雪歩「みなみの島のくりすます」 Part2back

雪歩「みなみの島のくりすます」 Part2


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5:
 
 
落ちてくる羽から守りながらご飯を終えると、いつものように三人で集まってお喋りの時間です。
「雪歩、今日も詩を書いてたの?」
「あ、ううん、今日は違うよ。プ――」
あれ? 何で私今、言うのをやめたんだろう?
「プロデューサーに、お手紙書いてたの。響ちゃんも全然連絡してないんだよね?」
「あ、うん、まあね。でも……」
「プロデューサーさんかあ……もう随分声も聞いてないなー。元気にしてるかな」
お仕事の邪魔になっちゃいけないから、プロデューサーの携帯には連絡しない。
これは、自分たちで決めたことです。
私たちも、しばらく仕事からは離れるっていうことで、お仕事用の携帯は置いてきてます。
でも…
「ちょっと、相談したいことがあって」
56:
 
「そっか」
「う、うん」
あれ? 思ったより、反応が薄いというか…。
怒られるか喜ばれるかするかな、と思ったのだけど
「………」
「………?」
「……あのさ雪歩、自分たちじゃダメなこと…」
「え?」
「悩みがあるなら、私たちも相談にのるよ?」
――そっか。
言われるまでそれを思いつかなかったのは自分でも驚きです。
「そう、だよね……聞いてもらってもいいかな、よかったら」
「「もちろん!」」
二人につられて、私も何だか笑ってしまいました。
57:
 
話し終えると、二人は難しそうな顔をして黙ってしまいました。
それでもいつものように、じきに沈黙を破ったのは響ちゃんです。
「慣れたからこそ、なんじゃないかな」
「慣れたからこそ?」
「慣れるまでは、やってくのに精一杯でけっこう気付かないんだよ。自分に何が足りないかとか、何が欲しいかとか」
響ちゃんの言葉にはなんだか重みがこもっていました。
「ほら、自分も一人暮らししたりしたからさ」
私なんかまだ一度も一人暮らしもしたことないのに、響ちゃんは二年前にはもうやっていた。
そういうのを考えても、やっぱり響ちゃんはすごいなって思います。
今ならともかく私が響ちゃんと同じ年の頃、絶対そんなことは出来なかったろうから。
59:
 
「自分も、一人暮らしを始めてしばらくしてからなんだか息苦しいような気がしてきて……平気だったときと比べて考えてみたんだ」
「うん」
「そしたら一人になってからだったから……家族がいないからかなって思って、それから、どんどん家族を増やすようにしたんだ」
響ちゃん、ちょっと恥ずかしそう。
そうだよね、自分が寂しい思いをした話なんて…
響ちゃんの気持ちに応えるために、私も考えなくちゃ。
60:
 
「何が足りないか……」
ぱっと思い浮かんだのは『自信』の二文字。
それが欲しくてアイドルを目指したようなものですし…。
でも、ここのところは失敗も減ってきてるのに自信が無くなってきてるっていうのは……違うかなぁ
家族……お父さん、お母さん、お弟子さんたち。
たしかに会えなくてさみしい気持ちもない訳じゃないけど、これもきっと違う。
私でも家から離れてやっていけるんだって、むしろ嬉しかったもの。
真ちゃんや、765プロのみんなに会えてないから……かな。
でも、何度か遊びに来てくれたし、全然会えてない訳じゃないよね。
このもやもやが、あの時のと同じなら――
61:
 
「しょうがないんじゃない?」
――え?
「春香? 何がしょうがないんだ?」
「分かんないのが。だって、去年と今じゃ違うことが多すぎるもん」
「それは……」
「ずっとトップアイドルを目指してやってきたのに、今はお仕事もしてない。頑張って色んなことが出来るようになっても、見てくれる人がいつも同じじゃ嬉しさも半分じゃない?」
「そう、かな」
あれ……なんだろう。この感じ、似てる。
どこか覚えのある嫌な感じの沈黙。
さえぎるみたいに、響ちゃんが笑顔になりました。
「でもさ、だったらもうちょっとだね!」
「もうちょっと?」
62:
 
「四月になればプロデューサーは帰ってくる、そしたら、しばらく一緒に暮らしながら準備して、活動再開!」
「「えっっ」」
言葉を失いました。
驚く私たちに気付かないくらい、響ちゃんは嬉しそう。
でも、そんなのって…!
「そこまで待つのは、このままうまくいかなかったらでしょ?」
「春香……そうだけど」
「まだ時間はあるし、もっと頑張って練習すれば」
「ひ、ひ、ひ、響ちゃん!」
「ゆ、雪歩?」
63:
 
「プロデューサーと一緒に暮らすってどういうこと!?」
「……あれ、言ってなかったっけ」
「聞いてないよぉ!」
「プロデューサーもユニットの仲間だし、みんなでホントの…家族みたいにやれたらなって」
「むっ、無理無理無理! 絶対ダメですっ!」
「な、何でだよーっ」
「お…男の人と一緒に暮らすなんて」
「にーにーとだって暮らしてるでしょ?」
「お兄さんは夜はおじいさんのところじゃない」
「よ、夜って、別に一緒に寝るとかそんなことは…」
「い、いいいいい一緒に寝!!?」
 
 
64:
 
「やがましーっ!」
「いつまでもゆんたくしてないで、ゆーふるんかい」
「「「はい……」」」
怒られちゃいました……・。

ゆんたく:おしゃべり
ゆーふるんかい:風呂にしなさい
65:
 
―――寝室
暗くて狭くてあったかい。布団の中って、落ち着きます……。
今日のおはなし、結局うやむやになっちゃった。もう少しで何か分かるような気がしたのに。
春香ちゃん、なんだかちょっと様子が変だったな…。
「見てくれる人、か」
……
………あれ?
何が足りないかとか、何が欲しいか――
 
 
66:
 
………。
いやいやいやいやいやいや、違うよ!
何考えてるの私っ
こんなの、こんなの……
…。
どうしよう
胸が……熱い
私、もしかして、プロデューサーのこと―――
 
67:
 
そんなハズないよ。
たしかにプロデューサーは、大事な人
ただひとり、そばにいて安心していられる男の人、だけど…
仮に、仮にだよ、百歩譲って私がプロデューサーのことをす、好きなんだとしたら、こんなに長い間気づかなくて、一緒にいられなくて平気なんておかしいよ。
……うん、そうだよ。
『逃げてたんでしょ。勝ち目がないから』
頭の中の意地悪な私がそっと囁いて
思い浮かんだのはあの眩しい笑顔。
68:
 
どつして気付いちゃったんだろう
多分、気付かないほうがよかった……ううん、
こんな気持ち、気付いちゃいけなかった。
響ちゃんは、きっと、プロデューサーのことが好き
それが分からないほど浅い仲じゃない
プロデューサーも、多分……。
今更実は私もなんて、ばからしすぎて、穴の中でだって言えるはずない。
 
69:
 
でも、もし二人がそういう関係なら、一年間も会えないなんて平気なものなのかな
私だったら、絶対心配だけど…
プロデューサーカッコいいし、あっちでいい人ができちゃったり――
やだ、な…。
ハリウッドとか、きっとすごく魅力的な人がいっぱい……
ううん、響ちゃんなら負けてないよ。
でもプロデューサー、ちょっと鈍感なとこあるから、もしかして響ちゃんの気持ちに気づいてなかったりしたら
70:
 
なかったりしたら
もし私が…………。
………約束破って、今から電話して――
私の馬鹿。
そんなことしたって、嫌われるだけ。
ちゃんと聞いて、響ちゃんもいるところで……あれ?
そんな話だったっけ。
71:
 
……。
会いたいな……
アメリカって、すごく遠い。
一年って、すごく長い。
遠距離恋愛って、雑誌や友達の話ではうまくいかないことが多いって
でも、戻ってきたら一緒に暮らすんだよね
一緒に、暮らす…
朝起きてきたらプロデューサーの声がして
すぐそばで一緒にご飯を食べて
お休みって、笑ってくれて
でもそれは―――
72:
 
「……………はぁ」
何度目か分からない溜め息
とおくにきこえる風の音にまぎれて、暗い部屋に消えていく
 
 
 
73:
 
閑話『夜海月』
雪歩「わぁ………」
春香「すごい………」
響「ね、言ったとおりでしょ?」
ザァ……
ザザァ……
イメージ画像:http://i.imgur.com/l3HLCAm.jpg
74:
 
雪歩「月の光が海に映って、光の中を泳いでるみたい」
春香「ここなら、夜の海でも寒くないしね」
響「さすがに夏以外はやらないけどね」
春香「波に揺られながら星を見てると、宇宙にいるみたいだね」
雪歩「うん……ぷかぷか、ゆらゆら、からだが楽……」
響「自分も、内地から来たにーにーに教えてもらったんだ。あ、にーにーって、兄貴のことじゃないぞ?」
春香「分かってるって」
雪歩「おにーさん、ってことだよね」
響「うん。泳ぐのは苦手でもこうして夜の海に浮かぶのは大好きだって」
75:
 
雪歩「私夜の海って、なんとなく、もっと怖いものだと思ってたよ」
春香「本当。こんなにキレイなら、また、夜に来たいね」
響「日焼けの心配もいらないし」
雪歩「人目も気にしなくていいし」
春香「……なんか、落とし穴がありそうだよね」
「「「………」」」
春香「……あんまり聞きたくないんだけどさ」
響「なに?」
雪歩「ぅぅ……」
77:
 
春香「…………あのさ、ウミヘビ、って、夜行性じゃなかったっけ」
響「うん。多分周りにもいっぱいいるよ」
春香「ええええっ」
雪歩「ひっ!?」
響「だいじょうぶ、こっちから攻撃しない限りかんだりしないぞ!」
春香「ムリだよ! は、早く上がろう?」
雪歩「あ、あわあわ、わわてちゃダメだよ春香ちゃん!」
響「平気なのに…」
78:
 
雪歩「あ、ところでさ、家に入るのにどうするの?」グッショ-
春香「そういえば着替え持って来てないし、さすがに夜じゃ乾かないよね」
響「………あ…」
雪歩「あー…余計な仕事増やして、怒られちゃうね…」
春香「どうせ誰もいないんだから、水着で良かったんじゃない…?」
雪歩「というか、海に入るってのも教えてくれなかったもんね」
響「………」
春香「……」ジー
雪歩「……」ジー
響「わ、罠だこれは罠だ」
79:
 
春香「大人しくみんなで怒られようかー」
雪歩「響ちゃん、一番髪長いし、待っててね。タオルとってくるから」
響「わ、わっさいびーん…」
雪歩「ぐぶりーさびたん」
閑話休題

わっさいびーん:ごめんなさい
ぐぶりーさびたん:どういたしまして
80:
 
今日の午前のレッスンはボロボロでした……
昨日はほとんど眠れなくて、レッスンの間もいろいろ考えてしまって……
「そういえば雪歩、プロデューサーさんにもう手紙は出したの?」
「あー、えっと、まだ」
「出しちゃえば?」
「う、うん……そうだね……」
違うの春香ちゃん、出す前に自己解決しちゃったというか…。
「ところで、プロデューサーの住所知ってるの?」
「え……あっ」
自分の馬鹿さに呆れてしまいます……そんなことも考えないでお手紙を出そうとしてたなんて…。
 
81:
 
「自分も知らない、ゴメンね」
「私も。社長に聞けば分かるんじゃない?」
「うぅん、いいの……やっぱり、私たちのことは、私たちで解決しなきゃだし」
「……まあ、ね」
やっぱり春香ちゃんも、なんだか考え込んでるみたい。
「まぁでも、してもいいんじゃない? もうずっと連絡してないし、どうしてるのか私も心配」
それも、そうなんだよね…。
病気やケガなんかしてないかな、一人で寂しくしてないかな、なんて
これは前から考えちゃってました…。
 
82:
 
「んー、元気そうだったよ」
……えっ?
「なに、響ちゃん、プロデューサーさんと連絡とってるの?」
「いや、自分からは連絡してないけど……誕生日のとき電話くれたんだ」
「…そうなんだ? なら私たちにも教えてくれれば良かったのに」
「ゴメン、言うの忘れてた……」
「へぇー」
あぁ、やっぱりそうなのかな
あの日はみんなでお祝いして、ほとんどずっと一緒にいたのに、そんな様子は全然なかった。
多分、夜遅くなってから内緒でお話して
きっと二人はそういう関係で
 
 
83:
 
私なんかって、今はもう言いたくない
でも、相手が悪すぎるよ
初めて会った時、自分の事を完璧って言えるなんてすごいなって思って
今では見方も変わったけど、やっぱり自分の事を完璧って言えるなんてすごいなって思う
プロデューサーさんと寄り添ってやっていくのを、きっと誰よりそばで見てた
二人が私たちを夢の舞台に連れていってくれた
二人の間に私の入る隙間なんて………。
………。
「ちょっと、お散歩してくるね」
「ん、分かった」
 
84:
 
 
一人になって考えたい、そう思ったのに
海の色
飛んでる蝶々の羽の色
どこへ行っても、響ちゃんが見ているみたいで……。
もう少ししたら、プロデューサーはここに来るのかな。
そしたら、きっとすぐに響ちゃんを見つける。
私のことは……。
ここにいるのは辛い。
でも、帰りたくはない。
あ…………
雨…………
 
85:

 
飛んでる蝶々:リュウキュウアサギマダラ
http://i.imgur.com/b3PLRJH.jpg
 
86:
 
戻っていく間も雨粒はだんだん増えていきました。
なんとかそんなに濡れずに帰れたけれど、しばらくやみそうにない雨模様に私達の表情も曇り空です。
「むー、ちゃんと降り始めちゃったね」
「雨は明日って予報だったのにね…」
「ね、公民館、お願いしようよ」
雨の日で、行事がないときは、お願いして公民館を貸してもらってレッスンしたりします。
でも、今日の響ちゃんはあまり乗り気じゃないみたい。
 
87:
 
「んー、この前新しいステップを安定して合わせられるようになったばっかだし、そこまでしても、いまはそんなやることがないぞ」
「……そうかな」
「そうそう。それよりさ、そろそろクリスマスツリー、出さない?」
「えっ? ここでもクリスマスのお祝いするの?」
「当たり前でしょ! 雪歩は沖縄をなんだと思ってるんだよーっ」
「あ、ご、ごめんね……」
初めて島のお年寄りと話してる響ちゃんを見たとき、外国の人みたいに見えちゃいました。
今でもちょっと、ここって日本じゃないみたいって思っているのは
内緒にしたほうが良さそう。
88:
 
「あのさ…………今日の雪歩、ちょっと、調子悪かったね」
「あ……うん、ごめんね春香ちゃん…響ちゃん」
返す言葉もありません…。またみんなに迷惑かけちゃった。
「やっぱり公民館借りて練習しよっか、私、もっとがんばらなきゃだよね…」
「なんくるないさー」
「プロデューサーが帰ってくるまで、よんなーよんなーやればいいさー」
ガタン!
私のドキ、をかき消したのは、イスが乱暴に押し出された音でした。
「春香……?」
「ねえ……いつまでこうしていたらいいの…?」
※よんなー:ゆっくり
89:
 
「は、春香ちゃん?」
「……私達、アイドルなんだよ!? ファンの人たちを放ってこんなに長く……」
春香ちゃんがこんなに声を荒げるなんて、どれくらいぶりだろう…
一言一言から、ひりひり、痛みが伝わってくるみたい
「どうして急に……今までがんばってきて、それでもまだ納得いってない、そうでしょ?」
「そうだけど…! 最近なんか、何をするんでもない時間ばっかり増えて……」
「む……」
「みんなが期待してるし、待ってる! もっとしっかり頑張らなきゃ!」
春香ちゃん……
こんなに真剣に悩んで
そんなとき、私は……
90:
 
「ああ、そっか」
ポツリと、漏れ出したような声は響ちゃんのものでした。
「…………多分ね、ううん、やっぱり、それなんだよ。自分達が、噛み合わなくなったのって」
目を見張る私たちに、響ちゃんは指折り数えていきます。
大きな目標を達成しちゃった。
プロデューサーはあっちでがんばってる。
私たちはIA優勝ユニット。
「頑張らなきゃ、しっかりやらなきゃ、ってどうしても思っちゃう。自分だってそうさー」
「じ、じゃあなんで……だって、悪いことじゃないでしょ?」
 
92:
 
「頑張る、しっかりやる……それ、実際、何をすればいいんだ?」
「え、えと……それは……」
「自分たち、自分たちなりに考えて、目標を決めてみたり、練習時間をすっごく増やしたり、色々やってみたよね」
「でも、こう頑張ればいいんだって、みんなでは思えなかった。だからみんな、気持ちだけが空回りしてバラバラになっちゃう…」
「ね、二人に見せたいものがあるんだ」
ちょっと見てて。そう言って響ちゃんが披露してくれたのは
家の中の狭いスペースをいっぱいに使った華麗なステップ
それは、響ちゃんがずっと前に見せてくれて、長い自主レッスンの末、やっとみんなで合わせられるようになったものでした。
「このステップ、IAのグランドファイナルの前に出来るようになった」
「ジュピターと戦うのが怖くて、自分、リーダーとして頑張らなきゃって、このステップを身に着けたんだ」
93:
 
「でもね、これをプロデューサーに見せたら……怒られた」
「成長はみんなでしなきゃ意味がない。焦っても仕方ない、自分達のやってきたことを信じるんだ、って」
自然と、懐かしい声が頭の中に響きました
「ね、春香、雪歩」
「なんくるないさーって、本当は、まくとぅーそーけーなんくるないさって言い回しをするんだ」
「これはね、人としてちゃんとやることをやってれば、なんとかなるよって意味」
「言い訳なんかじゃなくて、自分たち、目の前のことにいつだって全力を尽くしてきた」
「自分は、自分達にいま必要なことは、離れないで、仲間を大切にすること、家族を大切にすることだと思うんだ」
「そうすればきっと焦らなくても、すぐまた活躍できるようになるよ」
 
94:
 
そっか、響ちゃんは……
信じて――
ほんとうに、わたしはだめで
「だからさ、春香が本気でアイドル活動を再開したいなら――やろう」
え?
「っ」
「ここなら業界の人にも会わないし、よんなーよんなーやってけるかなって思ったんだけど……ゴメン、逆効果だったみたいだね」
 
95:
 
「……再開、したいよ」
「だって、大勢の人の拍手に応えて、ステージに登って歌って……それが私の夢だったんだもん」
「でも」
「みんなを待たせてるのは、みんなが待ってるのは、四人で一つだったあの日の私達だもんね」
そう言って春香ちゃんは小さく笑って
「ちょっと……ごめん」
駆け出した春香ちゃんを追いかけずにはいられなかったのは、優しさのせいじゃないと思います…。
 
96:
 
「春香ちゃん……」
「雪歩……」
春香ちゃんの目には、涙が浮かんでました。
「私、最低だ」
「響ちゃん、一生懸命私たちのこと考えてくれてたのに」
「私、信じるって言ったのに」
「ただ家族と暮らしたいだけじゃないか、自分が……」
「響ちゃんがプロデューサーさんのこと好きだから、待ちたいだけじゃないかって」
 
97:
 
ズキ
私に向けられてないはずの言葉が、深く刺さっちゃってます。
「春香ちゃん……最低なんかじゃないよ」
「雪歩…私、雪歩のことも、ダシにして」
「大丈夫。みんな、悪くないよ」
「ただ……友達でも家族でも、やっぱり言わなきゃ伝わらないこともあるってだけで。ね」
うまく、笑えたかな
ずうっと一緒にやってきて、どうして気付いてあげられなかったんだろう
春香ちゃんより一年、響ちゃんより二年、多く生きてきたはずの私は、何をしてきたんだろう
98:
 
私たちが戻ってくると、響ちゃんはそのまんまの姿勢で、出ていく前と同じようにそこにいて
誰に促されることもなく、私たちは自然と元の席に着いていました。
「あのね」
切り出したのは、春香ちゃん。
「律子さんが、特別、って、こっちの電話に連絡くれたんだ」
「去年一人でやったお仕事でね、来年もやりたいなって言ってたのがあるの」
「その仕事が今年もうちに来てて、ディレクターさん覚えてくれてて、是非私にって言ってくれてるんだって」
「…行ってきていい?」
……えっ!?
だって今、焦っちゃダメって
響ちゃんの話に納得したんじゃ
「そっか……うん、オッケー♪」
ええ……そんな、軽い感じでいいの?
99:
 
「ありがと! みんなにそろそろ会いたくてさ、ファンの人たちにも一言あいさつしたいし……あ、雪歩も来る?」
クエスチョンマークで埋まりそうな私に
春香ちゃんがくれた笑顔はそれは素敵なものでした
「終わったらまたすぐ戻って、こっちで年越しするね。ちょっと息抜きしてくる」
「ゆっくりしてきて大丈夫だぞ」
「っと、ごめん……雪歩の誕生日のお祝い、出られなくなっちゃうんだけど」
「あ、ううん、そんなのは全然……大丈夫だよ。気にしないで」
春香ちゃんは何かに気付いたみたいで、それからの自主レッスンで、春香ちゃんと響ちゃんの息はピッタリでした……。
100:
 
吐いても吐いても、心の奥からため息が湧き出てきます。
本当に最低なのは……私
春香ちゃんみたく待ってるファンのみんなのことも考えないで
響ちゃんがあんな風に考えてくれてることも知らないで
ただ自分のためだけに
くよくよして、うじうじして、失敗して
こんなはずじゃなかったのに
 
101:
 
プロデューサーに選ばれて踏み出して
いつの間にか
プロデューサーに見て欲しくて
プロデューサーに誉めて欲しくて
ここまで走ってきてた
私が足を止めそうになっていたのはどっちも
ただプロデューサーが今ここにいないから、だったんだ
でも、プロデューサーは
……ほ」
「雪歩!」
 
102:
 
「えっ、あっ、ゴメン響ちゃん。何?」
「や、別にたいした話じゃないけど……大丈夫? さっきから呼んでたのに、全然気付かないからビックリしたぞ」
「ごめんなさい……その、ボーッとしてて」
「何の話だっけ?」
「いや、次郎が島宿のヘルパーさんは目つきが悪いって言うから、雪歩見たことあるかなって」
「多分、ないよ」
「………」
「………」
「春香のこと? それとも、ユニットの」
「……うぅん。私の個人的なこと」
※次郎:響の従兄弟。公式キャラだけどアニマスにはいないので一応
103:
 
「…そんな顔してないでさ、悩みがあるんだったら相談して欲しいぞ。自分たち、家族でしょ?」
何度も助けてくれた響ちゃんの笑顔
なのに今は、私をじりじり焼いちゃう夏のおひさまみたいで、はやく隠れたくてしかたありません
「……家族にも言えないことも、あるよ」
「……そうだね。うん、自分もそう思う」
「けど、自分はいつだって、雪歩の味方だからな!」
一瞬浮かんだ意地悪な考えは、すぐに押し込めました。
私だって、こう言ってくれる響ちゃんの味方でいたいから。
104:
 
ああ、もうぜんぜんどうしたらいいか分からない
私、やっぱりだめだめだなぁ……
「ダメじゃない」

 
105:
 
「ダメじゃない……ああ違うな、ダメでいいじゃない」
そ、それって、全然意味が違ってくるような
「雪歩のダメは、まだ、がついてるダメだもん」
「自分の知ってる雪歩は、いつだって全力で、何度転んでも最後には立ち上がって壁を越えてきた」
「頼もしいけど、その分、一番てごわいライバルだと思ってるし…」
「自分、雪歩のそういうとこが大好きなんだ!」
「………ぽぇ…」
へ、変な声出ちゃいましたっ
まっすぐすぎだよぅ、響ちゃん……
10

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