にこ・花陽「沈まぬ太陽〜天国にいる兄と弟へ〜」 Part3back

にこ・花陽「沈まぬ太陽〜天国にいる兄と弟へ〜」 Part3


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1:
第7話 さようなら、それぞれの悲劇
・・・
矢澤家
こころ「お姉さま」
ここあ「お母さん。虎太郎はどうなったの?」
にこ「きれいな顔してるでしょ?ウソみたいでしょ?死んでるんだよ・・・。もう動かないんだよ。ねえ、嘘みたいだよね・・・。」
にこ「嘘って言ってよ、虎太郎・・・。」
矢澤母「きれいな顔してることが奇跡よ。ほとんどの遺体が原型を留めていないから・・・」
矢澤母「私のせいだわ。私が行けなくなって、1人で飛行機に乗せたりしたから・・・」
にこ「いや私のせいだ・・・。飛行機を変えたりしたから。私が長崎まで迎えに行ってあげればこんなことには・・・」
にこ「いや、私が安いからって理由で桜ヶ丘航空になんか乗せたから・・・」
虎太郎を殺したのは私だと、自分を責め続けました。あの飛行機に乗せたのは私と母だった。
しかしそんなことを言っても仕方なかった。運命には抗えない。
82:
にこ「あいつ、ついこないだまで注射やジェットコースターも怖がってたほどの怖がりなんだぜ。」
にこ「最近ようやく注射で泣かなくなったけど・・・。」
にこ「その虎太郎があの飛行機の中でどんだけ怖い思いをしたか。」
にこ「死の恐怖なんて注射やジェットコースターの比じゃないだろ。」
希「そうやね。」
にこ「墜落の瞬間、どれだけ痛かったか・・・。」
にこ「まだ小学生なのに、1人ぼっちでどんだけ辛い思いしたか。」
にこ「私だったら声を上げて泣いてただろうな・・・」
にこ「なのにあの虎太郎が、あんなに怖がりで弱虫だった虎太郎が・・・」
にこ「あの恐怖の中でメールで『産んでくれてありがとう』だなんて・・・。そんな言葉が出てくる小学生がどこの世界にいるんだよ・・・。」
にこ「だいたいそれ子供が死に際に言う台詞か?逆だろ。親の死に際に子供が言う台詞じゃねえか。」
にこ「親にとって死に際にそれを言ってくれたら嬉しいが、子供が死に際にそんなこと言われたら一生後悔するだろ。なんで自分より先に逝かせてしまったんだ・・・。」
83:
にこ「私だってそうだ。私たち四兄弟で一番遅く生まれたのに、一番早く死んじまうなんて・・・。」
にこ「それでもあいつは最後に自分以外の誰かを祈ることができた。」
にこ「あいつ、最後の最後に男の意地を見せたんだ。私にはとてもできないこと・・・」
希「にこっち・・・。」
真姫「にこ・・・」
にこ「全部私が悪いんだよ。係を決めるじゃんけんでいつも負けるのも、学園祭のくじ引きで私が外れて講堂が使えなかったのも・・・」
にこ「虎太郎が事故に遭ったのも・・・」
にこ「でもこれは運が悪かったで片付けられる問題かよ・・・」
にこ「希が羨ましいよ。」
にこ「希って生まれてから一度もくじ引きを失敗したことないんだよな。」
にこ「だったらあの学園祭の講堂使用権をかけたくじ引きでもあんたが回していれば当たってたのかな?」
希「あれは、部長のにこっちの顔を立ててあげたんや。」
にこ「今回も、乗る飛行機をあんたが選んでいたら、虎太郎は死なずに済んだのかな。」
希「そんなのウチにもわからないって」
真姫「いつ事故が起こるかなんて誰にもわからないよ。」
にこ「神様って酷いよ。酷すぎるよ。虎太郎の幸せ、全部奪って行ったんだ。」
にこ「私、虎太郎に何もしてやれなかった。長女の私から見たら年の離れた弟だから、ただの子供にしか思ってなかった。」
にこ「何やってたんだろう私。こんなことなら、もっと優しくしてあげればよかった。」
84:
・・・
虎太郎が通っている小学校でお別れ会が行われた。
そして矢澤家でも葬儀が行われた。
お別れ会では虎太郎が機内で死を覚悟しながら母に送ったメールが紹介された。
諸君らも虎太郎君みたいにどんなときでも誰かを祈れる人になってほしい、そのようなことを小学校の校長先生が言っていた。
・・・
こころ「虎太郎、いなくなっちゃったんだね。」
ここあ「そうだね。」
こころ「でもあんまり変わらないけどね」
ここあ「そうだね。そういえばいたよね、って感じ。」
ここあ「いてもいなくてもどうでもいい存在だったな。でもいないとちょっと寂しいかも。」
こころ「言っちゃ悪いけど、不登校だった生徒が死んだとか、退学したようなものかな。」
こころ「虎太郎との思い出なにかある?」
ここあ「家族でキャンプに行った時とか?あまり覚えてないな。お姉さまとの思い出はいっぱいあるけど。」
ここあ「私たち四姉弟で唯一の男だったからね。あいつとは遊ぶ気になれなかった。」
85:
こころ「というか虎太郎のほうが私やここあやお姉さまのこと避けてたし、私たちのこと嫌いなのかな、って思ってた。」
ここあ「正直言ってあいつ邪魔だったけど、本当にいなくなっちゃうと寂しいな。」
こころ「ひょっこり出てこないかな。幽霊とかで。」
ここあ「いたらそれはそれで怖いよ。」
ここあ「幽霊より、バックダンサーとかで」
こころ「なんでバックダンサー?」
ここあ「間違えた。バックダンサーじゃなくて・・・、BLとかで。」
こころ「BL?あんたそういうの読んでたっけ?」
ここあ「違う。ABC・・・。」
ここあ「いやNPB・・・、YMC・・・」
こころ「もしかしてNPCって言いたいの?」
ここあ「うん、それ、NPC。」
こころ「ないよ。人間がNPCになるとか。ABの高松じゃあるまいし。」
ここあ「でも、今頃は死んだ世界戦線で戦ってるのかな。」
こころ「あんな戦線本当にあったら怖いよ。」
ここあ「アインクラッドに閉じ込められてたりするかも。そしてボス攻略目指してギルド無冠の五将で戦ってたり。」
こころ「そんなの実在したらもっと嫌だ。」
86:
・・・
にこ(こころとここあ、今日も夜空見てるんだ。)
こころ「今夜は星が綺麗だね。」
ここあ「いや、都会からは見えないでしょ。」
こころ「見えてるふりだよ。」
ここあ「虎太郎ってお星様になったんだね。」
こころ「うん、多分そう。」
ここあ「虎太郎の星ってどれかな?」
こころ「わかんない。」
ここあ「虎太郎、どこかで私たちのこと見守ってくれてるかな?」
こころ「どうだろう。そうだといいな。」
こころ「あいつならきっと、この星空にも感動しないんだろうな。」
87:
こころ「でももうすぐ生まれ変わるかもよ。貝あたりに。」
ここあ「貝?」
こころ「人間に生まれ変わるとは限らないわけだし。私は貝になりたい、ってドラマあったしね。」
こころ「生まれ変わったら来世は貝かもしれない、ゴキブリかもしれない、アブラムシかもしれない。」
ここあ「そんなのに生まれ変わったら嫌だな。」
こころ「すーぐそこーにアブラムシ?」
こころ「すーぐそこーの虎太郎の頭の上にもアブラムシ?」
88:
・・・
花陽が光司の住む家に帰ってきた。光司と優子は無言の帰宅。
遺体安置所となった体育館で花陽が泣き崩れたところがテレビで放映された。
それを見たμ'sのメンバーたちから花陽に励ましのメールが届いていた。
光司と優子の告別式は花陽の家の近くで行われた。
光司と花陽の両親、優子の親族、光司の子供たち、そして凛が出席した。
親戚「子供たちも可哀想だけど、花陽ちゃんも可哀想。」
親戚「両親もいなくて、兄が唯一の親族だったんでしょ?」
・・・
優子さんの父親がこれからのことを子供たちに話した。
義父「りんごは僕が引き取る。」
義父「小太郎と鉄平はそれぞれ孤児院か、養子に引き取ってもらうことにする。」
義父「小太郎は全寮制の中学校に進学してもいいな。受験がダメでもおじさんの知り合いに養子に引き取ってもらう。」
小太郎「そんな・・・、それじゃあ友達とも、鉄平やりんごとも離れ離れか・・・。」
89:
鉄平「僕たち、離れたくありません。3人で一緒にいたいです。」
義父「気持ちはわかるけど・・・」
りんご「お父さんとお母さんも死んじゃって、お兄ちゃんたちともお別れなんて・・・」
義父「夏休みにでも、会いに来ればいいじゃないか。」
義父「お前たちのことを思って言ってるんだ。」
義父「小太郎はもうすぐ中学生なんだからそろそろ弟・妹離れしなきゃ。」
花陽「ちょっとそれは酷いんじゃないですか?鉄平君とりんごちゃんはまだ小さいんだし、小太郎君だってまだ小学生なんだから。」
義父「花陽、お前は黙ってなさい。」
小太郎「迷惑かけませんから、3人一緒にいさせて下さい。」
義父「わがままを言うな。3人引き取るのは無理だ。」
結局その日が、彼ら3兄弟が一緒に過ごす最後の1日になってしまった。
90:
・・・
花陽「グスッ」
花陽「凛ちゃん、私、1人ぼっちになっちゃったよー。」
凛「大丈夫、凛がいるにゃ。」
花陽「ずっと私のそばにいてくれる?」
凛「もちろん。凛はずっとかよちんの友達だにゃあ」
凛「だから泣かないで」
花陽「凛ちゃん・・・ぐすっ」
花陽「私が泣いてちゃいけないよね。あの子たちはまだ小さいのに両親をなくしてもっと辛いんだから。」
91:
・・・
他にも全国各地で犠牲者の告別式やお別れ会が行われた。
バスケの日本代表、青峰大輝と赤司征十郎。事故から4日後に遺体が確認された。
2人の母校の帝光中学校、赤司の母校洛山高校、青峰の母校桐皇学園で在校生とOBがお別れ会を行った。
アイドルの聖川真斗。事故から3日後に遺体が確認された。
聖川の所属している事務所でお別れ会を行った。
東京都に住むある女性は、30年前の日本航空123便の事故で父親をなくし、今回の事故で今度は息子と娘をなくした。
このことをイギリスで「世界一運の悪い女」という番組で笑い話として取り上げられ、苦情が殺到した。
その他前年の年末ジャンボ宝くじで3億円を当選した男性がこの事故の犠牲になるという悲劇もあった。
92:
・・・
この事故であまりにも大きなものを失った学校があった。
それは今月行われる春の選抜高校野球に出場が決まっていた九州の城西高校。
しかし野球部の主力選手が東京への遠征からの帰りにこの事故に遭ってしまい、全員死亡。
実は城南高校は去年生徒数の減少で廃校の可能性があることが発表されていた。
野球部はそんな状況の中で甲子園出場を決めたのだ。
それもあって来年度はなんとか存続することができた。
しかしそんな廃校の危機に立ち向かっていた城西高校に突然の悲劇。野球部のレギュラーが乗った飛行機が墜落事故。
事故機に城南高校の野球部が乗っていたことが判明すると、マスコミも高校野球ファンも大騒ぎになった。
出場辞退か? 誰もがそう思った。
しかし今回の春の甲子園にどの学校よりも懸けていた城西高校にとって、そう簡単に棄権することはできない。
メンバー全員の遺体が発見されないまま、3月14日に選抜高校野球の組み合わせ抽選が行われた。
この日、高野連は出場の可否が問われる城西高校を1回戦最後の試合、大会6日目の第1試合に組み込むことを決めた。
これは東日本大震災があった2011年に、東北高校に対して行われた手法と同じである。
ちなみに大会6日目の第1試合、城西高校と対戦することになったのは奇しくも事故の犠牲者、バスケットボールの青峰大輝選手の母校、桐皇学園であった。
また城西高校が開幕2日前以降に出場辞退した場合、補欠校の繰り上げ出場は行わず、相手校を不戦勝とすること、
今大会に限り、組みわせ決定は1回戦のみとし、2回戦以降は夏の選手権同様再抽選とすることとなった。
これは桐皇学園が不戦勝となった場合の考慮してのことだった。
もし城西高校が出場辞退した場合は、補欠校を出す場合はそのまま城西高校に代わって大会6日目の第1試合に組み込み、
桐皇学園が不戦勝となった場合は、桐皇学園は2回戦最初の試合、大会6日目の第2試合で開幕戦勝者と対戦とすると発表した。
翌日の夕方、城南高校の校長は選抜高校野球を棄権することを発表した。
これによりまだ開幕まで1週間あったため、補欠1校の繰り上げ出場が決定した。
補欠校の甲子園練習は大会初日の第3試合終了後に行うこととなった。これは2005年に、明徳義塾高校が不祥事で出場辞退し高知高校が繰り上げ出場したときの手法と同じである。
93:
このニュースはかつて同じ廃校という危機を経験したμ'sのメンバーにも響いた。
穂乃果「あの城南高校の人可哀想だよ。」
穂乃果「せっかく甲子園に出れて、そしたら廃校を阻止することができたかもしれないのに。」
穂乃果「こんなのあんまりだよ。」
ことり「廃校って、私たちも向き合ったことだったから他人事だと思えなくて。」
海未「とはいえ、ここ数年は毎年全国でどこかの学校が合併や廃校は出ています。」
海未「しかしこんな形で廃校になってしまったら、あまりにも可哀想です。」
実は野球部は数少ない生徒の半数を占めていたため、あまりにも影響が大きかったのだ。
また城南高校は元々滑り止めとなることが多かったため、4月の新入生も定員を大きく下回った。
さらに事故と関係があるかどうかは不明だが、学校法人が倒産寸前になってしまった。
6月、城南高校は在校生の卒業を待たずに、来年3月に廃校とすることを発表した。
第7話 終わり
94:
第8話 幻の生存者
乗員乗客522人を乗せ香川県讃州市の山間部に墜落した桜ヶ丘航空334便。
残念ながら生存者はゼロに終わった。
しかし、実は1人だけいたのだ、生存者が。それは乗客名簿の最初の方、バスケ日本代表の2人の次の次、4番目に読まれた名前だった。
そしてこの事故では、親族が現場に来なかった乗客が2人いたのである。
・・・
アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』
アナ『アオミネ・ダイキ』
アナ『アカシ・セイジュウロウ』
アナ『アスミ・カナ』
アナ『アララギ・コヨミ』
アナ『イトウ・マコト』
青峰大輝、赤司征十郎の名前に続き、実は3人目にも有名人の名前があった。
そう。声優、阿澄佳奈である。この名前を聞いたアニメファンの多くが驚愕し2の声優板は荒れた。
しかし、これはその日のうちに同姓同名の別人であることが判明する。
阿澄佳奈はその日、名古屋でひな祭りイベントを行っていたいうアリバイ(?)があったのだ。
それを見ていた観客からの書き込みもあり、その日のうちに阿澄佳奈の死亡騒動は収まる。
翌日、阿澄佳奈自身がブログに書き込んだことにより正式に無事が確認された。
95:
問題はその次、4番目に読まれた名前だった。
・・・
唯一の生存者、阿良々木暦の話。ラブライブ以外の登場人物につきカット。
・・・
その後墜落現場から阿良々木暦の遺体は発見されず、また阿良々木暦の親族も現れなかったため、報道では謎の搭乗者と言われて一部の雑誌で取り上げられた。
実際は阿良々木暦は生きているわけだが、当然ながら生存は確認されなかったため死亡者の数に入っている。
親族の待機所に親族が来なかった乗客は2人、そのうち1人はもちろん阿良々木暦である。
もう1人は、乗客名簿で阿良々木暦の次に名前があった『イトウ・マコト』、伊藤誠である。
伊藤誠の席は後ろの方であったため、遺体の損傷が少なくすぐに発見された。
持っていた搭乗券の座席により伊藤誠の遺体であると判明したが、伊藤誠の親族はとうとう最後まで現れず、身元不明のまま桜ヶ丘航空の合同慰霊祭で火葬された。
96:
・・・
今回、報道で乗客名簿が読み上げられたのはNHK、日本テレビ、フジテレビの3局だった。
そのうち日本テレビではこのように読み上げられていた
アナB『堺さん、乗客名簿が入ってきました。』
アナB『読んでいただけますか?』
アナA『はい。』
アナA『ただいまから敬称は略させていただきますが、お1人ずつ読み上げます。』
アナA『アオミネ・ダイキ』
アナA『アカシ・セイジュウロウ』
アナA『アスミ・カナ』
アナA『アヤセ・アリサ』
アナA『アララギ・コヨミ』
アナA『イトウ・マコト』
4番目に読み上げられた名前はそう、絵里の妹の亜里沙である。
当日キャンセルした亜里沙が間違って名簿に入ったままであった。
幸いμ'sの元メンバーが見ていたのはNHKかフジテレビだったため『アヤセ・アリサ』の名前を聞くことはなかった。
しかし亜里沙の元同級生には日テレを見ていた人もいて、その後問い合わせの電話が相次いだという。
第8話 終わり
100:
第9話 花陽の決断
事故から半年くらい過ぎた頃、花陽は光司の長男、小太郎が学校を休んでるという知らせを聞いた。しかも昼間はどこかをうろついていると。
小学校6年生になり、転校して亡くなった両親だけでなく友達とも弟や妹とも離ればなれになってしまった。
それがあまりにも小太郎の精神に影響したのだ。
花陽「ねえ小太郎君、学校に行ってないって本当?」
小太郎「本当。かれこれ3ヶ月くらいかな。」
花陽「休んでるとどんどん行きづらくなるよ」
小太郎「行ったって仕方ねえよ。学校にだってこの家にだって俺の居場所はないんだ。」
小太郎は小学校を卒業するまでの1年間限定で両親を亡くした子供が生活する孤児院に預けられた。
今、小太郎は学校でもこの施設でもいじめにあってるらしい。
小太郎「なんでいつもこうなるんだよ。」
小太郎「もう家族と別れるのは懲り懲りだっていうのに!」
101:
気持ちはわかる。小太郎は小さい頃実の父親が浮気、両親は離婚した。その後母親は花陽の兄と再婚したのだ。
小太郎にとっては産みの親に続いて、育ての親も、兄弟もいなくなってしまった。
施設の人に話を聞くと、入った当初は毎日のように夜1人で泣いていたという。最近でもたまに1人で泣いているらしい。
花陽「ねえ小太郎君はどうしたいの?なにか願いがあるなら聞くけど。」
小太郎「なんでもいい。もう一度家族で暮らしたい。」
小太郎「父さんと母さんは死んじゃったから仕方ない。でもせめて鉄平とりんごと一緒にいさせてほしい。」
花陽「そうか。」
小太郎「俺、できるお兄ちゃんでいたくて頑張ったんだ。あいつらが誇れる兄でいること、それだけが俺の生き甲斐だった。」
小太郎「あいつらとは産みの母は同じでも、父が違う。本当の兄弟じゃないかもしれない。」
小太郎「アニメとかドラマでよくあるじゃん。血のつながりがなくて、本当の兄弟じゃないせいで、理由で間に壁があって、いつも仲が悪いって兄弟。」
小太郎「最初は俺もそうなっちゃうのかな、って思ってた。」
102:
小太郎「でもあいつら、俺を本当のお兄ちゃんだと思ってくれてた。俺はそれが嬉しかったんだ。」
小太郎「俺はそれに応えたくて、あいつらが誇れる兄でいようと決めたんだ。」
小太郎「なのにそれを親戚のおじさんが全部奪っていった。友達とも別れて、知らない人だらけのこんなところに連れてこられて。」
小太郎「俺にはもう何も残されてない。もう生きてる意味もない・・・。」
そうだったんだ。小太郎君はあの子たちのお兄ちゃんでいたい。それだけが彼の願いだった。
そんなささやかな幸せまで、あのおじさんは奪ってしまったんだ。
そのあと鉄平君とりんごちゃんにも会ったけど、みんな答えは同じだった。兄弟と暮らしたい。
なんとか、3人を一緒にさせてあげたい。そのためには何をすればいいだろう。
それは自分でもわかっていた気がした。
103:
私はその翌日凛ちゃんに相談した
花陽「小太郎君、このこたろう君はにこちゃんの弟の方じゃなくて、私のお兄ちゃんの息子のほうなんだけど、小太郎君は両親だけでなく友達や弟や妹とも離れ離れしなって、すごく落ち込んでるの。」
花陽「そして小太郎君に聞いたら、やっぱり兄弟で暮らしたいって。2人のお兄ちゃんでいたいって言ってた。」
花陽「私、小太郎君の願いを叶えてあげたい。また3人を一緒にいさせてあげたい。」
花陽「でもそのためにはどうすればいいのかな、って。」
凛「そうだね。小太郎君や子供たちを助けてあげたいって気持ちはわかる。」
凛「それは簡単なことだよ。かよちんが」
凛「・・・」
凛「すればいいと思うにゃあ。」
花陽「それ、私もそう思った。そのやり方しかないよね。」
花陽「でも私にそんなことできるのかなって。」
花陽「無理だよ。私がお願いしたって親戚のおじさんも認めてくれるわけがない。」
凛「かよちんなら大丈夫だよ。」
104:
そして私は優子さんのお父さんの家へ
花陽「小泉花陽です。お邪魔します。」
祖父「何の用だ?」
花陽「小太郎君に会ってきました。鉄平君やりんごちゃんとも。」
花陽「みんな3人一緒にいたいと言っています。」
祖父「そんなこと知ってる。」
花陽「小太郎君は、2人のお兄ちゃんでいることが生き甲斐だったんです。」
花陽「それすら失って、毎日のように泣いてるそうです。」
花陽「家族は、兄弟は一緒にいるべきなんです。」
祖父「だから無理だ。3人一緒に引き取れる者などいない。」
花陽「私に引き取らせて下さい。」
祖父「何の権利があってそんなこと言ってるんだ。」
祖父「君は鉄平やりんごとは血のつながりがあっても、小太郎とは赤の他人なんだぞ。」
105:
花陽「そんなの関係ないです。」
花陽「小太郎君が可哀想、2人が誇れるお兄ちゃんでいたかったって。」
花陽「鉄平君やりんごちゃんも3人で一緒にいたいって。」
花陽「3人から兄弟を取っちゃうのかあまりにも可哀想。」
花陽「家族は一緒にいなきゃダメです!」
・・・
花陽「小太郎君、神田にある私の家に来ない?」
花陽「そこであなたたちはまた3人で一緒にいられるよ。」
小太郎「花陽お姉さん、それってまさか・・・」
花陽「私が3人を引き取ることにした。」
小太郎「そんなの、親戚のおじさんやおじいちゃんが認めるわけがない。」
花陽「ちゃんと許可取ってきたよ。」
花陽「おじいちゃんもよろしくって」
106:
・・・
祖父「君だったらそう言うと思ってたよ。」
祖父「心を鬼にしてああいうことを言ったが、本当は俺も3人を引き裂くのはあまりにも可哀想だと思っていた。」
祖父「君が引き取りたいというのを待ってたんだ。」
花陽「何ですかそれ。だったら最初から言ってくれれば」
祖父「頼めるわけないだろ。こんなことする義務は花陽にはないんだ。」
祖父「花陽がこの子たちのために自分の青春を犠牲にするようなことがあってはいけないんだ。」
花陽「大丈夫です。私、あの子たちといると楽しいので。」
花陽「それに私には大切な親友もいますから。」
107:
小泉家
小太郎「お邪魔します。」
花陽「今日からここがあなたたちの家。ここで3人仲良く暮らしてね。」
花陽「できれば私のこと、お母さんのように思ってほしいな。」
鉄平「本当に僕たち、また一緒に暮らせるんだ。」
小太郎「夢みたい。」
りんご「あたし、お兄ちゃんたちとお別れしてとても寂しかった・・・。」
小太郎「ぐす・・・」
小太郎「花陽お姉さん、本当にありがとうございました。」
小太郎「俺のわがままのために、こんなことしてくれて。」
花陽「当然のことをしたまでなの。むしろ半年前に言うべきだった。」
花陽「あのとき、私は3人を引き取る勇気がなかった。」
花陽「おかげで半年間もあなたたちに寂しい思いさせて、小太郎君なんか不登校になっちゃって。」
花陽「遅れてごめんなさい。」
小太郎「いいんです。俺、花陽お姉さんに感謝してます。」
鉄平「4人いれば、お父さんとお母さんが死んじゃった悲しみも分け合える気がする。」
小太郎「そうだよな。」
花陽「ねえ、パパも小太郎君が本当の父親だと思ってくれて嬉しかったって言ってたよ。」
108:
・・・
光司「小太郎の母親は優子だが、小太郎の父親は俺ではない。小太郎の父親はあくまで優子先生の前の夫だ。」
光司「アニメとかドラマでよくあるからな。再婚して連れ子の父親になったのはよかったが、本当の父親じゃないからいつもギクシャクしてる親子。」
光司「俺もそうなっちゃうのかと心配してたんだけどな、小太郎は俺を本当の父親のように思ってくれて嬉しかった。」
光司「いや、違うな。むしろ俺が本当の子供じゃない小太郎を愛せるのか心配してたのかも。」
光司「でも安心した。俺は小太郎のために誇れる父親でいないとね。」
・・・
花陽「パパも小太郎君と同じで、血のつながりがないのが不安だったけど、きっと最後まで本当の親子のようにいれてよかったと思う。」
小太郎「ならば花陽さん、俺のことはどう思ってくれますか?」
花陽「年齢的には弟かな。親子にしては差が小さいし。」
小太郎「そうですね。」
花陽「これからよろしくね。」
花陽「それと今日は私の親友を呼んだんで。」
それは今回の決断に、私の背中を押してくれた人。
109:
・・・
凛「それは簡単なことだよ。かよちんが3人と一緒に暮らせばいいと思うにゃあ。」
花陽「それ、私もそう思った。そのやり方しかないよね。」
花陽「でも私にそんなことできるのかなって。」
花陽「無理だよ。私がお願いしたって親戚のおじさんも認めてくれるわけがない。」
凛「かよちんなら大丈夫だよ。」
・・・
「ピンポーン」
花陽「あ、来た。」
凛「こんばんは。みんな来てたんだにゃあ。」
凛「星空凛です。」
真姫「西木野真姫です。よろしくお願いします。」
小太郎「あの、2人もμ'sだったんですか?」
真姫「そう。まあ結成したのは私たちの1つ上の先輩なんだけどね。」
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