森久保乃々「手作りとか...むーりぃ...」back

森久保乃々「手作りとか...むーりぃ...」


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3:
「手作りとか…むーりぃ…」
チョコレートのレシピを片手にしながら呟く。
そもそもチョコレート作りどころか、料理すらまともにしたことがない。
そんな私がどうしてこんなことをしているかというと、
いつもお世話になっている“あの人”に感謝の気持ちを伝えようと思ったから…。
5:
そもそも私がアイドルになってきっかけは親戚に誘われたからだった。
昔から少女漫画が大好きで、漫画の中の女の子達はいつもキラキラしていた。
引っ込み思案で、言いたいこともなかなか言えない私は漫画の中の女の子たちに憧れていた。
9:
そんなある日、私の家に親戚が遊びにきていた。
その親戚が新しく出来た芸能事務所のオーディションを受けるそうで、私も一緒にどうかと誘ってきた。
10:
引っ込み思案な私がアイドルになれるわけないと、最初は断ろうしたが、結局親戚に押し切られる形で
事務所のオーディションを受けることになって、合格してしまって、私はアイドルになってしまった。
14:
初めて事務所に行くことになった日も、朝から気分が憂鬱だった。
引っ込み思案だし、人見知りだし、こんな子じゃ少女漫画みたいなキラキラしたアイドルなんかなれっこない。勇気を出して断ろうと思い、事務所の扉を開いた。
15:
出迎えてくれたのは事務員の綺麗なお姉さんで、すぐに応接室に通され、しばらくここで待っていてね、と待つことになった。待っている間、頭の中でどうやって言い出せばいいのかぐるぐる回っていた。
そんなことを考えていると扉が開き“あの人”が入ってきた。
20:
私は開口一番で言った。
「あの…もっ…もりくぼですけど…」
あの人はニコニコしながら「知っているよ」と答えた。
思わず怯みそうになったけど、勇気を出して続けた。
24:
「あ、はい、森久保乃々ですけど、あの、プロデューサーさん、いきなりで申し訳ないのですけど、あの、あたし、もうアイドルとか辞めようかなって思って…あの、その…」
そこで言葉が途切れてしまう。
言ってしまった。これでアイドルに成らなくてすむ。
少女漫画の世界に憧れている引っ込み思案な女の子に戻れるなんて思った。
26:
でも、あの人は入ってきたときと同じようにニコニコしながら私に「少し話をしようか」と優しく話しかけてきた。
これがあの人と初めて会話した日のことだった。
27:
結局、あの人に押し切られるような形で、アイドルの活動を開始することになってしまった。
アイドルとして活動を始めてからも、何度も途中で辞めようとも思ったし、辞めよう
とあの人に言おうとしたこともあった。
あるTV番組の収録前
「実は大事な話が…え、出番…あ、はい…あうぅ…」
ある雑誌撮影の前
「着替えても……あ、ダメですか…」
ある日のLIVEバトルの前
「帰りたいんですけど…」
28:
弱音を何度も吐いてもあの人はニコニコしながら私にいつも優しい言葉をかけてくれた。
弱音ばっかり言っていた私だったがなんとかアイドルとして頑張れた。
「こんな私なのに、見捨てずにいるなんて…変わった人ですね…」って言った時にも、こんな私だから良いんだよと、あの人言ってくれた。
こんな私が?ネガティブでオドオドしていて、弱音ばっかり言っている私が?あの人はいつもの笑顔でそういってくれた。
31:
それからなんとか今日までアイドルを続けてくることができた。
相変わらず話をするのは得意ではないけれど、TVや雑誌に出ることも多くなって、忙しくなってきた。
ある日私をアイドルに誘ってくれた親戚からメールが届いた。メールには最近の乃々はキラキラしていてかわいくなったと言われて嬉しくなった。
33:
あの人が一緒だったからここまで来れたけど、いつも弱音ばっかりで、ちゃんとお礼の言葉を伝えられていないことに気付く。
どんな風に伝えればいいんだろう…言葉だと伝える自信がないよぅ…ずっと考えていた。
そんなある日、TVでバレンタインの特集番組を観て、チョコレートを渡す時に、一緒に感謝の気持ちを伝えよう思い、話が最初に戻る。
35:
「手作りりとか…むーりぃ…」
レシピを片手にしながら思わず呟く。
うぅ、やっぱり買ったほうが良かったかななんて思ったりもしたけれど、私の感謝の気持ちを伝えるためにも頑張ろうと思いなおす。
昔の私だったら、やる前から諦めていただろうけど、頑張ろうと思えるようになったのも間違いなくあの人がいたから。いつも優しいことばをかけてくれたあの人のおかげ。
それから何時間もかけて、形は悪いれども、何とか手作りのチョコが出来上がった。
36:
事務所に向かう途中、朝から気分が憂鬱だった。
手作りで形も悪いし、美味しいと言ってもらえるかどうか不安だった。
大好きな少女漫画の女の子みたいに上手にはできなかったけれども、勇気を出して渡そうと思い、事務所の扉を開いた。
初めて事務所の扉を開けた時と同じように事務員のちひろさんがおはようと挨拶をくれた。あの人はまだ来ていないようだった
37:
うぅ、やっぱりむーりぃ…と一瞬思ったけれども、今日は勇気を出して言うって決めたんだからと自分に言い聞かす。
そんなことを考えているとあの人が事務所に入ってきた。
39:
私は勇気を出して、あの人の前に立った。
「プロデューサーさん、あの…ぁ、おはようございます。...あのぅ...色々と…その…いつもありがとう……ございます...あうぅ…」と言った。
そして、作ってきたチョコを渡しながら
「もし、これからお仕事増えちゃったら…私1人じゃ絶対無理ですけど…。だからプロデューサーさんも絶対一緒ですよ。絶対ですよ?」
「だから…あの…プロデューサーさん。私…もうほんの少しだけ…頑張って見せます…」
と言った
40:
私は恥ずかしくて顔をなかなか上げることができなかった。
最初キョトンとしていたあの人だったが、私が顔を真っ赤にして俯いているのを見て優しく頭をなでてくれた。
顔を上げるとあの日と同じ笑顔があった。
(終わり)
44:
おっつおっつ
よかった
4

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