花陽「アイドル研究会!?入部します!」 Part3back

花陽「アイドル研究会!?入部します!」 Part3


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9:
『モヤモヤ』
にこ「―ちょっと、何よそれ。」
お昼休みの練習前、にこ先輩は屋上にやってきた希先輩に問いかけた。
希「ああ、気にせんといて。来校者用のビデオを撮るだけやから。」
花陽「え?それって…」
希「うん!『愛と感動のドキュメンタリー!音ノ木坂アイドル研究部汗と涙の日々に密着!?少女達は笑う!花も嵐も踏み越えて?』っていう…」
にこ「あっそ。始めるわよ、花陽。」
花陽「あっ?えっ?は、はい!」
希「…?なんや、つれないなあ、にこっち。ノッてくれてもええやん。」
花陽「あ、あの…」
希「ふふ。別に、アイドル研究部だけ撮ってるわけやないよ。学校紹介の映像の一部に使うだけやから、普段通りに、な?」
花陽「あ、そうなんですか…よかった。」
にこ「…」
あっ…にこ先輩を待たせちゃってる。
花陽「ご、ごめんなさい!にこ先輩!」
にこ「…別に。いちいち謝らなくていいわよ。」
花陽「…はい。」
230:
『昨日はごめんね、花陽。』
翌日、にこ先輩はドキドキしながら部室に顔を出した私に謝ってきた。
あれから、たくさんたくさんメールをしたけど、たった一通『怒ってない』って返ってきただけだったのに。
なんだか拍子抜けしちゃった。ひょっとしたら本当に怒っていなかったのかもしれない。
そうだよ、昨日はちょっと機嫌が悪かっただけかもしれない。本当に用事があって急いでいたのかもしれない。
そうだよ、きっと、そうだよね―――
????????♪
にこ「ハッ……ハッ…」
花陽「…ぇと……あっ…」
スピーカーから流れる音楽に合わせてステップを踏んでいく。
にこ先輩の踏むステップに私はドタドタとついていくのが精一杯。
希「…何度も、何度も反復練習を重ねる二人。華麗なステージを支えているのは彼女たちの地道な努力なのである。」
その上、今日は希先輩も見ている。ビデオで撮られている。そう思うと余計に気になって――
花陽「…ぁっ……きゃっ!」
231:
派手に転んでしまった。
にこ「…立てる?」
差し出されたにこ先輩の手をとって立ち上がる。
花陽「ありがとうございます…、あの、ごめんなさ」
にこ「もっかい。頭からやるわよ。」
にこ先輩がスピーカーの方に歩いて行く。
花陽「………はい。」
?????????♪
希「おお??」
希先輩がパチパチパチと手を鳴らす。
よかった、今度は最後まで踊ることができた…でも。
にこ「…っ………どう、希?ちょっとしたものでしょ?」
希「うんうん。なかなかどうして、大したものやねえ。」
花陽「え?あ、あの…」
にこ「ああ、休憩にしていいわよ。今のはすごくよかったわ。」
232:
――――嘘。全然ダメだよ。そんなの、私が1番よく知ってるよ。
リズムがズレてる。動きが揃ってない。指先はよれよれ。バランスの悪い位置どり。表情だって作れてない。
にこ先輩が気づかないはずがない。それなのに、どうして…
どうして、何も、何も言ってくれないの…?
233:
にこ「ねえ、これ見てみてよ。」
にこ先輩がアイドル雑誌を突き出してくる。
花陽「わっ、すごい…こんなにランクが上がってる!」
記事の内容は私が注目していたアイドルの読者人気ランキング。にこ先輩、覚えていてくれたんだ。
にこ「さすが花陽ね。部長として鼻が高いわ。」
そう言って、また雑誌を自分の方に引き戻す。
やっぱり、なんだか変だ。
どこが変かって言われてもうまく答えられない。
いつも通りに話しかけてくれるし、優しくしてくれる。
…ちょっと褒められることが多くなったような気がするけど。
なんだか、にこ先輩みたいな『にこ先輩』と話している感じ。
どこか、何か、ちょっとした溝のようなものを感じてしまう…考え過ぎかな。
234:
あれから、ことり先輩も『邪魔しちゃったみたいだから』と言って、部室には来ていない。
静かな部室には先輩が雑誌をめくるかすかな音と、グランドで練習する部活の掛け声だけが聞こえる。
花陽「あ、あの…」
にこ「ん?」
花陽「今日は…練習…しなくても、いいんですか?」
にこ「ああ…お昼の時点で結構よかったからね。今日は休息よ。」
花陽「で、でも……いえ、なんでもありません…」
にこ「…何か食べに行きましょっか。おごるわ。」
花陽「え?」
にこ先輩が突然立ち上がってカバンを手に取る。
にこ「鍵閉めといて。」
どんどん先をいくにこ先輩。私は慌ててそれに続いた。
235:
『世界一かわいいにこにーとストーカーとアイツ』
にこ「――あっついわね…体育館の中なんて蒸し風呂じゃないの…」
3年生の合同体育。サウナと化した体育館をこっそりと抜けだして目立たない場所の外壁に持たれる。
体操着の胸元をパタパタと開いて風を取り入れると、木陰を渡ってきた涼しい風が心地よい。
希「――いけないんだ。せんせー、にこっちがサボってまーす。」
にこ「…アンタもでしょ。」
また来た。なんでいっつも都合よく出てくるのかしらね。もしかしてストーカー?
希「ふふ、せやね。隣ええ?」
にこ「イヤよ。」
希「ほんじゃ、お邪魔しまーすっと。」
にこの話を無視して隣に腰を下ろす。同じように胸元をパタパタと開くけどあまり効果はないみたい。…ざまあみろだわ。
236:
希「ふう…で、花陽ちゃんと何かあったん?」
にことは目を合わさずに希が問いかける。…本当、ストーカーなんじゃないかしらコイツ。
にこ「は?別に、なんにもないけど
……って!ちょっ!それやめっ!あっ、んっ…!」
希「素直じゃない子はも?っとわしわしするよ??ん??」
にこ「わかった!わかったから!やめてってば!…んっ!ひゃんっ…!」
にこ「――ってわけ。大したこと無い話でしょ。」
希「…」
にこ「…何よ…なんか文句あんの。」
希「ううん、にこっちはかわええなあ?!!」
にこ「ちょ!くっつくな!暑苦しいのよアンタ!」
希「ふふ、でも、そんな心配することあらへんよ。大丈夫。」
希「にこっちが素直に話せばええことやん。素直な気持ち、思ってることを。」
にこ「…それができたら苦労しないわよ…」
希「大丈夫やって、なんてったって花陽ちゃんは――」
「希。」
希の脳天気な声を遮る容赦無い口調。…あーあ、嫌なやつに見つかったわ。
237:
絵里「何してるの?いくら期末テスト後のレクリエーションだからってこんなの見つかったらただじゃ済まないわよ。」
希「やっほー、エリチもどう?真ん中空いてるよ?。」
絵里「ふざけないで、私はそんなことしないわ……矢澤さん、だっけ?」
うわ、こっちに来た。特に接点があるわけじゃないけど…なんかコイツ苦手なのよね…
人目をひくルックスとは裏腹な冷徹な態度っていうの?仕事一筋!みたいな。みんなに愛されるにことは正反対だもんね。
ちょっと…そんなに睨まなくても別にアンタの相方を取ったりしないわよ。
にこ「そうだけど…何?」
絵里「あなたも早く中に戻って。今なら先生も気づいてないわ。」
にこ「…気づいてないならいいじゃない。うまく誤魔化しといてよ。」
絵里「そうはいかないわ、私とあなた、直接は関係ないけど、これでも一応生徒会長なの。見過ごすことなんてできないわ。」
にこ「…めんどくさ。」
小さく毒づく。
希「エリチ、またそんな真面目っ子さんみたいなこと言って…」
絵里「私は真面目なんです。いつだって、全ての生徒がより良い学校生活を送れるように願っているわ。」
にこ「ええ?そうなのぉ??じゃあじゃあ?、うちの部にも、も?っとたくさん予算くれたら嬉しいなあ?って。」
語尾にいっぱいハートマークをつけて話す。何よ、真面目ぶっちゃってさ。
238:
絵里「はあ?それとこれは関係ないでしょ?」
にこ「な?んだ。がっかり?。にこがっかりして疲れちゃったなあ??だからここで休んでていいかなあ??いいよねぇ??」
絵里「…」
あ、やば。目の端がピクピクしてる。
絵里「…じゃあ、こっちも言わせてもらうけど、希のビデオを見させてもらったわ。」
にこ「…は?」
希「ちょっとエリチ…」
絵里「…私の言いたいこと、わかるわよね。ここまで言えば。」
にこ「え??にこわかんなぁ?い?っていうかぁ?、素人さんにアイドルのことなんかわかるんですかあ??」
そこまで言うとアイツは一歩下がってかすかな声でリズムをとりはじめた。
絵里「…???♪」
にこ「え?」
――嘘でしょ、なんでコイツが歌えるの?踊れるの?にこ達の曲を。
239:
?????????♪
一通り踊り終わると呆然とするにこにアイツは言い放った。
絵里「……どう?さすがに全部…は無理だけれど。これでわかってもらえた?『素人さん』にも真似できるパフォーマンスのこと。」
にこ「なっ…!」
思わず頭に血が上りそうになった。
…でも、でも、悔しいけどコイツの言うとおり。ここで怒ってもにこの負け。
それだけじゃない、もっともっと悔しいのは…絵里の方がずっと上手だったってこと。
細かい振付は違ったり、アイドルっぽさでは負けてないけど…ダンスとしては完全に負けていた。
絵里「悔しかったら自分で評価を勝ち取ってみることね。そうしたら、生徒会としてそれにふさわしいバックアップを約束するわ。」
にこ「……ぐっ…!」
今度こそ、にこは何も言えなかった。
そうよ、コイツの言うとおりよ。昔も今も、にこはずっとにこのまま。自分では何もしないで文句を言うだけ――
240:
にこ「…」
絵里「…」
お互い、睨み合う。悔しいけど、負けだってわかってるけど。だから絶対に引きたくない。
希「はいはい、そこまで。」
絵里「希…」
希「あんな、にこっち。エリチはな、これでエリチなりに応援しているつもりなんよ。なあエリチ?」
にこ「は?」
絵里「ちょっと!別に私はそんな!」
希「だってあんだけ『スクールアイドルなんて素人のお遊びでしょ?学校の代表としてふさわしくないんじゃないかしら。』なんて言ってたやん。」
希「その割にはよう踊れてるやん。ウチのビデオ見ただけで。」
絵里「それは…その…亜里沙が……楽しみだって…音の木坂にもスクールアイドルがいるんだって…言うから…」
希「ふーん、ま、そういうことにしとこか…それにね。」
希「自分で言ってて苦しいこと、言ったらあかんよ。」
241:
絵里「…」
希「ほんじゃ戻ろっか。にこっちも点呼までには戻ってくるんやで。」
にこを無視して話してた二人。希に促されてアイツ…絢瀬絵里が渋々戻っていく。
その途中でにこを振り返って一言、捨て台詞を残していった。
絵里「――矢澤さん。希はお祭りみたいなものって言ってるけどね。あなたは音の木坂の看板を背負って出ているの、それを忘れないでね。」
にこ「…わかってるわよ。」
今度こそ絵里は振り返らなかった。
254:
『二人で一緒に』
凛「…ねえ、あんまり無理すると体壊しちゃうよ?」
もう辺りが暗くなりかけた神田明神の境内。ベンチに座っていた凛ちゃんが心配そうな顔で話しかける。
花陽「ありがと、凛ちゃん――でも、にこ先輩にこれ以上迷惑かけられないから。」
最近のにこ先輩の態度、私なりに考えてみたの。
そして出した結論。にこ先輩はあまりにも出来の悪い私に呆れちゃったんだよ、きっと。
いざアイドル活動してみたら『何この子!全然ダメじゃない!』って。
それに、最近先輩は元気がなくて何か考えこむ事が多い。きっと私とのステージが不安なのかな、って思う
じゃあ、私がしなくちゃいけないことは一つ――
花陽「…あつっ!」
凛「かよちん!大丈夫?ねえ、もう今日はやっぱり…」
花陽「ううん、平気…ごめんね凛ちゃん、先に帰ってていいよ。」
凛「かよちん…」
花陽「こんなんじゃ…こんなんじゃダメだよ…」
255:
―――??????♪
花陽「っ…と!」
最後のポーズを決めて、私は思わず心のなかでガッツポーズをした。
うん!今日は今までで1番うまく踊れた!課題も克服出来てたし、にこ先輩もいつになくノッていたと思う。これなら…
にこ「…」
あれ?…ひょっとして、またダメだったのかな。
にこ「お疲れ、ちょっと確認してみましょ。」
二人でビデオカメラを覗きこむ。やっぱり、自主練習の成果が出てると自分でも思う。
花陽「ど、どうですか…?」
あ、また険しい顔。
花陽「わ、私としては結構いいんじゃないかな、って思ったり…」
にこ「…そうね。いいんじゃないかしら。」
嘘。これは何か隠してる時の顔だもん。本当は不満なんですよね。…やっぱり私じゃダメなのかな…
にこ「…じゃ、そろそろ上がりましょ。」
花陽「あ…その…」
にこ「?」
もう一回、本当はそう言いたかった。でも、これ以上私の都合でつきあわせる訳にはいかないよね。
それでも、このまま先輩と別れたくなかったから。こんな空気のままは、もういやだったから、私は提案した。
花陽「お、お茶して帰りませんか?」
256:
?2?
どこか上の空の先輩を半ば無理やり連れだすようにして、目的のお菓子屋さんに向かって歩く。
夏の昼下がり、下町風情の残る商店街には人気もなく、どこかから風鈴の音が聞こえてくる。
花陽「ああ、あれです。特にお饅頭が美味しいんですよ、うちのお母さんも好きで…」
にこ「そう…」
先輩の気のない返事に心が折れそうになる。ううん、私が誘ったんだもの。少しでも前みたいに…
花陽「…」
…やっぱり気まずいなあ。そして、何か考えこむ先輩と一緒に曲がり角を曲がった瞬間。
花陽「きゃあっ!」
にこ「きゃっ!」
突然、私達はずぶ濡れになった。
257:
「――わわっ!ごめんなさいっ!大丈夫?」
え、え?何が起きたの!?
にこ「ちょっと!なにすんのよ!」
「本当にごめんなさい!あんまり暑いから水撒きしようと思って…そしたらなんか楽しくなってきちゃったからホースでバーって…」
駆け寄ってきた女の子がペコペコと頭を下げる。
花陽「うぅ…」
直撃しちゃったみたい…シャツまでぐしょぐしょだよぉ…
「えっ、嘘!?しかも音の木の子!?…あっ、とにかく中に入って!タオル持ってくるから!」
音の木?そう言えばこの人、割烹着の中にうちの制服を着ている。
にこ「はあ?なに言ってんの?」
「ここ、穂乃果のうちなの!」
花陽「ほのか?」
穂乃果「うん!私、高坂穂乃果!」
顔を見合わせる私達を置き去りにして、穂乃果さんは慌ててお店の中に入っていった。
258:
私達は穂乃果先輩(どうやら2年生らしい)のお部屋に通された。
穂乃果「本当にごめんね!とりあえずお風呂が沸くまでこれを着てて!穂乃果のお気に入りなんだ?。」
びしょ濡れの制服を渡して、下着姿になった私達に手渡されたのは穂乃果先輩のTシャツとジャージ。
大きく『ほ』って書いてあって、しかも色違い。こんなブランドあったっけ?
にこ「うわ、ダサ。」
にこ先輩がちっちゃくつぶやく。
穂乃果「制服綺麗にしてくるから、どうぞくつろいでね!その辺の漫画とか勝手に読んでいいから!」
穂乃果先輩がトットットと階段を降りていく音がする。明るくて元気な人だなあ。
にこ「…あの子、絶対にこのこと下級生だと思ってるわね。」
にこ先輩が不満そうに唇を尖らせる。
にこ「…くしっ!うう、夏とは言え、このままじゃ風邪引くわ。不本意だけどさっさと着替えましょ。」
花陽「…」
にこ「花陽?」
259:
花陽「…ごめんなさい。私がお茶しよう、なんて言ったから…」
にこ「え?」
私って本当に、本当にどうしてこうなんだろう。
ドジで、どん臭くて、失敗ばっかりの私。先輩に迷惑かけてばっかりの私。ますます先輩に嫌われたよね。
にこ「…え?ちょっと!どうしたのよ!」
花陽「…っ…グス…」
自分が情けなくって、悔しくって、ぽろぽろ、ぽろぽろ、涙が落ちてくる。
花陽「…グス…ヒック…迷惑かけて、ヒグッ、ばっかでっ、ごめんなさい…」
にこ「はあ?なに言ってるのよ…本当に大丈夫?どこか痛い?具合でも悪いの?」
花陽「だって、だって…先輩にっ、これっ、これ以上嫌われたくなくってっ…今日、だってっ…」
にこ「何言ってるのよ。花陽のこと嫌いになんかなってないわよ。」
花陽「だってっ、先輩っ、最近元気ないっていうか…私の事避けてるっていうか…」
にこ「そ、それは…」
260:
花陽「…ごめんなさい。無理しなくていいです。先輩、優しいですもんね。」
にこ「…」
花陽「私、迷惑かけてるって自覚してますから。足手まといだって、知ってますから。」
にこ「…何よ、それ。」
花陽「反省、してますから。だから、だから…」
にこ「何よそれ!」
花陽「っ!」
にこ「勝手に決めてんじゃないわよ!いつアンタのこと嫌いになったなんて言ったのよ!んなことあるわけないでしょ!」
花陽「で、でも…」
にこ「…花陽だって、あのことりって子とすごく楽しそうだったじゃない!」
261:
花陽「え?」
にこ「アンタこそ!にこよりあの子の方が好きなんでしょ?優しそうだし!上級生っぽいし!…同じ部のにこよりも懐いてるみたいだし…」
花陽「そ…そんなことありません!確かにことり先輩は素敵な人ですけど…私は…にこ先輩のこと…尊敬、してますし…」
にこ「…!」
花陽「だから…だから…最近、にこ先輩が遠慮してるから…私、もう、見捨てられたんだと思って…」
にこ「だからそれは…」
花陽「…呆れて、るんですよね?全然上達しない私に。」
にこ「違うわよ!そうじゃなくて…その…」
にこ「その…アイドル、やれるかも、ってなって本当は嬉しかったの。すごく嬉しかったの。でもね、それ以上に怖かったの…」
にこ「…本気でぶつかって、本気で叱ったら…きっと、にこのこと嫌いになるんじゃないかって…」
にこ「アンタとことりを見てたら、すっごく仲がよさそうで…だから…あの子みたいに優しくしないと…アンタに嫌われると思って…」
262:
花陽「そんな…」
にこ「…がっかりした?こんな臆病な先輩で。」
花陽「…にこ先輩っ!」
花陽「私のこと、もっと叱ってくださいっ!」
にこ「え?」
花陽「ダメなところがあったら言ってくださいっ!思ったことは全部言ってください!いっぱいいっぱいダメ出ししてください!」
花陽「私、絶対先輩のこと嫌いになったりしません!逃げたりもしません!だから…遠慮はなしです!」
にこ「…ふふっ、何よ、それ。…アンタも大概ね。そっか…うん…ごめんね花陽。」
にこ「それじゃ、これで仲直りね。」
先輩が私の手をぎゅっと握ってくれた。
263:
花陽「にこ先輩…!」
私、嬉しくて嬉しくて、思わず先輩に抱きついちゃった。
花陽「よかった…!私、本当ににこ先輩に嫌われたと思って…」
にこ「バカねっ、何度も言うけど、そんなことあるわけ無いでしょ。」
にこ先輩が私の頭をそっと撫でてくれる。
にこ「本当に、遠慮なしだからね。」
花陽「はい!」
にこ「すっごい厳しいわよ。もう大変よ。」
花陽「はい!」
にこ「…キツかったらいつやめてもいいからね。その時はにこも…」
花陽「そんなこと絶対ありません!」
にこ「…バカ。」
にこ先輩が私の頭をギュッと抱き寄せた。
264:
とくん、とくん――白くて、すべすべしてて、ほんのり温かい小さな体から先輩の心臓の音が聞こえてくる。
うっすらと香る。先輩の香り、甘くて優しい、ほっとする香り。
そうしていると、なんだかにこ先輩のぬくもりが愛しくなって、一層強く先輩にしがみついてしまった。
にこ「花陽…」
花陽「にこ先輩…」
先輩の名前を呼んで、深く、静かに息を吸い込む。
どうしてだろう、胸の中が締め付けられるような切ない気持ちでいっぱいになる。
先輩の顔、こんなに近くで見るの初めてかも。
おっきくて、クリクリした黒目がちな瞳。
少し跳ね上がった長い睫毛。
小さくても形の良い鼻梁。
ほんのりと赤みが挿した頬。
そして、柔らかそうな桃色の唇。
私は――
266:
穂乃果「ごめんね!お洋服乾くまでお饅頭でも食べてて、って…え?」
突然ふすまを開けた穂乃果先輩がピタリ、と動きを止める。
穂乃果「…もしかして、お邪魔だった?ごめんね?」
花陽「え?え?ピャアアアァ!!こ、これは違うんです!その!そうじゃなくって!」
にこ「そう!そうよ!誤解なの!あれよ!ほら!いわゆるひとつの百合営業的な!」
二人で必死で弁解する。弁解?何に?
穂乃果「あ、うん!大丈夫大丈夫!穂乃果、そういうのよくわかんないけど…海未ちゃんもよく告白とかされてるし!」
穂乃果「ほら、ね!女子校だしね!そういう漫画もあるし!え、えーと…あ、穂乃果、少し、いやしばらくお店番してるから!それじゃ!」
にこ「だから違うっての!ちょっと!待ちなさい!」
「もー!お姉ちゃん、さっきからうるさい!」
穂乃果「雪穂!来ちゃダメ!」
「なんでよ、亜里沙と勉強してるんだから少しは……ご、ゴメンナサイっ!!!」
「ハルァショー…!」
花陽「…ダレカタスケテエーー!!」
268:
にこ「――まったく、最悪よ。」
花陽「そうですね…ふふ。」
お星様がまたたき始めた頃、私とにこ先輩は並んで帰り道を歩いていた。
にこ「何よ、嬉しそうじゃない。あんな目にあったってのに。」
花陽「えへへ、だってにこ先輩とまたこうして仲直りできたから…。」
そう言ってきゅっと先輩の手を握る。
にこ「…バカ。」
なんとなく無言になっちゃった。その橋を渡ったらお別れ。言わなくても同じことを考えてるってわかる。
270:
にこ「…じゃ、にこはこっちだから。」
花陽「…はい、失礼します。にこ先輩。」
にこ「…あ、あのさ、それもやめましょ。その…呼び捨てでいいわよ。敬語もなし。」
花陽「え?」
にこ「遠慮なしって言ったでしょ?」
花陽「え、でも…」
にこ「ほら、また。にこがいいって言ってるの。どうせステージに立ったら先輩も後輩もないんだから、ね?」
花陽「そ、その…わかりました…ううん。わかったよ…に、にこ、ちゃん…」
なんだろ、恥ずかしいけど…ちょっとだけ、嬉しい。
にこ「…うん!花陽!また明日ね!」
にこちゃん…にこちゃん。私はにこちゃんが見えなくなるまで心のなかで繰り返した。
271:
????♪
花陽「…っと!」
にこ「…っし!!」
最後のポーズを決めて、凛ちゃんと希先輩がパチパチと拍手する。
凛「かよちん!やったね!いい感じだにゃ?!」
希「うんうん。ウチから見ても今までで1番よかったと思うよ。」
にこ「ダメね。全然ダメ。」
希「え?」
にこ「まだまだラスト前、ズレてるわよ。もう一回ラスト前のとこから。」
花陽「――いえ、頭からやりましょう!」
凛「かよちん?」
花陽「本番に向けて、全体的にもっと大きく動いたほうが見栄えがいいと思うの!…にこちゃん、もう一回お願い!」
凛「に、にこちゃん!?」
希「…へえ。」
にこ「…フン!オッケー!花陽!それでこそ、よ!」
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