花陽「アイドル研究会!?入部します!」 Part2back

花陽「アイドル研究会!?入部します!」 Part2


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0:
『思い切って』
花陽「はあ…」
何回目のため息だろう。誰もいない校舎のはずれで私は昨日の出来事を思い出していた。
花陽「…ねえ、アルパカさん。どうしたらいいのかな。」
そうつぶやいてまたため息。…今日は部活ないのかな。にこ先輩、あの後どうしたのかな…
「――こんにちは♪今日も来ちゃった!」
花陽「あっ、こんにち、は…」
「ふわあ?…今日もモコモコだねえ?…かわいいよぉ?…」
よくアルパカ小屋で顔を合わせる先輩。目をキラキラさせながらアルパカをなでている。
とっても優しくて、可愛い人。いいなあ…この人みたいだったら、私だってもしかして…なんて思ってしまう。
「…あれ?どうしたの?なんだか元気ないみたいだけど…どこか調子が悪い?もしそうなら、保健室に行こうか?」
花陽「あっ、いえ!そうじゃないんです!大丈夫です!」
「本当?…無理しちゃダメだよ?」
花陽「ありがとうございます………はあ。」
「…」
あっ、いけない。またため息が出ちゃった。
「…あのね。何か辛いことや困ってることがあるなら、誰かに話すだけでもスッキリするよ?」
花陽「え?」
「もしよかったら…誰にもいわないから聞かせてくれない?」
花陽「で、でも…そんなの迷惑じゃ…」
「大丈夫、私――保険委員だから♪」
131:
『―――せやから、色んな部活や有志の団体にステージでパフォーマンスをしてもらってな?お客さんに楽しんでもらおうっていう――』
にこ『…悪いけど、頼む相手間違えてるんじゃないの?』
希『ううん。間違えてへんよ。ウチはアイドル研究部さんにステージに出てください、ってお願いしに来とるんや。』
にこ『…』
希『音ノ木坂学院のスクールアイドルとして、ね?』
花陽『え、え?えええええええ!?』
にこ『…じゃあますますお門違いね。うちは名前の通りアイドルの研究をする部なの。スクールアイドル部じゃないの。』
希『もちろん。よう知っとるよ。』
にこ『じゃあ話が早いわ。素人が真似事したって笑いものになるだけ。質の悪い冗談はやめて頂戴。』
希『うん――だからこそ、お願いしとるんよ。』
にこ『…ちょっと…』
花陽『え、でも、でも…』
希『大丈夫や花陽ちゃん。所詮たくさんある出し物の中の一つやから、気楽な気持ちで――』
バンッ!
にこ『…希。ちょっと話しましょ…どこか、別のところがいいわ。』
希『ウチはここでもかまわんよ。』
にこ『いいから…!…花陽、今日はお休みにするから。もう帰っていいわよ。』
花陽『え…?え…?』
132:
希「…屋上とは、また古典的やなあ。」
にこ「…余計なことしてんじゃないわよ。」
希「…何が?」
にこ「余計なことしないで!って言ってんの!」
希「だから、何が?」
にこ「嫌味のつもり?今更もう一度スクールアイドルをやれ、なんて!」
希「別に、そんな大げさなことやないよ。言ったやろ?お祭りの出し物なんやし、気楽な気持ちでええ、って…」
にこ「アイドルなめんじゃ無いわよっ!!」
にこ「気楽にとか!そんなことできるわけ無いでしょ!」
希「…ごめん。」
133:
2015/03/02(月) 22:11:35.15 ID:HwNwKJ/F.net
にこ「…やめてよ。もう…そっとしておいてよ…」
希「…ごめん、迷惑、やったかな…にこっちの気持ちも考えんと…」
にこ「…」
希「花陽ちゃんも入ったことやし、いい機会だからって思ったんやけど…」
にこ「…そりゃ――やりたい、わよ!やりたいに決まってるじゃないっ…!」
にこ「でも、でも!そうなったらきっとまた…」
希「…本気にならずにはいられない?」
にこ「そうよ!…そしたらまた、花陽だってきっと――」
希「…」
134:
にこ「…それにね、花陽にはあんな思いをしてほしくないの。あんなのもう…」
希「優しいね、にこっち…花陽ちゃんが大切なんやね。」
にこ「そうよ!悪い? 可愛くて可愛くてしょうがないわよ!せめて卒業までは一緒にいてほしいって思ってるわよ!」
にこ「せっかく仲良くなったの!だからもう、もう…」
希「…にこっちはこのままでええの?」
にこ「…っ」
希「花陽ちゃんなら大丈夫…ウチはそんな気がするんや。」
にこ「なんでアンタにそんなことがわかるのよ。」
希「カードがそう告げとる…なんてな。…あとは、本当のこと言うと、ウチだってにこっちの友達やと思ってるから。」
にこ「…」
希「せやから、もう一度。そう思ってる。――なんや、ウチのワガママってわけやんなあ。」
にこ「何よそれ―――」
135:
「――きゃ?!それってすごいよぉ?!絶対見に行くからね!」
一通り話すと先輩はいつもより一際可愛らしい声をあげた。
花陽「あ、あの…まだ決まったわけじゃ…」
「あ、ごめんね?でも花陽ちゃん可愛いから大丈夫!フリフリの衣装とか絶対似合うよぉ?。」
花陽「そ、そんな…私なんか…」
「やりたくないの?」
花陽「…ぅぅ…」
それは、本音を言えばちょっとやりたかったりも…する。
ううん、すっごくやってみたい。でも、そんなの無理だよ。私なんかじゃ…
そんなこと言えるはずもなくって、黙っていると先輩がゆっくりと話し始めた。
「…あのね、参考になるかはわからないんだけどね?私、幼なじみのお友達がいるの。元気で、明るくて、とっても素敵な女の子。」
137:
「もう一人の幼なじみと私といっつも3人組で…何かしよう、って言い出すのは必ずと言っていいほどその子なんだ。」
そう語る先輩の顔はどこか嬉しそうだった。本当に仲がいいんだ。私と凛ちゃんみたいなものかな。
「それでね、時々思いがけないことを言い出して、大変なことになっちゃったりするんだ。おかげで叱られたり、怖い思いをしたりもう散々!」
「…でもね、後悔したことは一度もないの。その子はいつも私の知らない世界を教えてくれる、新しい場所に連れてってくれるの。」
先輩はアルパカさんの首を撫でながらふふ、と笑った。…本当に仲良しなんだなあ、その人と。
「――だから、ね?思い切ってやってみてもいいんじゃないかな、って。」
花陽「…はい。」
「頑張って。応援してるから。絶対花陽ちゃんのステージ見に行くからね!」
花陽「あ、ま、まだ…」
「ふふ♪もう大丈夫かな?」
花陽「あ…ありがとうございます!……そ、その…えっと…」
「あ、ごめんね?名前教えてなかったっけ?私はことり―― 南 ことりです♪」
138:
花陽「――失礼します。」
にこ「ああ、昨日は悪かったわね。」
放課後、にこ先輩はいつものように窓際の席に座っていた。
花陽「にこ先輩。その…ひとつお話が…というかお願いが…」
ああ、やっぱりだめ!ことり先輩はああ言ってくれたけれど…やっぱり自信ないよ…
下を向いて口をモゴモゴさせているとにこ先輩の方から話しかけてきた。
にこ「…花陽。その前ににこから聞いてもいい?」
花陽「え?はい…」
にこ「アンタ、前に『スクールアイドやってみたい』って言ってたわよね。…それ、今でも変わらない?」
花陽「え…それは…で、でも私なんか…」
にこ「そういうのいいから。今でもアイドルになりたい、やってみたいって気持ちがあるのか聞いてるの。」
139:
強い口調に驚いて顔をあげるとじっと私を見つめているにこ先輩と目があった。
花陽「…ぁ…」
にこ「どうなの?」
花陽「…ぁ…ぅ…」
実際はほんの数分だったかもしれないけど。二人だけの部室で、それはすっごくすっごく長い時間だった。
にこ「…にこはね。」
にこ「にこは…やりたい。スクールアイドル、やりたい。ステージに立ちたい!」
まっすぐな言葉と視線。
にこ「…花陽は?」
私は…
花陽「…やりたい、です。」
勇気を振り絞ってそう、答えた。
140:
そして沈黙、にこ先輩の目が一瞬大きく見開かれて
にこ「しょうがないわね?!じゃ、やるわよ!アイドル!」
いつものセリフが飛び出した。
花陽「は、はい!やりましょう!」
にこ「やるからには本気でやるからね!覚悟しなさいよ!」
花陽「はい!」
――変なの。
歌も、衣装も、振付も、何もかも決まってないのに、一体何が嬉しかったんだろう。
その時、私と先輩はお互いに、満面の笑みで喜んでいた。
176:
『ライブにむけて』
凛「か?よちん!あとちょっと!頑張るにゃ?!」
花陽「はあ…はあ…り、リンヂャン…ぢょ、ぢょっとマッテ…」
凛「だめだめ?!かよちんが言ったんだよ!体力つけたいって!」
花陽「そ、そうだけど…」
凛「にこせんぱ??い!大丈夫ですか?!」
にこ「…ゼエ…ハア…ど、どうって…ハア…こと…ない、わよ…」
凛「それじゃラスト1キロ!行ってみよ?!」
ああああ、凛ちゃん完全に楽しくなっちゃってるよ。
まだまだ人もまばらな朝の早い時間、私とにこ先輩は凛ちゃんと一緒に体力づくりに励んでいた。
『とにかくまずは体作りから始めましょ!』というにこ先輩の提案により凛ちゃんにトレーニング方法を聞いたのだけど…
――さすがに朝ごはんも食べずにこれはきつすぎるよ?!
ああ、ごはん、ごはん、真っ白ごはんとパリパリのお海苔で一杯、すっごく酸っぱいおばあちゃんの梅干しでもう一杯、それから…
『ライブまではダイエットね!これも没収!』
ああああ、そうだった!にこ先輩にそうやってお菓子を没収されたんだった…
じゃあ朝ごはんは一杯だけ?おかわりも無し?10時のおにぎりも?そ、そんなあ…!!
凛「かよちん!ファイトファイト!にこ先輩も!よーし!気持ちいいからもう1キロいっくにゃー!」
にこ「ゼエ…ハア…なめんじゃ…ゼエ…ゼエ…ない、わよ……これでも、昔…は、ねえ…ゼエ…ゼエ…」
うぅ…ダレカタスケテェー!!
177:
真姫「…それで、花陽はこんなになってるわけ?」
凛「うん…ごめんねかよちん…凛、走ってたらちょっと楽しくなっちゃって…」
花陽「う、うん…大丈夫だよ…」
朝のホームルームが終わって、机にへばっている私を見かねて凛ちゃんと真姫ちゃんがやってきた。
真姫「そもそも、スクールアイドルなんて素人のお遊びでしょ?適当でもいいんじゃないの?」
花陽「…それは違うよ!スクールアイドルだってアイドルなんだもん!見てくれる人がいる以上適当なんて許されないよ!」
真姫「ご、ごめん。そんなつもりじゃなくて…」
花陽「あっ…ううん。私こそごめんね。…でも、にこ先輩とも約束したの。やるからにはちゃんとやろう、って。」
凛「かよちんえらいにゃ!」
花陽「だからね、歌も衣装も自分たちで作ることにしたんだ。…大変かもしれないけど、私達は私達にしかできないアイドルをやりたいの。」
真姫「…本気なのね、ごめん。バカにするようなこと言ったりして。」
花陽「だ、大丈夫だから!ね?」
凛「それで?衣装はかよちん、歌はにこ先輩が作るの?」
真姫「にこ先輩って人、作曲とか作詞とかできるわけ?なんだかちょっと変わった人みたいだったけど…」
花陽「だ、大丈夫だよ…多分。」
178:
にこ「――ふーん。それなりにそろってるのね。」
図書委員の子に教えてもらった番号の棚には詩集やそれに関する本がズラリと並んでいた。
作詞、作曲、衣装作り、なんでも自分たちでやらないといけないのがスクールアイドルの辛いところよね。まあ、それだけオリジナリティが出せるってことなんだけど。
とにかく、ライブは来月の終わり頃。今頃衣装作りに奮闘している花陽のためにも早いとこ曲を作らないと――
にこ「…『現代作詞法』『青春詩集』『アルパカにも作れるポエム』…どれもパッとしないわね」
それにしても、図書室なんて入学した時の学校案内以来かしらね。カビ臭い本棚の背表紙をなぞりながら、よさそうな本を物色する。
うーん…なかなかにこの感性を刺激するようなものがないわね。
大体全体的に古臭いのよ。放課後だけど、ほとんど人がいないのも頷けるわ。もっとアイドル雑誌とか置けば少しは…
179:
「あの、よろしいでしょうか。」
にこ「え?ああ、ごめんね。」
あら、まだ生徒がいたのね。にこが場所を譲ってあげるとその子がいくつかの詩集を手に取る。
ふーん…2年生か。清楚系アイドルってとこね。長い黒髪と品のある物腰。大和撫子キャラで売り出したら一定の層に根強い人気が出そう。
でもそれだけじゃちょっとパンチが弱いかな?…ぱっと見、スタイルもにことかぶるし、それならにこの方が可愛もんね。
そうねえ、例えば…覚えやすい決め台詞とか、見た目とのギャップとか…
「…あの、何か?」
にこ「えっ?ああ、ごめんね。なんでもないわ。」
「…?」
いけないいけない。ついアイドルに例えちゃった。…久々にライブなんてやるからかしらね。
にこ「さてと、にこも頑張らないとね。」
席についていくつかの詩集や作詞の教本を広げてみる。
にこ「…」
「…」
にこ「……??フンフン♪」
「…」
180:
にこ「……にこにー、にこにー、かわいいな…っと…」
「…」
にこ「フンフフフンフンフーフフーン…♪」
「…あの。」
にこ「フフフフフンフン♪フンフフーン♪」
「あの!」
にこ「ひゃっ!なに?」
「…その、上級生の先輩に僭越かとは存じますが、図書室では静かにしたほうがよろしいかと…」
にこ「え?あ、ああ…ごめんなさいね。」
「いえ…」
181:
いけないいけない。ついつい調子が出ちゃった。にしても、上級生に向かって随分とはっきりモノを言う子ね。
…そうだ。
にこ「ねえ、ちょっといいかしら?」
「はい?」
にこ「あなた、詩とか好きなの?これ、どう思うかしら?」
「そう言われましても、私は人にものを言えるほどではないのですが……拝見します。」
遠慮するその子ににこはルーズリーフを押し付けた。さあ、どんな賞賛の言葉が出てくるかしらね。
にこ「…どう?どう?」
「…これは、先輩が書かれたのですか?」
にこ「え!?あ、いや…その…本の間に挟まってたの!」
「そうでしたか…では、率直に言っても問題ないですね…正直、これは…一言で言えば『あざとい』です。」
にこ「あ、あざとい!?」
182:
「はい。繰り返し出てくるこの単語も意味不明ですが…とにかく『わざとらしい』です。」
にこ「わ、わざとらしい!?」
「もっと言えば『くどい』です。」
にこ「くどい!?…そ、そんな…にこの一大傑作が…」
「不自然なんですよね。とにかく全てが…――強くのみ 放つと思う射手はただ 矢色もつきて中りそろわず――」
にこ「は?」
「…良い物を作ろう作ろうとばかり思うと、かえって失敗します。もっと素直な気持ちで書いてもよろしいのではないでしょうか。」
にこ「…」
「感じたこと、常日頃より思っていることをありのままに表現することが大切…私はそう思います。」
にこ「感じたこと…常日頃から思っていること…」
その時、にこの中で何かが見えた気がしたの。こうしちゃいられない、こんなとこじゃダメ!
「まあ、これは私の個人的な考えですから、特に…あれ?」
183:
にこ「……ありがと!参考になったわ!」
そう、にこの今感じている気持ち。花陽が来て、それからのこと。本当に楽しいと思えるようになった今の気持ち。それを言葉にしないと、伝えないと!
にこ「…っと、ごめんね!」
危ない危ない、急ぎすぎてぶつかりそうになっちゃった。
「いえ、大丈夫です!」
元気に答えるその子を尻目ににこは部室へと急いだ。
「…文芸部の方だったのでしょうか。…まったく、穂乃果もあのくらい何かに夢中になって打ち込んでくれたら…」
「あっ、海未ちゃん探したよ?!ねえねえクレープ食べて帰ろうよ!」
「ああ、穂乃果。図書室では静かに――」
204:
『二人の先輩』
にこ「――どう?」
花陽「すごくいいと思います!さすがにこ先輩!」
とうとう、にこ先輩の作詞が完成した。少し前に部室に飛び込んできた時は何事かと思ったけど…
私の顔を見たら急に言葉が浮かんできたみたい。えへへ、それってなんだか、ちょっと嬉しい。
真姫「へえ、いいんじゃないですか?」
凛「ふ?ん。おもしろい歌だにゃ?。」
一緒にお弁当を食べている凛ちゃんと真姫ちゃんも覗きこんで感想を漏らす。
3年生相手で初めは緊張していた凛ちゃんと真姫ちゃんだったけど、すぐに打ち解けたみたい。
花陽「じゃあ次は曲ですね。どうしましょうか。市販のソフトを使う手もありますけど…」
にこ「うん、それでね?真姫ちゃんにお願いなんだけどぉ?…これ、弾いて欲しいの!」
真姫「へ?」
にこ「だからね、練習するのには曲が必要でしょ?大丈夫、もうイメージはできてるから!真姫ちゃんは伴奏してくれるだけでいいの!」
真姫「ええ!?そんなの急に言われても…」
にこ先輩に押し出されるような形で二人はピアノの前に立つ。
にこ「じゃあ行くわね、最初は、?????♪こんな感じ!」
真姫「…え?」
205:
にこ「だから、??????♪って感じ!」
真姫「ちょ、ちょっと、そんなので分かるわけないでしょう?」
にこ「え?だから、こうだってば!????♪」
真姫「ああ、もう…こう?」
真姫ちゃんが仕方ない、といった様子でピアノを爪弾く。
にこ「あっ!いい感じ!それでね?次はこんな感じなんだけど…」
真姫「はあ…」
凛「…なんだか全然違う気がするけど…」
花陽「あはは…」
真姫「…ああ、もう!イミワカンナイ!」
にこ「真姫ちゃん上手上手?♪次はね…」
…そんなこんなでなんとか曲は完成した。
半分くらい、いや…ほとんど真姫ちゃんに作ってもらったような気もするけど…ごめんね、真姫ちゃん。
206:
凛「――かよちんばいばーい!衣装作りがんばってねー!」
真姫「それじゃあね、花陽。」
花陽「うん、二人ともバイバイ。」
二人に挨拶をしてトートバッグから作りかけの衣装とソーイングセットを引っ張りだす。一人で部室にいるのはちょっと寂しいから、少しここでやっていこうっと。
委員会のお仕事で遅れてくるにこ先輩が来る前にある程度仕上げておかないと!
ちくちく ちくちく
う?ん…市販の衣装の改造だけど…結構大変だなあ…
「…じーっ…」
花陽「…」ちくちく
こんなことなら、ちょっと奮発して完全なレプリカを買ったほうがよかったかなあ…
…って、ダメダメ!にこ先輩に負けないように、頑張らないと!そんなことを考えていると。
ことり「じーっ…」
花陽「わあ!」
207:
驚いた、いつの間にかことり先輩が近くで私の手元を覗きこんでいる。
ことり「あっ、ごめんね?びっくりさせちゃった?」
花陽「あ、いえ…」
ことり「…ひょっとしてそれ、ステージ衣装かな?」
花陽「はい、まだまだ完成には程遠いんですけど…」
ことり「そっか、大変だよね。ごめんね邪魔しちゃって。ステージ、絶対見に行くからね!頑張って!」
花陽「はい!」
ことり先輩にそう答えて作業を再開する。
うう…それにしてもお裁縫って結構難しい…家庭家の教材みたいにここをこうやって縫うって線が付いてればいいのに…
ことり「じーっ…」
花陽「あ、あの…何か…?」
ことり「あっ、ごめんね?…もしよかったら、ちょっとやらせてもらってもいい?」
花陽「え?はい…」
ことり「ありがとう。…よいしょ…」
わ、すごい。ことり先輩に渡したお裁縫道具はまるで踊っているかの様に衣装を作り上げていく。
208:
花陽「す、すごいです…!」
思わず声をあげてしまった。まるでプロみたい、そう思っている間に私が今日中になんとか、と思っていたところまであっという間にできてしまった。
ことり「そんなことないよ?…えっと、ここはどうすればいいの?」
花陽「あ、はい!…一応、こんな感じにしたいんですけど…」
ルーズリーフに描いたデザイン画を見せるとことり先輩はわぁっと声を上げた。
ことり「わあ?かわいいねぇ?!…あ、でも…ここはちょっと直した方がいいかも?」
花陽「へ?」
ことり「ほら、普通のお洋服と違って激しく動いたりするでしょ?だから、ここが引っかかって破れたりしちゃうかも。」
花陽「あ…」
確かに、言われてみればそうかもしれない。
ことり「だからぁ…ここはこうして、ごまかしちゃえばいいんじゃないかな?そうしたらあんまり邪魔にもならないし、もっと可愛いと思うの。」
花陽「ふむふむ…」
ことり「ついでにこっちも直しちゃおっか、フワフワして見栄えが良くなると思うの。それからここの裏地も…」
209:
にこ「―――…誰?」
部室に入ってきたにこ先輩が怪訝な顔で尋ねてきた。
ことり「あ!ごめんなさい!お邪魔してます!」
慌てて立ち上がったことり先輩に続いて私も急いで説明する。
花陽「えっと、こちら、南ことり先輩です!すっごく裁縫がうまくって、それで、お手伝いしてもらって…」
ことり「あの、私、可愛い衣装とか大好きで、もしよかったらお手伝いさせてもらえたらなぁ?って…」
にこ「…そ。」
それだけ言ってにこ先輩は自分の席にドッカと腰を下ろした。…どうしよう。勝手に部室に人を入れたから怒ってるのかな…
にこ「…あんまり部外者を入れるんじゃないわよ。」
そう言って自分の分の衣装を手にとる。
ことり「ごめんなさい…えっと…じゃあ、私…」
にこ「いいわよ、別に。」
ことり「え?」
にこ「アイドルには専属スタッフも必要だしね。今だけ准部員ってことにしてあげる。…ありがと。手伝ってくれて。」
ことり「あ、はい…!ありがとうございます!」
そう言ってことり先輩はにこにこしながら私に顔を寄せてきた。
ことり「…怖そうだけど、優しい人なんだね。」
花陽「はい。それはもう…」
私もにこ先輩を褒められてつい嬉しくなっちゃう。
210:
「……え?アレ?」 「……」 「??♪」 
3人でチクチクと衣装に針を通していく。多分この中で1番下手くそな私はことり先輩の指導を受けながらだ。
ことり「うん、そこはね…そう、そう。」
花陽「えっと、こうですか?」
ことり「そうそう!かよちゃん飲み込みが早くて上手だよ?♪」
花陽「えっ?かよ、ちゃん…?」
ことり「うん!かよちん、ってお友達に呼ばれてたでしょ?だからかよちゃん!……かわいいと思うんだけど…だめかな?」
そう言ってことり先輩は上目遣いで私を見上げてきた…うぅ…本当にかわいいよぉ…
花陽「あ、いえ…イヤじゃないです…全然…うれしいです…」
ことり「本当?よかった?!じゃあ、かよちゃんはこれからかよちゃん、ね♪」
にこ「…」
ことり「か?よちゃん♪えへへ♪」
花陽「こ、ことり先輩///」
211:
にこ「…ねえ、遊びに来たんなら帰ってくれない?」
ことり「あ、ごめんなさい…」
にこ「花陽も、真面目にやんなさいよね。」
花陽「すみません…」
いけないいけない。そうだよね、にこ先輩の言うとおりだよ。
叱られた分名誉挽回しないと、そう思って一心不乱に針を動かしていると、
花陽「…痛っ!」
ことり「かよちゃん!?大丈夫?」
にこ「ちょっと!平気?」
花陽「あ、はい…少し刺しちゃっただけですから…」
にこ「血が出てるじゃない、待ってて、絆創膏がここに…」
にこ先輩が慌ててカバンを漁っていると。
ことり「…はむっ」
花陽「え?」
――ことり先輩に食べられちゃった。
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