上条「なぁ吹寄、俺は本当に不幸なのかな?」back

上条「なぁ吹寄、俺は本当に不幸なのかな?」


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1:
書き溜めなし
新刊読み終えて急に書きたくなった
上条「いや、普段から不幸だ不幸だって呟いてる自分に違和感を覚えてな……」
吹寄「やっと気付いたのか。貴様の不幸はほとんどが不注意から来るものばかりなんだから、しゃんとしていれば不幸になんてなり得ない」
上条「そりゃそうなんだけどそうじゃないっていうかだな」
吹寄「なら何だと言うんだ?」
上条「何となく、昔感じてた不幸と別物な気がするんだ。上手く言えないが、今はそれほど不幸じゃない……と思う」
3:
吹寄「思うって……昔のことと比べてるのに曖昧なのか?」
上条「え? あ、あぁ、変なこと言って悪かったな。忘れてくれ」
吹寄「忘れろと言うのは勝手だが、忘れづらい話題を振るのは感心しないな」
上条「いやまぁそうなんだけど」
上条(これまでの記憶なんて禁書目録との事件からしかないんだよなぁ。その前のことなんて思い出せないし……)
4:
吹寄「つまりどういうことなんだ? 不幸なことを自慢したくなくなった、と?」
上条「か、上条さんは別に不幸なことを自慢したことなんてありませんのことよ!?」
吹寄「傍から見れば不幸自慢する変な輩にしか見えない。お前がTwitterを始めても『○○だから不幸だ』でタイムラインが埋まるに決まっている」
上条「流石にそんな高頻度で不幸にはならねえよ!」
吹寄「スーパーの卵が高かったらなんて呟く?」
上条「……不幸だ、です」
5:
吹寄「やっぱりそうじゃないか」
上条「なら吹寄なら何て呟くんだ?」
吹寄「私か? 私なら……うーん……卵料理は諦めようかな、とか?」
上条「返信しづらっ!」
吹寄「う、うるさいっ! 貴様よりはマシだ!!」ゲシッ
6:
上条「あいたたた……とにかく、俺は何となく不幸じゃなくなってる気がするんだ」
吹寄「不幸じゃないのは良いことだ。平和なことを喜べ、上条当麻」
上条「お、おう……」
吹寄「じゃあ私はもう帰る。さっさと今日出た宿題を片付けたいからな」ノシ
上条「わかった、またな」ノシ
7:
上条(違和感に気付いたのは、サンジェルマンが加納ってヤツをそそのかしてたときだ)
上条(確かに俺は、見方によっては正義の味方のようなマネをしてきたし、結果も付いてきてる)
上条(俺を説明する言葉に『ヒーロー』が入ってても反論できないくらいに、だ)
上条(目の前の事件を解決する度に俺の交友関係は確実に広がって、仲間とは言えなくても知り合いが大勢いる)
上条(けど、おかしくないか?)
8:
上条(本当に『不幸』だったんなら、どこかで誰かに恨まれてるんじゃないのか?)
上条(加納のときは浜面の方がある意味では恨まれ役だった)
上条(妹達のときは一方通行の計画に携わった科学者に『邪魔者』として恨まれているハズだ)
上条(なのに、俺は誰からも復讐されていない)
上条(こんなの、父さんが言ってたことと矛盾してる)
9:
上条(記憶をなくす前の俺は、その頃に住んでいた場所でかなり嫌われていた)
上条(それこそ、チャンスがあれば殺してやりたい――と思われるほどにだ)
上条(俺の幻想殺しは周りにとっても迷惑なモノだったハズなんだろう?)
上条(だったら何で、俺は誰からも恨まれない?)
上条(土御門も青髪ピアスも吹寄も、みんな俺と普通に接しているんだぞ?)
12:
――土御門元春の場合
土御門「カミやんを恨む理由?」
上条「そうだ。何か、殺したくなる理由とかないか?」
土御門「にゃー。かみやん、いくら何でも質問がイジワル過ぎるぜい? 思っていたとしても本人を前に教えたりはしないぜよ」
上条「そうなんだけど、俺には切実な話なんだ。怒ったりしないから教えてくれ!」
13:
土御門「はぁ……。同級生としては普通に仲のいい友達だし、魔術サイドの事件では協力関係にあるからにゃー」
上条「うんうん」
土御門「当然、死んで欲しくない人間に入ってるぜよ。かみやんが死にそうなら全力で助けることだって厭わないくらい」
上条「土御門、お前……」
土御門「ま、少なくともかみやんを恨んでもいないから安心してくれ」
14:
上条(土御門の言葉に本気で泣きそうになった……)
上条(良かった、俺は不幸をまき散らしてないかもしれない)
――青髪ピアスの場合
青ピ「かみやんに恨みねぇ? うーん、何もないなぁ」
上条「本当か? 今回に限って隠さなくていいんだぞ?」
15:
青ピ「言うても、あらゆる属性の女の子とフラグを乱立させるところに男として嫉妬しとるだけやで? 流石の僕もそれを殺す理由には出来まへんって」
上条「そう、か?」
青ピ「何でそないなけったいな質問するかは知らんけど、僕もかみやんには死んで欲しないな」
上条「うぅ……青髪ピアス、愛してる!」ダキッ
青ピ「か、かみやん!? いくら僕が男の娘もイケるクチやからってかみやんは守備範囲にあらへんのよ!?」
16:
――月詠小萌の場合
小萌「上条ちゃんに恨みですか?」
上条「ありませんか?」
小萌「先生はどんな生徒にも救いはあると思っているのでイヤな感情なんて抱きません!」ドヤッ
上条「小萌先生ならそう言うと思った……」
小萌「ただ頻繁に入院するのは先生として凄く凄く心配なので、出来ればもっと気を付けて欲しいのです……」ショボン
17:
上条(やっぱり恨まれてないな……)
上条(間違いなく記憶がクラッシュする前の俺を知ってるみんながこう言うんだから間違いない)
上条(なら父さんは嘘を吐いていたのか?)
上条(いや、そんなことして誰が得するって言うんだ)
上条(そもそも父さんの中で俺は『前の俺』と同一人物になっているんだからバレバレの嘘なんて……うーん、何でだ?)
18:
――禁書目録の場合
イン「あ、お帰りなんだよ、とうま」
上条「ただいまー。イイ子にしてたか? ところで禁書目録、俺の幻想殺しについて話したいんだけどいいか?」
イン「うん? 別に構わないけれど?」
上条「俺の右手ってさ、他人の幸福を打ち消せるのかな?」
イン「むむむ、これまた難儀な質問なんだよ……。とうまの右手は魔術でも説明しづらいから、あくまで私の予想しか話せないんだよ?」
19:
イン「そもそもとうまの場合は右手と切り離せない状態にあるから、あらゆる宗教的視点から見た『運』を打ち消して不幸になるよね?」
上条「あぁ」
イン「けれどそれは龍脈と同じで完全に消しきれない上に、空気の流れのように補充される。だからちょっと触れた程度じゃ相手を不幸にするのは難しいんだよ」
上条「とすると、人から恨みを買うなんてあり得ないのか?」
イン「とうまが四六時中触れてたりするなら話は別だけど、一緒に暮らしてる私だって不幸になってないでしょ?」
20:
イン「まぁ、そうは言っても……」
上条「うん?」
イン「とうまが女の子と関わるとかなりの確率でえっちな事件が起こるから、とうまの存在が誰も不幸にしてないとは言えないんだよ……」ゴゴゴゴゴゴ
上条「Oh……」
上条(いやでも、それこそ吹寄が言ってた『不注意』で片付くな。少なくとも殺される理由にはならない……ハズ、だよな?)
21:
――オティヌスの場合
オティヌス「幻想殺しが誰かを不幸にしたのかって?」
上条「魔神のお前ならどう考える?」
オティヌス「その右手は『世界の基準点』でしかないのは知っているだろう? それが平均的な状態に戻したとしてもマイナス要素にはなり得ない」
上条「…………」
オティヌス「『それ』は洞窟だったし石ころだった。でもそれが誰かを明確にしたという伝説は恐らく存在しない」
22:
>>21
訂正
×誰かを明確にしたという
○誰かを明確に不幸にしたという
23:
オティヌス「そういうのは寧ろ私がシンボルとしている魔女の方が濃厚だからな。魔女は裏切りの象徴でもあるのだし」
上条「うーん……」
オティヌス「腑に落ちないか?」
上条「ハッキリ言うと、『今の俺』と『前の俺』で不幸さ加減に違いがある気がするんだ」
オティヌス「違い? そもそも記憶が人格を作るんだ、価値観が変化して不幸の基準が変わっててもおかしくないだろ」
25:
上条「けど『前の俺』は人に殺されるほど恨まれてたんだ。いきなりそれがリセットされるワケがない。それは俺の友達が『友達でい続けてくれること』で証明してる」
オティヌス「……。あぁ、確かにおかしいな」
上条「何でなんだろうな、ほんと」
オティヌス「恨まれ方の変化、か……」
オティヌス(それは学園都市に来てからか? もし『学園都市では恨まれない』という結果が出たなら、それはつまり――)
26:
上条(当然ながら、考えたところで結論なんて出なかった)
上条(オティヌスは何かを聞きたそうにしてたが、追及しても答える様子ではなかった)
上条(恐らく『俺にわからない範囲』で疑問が出たのだろう)
上条(わからない……わからない……今と昔で、いったい何が違うのか……)
上条(いつか答えは出るんだろうか? それもと死ぬまで謎のままなのか……)
27:
――アレイスター・クロウリーの場合
アレイスター「幻想殺し――いや、上条当麻の恨まれ方?」
土御門「お前なら何か知っているんじゃないのか?」
アレイスター「そうだな……教えてやらんこともないが、簡単に言うのも面白くない」
土御門「…………」
アレイスター「まず、情報をよく精査することから始めたらどうだろう?」
28:
アレイスター「まず幻想殺しが蓋をしているお陰で出てこない『龍のような何か』は何だと思う?」
土御門「さぁな。ドラゴンの伝説は河川の増水による大洪水や、文明の終末に代表されるが、どちらにも当て嵌まらない」
アレイスター「その通りだ。では上条刀夜が偶発的に起こしたとされる魂の椅子取りゲーム――御使堕しは何を利用していた?」
土御門「風水、いや地脈だったな」
アレイスター「そうだったな。ところでそれは、本当に偶然だったのか?」
29:
土御門「どういう意味だ」
アレイスター「『龍のような何か』と地脈を利用した御使堕し、この2つに龍が関係していることは果たして偶然か?」
土御門「…………」
アレイスター「それに上条当麻の従姉妹の名は竜神乙姫(たつがみおとひめ)というそうじゃないか。これではまるで……」
土御門「上条当麻の親族は『龍に関する何か』を握っているということか?」
34:
アレイスター「まぁそんなところだ」
土御門「……。上条当麻は前から魔術に触れていたのか?」
アレイスター「知らないな」
土御門「もし昔から魔術と何かしらの接点があって、それを幻想殺しが邪魔をするように消していたとしたら……だから周囲から疎まれていた?」
アレイスター「悪くない予想だ」
35:
土御門「あぁ、なるほど。空間に直接作用する大魔術や、皆が普段から触れるモノに魔術的な仕掛けが施されていれば恨まれるのも頷ける」
アレイスター「恐らく例の御使堕しが起こったのだって、上条刀夜が普段から『地脈に関する知識』に触れていたからこそ起こったのだろう」
土御門「偶然も0からは発生しないということか?」
アレイスター「いわゆる集合的無意識が彼らの住む地域にもあった。それを本人が知らぬ間に知識として蓄え、なぞらえたと考えた方がいいだろうな」
土御門「アイツの親が魔術師と関係があろうとなかろうと、いずれ『地脈を利用した魔術』が起こっていたということか」
36:
アレイスター「……。聞きたいことは以上か? 私はこれからもやることが山積みなんだ」
土御門「今のところな。核心にこそ触れなかったが、お前がどれだけのことを把握してるかまでは測れた。今はそれで充分だ」
アレイスター「なら、何よりだ」ニッコリ
土御門(相変わらず、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える笑顔だな)
37:
――翌日
青ピ「かみやーん、今日はジュースでも奢ったろか?」
上条「え? どうしてだよ、いきなり」
小萌「上条ちゃん、シスターちゃんはお元気ですか? 今度みんなで先生のおうちに遊びに来てもいいんですよ」
吹寄「上条当麻、これでも飲め。少しはその普段からの不注意も改善されるだろうから」ズイッ
38:
上条「な、何なんだ? 今日はやけにみんな優しい気がする……」
土御門「そりゃあそうだろうぜ。昨日、みんなに恨まれてないか確認してたんだろ? 友情を疑われてるようだから、みんなそれを何とかしたがってるんだぜい」
上条「あ、あー……うわ、何かマズいことしちゃったな」
青ピ「そない心配せんでええて、かみやん。僕らもたまには身近な人間を大事にせなアカンって気付かされたんや」
吹寄「私は別にいつも通りなんだがな。まぁ、貴様に変に誤解されて嫌われてると思われるのも気分が悪いんだが……」
39:
土御門・青ピ「「!!!??」」
上条「そっか。嫌な思いさせて悪かったな、吹寄」
吹寄「わ、わかればよろしい……//////」
土御門「や、やはり吹寄、お前……っ」
青ピ「いつの間にかかみやんとしっかりフラグ成立させとったんやな!?」
40:
吹寄「さ、させてないさせてない! 何で私が上条当麻みたいなネガティブな男と……っ//////」
青ピ「でも言うとる割に顔真っ赤ですやん。ツンデレ乙ですやん」
土御門「にゃー。前から『最後の城が危なっかしいなー』って話してたが、まさかそんな日がくるとは思わなかったぜい」
吹寄「違うと言ってるだろ!!//////」
上条「そうだぞ、こんなに怒ってるんだから吹寄は俺のことを嫌ってるハズなんだ!」
41:
吹寄「嫌いとは一言も言ってないだろ!? どうして貴様はそう悲しい方向に……//////」
土御門「そうだぜ、かみやん。吹寄はどう見てもかみやんに異性として――ごふっ!」
吹寄「も、もうその口閉じろ!」ゴスッ
上条「お、おい吹寄……?」
吹寄(好きじゃない好きじゃない好きじゃない!)
吹寄(……でも、)
吹寄(たまにあの鈍感さを恨めしく思うことは、ある……かも)
おわり
4

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