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勇者「死神のご加護がありますように」


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1:
兵「おい、お前。王様がお呼だ。出ろ」
男「あん? 王が俺になんの用だ?」
兵「知るか。いいからさっさと出ろ」
男「おいおい、俺みたいなやつと王を会わせちまっていいのかよ?」
兵「貴様は黙ってついてくればいいのだ」
男「へいへい。まっ、なんにせよこんな小汚ねえところ出れるなら俺からすれば万々歳だからな」
兵「黙れというのが聞こえんのか!」
男「そうカリカリすんなよ。カルシウム足りてる? 肉ばっか食ってないで小魚も食えよ」
兵「いいから黙らんか!」
男「やれやれ、どうしてこうお堅いかね。わーったわーった。黙ってるからトイレ行かせてくれよ」」
兵「ならん! いいからキリキリ動け!」
男「だったらこの足枷外してくれよ。歩きづらくて敵わんわ」
兵「それはならん!」
男「難しい注文ばっかりしやがって」
元スレ
SS深夜VIP
勇者「死神のご加護がありますように」
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2:
兵「王様。連れて参りました」
王「うむ。ご苦労。下がって良いぞ」
兵「お、お言葉ですが王様。他には誰もいないとなるといささか危険では」
王「聞こえなかったのか。下がれと言ったのだ」
兵「は、はっ! 失礼いたします!」
男「おいおい、いいのかよ下げて。俺と二人きりは危険だぜ?」
王「何、大臣の手中に居るやつと二人きりのほうがよっぽど危険だ」
男「ははっ、違いない。寝首と尻穴には気をつけな」
王「うむ、忠告感謝する」
男「で、俺に一体何の用だ? まさか俺の尻穴の方が危険か?」
王「生憎そんな趣味はなくてな。すまんな」
男「おっと、それは残念だ」
3:
王「さて、本題に入る前に1つ聞きたいのだが、男よ。魔王が復活したことは知っておるか?」
男「おお、久しぶりに名前で呼んでもらえたぜ。涙が止まらないぜ」
王「うむ、名前は一生物だからな。大切にした方が良いぞ」
男「両親に感謝しなくちゃな。それで、魔王だっけか? あーしってる知ってる。兵士たちがビクビクしてたからな」
王「やれやれ、所詮作り物の兵士なぞそんなものか。自分で始末してやるくらいの度胸はないものか」
男「で、その魔王の件と俺を呼び出したのになんの因果関係があるんだ?」
王「何簡単な話だ。その魔王討伐を貴様に頼みたいのだ」
男「おいおい、何だ? じゃあ俺は今日から勇者様か?」
王「いかにも」
男「いいのかよ、そんな名誉な称号を俺に与えて? 批判の嵐だったんじゃねえのか?」
王「うむ。賛成者など一人も居らんかったからな」
男「そりゃそうだろうよ。流石俺もお前の頭を疑っちまったぜ」
王「何心配ない。病院に連れて行かれが脳波も異常がなかったからの」
男「そりゃ健康でなによりだ」
4:
王「で、結局どうなのだ。受けてくれるのか」
男「そりゃあんな豚箱にいるくらいなら受けるけどよ、一応俺を選んだ理由を聞かせてくれ」
王「うむ。まず初めにその手腕だ。うちの兵士100人集まっても貴様を倒せはしないだろう」
男「おいおい、大丈夫かよ国の兵隊さんよ」
王「それほどお主が強いということだ」
男「ははっ、ありがたき幸せ」
王「次に両者に対するメリットだ」
男「ほう・・・それはなんだ?」
王「そちら側とすれば牢屋からの釈放、無事戻ってくれば免罪としよう」
男「ふむ・・・だがそれだと俺が戻ってこない可能性がないか?」
王「もし帰ってこれれば一生遊んで暮らせるだけの報酬を支払おう」
男「ほぉ・・・。なるほどな。ま、旅の途中で俺が死ねば極悪人が死ぬわけだしあんたらが困ることはないということか」
王「その通りだ」
男「随分と死んだほうがメリットが多いな。まっ、そんな簡単なもんじゃないってことか」
王「そういうことだ」
5:
男「なるほどなるほど。ま、俺からしたらメリットしかないからいいんだけどよ」
王「ということは引き受けてくれるということでいいのだな」
男「だがわからんな。何故そこまでして俺に拘る? それこそ一人の俺より兵士1000人とかにした方がいいんじゃねえか?」
王「これは最後の理由だが、私はお前を個人的に好いておる」
男「やっぱりホモじゃねえか」
王「そういう意味ではないは馬鹿者」
男「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ」
王「小学生か貴様は。兎に角私はお前しかいないと思っておる」
男「あんなことしたやつによくそんなことが言えるな」
王「何かしら理由があったのであろう。お前がそんなことをするような男には私は思えん」
男「やれやれ、政治は出来ても人を見る目はなさそうだな。眼科をおすすめするぜ」
王「お主の鼻毛までしっかりと見えておるから安心せい」
男「仕方ねえだろ、あんな所にずっと入れられてたら手入れする暇もねえよ」
王「それもそうじゃな。それと嘘じゃ」
6:
王「では頼んだぞ。勇者よ。この世の平和の為に」
男「平和とは程遠い男だがな。あいよ、畏まりました王様。ありがたく承りますでございます」
王「下手くそな敬語じゃの。ほら、餞別じゃ。持っていけ」
男「おお、俺のブツじゃねえか。わざわざとっといてくれたのかよ」
王「それ以外もちゃんと見よ」
男「これは・・・勇者の紋章か。まさか俺がこんなのつけることになるとはな。よっと、どうだ、似合うか?」
王「間違いなく世界一似合わんな」
男「うるせえよ。てか、あれは? 金は?」
王「お前に渡しても賭博か煙草代に消えるだけじゃろ。自分で稼げ」
男「よくわかってらっしゃる。良き理解者だよ、あんたは」
王「よせ、照れるではないか」
男「真顔で何言ってんだか」
7:
王「では頼むぞ」
男「ちょっと待てよ。俺一人で行くのか?」
王「そりゃそうじゃろ。誰が好き好んでお主と一緒に行きたがるのだ」
男「確かに。ごもっともだ」
王「もし仲間が欲しいのなら自分で探すのだな」
男「おいおい、コミュ症の俺にどうしろっていうんだよ」
王「そんだけ喋れて何を言っておるのじゃ」
男「あれだ、内弁慶ってやつだ」
王「わかったわかった。はよいけ」
男「つれねえな、おい。人と喋ったの久々なんだからもう少し喋らせろよ」
王「その勢いで誰か見つけるが良い。ほれ、下がれ」
男「はいはい、わかったよ。じゃあな、王様よ。もう会うことはないかもしれんがな」
王「また会えることを願っておるぞ」
男「けっ、よく言うぜ」
8:
勇者「さて、久々に外に出たわけだが・・・」
ザワザワ...
勇者(ま、そりゃ歓迎されねえわな)
勇者(とりあえずさっさとこの街を出るか)
勇者(薬草も防具もないけど仕方ないか・・・)
勇者(ってまあ金ねえしどっちにしろ買えねえのか)
勇者(前途多難だな、全く)
勇者(こんなに歓迎されない旅立ちの日歴代あったのかねぇ)
勇者(まあねえだろうな)
勇者(しかし足枷外してもらっただけでこんなに動きやすかったんだな)
勇者(久々すぎて忘れてたわ)
勇者(・・・はあ、煙草吸いてえ)
11:
グサッ
グサッ
グサッ
勇者「ったく、なんでこの辺の魔物はこんな端金しか落とさねえんだよ」
グサッ
グサッ
グサッ
勇者「はぁ・・・。これじゃ煙草代稼ぐのも一苦労だな・・・」
グサッ
グサッ
グサッ
勇者「うっし、とりあえず今日はこんなもんでいいか」
勇者「宿代、メシ代、酒代、煙草代。こんだけあれば足りるだろ」
勇者「残った金で博打でもするか」
勇者「はあ・・・、早く仲間見つけないとしんどいな・・・」
勇者「独り言ばっか言って、アホみたいだな、俺」
勇者「やれやれ、豚箱が恋しいぜ」
12:
勇者「やっと着いたか。遠すぎだろ、まじで。もう夜じゃねえかよ」
勇者「やだやだ、あんな所に閉じ込められてたせいか体がなまっちまったかな」
勇者「さっさと本調子に戻さんとな」
勇者「さて、とりあえず必要なもんでも買うとするか」
___
__
_
勇者「おい、親父。いいの入ってるかい?」
薬屋「あん? 一体だれ・・・ってその紋章は勇者様!?」
勇者「おう、俺が勇者だ。もっと崇めろ」
薬屋「これはこれはとんだご無礼を! ・・・おや? どっかで見たことあるような・・・」
勇者「ほら、それは、あれだ。勇者だからだろ、うん。そんなことより何あんだよ!」
13:
薬屋「あ、これは大変失礼しました。こちらになります」
勇者「ふ〜ん・・・。おっ」
薬屋「何かお気に召されたものがありましたか?」
勇者「ピ○ス、カートンで。あ、あとライター」
薬屋「・・・え?」
勇者「いや、ほら、俺勇者じゃん? 平和願ってるじゃん? だから必要。はい、頂戴」
薬屋「あ、はい、こちらです・・・」
勇者「はいよ、サンキュ。じゃな」
薬屋「え、あの、薬草とかは・・・」
勇者「あー、この辺りじゃいらんわ。じゃな」
薬屋「・・・ありがとうございました」
15:
チッ
ジュッ
勇者「・・・ふー。いやあ、生き返るな。やっぱ煙草はいいなあ。この頭がクラクラする感覚・・・、たまらないね・・・」
勇者「さて、とりあえず宿屋にでも行くか・・・。あぁ、美味かった。ごちそうさん」ポイッ
??「こーらー!!」
勇者「あん?」
魔法使い「そこのあなた! ポイ捨てはいけません!」
勇者「おー今時こんな偉い子がいるのか、感心感心」
魔法使い「え? えへへー、そうですか? 私偉い子ですか?」
勇者「ああ、かなりな、尊敬したわ。まじすげー。マッドリスペクトだわ」
魔法使い「そ、そんな〜、照れちゃいますよ」エヘヘ
勇者「おう、その心を忘れるなよ。じゃあな」
魔法使い「はーい、お気を付けて」
魔法使い「・・・・・・・・・」
魔法使い「って、ちっがああああああああう!!」
勇者「おぉ、ナイスノリツッコミ」パチパチ
16:
魔法使い「いい大人があんなことして恥ずかしくないんですか!!」
勇者「ああ、全然、これっぽっちも」
魔法使い「何でですか!! 罪悪感は芽生えないんですか!?」
勇者「うん」
魔法使い「これが大人だというのですか!! ゆとりゆとりという前に貴方がたがしっかりするべきなんじゃないんですか!?」
勇者「いいんだよ、大人は。口で偉そうなことだけ言ってりゃよ」
魔法使い「そんなの絶対におかしいです!! 恥を知ってください!!」
勇者「恥・・・恥・・・覚えました。おっけー、理解したわ。教えてくれてサンキューな」
魔法使い「え? あ、いえ、どういたしまして」
勇者「本当にありがとうな! じゃあな!」
魔法使い「あ、はーい、お気を付けて」
魔法使い「・・・・・・・・・」
魔法使い「って、ちっがああああああああう!!」
勇者「お前馬鹿だろ」
17:
魔法使い「ホントいい加減に・・・って、え、あなた勇者様なんですか!?」
勇者「おう、そうだぞ。この紋章が目に入らぬか」
魔法使い「だったらなおさらですよ!! なんでポイ捨てなんかするんですか!!」
勇者「いいか、ガキ。これには海より谷よりも俺の懐よりも深ーい理由があるんだよ」
魔法使い「急に浅くなりましたね」
勇者「うるせえ黙って聞け。いいか、世の中には掃除屋っていう職業があるだろ? ところが街が綺麗だったらどうする?」
魔法使い「掃除しなくて良くなりますね」
勇者「そう、その通りだ」
魔法使い「だったらいい事ばっかりじゃないですか」
勇者「アホ。いいか、ちゃんと考えてみろ。ということはだ、もともと掃除屋だった人はどうなる?」
魔法使い「それは・・・あっ」
勇者「そう、職を失うよな? ということは失業者が溢れるだろ? そしたら世の中はどうなる?」
魔法使い「ほ、滅びる・・・!!」
勇者「随分飛躍したな、おい」
18:
勇者「あーまあ、つまりそういうことだ。見えてるもん、聞いたもんが全てじゃねえんだよ。こうやって俺は世界の平和を守っているというわけだ」
魔法使い「なるほど・・・。確かに・・・。流石勇者様・・・。民の事をしっかり考えて・・・!」
勇者「そうだろそうだろ。俺の行動が理解して貰えて嬉しいよ」
魔法使い「疑ってしまってすいませんでした」
勇者「ま、全部嘘っぱちだけどな」
魔法使い「うがあああああああああ!!」
勇者「なんちゅう声出してるんだよ」
魔法使い「もー怒りましたよ!! これはお仕置きを受けてもらうしかありません!!」
勇者「お前が何をできるんだよ」
魔法使い「私は魔法使いです!! 魔法が使えるんです!!」
勇者「おぉ、それはすごいなー」
魔法使い「そうです!! だから覚悟してください!!」ビシッ
勇者「・・・・・・武器を向けたな」
魔法使い「・・・・・・え?」
19:
勇者「・・・死ぬ覚悟は出来てるんだろうな」
魔法使い「え?」
勇者「死ぬ覚悟は出来てんのかって聞いてんだよ」ギラッ
魔法使い「ひ、ひいっ」ガクガク
勇者「人に武器を向けてるってことはよ、殺す覚悟と死ぬ覚悟があるかって聞いてんだよ!」
魔法使い「ご、ごめんなさい!!」ガクガク
勇者「・・・ったく。そう簡単に武器を人に向けるんじゃねえよ」
魔法使い「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」ガクガク
勇者「あー、良い良い。俺もビビらせすぎた。悪かったな」
魔法使い「えっぐ・・・、えっぐ・・・」
勇者「卵卵うるせえよ。はぁ。まあ簡単に人に武器向けるなってこった」ヒョイ
魔法使い「あっ」グスッ
勇者「まっ、自分の思ったことをしっかり言えるのはいいことだ。そういうのは嫌いじゃねえよ。じゃあな、クソガキ」
魔法使い「・・・・・・こ、怖かったぁ」
魔法使い(・・・ていうか私なんであんなに怒られたんだろう)グスン
20:
勇者「おっちゃん、空いてるかい?」
宿屋「・・・おや? まさか勇者様ですか」
勇者「おう、そうだ。んで、空いてるのか?」
宿屋「ええ、空いてますよ。どうぞお好きな所へ」
勇者「あいよー。あとこの辺に酒売ってるところはないのか?」
宿屋「そうですね、大体皆さん酒屋に行かれるのでちょっとわからないですね・・・」
勇者「あー、そうか。わかった、ありがとな」
宿屋「すいません、お力になれずに」
勇者「いやいや、なんもなんも。で、その酒屋はどこにあるんだ?」
宿屋「そこの広場をずっと南に向かったところにありますよ」
勇者「あー、またあの広場通るのか」
宿屋「なにかあったのですか?」
勇者「まあ色々な。よし、んじゃちょっと行ってくるわ」
宿屋「はい、お気を付けて。最近この辺りも治安が悪いので」
勇者「ふーん。ご忠告感謝するわ」
22:
魔法使い「・・・・・・はぁ」
魔法使い(どうしてこう全て上手くいかないんでしょうね・・・)
魔法使い(私のしたことは間違ってるのでしょうか・・・)
魔法使い(見てみないふりして、賢く生きたほうがいいのでしょうか・・・)
勇者「おっ、なんだクソガキ。まだ居たのか」
魔法使い「えっ?」
勇者「おう、1時間ぶり」
魔法使い「こっ、こっ、これは勇者様、ご機嫌麗しゅう」
勇者「ビビリすぎだっつの。悪かったって言ってんじゃん」
魔法使い「悪かったで済めば警察なんてっ・・・いえ、なんでもないです」
勇者「はぁ・・・もう怒んねえって。だから普通にしろ」
魔法使い「・・・ホントに怒んないですか?」
勇者「俺が嘘つくような男に見えるか?」
魔法使い「見えます」
勇者「素直でよろしい」
23:
魔法使い「それで勇者様はどうしたんですか? まさか私に会いに来たんですか?」
勇者「自惚れるなタコ。これから酒場に行くところだ」
魔法使い「・・・ホントにあなた勇者様ですか? やってることがゴロツキと変わりませんよ」
勇者「まあだろうな。どうだ? お前も行くか?」
魔法使い「私が飲めるような歳に見えますか?」
勇者「見えんな」
魔法使い「そういうことです」
勇者「まあいいからついてこいよ。ガキらしくジュースでも飲んでろ。奢ってやるから」
魔法使い「え、いいんですか?」
勇者「さっきのお詫びだ」
魔法使い「やったー!! さすが勇者様です!! やっぱりいい人だったんですね!!」
勇者(チョロ)
24:
カランカラーン
勇者「よう、マスター。やってるかい?」
マスター「ん? おっと、あんた勇者かい。あぁ、やってるよ。好きなとこ座んな」
勇者「あいよ。ほら、ガキも座んな」
魔法使い「むぅ。さっきからガキガキって。私は魔法使いっていう立派な名前があるんです!!」
勇者「ああ、悪かったな。ガキの使い」
魔法使い「なんか違います!!」
勇者「いいからさっさと座れよ。マスター、とりあえずビールとミルクで」
マスター「おうよ」
魔法使い「随分慣れてますね。本当に勇者様のイメージとはかけ離れてますね」
勇者「お前は勇者に幻想を抱きすぎなんだよ。勇者だって一人の人間なんだ。好きにさせてやれよ」
魔法使い「まあその通りですけど・・・。それでもあなたは酷すぎですよ。人格を疑うレベルです」
勇者「うるせえよ。そういうお前だって魔法使いの割に馬鹿じゃねえか」
魔法使い「私のどこが馬鹿なんですか!! むきー!!」
勇者「そういう所だ、馬鹿」
25:
マスター「あいよ、ビールとミルクお待ち」
勇者「おっ、来た来た」
魔法使い「あ、ありがとうございます」
勇者「じゃ、とりあえず乾杯といこうか」
魔法使い「はあ、まあいいですけど」
勇者「じゃっ、かんぱーい」チンッ
魔法使い「かんぱーい」チンッ
勇者「ゴクッ・・・ゴクッ・・・ぷはーっ、旨えな」
魔法使い「オヤジ臭いですよ」
勇者「馬鹿、これが正しい飲み方なんだよ。お前もチビチビ飲んでないでグビッといけよ」
魔法使い「そんな勢いで飲んだらお腹痛くしちゃいますよ」
勇者「本当に子供だな、お前は」
魔法使い「うるさいですよ。子供は子供らしくしてればいいんですよ」チビチビ
勇者「ちげーねえ」
26:
魔法使い「ところで勇者様はお一人で旅をしてるんですか?」
勇者「逆に問うが俺についてきたいと思う奴がいると思うか?」
魔法使い「・・・すいません」
勇者「謝んな、アホ。俺が惨めじゃねえか」
魔法使い「それにしたってあまりにも軽装すぎません? 防具何もつけてないじゃないですか」
勇者「煙草代と宿代と飲み代で買う金なくなった」
魔法使い「何やってるんですか・・・。私に奢ってる場合じゃないですよ・・・」
勇者「いいんだよ、俺は。防具なんかなくたってどうにかなる」
魔法使い「冒険を舐めすぎじゃないですか? ていうか武器はどうしたんですか? 見当たりませんけど」
勇者「いいか、ガキ使」
魔法使い「略さないでください」
勇者「逆においそれと武器をひけらかしてる奴はアホだ。相手に自分の情報を与えてどうすんだよ」
魔法使い「あぁ・・・なるほど。それは一理ありますね」
勇者「というのは建前で」
魔法使い「本当になんなんですか、あなたは」
27:
勇者「まあいいじゃねえか、俺のことは」
魔法使い「何でもいいですけどね、もう」
勇者「幻滅したか?」
魔法使い「はい、かなり」
勇者「だろうな。世の中はそんなに綺麗じゃねえってこった。善人ばかりじゃねえんだよ、この世界はな」
魔法使い「・・・でも勇者様悲しそうな顔してます」
勇者「あん? 俺がか?」
魔法使い「はい。うまく言えませんが・・・無理矢理笑ってるように見えます」
勇者「あぁ、それはお前との話が面白くねえからだな」
魔法使い「な、なんですか!! 人が心配してあげてるのに!!」
勇者「大きなお世話だアホ。ガキはガキらしく素直に生きてろ」
魔法使い「もう!! 心配して損しました!! ふんっ」
勇者「そうそう、それでいいんだよ。馬鹿が難しいこと考えてるんじゃねえよ」
魔法使い「べーっだ!!」
30:
勇者「怒りっぽいやつだな。カルシウム不足じゃねえか? いいんだぞ、どんどんミルク頼んで」シュボッ
魔法使い「勇者様のせいですよ!! 普段はこんなに怒りませんよ!! ていうか煙草臭いです」
勇者「そんくらい我慢しろ。奢ってやってるんだから」
魔法使い「まあそこは本当に感謝してますけど・・・体に悪いですよ?」
勇者「いいんだよ、俺の体だから。どうなったって俺の責任だろうが」
魔法使い「まあそうですけど・・・」
勇者「マスター、ビール追加」
マスター「あいよー」
魔法使い「・・・もう」
「おい、テメーふざけんじゃねえよ!!」
勇者「お、なんか始まったぞ」
魔法使い「え?」
31:
男1「あン? んだコラ!! 元はといえばテメーが悪いんだろうがよ!!」
男2「うるせえ!! お前のせいで妻には逃げられ、莫大な借金も抱えるハメになったんだ!!」
男1「んなもん知るかよ!! そんなのこの国の王でも言えよ!! 俺は何もしてねえだろうが!!」
男2「よく言うぜ!! お前がチクったんだろうが!! 俺んちに米があることをよ!!」
男1「そんなの隠してるお前が悪いだろうが!! 俺は正しいことしてんだ!! 文句あるか!!」
男2「うるせえ!! 今日こそぶっ殺す!!」
男1「上等だ!! 来いよ!!」
魔法使い「あわわわ、ゆ、勇者様大変ですよ!!」
勇者「いいぞーやれーやれー」
魔法使い「何やってるんですか!!」
マスター「はあ・・・。またか」
勇者「あん? またってどういうこった?」
マスター「ああ、ここ最近ずっとこんな調子だよ。何かあれば喧嘩喧嘩で・・・」
勇者「そういや宿屋のオヤジもなんか言ってたな」
魔法使い「何冷静に語ってるんですか!! 止めなくていいんですか!?」
32:
勇者「つったて部外者の俺が何言ったって無駄だろ。余計なことに首突っ込んで首飛ばしたくねえもん。触らぬ神になんとやらってな」
魔法使い「・・・もう!! 見損ないました!!」
勇者「まだ下がる余地があったなんて驚きだ」
魔法使い「黙ってください!! 私が止めてきます!!」ダッ
勇者「あ、おい!!」
マスター「正義感が強すぎるのも困ったもんだな」
勇者「はあ・・・。あのバカが」
マスター「いいのか、助けに行かなくて?」
勇者「元はと言えば赤の他人だ。俺に助ける義理はねえ」
マスター「冷たい男だな」
勇者「だがまあ・・・さっきまで飲んだ四杯をただにしてくれるっつうならあの喧嘩を止めてきてやってもいいぜ?」
マスター「・・・ったく、あんたも素直じゃないね。ああ、そうしてやる。だからさっさと止めてきてくれ」
勇者「よっしゃ!! 約束忘れるんじゃねえぞ!!」
マスター「はいはい、男に二言はねえよ」
33:
魔法使い「やめてください!! 他のお客様に迷惑です!!」
男2「あ〜ん? なんだクソガキ!! 関係ないやつは引っ込んでろ!!」
魔法使い「あなたのせいで迷惑してるんです!! 今すぐやめてください!!」
男2「うるせえ!! ぶっ殺すぞガキが!!」シャキン
魔法使い「ひっ!!」
男2「一人殺すのも二人殺すのも変わらねえ・・・。テメエからぶっ殺してやる!!」
魔法使い「あ、あ」
魔法使い(あ、死んだ)
魔法使い(やっぱり力のない私なんかがでしゃばるんじゃなかったな・・・)
魔法使い(勇者様の言ったとおりだったのかな)
魔法使い(余計なことに首突っ込むべきじゃなかったのかな・・・)
魔法使い(お父さん、お母さんごめんなさい)
魔法使い(今私もそっちへ向かいます)
34:
キンッ!!
男2「・・・あン?」
魔法使い「・・・あれ、生きてる?」
勇者「だから言ったろ、余計な事すんなって」
魔法使い「勇者様!!」
男2「テメエ・・・なんのマネだ」
勇者「いや、お前ら止めたら今まで飲んだ分タダになるって言うから止めただけだよ」
魔法使い「勇者様・・・・・・」
勇者「助かったんだから喜べよ」
魔法使い「余計な一言が多いんですよ!!」
男2「ふざけやがって・・・お前もぶっ殺・・・って、お、お前まさか・・・」
勇者「どうも勇者でーす」
男2「嘘つくんじゃねえ!! お前、あの極悪人、男だろ!!」
男1「なっ!!」
魔法使い「・・・・・・・・・・・・え?」
35:
勇者「おう、なんだ俺のこと知ってんのか。俺も有名になったもんだな」
男1「な、なんでお前・・・捕まったんじゃねえのかよ・・・」
勇者「あ? あんなザル警備ちょちょいと突破してきたわ」
男2「死神が・・・死神が復活した・・・」
勇者「だから勇者だっての」
魔法使い「え、え、何なんですか?」
男1「お前知らねえのかよ!! こいつは男!! 一人で味方の小隊100人を殺害、400人を病院送りにした死神だぞ!!」
魔法使い「・・・え?」
勇者「あら、お詳しい。サインでもやろうか?」
男2「ふ、ふざけんな!! なんでそんなお前が勇者の紋章をつけてんだよ!!」
勇者「あ〜、パクってきた」
男2「・・・は?」
勇者「だからー、脱獄して見張りぶち殺してきて兵ぶちころして王様ぶち殺して勇者ぶち殺して奪ってきた」
男2「なっ、なっ・・・」
男1「ば、化物・・・」
36:
勇者「いやあ、お前すげえよ。そんな俺に武器向けたんだからよ」
男2「あ、いや、それは・・・」
勇者「・・・死ぬ覚悟は出来てるんだろうな」
男2「ひいっ!!」
勇者「死ぬ覚悟は出来てんのかって聞いてんだよ!!」ギラッ
男2「ひ、ひいっ」ガクガク
勇者「人に武器を向けてたってことはよ、殺す覚悟と死ぬ覚悟があるかって聞いてんだよ!!」
男2「す、すいませんでした!!」ガクガク
勇者「だったらさっさとここから失せろ!! テメーらもだ!! ここに居るやつ片っ端からぶっ殺すぞ!!」
男2「は、はい!!」ダッ
「うわあああああ殺される!!」「逃げろおおおお!!」「まだ死にたくねええええ!!」
ガラーン
勇者「・・・ったく。騒がしいやつらだ」
魔法使い「・・・あっ、あっ」
勇者「こいつはこいつでまたビビってるし」
37:
魔法使い「・・・あなた、そんな人だったんですか」
勇者「ああ、そうだよ。何となくわかるだろ?」
魔法使い「・・・最低です。そんな人だとは思いませんでした。本当に見損ないました」
勇者「そりゃお前の主観だろ? お前の主観だけで勝手に見損なわれたくねえよ」
魔法使い「バカっ!! この死神!!」ダッ
カランカラーン
勇者「やれやれ。何なんだよ、一体」
マスター「まさかお前さんがあの男だったとはな・・・」
勇者「なんだ、あんたも知ってたのか」
マスター「そりゃ今の世界でお前さんを知らないやつの方が少ないだろうさ」
勇者「ああ、そうかい。ったく、住みにくい世の中だぜ。悪いな、邪魔したな」
マスター「なんだ、もう帰るのか?」
勇者「俺が居たらもう客入らねえだろ? 迷惑かけたな」
マスター「おいおい、お前さんが居なくなったら俺一人になっちまうだろ。寂しい思いさせるんじゃねえよ」
勇者「・・・あんたは俺が怖くねえのかよ?」
38:
マスター「何言ってやがる。お前がどこの誰だろうと俺にとっちゃお客様だ。神様だ。それが死神だったとしてもな」
勇者「・・・ははっ。あんた変わってんな」
マスター「よく言われるよ。でもあんたにゃ言われたくねえよ。脱獄したって話し、嘘だろ?」
勇者「俺は嘘なんかつかねえよ」
マスター「嘘こけ。その紋章は王に認められなきゃつけれないだろうが」
勇者「あら、お詳しいことで」
マスター「何年生きてると思ってんだ。お前の様なひよっ子とは違うんだよ」
勇者「ぴよぴよ」
マスター「ひよこじゃねえよ、アホ」
勇者「とりあえずビール一丁」
マスター「誤魔化しやがって。まあいいけどよ。でもいいのか、そんなに頼んで?」
勇者「は? まだ三杯目だぞ? それにさっきまでのはただになったんだろ?」
マスター「ああ。それはな。だがさっき居なくなったやつらは誰も金払ってねえ。その分は誰が払うと思ってるんだ?」
勇者「・・・流石だな、おっさんよ」
マスター「何年生きてると思ってるんだ」
39:
勇者「はぁ・・・。余計なことしたぜ・・・。ったく」
マスター「だがまあ、ちょっと依頼を聞いてくれりゃこれから飲む分もただにしてやってもいいぞ」
勇者「何? それは本当か?」
マスター「ああ。男に二言はねえ」
勇者「まあ聞くだけ聞いてやる。言ってみ」
マスター「お前さんさっきのやつらの話し聞いてたか?」
勇者「なんとなくはな」
マスター「だったらなんとなくはわかると思うが今この国は王の独裁政治だ。そのせいで俺らの生活が苦しめられてる」
勇者「ふーん。さっきの奴らは米がどうたらこうたら言ってたが何されてんだ? 自分で取れたところの何%かを納めなくちゃならないのか?」
マスター「ああ。そんなところだ。商店は儲けの何%かだな」
勇者「ちなみに何%なんだ?」
マスター「40%だな」
勇者「おうおう、予想以上だな。そんなもん生活出来ねえだろ。よくここに飲みに来れたもんだな、他の奴らは」
マスター「皆ツケばっかだよ。困ったもんだ」
勇者「それはそれはご愁傷様」
40:
この勇者はだいたい何歳くらいかね?
42:
>>40
今は髭や髪等がボサボサで老けて見えてますが24,5くらいのつもりです!
41:
勇者「で、俺はどこまですればいいんだ? 税撤廃か? パーセンテージを下げりゃいいのか?」
マスター「そうだな、今までは10%だったからな。そこまで下げてくれたらお釣りが出るレベルだ」
勇者「なるほどな。うっし、わかった。ちょっくら行ってくるわ」ガタッ
マスター「おいおい、今から行くのか?」
勇者「善は急げ、思い立ったが吉日ってあるだろ? んなもんさっさと片付けた方がいいだろ」
マスター「全く、あんたの行動力には参ったよ」
勇者「おお、勇者様を崇めろ。そして俺が死んだらお参りにはこいよ」
マスター「死んだ時には蹴りをお見舞いしに行くよ」
勇者「今から死に行くのに酷い男だよ、あんたは」
マスター「死神が何言ってんだ。ま、精々気をつけな」
勇者「あいよ。帰ったら美味い酒用意しとけよ」
マスター「ミルクも必要か?」
勇者「ああ、腹壊すぐらいたっぷりな」
43:
魔法使い(勇者様があんな人だとは思いませんでした)
魔法使い(顔は怖いし言葉遣いは悪いし態度は悪いけれどあそこまで極悪人だとは思いませんでした)
魔法使い(・・・・・・でも未だに本当に悪い人だとは思えないです)
魔法使い(はっ、何思ってるんですか私は)ブンブン
魔法使い(他の人も言ってたじゃないですか。彼は死神だって)
魔法使い(・・・でも)
勇者『見えてるもん、聞いたもんが全てじゃねえんだよ』
魔法使い(・・・私にはよくわかりません。その場に居た訳じゃないですし)
魔法使い(お父さん、お母さん。私はどうすればいいんでしょうか・・・)
勇者『ガキはガキらしく素直に生きてろ。馬鹿が難しいこと考えてるんじゃねえよ』
魔法使い(・・・そうですよね。考えてもわからないなら私の心に素直になるべきですよね)
魔法使い(うん、直接話してみましょう。一人で悩むよりましです)
魔法使い(まだ酒屋にいるんでしょうか・・・。とりあえず行ってみますか)
45:
カランカラーン
魔法使い「あ、あの〜」
マスター「ん? あぁ、さっきの嬢ちゃんか」
魔法使い「は、はい。さきほどは勝手に帰ってしまって申し訳ありません」ペコッ
マスター「ああ、いいいい。別に気にしちゃいねえよ。んで、どうしたんだ?」
魔法使い「あ、勇者様ってまだ居ますか?」
マスター「あー、あいつか。あいつなら今頃城に向かってるんじゃねえか? この国の税のこと話したら今から行ってくるってよ」
魔法使い「えっ」
マスター「本当に奴の行動力はすげえな」
魔法使い(なんだ。なんだかんだ言ってやっぱりいい人じゃないですか)
魔法使い「ありがとうございます!! 私も今から行ってきます!!」ダッ
マスター「あ、おい!!」
カランカラーン
マスター(・・・まあ酒代ただの話は言わなくていいか)
マスター(まっ、俺は酒とミルクの準備でもしとくか)
46:
勇者「はー。でけえ城だな、おい。うちの国の倍はあるんじゃねえか?」
勇者「さて、どっから入るかな。正面から堂々と入るわけにもいか・・・」ピクッ
勇者「誰だ!!」チャキッ
魔法使い「ひ、ひいっ!!」ビクッ
魔法使い(え、え、なんで気づいたんですか!?)
勇者「・・・・・・なんだよ、お前かよ。良い子はもう寝る時間だぞ。さっさと寝ろ。だから身長伸びねえんだぞ」
魔法使い「お、大きなお世話です!!」
勇者「アホ、うるせえよ。大きな声出すんじゃねえよ」
魔法使い「あ、すいません」オクチチャック
勇者「・・・んで、なんでお前がここにいるんだよ? まさかここに住んでるとかいうわけじゃねえだろ?」
魔法使い「そ、それは酒屋のマスターに勇者様がここに居るって聞いて・・・」
勇者「はぁ・・・。あのなぁ、なんであんな飛び出してまで出ていったお前がわざわざ俺に会いに来るんだよ」
魔法使い「そ、それは・・・」
勇者「あぁ、まあいいや。それよりお前。折角俺に会いに来てくれたのは嬉しいが帰れ」
魔法使い「え?」
47:
勇者「え、じゃねえよ馬鹿。俺はこれから危険なことをするの。また大罪を犯しに行くの。わかる?」
魔法使い「で、でもそれは私たちの為に・・・」
勇者「いいから聞け。俺はこの先人を殺す。間違いなくな」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「そこにお前が居たら相手はどう思う? お前が人を殺そうが殺すまいお前も罪人だ」
勇者「こっから先は遊びじゃねえんだ。ガキが出る幕じゃねえ。とっとと帰んな」
魔法使い「・・・嫌です」
勇者「あ?」
魔法使い「ガキはガキらしく素直に生きるんです!! 自分のやりたいことをするんです!! 駄々をこねるんです!!」
魔法使い「馬鹿だから難しいことなんてわかりません!! あなたが悪い人か良い人かもわかりません!! だから!!」
魔法使い「あなたの戦ってる姿が見たいんです!! この目で見て何が真実かを確かめたいんです!! だからついていきます!!」
勇者「・・・・・・」
魔法使い(うう・・・。お、怒らせてしまったでしょうか・・・)
勇者「・・・・・・おい」
魔法使い「は、はいっ!!」
48:
勇者「お前には殺す覚悟と死ぬ覚悟があるのか」
魔法使い「・・・・・・」
魔法使い(私は勇者様からなんの感情も読み取ることが出来ませんでした)
魔法使い(どんな思いでその言葉を言っているのかもわかりませんでした)
魔法使い(普通に考えればついさっき会ったばかりの人に着いていく私がおかしいのでしょう)
魔法使い(話を聞く限り極悪人、やっていることもまともな人間だとは到底思えません)
魔法使い(そんな人と一緒に死ぬ可能性もあるというのに着いていくという私はおかしいのでしょう)
魔法使い(・・・ですが私にはそれが間違った選択には思えませんでした)
魔法使い(むしろそれが最善の選択にしか思えなかったのです)
魔法使い(だから私は臆することなくはっきり答えます)
魔法使い「はい!!」ガクガク
勇者「膝震えてんぞ」
53:
魔法使い「こ、これは武者震いってやつです」
勇者「はあ・・・。わかったわかった。そういうことにしといてやるよ」
魔法使い「ありがとうございます・・・」
勇者「でも本当にいいんだな。後悔すんじゃねえぞ」
魔法使い「ぐ、愚問です!!」
勇者「わかったよ。なんでそこまでして着いてくるかはわからんがな」
魔法使い「だからそれは」
勇者「ああ、いい、喋るな。んじゃさっさと行くぞ」
魔法使い「あぁ、心の準備が!!」
勇者「はぁ・・・。おい、ガキ使。ちょっと手を出せ」
魔法使い「ガキ使で固定なんですか。まあいいですけど」サッ
勇者「よしっ」ギュッ
魔法使い「え、え、ちょ、何してるんですか/// なんで手を握って///」
勇者「舌噛むなよ」
魔法使い「えっ?」ヒュン
54:
ヒュン
勇者「はーい、敵の本拠地に到着でーす」
兵1「だ、誰だ!!」
兵2「い、一体どこから!?」
魔法使い「はあ!? ちょっと、一体・・・おえええ」
勇者「ああ、慣れるまできついかもな、これ」
魔法使い「そういうのは最初に・・・おえええ」
勇者「とりあえず暫く黙ってろよ。少しすれば治るから」
魔法使い「うぅ・・・はい・・・うっぷ」
兵2「お前はどこから入ってきたのだ!!」
勇者「城の外からに決まってんだろ。他にどこがあるんだよ」
兵1「そういうことではない!! 何故急に現れたのだ!!」
勇者「移動呪文は勇者の特権だろ?」
兵2「何!? 貴様が勇者だと!?」
勇者「はっは、見ろよこの紋章。カッケーだろ」
55:
兵2「ええい、無礼な奴!! 一体ここに何の用だ!!」
勇者「依頼主Mさんより納税パーセンテージの引き下げのクエストを受けたからな。それを達成しに来た」
兵2「部外者がこの国の方針に文句を付けるでない!!」
勇者「いやあ、そういう訳にもいかないんだよね。こっちも生活がかかってるもんでね」
兵1「ほう、随分と貧乏な勇者も居たもんだな。哀れなものだ」
勇者「心配してくれてありがとよ」
兵1「減らず口を・・・。まあいい。いくら勇者と言えども不法侵入には変わりない。罪人としてここで叩き切る!!」チャキ
兵2「覚悟しろ!!」チャキ
勇者「おうおう、随分立派な両手剣だこと。ロングソードか」
兵1「そういう貴様は武器が見当たらないようだが」
兵2「防具も何もつけていないようだし・・・手ぶらで来るとは余程死にたいらしいな」
勇者「俺にはこれさえあれば十分なんだよ」サッ
兵1「ふっ、随分短いナイフだな」
魔法使い「え、見せちゃうんですか!? さっきは・・・うっぷ」
勇者「だから無理して喋るなっての。いいんだよ、今回は見せても」
56:
勇者「それでお前ら。人に武器を向けてるってことは、殺す覚悟と死ぬ覚悟があるんだな?」
兵1「何を当たり前なことを!!」ダッ
兵2「まあ死ぬのは・・・貴様の方だがな!!」ダッ
魔法使い「き、来ましたよ勇者様!!」
勇者「おお。酔が覚めたか。そりゃ良かった」
魔法使い「言ってる場合ですか!! 相手はロングソードなんですから攻撃範囲に入られたら・・・!!」
勇者「って相手も思ってるだろうな」
魔法使い「え?」
勇者「まあ見てろよ。一瞬たりとも目を離すんじゃねえぞ。さて・・・」
勇者「死神のご加護がありますように」
57:
なんかかっけぇぞ
58:
兵1(相手はあの短いナイフだ。こっちが攻撃範囲に入れば相手は何もできない)ダッダッダ
兵2(だったらさっさと叩き切る!!)ダッダッダ
勇者「やれやれ、飛んで火に入る夏の虫とはこのことか」
兵1「ふん、無駄口を叩いてる場合か?」ダッダッダ
兵2「既にお前は範囲内なんだよ!! 死にな!!」
魔法使い「勇者様!!」
勇者「ドアホ、人の話はちゃんと聞くもんだぜ?」ヒュン
ブンッ
兵2「・・・なっ!? 消えた!?」
兵1「ば、バカな!! 一体どこに!?」
魔法使い「・・・あ」
勇者「後ろだ、クズ共」
ズバッ
59:
兵2「ぐわあああああああああああああああああああ!! 足がああああああ!! 足がああああああああ!!」
兵1「な、そっちか!?」クルッ
勇者「ま、振り向いちまうよな」ヒュン
ズバッ
兵1「がっ!? ぐっ、あ、あ、足がああああああああああああああああああ!!」
魔法使い「あ、あ、あ」
勇者「どうだぁ? 足首がプラプラしてる感じはぁ? 歩けねえだろぉ? そうだよなぁ、動いたらもげちまうもんなぁ? 痛いだろぉ? そりゃそうだ、血が出てるからなぁ? なあ、今どんな気持ちだぁ? 苦しいかぁ? 痛いかぁ?」
兵2「がああああああああいてええええええ!!」
兵1「あああああああああああああああああああああああ!!」
勇者「ギャハハハハハハ!! いいねぇ!! もっと苦しめよ!! もっと泣き叫べよ!! 俺をもっと楽しませてくれよ!!」
兵2「ふ、ふざけんなあああああああああああああああああああああああ!!」ブンッ
勇者「おっと、危ねえな」ヒョイ
勇者「何だぁ? お痛をするのはその手かぁ? そんな悪い手にはお仕置きしなきゃなぁ?」スパッ
60:
カラン ポトポトポトポト
兵2「あ、あ、あ、指がない、俺の指が、小指が親指が、あああああああああああああああああああああああああああああああああ」
勇者「ついでにお前も」スパッ
カラン ポトポトポトポト
兵1「やめろおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああ」
勇者「どうだぁ? 力入らないだろぁ? 力を入れるために必要な小指と支えに必要な親指を切ったからなぁ? 剣が持てねえだろぉ? まぁ、もし持てたとしたって支えがないからすっぽ抜けるだろうけどなぁ」
兵2「俺が悪かった助けてくれ、助けてくれえええええええええええええええええええ」
兵1「命だけはああああああ命だけはああああああああああああああ」
勇者「いいねぇ、最っ高だねぇ!! もっと泣き叫べよ!! 喚き散らせよ!! ギャハハハハハハ!!」
勇者「・・・・・・はあ、飽きた。もういいや。おい、お前」グイッ
兵1「あっ、あっ、命だけは、命だけは」ガタガタガタガタ
勇者「けっ、何が殺す覚悟も死ぬ覚悟もあるだ。口だけのゴミクズ野郎が」
兵1「すみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでしたすみませんでした」
勇者「ちっ。ウゼェ。おい、いいからさっさと王の居場所を教えろ。そしたら命だけは見逃してやる」
兵1「言います言います!! そこの通路を右に曲がって突き当たりを左、あとは真っ直ぐです!! だから命だけはあああああ!!」
61:
勇者「あっそ。じゃあな。いい夢見ろよ」ドスッ
兵1「あ・・・」パタッ
兵2「あ、あ、あ、あ、あ」
勇者「お前は完全に用済みだ。テメエも寝てろ」ドスッ
兵2「がはっ・・・」パタッ
勇者「ふう・・・。場所もわかったしさっさと行くか。おい、ガキ使。行くぞ」
魔法使い「」
勇者「立ったまま気絶してやがる・・・。ホントお前は何しに来たんだよ・・・」
62:
勇者「おい、ガキ。起きろ。寝んねの時間は終わりだ」ゲシゲシ
魔法使い「え? あ、痛い、痛いです!! 脛を蹴らないでください!!」
勇者「だったらさっさ起きろ。ほら行くぞ。あんまり人が集まっても困るしよ」
魔法使い「・・・・・・殺しちゃったんですか、この人達」
勇者「だったらどうする?」
魔法使い「・・・・・・いえ、私が選んだ道ですもんね。仕方ないんですね」
勇者「そういうこった。わかってんならキリキリ動け。死んだやつのことなんか考えても仕方ねえだろ」
魔法使い「・・・そうですね。はい、行きましょう」
兵3「侵入者発見!! 総員かかれ!!」
兵達「「「「はっ!!」」」」
勇者「・・・テメエのせいだかんな」ゲシッ
魔法使い「痛い痛い!! ごめんなさい!!」
63:
国王「何? 侵入者を許しただと?」
兵長「申し訳ございません」
国王「謝罪などいらん! いいからさっさと始末してくれ!」
兵長「はっ。今全勢力をあげて対処しております」
国王「そうかそうか。ならば解決は時間の問題か」
兵長「だと思われます」
国王「なら良い」
兵4『兵長!!』
兵長「どうした。始末したのか?」
兵4『そ、それが現在部隊の3分の1が負傷!! 依然として対象は無傷です!!』
兵長「・・・なに? 一体何をしている!!」
兵4『申し訳ありません!! ですが報告によると何をされたかもわからぬうちに次々とやられております!!』
兵長「ちっ、使えない!! 相手は一体どんなやつなんだ!!」
兵4『はっ!! 勇者を名乗る男と少女の二人組です!!』
兵長「なっ!! たかだか二人相手に何をしている!!」
64:
兵4『で、ですが・・・なっ!! お前、やめ、ぎゃあああああああああ!!』
兵長「おい!! 一体どうしたというのだ!!」
勇者『あーあー、マイクのテスト中、マイクのテスト中。本日は晴天なり、本日は晴天なり』
兵長「・・・貴様が侵入者か」
勇者『ピンポーン。大正解。勇者ポイント5点を贈呈しまーす』
兵長「・・・こんなふざけたやつにやられたというのか」
勇者『おいおい、酷い言い草だな。まあもうすぐそっちに行くからゆっくりお茶でもしながら待ってろよ。あ、俺はビールな』
兵長「ふん、むしろお前がそこで待ってるんだな。こっちから出向いてやる」
勇者『おーそうかい。んじゃ薬草でも大量に持ってくるんだな。俺は煙草な。出来ればピ○ス』
兵長「黙って待ってな」
勇者『ちぇっ、つれねえな。わーったわーった。あ、ゆっくりでいいぞ。俺は煙草でも吸ってるから。じゃな』ブツッ
兵長「・・・ということで国王様。私は行ってまいります」
国王「はよいけっ!!」
兵長「はっ!」
65:
バタンッ
国王「・・・・・・行ったか」
国王「な、なあ? これでいいのだろ? そうすれば儂を殺したりしないか?」
「ああ。これでいいんだよ。テメエは俺様の言うとおりに動いていればいいんだよ」
国王「じゃ、じゃがな? 流石に40%はあまりにも可愛そうじゃないか? そちらも大変なのはわかるが・・・」
「ああ? 俺様に口答えするっていうのか?」
国王「そそそそんな、滅相もない」
「だったらテメエは何も考えなくていいんだ。俺様に全て任せればいいんだよ」
国王「・・・はい」
「ふふふ、しかし侵入者ですか。それも勇者。やれやれ命知らずな人も居たものですね」
「他の奴が始末してくれた方が楽だが・・・まあここに着いたって無駄だがな」
「俺様が葬り去ってやるからな」
69:
ジュッ
勇者「・・・はぁ。うめえ。なんでこんなに美味いんだ。いや、ありえねえ。吸わねえやつの気持ちがわからねえ」
魔法使い「・・・・・・そうですか」
勇者「あん? 随分湿気た顔してんな。どうした? 生理か?」
魔法使い「違いますよ!! ・・・でもやっぱりあれですね。覚悟していたとはいえやはり心に来るものがありますね」
勇者「はぁ、まだ悩んでんのかお前は。いいんだぞ、帰っても。今なら間に合うぞ」
魔法使い「い、いえ、そんなつもりで言ったわけじゃないんです!! ・・・ただあのなんというか」
勇者「まっ、所詮おこちゃまだからな。血が怖いんだもんな」
魔法使い「・・・ま、まぁ」
勇者「慣れだ慣れ。そのうち慣れる。もう時期嫌でも股から血が出てくるんだからよ」
魔法使い「・・・ホント最低ですね」
勇者「よく言われてたよ」
70:
勇者「ていうかよ、お前本当に魔法使いなんだよな?」
魔法使い「なんですか今更」
勇者「いや、本当にお前が魔法使えるか気になったからよ。魔法使いっていうんだからそりゃ相当な呪文が使えるんだろ?」
魔法使い「・・・・・・です」
勇者「あん?」
魔法使い「だから!! 火術だけしか使えないんです!!」
勇者「・・・そうか。じゃあな。達者でな」
魔法使い「お、置いてかないで下さいよ!! 私も役に立つかもしれないじゃないですか!!」
勇者「血を見て気を失ってるやつのどこが役に立つんだよ」
魔法使い「うぐっ・・・」
勇者「それにわかったろ? 俺が噂通りの男だってことをよ。だったらもう目的達成じゃねえか。おめでとうございます。クエスト達成です」パチパチ
魔法使い「・・・いえ、それは違うと思います」
勇者「あ?」
71:
魔法使い「私がそこまで馬鹿だと思っているんですか。勇者様」
勇者「いや、たぶんお前の予想以上に馬鹿だと思っていると思うぞ」
魔法使い「うるさいです!! 話を聞いてください!!」
勇者「わかったわかった。じゃあお前の名推理を聞かせてくれ」
魔法使い「はい。では勇者様お聞きします」
勇者「なんなりと」
魔法使い「ではなんで勇者様は毎回足から攻撃をするんですか?」
勇者「そんなもん身動きを取らせなくするためだろ。戦いの上等手段じゃねえか」
魔法使い「ええ。私は剣を扱わないのでわからないのですが多分そうなんでしょう」
勇者「だったらなんの問題もないじゃねえか。はい、推理終了」
魔法使い「・・・ですがそれは普通の戦闘の場合ですよね?」
勇者「あん? 何が言いてえんだ?」
魔法使い「簡単なことですよ。勇者様は移動魔法が使えるんですよ。なら最初から背後に回って心臓を一突きすれば終わりじゃないですか」
勇者「・・・ほぉ」
72:
魔法使い「それにその後は指を削ぐ。・・・うっぷ」
勇者「自分で言って気持ち悪くなってるんじゃねえよ」
魔法使い「う、うるさいです!! とにかくですね。勇者様の行動は相手の怪我を最低限に抑えているように見えるんですよ」
勇者「それはお前の解釈だろ?」
魔法使い「そうとしか思えないんですよ」
勇者「だったら教えてやろう。俺は快楽犯なんだよ。相手の痛がってる姿を見るのが最ッ高に気持ちよくてね。一気に殺すよりじわじわ苦しみながら死んでいく姿がたまらないんだよ」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「最初のやつらの命乞いとか見たか? 命だけは命だけはってよ。王国の兵士がそんなこと言ってるんだぜ。国の心配よりも自分の心配だ。実に人間らしかったね。所詮人間は口だけなんだな。その本音が聞けて俺はゾクゾクしたね」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「だから俺は最初に聞いたのにな。死ぬ覚悟はあんのかって。なのに結局は命乞いだ。アホなやつだよ、本当に」
魔法使い「・・・・・・もうやめてください」
勇者「おっと、悪いな。ガキにはきつい話だったか」
魔法使い「・・・・・・どうしてそんなに自分を悪く見せようとするんですか」
勇者「・・・・・・」
73:
魔法使い「もういいじゃないですか!! 自分に嘘をついてどうするんですか!! 辛くないんですか!? もっと素直に・・・ガキらしく生きればいいじゃないですか!!」
勇者「おいおい、いい歳の大人に何言ってるんだよ」
魔法使い「勇者様!! はぐらかさないでください!!」
勇者「仮にだ。もし俺がお前の言った通りだったとしよう。だがそれがなんだ? それでお前はなんか得するのか?」
魔法使い「そういう話じゃ・・・!!」
勇者「だったら俺の勝手だろうが。俺がどう生きたっていいだろうが。好きにさせてくれよ。俺に生き方まで強要すんじゃねえよ」
魔法使い「勇者様・・・」
「ここに居たか・・・」
勇者「おっと。首を長くして待ってたぞ」
兵長「驚いた・・・。まさかうちの兵を全滅させるとはな」
勇者「んなことはどうでもいい。そんなことよりお前が遅いせいで退屈な話しに付き合わされたじゃねえか。どう責任とってくれるんだよ」
兵長「それは悪いことをしたな。責任は取れないが・・・代わりにその長くなった首をとってやるから許してくれ」
勇者「怖い怖い。勘弁して欲しいな」
兵長「無理な相談だな」
74:
勇者「まっ、いいや。さっさとケリを着けようぜ。俺が用があるのはお前じゃなくて国王様だからな」
兵長「不法侵入してまでなんの用があるというのだ」
勇者「生憎俺は貧乏でね。金がないんだ。だから納められた税をちょっと拝借したくてな」
兵長「ふんっ。やってることがコソ泥と変わりないではないか」
勇者「お、そうか? じゃあ盗賊にでもジョブチェンジするかな」
兵長「強くおすすめするよ」
勇者「国の兵の長に言われたんならお墨付きだな」
兵長「まあ残念ながら転職する間もなく死ぬんだがなっ!」ダッ
勇者「そりゃあ残念だ。折角自分の才能に気づいたっていうのによ」
76:
兵長「さあ死ぬがいい!!」ダッダッダ
勇者(なんだ、兵長という割にやってることはただの兵士と変わらねえじゃねえか)
勇者(だったら俺もやることは変わらねえか)
勇者(兵長っていうから期待したのに残念だぜ)
勇者「まあ、いいや。ほら、こいよ」
兵長「言われなくても・・・なっ」サッ
勇者(剣を振り上げたな)
勇者(じゃあここで移動魔法っと)ヒュン
勇者(そして、斬・・・なっ!!)
勇者(何故遥か前に!?)
兵長「かかったな。お前がその様な戦い方をするのは調査済みなんだよ!!」ダッダッダ
勇者(まずい!! そっちの方向は!!)
勇者「馬鹿!! 逃げろ!!」
魔法使い「え、え?」
兵長「一体彼女になんの意味があるかわからんが・・・始末できるものから始末する!!」
77:
魔法使い「あっ、あっ」
魔法使い(ま、まずい!!)
魔法使い(魔法を唱えなきゃ・・・!! 早く唱えなきゃ・・・!!)
魔法使い(このままじゃ本当にただの足でまといに・・・!!)
魔法使い「か、火じゅ」
兵長「遅い!!」サッ
魔法使い(あ・・・間に合わない)
魔法使い(本当に・・・勇者様と会ってからイイ事ないな・・・何度も死にかけるし・・・無駄に頭使うし・・・)
魔法使い(はぁ・・・偉そうなことばかり言っちゃいましたね)
魔法使い(生意気なガキでごめんなさい・・・死神って言ったこと謝れなくてごめんなさい・・・勇者様)
魔法使い(そしてごめんなさい・・・お父さんお母さん)
ヒュン ザクッ!!
勇者「このアホが」
兵長「」ブシャー
魔法使い「ゆうしゃ・・・さま・・・?」ビチャビチャ
78:
勇者「はぁ・・・返り血浴びちまったじゃねえか。服の替え持ってねえんだぞ、どうしてくれるんだよ」
魔法使い「勇者様・・・殺しちゃったんですか?」
勇者「あぁ、そうだが。だから言ったろ。俺はただの死神だ。それ以上でもそれ以下でもねえんだよ」
魔法使い「で、ですが今のは」
勇者「お前さっき言ってたよな? 俺が怪我を最低限にしてるってよ。そんなこと言われたからムシャクシャして殺した。そんだけだ」
魔法使い「でもあれは私を守るために・・・!!」
勇者「勘違いすんなアホ。いいか、よく聞け? 俺の移動魔法は自分以外のものも移動させることが出来るんだぞ? ここに来るとき、俺はお前をどうした?」
魔法使い「・・・・・・あ」
勇者「そういうこった。怪しむんだったらもう一回見せてやろうか? いいか、この煙草をよく見てろよ」サッ
勇者「移動魔法」ヒュン
勇者「・・・ほらな。消えただろ? そういうことだ。残念だったな。お前の迷推理が外れちまってな」
魔法使い「そんな・・・」
勇者「ほら、いい加減帰れよ? 今なら誰も居ねえぞ? ゆっくり歩いたって無事に帰れるはずだ」
魔法使い「・・・・・・いえ、最初に約束しましたから。最後までついていきます」
勇者「・・・ったく、どうなっても知らねえぞ」
79:
ギィ・・・
勇者「どうもー、お邪魔しまーす」
国王「な、なっ、もう来たというのか!! ええい、兵長は一体何をしているのだ!!」
勇者「ん? ああ、これのことか」ゴトッ
国王「ひ、ひぃ!!」
勇者「いやあここに来るまであまりにも暇でついサッカーしながらきちまったぜ。だーれもいやしねえんだもん」シュボッ
国王「そ、そんな・・・。ざっと100人は居たはずだが・・・」
勇者「こいつを含め112人だな」ゲシッ
国王「ば、化物め・・・」ガクブル
勇者「こいつは馬鹿者だけどな」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「・・・はぁ、無反応かよ。つまんねえな。まあいいけどよ。そんなことよりここまで着いたんだ。特典として俺のお願いを聞いてくれないでございますか?」
国王「な、な、ならん!!」
勇者「まあ・・・聞かないなら殺すだけだけどな?」チャキッ
国王「ひ、ひいいいいいい!!」
80:
「させねえよ」
ブンッ
勇者「おっと」ヒュン
「ちっ、これを避けるか。ここにたどり着いただけあるな」
魔法使い「ま、魔物!?」
勇者「おいおい、いきなりご挨拶じゃないか。まずは名前、年齢、住所、生年月日を名乗ってからだろ?」
「テメエに名乗る名前なんか持ち合わせてねえよ」
勇者「何? お前名前ねえのかよ。愛されてこなかったんだな、可哀想に。俺はちゃんとあるぜ。男っていう立派な名前がな」
国王「なっ!! 男ってまさか!!」
勇者「あぁ、もう説明は省くぞ。どうせそれで合ってるだろうし」
「ふん、どこの誰だろうが俺様には関係ねえ。俺様が葬ってやるよ!!」
勇者「やれやれ、魔物がよく喋る。もう名乗んねえなら俺が名前を決めてやる。お前なんかトカゲみたいだからトカゲでいいや」
「ふざけんな!! 俺様にはちゃんとリザードって名前があんだよ!!」
勇者「なんだよ。だったら最初から名乗れよ。もったいぶってんじゃねえよ」
81:
リザード「うるせえ!! もういい!! ぶち殺してやる!!」
勇者「ったくこれだから血の気の多い魔物は困るぜ。ほらっ、国王は邪魔だからどっか行ってな。まっ、マスターのとこでいいか」
国王「た、たの」ヒュン
勇者「さ、早く終わらせようぜ。このままじゃ宿代が無駄になっちまう」
リザード「そんなことを気にしている場合かよ!!」ブンッ
勇者「バーカ、そんなの当たらねえよ」ヒョイ
リザード「ちっ!! 小癪な!!」ブンッブンッ
勇者「もういいか? ならこっちから行くぞ」ヒュン
リザード「あん!? どこいった!?」
勇者「ここだよ」ヒュン
リザード「なっ!!」
ガキンッ
勇者「お?」
リザード「・・・なんてな」ニヤッ
82:
勇者「おいおい、まじかよ」ヒュン
リザード「俺様の皮膚は並みの金属は通さねえよ。ましてやそんな小せえ小刀じゃな」ブンッ
勇者「おっと。なるほどな・・・。こりゃやっかいだな」ヒョイ
リザード「だったらさっさとくたばんな!!」ブンッ
勇者「やなこった。俺は長生きしてえんだよ。それこそ100歳くらいまでな」ヒュン
魔法使い「・・・・・・だったら煙草やめればいいじゃないですか」
勇者「お、やっと喋るようになったか。おじさん寂しかったぞ」
魔法使い「・・・ええ。珍しく勇者様が苦戦してるのに私だけ黙ってる訳にもいきませんしね」
勇者「そりゃありがてえな」
リザード「なんだ、お前も戦えたのか。だったらお前から始末してやるよ!!」ダッ
勇者「さっきみたいなヘマはすんなよ」
魔法使い「わかってますよ!!」
魔法使い(大丈夫です・・・魔物ならちゃんと戦えます!!)
83:
リザード「ヒャハハハ!! 来いよ!!」ダダダッ
魔法使い「行きます!! 火術!!」
ゴウッ
リザード「なっ!!」
ドーン!!
勇者「ひゅ〜。なんだ。ちゃんと使えるじゃねえか」
魔法使い「最初からそう言ってるじゃないですか」
勇者「しかし煙で周りが見えねえな。どこ行きやがったあいつ。死んだか?」
魔法使い「まっ、ざっとこんなもんですよ」フンス
勇者「馬鹿、まだ油断してんじゃ」
リザード「ねえよってか!!」ダッ
魔法使い「あっ!!」
勇者「馬鹿!! だから!!」
リザード「死にな!!」ブンッ
魔法使い「きゃあああああああ!!」
84:
ブシャッ
リザード「キャハハ!! これだよ、これ!! いい感触だぜ!!」
ビチャビチャ
リザード「どんな気分だ? あん? 斬られた気分はよ?」
魔法使い「あ、あ、あ、あ」ガタガタガタ
リザード「滅多にない経験だろ? それとも初体験か? キャハハハハ!!」
魔法使い「そんな・・・そんな・・・」ガタガタガタ
リザード「なあ、答えろよ、おい」
リザード「勇者様よ」ニヤッ
魔法使い「勇者様あああああああああああああああああああああああ!!」
勇者「ははっ、最高にハイってやつだな」ボタボタ
85:
魔法使い「勇者様!! 大丈夫ですか!?」
勇者「あー騒ぐな。耳がキンキンする。あーあ、こんなことなら防具買っとくべきだったな」ボタボタ
魔法使い「すみません・・・また私のせいで・・・」グスッ
勇者「泣くなアホ。ガキは大人に迷惑かけてなんぼだろうが。それに俺は女の涙にゃ弱いんだよ」ボタボタ
魔法使い「でもっ・・・でも・・・」
勇者「うるさいうるさい黙れ黙れ。いいから黙って聞け。あいつを倒す方法が思いついた」ボタボタ
魔法使い「ほ、本当ですか!!」
勇者「ああ。だが思った以上に出血が酷いな・・・。おい、悪いが1つ頼みがある」ボタボタ
魔法使い「は、はい!」
勇者「止血するのにお前の下着を貸してくれねえか」ボタボタ
魔法使い「え//// あ、はい、わ、私のでいいなら///」
勇者「嘘だ馬鹿」ボタボタ
魔法使い「な/// なんなんですか本当にっ/// 私の覚悟はなんだったんですかっ///」
勇者「ハハハ、愛いやつめ」ボタボタ
86:
リザード「おいおい、そんなこと言ってる余裕あるのかよ」ニヤニヤ
魔法使い「そ、そうですよ!! 早く止血しないと!!」
勇者「ちげえよ、これは鼻血だ。興奮しすぎた」ボタボタ
魔法使い「そんな強がり言ってる場合ですか!!」
勇者「いいからさっさとケリを付けるぞ」チャキ
リザード「ほう・・・。随分小刀を隠し持ってたみたいだな。だがいくら本数があったって意味がないのはわかるよなあ?」
魔法使い「そうですよ!! あの皮膚の硬さじゃ・・・」
勇者「ドアホ。だーれがバカ正直に皮膚貫くつった」ボタボタ
リザード「あん?」
勇者「あんまり使いたくなかったんだがな・・・。仕方ねえ。これはなこうやって使うんだよ」チャキ
勇者「転移魔法」ヒュン
リザード「が、がああああああああああ!!」ブチブチブチ
87:
魔法使い「なっ!? 内側からっ!?」
勇者「おうおう、まるでハリネズミみたいになったな。いや、ハリトカゲか?」ボタボタ
リザード「き、貴様・・・」ボタボタ
勇者「おぉ、魔物の血ってのは緑色なのかよ。グロイな」ボタボタ
リザード「黙れ!! ・・・だが勇者よ・・・残念だったな・・・」ボタボタ
勇者「あん?」ボタボタ
リザード「俺様はなぁ・・・まだ戦えるんだよお!! だが・・・貴様にはもう武器はないようだなあ?」ニヤァ
勇者「・・・はあ。バレてたか」ボタボタ
魔法使い「え、それじゃあ・・・!!」
勇者「ああ。お手上げだ」ヒラヒラ
魔法使い「そ、そんな・・・」
リザード「キャハハハ!! 馬鹿め!! 惜しかったなあ、あと一歩だったのによお!!」
勇者「・・・ああ、全くだ」ボタボタ
88:
リザード「さあ、潔く死ぬんだな!! キャハハハハ!!」ジャキ
勇者「ああ、だがちょっと待て」ボタボタ
リザード「ああん?」
勇者「最後くらい煙草吸わせてくれよ」ボタボタ
リザード「あぁ、そんなことか。好きなだけ吸うがいいさ!! 俺様は優しいからなあ!! キャハハハ!!」
勇者「じゃあお言葉に甘えて」サッ
リザード「おいおい、何本咥えるんだよ」キャハハハハ
勇者「ま、線香替わりにな。歳の数だけ咥えるよ」ボタボタ
リザード「キャハハハハ!! そいつは御洒落だな!!」
勇者「もう一箱開けるか。まだまだ残ってるが仕方ねえか」ボタボタ
勇者「おい、魔法使い。悪いが火つけてくれねえか?」ボタボタ
魔法使い「・・・え?」
勇者「最後の頼みだ。頼む」ボタボタ
魔法使い「・・・・・・」
89:
魔法使い「・・・・・・わかりました。ではライターを」
勇者「あぁ、違う違う。火術で頼む」ボタボタ
魔法使い「え!? で、でもそんなことしたら死んじゃいますよ!!」
勇者「どうせ死ぬんだから変わんねえだろ。殺されるなら可愛い女の娘の方がいいだろ?」ボタボタ
リザード「キャハハ、ちげえねえ!!」
魔法使い「で、でも」
勇者「なあ、頼むよ。こんなに俺が素直になることはもう一生ないだろ。一生の頼みだ」ボタボタ
魔法使い「・・・勇者様。・・・はい、わかりました」
勇者「おう。手加減なしで本気のやつ頼むわ」ボタボタ
魔法使い「・・・わかりました。では行きます」
魔法使い「業火術!!」
ゴウッ
リザード「キャハハ!! あばよ!! 勇者よ!!」
魔法使い(・・・さよなら、勇者様)
勇者「ああ、ありがとな。魔法使いよ」ボタボタ
90:
ゴウッ
勇者(あーあ、ロクな人生歩んでこなかったな)
勇者(こんなことならもっとマシな生き方するべきだったかな)
勇者(そうすればもっとマシな死に方出来たかもな)
勇者(・・・なんて悔やんでも仕方ねえか)
勇者(まだ俺の死に際を見届けてくれる奴がいるだけマシか)
勇者(あばよ、魔法使い)
勇者(短い付き合いだったけどなかなか楽しかったぜ・・・)
ジュッ
勇者「・・・なんてな」ニヤッ
91:
勇者「移動魔法」ヒュン
93:
ボウッ!!
リザード「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
魔法使い「え? え?」
勇者「バーカ。誰がおめおめと死ぬかよ」ボタボタ
魔法使い「勇者様!! なんで!?」
勇者「アホ。俺の得意技はなんだった?」ボタボタ
魔法使い「それは移動魔法・・・ってまさか!?」
勇者「ああ。そうだよ。お前の火術を煙草に着火させてあいつの体内に移動させたんだよ」ボタボタ
魔法使い「そ、そんなことが・・・」
勇者「出来るんだよ。俺に苦手なことはあってもできねえことはねえんだよ」ボタボタ
魔法使い「・・・・・・臭いですね」クスッ
勇者「いいんだよ、俺はなんたって勇者様だからな」ボタボタ
魔法使い「・・・血まみれで言ってもカッコよくないですね」
勇者「だったら早く止血してくれ」ボタボタ
95:
リザード「勇者あああああああああ!! ふざけるなあああああああああああ!!」ゴウッ!!
勇者「おいおい、ここは戦場だぜ? 油断する方が悪いんだよ、アホ」ボタボタ
リザード「許さん!! 絶対に貴様だけは許さん!!」ゴウッ!!
勇者「死ぬ奴に何言われたって怖くねえよ」ボタボタ
リザード「地獄の果までも追いかけてやるからなあああああああ!!」ゴウッ!!
勇者「地獄に行く奴が何言ってやがんだ。ま、地獄で待ってな」ボタボタ
魔法使い「勇者様!! とりあえずこれで止血してください!!」キュッ
勇者「おう、サンキュー」
勇者「・・・まっ、なんだ」
勇者「死神様のご加護がありますように」
96:
魔法使い「やりましたね!! 勇者様!!」
勇者「あぁ。死ぬかと思ったけどな。今日ほど防具の大切さを学んだ日はねえよ」
魔法使い「本当ですよ!! 煙草やお酒ばっかりじゃなくてちゃんと防具も買ってくださいね!!」
勇者「あ、それは無理」
魔法使い「なんでですか!!」
勇者「それはそれ。これはこれ」
魔法使い「・・・もうっ!!」
勇者「ま、とりあえずさっさとこんなところ出ようぜ。焼きトカゲ食いたいなら食ってからでいいからよ」
魔法使い「いーいーでーす。ほら、さっさと帰りましょう。国王様もマスターさんも待ってますよ!!」
勇者「ああ。じゃあ頼むわ」
魔法使い「え・・・。何言ってるんですか勇者様!! 勇者様も行くんですよ!!」
勇者「ああ、だから頼む」
魔法使い「え?」
勇者「・・・もう限界」バタンッ
魔法使い「きゃ、キャアアアアアア!! 勇者様あああああ!!」
97:
_____
___
_
勇者「・・・・・・ん?」
ガバッ
勇者「・・・・・・ここは?」
魔法使い「やっと起きましたか。寝坊助さんですね」
勇者「・・・あぁ、俺死んだのか。おやすみ」バサッ
魔法使い「何言ってるんですか。ほら、さっさと起きてくださいよ」バサッ
勇者「キャーエッチー。犯されるー」
魔法使い「はぁ、寝起きから元気ですね。とりあえず待っててください。今マスターさんを呼んできますから」
ガチャッ
勇者「・・・・・・」
勇者「あー生きてんだ。俺」
98:
ガチャッ
マスター「おう、やっと起きたか」
勇者「なんとかな。三途の川の水が冷たすぎて戻ってきちまった」
マスター「そりゃよかった。危うく星になるところだったな」
勇者「ああ。話はお流れになっちまったよ」
マスター「そりゃなにより」
勇者「残念がるやつの方が多いだろうけどな」
マスター「ハハッ、違いない。お、そういえば国王様が感謝してたぞ」
勇者「これで恨まれたらたまったもんじゃねえよ」
マスター「だな。あと俺も感謝してるよ。ちゃんと税率も10%に戻ったしな」
勇者「そりゃなにより」
99:
勇者「で、ここはどこだ?」
マスター「あぁ、俺の酒場だよ」
勇者「随分立派じゃねえか。宿屋もやった方がいいんじゃねえか?」
マスター「そしたらあそこの宿屋が潰れちまうだろ。優しい俺にはできねえな」
勇者「それはそれは。随分お優しいこった」
マスター「まあ、そんなことはどうでもいいんだ。とりあえずお前さんはあの娘に感謝しろよ」
勇者「あん? あのガキにか?」
マスター「それ以外誰が居るっていうんだよ」
勇者「シンディーと」
マスター「わかったわかった。いいから感謝するんだな。ここまで運んできたのもあの娘だし、お前さんが起きるまでずっと看病してたんだぜ、あの娘」
勇者「・・・・・・」
マスター「ま、そういうこった。あとはお前さんの判断に任せるよ。じゃあな」
勇者「おい・・・ちょっとまてよ」
マスター「あん? なんだよ?」
100:
勇者「酒の約束忘れんなよ!!」
マスター「・・・現金なやつだな、お前は」
勇者「金はないがな」
マスター「全くだ」
101:
___
_
勇者「えーでは、偉大なる勇者様の大活躍と今後の活躍を期待して・・・あ、あと税率さがっておめでとう。乾杯!!」
魔法使い「自分で言うんですか・・・。はい、乾杯」チンッ
マスター「やれやれ。まっ、約束だ。好きなだけ飲みな」
勇者「かー、うめえ!! 流石マスター、男だね。おかわり」
マスター「あいよ」
魔法使い「早いですね・・・」
勇者「そりゃ好きなだけ飲んでいいんだぞ? 飲まずにいれるかよ」シュボッ
魔法使い「体に響きますよ。あと煙草臭いです」
勇者「細かけえな、お前は。今日くらい許してくれよ」
魔法使い「いいですか。煙草は吸ってる人よりも副流煙の方が体に悪いんですよ?」
勇者「俺も副流煙吸ってるから気にすんな」
魔法使い「そういうことじゃないですよ!!」
102:
勇者「で、何? お前わざわざここまで運んできたの?」
魔法使い「ま、まぁそうですけど・・・」
勇者「チクショウ!! なんで肌の感触を覚えてないんだよ俺は!!」
魔法使い「ばっ/// 何言ってるんですかあなたはっ///」
勇者「それに何? 看病までしてくれたって?」
魔法使い「そ、そうですよ!! 感謝してくださいね!!」
勇者「そりゃお前のせいで怪我したんだからそうだろうよ」
魔法使い「もおおおおおおおおおおおお!!」
勇者「ミルク飲みすぎて牛になっちまったか? ペッタンコのくせに」
魔法使い「勇者様の馬鹿ああああああ!!」
マスター「やれやれ素直じゃないねえ」
103:
マスター「で、あんたはいつこの街を出発するんだい?」
魔法使い「・・・あ」
勇者「あぁ、それな。まあ怪我もしてることだし数日はここでゆっくりしてくよ」
魔法使い「・・・ホッ」
マスター「クスッ。ああ、そうかい。だったらこの街を満喫してから行きな」
勇者「そうするよ。トカゲ野郎倒してなんぼか金も入ったから武器も買わなくちゃいけないしな」
魔法使い「あとしっかり防具も買うんですよ!!」
勇者「わかってるっての。流石に身にしみてわかったよ。やっぱ人間とはちげえな」
魔法使い「そりゃそうですよ。煙草やお酒ばっか買ってないでしっかり買うんですよ」
勇者「うるせえな。お前は俺の妻かよ」
魔法使い「なっ・・・なっ////」
マスター「青春だね、全く」
105:
_____
___
_
勇者「うぃ〜、酔ったぁ〜」フラフラ
魔法使い「そりゃあんだけ飲んだらそうなりますよ・・・」
マスター「お前さんはうちを潰す気か。こんなに飲んだ客初めて見たよ」
勇者「そうだろ〜そうだろ〜。なんたって俺は勇者様だからにゃぁ〜」
魔法使い「呂律回ってないじゃないですか。今日は早く寝るんですよ」
勇者「言われなくたってわかってら〜い。おい、マスタ〜」
マスター「なんだよ、酒くせえな」
勇者「うるしゃい!! なぁ〜今日もここに泊めさせてくれよ〜」
マスター「はぁ、わかったわかった。好きに使え」
勇者「やった〜。俺は明日ゆっくり寝るから起こすにゃよ〜」
マスター「はいはい。じゃあな魔法使いちゃん」
魔法使い「すみません、私までありがとうございました。勇者様をお願いします。おやすみなさい」
マスター「ああ、おやすみ」
106:
翌日
カランカラーン
魔法使い「おはようございまーす」
マスター「・・・あぁ、魔法使いちゃんか」
魔法使い「・・・ん? どうしたんですか? 随分険しい顔してますけど?」
マスター「ったく。あのバカのことだよ」
魔法使い「え、勇者様また何かやらかしたんですか!?」
マスター「ああ、盛大にな」
魔法使い「あの人は全く・・・。一体何をしたって言うんですか?」
マスター「さっき俺が部屋に行ったらよ、既にもぬけの殻なんだよ」
魔法使い「・・・・・・え?」
マスター「あのバカ。俺らに何も言わずに出て行っちまったんだよ!!」
魔法使い「そ、そんな!! だって昨日は!!」
マスター「そう思わせるためにわざと言ったんだろうよ!! やれやれ・・・」
魔法使い「勇者様・・・」
108:
マスター「・・・おい、いいのか。魔法使いちゃん」
魔法使い「・・・何がですか?」
マスター「このまま行かせちまって良いのかってことだ」
魔法使い「それは・・・寂しいですけど勇者様の選択ですから。私は何も言えないですよ」
マスター「本当にいいのか、それで」
魔法使い「え・・・?」
マスター「あいつはなんて言ってた?」
魔法使い「・・・・・・」
勇者『ガキはガキらしく素直に生きてろ。馬鹿が難しいこと考えてるんじゃねえよ』
魔法使い「・・・そうですよね。ガキですもんね。バカですもんね。難しいこと考えなくていいんですよね」
魔法使い「マスターさん!! 今までありがとうございました!!」ダッ
カランカラーン
マスター「・・・・・・頑張んなよ。魔法使いちゃんよ」
110:
勇者「あーだりー。防具おめー。気持ちわりー」フラフラ
勇者「こんなことなら防具なんて買うんじゃなかったぜ・・・」
勇者「でも痛いのは嫌だしなー」
勇者「・・・・・・」
クルッ
勇者(まっ、達者で暮らせや、マスター。そしてガキ)
クルッ
勇者「はー。行くか。次の街までなげえんだろうな」
勇者「・・・まあゆっくり行くか。小遣いでも稼ぎながら」
「ま、待ってくださ〜い!!」タッタッタ
勇者「・・・・・・おいおい、嘘だろ?」
魔法使い「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。やっと追いつきました」
勇者「・・・・・・なんで来たんだよ。クソガキ」
113:
魔法使い「それはこっちのセリフですよ!! 何勝手に居なくなってるんですか!! カッコつけすぎですよ!!」
勇者「・・・あのなぁ。こっちは急いでるんだよ。お前に構ってる暇はねえんだよ」
魔法使い「うるさいです!! 私はガキらしく素直に生きることにしたんですよ!! 文句ありますか!!」
勇者「大ありだ。馬鹿。ってか城の件でわかったろ。俺が噂通りの悪人だってことがな」
魔法使い「笑わせないでください。それこそありえない話しですよ」
勇者「何言ってんだ、お前。見てなかったのかよ。俺は移動魔法さえ使えば殺す必要のなかった男を平然を殺したんだぞ」
魔法使い「私を甘く見ないでください。今度こそ完璧な推理を見せてあげますよ」
勇者「んなもん、聞く必要ねえよ。俺は急いでるんだよ。じゃあな」
魔法使い「私に当てられるのが怖いんですか?」
勇者「あん?」
魔法使い「そんなにいい人に見られたくないんですか?」
勇者「けっ、安い挑発だな。・・・いいぜ、そんなに自信があるなら言ってみろよ」
魔法使い「えぇ、任せて下さい」
114:
魔法使い「簡単な話しですよ。あなたの移動魔法には欠点があったんですよ。それは移動魔法の範囲です」
勇者「それはお前も見てただろうが。俺自身、そして俺以外の物体全てを移動させれたじゃねえか」
魔法使い「ええ。ですが問題は何を動かせるかじゃないんですよ」
勇者「だったら何が問題だって言うんだよ」
魔法使い「わかってるクセによく言いますね。でははっきり言いましょう。それはどこの物を移動できるかですよ」
勇者「・・・・・・」
魔法使い「おかしいと思ったんですよ。あんなに私を帰したがってたのに何故強制的に送り返さないのかったのかなって」
勇者「それはお前の意思を尊重したんだよ」
魔法使い「まだありますよ。何故リザードを殺すときにわざわざ一回煙草に火をつけさせたんですか」
勇者「・・・・・・」
魔法使い「焼き殺すだけなら私に打たせてそれを転移すればいいだけなんです。ですが自分の身の危険もあるのにわざわざ煙草に火をつけさせた」
勇者「・・・・・・」
魔法使い「そこから推理すれば簡単なことですよ。あなたの移動魔法は・・・自分が触れている物しか移動できない。違いますか?」
勇者「・・・・・・」
115:
魔法使い「無言は肯定・・・ということでいいんですね?」
勇者「・・・はぁ。参った参った。紅参だ。まさかお前に見破られるとはな」
魔法使い「ふふふ、賢いですね、私。賢者にでも転職しましょうか」
勇者「自惚れんな馬鹿」
魔法使い「ひ、酷くないですか!!」
勇者「・・・あぁ、その通りだ。俺の移動魔法は俺が触ってるもんしかできねえよ」
魔法使い「だったら兵長さんの件は・・・仕方なかったんですよね」
勇者「あーそうだよ。お前を殺さないためにはあいつを殺すしかなかったんだよ。文句あっかよ」
魔法使い「・・・良かったです」
勇者「あん?」
魔法使い「私は勇者様が・・・噂通りの男じゃなくて安心しました」
勇者「・・・ちっ」
魔法使い「ですから安心して一緒に旅ができますね!!」
勇者「・・・・・・は?」
116:
魔法使い「いえ、ですから」
勇者「いや、聞こえたから。聞こえてなお言ってるから。お前馬鹿か」
魔法使い「な、なんでですか!!」
勇者「あのなぁ。まずお前んちの両親はどう思うんだよ。旅になんか出させたくねえに決まってんだろ」
魔法使い「・・・・・・それは」
勇者「・・・・・・まあ、いい。そこは。だがな、火術しか使えないような使えない魔法使いを俺が連れて行くと思うか」
魔法使い「そ、それは今後成長していけば・・・」
勇者「馬鹿野郎。そんな悠長に構えてる暇なんかねえんだよ。欲しいのは即戦力だ。育つのを待ってる場合じゃねえんだよ」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「はっきり言うぞ。連れて行っても足でまといなんだよ。お前は」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「わかったか。戦力になるつもりなら諦めな」
魔法使い「・・・・・・」グスッ
117:
勇者「ちっ。泣くなっつうの。イライラする」
魔法使い「・・・すみません」
魔法使い(・・・やっぱり私じゃ駄目なんですね)
勇者「ったく。さーて煙草でも吸うか」ヒュン
魔法使い(・・・・・・あ、今)
勇者「・・・って、あー。クッソ。ライターねえじゃねえかよ。これじゃ煙草が吸えねえじゃねえか」
魔法使い「・・・・・・え?」
勇者「ライター買うのにも色々買って金ねえし。畜生。ついてねえな」
勇者「・・・はぁ。煙草吸えねえなんて考えらんねえ。あーもー仕方ねえな。おい、こらクソガキ」
魔法使い「は、はいっ!!」
勇者「ライター買うまでは連れてってやる。その代わりライター買ったらさっさと帰れよ」
魔法使い「・・・素直じゃないですね」クスッ
勇者「あ? なんか言ったかコラ」
魔法使い「いえ、なんでもないです!!」
魔法使い「よろしくお願いします!! 勇者様!!」
118:

国王「して、秘書よ。先日の件の被害者はどうなっておる?」
秘書「はい。負傷者が111人。死者が・・・1名です」
国王「なるほど。ご苦労だった」
秘書「はっ。失礼します」
ガチャ
国王「・・・死者は兵長だけ・・・か」
国王「男・・・か」
国王「全く。あやつは立派な勇者じゃよ」
国王「見えてるもの、聞いたものが全てじゃない・・・か」
国王「まあなんにせよ」
国王「死神様にご加護がありますように」
129:
勇者「おい」
魔法使い「・・・はい」
勇者「俺がなんで怒ってるかわかるか?」
魔法使い「・・・はい」
勇者「別に戦闘で役に立たないのはいい。もともと期待してなかったからな」
魔法使い「・・・はい」
勇者「夜中こっそり食べ物を食べているのも別にいい。育ち盛りだからな」
魔法使い「・・・はい」
勇者「わざわざテントを2個買ったのにいつの間にか俺の横で寝てるのもまあいい。俺は役得だからな」
魔法使い「・・・はい///」
勇者「だがな」
魔法使い「・・・はい」
勇者「なんで煙草をつけるのに業火術を使うんだよ!!」
魔法使い「ごめんなさいごめんなさい!!」
130:
勇者「何? お前は俺を殺したいの? 殺すためについてきたの?」
魔法使い「ち、違います!! いや、だってあの時本気で来いって言ってたので・・・」
勇者「時と場合によるだろ!!」
魔法使い「そ、それにほら!! またあの技を使うときが来たときの為への練習ですよ!!」
勇者「煙草くらいゆっくり吸わせろ!! つかお前は火術以外の技を覚えろ!!」
魔法使い「す、すいません!!」
勇者「俺も吸えませんだよ!!」
魔法使い「ごめんなさいごめんなさい!!」
勇者「はぁ・・・こんなことなら前の街でお前が必死にライター買うのをやめるよう説得してきたのを振り切ってでもライター買うべきだった」
魔法使い「そ、それは駄目です!! 私の目が黒いうちはそんなこと許しません!!」
勇者「黙れ!! こっちは目の前が真っ黒になりそうだよ!!」
魔法使い「はぅ・・・」
勇者「煙草をつける時は小火術でいいの!! わかる? でぅーゆーあんだーすたん?」
魔法使い「でも小火術って消火術っぽくて火消えそうじゃないですか・・・」
勇者「馬鹿かお前は!!」
131:
戦士「大丈夫か!? 安心するがいい。この戦士が通ったからにはもう大丈夫だ!!」
魔法使い「あ、いえ、これはちょっとしたスキンシップといいますか」
勇者「ちょっと好きにヒップをしてただけだ」
魔法使い「何言ってるんですか!?」
戦士「くっ、既に手遅れだったか・・・」
魔法使い「い、いや、私は本当に」
勇者「ああ。夜な夜な寝ているこいつの体を自由に使ってたぜ」
魔法使い「なっ、なっ//// じゃ、じゃあ私は知らぬ間に・・・///」
戦士「この悪魔めが!!」
勇者「いや、死神だがな」
戦士「どっちでもいい!! 成敗してくれる!!」チャキ
勇者「これはこれは、正義感のお強いことで」
魔法使い「子供ができてたらどうしましょう/// 名前は女の子だったら///」
勇者「お前はいつまで違う世界旅してんだよ」
134:
勇者「もういい。強制送還してやる。おら、手出せや」
魔法使い「い、嫌です!! 手を握られるのはその・・・やぶさかではないですが・・・その・・・/// と、とにかく駄目です!!」
勇者「うるせえ。ゴタゴタ言ってんじゃねえ。さあ、良い娘だ。出すんだ」
魔法使い「いーやーでーす!!」
勇者「ああ。もういい。無理矢理触ってやる。尻でも胸でも触ってりゃ効果は発動するしな」
魔法使い「そ、そういうのはもっとムードのある時にしてください!! ・・・じゃなくて///」
勇者「いいから触らせろ。もう我慢出来ねえ。大人しくしてな」
魔法使い「キャー助けてー犯されるー!!」
勇者「ゲヘヘヘ、覚悟しな」ワキワキ
「やめるんだ!! 大人しくその娘を解放しろ!!」
勇者「あん?」
魔法使い「え?」
132:
戦士「覚悟しろ!! 不届きものめが!!」
勇者「おいおい、簡単に人に武器向けてんじゃねえよ」
戦士「貴様だから向けているのだ!!」
勇者「・・・死ぬ覚悟は出来てるんだろうな」
戦士「何?」
勇者「人に武器を向けてるってことはよ、殺す覚悟と死ぬ覚悟があるかって聞いてんだよ」
戦士「当たり前だ!! 困ってる人を見逃すくらいなら死んだほうがマシだ!!」
勇者「・・・ふんっ。いつまでそんなことが言えるかな」
戦士「死ぬ覚悟など既にできている!!」
勇者「・・・そうかよ」
戦士「そっちから来ないならこちらから行くぞ!!」ダッ
勇者「ああ、来いよ。格の違いを見せてやる」
135:
戦士「くらえ!! 魔人斬り!!」ブンッ!!
勇者「おっと」ヒュン
戦士「これを躱すか。なかなかやるな!!」
勇者「いきなりご挨拶だなおい」
戦士「殺す覚悟があるのだから当然だ!!」
勇者「確かにな」
戦士「まだまだ行くぞ!!」ダッ
勇者「ちっ」
戦士「だああああああ!!」ブンッ ブンッ ブンッ
勇者「すげえ猛ラッシュだな」ヒョイ ヒュン ヒョイ
戦士「まだまだ!!」ブンッ
勇者「おっと、危ねえ」ヒュン
戦士「すばしっこいやつだ!!」チャキ
勇者「避けるのも一苦労だな、こりゃ」
戦士「すぐに捉えてみせる!!」
136:
勇者「さて、お遊びもここまでにするか」
戦士「なに?」
勇者「じゃあこっちからも行かせて貰うぞ」
戦士「来い!!」
勇者「そんじゃ遠慮なく」ヒュン
戦士「なっ!? 消えた!?」
戦士「い、一体どこへ!?」
勇者「後ろだ」チャキ
戦士「なっ!?」
勇者「さ、チェックメイトだ」
138:
勇者「さて、問題です。今君の首に当たっているひんやりとした物はなーんだ?」
戦士「・・・刃物か」
勇者「はーい。正解でーす。勇者ポイント5ポイントゲットでーす」
戦士「クソッ!!」
勇者「残念だったな。お前の冒険もここまでだ」
戦士「・・・殺すなら殺すがいい」
勇者「何?」
戦士「だがあの娘にこれ以上酷いことはするな!!」
勇者「・・・・・・」
戦士「この戦士。人生に悔いはない。・・・いや、あの娘を救えなかったことは一生の不覚だな」
勇者「・・・・・・ちっ」
戦士「さあ!! 殺すがいい!!」
勇者「ああ、お望み通りな」ドスッ
戦士「ガハッ・・・!!」バタッ
勇者「クッソ。気に入らねえ・・・」
139:
勇者「さて」
魔法使い「一姫二太郎がいいですかね/// でも勇者様が望むなら小隊を作れるくらいでも///」テレテレ
勇者「いい加減こっちに戻ってこい、オラッ」ゲシッ
魔法使い「あ、痛っ!! ちょっと何するんですか!! そ、それに、あ、あんなことして//// 責任は取ってくださいね///」
勇者「馬鹿かお前は。嘘に決まってんだろ」
魔法使い「・・・・・・そうですか」
勇者「何残念がってんだよ」
魔法使い「なななな何言ってるんですか//// そんな訳ないじゃなですか////」
勇者「お前が望むなら今からでもしてやろうか」
魔法使い「け、結構です!!////」
勇者「そうかよ、そりゃ残念だ」
魔法使い「・・・そ、そういうのは段階を踏んでからしっかりと///」ボソッ
勇者「なんか言ったか?」
魔法使い「なんでもないですよーだ///」
141:
魔法使い「ところでさっきの方はどうしたんですか?」
勇者「あそこで伸びてるよ」
戦士「」
魔法使い「殺しちゃったんですか?」
勇者「ああ」
魔法使い「・・・嘘付き。わかってますよ」クスッ
勇者「チッ。だったら聞くなよ」サッ
魔法使い「いい加減素直になってくださいよ」
勇者「俺は世界一素直だっての。いいからさっさと火つけろ、ライター」
魔法使い「もうっ。私はガキでもライターでもなくちゃんと魔法使いって名前があるんです!!」
勇者「おい、ガター」
魔法使い「変に略さないでください!!」
勇者「何も倒せねえところは一緒じゃねえか」
魔法使い「うるさいですよ!!」
勇者「いいからさっさと火つけてくれよ」
142:
魔法使い「全く・・・。はいはい、いきますよ」
勇者「小火術でいいからな」
魔法使い「わかってますって」
勇者「今までの事を思い出してみろよ」
魔法使い「か、過去は振り返らない主義なんです!!」
勇者「いいからさっさとしろ」
魔法使い「はぁ・・・。小火術!!」ボッ
勇者「そうそう、それでいいんだっつうの。はあ・・・うめえ」
魔法使い「もう・・・。本当に体に悪いですよ」
勇者「俺がこれを吸わなくなったらお前もいらなくなるけどいいんだな?」
魔法使い「じゃんじゃん吸っちゃって下さい!!」
勇者「馬鹿なやつ」プハー
143:
魔法使い「ところでこの人はどうするんですか?」
勇者「いい、ほっとけ。さっさと行くぞ」
魔法使い「でも可哀想じゃないですか?」
勇者「知るかそんなこと」
魔法使い「でも・・・」
勇者「そんなに可哀想ならお前一人でついてろ。俺は先に行くから」
魔法使い「で、でもそれだと煙草も吸えないですよ!? 大変じゃないですか!!」
勇者「木の板と木を探して摩擦で火を起こす」
魔法使い「そこまでして吸いたいですか!?」
戦士「う、う〜ん」
勇者「馬鹿。お前のせいで起きちまったじゃねえか」ゲシッ
魔法使い「ご、ごめんな、いたっ、蹴らないでください!!」
144:
戦士「・・・何? まだ生きてるだと?」
勇者「お前は殺す価値すらねえってことだよ」
魔法使い「ちょっと勇者様!! 挑発してどうするんですか!!」
戦士「き、貴様・・・て、何? 勇者だと?」
勇者「はーいどーも。希望の象徴勇者様でーす」」
戦士「勇者があんなことをしていいと思ってるのか!!」
勇者「いいんだよ。力こそ絶対だからなあ」
戦士「貴様は・・・っ!!」
魔法使い「もうっ!! いい加減にしてください!!」ポカッ
勇者「痛っ」
戦士「・・・え?」
魔法使い「すみません!! 勇者様がとんだご無礼を!!」
戦士「これは一体・・・?」
魔法使い「それは・・・」
145:
_____
___
_
戦士「そうだったのか・・・。これはとんだ早とちりを・・・」
勇者「全くだ」
魔法使い「あなたのせいですよ!!」
戦士「本当にすまない。いや、謝っても許されることじゃないのはわかってる」
勇者「全くだ」
魔法使い「勇者様!!」
戦士「これは死んで詫びるしかない・・・」チャキ
魔法使い「な、何言ってるんですか!! そこまで必要ないですよ!!」
勇者「いいぞー死ね死ねー」
魔法使い「あなたは黙っててください!!」
戦士「ではっ」
魔法使い「ちょっと!! ストップ!! ストーップ!!」
146:
魔法使い「はぁ・・・。危ないところでした」
戦士「済まない。助かった」
魔法使い「助かったじゃないですよ!!」
戦士「だがこのままでは私の気が済まない。せめて何かお礼がしたい」
勇者「じゃあ金」
魔法使い「黙っててください。そんな。いいですよ。人相と性格が悪い勇者様が悪いんですよ」
勇者「黙れライター」
魔法使い「うるさいです!!」
戦士「しかし・・・」
魔法使い「本当にいいですよ。気にしないでください」
戦士「・・・決めた!!」
魔法使い「え?」
戦士「私もあなた達について行く!!」
魔法使い「えぇ!?」
147:
魔法使い「で、ですが」
戦士「私も何か目的があって旅をしていたわけではない。だったら少しでも力になりたい」
魔法使い「そ、それは・・・」
魔法使い(うぅ・・・これじゃ折角の勇者様との二人旅が・・・)
魔法使い「ど、ど〜します〜? 勇者様〜?」
勇者「ああ?」
魔法使い(だ、大丈夫です)
魔法使い(あんだけ頑なに私を断っていた勇者様です)
魔法使い(そう簡単に仲間にはしないはず!!)
魔法使い(大丈夫!! 勇者様なら断るに決まってます!!)
勇者「ああ、うん。いいんじゃないか」
戦士「そうか。ではこれからよろしく頼む」
魔法使い「なんでですかああああああああ!?」
戦士「うおっ!?」
勇者「うるせえよ。新入りがびっくりしてるじゃねえか」
148:
魔法使い「どうしてですか!? あんなに私の時は拒んでたのに!?」
勇者「説明いるか?」
魔法使い「当たり前です!!」
勇者「まず経験が違う。ずっと一人旅してたんなら冒険の知恵もあるだろうしかなり役に立つ。それに比べてお前。ゼロ」
魔法使い「うっ」グサッ
勇者「そして能力だ。さっき戦った感じ腕もかなりのもんだ。戦闘でも期待できるだろう。それに比べてお前。ゴミ」
魔法使い「うぐっ」グサグサッ
勇者「最後に装備。装備が良いということは金も持っているだろうからな。それに比べてお前。穀潰し」
魔法使い「がはっ!!」グサグサグサッ
勇者「以上の理由より採用。文句あるか?」
魔法使い「う、ううぅ」
戦士「何か苦しんでるがいいのか・・・?」
勇者「ああ、いつも発作だ。気にするな」
戦士「そ、そうか・・・」
149:
あっさりOKしやがったwwww
俺も断ると思ったよ!
151:
戦士「では改めてよろしく頼むぞ。勇者。魔法使いちゃん」
勇者「ああ。まあ適当に頼むわ」
魔法使い「うぅ・・・。よろしくお願いします」
戦士「ま、まあそう落ち込むな。元気を出せ」
魔法使い「・・・はい。ありがとうございます」
戦士「うむ。君は笑ってる方が可愛いんだから笑っている方がいい」
魔法使い「ああ、なんて優しい・・・。それに比べてこの人は・・・」ジトー
勇者「なんだよ、クソガキ。そんな目で見んな。じとっとして気持ちわりい。今にもカビそうだ」
魔法使い「もおおおおおおお!!」
戦士「ま、まあまあ。勇者も女の子にそんな酷いことを言うんでない」
勇者「るっせえな。いいからさっさと行くぞ」
魔法使い「・・・はい」
戦士「うむ。では行こうか!! 世界の平和のため魔王を倒しに行こう!!」
魔法使い「・・・なんか勇者様より勇者らしいですね」
勇者「ああ。今すぐ紋章あげたいくらいにな」
152:
戦士「たああああああああ!!」
ズバッ!!
戦士「やああああああああ!!」
ズバッ!!
戦士「はああああああああ!!」
ズバッ!!
戦士「・・・ふう。これで全てか」スチャッ
魔法使い「つ、強い」
勇者「これはお見事」パチパチ
戦士「よせ、照れるではないか」
勇者「これで戦闘が楽になるぜ。じゃんじゃん倒しちゃってくれ。頼むわ」
戦士「うむ。心得た」
勇者「俺はその間にでも煙草でも吸ってるよ。おい、火」
魔法使い「・・・確かにこれは私たちが戦うまでもないですね。小火術」ボッ
勇者「いや、お前は最初からずっと戦ってねえだろ」プハー
153:
______
___
_
勇者「暗くなってきやがったな。仕方ねえ。今日はこの辺で休むか」
戦士「そうだな。いい判断だと思われる」
魔法使い「・・・はぁ・・・はぁ」
戦士「・・・疲れきってる子もいるしな」
勇者「本当にあいつはなんなんだよ」
戦士「ふふ、可愛いじゃないか。一生懸命で」
勇者「可愛くたって仕方ねえんだよ。冒険は戦争だ。遊びじゃねえんだよ」
戦士「なに、その分我々が強くいいではないか」
勇者「やなこった。俺は自分の身を守るので精一杯なんだよ」
戦士「やれやれ、よく言うよ。あんだけあの子を庇ってたじゃないか」
勇者「・・・けっ」
魔法使い(・・・疲れた。本当ならまだ進めるはずなのに・・・。・・・もしかして私の為に)
魔法使い(・・・・・・本当に私は足でまといにしかなってないですね・・・私)
154:
戦士「さっ、では腹も空いたことだ。飯にしようか。私が作ろう」
勇者「何? お前飯も作れるのか?」
戦士「うむ。長年冒険をしてるからな。嫌でも身に付いたよ」
魔法使い「あ、で、ですが流石に悪いですよ。お疲れでしょうし。私がやりますよ」
勇者「いや、お前料理できねえだろ」
魔法使い「・・・そうでした」
戦士「ははは、気にしなくていい。君らはゆっくり休むがいい」
勇者「ああ。そうさせて貰うよ」
魔法使い「で、ですが何かお手伝いくらいは・・・」
戦士「いい、いい。魔法使いちゃんも疲れているだろう? ゆっくりしてるといい」
魔法使い「・・・・・・そうですか」
戦士「・・・・・・いや、そうだな。では悪いが火を起こすのを手伝ってくれないか?」
魔法使い「あ、はい!!」
戦士(フフッ。可愛いな本当に)
156:
戦士「勇者。飯が出来たぞ」
勇者「ん? おお、そうか。なら食うか」
戦士「済まないな。わざわざテントを立てて貰って」
勇者「俺が寝るためだ。そりゃ必要だろ。流石にこんなきたねえ草の上じゃ寝たくねえよ」
戦士「とか言ってしっかり二つ立ててるじゃないか」
勇者「いいから飯食うぞ。腹が減りすぎてお腹と背中がくっついちまいそうだ」
戦士「ふふ、そうか。ではくっつく前に飯にしよう」
勇者「ああ、そうしてくれ」
157:
勇者「おお随分美味そうだな、おい」
戦士「ああ、人に食べてもらうと思うとつい張り切ってしまったよ」
勇者「本当に仲間にしてよかったよ。あんたは」
戦士「それは嬉しいな」
勇者「それに比べて・・・」チラッ
魔法使い「こ、この火私がつけたんですよ!!」
勇者「はぁ・・・。うわーすげー、豪華な業火だな」
魔法使い「やめてください!! 無理して褒めないでください!!」
戦士「まあまあ。さあ、食べようではないか。温かいうちに食べてくれ」
勇者「ああ、そうだな。じゃ、いただきまーすっと」
魔法使い「あ、はい。いただきます」
戦士「ああ、どんどん食べてくれ」
158:
魔法使い「・・・あ、美味しい」
戦士「そうか、それは良かった」
勇者「確かにこれは旨えな。冒険なんかやめて料理屋でもやった方がいいんじゃねえか?」
戦士「ふふっ、考えておこう。世界を平和にしたあとにな」
魔法使い「・・・本当に勇者みたいですね」
勇者「俺が勇者だ」
魔法使い「今すぐ譲ってください!!」
勇者「出来ることならしたいんだがな。だが残念ながらそれはできない。何故ならこの紋章ワッペンだから服にくっついてんだ」
魔法使い「そうだったんですか!?」
戦士「魔法使いちゃん、嘘だから。絶対に」
159:
勇者「はぁ。美味かった。ごちそうさん。さて煙草でも・・・って、ちっ。ラスト一本かよ」
魔法使い「吸いすぎなんですよ」
勇者「うるせえな。俺の勝手だろ」
魔法使い「はぁ、まあいいですけどね。では」
勇者「ああ、いい。焚き火からつけるから」ジュッ
魔法使い「あ・・・、そ、そうですか」
戦士「・・・・・・」
勇者「ぷはー。うめえ。くそっ、しかし無くなっちまったか。さっきの街で買ってくれば良かったよ」
戦士「こんなこと言ったら失礼かもしれないが勇者が煙草を差し置いてまで他の物を買うとは意外だな」
勇者「あぁ。欲しかったものが意外と高くてな。くそっ、煙草が値上がりしてなけりゃ一箱買えたのによ」
魔法使い「そういえば何買ったんですか? 私も知らないんですが」
勇者「誰が教えるか」
魔法使い「いいじゃないですか、それくらい」
勇者「なんでわざわざ敵に武器の情報あたえなきゃならないんだよ」
魔法使い「なっ!?私のどこが敵なんですか!! 完全に味方じゃないですか!!」
160:
勇者「煙草つける為に業火術つかうやつのどこが味方なんだよ」
魔法使い「も、もういいじゃないですかそこは!! 過去の話しじゃないですか!!」
勇者「いや、俺はこれを墓場まで持っていくね」
魔法使い「うぅー!! もういいです!!」
戦士「まあまあ。さっ、片付けも終わったし今日はゆっくり寝ようじゃないか」
勇者「そうだな。じゃっ、俺は寝るからお前らもさっさと寝ろよ」
戦士「うむ。心得た」
魔法使い「え? わ、私戦士さんと一緒に寝るんですか!?」
勇者「なんだよ。文句あんのかよ。戦士のことそんなに嫌いかよ」
魔法使い「い、いえ、そういうわけじゃないんですが・・・」
勇者「とりあえず俺は一人で寝たいんだよ。わかったらさっさと寝な。じゃあな」
戦士「・・・さあ、私達も寝よう。魔法使いちゃん」
魔法使い「・・・はい」
魔法使い(・・・勇者様の馬鹿)
161:
_____
___
_
魔法使い(・・・・・・寝れない)
魔法使い(さっきあんなところを助けようとしてくださった方ですからそういうことはないと思いますが・・・)
魔法使い(・・・勇者様の馬鹿。少しは私の心配してくださってもいいじゃないですかっ)
魔法使い(・・・やはり私はライター以外の何でもないんですかね)
魔法使い(それでもいいってついて行きましたが・・・)
魔法使い(・・・ちょっと辛いですね)
魔法使い(・・・迷惑なんですかね、やっぱり)
魔法使い(・・・そうですよね。足でまといになってばかりですもんね)
魔法使い(・・・だったら居ない方がいいんですかね)クスン
戦士「・・・魔法使いちゃん。もう寝たか?」
魔法使い「・・・ふぇ?」
162:
戦士「起こしてしまったなら申し訳ない」
魔法使い「あ、いえ。起きていたので大丈夫です」ゴシゴシ
戦士「そっか。私が横にいると寝づらいか?」
魔法使い「そ、そういうことじゃないんです!! 大丈夫です!! ・・・ただ」
戦士「悩み事か? 私が力に慣れる事なら力になる。話してみるだけでも話してくれないか?」
魔法使い「戦士さん・・・。ありがとうございます」
戦士「なんのこれしき」
魔法使い「・・・あのですね・・・その・・・やっぱり私ってこのパーティにいらないんですかね」
戦士「・・・・・・」
魔法使い「私弱いですし、体力ないですし、料理できないですし・・・勇者様の言う通りですね」
魔法使い「足で纏いにしかならないですし私のせいで無駄にお金かかりますし・・・」
魔法使い「この装備も実はさっきの街で勇者様が買ってくださったんですよ。そんなボロい服着てたら俺まで弱く見えて恥ずかしいって言いながらですけどね」
魔法使い「きっとそのせいで煙草も買えなかったんだと思います。私の装備なんて買わなければライターなんて何本も買えたんですもんね」
魔法使い「ホント・・・私勇者様の邪魔しかしてないですね・・・これなら居ない方が・・・」
戦士「・・・そんなことないさ」
163:
魔法使い「でもっ!!」
戦士「そんな居ても居なくても変わらない人だったら装備なんか与えないで見殺しにするはずさ」
魔法使い「それは・・・私が無理矢理ついてきたから・・・」
戦士「それでもだよ。だったら最初から連れて行かないさ。勇者は移動魔法が使えるんだろ? 嫌なら寝てる間に無理矢理でも送り返してるさ」
魔法使い「・・・・・・」
戦士「勇者も何か思うところがあって魔法使いちゃんを連れていってるんだろうさ。それが何かは本人しかわからないだろうけどね」
魔法使い「・・・戦士さん」
戦士「だから君は難しいことなんか考えなくていいのさ。勇者も素直じゃないからちゃんと言葉にはしないだろうけどね」
戦士「君は間違いなくここに居ていい。今日入ったばかりの私が言うのもおかしな話だがね」
魔法使い「・・・ありがとうございます」
戦士「少しは役に立てたか?」
魔法使い「はい、本当にありがとうございます」
戦士「それは良かった」クスッ
ガルル
戦士「・・・・・・敵か!?」ガバッ
164:
魔法使い「えっ!?」
戦士「今鳴き声がした」
魔法使い「本当ですか!?」
戦士「仕方ない。行くぞ、魔法使いちゃん!!」
魔法使い「は、はいっ!!」
バサッ
戦士「・・・・・・ってあれ?」
シーン
魔法使い「あれ、いませんね?」キョロキョロ
戦士「・・・おかしい、確かに」
魔法使い「きっと聞き間違えですよ」
戦士「・・・そうか。まあいい。だったら寝るか」
魔法使い「はい、そうですね」
戦士「・・・・・・」
165:
_____
___
_
魔法使い「勇者様ー!! 朝ですよー!!」
バサッ
勇者「ふわぁ・・・。もうそんな時間かぁ?」
魔法使い「そうですよ。もう朝ご飯も出来てますよ」
戦士「おはよう、勇者」
勇者「はいはい、おはようさん。ふわぁ」
戦士「随分と眠そうだな、君は」
魔法使い「本当ですよ。一番最初に寝てたのに」
勇者「うるせえよ。朝弱いんだよ、俺は」フワァ
魔法使い「もう・・・。とりあえず朝ご飯食べましょう」
勇者「はいはい。食いしん坊だこと」
166:
戦士「・・・勇者」
勇者「あん?」
戦士「昨夜のやつ、君だろ?」
勇者「は? 何の話をしてんだ?」
戦士「だったらなんでそんなに眠そうなんだ?」
勇者「言ってんだろ。俺は朝弱いんだよ」
戦士「とぼけなくてもいい」
勇者「わけわかめ。お、今日の朝飯はワカメのスープかこりゃ嬉しい」
戦士「・・・全く」
勇者「お前も意味わからん話ししてないでさっさと食おうぜ。俺は早く街に行って宿屋で寝たいんだよ」
戦士「・・・ああわかったよ。すまんな、訳のわからない話をして」
勇者「全くだ」
167:
_____
___
_
勇者「やっと着いたか」
魔法使い「大体の魔物を戦士さん一人で倒してましたけどね・・・」
勇者「俺は楽できていいぜ」
戦士「君もしっかり敵を倒してたじゃないか」
勇者「危うく武器の持ち方を忘れるところだったからな」
戦士「生憎私はナイフの使い方は心得てないからな。忘れても教えられなくて申し訳ないな」
勇者「忘れた時はロングソードの使い方を習うよ」
魔法使い「わ、私も火術の使い方は教えれますよ」
勇者「そりゃいい。自分の煙草を自分でつけれるぜ」
魔法使い「そういえば私人に教えるのは苦手なんでした」
勇者「流石馬鹿だな」
魔法使い「う、うるさいです!!」
戦士「クスッ」
168:
勇者「さて。煙草煙草ー!!」ダッ
魔法使い「全くもう・・・」
戦士「いいのか? 買わせて?」
魔法使い「そりゃ体に悪いのであんまり良くないですが・・・でも煙草ないと私の居る意味がないので」ハァ
戦士「ハハハッ、それは仕方ないな」
魔法使い「えぇ。とりあえず私が居ていい理由が見つかるまではライターに徹しますよ」
戦士「でも一人で買い物に行かせたらライター買ってきちゃうんじゃないか?」
魔法使い「・・・・・・」
戦士「・・・・・・」
魔法使い「ま、待ってください勇者さまあああああ!!」ダッ
戦士「やれやれ」クスッ
169:
勇者「買えた買えた」ホクホク
魔法使い「今まで見たこともないような笑顔ですね」
勇者「朝からずっと我慢してたんだぞ!? この気持ちがわかんねえのか!?」
魔法使い「いや、私は吸いませんので。それにたかだか3時間くらいじゃないです」
勇者「たかだか3時間!? ふざけてんのか貴様は!! ここが戦場だったらお前は既に蜂の巣だ!!」
魔法使い「え、え?」
戦士「荒ぶってるな。よっぽど煙草が欲しかったんだな」
勇者「魔法使い早く! 火術! 早く」
魔法使い「な、名前で・・・!! はい、行きますよ勇者様!! 小火術!!」
勇者「すぅ・・・。かぁ〜うめえ!! サンキュー魔法使い!!」
魔法使い「は、はいっ!!」キラキラ
戦士「・・・まあ、魔法使いちゃんが幸せそうだからいいか」
「あ、あの・・・」
勇者「・・・あん?」
戦士「あ、元に戻った」
170:
村人「すいません、私村人というものなんですが・・・あなた勇者様ですよね」
勇者「そうそう。俺勇者」プハー
村人「え、あなたがですか!? すみません、てっきりこちらの方かと・・・」
戦士「ん? 私か?」
勇者「なんだとー。どっからどう見ても俺が勇者だろ。ほら、勇者ワッペンつけてるし」
魔法使い「煙草片手に言っても説得力ないですね」
戦士「そしてワッペンじゃないだろ」
村人「も、申し訳ございません。それであの・・・申し訳ないのですがお願いを聞いていただいてもよろしいですか・・・?」
勇者「やだっ。勇者間違える人の頼みなんてやっ」
魔法使い「何ダダこねてるんですか!! 子供ですか!!」
勇者「お前には言われたくねえよクソガキ」
魔法使い「なんですとおおおお!!」
戦士「・・・それで頼みというのは」
村人「え、あの、放っておいてもいいのですか?」
戦士「・・・えぇ。いつものことなので」
171:
村人「で、では。その頼みというのは私の娘を助けていただきたいのです」
戦士「なるほど・・・。ご心中お察しします・・・」
村人「ありがとうございます・・・」
戦士「ところでその娘さんというのはどちらへ?」
村人「はい・・・。実はこの村は500年ほど前、オロチに村を荒らされたのです」
戦士「・・・オロチというのはあの八岐大蛇のことか?」
村人「・・・はい。ところがそこへ勇者様が通りかかってくださったのです」
戦士「ほう・・・」
村人「そこで勇者様はお一人で討伐しに向かってくださったのです。ですが・・・」
戦士「何かあったのですか?」
村人「両者とも力はほぼ互角。両者ともあと一撃を貰えば死ぬという状況の時オロチが勇者様へ交渉を持ち出したのです」
戦士「それは一体・・・?」
村人「10年に一度村の娘を一人生贄に捧げろ、そうすれば村を荒らすことはしないというものでした」
戦士「・・・勇者はそれを飲んだのですか?」
村人「・・・はい」
172:
戦士「そんなっ!!」
村人「・・・勇者様と言えども人の子。無理に勝負して死ぬよりはそちらの方がいいとお考えになったのだと思います」
戦士「それでも!!」
村人「いえ、勇者様には魔王を倒すという使命があったのだから仕方ないのです」
戦士「オロチも倒せない奴が魔王を倒せるか!!」
村人「・・・確かにその勇者様は魔王にやられたと聞きます」
戦士「それはそうだ!!」
村人「ですが村人たちは感謝しました。全員死ぬところが一人で済むのですから・・・」
戦士「・・・・・・」
村人「私もそれは仕方ないと思っていました・・・。ですが・・・ですが!!」
戦士「・・・今年はあなたの娘さんが選ばれたということですね」
村人「・・・はい。自分勝手なのは承知です。今まで散々見殺しにしといてと思われると思います」
戦士「そんなこと・・・」
村人「いえ、良いんです。私も他の方が言ったら今更何言ってるんだと思うに決まっています」
戦士「・・・・・・」
173:
村人「そこを知ってなお、無理を承知でお願いします。お願いです!! 私の娘を助けてください!!」
戦士「・・・・・・」
村人「妻も死に、私にはもうあの娘しかいないんです!! どうか・・・どうか・・・報酬ならいくらでも払います」
戦士「・・・・・・わかり」
勇者「ダメに決まってんだろ」
戦士「なっ!!」
村人「勇者様・・・」
174:
戦士「何故だ勇者!! この方の話を聞いてなかったのか!!」
勇者「ちゃーんと最初から最後まで聞いてたよ。ソラでセリフ全部言えるくらいにはな」
戦士「だったら何故!?」
勇者「あのな、まずこれはこの村の問題だ。この村がどうなろうと俺の知ったこっちゃない」
戦士「勇者!!」
勇者「それに今までそうして来たんだろ? それでこの村の平和は守られてきたんだ。だったらいいじゃねえか」
戦士「それでもこの人の娘さんは!!」
魔法使い「そうですよ、勇者様!!」
勇者「知るかよ。それこそこいつの話し通りだ。虫が良すぎるだろ。今まで散々村ぐるみで人殺しといて自分の娘だけ助けろ? 笑わせんな」
戦士「それを知ってなお頼んでいるこの人の気持ちがわからないのか!!」
勇者「さっぱりだね」
戦士「貴様・・・!!」
勇者「それにお前が行ったらお前が死ぬかもしれねえんだぞ。それでもいいのかよ」
戦士「当たり前だ!! 困ってる人を見捨てるくらいなら死んだほうがマシだ!!」
勇者「ああ、そうかい」
176:
勇者「だが悪いな。俺は魔王を倒さなくちゃいけねえんだ。時間も限られてるんだよ」
戦士「・・・目的の為なら犠牲は仕方ないとでも言うのか」
勇者「そういうこった。お前らも結局捨て駒だ」
戦士「何い!?」
勇者「最後は俺が魔王を倒せばいいの。そうすれば世界は平和になるの。お前らが死んだってな」
戦士「貴様・・・!!」
勇者「いいじゃねえか。魔王を倒すために死んだ仲間たち。美談になるぜ?」
戦士「私はまだしも魔法使いちゃんまでも・・・・・・・・・貴様には失望した!!」
勇者「目先のことしか考えてねえ馬鹿に言われたくねえよ」
魔法使い「勇者様!!」
戦士「・・・もういい!! 私はこのパーティを抜けさせてもらう!!」
勇者「どうぞご勝手に」
魔法使い「そんな!! 戦士さん!!」
戦士「魔法使い!! 君も来るんだ!!」
魔法使い「・・・え?」
177:
勇者「おう、連れてけ連れてけ。メシ代も減るし願ったり叶ったりだ」
魔法使い「・・・・・・勇者様」
戦士「口は悪いと思っていたが心まで腐ってるとは思わなかったよ。貴様には失望したよ」
勇者「やっと気づいたのかよ。お前もガキと一緒で馬鹿だったんだな」
魔法使い「・・・・・・」
戦士「ふん・・・。影でしっかりやってる奴だと思っていたが私の勘違いだったようだな」
勇者「だからずっと言ってただろ。人の話を聞かないやつだな。耳ちゃんとついてるのか?」
戦士「黙れ!! これ以上貴様と話しているのは時間の無駄だ!!」
勇者「はいはい。黙ってますよ」
戦士「・・・村人さん。その八岐大蛇はどこにいるのですか」
村人「は、はい、ここから南の方角の洞窟に住んでいます」
戦士「そうか。把握した。では必ず娘さんを助け出してきます」
村人「・・・申し訳ありません」
戦士「いえ、戦士として当然のことをするまでです。ほら、行くよ、魔法使いちゃん」
魔法使い「でもっ・・・でもっ・・・!!」
178:
戦士「いいから。あんな奴に着いてったら見殺しにされるだけだ。さあ早く」
魔法使い「で、でも勇者様にもきっと考えがあって・・・」
戦士「ないよ、あんな奴に!! 昨日言ったことは根本的に間違えていたんだ」
魔法使い「で、ですが!!」
戦士「魔法使いちゃん!!」
勇者「ああ、そうそう。おい、ガキ」
魔法使い「は、はい!!」
勇者「行くんだったらその装備全部置いてけよ。売って金にするから」
魔法使い「・・・・・・・・・・・・え?」
戦士「貴様は・・・どこまで・・・!!」
179:
勇者「いやいや、人の物を取ったら泥棒だぜ?」
戦士「だったら貴様のその煙草も私が倒した魔物から稼いだ金だ!!」
勇者「おお、そうだったな。これは失敬。んじゃ俺が倒した魔物がこんくらいだから・・・よし、煙草は平気だな」
戦士「貴様・・・!!」
勇者「じゃあほらよっ。これはお前らのもんだ」ポイッ
戦士「チッ!!」
勇者「薬草や魔法瓶が入ってるから使いたきゃ使えばいいし。売るなら売ればいいさ」
戦士「どこまで貴様は・・・」
勇者「クズなんだってか? そりゃそうだ。俺はあの死神の男だからな」
戦士「なっ・・・!! 貴様があの・・・!!」
勇者「納得の理由だろ?」
戦士「・・・許さん!! ここで成敗してくれる!!」チャキ
勇者「おいおい。そんなことしてる場合かよ? 今にもこいつのガキは食われるかもしんねえんだぞ?」
戦士「・・・チッ」
勇者「おら、さっさと行った行った」シッシ
180:
戦士「貴様・・・覚えておけよ!! 絶対にまた見つけ出して私が殺してやる!!」
勇者「はいはい、覚えてればな」ヒラヒラ
戦士「どこまでも・・・!! ほらっ、魔法使いちゃん行くよ!!」
魔法使い「・・・・・・・・・・・・」
戦士「・・・くっ。仕方ない、引っ張って連れて行く」
勇者「お達者でー」
戦士「ふんっ!! 地獄へ落ちろ!!」ダッ
魔法使い「・・・・・・・・・・・・」
勇者「おお、怖い怖い」
181:
勇者「さて・・・。おい、村人っつたか?」
村人「・・・申し訳ありません。私のせいで・・・」
勇者「謝るくらいだったら最初から頼むんじゃねえよ」
村人「・・・・・・そうですね」
勇者「そういうこった。んで? なんでお前は自分でオロチだかオロシだから知らねえが倒しに行かなかったんだ?」
村人「・・・最初は私もそう思ったんです。ですが私じゃ倒すだけの力量はない」
勇者「まあそうだろうな」
村人「そこで倒せなかった時のことを考えたら行けなかったんです・・・」
勇者「・・・ほう」
村人「私がオロチの契約を破棄すればオロチは怒りこの村を破壊すると思ったのです」
勇者「なるほどな。娘も助け出せない。村も終わり。最悪な結末だな」
村人「・・・ええ。ですからそれだけは避けたかったのです」
勇者「だったら失敗しても村は助かる余所者に頼んだというわけか」
村人「・・・・・・はい。騙して申し訳ありません」
勇者「別に騙しちゃいねえだろ。言ってねえだけだ」
182:
村人「・・・ですが私はどうしても娘を救いたかったのです!! どんな手を使ってでも!!」
勇者「この村がどうなってもか?」
村人「・・・・・・気づいてらしたんですか」
勇者「なんとなくだがな」
村人「・・・流石勇者様ですね」
勇者「いんや、俺はただの死神だよ」
村人「勇者様・・・どうかお願いです。どうかあの娘を救っていただけませんか!! 報酬はいくらでも払います!!」
勇者「やれやれ、いくらでもとか簡単に言うんじゃねえよ」
村人「それほど私は真剣なのです!!」
勇者「別に俺に頼む必要ねえじゃねえか。あいつらは無償で行ってくれたんだぜ?」
村人「・・・・・・ですが」
勇者「あいつらじゃ勝てなさそうってか?」
村人「・・・本当に勇者様には敵いませんね」
183:
村人「別にあの方たちが弱いとは思っていません・・・。ですが、あの噂の勇者様・・・男様と比べるとどうしても」
勇者「やめろよ、名前に様つけるんじゃねえよ。むず痒い」
村人「それは申し訳ございません・・・」
勇者「うわあ鳥肌立ってきた・・・」
村人「・・・・・・お願いです、男さん!! どうかあの娘を救ってくださりませんか!!」
勇者「・・・お前はこの依頼に命かけれるか?」
村人「・・・え?」
勇者「お前はこの依頼に自分の命をかけれるか? 自分の命を捨ててまでも娘を助けたいのか?」
村人「・・・・・・はい。私の命でいいならいくらでも」
勇者「・・・そうか」
村人「それに娘が助かれば私の命なんてないしな」ハハハ
勇者「まあ確かにな」
村人「ええ。ですから私の命など惜しくはありません」
184:
勇者「だったら依頼は成立だ」
村人「本当ですか!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!」
勇者「ああ。だが依頼料は前払いだ」
村人「あ、あぁ。そうですね。わかりました。いくらでも支払います」
勇者「いや、金はいい」
村人「え? で、ですが・・・」
勇者「代わりにこれを持て」ヒュン
村人「お、おっと。・・・これは?」
勇者「何、なんて事ない。ただのナイフだ」
村人「で、ですがこれと依頼料になんの関係が・・・?」
勇者「なに、簡単だ」
勇者「これでお前の腕を貫け」
村人「・・・え?」
185:
村人「な、何故ですか」
勇者「だから依頼料だっての。お前が腕を貫く。そうすれば俺は助けに行く。貫かなければ契約破棄だ」
村人「で、ですがそれだと勇者様にメリットが・・・」
勇者「お前、俺の噂を知ってるだろ?」
村人「・・・ええ」
勇者「それが答えだ。俺はな、人が苦しむ姿が最ッ高に好きなんだよ。だからお前が苦しむ=俺の幸せだ」
村人「・・・そんな」
勇者「ほら、やるならやる。やらないならやらない。俺は忙しいんだよ」
村人「・・・・・・」
勇者「娘を助けてえんだろ。だったらお前の命なんかどうでもいいんだろ。違うのかよ」
村人「・・・・・・」
勇者「・・・・・・はあ。結局こんなもんか。契約は破棄だ。じゃあな」
村人「・・・・・・待ってください」
勇者「・・・あん?」
186:
村人「やります!! やらせてください!!」
勇者「・・・そうかよ。だったらさっさとしな」
村人「・・・・・・はい」ゴクッ
サッ
村人(・・・おかしいな。とっくに覚悟は決めたつもりだったんだけどな)
村人(命なんかよりも大切なはずだったんだけどな)
村人(それがどうだ。たがだか腕を貫くだけでこんなに躊躇して)
村人(傷つくのってこんなに怖いものなんだな・・・)
村人(それを勇者様やさっきの戦士さん、あんな小さな魔法使いちゃんだってこんな思いをしながら旅してるのか・・・)
村人(なのに私はお金だけで解決しようなんて・・・なんて浅はかだったんだ)
村人(全く関係のない私の娘の為に傷ついて貰うと言うのに私だけのうのうと傍観するだけ)
村人(・・・そんなことあっちゃならないよな)
村人(・・・・・・だったらこんな腕ぐらい!!)ギリッ
村人「だあああああああああああああああああああああああ!!」
ザクッ
187:
村人「があああああああああああああああああああああああああ!!」
勇者「クフッ・・・クフフ。ギャハハハハ!! いいねえ!! 最ッ高だねその苦痛に歪んだ顔!! それだよそれ!!」
ボタボタボタ
勇者「・・・ふう。よし、契約成立だ。これを使いな」サッ
キュイン
村人「があああああああああ・・・・・・あれ? 痛みが引いてく・・・」
勇者「これが薬草の効果だ。知らなかったろ?」
村人「・・・・・・ははは。知らなかったよ。薬草がこんな効果だったなんて」
勇者「貴重な体験だったろ?」
村人「そうですね・・・。知った気になってたことでも意外と知らないことが多いんですね」
勇者「よかったな。無知の知を体験できて」
村人「はい。ありがとうございます」
勇者「おいおい、傷つけさせた張本人に何言ってんだよ。お前あれか? マゾにでも目覚めちまったか?」
村人「違いますよ。とりあえずありがとうございます」
勇者「変なやつ」
188:
村人「ははは、勇者様ほどじゃないですよ」
勇者「うるせえよ。喧嘩売ってんのかよ」
村人「いえいえ、滅相もない。とりあえず、これで依頼を受けてくださるんですよね」
勇者「ああ、仕方ねえな。言っちまったもんは仕方ねえ」
村人「ありがとうございます!!」
勇者「やれやれ、こんなことしないで金にしとけば良かったぜ」
村人「いえ、ちゃんとお金も払いますよ」
勇者「いんや、いらねえ。男に二言はねえんだよ」
村人「クスッ。そうですか」
勇者「ああ。んじゃとりあえず行ってくるよ」
村人「はい。お願いします」
勇者「・・・っと、忘れてた。その前にちょっと頼みがある」
村人「ええ。なんなりと」
勇者「ああ、じゃあな―――」
189:
村人「え、そんなことでいいんですか?」
勇者「ああ。大事な頼みだ。ぜってえしくるなよ」
村人「あ、はい。分かりました」
勇者「だったらとっとと行け。時間がねえ」
村人「はっ、はい!!」
ダッ
勇者「さて、じゃあ俺も準備するか」
勇者「・・・・・・でもこれじゃ金が足りねえな」
勇者「・・・仕方ねえ。防具と・・・はぁ、ナイフも売るか」サッ
勇者「おい、おま・・・っと、そうだ、いねえんだった」
勇者「・・・・・・はぁ、ライターも買ってくか」
勇者「こりゃ煙草も結構売らなくちゃいけねえな・・・」
190:
_____
___
_
戦士「だああああああああああ!!」
ズバッ
戦士「大丈夫? 魔法使いちゃん?」
魔法使い「・・・・・・はい」
戦士(・・・・・・やっぱり元気ないな)
戦士(クソッ! あんなやつの何がいいんだよ!!)
戦士「ねえ・・・魔法使いちゃ」
魔法使い「ああああああわかりません!!」
戦士「えっ!?」ビクッ
魔法使い「あ、すみません!! 大きな声出しちゃって!!」
戦士「い、いやそれはいいが。一体どうしたんだ?」
魔法使い「ええ・・・。勇者様が何を考えているのか考えていたんですよ」
戦士「・・・何?」
191:
魔法使い「でもさっぱり分かんなくて・・・。はあ、やっぱり馬鹿じゃわかんないんですかね」
戦士「・・・あいつがそんな高尚なことを考えているはずがない。考えているのは自分のことばかりだよ」
魔法使い「いえいえ、それはないですよ」
戦士「・・・何故君はそんなに彼を信じれるんだ」
魔法使い「最初は私もそりゃショック受けましたよ。だってその装備は俺の金だから返せー! って。普通言いませんよね!!」
戦士「そうだ!! そんな男なんだぞ、彼は!! それにあの噂の死神なんだぞ!?」
魔法使い「その噂は噂ですよ」
戦士「何故そう言い切れる!!」
魔法使い「まだ戦士さんが入る前ですけどちょっと色々ありましてね。そこで思ったんですよ。そんな人じゃないって」
戦士「それはその時だけ優しい顔してたんじゃないのか!!」
魔法使い「その時も悪く見せようと必死でしたよ。勇者様。今思えばちょっと可笑しいですね」クスッ
戦士「だが・・・」
魔法使い「まあですから今回もきっと私じゃ考えつかないようなことを考えてるはずなんです」
戦士「・・・何故君はそこまで彼を」
魔法使い「それは・・・・・・ま、まあいいじゃないですか!!」
192:
戦士「・・・私にはわからない。何故君がそこまで彼を信じれるか」
魔法使い「直にわかりますよ。素直じゃないんですよ。彼は」
戦士「だが、彼は着いて来なかった。君がいうことが本当ならついてくるのが普通じゃないか?」
魔法使い「そ、それは・・・きっと何かあるんですよ!! 絶対!!」
戦士「本当か?」
魔法使い「・・・・・・なんか私も不安になってきました」
戦士「まあ、彼が来ようが来まいが関係ない。君は私が守る。この命に変えても」
魔法使い「・・・戦士さんって男らしいですね」
戦士「あぁ。よく言われるよ」
193:
_____
___
_
戦士「ここが魔物の住み家のようだな」
魔法使い「そ、そうですね」チラッ
戦士「そんなに振り返っても彼は来ないよ」
魔法使い「・・・うぐっ」
戦士「結局彼はそんなやつだったんだよ」
魔法使い「そ、そんなはずは・・・」
戦士「これが現実だよ」
魔法使い「・・・・・・」
戦士「・・・彼のことは忘れるんだな。その分私が君を守るから」
魔法使い「戦士さん・・・」
戦士「さっ、準備はいいかい。行くよ」
魔法使い「・・・・・・はい」
ギィ
194:
八岐大蛇「・・・うん? 何やつじゃ? 妾の食事の邪魔をするのは?」
娘「・・・うぅ」ガタガタ
戦士「我が名は戦士!! 貴様!! その娘を解放するんだ!!」
魔法使い「そ、そうです!! 食べるのをやめてください!!」
八岐大蛇「随分と勇ましいな。だが、それは無理な注文じゃ」
戦士「だったら・・・力づくでも奪い返す!!」チャキ
八岐大蛇「ほう・・・。だったら仕方ない・・・。応戦するまでよ」
戦士「・・・魔法使いちゃん。後から援護を頼むよ」
魔法使い「は、はいっ!!」
戦士「娘ちゃんは離れてて!!」
娘「は、はい!!」タタタッ
戦士「さて・・・行くぞ!! 魔物!!」ダッ
八岐大蛇「やれやれ。自ら死に急ぐとは愚かじゃの。まあよい。妾の好みじゃしな。さっさと倒して食すだけじゃ」
戦士「できるもんならやってみろ!!」
195:
戦士「喰らえ!! 魔人斬り!!」ブンッ!!
八岐大蛇「がはっ!! なかなかの威力ではないか」
戦士「もういっちょ!! 隼斬り!!」ヒュンヒュン!!
八岐大蛇「ぐっ!!」
戦士「さらに辻斬り!!」スン!!
八岐大蛇「がはっ!!」
魔法使い「つ、強い・・・!!」
戦士「伊達に一人旅してないからね!!」
八岐大蛇「ふんっ。やらっれぱなしは癪だのぉ。こちらからも行かせて貰うぞ」
ブンッ
戦士「ガハッ!!」ドスッ
魔法使い「戦士さん!!」
196:
戦士「くそっ!! しくじった・・・。済まない、魔法使いちゃん。薬草を使ってもらえるか」ドクドク
魔法使い「は、はい!!」キュイーン
戦士「ふぅ・・・。助かったよ。薬草はあと何枚ある?」
魔法使い「えっと・・・あと9枚ですね」
戦士「そうか・・・。クソッ!! 買い物をあいつに任せたのが馬鹿だった!!」
魔法使い「・・・・・・」
戦士「魔物の防御力も高そうだしな・・・。全部使っても足りるか・・・」
戦士「・・・いや、私はどうなってもいい。魔法使いちゃんだけは守りきる!!」
魔法使い「戦士さん・・・」
戦士「引き続き後ろからの回復は頼むぞ!!」
魔法使い「はいっ!!」
八岐大蛇「相談は終わったかのぉ? ではいくぞ」
戦士「こい!!」ダッ
_____
___
_
199:
戦士「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
八岐大蛇「なんじゃ? もう終わりか?」
戦士(くそっ・・・硬すぎる・・・)
戦士「魔法使いちゃん!! 薬草を!!」
魔法使い「せ、戦士さん!! もうないです!! 魔法瓶もあと一つしかないです!!」
戦士「な、何!!」
八岐大蛇「はっはっは!! 残念じゃったのぉ。もう少し楽しめるかと思ったのじゃがなぁ」
戦士「クソッ!!」
八岐大蛇「・・・これで終いじゃ」ブンッ
戦士「ガハッ!!」ドスッ
魔法使い「戦士さん!!」
戦士「・・・・・・」
八岐大蛇「残念じゃったの。まぁ少しは楽しめたからよしとするかのぉ」
八岐大蛇「さて・・・では今度はそちらの娘の番じゃ」
魔法使い「ひ、ひぃ!!」
200:
ブンッ
八岐大蛇「む? なんじゃ、まだ起きるのか」
魔法使い「戦士さん!!」
戦士「・・・はぁ・・・はぁ・・・その娘には手を出すな!!」ボタボタ
八岐大蛇「ほぅ。なかなか仲間思いなやつじゃのぉ」
魔法使い「戦士さん!! 血が!!」
戦士「・・・・・・ははは、大丈夫さ。君は死んでも守るからね」ボタボタ
魔法使い「・・・戦士さん」
戦士「・・・さぁ!! 八岐大蛇よ!! 食うなら私を食うがいい!! だがこの娘と魔法使いちゃんは許してやってくれ!!」ボタボタ
八岐大蛇「・・・・・・ほぅ?」
戦士「頼む!! 私の最後の願いだ!!」ボタボタ
八岐大蛇「まぁよかろう。そちは美味そうじゃしのぉ」
戦士「・・・ありがとう」
魔法使い「そ、そんな!! 駄目です!!」
戦士「・・・いいんだ。どうせ私は長くない。だったら私が死ねば済む話しだ」
201:
魔法使い「でもっ・・・でも!!」
戦士「・・・いいんだよ。約束しただろ。命をかけてでも守るってね」
魔法使い「そんな!! そんな!!」
八岐大蛇「ではお別れじゃ。ではな、戦士よ」
戦士「・・・あぁ」
ガブッ
ゴクンッ
八岐大蛇「・・・ふむ。美味であった」
魔法使い「戦士さああああああああああん!!」
202:
_____
___
_
戦士(・・・・・・暗いな)
戦士(そうか・・・そういえば食べられたんだったな)
戦士(なんか体もベタベタするし・・・・・・)
戦士(胃液か血かもわからんな・・・)
戦士(・・・・・・でも最後まで正義を貫けたよな?)
戦士(魔法使いちゃんも娘ちゃんも元気でやっていける事を願うよ・・・)
戦士(それにしても・・・)
戦士「・・・・・・やっと死ねる」
勇者「誰が死なすかよ」ヒュン
204:
戦士「ゆ、勇者・・・?」
魔法使い「勇者様!!」
勇者「おぉ。ヌメヌメしてる。きたねっ」
魔法使い「勇者様!!」
戦士「貴様・・・何故・・・うぐっ」ドクドク
勇者「いいからお前はこれでも食ってろ」
戦士「むぐっ!?」
魔法使い「ちょ!! 勇者様!! 薬草は食べるものじゃありません!!」
勇者「あ、そうなの? 使い方しらんかった」
魔法使い「何やってるんですか!!」
八岐大蛇「貴様・・・。高尚の妾の食事を邪魔するとはなにごとじゃ」
勇者「あん? 現代語でしゃべろよ? 何言ってるかわかんねえよ」
八岐大蛇「貴様・・・どうやら死にたいようじゃな」
魔法使い「なんでいきなり喧嘩腰なんですか!!」
戦士「・・・・・・勇者」
205:
魔法使い「戦士さん!! 良かったです!!」
勇者「あん? なんだ、元気になってなによりだな」
戦士「勇者・・・何故私を殺させてくれなかった・・・」
魔法使い「え? え?」
勇者「おいおい、まだしゃべんなよ。ギリギリ動ける程度だろ?」
戦士「黙れ・・・。何故だ・・・。今なら華々しく死ねたのに」
魔法使い「戦士さん何言ってるんですか!!」
勇者「なんだよ。生き残って感謝されてこそ怒られる義理はねえぞ?」
戦士「黙れ・・・。・・・貴様に私の何がわかる!!」ギリギリ
魔法使い「戦士さん!!」
勇者「あん? わかるか馬鹿」
戦士「だったら・・・」
勇者「はぁ・・・。だったら教えてやるよ」
勇者「俺は死神なの。お前の死ぬ時は俺が決めるの。わかる?」
206:
戦士「そんな理由で・・・」
勇者「そう。そんな理由。俺は生きたがってるやつを殺すのは好きだけど死にたがってるやつを殺す趣味はないの」
勇者「死にたがってるやつが無理矢理生きさせられる。死にたい死にたい思いながら生きてるやつが死に場所を探して生きる」
勇者「そして生きたいと思った時に殺す。あぁ、考えただけでもゾクゾクするねえ!!」
戦士「この変態が・・・」
勇者「褒め言葉として受け取っておくよ」
戦士「このっ・・・」
勇者「お前、ここ数日楽しくなかったか?」
戦士「・・・え?」
勇者「一緒に飯食って美味い美味い言って、一緒に寝て、一緒に冒険してどうだった?」
戦士「・・・それは」
勇者「楽しかったろ?」
戦士「・・・・・・」
勇者「お前が何してどんな理由で死に場所を探してんのか知らん。どんな心の闇抱えてんのかは知らん。だが」
勇者「お前は生きてていいんだよ」
207:
戦士「・・・・・・」
勇者「まっ、そういうことだ。生きたくなったらいつでも言えよ。殺してやるから」
魔法使い「勇者様!!」
戦士「・・・私は生きてていいのか?」
勇者「さっき言ったろう」
戦士「・・・私はいらない子じゃないのか?」
勇者「バーカ。お前が居なくなったら誰が飯作んだよ」
戦士「・・・私は化物じゃないのか?」
勇者「ちげーよ、アホ」
戦士「そうか・・・そうだったのか・・・」
戦士「・・・・・・私は生きてていいのか」
勇者「よしっ、殺す!!」
魔法使い「台無しです!! 勇者様!!」
208:
八岐大蛇「茶番は終わったのか?」
勇者「何? わざわざ待っててくれたの? ショ○カーですか?」
八岐大蛇「妾に舐めた口を聞くとはよっぽど死にたいらしいのぉ。安心せえ、すぐに殺してやる」
勇者「そっくりそのままお返しするよ」
魔法使い「っていうか勇者様!! 防具はどうしたんですか!?」
勇者「あん? 売った」
魔法使い「何やってるんですか!!」
勇者「だって煙草吸うにもライターなかったんだもん」
魔法使い「それでもそこまでかからないじゃないですか!!」
勇者「ジッ○のいっちゃんいいやつ買った」
魔法使い「馬鹿なんですかあなたは!! ていうか早くナイフ構えてくださいよ!!」
勇者「それも売った」
魔法使い「何しに来たんですか!!」
209:
勇者「まあまあ怒るなって」
魔法使い「怒るに決まってるじゃないですか!!」
勇者「戦士は・・・まあ無理だな。動けそうにないわな」
戦士「・・・すまん」
勇者「戦士が戦死しなくてなによりだ」
魔法使い「・・・・・・寒いです。勇者様」
勇者「だったらお前の火術で暖めろよ」
魔法使い「そういう意味じゃないです!!」
勇者「まあ落ち着けよ。ナイフは売ったつったが誰も武器はないなんて言ってねえだろ」
魔法使い「・・・え?」
勇者「まあ見てなって。ちょっと待ってろよ、今勇者セットから出すから」ゴソゴソ
八岐大蛇「ふんっ!!」ブンッ
勇者「おっと、あぶねえ。さっき待ってくれたならもうちょい待てよ」ヒュン
八岐大蛇「黙れ!! 妾は腸が煮えくり返っておるのだ!!」
210:
勇者「はいはい。今出しますよーっと。おっ、あったあった」ガチャ
戦士「・・・なっ!?」
魔法使い「え、それって・・・」
勇者「勇者七つ道具の1つだ」
魔法使い「なんでそんなの持ってるんですか!?」
勇者「そりゃ裏のルートからちょちょいと」
戦士「流石噂通りの男だな・・・」
勇者「そりゃどうもっと」
八岐大蛇「・・・なんじゃそれは」
勇者「あぁ。これは人類の科学の結晶だよ」
勇者「てれれてってれー。サブマシンガンー」
戦士「なんと・・・」
212:
八岐大蛇「ほう・・・。それが人類の武器か」
勇者「ああ。まだ市場じゃ出回ってないだろうがな」カチャカチャ
魔法使い「な、なんでそんなもの持ってるんですか!!」
勇者「死神ともなると悪い友達がいっぱい居るんだよ。あの街の武器屋さん怖かったろ?」
魔法使い「そ、そういえば・・・。ていうかあそこで買ったのこれだったんですか」
勇者「ちょっと値が張ったけどお友達価格で買わせて貰ったんでね」
八岐大蛇「まあなんでもよい。どうせ結果は変わらん。さっさと来るがよい。来ないなら妾から行くがな!!」ブンッ
勇者「だからあぶねえっての。こっちは防具がねえんだよ」ヒュン
八岐大蛇「ええい、ちょこまかと!!」
勇者「それが俺の戦い方なんでね。よっと」ジャキッ
勇者「それじゃあ・・・こっちからも行かせてもらうぜ」ダダダダダダダダダ
魔法使い「うわっ!! すごい音です!! これなら!!」
八岐大蛇「・・・ふむ。こんなもんかえ?」
魔法使い「・・・え?」
213:
八岐大蛇「これじゃったら戦士の剣の方がよっぽど痛かったのぉ」
勇者「あーやっぱり対人間用の武器じゃダメか」
魔法使い「ちょ、ちょっと!! どうするんですか!!」
戦士「これは私が行くしか・・・ぐっ!!」ズキッ
勇者「お前は無理すんなっての。ていうかガキは知ってんだろ。こういう時はどうするかは」
魔法使い「・・・あっ」
勇者「そういうこった。オラ、もういっちょ行くぞ」ジャキッ
八岐大蛇「なんぼでもくるがよい。そんなの痛くも痒くもないしの」
勇者「じゃっ、遠慮なく」ダダダダダダダダ
八岐大蛇「じゃから無駄じゃと」
ヒュン
八岐大蛇「・・・がああああああ!!」ダダダダダダダダ
戦士「な!? 一体何を!?」
勇者「ちょっとした移動魔法応用編さ」
214:
八岐大蛇「じゃ、じゃが妾はまだ・・・」
勇者「ほら、もういっちょ」ダダダダダダダダ
ヒュン
八岐大蛇「がはっ!!」ダダダダダダダダ
勇者「まだまだ!!」ダダダダダダダダ
ヒュン
八岐大蛇「がああああああああああ!!」ダダダダダダダ
勇者「あーらよっと」ダダダダダダダダダ
ヒュン
八岐大蛇「ぐわあああああああああああ!!」ダダダダダダダダ
勇者「やべー超楽しいいいいいいい!!」ダダダダダダダダ
戦士「あ、悪魔だ・・・」
魔法使い「そりゃ死神なんて名前つきますよ・・・」
215:
勇者「アハハハハハハ!! ・・・ってあれ?」ダダダダダダダ・・・
戦士「・・・どうした勇者!?」
勇者「弾切れだ」
戦士「な!?」
八岐大蛇「ぐ、ぐ・・・。やっと終わったか・・・」
戦士「・・・・・・もう少しだったのに」
八岐大蛇「残念だったのぉ・・・。だがもう終いじゃ・・・」
勇者「まじかよ。やっちまった・・・」
戦士「ちっ、勇者この剣を使え!!」
勇者「いや、使いたいのは山々なんだがな」
戦士「・・・何か問題でもあるのか?」
勇者「訓練してない奴が使うと骨折れんだよ」プラーン
戦士「なっ・・・なっ・・・」
216:
八岐大蛇「・・・・・・万策尽きたようじゃな」
勇者「ああ、俺はもう何も出来ねえよ」プラーン
八岐大蛇「・・・・・・妾をここまで追い込んだ者は初めてじゃったが・・・残念だったな・・・。貴様にはここで死んでもらう」
勇者「いやいや、そういうわけには行かねえよ」
八岐大蛇「・・・・・・何?」
勇者「バーカ。まだ俺は何もできねえって言っただけじゃねえか。なんか勘違いしてるみたいだがこの戦いは俺とお前だけのもんじゃねえんだぞ?」
八岐大蛇「・・・・・・だが戦士はもう」
勇者「アホかお前は。こっちにはもう一人頼もしい仲間がいるじゃねえか」
八岐大蛇「まっ、まさかっ!!」
勇者「守られるだけの女じゃねえってとこを見せてやんな」
勇者「魔法使いよ」
魔法使い「業火術!!」ゴウッ!!
217:
八岐大蛇「ぐ、ぐわあああああああああああああああああああああああ!!」ゴウッ!!
魔法使い「・・・やったんですか?」
勇者「ああ。お手柄だ。クソガキ」
魔法使い「やった・・・やったー!!」
戦士「・・・まさか魔法使いちゃんにこんな力があったなんて」
魔法使い「見ました、勇者様!? 私が倒しましたよ!?」
勇者「ちゃんと見たっての。騒ぐな、馬鹿」
魔法使い「・・・私ちゃんと役にたてましたよね。・・・もう足で纏いじゃないですよね」ウルッ
勇者「・・・・・・自惚れんな、馬鹿っ」プイッ
魔法使い「・・・アハハ」ウルッ
八岐大蛇「・・・バカな奴らじゃ」
魔法使い「なっ!?」
戦士「まさかまだ!?」
218:
勇者「いや、もう襲ってはこねえよ」
八岐大蛇「・・・・・・貴様らは・・・小娘一人のために・・・・・・後悔するがいい・・・」ゴウッ
魔法使い「・・・え? どういうことですか?」
戦士「・・・いや、私にもわからん」
八岐大蛇「・・・・・・命の重さを・・・・・・思い知るがいい・・・そして・・・・・・自分の愚かさを呪うがいい・・・・・・」
パラッ
魔法使い「・・・灰になっちゃいましたね」
戦士「・・・それにしても今のは一体どういう意味だったんだ?」
勇者「・・・・・・」
魔法使い「うーん・・・。まあ、悩んででも仕方ないですしね。帰りましょう」
戦士「・・・そうだな。ほら、娘ちゃんもこっちにおいで」
娘「あ、はい!! すみません!! 本当にありがとうございました!!」
勇者「あぁ、居たのか。気づかなかったぜ」
魔法使い「勇者様!!」
219:
娘「すみません・・・。私何もできなくて・・・」
魔法使い「いえいえ、良いんですよ。お気持ちだけで嬉しいですよ」
娘「でも・・・」
勇者「いいんだよ。お前の親父から報酬はたっぷり貰ったから」
娘「え?」
魔法使い「身も蓋もない話ししないでください!! ていうかその報酬はどうしたんですか!?」
勇者「だからジッ○に」
魔法使い「勇者様の馬鹿あああああ!!」
戦士「ま、まあ何はともあれ皆無事で良かったよ」
勇者「死にたがってたやつがよく言うぜ」
戦士「そ、それは・・・」
魔法使い「もういいじゃないですか!! ほら、早く帰りましょう!!」
勇者「・・・あぁ、そうだな」
魔法使い「・・・・・・勇者様?」
220:
勇者「いってええええええええええええええええええ!!」
魔法使い「・・・え? あ、あぁ!! 骨折してたの忘れてました!!」パッ
勇者「むかついた。置いてく」
魔法使い「あ、ちょ、わ、わざとじゃないんですよ!!」
勇者「移動ま」
魔法使い「あああああ、待ってください!!」
戦士「ほら、魔法使いちゃん。私の手を掴んで!!」
魔法使い「は、はい!!」
ヒュン
221:
_____
___
_
勇者「・・・・・・着いたようだな」
魔法使い「・・・え? ・・・勇者様何言ってるんですか。場所間違えてますよ? おっちょこちょいですね」
戦士「・・・・・・これは」
娘「・・・・・・え?」
魔法使い「ほ、ほらっ。早くちゃんとした場所に戻りましょう。ね?」
勇者「いや、ここで・・・」
魔法使い「そんな訳ないじゃないですか!!」
戦士「・・・・・・」
勇者「現実を見ろ。魔法使い」
魔法使い「嫌です!! 聞きたくないです!! やめてください!!」
勇者「この焼け野原があの村だ」
娘「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
222:
戦士「・・・そんな・・・私は・・・」
勇者「言ってたろ、あいつが。命の重さを思い知れって。自分の愚かさを呪えって」
魔法使い「そんな・・・そんな・・・!!」
勇者「受け止めろ。これがお前らの行動の招いた結果だ」
戦士「・・・・・・私は何てことを」
魔法使い「あっ・・・あっ・・・」
娘「」ダッ
魔法使い「娘さん!!」
娘「無いっ!! 無いっ!! 私の家が!! ここにあったはずなのに!!」
魔法使い「・・・・・・」
娘「どこ!? どこなの!? 私の家はどこ!? どこどこどこどこ!?」
223:
戦士「・・・そんな・・・私は・・・」
勇者「言ってたろ、あいつが。命の重さを思い知れって。自分の愚かさを呪えって」
魔法使い「そんな・・・そんな・・・!!」
勇者「受け止めろ。これがお前らの行動の招いた結果だ」
戦士「・・・・・・私は何てことを」
魔法使い「あっ・・・あっ・・・」
娘「」ダッ
魔法使い「娘さん!!」
娘「無いっ!! 無いっ!! 私の家が!! ここにあったはずなのに!!」
魔法使い「・・・・・・」
娘「どこ!? どこなの!? 私の家はどこ!? どこどこどこどこ!?」
224:
戦士「・・・これが・・・私の・・・目先の事しか考えていなかった罰なのか・・・」
勇者「わかったろ。お前がどんだけ馬鹿だったか」
戦士「・・・・・・」
魔法使い「・・・・・・」
娘「あはははははははははははははははははは!!」
勇者「この光景を見てもまだ死にたいって言えるか」
娘「そっかーカクれんぼか!! おうちとパパをさがせばイイんだねー?」
戦士「・・・・・・いや・・・私はこの罪を背負って生きてかなければならない・・・・・・どんな顔をして彼らに会いに行けるというのだ・・・」
勇者「そういうことだ。お前の行動で生ききたかった奴が大量に死んだんだ」
戦士「・・・・・・・うっ」
勇者「もう死にてえなんて言うんじゃねえぞ」サッ
娘「パパどこー? 隠れんぼしてないで出てきてー? パパー? パパー?」
戦士「・・・うっぐ・・・そうだな・・・・・・すまない・・・娘ちゃん・・・・・・皆・・・・・・」
225:
村人「娘ええええええええええええええええええええ!!」
226:
娘「・・・・・・・・・・・・・・・パパ?」
戦士「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
娘「・・・パパああああああああああああああああああああああああ!!」ダッ
村人「娘ええええええええええええええええええええええええええ!!」ダッ
ダキッ!!
娘「パパ!! どこ行ってたのよ!! 心配したんだからね!!」
村人「良かった・・・。生きてて・・・本当に良かった!!」
娘「パパ!!」ギュッ
村人「娘!!」ギュッ
魔法使い「・・・え? ・・・え? どういうことですか?」
戦士「・・・勇者。私は幻覚でも見ているのか?」
勇者「お前に何が見えているかは知らんが俺には親子が抱き合ってる姿が見えるな」
戦士「・・・・・・一体どういうことだ?」
227:
おお!! 娘ちゃんが生きてる!!」
「良かった!! 助かったんだな!!」
「やったー!! 呪いが解けたんだ!!」
「・・・でもやっぱり家はねえな」
「そんなもんこれから作っていけばいいだろ!!」
「・・・そうだな!! 今は娘ちゃんの無事を祝おう!!」
「「「「「「バンザーイ!! バンザーイ!! バンザーイ!!」」」」」」」
戦士「ほ、他の皆も・・・。お、おい!! 勇者一体どういうことだ!?」
魔法使い「そ、そうですよ!! これは一体どういうことなんですか?」
勇者「あん? 俺が知るかよわけねえだろ」
勇者「・・・でもまあ。そうだな」
勇者「死神のご加護でもあったんじゃねえの?」
228:
勇者「まっ。なんにせよよかったじゃねえか。さっさと部外者は去ろうぜ」
魔法使い「・・・そうですね!! ハッピーエンドなら良いんですよね!!」
戦士「・・・君は」
勇者「あ? なんだよ?」
戦士「・・・いや、いうのは野暮ってもんだな。なんでもないよ」
勇者「あぁ、そうかよ。だったら先急ぐぞ。俺は宿屋で寝たいんだよ」
戦士「・・・あぁ。そうだな」
村人「ゆ、勇者様〜!!」
勇者「あん?」
229:
村人「黙って行っちゃうなんて酷いじゃないですか!!」
勇者「なんだよ? 俺は先急いでんの」
村人「せ、せめてお礼くらいは・・・」
勇者「はぁ? 俺は前金貰っただろ? 今更いらねえよ」
村人「で、ですがここまでしていただいて・・・。せめてお金くらいは・・・」
勇者「あのなぁ。これから家立てたり畑作ったりなんだりすんのに金かかんだろ。俺に渡してる余裕なんかあるわけねえだろ」
村人「しかし・・・」
勇者「はぁ、わかったわかった。貰うよ」
村人「で、ではっ」
勇者「今はいらねえよ。さっきのでたっぷり貰ったろ。これは貸しだ」
村人「え?」
勇者「俺がまたここに立ち寄った時にでも酒を奢れ。絶対忘れんなよ」
村人「勇者様・・・。はいっ!! わかりました!!」
勇者「ぜってえ忘れんじゃねえぞ? わかったな。じゃあな。あばよっ」
村人「・・・・・・はいっ!! ありがとうございます!!」
230:
娘「・・・ところでパパ。パパはなんで無事だったの?」
村人「・・・あぁ。それはな」
_____
___
_
勇者「おい。頼んだとおり全員集めたか?」
村人「はいっ。これで全員です」
村人1「おいおい。勇者様。俺らはなんで集められたんだ?」
勇者「えーこほん。今日はなんとこの勇者様があの八岐大蛇を退治してくださります」
村人2「な、なんだって!!」
村人3「それは本当ですか!?」
勇者「はい。ですが条件があります」
村人4「何だよ!! あの忌々しいやつを退治してくれるならなんでもいいぜ!!」
村人5「そうですよ!! お願いします!!」
勇者「その条件というのはこの村の建物を全て焼き払います」
村人6「なっ!!」
村人7「なんじゃと・・・」
231:
ザワザワ
勇者「その条件で良いのならやつを倒します」
村人8「い、家が焼かれるのは・・・」
村人9「いくらなんでもねぇ・・・」
ザワザワ
村人「・・・・・・」
勇者「やれやれ。なんでもいいって言ってこれかよ」
勇者「いいか聞け!! クズ共!!」
勇者「家なんかはいつでも建てられんだよ!! それこそ死ぬ気になりゃな!!」
勇者「だがな!! 死んだやつは死ぬ気になっても生き返らねえんだよ!!」
勇者「お前らの大事な娘や息子が死んでもいいっていうのかよ!!」
勇者「どうなんだよ!! クズ共!!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
232:
村人8「・・・そうだよな。命より大切な物はねえよな」
村人9「ええ!! そうね!!」
ソウダソウダー!!
村人「皆・・・」
勇者「やれやれ。本当に目先のことしか考えられねえな人間ってのは」
勇者「じゃあお前ら。お前らにこれを配るから全員行き渡ったら、皆で手を繋いで円を作れ。異論は認めねえ」
勇者「あん? これは何かって? お前らこんなのも知らねえのかよ?」
勇者「はぁ・・・。いいか? これは直前まで居た街に戻ってこれる代物だ」
勇者「原理? 知るか馬鹿。んなもん自分で調べろ」
勇者「・・・・・・おい、準備はいいか?
勇者「よし、んじゃお前らをこれから違う場所に送る」
勇者「いい子にしてろよ? なんたって俺を何日も泊めてくれた命の恩人の家だからな」
勇者「あ、そうそう。こっちに帰ってくるタイミングを言ってなかったな」
勇者「カウンターにライターが着いたら戻ってこい。んじゃあな」ヒュン
233:
娘「・・・そんなことがあったんですか」
村人「あぁ。だから全部勇者様のおかげだよ・・・」
娘「なのにあんなに怖がってしまって・・・。申し訳ないことをしました・・・」
村人「それはまた今度謝らなくちゃいけないな・・・」
娘「・・・そうね」
村人「だが、勇者様は今度またここに立ち寄るって言った」
娘「本当!?」
村人「ああ。だからその時にちゃんと謝ろうな」
娘「はい!」
村人「ふふふ・・・。それにしてもいい男だったな。彼は」
娘「・・・そうね」
村人「・・・おい、お前まさか」
娘「・・・えぇ。今度来るまでには綺麗になってないとね」
村人「・・・あぁ。そうだな」
234:
魔法使い「・・・やっぱり勇者様が何かしたんですね?」
勇者「は? なんの話だ? 勝手に感謝されただけだよ」
戦士「・・・君は本当に」
勇者「何だよ。まっ、そりゃタダで酒が飲めるなら万々歳じゃねえか。むしろ儲けたよ」
戦士「・・・魔法使いちゃんの言った通りだったな」クスッ
魔法使い「でしょ?」
戦士「ああ。ビックリするほどいい男だな。彼は」
魔法使い「そうですよね!! そうですよね!! わかっていただけましたか!!」
戦士「ふふっ。魔法使いちゃんがゾッコンな理由もわかったよ」
魔法使い「なっ/// そ、それはっ///」
勇者「なんだよ二人してゴチャゴチャ喋って。うるせえな」
魔法使い「なななな何でもないですよ!!////」
勇者「ったく。本当に女が二人集まるとうるせえな」
魔法使い「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
235:
戦士「なんだ。君は気づいていたのか」
勇者「当たり前だ」
魔法使い「・・・え、ちょっと、どういうことですか」
勇者「なんだ、お前気づかなかったのかよ?」
魔法使い「何がですか!!」
戦士「あはは、ごめんね。私は女なんだよ」
魔法使い「・・・・・・へ?」
勇者「なんつー間抜けな面してんだよ、お前は」
魔法使い「え、だって、その・・・えー!?」
戦士「ごめんね。なんか騙したみたいになって」
魔法使い「なんで言ってくれなかったんですか!!」
戦士「別に騙してた訳じゃない。聞かれなかったから答えなかっただけさ」
魔法使い「た、確かに・・・」
236:
戦士「それで、勇者。私は生きる目標を見つけたよ。生きたくなったよ」
勇者「ほー。そうかよ」
戦士「私を殺すかい?」
勇者「・・・まっ。その目標が叶うまでは待ってやるよ」
戦士「ふふっ。そしたら君は私を殺せなくなるぞ?」
勇者「あん? どういう意味だ?」
戦士「内緒だ。馬鹿者」
勇者「意味わからん」
戦士「・・・魔法使いちゃん」コソッ
魔法使い「は、はい」
戦士「君とはライバルになりそうだね?」コソッ
魔法使い「・・・・・・え?」
237:
戦士「そんだけ。じゃっ」
魔法使い「え? え? それって」
勇者「おい、何喋ってんだよ。さっさと行くぞ。じゃねえと置いていくぞ」
戦士「待ってくれよ、勇者。私はどこまでもついていくよ」
勇者「あん? ・・・まぁ魔王城までだけどな」
戦士「いいや。私はその先までも着いて行くよ」
勇者「は? 何言ってんだお前は?」
戦士「ふふっ。直にわかるさ」
勇者「あぁ、そうかよ。まあどうでもいいけどよ。おい、ガキ。本当に置いていくぞ?」
戦士「私は別に二人でもいいんだよ?」
魔法使い「・・・です」
勇者「あん?」
魔法使い「そんなの駄目ですううううううううううううううう!!」
238:
これで終わりです!
長かったですが読んでくださった方ありがとうございます。
雰囲気を大事にされてる方は申し訳ありませんでした・・・汗
これからしばらく忙しいので一気に更新できないと思いますが
需要があるようなら少しづつでも更新していければいいかなと思います。
読んでくださった方ありがとうございました!
241:
乙!
続きも期待してる
242:
おつ
魔法使いちゃんかわいい
244:
需要?そんなもんあるに決まってんだろ
結局村は八岐大蛇の呪いで燃やされたんだよな?
246:
長編の予感
248:
沢山のコメントありがとうございました!!
>>244,245
一応八岐大蛇の呪いのつもりです!!
勇者「この村がどうなってもか?」
村人「・・・・・・気づいてらしたんですか」
という伏線()をどこかで入れたので・・・笑
>>246
自分自身も予想以上に長くなってびっくりです汗
もっとパパッと終わらせるつもりだったんですが・・・笑
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
あと勇者ポイントは先に使われている方がいらっしゃったんですね汗
違う作者で申し訳ないです・・・汗
面白そうなので是非探して読んでみたいです!
それでは今日は少しですが投下して行たいと思います
249:
勇者「お前ら正座しろ」
魔法使い「で、ですがここ砂漠の上・・・」
勇者「せ・い・ざ」
魔法使い「・・・はい」
戦士「あぁ・・・」
勇者「さて、問題です。何故お前らは正座させられてるんでしょうか」
戦士「・・・はい」アツイ
勇者「はい、戦士君」
戦士「水を飲みすぎて何度も勇者に街まで戻って貰い迷惑をかけてるから」
勇者「それもあるが今回は目を瞑る。次」
魔法使い「・・・はい」アツイ
勇者「はい、クソガキ」
魔法使い「く・・・煙草がなくてイライラしてるから」
勇者「お前水禁止な」
魔法使い「えぇっ!?」
250:
勇者「お前ら本気でわかってないのか?」
魔法使い「・・・」
戦士「・・・」
勇者「はぁ・・・。だったら教えてやるよ」
勇者「何で毎晩毎晩俺のテントに入ってくるんだよ!!」
魔法使い「・・・え? そんなことですか?」
戦士「器が小さいな君は・・・」
勇者「しばくぞお前ら」
252:
魔法使い「だって砂漠の夜は寒いじゃないですか」
勇者「だから勇者七つ道具2を売って温かい布団を買ったじゃねえか!!」
魔法使い「え!? あれ売っちゃったんですか!?」
勇者「あぁ。重いし扱いづらいしな」
戦士「本音は?」
勇者「弾買う金がねえ」
魔法使い「煙草の買いすぎですよ・・・」
戦士「だから言ったじゃないか。私は布団なんていらないと」
勇者「ふざけんな。俺は一人でゆっくり寝たいから買ったんだよ。なのにお前らのせいでむしろ暑苦しいんだよ」
戦士「だったら移動魔法でテントに送り返せばいいじゃないか」
魔法使い「そ、そうですよ!!」
勇者「ガキ。お前は黙ってろ」
魔法使い「何でですか!!」
勇者「今回は珍しくお前よりも戦士が悪いからだ」
魔法使い「・・・え?」
254:
戦士「私の何が悪いというのだ」
勇者「ったりめえだろ!! 何度もテメエをテントまで送り返したのになんで何度も戻ってくんだよ!!」
戦士「私は諦めが悪いからな」
勇者「ガキみてえに黙って寝てるならまあ100歩譲って許したよ」
魔法使い「戦士さん・・・何したんですか・・・」
戦士「はて」
勇者「はて、じゃねえよ!! 何ちゃっかりベルト外そうとしてんだよ!!」
魔法使い「なっ/// 何してるんですか戦士さん!!」
戦士「魔法使いちゃんはまだしも私は合法だ。ならいいじゃないか」
勇者「よかねえよ、アホ」
戦士「それにしても何なんだ、あのベルトは? 妙にゴツゴツしてて外せないし」
勇者「俺の特製ベルトだからな。こんな時用に作ってんだ。そう簡単には外せねえよ。諦めな」
戦士「・・・まあ仕方ない。勇者に嫌われては元も子もない。潔く静かに横で寝るよ」
魔法使い「そうしてください」
勇者「だから一人で寝かせろつってんだろ」
255:
戦士「しかし君の移動魔法は本当に便利だね。自分と体に触れている物ならどこへでも飛ばせるのか?」
魔法使い「あ、確かにそれ気になりますね」
勇者「どこへでもってわけじゃねえよ。・・・説明しなきゃダメか?」
戦士「できれば」
勇者「じゃあやだ」
戦士「・・・・・・」
魔法使い「・・・・・・」
勇者「・・・はぁ。わかったよ。言えばいいんだろ、言えば」
魔法使い「最初からそうしてくださいよ」
戦士「君は本当に素直じゃないな」
勇者「黙れ。はぁ・・・長くなるが途中で寝るんじゃねえぞ」
戦士「うむ。心得た」
魔法使い「はい!!」
勇者「特に魔法使い」
魔法使い「名指しですか!?」
256:
勇者「いいか、耳の穴かっぽじって聞けよ。勇者様の偉大なる話だ。こんな高尚な話し他じゃ聞けねえからな」
戦士「うむ」
勇者「あー。まあ移動の種類さえ知ってりゃ十分だろ」
魔法使い「え、種類があるんですか?」
勇者「いいから黙って聞いてろ馬鹿。まあ、馬鹿のお前にわかるかどうかは知らんがな」
魔法使い「馬鹿にしないでください!!」
戦士「それで種類というのは?」
勇者「あぁ。その種類ってのは4つに分かれんだ。視界、記憶、距離、対象といった4つだ」
魔法使い「それぞれどう違うんですか?」
勇者「今から言うっての。まず視界だな。これは視界内のある特定の位置に移動、転送する方法だ。これが一番魔力の消費も少ない」
戦士「ふむ」
魔法使い「・・・??」
勇者「やっぱりわかってねえじゃねえか。馬鹿。簡単に言や俺が敵の攻撃を躱す時に使ってる奴だ」
魔法使い「あぁ。なるほど。だったら最初からそう言ってくださいよ」
勇者「むしろさっきの説明でわかんねえのはお前くらいだよ」
257:
勇者「次に記憶だ。もう最初から馬鹿にわかるように言うがこれは俺がわざわざ街に戻って水を取りに行く時に使ってる奴だ」
魔法使い「なるほど」フムフム
戦士「やっぱりそれも怒ってるじゃないか・・・」
勇者「そりゃだるいからな。もちろん一回でも見たことがあるとこにしか使えないからな。記憶が曖昧でも駄目だ」
戦士「なるほど。しかしすごいな。それでは毎回街をしっかり覚えてるというのか」
勇者「んなことしてたら頭がパンクしちまうだろうが。入口だけ覚えてりゃいいんだよ」
戦士「それは随分要領がいいな」
勇者「何年使ってると思ってんだよ。嫌でも手の抜き方くらい覚えるわ」
戦士「そういうものか」
勇者「根本が真面目なお前にはわからんか知れないがな。んで次に距離だ。これは一番簡単だが危険なやつだな」
魔法使い「え? 簡単なのに危ないんですか?」
勇者「簡単な物が安全で安心とは限らねえんだよ。物を得るのには物を盗るのが一番楽だがその後の事を考えたら安心は出来ねえだろ?」
魔法使い「なるほど・・・」
258:
魔法使い「でも距離はどこが危険なんですか?」
勇者「わかんねえからってすぐ人に聞くんじゃねえよ。ちっとは自分で考えろ。考える力を養え」
魔法使い「・・・うむむ?」
戦士「・・・そうか。なるほどな」
勇者「戦士はわかったか」
魔法使い「え? 本当ですか?」
勇者「流石だな。誰かとは大違いだ。お前は選んで正解だったよ」
魔法使い「誰のことを言ってるんですか!!」
勇者「逆に誰だと思うんだよ」
魔法使い「・・・わかってますよーだ」イジイジ
戦士「私は二人旅でもいいんだぞ?」
魔法使い「それは駄目です!!」
勇者「ああ。それはダメだ。あまりにも危険すぎる。主に俺の貞操が」
魔法使い「・・・ほっ」
戦士「ふふっ。それは残念だ」
259:
勇者「じゃぁ一応答え合わせと行こうか」
戦士「あぁ、そうだな。まず簡単な理由は場所などを特に思い描かなくても距離さえ設定すれば自動でそこまでたどり着くからだろう」
勇者「ほう。んで?」
戦士「危険な理由だがそれは長所でもある距離を設定するだけという点だろう」
魔法使い「どういうことですか?」
勇者「馬鹿は黙ってろ」
魔法使い「うぅ・・・」
戦士「まあまあ。で、何故かといえばそれ以上でも以下でもないからだ」
魔法使い「???」
戦士「あー、魔法使いちゃん? もしその設定した先に大きな岩があったらどうする?」
魔法使い「・・・あ!! とっても危険です!!」
戦士「そういうことだよ」
魔法使い「なるほど・・・」
勇者「ちなみに城に侵入した時にはそれを使った」
魔法使い「何してくれてるんですか!?」
260:
勇者「無事だったからいいじゃねえか。結果オーライだろうが」
魔法使い「死んでたらどうするつもりだったんですか!? というかどうやって位置を計算したんですか!?」
勇者「目算」
魔法使い「・・・命があって良かったです、私」
戦士「よく無事だったな・・・」
勇者「まっ、慣れだ慣れ。お前も一々剣降る時に角度だなんだ考えねえだろ?」
戦士「そういうものか」
勇者「そういうもんだ。んで、最後が対象だ。ぶっちゃけこれがいっちゃんダルい」
魔法使い「え? そうなんですか?」
勇者「あぁ。特に対象が動くものだったりしたらな。戦闘ではよくこれを使うがな」
魔法使い「あ、敵の内部から攻撃するあれですか?」
勇者「その通りだ。馬鹿でもわかる説明出来るとは・・・やっぱり俺はすげえな」
魔法使い「正解したのに馬鹿にされるんですか!?」
戦士「しかし何故だ?」
勇者「言うなればすべての複合だからな。移動魔法の集大成みたいなもんだ」
262:
戦士「なるほど・・・。確かに言われてみればな。視覚で相手を選び、それを記憶。そして貫くための距離を考えなくてはいけないのか」
勇者「そういうこった。頭も魔力も一番使うからな」
魔法使い「そうだったんですか・・・。移動魔法もなかなか大変だったんですね・・・」
勇者「だから俺をあまり酷使させるんじゃねえよ」
魔法使い「勇者様も私をライター替わりに使ってるじゃないですか」
勇者「ライター買うぞ」
魔法使い「それはもう、馬車馬のように使ってください!!」
戦士「ところで君の言ってたジッポだかはどうしたんだ? 相当いい物だったんだろ?」
勇者「あー。なくしちまった」
魔法使い「・・・またですかぁ? 本当に仕方ないですねぇ、勇者様はぁ」ニコニコ
勇者「俺は物持ちがわりいんだよ」
戦士「フフッ。聞くだけ野暮だったかな」
勇者「まっ、最初の質問に答えるなら知らねえところへの移動はほぼ不可能だな。それこそ正確な距離がわかってれば別だがな」
戦士「だからいきなり魔王城に行かないわけか」
勇者「そういうこった」
263:
魔法使い「はい!! 勇者様質問です!!」
勇者「時間の無駄。却下」
魔法使い「ちょ、ちょっと!! 酷くないですか!? かなりまともな質問ですって!!」
勇者「・・・はぁ。なんだよ、言ってみろよ」
魔法使い「前の村あるじゃないですか? あの時って勇者様の記憶の景色と魔法を使った時の景色が違ったじゃないですか? なのになんでちゃんとした場所についたんですか?」 
勇者「・・・魔法使いが・・・まともな質問・・・だと」
魔法使い「ちゃんとそう言ったじゃないですか!!」
勇者「まぁ答えるとすればあれは記憶と距離を使ったからだな。あそこのあたりに大きな木があったろ? そこからおおよその距離で跳んだんだよ」
魔法使い「・・・なんでわざわざそんな面倒くさい真似をしたんですか? まるで村が焼けるのを知っていたかのように?」クスッ
戦士「フフッ。そこは聞かないであげなよ」クスッ
勇者「久々に試したかっただけだよ。いいだろ。どうでも。おらっ、さっさと行くぞ」
魔法使い「あ、勇者様!!」
勇者「あん? なんだよ」
魔法使い「水がなくなっちゃいました!!」
勇者「干からびろ」
264:
_____
___
_
勇者「着いたな」
戦士「ふぅ・・・。しかし暑かったな・・・」
魔法使い「あぁ・・・干からびます・・・。水・・・、水・・・」
戦士「しかし門が閉まっているな・・・。どうしたのだろうか・・・」
勇者「ま、あそこに見張りの兵がいることだし聞きゃいいじゃねえか」
戦士「それもそうだな」
勇者「じゃあ頼むぜ、戦士」
戦士「・・・別にいいが何故君が聞かないんだ」
勇者「いや、俺コミュ症だから」
戦士「どの口が言う」
勇者「この口」
戦士「私の口で塞いでやろうか。そうすれば喋れるようになるかもしれんぞ」
勇者「もっと喋れんくなるは馬鹿」
266:
戦士「すまない、ここを開けてもらえないか?」
兵1「ならん!! ここから先は虫の一匹も通すことができん!!」
戦士「一体何故だ?」
兵2「今この国は鎖国をしておるのだ!! 余所者を入れることなどできん!!」
魔法使い「勇者様、鎖国ってなんですか?」
勇者「首の付け根あたりにあるやつ」
魔法使い「それは鎖骨です」
戦士「何をやってるんだ君たちは・・・」
兵1「何!? 勇者だと!?」
勇者「ん、ああ。俺が勇者だ。よろぴく」
魔法使い「気持ち悪いですよ、勇者様」
兵2「だったらなおさらダメだ!! 誰が勇者など通すか!!」
勇者「・・・あん?」
戦士「・・・何故だ?」
兵1「王様の命令だ。それ以上でも以下でもない」
267:
魔法使い「・・・勇者様ここの王様になにか迷惑をかけたんですか?」
勇者「なんで最初から俺が悪いって決めつけんだよ」
魔法使い「だったらなんだって言うんですか」
勇者「俺の格好良さに嫉妬してるんだろ。Shit!」
魔法使い「なんで急に英語なんですか・・・。でもここを通れないと先に進めませんよ・・・」
兵2「さあ、さっさと諦めて帰るんだな!!」
兵1「もうここに立ち寄るな!!」
魔法使い「こんだけ嫌われてたら話し合いもできなさそうですしね・・・」
戦士「仕方ないか・・・。どこか迂回出来るところでも探して・・・」
勇者「・・・はぁ。お前らは馬鹿かよ。さっきの説明はなんのためにしたんだ?」ポンッ
魔法使い「ちょ、ちょっと勇者様っ/// 頭に手を置いてどうしたんですか///」
戦士「・・・そうだったな」
勇者「そういうこった。見張りご苦労さん。じゃあな」ヒュン
兵1「なっ!? き、消えた!?」
兵2「い、一体どこに!?」
268:
勇者「はーい、到着でーす」ヒュン
魔法使い「えぇ!? ちょっと勇者様これ不法侵入じゃないですか!?」
勇者「いいんだよ。バレなきゃ犯罪じゃねえんだよ」
戦士「・・・相変わらずチートのような能力だな」
勇者「そりゃ勇者だからな。強くなきゃいけねえだろ」
戦士「・・・まぁそうだな」クスッ
勇者「そんなことより・・・平和が!! 平和が俺を呼んでいる!!」ダッ
魔法使い「はぁ・・・。本当にこの人は・・・」
戦士「あはは、まあまあ」
「侵入者だ!! 捕えろ!!」
勇者「何!? どこだ!?」キョロキョロ
魔法使い「私達ですよ、勇者様」
戦士「ちっ。もうバレたというのか」
勇者「そりゃ勇者の紋章外してなかったらな」
戦士「何で外さなかったのだ!?」
269:
勇者「いや、だってワッペン」
魔法使い「もうそれはいいですから!! 何気に入ってるんですか!!」
戦士「遊んでる場合ではない!! 来るぞ!!」
勇者「あぁ・・・。俺にはやらなきゃいけないことがあるからな・・・。さっさとかたを付けるぞ!!」
戦士「セリフは格好いいんだがな・・・」
魔法使い「タバコの為ですからね・・・」
兵1「貴様よくも舐めた真似を・・・」
勇者「んなもん突破される方がわりいんだろ」
兵2「自分の不始末は自分でかたを付ける!!」
勇者「出来るもんならやってみな!!」ヒュン
兵1・2「「」」クルッ
キンッ
戦士「なっ!! 二人共一斉に後ろを!!」
勇者「ありゃ? バレてる感じ?」
兵1「残念だったな!! 沈黙魔法!!」キュイン
271:
魔法使い「そんな!! 兵士さんが魔法を!? こうなったら火術!! ・・・あれ?」
戦士「なっ!! まずい!! 沈黙魔法をされたら!!」
勇者「・・・・・・っ!?」
戦士「いや、喋れるから。そういう効果じゃないから」
勇者「ぷはっ。なんだちげえのか」
兵2「だが残念だったな!! これでもう貴様は魔法を使えない!!」
勇者「あん? なんだそんなことかよ」ニヤッ
兵1「・・・なぜそんなに余裕があるのだ!!」
戦士「勇者!!」
魔法使い「流石勇者様です!! まだ勝ち筋があるのですね!!」
勇者「残念だったな。そう簡単に俺はやられたりしねえよ!!」
魔法使い「お願いします!! 勇者様!!」
勇者「参った。降参だ」プラーン
魔法使い「・・・・・・・・・は?」
272:
「「今だ!! 確保!!」」
勇者「ちょ、おい、痛えって。もっと優しくしろよ」
魔法使い「な、なにしてるんですか勇者様!!」
戦士「そうだ!! なんで諦めたんだ!!」
勇者「いや、だって俺移動魔法使えないと平均以下の能力だし」
戦士「なっ、なっ」
兵2「こっちのやつらも確保しろ!!」
「「はっ!!」」
魔法使い「え、あ、ちょっと!! やめてください!!」
戦士「くそっ!! 離せ!!」
「ええい!! 大人しくしろ!!」
勇者「そうだそうだ」
魔法使い「あなたはどっちの味方ですか!!」
274:
兵1「こいつらを牢に閉じ込めておけ!!」
「「はっ!!」」
勇者「あー。なんか懐かしい・・・この感じ・・・」
魔法使い「言ってる場合ですか!! どうするんですか!!」
勇者「そりゃお前、豚箱に入れられるに決まってんだろ」
魔法使い「その後ですよ!!」
勇者「まぁそれは追々考えりゃいいだろ」
戦士「君は捕まるのに慣れすぎだ・・・」
「いいからとっとと歩け!!」
勇者「あ、おい、ちょっと待ってくれよ。その前に煙草買わせてくれよ。もう我慢できねえんだよ」
「黙れ!! そんな時間はない!!」
勇者「あ、おい、馬鹿!! 俺の平和が!! 俺の平和があああああ!!」ズルズル
魔法使い「自分の心配より煙草の心配ですか・・・」
戦士「ふざけてる場合じゃないはずなんだがな・・・」
275:
ガチャン!!
兵3「ここで大人しくしてろ」
勇者「おーい、見張りさんよー。わざわざ手錠なんかつけんなよ。左手が下げれなくてだるいんだが」
兵3「捕まった奴が文句言うんじゃねえよ。じゃあな」スタスタ
勇者「おい、晩飯はいつ出るんだ?」
兵3「明日の朝まで我慢してな」スタスタ
勇者「おいおい、まじかよ。行っちまったし」
「ちょっと勇者様ああああ!! どうするんですかああああ!!」
勇者「お、なんだ、お前ら近くに居るのか。おーい、元気かー」
「そんなわけないじゃないですかああああああああ!!」
勇者「そんだけ叫べりゃ元気だろ」
「しかし、どうするんだ、勇者? 武器も取り上げられてしまった」
276:
勇者「そうだな。俺の勇者様セットも取り上げられちまったしな」
「だったらどうするつもりだ。このままでは捕らえられたままか、下手すれば殺されることだってあるぞ?」
「えええええ!! 殺されちゃうんですか!?」
勇者「まあまあ。落ち着けって。ちょっとは俺を見習えよ」
「それは勇者様がおかしいんです!!」
勇者「まあマイホームだしな。あぁ、やっぱり良いな、ここは。冷たい床、臭い部屋。たまんねえ」
「そんなこよりもだな、一体どうするつもりだ、お前は」
勇者「どうするも何も、なーんもしねえよ。寝て朝飯を待つだけだ。タダ飯が食えるなんて願ったり叶ったりじゃねえか」
「勇者!!」
勇者「まぁまぁ。今は黙って寝ようぜ。果報は寝て待てってな。じゃっ、おやすみ」
「お、おい勇者!!」
勇者「・・・・・・」
「ほ、本当に寝たのか・・・こいつは・・・」
「・・・仕方ないですね。私達もやることがないですし寝ますか。・・・こんなとこで寝れるとは思えませんが」
「あぁ、ここで寝られるやつの気がしれないよ・・・」
277:
_____
___
_
兵3「おい、起きろ。朝飯だ」
勇者「・・・ん? おぉ、もうそんな時間か。久々に一人だからぐっすり寝れたぜ」
兵3「いいからさっさと飯食いな。早くかた付けたいしな。ほら、お前らも食いな」
勇者「そうだぞ。ちゃんと食わねえと動くときに動けねえぞ」
「・・・はぁ、全く」
勇者「しかし靴履きながら寝たから足痺れちまったぜ。・・・よっと、脱げた。片手だと脱ぐのも大変だな」
兵3「そりゃかわいそうにな」
勇者「そう思うなら水持ってきてくれねえか? 喉カラカラなんだよ。おかわり」
兵3「はぁ・・・仕方ねえな。ちょっと待ってろ」スタスタ
勇者「さんきゅー。はぁ。しかし不味そうな飯だな。腹一杯食うためにベルトも外さんとな」カチャカチャ
兵3「お前は喋ってないと死ぬのかよ、うるさいやつだ」
勇者「生まれて来るとき口から出てきたらしいからな。俺は」
兵3「ははっ、そりゃ傑作だ。ほらよ、水だ」
279:
勇者「おぉ、お前いい奴だな。国の兵士にもこんな奴が居たのか」カチャカチャ
兵3「まあな。ていうか今の王が気に入らねえっていうのもあるけどな」
勇者「おいおい。兵士がそんなこと言っていいのかよ? お前もこっちの仲間入りだぜ?」カチャカチャ
兵3「内緒で頼むぜ。水やったんだからそれくらい許せよ」
勇者「あぁ。それは構わねえけどな。ていうか何が気に入らねえんだよ、王の」ポトッ
兵3「いや、お前らは知ってるだろうがこの国今鎖国してるだろ。そのせいで物資が入ってこねえしな。全く。嫌になるぜ」
勇者「そら大変だ。いいとこねえじゃねえか。王様」カチャカチャ
兵3「そうとも言い切れねえんだがな。この砂漠の国に水が入ってるのは今の王のおかげだしな。まっ、どういう仕組みかは俺にもわからんがな」
勇者「ふーん」カチャ
兵3「っていうかお前さっきからカチャカチャうるせえな。どんな食いか・・・!?」
勇者「情報提供ありがとよ。感謝してんぞ」
兵3「な、なんで手錠外れて・・・ぐっ」スパッ
勇者「安心しろ。お前は殺さねえよ。気が合いそうだしな」
兵3「な・・・おま・・・zzz」
280:
「勇者様!! どうしたんですか!?」
勇者「ちょっと黙ってろ・・・よっと」カチャカチャ・・・カチャッ
戦士「一体なにがあったんだ・・・って勇者!? 何故出れた!?」
勇者「おぉ、元気そうで何よりだ。はいはい、とりあえず説明はあとは。今開けるから待ってろ」カチャカチャ
戦士「それは一体・・・」
勇者「それもあとで説明する・・・っと、よし。扉は開いたな。今手錠外すから待ってな」カチャッ
戦士「あ、あぁ」
勇者「ちょちょいの・・・ちょいっと。よし、オッケーだぞ」カチャカチャ・・・カチャッ
戦士「す、済まない。助かった」
勇者「なんのなんの。さっ、じゃぁ行くか」
戦士「そうだな」
魔法使い「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! 華麗にスルーしないでくださいよ!!」
勇者「えー。お前も助けなきゃ駄目?」
魔法使い「ダメですよ!!」
281:
_____
___
_
魔法使い「なんで私にこんな酷い対応するんですか!!」
勇者「昔から言うだろ。好きな子ほど意地悪したくなるって」
魔法使い「なっ、なっ///」
戦士「勇者。私はマゾヒストだ。どんどん意地悪してくれ」
勇者「テメエはテメエで何言ってんだよ」
魔法使い「戦士さんが壊れていく・・・」
戦士「目標の為にはどんな犠牲も厭わないのだよ」
魔法使い「もっと方法を考えてください!!」
戦士「ところでこれは一体どういうことなのだ?」
魔法使い「そうです!! 何なんですか、それは!!」
勇者「あん? どれだよ。見張りを眠らせた物か? それとも鍵を開けたものか?」
魔法使い「全部ですよ!!」
勇者「注文の多いやつだな」
282:
戦士「しかし私も気になる。一体何なんだ?」
勇者「まあ、あれだ。全部勇者7つ道具だ。説明終わり」
魔法使い「短すぎですよ!!」
勇者「うるせえな。見張りが起きんだろ。沈黙魔法(物理)かけてやろうか?」
魔法使い「な、何をするつもりですかっ」ビクッ
勇者「ぶん殴る」
魔法使い「ガキ大将ですか!!」
戦士「勇者。頼む。教えてくれ」
勇者「へいへい。わーったわーった。ピッキングセット、睡眠薬、簡易ナイフだよ」
魔法使い「で、ですがいつそんなものを手に入れたんですか?」
戦士「そうだ。勇者様セットは取られたではないか」
勇者「・・・なんか他の人に勇者様セット言われるとイラってくるな」
283:
勇者「あのなぁ。俺がみすみす捕まるようなやつに見えるか? 捕まることに関してはプロだぞ?」
魔法使い「そんなプロ嫌ですよ」
戦士「全くだ」
勇者「いいか、プロって言うのはな、いつどんなとき何が起きてもいいように準備してんだよ。それがプロとアマの違いだね」
魔法使い「しかも急に語りだしましたし・・・」
戦士「得意分野だけやたら喋るタイプなのかもな」
勇者「兎に角俺は常に捕まることを想定して準備してんだ」
魔法使い「頼もしいですけどそれはどうなんですかね・・・」
戦士「じゃあ一体どこにそんなものを隠し持ってたのだ?」
勇者「一つはお前が前に気にしてたところだよ」
魔法使い「それって・・・。ちょ、勇者様っ/// なんて所に隠してるんですか///」
勇者「お前は何想像したんだよ」
戦士「魔法使いちゃんは思春期だね」
284:
魔法使い「じゃ、じゃぁ他にどこがあるって言うんですか!!///」
勇者「お前が何を想像したのかは知らんが間違いなくそこではねえよ」
戦士「・・・・・・そうかベルトか」
魔法使い「・・・ふぇ?」
勇者「御名算」
魔法使い「・・・あ、そういえば勇者様のお手製だって言ってましたね」
戦士「なるほど・・・。分厚かったのはそのためか」
勇者「そういうこと。まあ、睡眠薬はそこじゃねえけどな」
魔法使い「え? じゃ、じゃぁ今度こそ・・・////」
勇者「だから絶対違うっての」
戦士「では一体どこに隠してたというのだ?」
勇者「もうメンドクセーから答えるが靴ん中だ」
魔法使い「う、うわあぁ」
勇者「テメエ臭そうだとか思ったろ。嗅がすぞこら」
魔法使い「お、思ってないですってば!!」オロオロ
285:
戦士「しかしすごいな・・・。よくそこまで色々と思いつくもんだ」
勇者「褒めても何も出ないぞ」
戦士「いや、むしろ出させてあげよう」
勇者「黙れ変態」
戦士「褒め言葉として受け取っておくよ」
魔法使い「でもどうやってその睡眠薬を見張りさんに飲ませたんですか?」
勇者「誰が一回でも飲ませたっつた。水で麻酔薬を溶かしナイフをちょっとつけといただけだよ」
戦士「なるほど、それで斬りつければ相手の体に回るということか。しかし色々と隠し持ってるものだ、君は」
魔法使い「ほ、他にも何か体に隠してるんですかっ!?」
勇者「ああ。俺は歩く兵器だからな」
魔法使い「じゃ、じゃあ逆の靴には何が入ってるんですか?」
勇者「あ、こっちはコンドー○」
魔法使い「勇者様のアホオオオオオオオ!!」
286:
「あ、あの」
勇者「・・・あん? おい、お前ら。何か言ったか?」
戦士「いや、私は何も言ってないが」
魔法使い「はい。私もです」
勇者「そうか。じゃあ空耳か」
「あ、あのっ!!」
勇者「あん? どこだ?」
魔法使い「あっ!! 勇者様こっちです!! ここに誰か捕らえられてます!!」
「お、お願いです!! お願いがあるんです!!」
勇者「あん?
 なんだ。捕まってんのか。だったら俺は関係ねえな。さっさと行くぞ」
「そ、そんなっ・・・」
魔法使い「勇者様!! ですが!!」
戦士「・・・いや、残念だがこれは勇者の言う通りだ」
魔法使い「せ、戦士さんまで。なんでですか!!」
287:
戦士「それは・・・」
勇者「いいか、クソガキ。ここに居るってことはまともな人間じゃねえんだよ」
魔法使い「で、でもとてもそんな人には!!」
勇者「・・・あのなぁ。そいつの見た目がどうでもあれ犯罪者なの。ここはそんな甘い場所じゃないの。わかる? 経験者が言ってんだ」
戦士「そういうことだよ、魔法使いちゃん。君は余りにも人を信じすぎだ」
魔法使い「・・・そうですね」
勇者「珍しく物分りがいいじゃねえか。だったらさっさと行くぞ」
魔法使い「・・・はい」
「お、お願いです!! 待ってください!!」
勇者「はぁ・・・。あんたもしつこいね。お前に構ってる暇はないの。さっさとここから脱出したいの。わかる?」
戦士「そういうことだ。残念ながらな」
「私のことはいいです!! ですから姉を助けてあげてください!!」
勇者「だーれが犯罪者の言うことなんざ聞くかよ」
戦士「・・・いや、この子は」
288:
「お願いです!! このままだと今日処刑されちゃうんです!! 私は置いていっても構いません!! ですから姉をお願いします!!」
戦士「・・・勇者。この子は」
勇者「いい奴だって言いたいのか? 100歩譲ってそうだったとしたって俺には関係ないね」
戦士「だが・・・」
勇者「それとも何か? また命を掛けて守るとでも言うのか? テメェの命を捨ててまで助けるやつかよ?」
戦士「い、いや、そういうわけではないのだが・・・」
勇者「変わらねえんだよ。事は一刻を争うんだ。なのにこいつの為に貴重な時間を使うつもりか? 時は金なりだぜ。ガキの頃に習わなかったのか」
戦士「・・・・・・」
勇者「そういうことだ。こいつがどんな奴だろうと関係ないね。こいつは赤の他人だ。自分の命が最優先だろうが。お前らにこいつが命かける程の価値があんのかよ」
魔法使い「それは・・・」
戦士「・・・そうだな。その通りだ」
勇者「テメエらはホイホイ助けすぎなんだよ。死んだほうが良い命だってあるんだよ」
魔法使い「勇者様・・・」
289:
勇者「そういうことだ。残念だったな。お前も姉貴も一緒にお陀仏だ。よかったじゃねえか。天国で仲良くな。いや、ここに居るってこたぁ地獄か」
「お願いです・・・。私はいいです・・・。だからお姉ちゃんだけは・・・」
勇者「はぁ・・・。やれやれ、どうして肉親がそんなに大事かね。俺にはわからんね。俺は肉親を殺してでも生き残りたいがね」
魔法使い「・・・・・・・・・」
戦士「勇者・・・それは・・・」
勇者「何でだよ。それが普通じゃないのかよ。むしろお前らこそ綺麗事ばっか並べてて疲れないのかよ? 素直に生きるのが一番だぜ?」
「・・・私は本気です」
勇者「・・・あん?」
「・・・私はどうなっても構いません。何をされても構いません。ですからお願いします。一生のお願いです」
勇者「・・・ほぉ〜何をされてもって言ったな」ニヤッ
「はい。嘘偽りのない言葉です」
290:
勇者「だったら俺がお前を助けたらやらせろ」
魔法使い「・・・なっ!!」
戦士「勇者!! 君は何を言ってるんだ!!」
勇者「いやぁ、よく見りゃなかなか可愛い顔してるしよ。胸もでかいしな」
魔法使い「だ、だからって!!」
戦士「やっていいことと悪いことがあるぞ!!」
勇者「知るかよそんなもん。なんか勘違いしてるかも知れねえが俺はもともとこっち側の人間だ。何しようと勝手だろ」
戦士「だ、だからって!!」
勇者「幸いゴムもあることだしなぁ。心置きなくできるってわけよ」
魔法使い「で、ですが!!」
「構いませんよ」
魔法使い「・・・え?」
「私は構いません」
勇者「・・・あぁ、そうかい」ニヤッ
292:
「それで姉が助かるのならば安いものです」
勇者「ギャハハ!! そうかよ!! そいつはいいぜ!! とんだ淫乱野郎だな!!」
「・・・神よ。申し訳ありません。ですがここはお見逃しください」
勇者「死神の前で神頼みとは洒落た真似してくれるねぇ!!」
魔法使い「ダメですよ!! そんな自分を簡単に売っては!!」
「・・・いえ。いいのです。これが運命だったのでしょう」
勇者「・・・グダグダ言ってんじゃねえよ。さっさと脱ぎな」
「・・・・・・わかりました」
勇者「早くしなっ!!」
「・・・はい」スッ
勇者「イイねぇ!! その恥ずかしそうな顔!! そそるねえ!!」
魔法使い「・・・いい加減にしてくださいっ!!」ドンッ
勇者「あ、おい、馬鹿っ!!」
カランカランカラン・・・
「・・・・・・え?」
293:
魔法使い「・・・え?」
勇者「おい、こら、クソガキ!! テメエのせいでピッキングセットが転がってちまったじゃねえか!!」
戦士「・・・・・・ほぅ」クスッ
勇者「クッソ!! ここからじゃ届かねえし時間もねえ・・・。チッ。仕方ねえ、さっさと行くか」
魔法使い「・・・勇者様!!」
勇者「このクソガキ!! 俺の楽しみを邪魔しやがって!! ここから抜け出したらタダじゃおかねえからな!!」
魔法使い「・・・はいっ!! 勇者様!!」
「あ、あの・・・」
勇者「しゃべりかけんな!! もう時間がねえんだよ!! ほらっ、さっさと行くぞ!!」
戦士「・・・あぁ、そうだな」
魔法使い「・・・はいっ!!」
勇者「ちっ。あと少しだったってのによお!!」
ダッ
「・・・・・・・・・」
「・・・死神様。ありがとうございます」
294:
戦士「・・・何が転がっていったって?」
勇者「あん? ピッキングセットに決まってるだろ。見てたろ、お前も」
戦士「私にはどう見ても放り投げたようにしか見えなかったがな」
勇者「んなわけあるか!! クッソ!! 久々にボインが拝めると思ったのによ!!」
魔法使い「ひ、久々!? ちょっと勇者様!! どういうことですか!!」
勇者「テメエは黙ってろクソガキっ!!」
戦士「そんなに見たいなら私は構わんが?」
勇者「誰がお前のペチャパイなんか見るか」
戦士「おやおや、それは残念だ」
勇者「クッソ。イライラする。誰か殺さなきゃ気が済まねえ・・・」
戦士「・・・何が死神だ。聞いて呆れるよ」
勇者「あん? いいんだぞ? 契約を早めてここでぶっ殺してやっても?」
戦士「君がそれで悦べるなら本望さ」
勇者「けっ。歪んでんな。テメエは」
戦士「ああ。お互いにな」
295:
兵4「脱走囚発見!! ただちに捕えろ!! 殺しても構わん!!」
「「「「はっ!!」」」」
魔法使い「た、沢山来ました!!」
勇者「ちぃ!! つくづくついてねえなあ、今日は!!」
戦士「何、死神は憑いているじゃないか」
勇者「憑いてるんじゃねえよ。俺が飼ってんだ」
戦士「やれやれ。何を言ってるんだか」
魔法使い「勇者様は臭いですね」
勇者「黙れクソガキ!! 靴の匂い嗅がせんぞ!!」
魔法使い「す、すみません!!」
戦士「さて、翼の折れた死神さんはどこまで戦えるかな」
魔法使い「神頼みでもしといた方が良いんじゃないですか? さっきの方みたいに」
勇者「・・・あぁ。そうだな」
勇者「死神のご加護がありますようにってな!!」ダッ
313:
兵4「総員かかれ!!」
「「「「はっ!」」」」
勇者「ったく、たかだか俺しか動けねえのに何人で来んだよ。数の暴力反対。いじめっ子かお前らはよ」
戦士「言ってる場合か。倒さなくてはどうにもならんぞ」
勇者「だからってお前は武器もない、ガキは魔法使えない、俺は人並み以下だぜ」
戦士「くっ」
勇者「はぁ・・・。俺がどこまで戦えるかなっ」スパッ
キンッ!!
兵5「馬鹿め。どこから手に入れたか知らないがそんな短い刀でどうするつもりだ」
勇者「本当にな」
兵5「ふんっ!!」ブンッ
勇者「あぶねっ。殺す気かよ」ヒョイッ
魔法使い「勇者様後ろ!!」
兵6「死になっ!!」ブンッ
勇者「っぶね!! 不意打ちとは卑怯な!!」ヒョイッ
315:
兵6「お前には言われたくないね」
勇者「そりゃどうも」
兵7「いつまで躱してられるかな。さっさと諦めた方が身のためだぜ」
勇者「もう待ってらんねえんだよ!! 俺は煙草が吸いてえんだよ!!」
兵8「残念だったな。その願いは叶わずに終わりそうだな!!」ブンッ
勇者「ちっ!!」ヒョイ
兵5「こっちもだ!!」ブンッ
勇者「がっ!!」
魔法使い「勇者様!!」
兵6「やぁ!!」ブンッ
勇者「ぐっ!!」
戦士「勇者!!」
勇者「黙れ。こんなのカスリ傷だ」
兵4「ふんっ・・・。いつまでその強がりを言ってられるかな」
勇者「そっちこそいつまでその威勢が持つかな。さっ、根比べと行こうぜ」
314:
_____
___
_
勇者「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
兵4「勇者よ。随分ボロボロになったな」
勇者「・・・なに。こんなの俺の肺に比べりゃまだまだ綺麗だよ」
兵4「ふんっ。よくこの状況を見てそんなことが言えるな」
魔法使い「そんな・・・」
戦士「囲まれてる・・・」
兵4「残念だったな。もうツモだ」
勇者「流局ってわけには・・・いかねえよな」
兵4「そういうことだ。死になっ!!」バッ
兵5「はあっ!!」バッ
ズバッ!!
勇者「・・・アホが。むしろこれを待ってたんだよ!!」
兵5「うわあああああああああああ!!」ドクドク
317:
兵4「な、なにっ!?」
勇者「戦士!!」カランカラン・・・
戦士「こ、これは兵士の剣・・・。まさか最初から彼は・・・」
勇者「おいおい。お仲間を斬るとは兵士の風上にもおけねえな」
兵5「あっ・・・あっ・・・」
兵4「ち、違う!! わざとではない!!」
勇者「知るかよ、そんなこと。わざとでもわざとじゃなくても殺人は殺人なの。わかる?」
兵4「そ、そんな俺は!!」
勇者「戦士!!」
戦士「やあああああああああ!!」ズバッ
兵6「がああああああああ!! 腕があああああああ!!」カランカラン
勇者「よっと」スパッ
兵7「ぐっ・・・あ、あれ・・・・・・zzz」パタッ
戦士「はあああああああああ!!」ズバッ
兵8「ぐわあああああああああああああ!!」カランカラン
318:
勇者「さて、場の流れが変わちまったようだな。兵士さんよ」
兵4「そ、そんな・・・俺は・・・俺は・・・」ブツブツ
勇者「あー、駄目だこりゃ。完全にイッちまってんな。仲間殺しちまっただけだろ。何をそんなに気に病むことがあるんだよ」
戦士「・・・・・・・・・・・・」
兵4「違う・・・俺は悪くない・・・俺は悪くない・・・」ブツブツ
勇者「ちっ。うるせえな。少し黙ってろ」スパッ
兵4「俺は・・・俺は・・・・・・zzz」
勇者「一応他のやつらも寝かせとくか」スパッ スパッ
兵8「がっ、がっ、がっ・・・・・・zzz」
兵6「うわああああああああ・・・あああ・・・あぁ・・・zzz」
戦士「・・・彼は眠らせなくていいのか」
兵5「あっ・・・あっ・・・」ドクドク
勇者「必要ねえだろ。直に死ぬ。ほっといてもいいだろ」
戦士「・・・・・・勇者。頼む。寝かせてあげてくれ。せめて死ぬときくらい安らかに逝かせてあげてくれ」
勇者「・・・はぁ」
319:
戦士「・・・済まない。身勝手なお願いだとはわかっている」
勇者「俺的には苦しんで姿がそそるんだが・・・まぁ飽きたしいいか」
戦士「・・・ありがとう。勇者」
兵5「あっ・・・あっ・・・」ピクッ・・・ピクッ・・・
勇者「おいおい、酷い面してんな。そんなに生きたかったのかよ。残念だったな。お前の物語はこれで御終いだ。残念でした。ほらよっ」スパッ
兵5「あっ・・・あっ・・・あ・・・・・・zzz」ドクドク
勇者「・・・さて、行くか」
戦士「・・・・・・あぁ、そうだな」
魔法使い「・・・・・・はい」
「回復魔法!!」キュイン
戦士「なっ!! 援軍か!?」
魔法使い「勇者様!!」
勇者「よく見ろアホども」
320:
戦士「・・・って、さっきの」
魔法使い「良かった!! 無事だったんですね!!」
「皆様大丈夫でしたか!? 大変です、そんなに怪我をなされて!! 回復魔法!!」キュイン
勇者「おぉ。傷が引いていく。こりゃいい」
戦士「・・・・・・良かった。彼は辛い思いをしないで済むのだな。済まない。助かったよ」
「いえ、私の方こそありがとうございました」ペコッ
勇者「無事出たらヤらせてもらうけどな」
魔法使い「勇者様!!」
勇者「それよりピッキングセット返せよ。もう使わねえだろ」
「あ、はい。本当にありがとうございました」
勇者「知るかよ。俺は落としちまったんだからよ」ジャラッ
戦士「君は本当に素直じゃないね」
魔法使い「って、何かポケットに他にも入ってません?」
勇者「ん? ああ、手錠持ってきた」ジャラッ
魔法使い「なんで持ってきたんですか!?」
321:
勇者「捕まった記念として取っとこうかなって」
魔法使い「なんの記念ですか!! 嫌ですよそんな記念!!」
勇者「だって勿体無いじゃん。捨てるの」
魔法使い「物を捨てれないタイプですか!!」
勇者「そんなことよりお前姉貴はどうしたんだよ。やっぱり助かるためのハッタリか?」
「ち、違います!! それが既に牢屋の中が空になっておりまして・・・」
魔法使い「あ、じゃあ無事脱出できたんですかね!!」
戦士「・・・・・・いや、それは」
勇者「馬鹿かお前は。今頃きっと処刑台の上だ」
魔法使い「そ、そんな!!」
「っ!!」ダッ
戦士「あっ!! 君!!」
322:
魔法使い「勇者様!! 私たちも早く追いかけないと!!」
勇者「は? なんでだよ。知るかよ。俺らはさっさとここを出るぞ」
魔法使い「で、でも助けてもらったじゃないですか!」
勇者「あのなぁ、魔法の使えないお前、移動魔法の使えない俺が行ってどうにかなるもんじゃねえだろ。精々戦士が使えるくらいだろ」
戦士「・・・・・・だったら私は行こう」
勇者「あん?」
魔法使い「え?」
戦士「私は彼女に助けられた。体の怪我はもちろん、心の方もな」
魔法使い「え? それってどういう・・・」
勇者「ふーん。だったら勝手に行けばいいじゃねえか。俺はさっさとここから出るぞ」
戦士「あぁ。そうさせて貰うよ」
魔法使い「ま、まさかまた死んでもいいなんて・・・」
戦士「いや、それはない。私は生きて帰ってくる。だから先に行っててくれ」
魔法使い「・・・・・・私も行きます」
戦士「え? だが・・・」
323:
魔法使い「確かに私は何もできないですし居ても足で纏いになるかもしれません」
戦士「だったら」
魔法使い「でもこれはあれです!! 戦士さんが自ら死にに行かないように監視するためです!!」
戦士「・・・そうか。じゃぁ頼むよ」クスッ
魔法使い「はい!! 任せて下さい!!」
勇者「そうかよ。じゃあな。俺は行くぜ」
戦士「・・・あぁ、無事でな」
魔法使い「はい!! あとで会いましょうね!!」
勇者「人の心配してる場合かよ。ほら。さっさと行け」
戦士「あぁ!!」
魔法使い「勇者様も頑張ってくださいね!!」
ダッ
勇者「・・・やれやれ。どうしてあいつらはあんなに死に急ぐかね・・・」
勇者「まっ、俺には関係ないがな」
勇者「さて、俺は煙草でも買ってこよー」ルンルン
324:
戦士「おい!! 君!!」
「え? あ、先ほどの。どうしたのですか?」
魔法使い「私たちもお姉さん助けるのに協力しますよ!!」
「で、ですが!!」
戦士「君は姉を助けたいのだろ? だったら形振り構ってる暇はないのではないか?」
「・・・・・・そうですね。すみません、お願いします」
戦士「何。私も助けられたからね。おあいこだ。任せろ。君は私が守る」
魔法使い「せ、戦士さん!!」
戦士「・・・無論、私も死ぬ気は更々ないがな」
「・・・・・・戦士さんは男らしいですね」
戦士「い、いや、それなんだがな・・・・・・」
魔法使い「そんなことより早く行きましょう!! 間に合わなくなりますよ!!」
戦士「そ、そんなことだと!?」
「・・・待っててください。お姉様」
330:
_____
___
_
「こっちです。ここから上がれば処刑台に出るはずです」
魔法使い「なんでそんなこと知ってるんですか? や、やっぱり何度も此処へ・・・」
「ち、違いますよ!! ただ、こちらからとても強い魔力が感じられるのです」
魔法使い「え? そんなのわかるんですか!?」
戦士「・・・・・・そうか、君は僧侶なのか」
僧侶「はい。その通りです」
魔法使い「へぇ。僧侶さんってそんなのわかるんですか。すごいですね」
『皆の者!! 集まったか!!』
戦士「っ!! まずい!! 処刑が始まってしまう!!」
魔法使い「そ、そんな!! 急ぎましょう!! 僧侶さん!!」
僧侶「はいっ!!」
331:
兵長「今からこの犯罪者の処刑を行う!!」
僧侶姉「・・・・・・」
兵長「罪状は勇者を擁護するような発言、王国への批判、及び我らが王への殺人未遂罪だ!!」
ザワザワ
兵長「このような悪質な犯罪者を生かしておいていいものか? 否!! この行為は決して許されるべきではない!!」
ソウダソウダー!!
兵長「よってこの者は死罪とする!!」
ワアアアアアア!!
兵長「・・・さて、罪人よ。何か言い残したことはないか?」
僧侶姉「・・・・・・貴方達は騙されているわ。このままでは苦しむのは貴方がたよ」
兵長「貴様・・・まだそんな事を!!」
フザケンナー!! ビュッ
僧侶姉「痛っ!」ガッ
ソウダソウダー!! ビュ ビュ ビュ
僧侶姉「くっ・・・・・・」ガッ
332:
兵長「静粛に!! さて、では処刑に移る!! 罪人よ、来い!!」
僧侶姉「このままでこの国も・・・・・・あなたたちも・・・・・・」
兵長「黙らんか!!」ドスッ
僧侶姉「がはっ!!」
兵長「貴様ら!! この者を処刑台まで連れていけ!!」
「「はっ!!」」
兵1「ほらっ、さっさと歩け!!」ゲシッ
僧侶姉「うっ!!」
僧侶姉(あぁ・・・・・・駄目・・・・・・)
僧侶姉(このままではこの国は滅びてしまうわ・・・・・・)
僧侶姉(神よ・・・お願いです・・・どうにかこの国をお助けください・・・)
僧侶姉(ごめんね・・・僧侶・・・)
僧侶姉(不甲斐無いお姉ちゃんを許して・・・・・・)
僧侶「ま、待ってください!!」
333:
僧侶姉「そ、僧侶!!」
兵1「なっ!! お前らは!!」
兵2「何故ここにいる!!」
戦士「死神様がまだ死ぬ運命じゃないと言っていたからかな」
兵長「き、貴様ら!! 何しに来た!!」
魔法使い「無論、その人を助けるためですよ!!」
僧侶「お姉様を解放してください!!」
僧侶姉「駄目よ僧侶!! 来てはいけないわ!!」
僧侶「嫌です!!」
僧侶姉「このままではあなたも死んでしまうわ!!」
僧侶「嫌です!!」
僧侶姉「良い子だから言うことを聞きなさい!!」
僧侶「嫌ですっ!!!!」
僧侶姉「僧侶!!」
僧侶「もう・・・嫌なんです・・・ただ言うことを聞くのが良い子だというなら・・・・・・私は良い子になんてなりたくないです!!」
334:
僧侶姉「・・・僧侶」
兵1「ちっ!! 始末してくれる!!」スチャ
兵長「待て!!」
兵1「し、しかし兵長!!」
兵長「私が相手をする」
兵1「なっ!!」
兵2「へ、兵長直々にですか!?」
兵長「あぁ。少しは骨がありそうだからな。貴様らはその女を断頭台へ!!」
兵1・2「「は、はっ!」」
戦士「なっ!! 待てっ!!」ダッ
兵長「行かせやしない!!」ブンッ!!
戦士「くっ!!」
キンッ!!
兵長「貴様の相手はこの俺だ。逃がしはしないぞ」
335:
戦士「そうか・・・。だったらさっさとケリを付ける!!」
兵長「出来るものならな!!」ブンッ
戦士「ふんっ!!」ブンッ
キンッ
兵長「ほう・・・。これを受けるか・・・」
戦士「何を。止まっているかと思ったよ」
兵長「ハッハ!! 随分大口を叩く!!」
戦士「あぁ。誰かのが伝染ってしまったようだよ」
兵長「だが、これは受けきれるかな!!」スンッ
戦士「なっ、早い!!」
グサッ
戦士「かはっ・・・!!」ボタボタ
魔法使い「せ、戦士さん!!」
僧侶「か、回復魔法!!」キュイン
戦士「はぁ・・・はぁ・・・助かったよ、僧侶ちゃん」
336:
兵長「一撃で死ななかったか。そこは褒めてやろう」
戦士「ま、まだまだ!!」
兵長「ふんっ!!」ブンッ
戦士「がっ!!」ザクッ
兵長「たぁ!!」ブンッ
戦士「ぐっ!!」ズバッ
兵長「たああああああああああああああああああ!!」ブンッ
ブシャッ!!
戦士「がああああああああああああああああああ!!」ボタボタ
僧侶「か、回復魔法!!」キュイン
戦士「ぐっ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
兵長「・・・なんだ、こんなものか?」
魔法使い「そ、そんな・・・。戦士さんがこんな一方的に・・・」
337:
兵長「つまらん。時間の無駄だったな」
戦士「くっ!!」
戦士(くそっ!! 沈黙魔法が解けてれば!!)
兵長「もういい。準備は出来たか」
兵1「はい」
兵長「さっさとその女を処刑しろ」
兵1・2「「はっ!!」」
戦士「ま、待てっ!!」
兵長「ふんっ」ブンッ
戦士「がはっ・・・!!」ズバッ
兵長「雑魚は黙ってな。やれ」
兵2「はっ!!」
僧侶「ま、待ってください!!」
338:
兵長「それでは刑を執行する。紐を切れ」
兵1「はっ」
スパッ
ゴウッ!!
魔法使い「だ、駄目です!!」
僧侶「待って!! 待って!! 神様!! 神様!!」
僧侶姉「・・・ごめんね・・・僧侶。情けないお姉ちゃんでごめんね・・・」
僧侶「お、お姉さまああああああああああああああああ!!」
ドオオオオオンッ!!
339:
僧侶「あっ・・・あっ・・・そんな・・・」
戦士「また私は・・・誰も救えなかったのか・・・」
僧侶「神様・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・」
兵1「へ、兵長!! あの女が居ません!!」
兵長「何っ!? どういうことだっ!!」 
ザワザワ
僧侶「・・・・・・えっ?」
兵長「ふざけるな!! どこへ消えたというのだ!!」
魔法使い「・・・!! 皆さん!! あれっ!!」
勇者「ここだ、馬鹿共」
魔法使い「ゆ、勇者様!!」
340:
僧侶「お姉様・・・・・・・・・お姉さまあああああああああああああ!!」ダキッ
僧侶姉「・・・・・・ごめんね・・・心配かけて」ナデナデ
勇者「うむ。眼福眼福」
戦士「勇者…君ってやつは…」
兵1「き、貴様は……勇者!!」
ユ、ユウシャ!? ザワザワ…
勇者「おう。昨日振り。いい夢は見れたか?」
兵2「ふ、ふざけるな!!」
魔法使い「勇者様!! 来てくれたんですね!!」
勇者「ああ。煙草吸おうと思ったら火無くてな。いやあ、参った参った」
魔法使い「…クスッ。今の私は魔法が使えませんよ?」
勇者「だからちゃんと状態異常を直す薬草も持ってきたっつうの。ほら、お前ら食え」
魔法使い「ですからそれはそういう使い方じゃないですって!!」
341:
戦士「しかしよく買えたな、この街で。しかも金も無いのに。あ、まさかわざわざ他の街で買ったのか?」
勇者「いんや、この街の店からかっぱらってきた」
戦士「なっ!?」
魔法使い「はあああああああああぁ!? 何してるんですか!?」
ザワザワ
店妻「あんた!! 店の鍵閉めなかったのかい!!」
店主「い、いや!! ちゃんと閉めたぞ!!」
魔法使い「犯罪ですよ!! ていうかどうやって閉まってる店から物取ってきたんですか!!」
勇者「ピッキングセットでちょちょいと」
魔法使い「何やってるんですかああああああああああああああ!!」
戦士「あぁ…なんて事を…」
勇者「いいじゃねえか。どうせ俺らは脱獄犯なんだし。今更罪の一個や二個変わらんだろ」
魔法使い「あぁ……もう目眩が……」
勇者「なんだ貧血か? ついにあの日が来たのか? 今日は赤飯か?」
魔法使い「とっくに来てますよ!! ってそうじゃないです!!」
342:
兵長「貴様ら…舐めおって…」
勇者「ばーか。舐められる方が悪いんだよ。舐められたくなかったら強くなんな」
兵長「だったらここで叩き切る!!」
勇者「ばーか。秒で終わらせてやるよ」
戦士「待て、勇者!!」
勇者「あん? なんだよ?」
戦士「…そいつは私にやらせてもらえないか」
兵長「ふんっ。散々やられといて今更なにを」
勇者「あぁ、いいぞ」
兵長「ふっ。さっきの戦いを見てないからそんな即決できるのだ。あれだけ一方的な戦いだったのによくそんなことが言えるな」
勇者「本人切っての希望を無下にするわけにゃいかねえだろ。俺は意思を尊重するタイプだからな」
魔法使い「……本音は?」
勇者「楽できるならそれでいい」
魔法使い「ですよねー」
343:
勇者「まっ。お前はそいつと戦ってろよ。俺は昨日の恨みをここで晴らす」
兵1「ふんっ。恨まれる筋合いなどない」
兵2「侵入者には当然の裁きだろ」
勇者「ふっざけんな!! テメエのせいで何時間煙草吸えてねえと思ってんだ!! ブチ殺すぞファッキン!!」
魔法使い「う、うわ…。滅茶苦茶怒ってますよ勇者様…」
兵1「まあいい。昨日同様早々に終わらせてやる」ジャキ
勇者「そりゃこっちのセリフだ。さっさとぶちのめしてやるよゴミ共が。さっさと煙草吸わせろ」
兵2「だったら行かせて貰うぞ!!」ダッ
勇者「おうおう、国の犬がキャンキャン吠えてら。いいぜ、来いよ。戦士はさっさと親犬潰しとけよ」
戦士「あぁ。任せろ」
兵長「何度やっても同じ結果だがな」ジャキ
戦士「それはどうかなっ!!」ダッ
魔法使い「み、皆さん頑張ってくださーい!!」
魔法使い(…あれ? 私役立たず?)
344:
兵2「だあああ!!」ブンッ
勇者「ばーか、当たらねえっての。移動魔法を取り戻した俺は無敵なんだよ」ヒュン
兵1「だったら!!」
勇者「唱えさせるかよ。移動魔法」ヒュン
クルッ
魔法使い「あぁ!! また二人して後ろを!!」
兵1「沈黙…」
勇者「どこ見てんだタコ。目付いてんのかよ」
魔法使い「あ、あれ!? 移動してない!?」
兵1「なっ!!」
勇者「ハッタリだ馬鹿」スパッ
兵1「がっ!! まだま……zzz」
兵2「お、おい何寝てんだよ!!」
勇者「いい子は寝る時間だよ。オメエも寝てろ」スパッ
兵2「うっ……ば、ばかな…zzz」
345:
勇者「はい、お掃除終了。こいつらに起きられても厄介だし豚箱にでもぶち込んでおくか」ヒュン
魔法使い「ず、随分あっさり倒しましたね……」
勇者「こんなモブキャラに時間かけてられるかよ」
魔法使い「そのモブキャラにやられてたじゃないですか…」
勇者「人の目は前を見るためについてんだ。過去なんざ振り返っても仕方ねえんだよ」
魔法使い「よく言いますよ。未だに煙草付けるのに業火術使ったことを言うくせに」
勇者「それより後ろ見てみろよ」
魔法使い「えっ!?」クルッ
勇者「バカが見るー」
魔法使い「なんなんですかああああああああああああ!!」
勇者「いいから戦士の方を見ろよ」
魔法使い「あっ!!」
346:
戦士「はああああっ!!」ブンッ
兵長「くっ!!」キンッ
戦士「まだまだ!! 隼斬り!!」ヒュンヒュン
兵長「ぐあっ!!」スパッ
戦士「たああああっ!!」
兵長「ぐうっ!! さっきより随分いい動きではないか」キンッ
戦士「そりゃ彼の前で格好悪いところ見せれないからな」
兵長「それはそれは……残念だったな!!」ブンッ
戦士「がはっ!!」スパッ
魔法使い「せ、戦士さん!!」
僧侶「か、回復ま」
戦士「やめろ!!」
僧侶「えっ…?」
戦士「済まない。1対1の真剣勝負をさせてくれ」ボタボタ
兵長「ふんっ…。それで勝負になるのかな…」
347:
戦士「これで勝てないようなら魔王にはカスリ傷も与えられないだろ」ボタボタ
兵長「違いない」
戦士「だから私は…負けるわけにはいかないのだよ!!」ダッ
兵長「そうか…。君のような兵が欲しかったものだ」ダッ
戦士「それは無理な注文だな!!」ブンッ
兵長「それは残念だな!!」ブンッ
キンッ!!
戦士「はああああああああああ!! 辻斬り!!」スン!!
兵長「……居合斬り!!」スッ
ズバッ
戦士「が……はっ…!!」ボタボタ
魔法使い「せ、戦士さん!!」
僧侶「そ、そんな……」
兵長「ふっ…。勝負あったようだな」
戦士「…………あぁ。そうだな」ボタボタ
348:
戦士「………私の勝ちだ、兵長よ」ボタボタ
兵長「……見事だ、戦士よ」フラッ
バタッ
魔法使い「か、勝ったんですか…」
勇者「あぁ。そのようだな」
魔法使い「や、やった!!」
勇者「まっ、こんなやつに負けるようだったら置いてくつもりだったがな」
魔法使い「ゆ、勇者様!!」
僧侶「と、兎に角回復しなくては!!」キュイン
戦士「…あぁ。ありがとう、僧侶ちゃん」
僧侶「こ、こちらの方にも」キュイン
勇者「やれやれ、聖職者は優しいこった。夜は激しいんだろうけどな」
魔法使い「最低です!! 勇者様!!」
僧侶「……あ、あぅ////」
僧侶姉「…すみません。助けて頂いて」
349:
勇者「おっ!! そいつも可愛いからもしかしたらと思ったけどやっぱりお姉さんも綺麗だな。バインバインだし」
僧侶姉「あ、あらあらー?」
魔法使い「勇者様のバカ!!」
戦士「すまない…。彼はちょっとな…」
勇者「なんだよ。可哀想なやつを見る目で見やがって。殺すぞ」
魔法使い「と、兎に角助かってよかったですよ!!」
僧侶「本当にありがとうございます。なんとお礼を申し上げたらいいか…」
勇者「だから一発で」
魔法使い「いい加減にしてください!!」
ガッ
勇者「…あん? 何すんだよガキ」
魔法使い「わ、私は何もしてな…あ、痛っ!!」
フザケルナ-!! ザイニンガー!!
戦士「くっ!! 何をする!!」
勇者「ほう……。俺に石を投げつけやがったな…愚民どもが……」ピクピク
350:
勇者「おいこら愚民ども!! テメエら誰に向かって石投げつけてやがんだ!!」
「黙れ!! そいつらも処刑しろ!!」「そうよそうよ!!」「ふざけるな!! 何が勇者だ!!」
勇者「…そうかそうか。そんなに殺されてえか、死に急ぎやろう共。だったらお望み通り殺してやるよ!!」
「出来るもんならやってみろ!!」「そうだそうだー!!」
勇者「ほぉ……。おい、テメエら。死神と呼ばれた男を知ってっか?」
「死神ってあの…」「100人を殺したあの殺人鬼か?」「それが一体どうしたんだよ!!」
勇者「知ってんなら話がはええ。それが俺だ」
「…え?」「で、でも捕まったんじゃ!!」「だ、だがここも脱走した男だぞ、こいつは!!」「と、ということは!!」
勇者「あぁ。テメエら良く石なんか投げれたな。殺人鬼に向かってよ!!」
「あ、あ…」「こ、殺される…」「み、皆逃げろ!!」
勇者「ブッ殺されたくなかったらここから消えな!! さもねえと皆殺しだ!! ヒャハハハハハハハハハ!!」
キャ、キャアアアアアアアアアアアアア!! ニゲロ!! コロサレルー!!
勇者「必死に逃げな愚民がああああああ!! 群れねえと何もできねえクズ共があああああ!! 顔バレなきゃ何でも出来ると思ってるクズ共がああああああ!!」
ウワアアアアアアア!!
351:
僧侶「」
魔法使い「そ、僧侶さん氷ついてますよ…」
戦士「そりゃ初めてあんな姿見たら失神もするよ…」
僧侶姉「す、すごい方なのですね、勇者様って…」
魔法使い「あの人は違う意味でですがね…」
シーン…
勇者「ちっ。尻尾巻いて逃げ出しやがったかクズ共が。残ったやつ全員皆殺しにしてやるつもりだったのによ」
魔法使い「勇者様の場合本当に出来るのが怖いです…」
戦士「楽しそうに笑いながら皆殺しにしてる勇者が頭に浮かぶよ…」
僧侶姉「あ、あはははは」
352:
勇者「まあいい。さっさとこんな気に食わねえとこ出んぞ」
戦士「そうだな。あまりいい気分でもないしな」
勇者「っと、その前にヤることことヤらんとな。どうです? お姉さんも一緒に?」
僧侶姉「え、えっと〜」
魔法使い「勇者様!!」
「馬鹿ね。人の国でこんなに暴れて無事に出れると思ってるのかしら?」
勇者「あん?」
353:
魔法使い「ゆ、勇者様!! もしかしてこの国の王様じゃないですか!?」
戦士「まさか女王だったのとはな…」
僧侶「あ、あれは…」
僧侶姉「勇者様!! 気をつけてください!! あれは魔物です!!」
魔法使い「えぇ!?」
戦士「そ、そんな。どっから見ても人間にしか見えん…」
僧侶「ですがあれからはとても強力な魔力を感じます!!」
勇者「おい、お前。何で俺が移動魔法を使えることを知ってんだよ」
女王「そんなの決まってるじゃない。魔王様がおっしゃってたのよ」
勇者「…なに?」
魔法使い「魔王……」
女王「魔王様は全知全能なの。だから貴方達のことなんて何でも知ってるの」
戦士「そ、そんなまさか…」
勇者「おいおい、プライバシーの侵害だぜ? 俺のサイズまでバレてるっていうのかよ」
魔法使い「心配するべき点はそこじゃないですよ!!」
354:
勇者「まあだったら。魔王もバカだな」
女王「…なんですって?」
勇者「だってそうだろ? わざわざ負けるってわかっててお前を送り出してんだ。残念だったな。お前は人柱だ。いや、魔物柱か?」
女王「あら、馬鹿ね。負けるのは貴方がたよ。そんなこともわからないのかしら」
戦士「言わせておけば…!! 勇者行くぞ!!」ジャキッ
勇者「本当ならこんな街滅びてもいいからさっさと先に行きてえんだがな…。俺は今ムシャクシャしてんだ。加減は出来ねえぞ?」スッ
女王「加減なんていらないわよ。本気で来たところで貴方方は私に傷一つつけれないのだから」
魔法使い「舐めないでください!!」
女王「あら、一番の役立たずが何を言ってるのかしら」
勇者「全くだ。それは大いに賛成だ」
魔法使い「なっ!! だ、だったら私の強さを見せてあげますよ!!」
女王「そう? 無駄だと思うけどね」
魔法使い「くっ!! 行きます!! 業火術!!」ゴウッ!!
女王「だから言ってるでしょ無駄だって」
355:
女王「じゃぁ。私の技を見せてあげるわ。水術!!」ザバッ
魔法使い「えっ!!」
シュン
戦士「か、かき消された」
魔法使い「そ、そんな…」
女王「うふふ、残念ね。火と水の相性くらいわかるでしょ? 貴方は何もできないの、わかる?」
魔法使い「うっ…」
戦士「ちっ!!」
勇者「おい、余裕ぶっこいてる場合か?」ヒュン
女王「なっ!?」
魔法使い「ゆ、勇者様!!」
戦士「いつの間に!?」
勇者「さっさと死にな。糞ババア」
ズバッ
356:
戦士「や、やったか!?」
魔法使い「流石勇者様!! 移動魔法があると別人ですね!!」
女王「なんてね。効かないわよ」
魔法使い「えっ!?」
戦士「そ、そんな馬鹿な!? 完璧に捉えたはず!!」
勇者「ちっ。テメエ体まで水かよ」ヒュン
女王「あら、気づくのが早いわね。流石勇者ね」
戦士「な、なんだと!?」
女王「そうよ。だから私には剣も通らない。言ったでしょ? 傷一つつけられないって」
魔法使い「そ、そんな…」
戦士「一体どうすれば…」
358:
女王「まっ。残念だけど諦めて。もういいかしら? 私もう飽きちゃったのよ」
戦士「ま、まだだ!!」
女王「ふーん、そう。でも無駄よ」
戦士「やって見なくてはわからないではないかっ!!」ダッ
勇者「馬鹿っ!! 無駄に突っ込むな!!」
女王「ふぅ、馬鹿ね。水術!!」ザバッ
戦士「なっ!! ガハッ!!」ブシャッ
魔法使い「せ、戦士さん!!」
僧侶「っ!! 回復魔法!!」キュイン
戦士「くっ。僧侶ちゃん、助かったよ」
僧侶「いえ、大丈夫です!!」
女王「ふーん、厄介ね、その子。その子から潰しましょうか」
戦士「ばっ!! やめろ!!」
女王「やめろと言われてやめるバカがいるかしら。水術!!」ブワッ!!
戦士「避けろ!! 僧侶ちゃん!!」
359:
ブワッ!!
僧侶「あっ!!」
戦士「くっ!! 間に合わない!!」ダッ
僧侶姉「さ、させないわよ!!」ガバッ
僧侶「お、お姉さま!!」
魔法使い「お姉さん!! そのままだとお姉さんが!!」
僧侶姉「…いいのよ、この子に助けてもらった命だもの。この子の為に使わないと」
僧侶「お姉さま!! やめてください!!」
僧侶姉「……いいのよ、僧侶。貴方はちゃんと生きて。私の分もしっかりね」
僧侶「お姉さま!! 離してください!!」
僧侶姉「……神よ……どうかこの子をお守りください……」
僧侶「お姉さまあああああああああああああああああああああ!!」
僧侶姉「…神のご加護がありますように」
ブシャッ!!
360:
勇者「馬鹿が……。居るか居ねえかもわからねえ神なんかに頼ってんじゃねえよ……」ボタボタ
僧侶「ゆ、勇者様!!」
僧侶姉「勇者様!! 何故!!」
勇者「いやぁあまりにもエロい体してるからもう我慢できなくてよ。つい抱きついちまったぜ…。いやぁ、想像通りいい体だったぜ。柔らかくてな。俺のは硬くなっちまったがな……」ボタボタ
僧侶「そ、そんなことより回復しなくては!!」
勇者「いや、こんなもん唾付けときゃ治るっての。それにもう魔力もねえんだろ。とっときな」ボタボタ
僧侶「き、気づいてらしたんですか!!」
勇者「あぁ。勇者様は全知全能だからな…」ボタボタ
僧侶姉「勇者様……」
勇者「おい、お姉さまよ。神なんかに頼ってんじゃねえよ。この世には神も仏もいねえんだよ。救いの手なんか差し出してくれる優しい神なんか存在しねえんだよ。…居るのは人の死、不幸を喜ぶ死神だけだ」
僧侶姉「……」
勇者「だから願うんだったらこう願うんだな」
勇者「死神のご加護がありますようにってな」
361:
女王「あら、随分ボロボロになったわね、勇者。そんな怪我で何ができるのかしら?」
戦士「勇者!! 大丈夫なのか!!」
魔法使い「そうですよ勇者様!! 大人しく回復してもらったほうが!!」
勇者「うるせえな、お前ら。いいから見とけっての」
戦士「ま、まさか何か作戦が!!」
女王「ほう。それは面白い」
勇者「あぁ。目ん玉くり抜いてよく見てな」ヒュン
魔法使い「え? ステージから降りて何するんですか?」
勇者「すいませんでしたああああああああああ!!」バッ
僧侶「え、えぇ!?」
魔法使い「な、なぁっ!?」
戦士「ど、土下座!?」
362:
女王「…なんの真似かしら、勇者」
勇者「今まで大変んなご無礼を!! どうか私の命だけはお許しください!!」
魔法使い「な、何してるんですか勇者様!!」
勇者「馬鹿野郎!! 勝目なんかあるわけないだろ!! 何もできねえんだぞ、こっちは!!」
魔法使い「で、ですがっ!!」
女王「…ふーん。随分諦めが早いのね。でも私のことをババア呼ばわりして許されると思ってるのかしら」
勇者「申し訳ございません!! 好きな子には意地悪したくなるタイプです故!!」
戦士「な、なっ」
勇者「その潤った肌、水のように透き通った肌!! 素晴らしい限りでございます!!」
女王「あら、それは皮肉かしら?」
勇者「滅相もございません!! 気分を悪くされたのならば申し訳ございません!!」
女王「ふーん。まあいいわ。そこまで言うなら許してあ・げ・る」
勇者「ありがとうございます!!」
戦士「お、お前と言うやつは…っ!!」
363:
女王「貴方方は良いのかしら? 泣きつくなら今のうちよ?」
戦士「誰が…!! くそっ!! 見損なったぞ勇者!!」
女王「あれ、だったら私に勝負を挑むというの? 馬鹿な子ね!!」
戦士「黙れ!! 喰らえ!! 魔人斬り!!」ブンッ
女王「だから無駄だと言ってるでしょ」バサッ
戦士「クッ!! 捕らえれない!!」
魔法使い「そ、そんな…」
僧侶「何か手はないんですか…」
勇者「あぁ!! 流石女王様!! 素晴らしい!!」
勇者「なんていうかと思ったかよ糞ババア!!」ヒュン
364:
女王「なっ!!」
ダバアアアア!!
魔法使い「こ、これは!?」
戦士「大量の砂!?」
勇者「何が透き通った肌だよ馬鹿が!! 水なんだから当たり前だろタコ!! むしろ背景が透けてるわ!! ボケっ!!」
戦士「そうか…。ステージから降りたのも砂に直接触るため…」
僧侶「な、なるほど…」
魔法使い「あっ!! 土が茶色くなっていく!!」
勇者「おうおう、土に染み込んでいってるな」
女王「勇者貴様……。ふんっ、この程度の砂……、すぐに抜け出してやるわ……」
勇者「遅えんだよ、ババア。やっぱり年取るとトロイな」
女王「何だと……!!」
勇者「さて、これでもう当たんだろ。なぁ?」
勇者「魔法使い」
魔法使い「はいっ!!」ゴオオオオオオ
365:
女王「ば、馬鹿!! やめなさい!!」
勇者「バーカ。やめろって言われてやめる馬鹿がどこにいるんだよ」
女王「私が悪かった…!! だから…命だけは…!!」
勇者「うるせえよ、タコ。さっさと消えな」
女王「魔王様…!! お助けください…!!」
勇者「残念だったな。お前は犠牲になったんだよ。魔王の情報収集のな」
女王「そんな……魔王様……魔王様……」
勇者「やれ、魔法使い」
魔法使い「はいっ!!」
魔法使い「業火術!!!!」ゴウッ!!
女王「ああああああああああああああああああ魔王様ああああああああああああああああああ!!」
366:
魔法使い「やったんですか…?」
勇者「あぁ、そういうこと……」フラッ
戦士「ゆ、勇者!!」
僧侶「か、回復魔法!!」キュイン
勇者「うっ…はぁ助かった…。貧血なのに叫びすぎたぜ…」
魔法使い「全く…。無理しすぎなんですよ、勇者様は…」
勇者「うるせえよ、クソガキ。お前の火力が足りねえのが悪いんだろうが。ていうかそろそろ氷術か雷術くらい覚えろや」
魔法使い「う、うぐっ……」
戦士「ま、まあ勝ったからいいじゃないか」
魔法使い「そ、そうですよ!!」
勇者「甘やかし過ぎなんだよ、お前は」
僧侶「…ふふっ」
「ああああ!! なんてこった!!」
勇者「あん?」
367:
街人1「女王様が死んでしまったらどうやって水を集めればいいんだ!!」
街人2「この国はもう終わりだ!!」
僧侶姉「それはこれから皆で湖でも探して…」
街人1「もう水は一滴もないんだぞ!! 湖探す前に干からびちまうよ!!」
街人2「そうだ!! それも全てお前らのせいだ!!」
僧侶姉「そ、そんな……」
魔法使い「酷すぎます!! 僧侶さん達はこの国の為に!!」
勇者「だが実際にこれで水がなくなったのは事実だ。俺らが女王を殺ったからな」
戦士「しかしこれは国のためにも!!」
勇者「まっ、別に俺はこの国がどうなろうと知ったこっちゃねえからな。さっさと行こうぜ」
魔法使い「で、ですがっ!!」
僧侶「……そうですね。行ってください」
魔法使い「そ、僧侶さん!! ですが!!」
僧侶「勇者様のおっしゃる通りです。貴方方は目的があるはずです…。それなのにここまでして頂いてむしろ感謝しきれないほどです。ここから先は私たちの問題です」
魔法使い「僧侶さん……」
368:
勇者「そういうこった。国の在り方まで干渉してどうすんだよ。そんなの自分らでどうにかしな。文句ばっか言って何もやらない国民が悪いんだよ。生きたきゃ働け」
戦士「……うん、そうだな」
魔法使い「……そうですね。怠けることばかり覚えても仕方ないですもんね」
僧侶「はいっ。ですから皆様方は魔王を倒してください。私には祈ることしかできませんがどうかご無事で」
勇者「神に祈っても仕方ねえよ。祈るなら」
僧侶「死神様に…ですよね?」クスッ
勇者「そういうこった」
戦士「そうか…では行くか。僧侶ちゃんもこの国の為に頑張ってくれ」
僧侶「はいっ! ありがとうございます!!」
ポツポツポツ…
魔法使い「…え? 雨…?」
僧侶「……え?」
369:
街人1「あ、雨だ…」
街人2「な、なんで砂漠に雨が…」
僧侶姉「これは……」
ザアアアアアアアアアアアア!!
勇者「おうおう、土砂降りだなこりゃ」
戦士「な、何故一体雨が!?」
魔法使い「あっ!! 勇者様が土を飛ばしたところに水が溜まっています!!」
僧侶「ゆ、勇者様……」
戦士「こ、これも勇者の仕業なのか!?」
勇者「はぁ? 天候まで支配出来るわけねえだろ。知らねえよ、たまたまだろ」
街人1「恵の雨だ…。恵の雨が降ってきた!!」
街人2「おぉ神よ!! 感謝します!!」
勇者「けっ、都合のいいやつらだぜ。普段信じてもいねえくせに都合のいい時だけ神を信じやがって」
370:
僧侶「…これも勇者様のおかげなのですね。感謝致します」
勇者「だから言ってんだろ。俺は関係ないってな。むしろ感謝するならガキにするんだな」
魔法使い「え? わ、私ですか? 何でですか?」
勇者「自分で考えな、バカ」
魔法使い「ちょ、ちょっとどういうことですか!?」
勇者「おらっ、行くぞ」
魔法使い「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
戦士「私にもわからんが…まぁいいか。たまにはわからないことがあっても」
僧侶「そうですね。世の中はわからないから楽しいのですよね」
戦士「そうだな…。じゃぁ、僧侶ちゃんも達者で」
僧侶「はいっ。本当にありがとうございました!!」
戦士「あぁ。ではな。おいっ、待ってくれよ、勇者!!」ダッ
371:
兵3「おい、待ちな、勇者」ザッ
勇者「おっ、これは見張りさんじゃねえか。お目覚めかい?」
魔法使い「なっ!!」
戦士「くっ!!」ジャキッ
兵3「おいおい、構えるな、物騒なやつらだな」
魔法使い「何しに来たんですか!!」
兵3「けっ、酷いやつらだな。折角お前らの物持ってきてやったってのに」
魔法使い「…え?」
勇者「おいおい、いいのかよ。国の兵士がそんなことして。女王様に裁かれんぞ?」
兵3「だーれが殺したんだよ。誰が」
勇者「なんだ、知ってんのか」
兵3「そりゃな。国中の噂になってるからな」
勇者「やれやれ、噂ってのは怖いな」
兵3「全くだ。お前は身にしみてると思うけどな」
勇者「おっしゃる通りで」
372:
兵3「まっ、なんにせよ俺はあんたに感謝してるよ。女王様を殺してくれてありがとよ」
勇者「いいのかよ、そんなこと言って。ばらすぞ」
兵3「持ってきてやったんだ。チャラにしてくれや」
勇者「しゃーねえな」
兵3「まっ、これで物流も元に戻るだろ。あとはオアシスでも見つかりゃ文句なしだな。女王じゃなくなったことで捕まるやつも減るだろうし俺の仕事も減って楽になるしな」
勇者「そっちが本音だろ」
兵3「ばれたか?」
勇者「そりゃな」
兵3「こりゃ参ったね。流石勇者様。全知全能だこった」
勇者「あぁ。毎朝5時に南側向いて3回お祈りしな」
兵3「起きれりゃな」
魔法使い「い、いつの間にこんなに仲良くなってたんですか…」
戦士「男の友情というのはわからんな…」
373:
兵3「まっ、達者でな」
勇者「そっちこそな」
兵3「あ、そうそうあとな」コソッ
勇者「なんだよ」
兵3「魔王倒して女寄ってきたら何人か回してくれよ。使い回しでもいいからよ」コソッ
勇者「お前妻いるんじゃねえのか?」
兵3「男だから仕方ねえだろ?」
勇者「…バレないようにしろよ」ニヤッ
兵3「あぁ。噂は怖えからな」ニヤッ
魔法使い「二人共すっごく悪い顔してます…」
戦士「どうせロクでもないこと話してるんだろうな…」
勇者「まあ考えといてやるよ。じゃあな」
兵3「あぁ。死ぬんじゃねえぞ、死神様よ」
勇者「誰に言ってやがんだ、バカ」
374:
僧侶姉「…僧侶」
僧侶「はい、なんですかお姉さま」
僧侶姉「僧侶はいいの? 彼に着いていかなくて?」
僧侶「……いえ、この国を立て直さなくちゃいけませんからね」
僧侶姉「…行きなさい」
僧侶「…え、ですが」
僧侶姉「この国は私がどうにかするわ。だから僧侶は自分のやりたいことをしなさい。今までずっと我慢してきたんだから」
僧侶「…で、でも」
僧侶姉「……私ね、嬉しかったのよ。ただ言うことを聞くのが良い子だというなら私は良い子になんてなりたくないって言ってくれたとき。やっと本音を言ってくれたんだって」
僧侶「……」
僧侶姉「そんなに私が頼りないかしら? 私じゃこの国を任せられない?」
僧侶「そ、そういうわけでは!!」
僧侶姉「だったら行きなさい。助けて頂いた分働いて来なさい!!」
僧侶「お姉さま……。はいっ!! 分かりました!!」
376:
僧侶姉「うん、それでいいのよ。……でもね、最後にお願いがあるの」
僧侶「…? なんですか、お姉さま?」
僧侶姉「それ!!」
僧侶「えっ??」
僧侶姉「……最後くらい、お姉ちゃんって呼んでよ。……貴方はそう思えないかもしれないけどね」
僧侶「そ、そんなことありません!! 私はずっとずっと……」
僧侶姉「……だったらお願い、聞いてくれるかしら?」
僧侶「……はいっ!!」
僧侶「お姉ちゃん!! ずっとありがとう!! 私……行ってくるね!!」ダッ
僧侶姉「……えぇ。いってらっしゃい。自慢の妹」
僧侶姉「……さて、私も頑張らないとね!!」
377:
僧侶「勇者様〜!!」トテトテ
勇者「……あん?」
魔法使い「あ、僧侶さん!!」
戦士「おや、どうしたんだ?」
僧侶「わ、私もご一緒に旅させてください!!」
勇者「はぁ?」
魔法使い「なっ!! またライバル出現ですか!?」
戦士「ま、まぁ確かに回復役がいてくれると楽にはなるが…」
勇者「俺は別に構わねえがいいのかよ? この国はよ?」
僧侶「はいっ!! …お姉ちゃんがいるので大丈夫です!!」
勇者「……そうかよ。だったら勝手にしな」
僧侶「…はいっ!!」
魔法使い「あぁ…また女の人が増えてしまいました…」
戦士「まあ楽しくなりそうだからいいじゃないか」クスッ
378:
僧侶「皆様もよろしくお願いします」ペコッ
魔法使い「…そうですね!! よろしくお願いします!!」
戦士「あぁ、よろしく頼むよ、僧侶ちゃん」
勇者「いいからとっとと行くぞ。さっさと雨宿りしたいしな」
魔法使い「そうですね…。びちゃびちゃですよ、もう」
勇者「下がか?」
魔法使い「死んでください!!」
僧侶「そうですね。では雨宿りついでに約束を果たしましょうか、勇者様」
勇者「……あん?」
魔法使い「…………え?」
僧侶「やはり約束はしっかり果たさなくてはダメですよね…。不束者ですがよろしくお願いします」ペコッ
勇者「ばか。あれは助けた場合だろ? お前が勝手に助かったんだ。約束なんてねえよ」
僧侶「いえ、それでも私の気が済みません」ニコッ
勇者「……いや、まぁ、お前が良いって言うならいいけどよ」
379:
戦士「こ、これは強敵が現れたな…」
僧侶「初めてなので優しくしてくださいね////」テレッ
勇者「お、おう…。いや、でも待て、今日は疲れたしゆっくり寝たいっていうか」
僧侶「勇者様は寝たままでも大丈夫です//// わ、私が////」
勇者「あ、いや、そうじゃなくてだな…」
魔法使い「……です」
僧侶「……はい?」
魔法使い「そんなの絶対駄目ですうううううううううううううううう!!」
394:
戦士「はあああああああああああああ!!」ズバッ
龍「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ズドーン!!
戦士「はぁ…はぁ…やったか?」
魔法使い「……みたいですね」
僧侶「うぅ……やっと倒せました……」
戦士「僧侶ちゃん本当に助かったよ……。君のおかげで大分戦いが楽になった……」
魔法使い「とは言ってもかなり長期戦になりましたけどね……」
僧侶「はい……。私ももう魔力がありません……」
戦士「本当にお疲れ。いい活躍だったよ」
魔法使い「そうですね。薬草買わなくていいんでお金もかからないですしね・・・」
僧侶「皆様のお役に立てているなら光栄です」
魔法使い「ええ!! 素晴らしい活躍ですよ!! ……それに比べて」
勇者「ん? 終わったのか?」スパー
魔法使い「あなたは何をしてるんですかあああああ!!」
395:
勇者「いやだって鱗硬いじゃん。俺のナイフが通るわけないじゃん。移動魔法で飛ばすのも勿体ないじゃん」
魔法使い「だからってもうちょっと何かあるじゃないですか!! なんであなた一人煙草吸ってるんですか!!」
勇者「手持ち無沙汰で」
魔法使い「あぁ…私たちの頑張ってる中この人は……」
勇者「いいじゃねえか、倒せたんだし。結果オーライ」
戦士「君は全く…。本当に掴みどころがない男だな…」
勇者「下に掴むところはあるけどな」
戦士「掴んでいいのか?」
勇者「遠慮しときます」
僧侶「ま、まあまあ。今まで勇者様に助けて頂いてばかりだったのでたまにはいいじゃないですか」
勇者「おぉ。僧侶。お前だけだ、俺をわかってくれるのは」
戦士「はぁ…。しかしこれだけ長い間居るのに勇者のことを全然知らないな。私たちは」
魔法使い「…………」
396:
勇者「まっ、お疲れさん。今日はさっさと宿屋行ってゆっくり休もうぜ。なんたってもうすぐ魔王城だからな」
戦士「そうだな…。気づけばそんなところまで来たのだな…」
魔法使い「長かったような…短かったような感じですね…」
僧侶「そうですね…」
勇者「なんにせよお前らと旅するのも明日で最後だな」
魔法使い「……あ」
戦士「……そうだな。そうなるのか」
僧侶「……なんだか寂しいですね」
勇者「おいおい、何湿気た面してんだよ。もうこんな辛い思いしなくて良いんだぜ。あとは寝て起きるだけで生活が保証されんだ。そんないいことはねえだろ」
魔法使い「それはそうですけど……」
勇者「もう硬いベットやテントで寝ないで済むんだ。これ以上ない幸せだぜ?」
戦士「……それはそうだが」
勇者「だったらいいじゃねえか。ほら帰んぞ。掴まれ、お前ら」
魔法使い「……はい」
勇者「うっし。んじゃ帰んぞ。移動魔法」ヒュン
397:
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勇者「はい、到着。便利だね、こりゃ」ヒュン
僧侶「本当ですね。他の冒険者さん達はさっきの道を引返していたのかと思うと相当苦労なさったのでしょうね」
勇者「本当にな」
戦士「…良し。それじゃぁ必要な物を揃えて宿屋に行こう」
勇者「そうだな。さっさと買い物済ませようぜ。煙草もねえしな」
戦士「やれやれ、本当に君は。もうすぐ魔王城だというのに緊張感のないやつだ」
勇者「今更気取ったって仕方ねえだろ。俺は俺なの。俺らしく生きるの」
戦士「はいはい」
魔法使い「…………」
勇者「あん? なんだガキ? 元気ねえじゃねえか?」
魔法使い「……あ、いえ。何でもないです」
僧侶「お疲れなのでしょう。沢山歩きましたしね」
勇者「やれやれ、体力のないガキだな」
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