覚悟の上であります!』
『誰が先に逝こうと、恨み言は零すな。この隊の者は皆同列と思え』
141: ◆BlfAYzXRRw 2015/03/27(金) 12:35:40.55 ID:i0rEvU0wO
『同列…しかし我々はまだ入隊したばかり、そのような意識をもつわけには参りません』
『…兄弟は産まれ落ちた時から同列、違うか?』
『兄弟?』
『兄の為なら弟は死ぬべき、貴様らはそう思うのか』
『それは…そうは思いませんが』
『貴様らを合わせおよそ30名……大所帯な事よ』
『小隊長殿…』
『歓迎するぞ、末弟ども。どうだ…我が家を得た気分は──』
146: 以下、

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