朝潮は『不安症候群』back

朝潮は『不安症候群』


続き・詳細・画像をみる

2:
 霰がいなくなった。
 轟沈をしたわけではない。深海棲艦による被弾が致命傷となり、ドッグで治せなくなっため、内地の病院に送られた。共に出撃をしていた満潮が、鎮守府まで運んでくれたらしい。
 その頃から、朝潮型の長女、朝潮が、体の異変を訴え始めた。
 朝潮は生真面目で、冷静で、我慢強い子だった。命令を守り、スキルアップを欠かさず、妹たちを責任もって世話する。そんな子だった。
3:
 ある日、朝潮が、廊下の椅子でうずくまっているのを、私は偶然見かけた。
 どうしたのかと尋ねると、「おなかが痛いです」と答えた。
 どこの辺りが痛いのかと尋ねると、胃の辺りを指さした。
 私は応急処置として、常備薬に持っていた胃薬を与えた。痛みは引かなかったようだが、それでも健気に、出撃、遠征をしてくれた。
4:
 満潮がいなくなった。
 霰と同じく、出撃で瀕死状態となった。
 それから朝潮は、胃の痛みに加えて、偏頭痛、不眠を訴え始めた。また、出撃時に発作を起こすこともあったという。
普段、我儘を全く言わない朝潮がここまで体の異変を訴えてくるのは、非常に気遣わしいものだった。私は夕方、軍医を呼び、朝潮を診てもらった。
5:
 「典型的なストレス過多ですね」
 「え……あ、ストレス……ですか……」
 この診断を聞いて、私は非常に悲しくなった。
 二人の姉妹が瀕死状態の、6人姉妹の長女。それに加えて、真面目で責任感の強い性格。これは、最もストレスを溜め込みやすい環境ではないか。
 私は普段、戦績のことばかりを気にかけ、艦娘たちの精神状態を視野に入れていなかったのだ。この、自分の無能さが悲しくなると同時に、艦娘に対する申し訳なさがあふれてくる。
6:
 「胃潰瘍と……『不安症候群』、の可能性もありますね」
 「不安しょうこう群、ですか?」
 朝潮は聞きなれない言葉に、首をかしげる。そんな仕草も、今は、私の胸を、内側から圧迫する。
 「はい。『不安』を異常に感じやすくなる病気です。酷いときには、発作を起こすこともあります。そんな心当たりは、ありますか?」
 「はい、ちょっと前の、出撃の時に、少し……」
 「そうですか。精神的な病気なので、効果的な治療法はありません。精神を安定させる薬と、あと、胃潰瘍の、胃酸の分泌を抑える薬を出しましょう」
 「わかりました。ありがとうございます」
 「はい。提督さんも、彼女を、できる限り、フォローしてあげてください」
 「……わかりました。今日は、ありがとうございました」
7:
 私はその後、先生を見送ってから、執務室で、朝潮と二人になった。
 「朝潮、すまない。私が気付かなかったために」
 「し、司令官は悪くありません。悪いのは……」
 そう言ったところで、私は椅子から立ち上がり、朝潮を正面から抱きしめた。私には、これが精いっぱいの、朝潮にしてやれることだった。
 突然のことに、もちろん、朝潮は驚く。
9:
 「し、司令官?……」
 「……私でよければ、もっと頼ってくれ。お前は艦娘である前に、私の大切な部下だ。苦しい思いは、極力、させたくない……」
 霰や満潮を病院送りにしているくせに、とは自分でも思う。が、これが私の本心だ。
 好き好んで部下を傷つけたいわけない。しかも、それがまだ幼い少女なのなら。
 しばらく抱き合っていると、今度は朝潮の方から抱きしめてくる。普段から鍛えているだけに、中々強い力だ。しばらくすると、朝潮は脱力した。
 「ふぅー……かなり、心が楽になりました。司令官、ありがとうございます!」
 朝潮の純粋な笑顔が、まっすぐに私を見てくる。私は優しく微笑み返した。
10:
 満潮と霰の意識が戻ったらしい。
 病院に電話をかけ、二人と話をする。満潮は開口一番に私の作戦を罵倒したが、元気そうでなによりだ。
 あと1週間ほどで退院するようだ。
 朝食時に、朝潮にそれを伝えると、はじけたような笑顔で、妹たちに報告していた。朝潮は笑顔で、泣き出す妹たちを元気づけていた。
11:
 荒潮が重体となった。
旗艦であった朝潮は彼女を鎮守府まで運んだ。意識は朦朧とし、白目をむいていたという。
 朝潮は、荒潮を運び終わった後、激しい発作を起こした。連絡を受けた私はすぐさま朝潮のもとへ駆けつけ、抱きしめた。
 「朝潮、大丈夫だ! 荒潮は絶対に戻ってくる。大丈夫だ」
 朝潮はただただ私に抱き付いていた。まるで、木にしがみつく蝉のように、ただひたすら。
 周りにいた艦娘も、ただただそれを見ていた。
 「司令官……いつも、ありがとうございます」
12:
 翌日も、朝潮は出撃する。
 出撃前、朝潮は同艦隊の艦娘に「大丈夫?」と聞かれていた。前日の発作を見ていたからだ。
朝潮は笑顔で「大丈夫です!」と答えた。
 その日、朝潮は帰ってこなかった。
 濃霧が立ち込め、戦闘が中止となったのだが、気付くと、朝潮はいなかったという。
 捜索も、濃霧の危険性を顧みて、中止とさせた。
 深海棲艦に捕虜にされたとか、沈んだとか、不謹慎な憶測が艦娘の間で飛び交ったが、私はもう、なんとも思えなかった。
 朝潮のことを聞き、霞が私のところに殴り込んできた。
13:
 「ちょっと! どうして……どうして朝潮が……うぅ……」
 「……本当に、すまない……」
 「すまないじゃないわよ、このクズ! あんたが死ねばいいのに! ……うっ……うっ」
 もし霞が艤装を装着していれば、私は殺されていたかもしれない。それほどの殺気が、霞の目には宿っていた。
 それは当然だ。一番頼りにしていたであろう、姉の朝潮を、霞は失ったのだ。
 私はただただ、謝ることしかできなかった。それは、霞たち姉妹に対して、そして、朝潮に対して。
 「……申し訳ない……本当に、申し訳ない……」
14:
***
 寒いです。
 目を開けると、目の前には夜空が広がっています。
 私の身に何があったのでしょう。確か、出撃して、濃霧の中で、敵の砲撃を艤装に受けて、それで……
 濃かった霧は嘘のように晴れ、周りが良く見えます。鎮守府も見えます。
 とりあえず、帰りましょう。私を待っていてくれる皆さんがいます。
15:
 鎮守府に着きました。なんとなく、静かな鎮守府。夜だから当たり前なのですが、なんとなく……
 艤装を片付けようと、倉庫までやってきました。しかし、当然ながら鍵がしまっています。
 鎮守府の入り口に来たのですが、当然、鍵もしまっていれば、近くには誰もいません。
 胸が痛くなってきました。
16:
 私はもう捨てられてしまったのでしょうか? そうですよね、病気持ちの艦娘なんて、価値はありません。それに、任務を成功させることなく、私は海で寝ていたのです。
 かつて司令官は、こんな私でも、優しく抱きしめてくれました。あの感触は今でも忘れません。不思議な安心感。ああ、私には帰るところがあるんだなと、感じました。
 私は、日々妹がいなくなっていく中で、いつか、一人ぼっちになってしまうのではと、不安でした。そんな時、司令官は私に、優しくしてくれました。
 私は、戦績は良い方でしたが、司令官の、いえ、皆さんにとっての私は、私の戦績だったのでしょうか? もちろん、戦争がそういうものであることは、私も知っています。
17:
 私の存在価値は、私の戦闘能力なのです。
 わかっています。戦闘できなくなった私は、もうお払い箱なんです。
 なんだか目の辺りがむず痒くなってきました。私は信じていました。司令官は、絶対に私を、見捨てないでくれると。そんな甘い考えが、通じるわけないのに……
 咳が出てきました。夜は冷えます。海水で濡れたこの体は、とても冷たいです。今の私には、お似合いでしょうが。
 胸が痛いです。咳が止まりません。体が動きません。私はその場で倒れてしまいました。
 
 目を閉じたとき、司令官の優しい微笑みが、私の脳裏に浮かんできました。初めて抱き合った時の、あの、優しい微笑み。
 
 朝潮は、司令官の、お役に、立てました、か?……
18:
***
 私は執務室で、ボーっと時間を食いつぶしていた。
 いなくなってしまった朝潮のことが、頭から離れなかった。
 『駆逐艦、朝潮です。勝負なら、いつでも受けて立つ覚悟です』
 『司令官、ご命令を!』
 『あの……お腹が、痛いんです』
 『はい……最近、よく眠れなくって……』
 『司令官、ありがとうございます!』
 『私は大丈夫です! お気遣い、ありがとうございます!』
 『駆逐艦、朝潮、出撃します!』
19:
 鎮守府の艦娘たちのためにも、私はきちんとしなくてはならない。頭では分かっているが、なぜか、体が動かない。
 コンコン ノックの後に、執務室のドアが、勢いよく開く。
 吹雪が慌てる様子で、執務室に入ってきた。
 「司令官! 外で、朝潮ちゃんが!」
 「朝潮!?」
 吹雪は今、『朝潮』と言った。
 朝潮が帰ってきた。私には、そう思えた。
20:
 「はい! ジョギングしていたら、外で倒れていて……」
 「すぐに行く。どこだ!」
 「案内します!」
 我々の大声のやり取りに、顔を出す艦娘たち。
 彼女たちも、我々についてきた。
 「ハッ、ハッ、艤装の倉庫の前に、いました」
 「分かった!」
 私は全力で走って吹雪を抜かし、艤装倉庫前を目指す。
21:
 そこにいたのは、艤装を装着し、体中をびしょ濡れにした、まぎれもない、朝潮の姿。
 「朝潮! おい、しっかりしろ!」
 返事はない。私は朝潮を抱きかかえる。体が冷たい、が、心臓は動いている。弱く、微弱な振動が、私の胸に、伝わってきた。
 「……入渠の準備をしてくれ」
 「は、はい!」
 吹雪がドッグに走っていく。
 私は上着を脱ぎ、朝潮に着せた。
 どうか、無事でいてくれ。
 そう祈って、私は朝潮を、強く抱きしめた。
***
**
22:
 その後、朝潮は見事に回復した。
 1週間もすれば、何事もなかったかのように、艦娘として、普通に活動を始めた。不安症候群や胃潰瘍も、無事、完治した。
 危篤状態だった霰、満潮、荒潮も無事に退院し、鎮守府は今のところ、誰一人として欠けてはいない。
23:
 コンコン、ドアをノックする音が聞こえる。
 二二〇〇、野戦以外の艦娘はたいてい、寝床に就く時間だ。
 「失礼します。朝潮です」
 「おお……いつものか?」
 「はい、もしよければ……」
 私は朝潮を近づけ、ゆっくりと、やさしく、包み込むように、しっかりと、抱きしめた。
2

続き・詳細・画像をみる


大学の友達と別荘に行った時、日頃は女子力の高い子が蓋を開けたら何も出来なかった

サミーって今後どうしたらいいんだ?

Lineでわかるハードモードな高校生ライフを予想できる一枚の画像wwwwwwwwwwwwwwww

【国際】ナチス占領の賠償「36兆円」? ギリシャが推計 独「解決した話」と拒否

【野球】日本ハムが控訴 ファウルボールで失明した女性への損害賠償判決

比古清十郎「ちいと本気出して志々雄討伐するか」

初めて友人と海外旅行に行った完全に私に丸投げツアコン扱いだった

6歳児のホストこと「りゅうちゃろ」くん、小学校に入学する

【閲覧注意】女子大生レ●プ事件の恐ろしい画像(5枚)

喧嘩の理由になったゲームは古いRPGのエンディング。

【Gレコ】姫様盛りすぎ!?アイーダ、ラライヤ、ノレドの水着ショットきたああああ!

変な新入社員キタ━━━━(・A・)━━━━ !!!!!

back 過去ログ 削除依頼&連絡先