院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!!」【番外編】back

院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!!」【番外編】


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こんばんは、少し早いですが今日も投下していきたいと思います
今日から番外編です
ちょっと前の話と勇者が幼女に出会う前の時間軸の話です
それでは今日も少しの時間だけお付き合いください
元スレ
院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!!」
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262: 以下、
番外編「山賊とお嬢様」
頭領「あれが今度襲う獲物か」ヘヘッ
山賊G「なんでもここいらの領主の家って話ですぜ」
山賊C「ってことは酒も食物もたんまりあるな!」
山賊D「チャチャッと終わらせて宴会でもしましょうよ」ニヤニヤ
山賊E「……」
山賊F「お前、顔色悪いぞ? 大丈夫か?」
山賊E 「あ、ああ」
頭領「どうした? 腹痛か?」
山賊E「い、いや違いますよ。お頭」
頭領「ならもうちょっとマシな顔しやがれ、これからひと暴れするんだからよ!」
263: 以下、
山賊A「お頭ー! 偵察行ってきまし……どわぁぁぁ!!」ドンガラガッシャーン
頭領「この馬鹿! 偵察ぐらい静かにできねぇのか!?」
山賊B「いい加減この馬鹿と一緒に仕事したくないんだが……」ハァ
山賊A「そんなこと言うなよ! 兄弟!」
山賊B「お前といるとまともに仕事できねぇんだよ!」
山賊A「そ、そんにゃ……」ガーン
頭領「漫才は後にしろ。仕事の時間だ。偵察してきてわかったことを教えろ」
山賊A「えっと、目の前に見えるのがここらを治めている領主の家だ。裏手に倉庫があって食糧を一箇所に集めて保管しているらしい」
山賊B「随分と立派な屋敷だがどういうわけか警備の人間はどこにも見当たらない。俺たちは誰にも気づかれずに倉庫に忍び込んで食料を奪えばいい、簡単な仕事だ」
頭領「つまんねぇな」
264: 以下、
山賊B「なんだって?」
頭領「つまんねぇって言ってんだよ。俺たちは山賊だぞ? 奪えるところから全部奪っちまえばいいじゃねぇか。それにこの屋敷はここらの土地を治める領主様のものなんだろう?金目のものもたんまりあるはずだ。こういう時は派手に暴れるってもんよ」ガハハ
山賊B「頭、あんたの言う通り俺たちは山賊だ。一時を凌ぐためにやる強盗や物取りじゃない。派手に動けば今後の仕事がやりづらくなる。ここは誰にも気づかれずに獲物だけ盗むべきだ」
山賊C「なんだ、お前? ビビってるのかよ?」ハハッ
山賊B「口の利き方には気をつけろよ、俺は頭と話してんだ」
山賊C「ああん!?」
山賊B「やろうってのか?」
山賊C「上等じゃねぇか!!」
265: 以下、
頭領「やめろ」
山賊C「頭……」
山賊B「頭、狙うのは食糧だけで充分だろ? 暴れる必要なんてどこにもない。戦闘にでもなれば双方でけが人が出るかもしれない。それは得策じゃないはずだ」
頭領「………お前は今日もあの馬鹿と荷物の見張りをしてろ」
山賊B「頭!」
頭領「黙れ! 俺はお前に教えたはずだな。『力があればなんだって許される』と」
山賊B「ああ、確かに教わった。その上で違うって言ってんだ」
頭領「なんだと?」
山賊B「頭、あんたには感謝してる。なにも知らない俺たちをここまで育ててくれたんだから。でもよ、あんたのやり方は間違ってるよ、こんなことしたって結局自分の首を絞めるだけだ、違うか?」
頭領「お前、いつから親に対してそんな口聞くようになった?」
山賊B「親の間違いを正すのも息子の務めだろうが……!」
266: 以下、
頭領「ガキが一丁前の口を利くんじゃねぇ! いいか、魔王のせいで俺たちは帰る場所を失った。魔王が死んでも俺たちの暮らしは変わらない。だが、あいつらはどうだ? 平和ってやつを随分と満喫してやがる。お前はそれを見てなんとも思わねぇってのか?」
山賊B「……それは」
頭領「いいか、俺たちは1度闇に足突っ込んじまった罪人だ。もう真人間には戻れねぇ。だったら好き放題にやったほうがいいだろう? この世界の現実を何も知らない貴族どもに『持たざる者の強さ』ってやつを見せつけてやるんだ。わかるだろ? なぁ息子よ」
山賊B「……確かに俺もあんたも罪人かもしれない。だけどよ、それで捻くれて自棄になっちまったらなんにもなんねぇだろ……!!」
頭領「そうか……」
山賊B「わかってくれよ、頭……」
頭領「……無駄な時間を過ごしちまったようだ。お前らぁ! そろそろ行くぞ!!」
山賊団「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」
山賊B「頭!!」
頭領「てめぇは少し頭を冷やせ。んでもって自分の置かれた立場をよーく考えてみるんだな」
ザッザッザッザッザ
267: 以下、
山賊B「……クソッ!!」
山賊E「………」
山賊B「どうしたんだ? 早く行かねぇと置いてかれるぞ?」
山賊E「あ、ああ。すぐに追いかけるよ」
山賊B「精々頑張れよ、俺の分までな」
山賊E「そういうこと言うなって。俺だってこんなこと、あまり好きじゃない」
山賊B「そうなのか?」
山賊E「ああ。実は俺、血が苦手なんだ」
山賊B「お前、山賊向いてねぇな」
山賊E「自分でもそう思う。ただ、飯が食えなきゃ死んじまうし、できれば俺も死にたくない。だからやってる。仕方なく」
山賊B「俺だってそれは否定しねぇよ。でもよ、仕方ないって言葉で片付けたら守んなきゃいけない大切なものまで知らないうちになくしちまうだろ?」
山賊E「……お前は立派だな。俺は生きるのに必死でそんなことまで考えつかなかった」
山賊B「………」
山賊E「……いつか、もう少しマシな生活をしたいな」
山賊B「ちげぇねぇ」
268: 以下、
山賊E「別に贅沢がしたいわけじゃないんだ。誰も傷つけなくていい、そんな生き方がしたいだけなんだよ」
山賊B「お前……」
山賊E「なぁ、お頭が言ってたみたいにさ、俺たちってもう戻れないのかな?」
山賊B「そんなことねぇさ……!!」
山賊E「でも、俺の手はきっと汚れてる……」
山賊B「悲しいこと言うんじゃねぇよ! お前がお前のことを諦めたら、誰がお前を救ってやれるんだよ!」
山賊E「……悪い、少し暗くなっちまった」
山賊B「気にするな、こんな生活続けてたら嫌でもそうなる」
山賊E「ありがとな」
山賊B「そろそろ行けよ、お頭たち見失っちまうぞ?」
山賊E「ああ」
269: 以下、
山賊A「………」シューン
山賊B「どうした?」
山賊A「黙って付いて行こうとしたら怒鳴られた……」シューン
山賊E「あはは……」
山賊B「お前が一番向いてねぇよ……」ハァ
山賊E「じゃあ、行ってくる」
山賊B「ああ、気をつけろよ。死ぬんじゃねぇぞ?」
山賊E「そうだな、死ぬのはやっぱり避けたいな……」ハハッ
271: 以下、
おつ
山賊祭りで混乱してきた……
273: 以下、
山賊の個別詳細はよ
279: 以下、
こんばんは、ご要望にありました山賊の個別詳細について
山賊A→ドジっ子。後の紅騎士
山賊C→荒っぽい山賊。勇者に一瞬でやられる。後に受付が教育係に
山賊F→どちらかといえば落ち着いている山賊。最近課長の下で魔法を勉強中
山賊E→血が苦手な山賊
山賊B→後の蒼騎士。王都でブルーちゃんという電子妖精と運命的な出会いをする。幾多の苦境を二人で乗り越えていくうちに二人の関係は愛という固い絆で結ばれるように………グヘヘ
正直マスター以外の人は別に覚えなくていいかも!!
286: 以下、
――職員寮――
チュンチュン………
山賊E「んん……」パチッ
山賊C「起きたか」
山賊E「過去編ですか!?」
山賊C「……なに言ってるんだ? お前?」
山賊E「いや、だったら俺なんかにスポット当てるよりより勇者とか受付の姉貴とか……」ボーッ
山賊C「大丈夫か!?」
山賊E「………!!」ハッ
山賊C「おい?」
山賊E「……おはよう」
287: 以下、
山賊C「寝ぼけてんじゃねぇよ……」ハァ
山賊E「いや、急な状況変化についていけてなくて……」
山賊C「しっかりしろよ? もう俺仕事場行くから、戸締りよろしくな?」
山賊E「仕事場行くって……まだ朝の6時だぞ? こんな早く行ってどうする気だよ?」
山賊C「いや、受付の姉貴がまた新しい仕事教えてくれるって言うからよ。楽しみでいてもたってもいられなくて……先行って予習しようかと思ってんだ」
山賊E「仕事熱心だな……ちょっと異常なくらいに」
山賊C「いや、楽しみでよ!」アハハ
山賊C(なんだ、お前? ビビってるのかよ?)ハハッ
山賊E「……人って変わるもんだなぁ……」
山賊C「なんか言ったか?」
山賊E「いや、なにも。あんまり無理すんなよ?倒れたりしたた俺の仕事が増える」
山賊C「んなことしねぇよ。んじゃ、行ってくるな!!」
ガチャ
山賊E「いってらっしゃーい。」
山賊E「さて、俺も準備しないとな……」ゴソッ
288: 以下、
―――――
山賊E(俺たち山賊団は火竜事件の後、騎士団によって捕らわれ重い処罰が下されるはずだった)
山賊E(後で聞いた話では良くて長期間の牢獄生活、悪くて死刑って話だったらしい)
山賊E(山賊団一つ闇に葬られたところで世間は誰も俺たちのことなんて気にしない。俺たちもそうなるだろう……そう思った)
山賊E(だけどどういうわけか今はこうして役所の公務員として働いている)
山賊E(どうやら受付の姉貴が手を回してくれたらしく、人手不足の役所を手伝うことで『奉仕活動』という名目で罪を償っているということにしてくれたらしい)
山賊E(奉仕活動といっても給料はちゃんと出るし、住む場所も職員寮を使わせてくれている……まぁ、時折『これって牢獄の中にいた方がマシだろ!?』というような過酷な業務もあるが……実際に俺も何回か過労で死にかけたし……)
山賊E(それでも今は『あの頃』のように血を見ることもなくなったし、山賊団のみんなも生き生きと働くようになった)
山賊E(俺は……この生活に満足している。なんだか本当に真人間になれた気がして………)
山賊E(あの日思い描いていた『普通』な日常を送れていることが、この上なく嬉しい)
山賊E「……忘れ物は無し、これで準備OKってところかな?」
山賊E「さて、今日も1日、頑張るとしますかね!」
山賊E「いってきます!」
289: 以下、
ガチャッ
山賊E「ん?」
ギャーギャー!!
山賊E「なんだ? 寮の前で……」
290: 以下、
地主「この女! よくもやりやがったな!」
お嬢様「私はなにも悪いことはしていません!!」
地主「うるせぇ! 俺の飼ってた奴隷を勝手に解放しやがって!! そんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
お嬢様「私は当然のことをしたまでです!」
地主「なんだとぉ!?」
お嬢様「あなたがやっていることは立派な犯罪ですわ。この地は奴隷の所有を条例で禁止しています。知らないわけではないでしょう?」
地主「笑わせる。そんな条例、誰が守ってるって言うんだよ?」
お嬢様「恥を知りなさい! あなたのような人がいるから奴隷制度が未だに無くならないのです!!」
地主「馬鹿馬鹿しい! そんなこと俺には関係ない! お前がやったことは窃盗だ。あの奴隷達がいくらしたと思ってるんだ! ええ!?」
お嬢様「人の命をお金で買うなんて…恥ずかしくないのですか!!」
地主「この女、好き放題言いやがって……」スチャッ
お嬢様「今度はそれで暴力に訴えようと言うのですか? そうやってあの方たちを痛めつけていたのですか!」
地主「ああ、そうさ。これは粗相をした奴隷を躾けるための道具だ。お前も躾ける必要があるらしい」クックック
お嬢様「それで私が口を噤むとでも? 何度でも言ってあげます。あなたがやっていることは犯罪です。今すぐ悔い改めなさい!!」
地主「……どうやら、本当に痛い目にあってもらわなきゃわからないみたいだな……」
お嬢様「私は暴力に屈したりしません!!」
地主「この!!」
291: 以下、
山賊E「あー、ちょっと…」
地主「……なんだお前? 見世物じゃねぇぞ? あっち行ってろ!」
山賊E「いや、寮の目の前で騒がれるのも困るんですけど」
地主「今はそれどころじゃないんだ!! こいつはな! 俺が飼ってた奴隷を逃したんだぞ!」
山賊E「ええ、聞こえてましたよ……それはもう十分すぎるほどに」
お嬢様「あなたが悪いんでしょう! 私は正しい行いをしただけです!」
山賊E「困ったな……」
地主「とにかく俺はこいつに痛い目にあってもらわなきゃ気がすまねぇ! こいつがやったことは窃盗だ。つまりこいつは盗人なんだよ!」
お嬢様「あなたが私に罪を問うのですか? 自分のしていることを棚に上げて!」
地主「うるせぇ!!」
292: 以下、
山賊E「あのですね、確かにこの女性が言う通りこの地域は奴隷の使役は禁止と条例で決まってるんですよ…」
地主「そんな条例、誰が守ってるんだ!? 俺たち地主はな、奴隷を労働力として雇っているんだよ、あいつらがいなくなったらこっちは商売あがったりだ!」
お嬢様「労働力が欲しければ彼女たちを正式に雇えばいいでしょう! なぜ奴隷などという扱いをするのです!」
地主「奴隷ごときに給料なんて払ってられるか! いいか、あいつらは人間のなりをしているが人間じゃないんだ。家畜に給料を払うやつがどこにいる?」
お嬢様「なんてことを……あなたの魂はどこまで腐っているのですか!?」
地主「なんでお前にそこまで言われなきゃならないんだ!」
山賊E「……うーん、どうしよう……」
お嬢様「なにを考え込んでいるのです!? 正義はあきらかにこちら側にあるというのに!!」
山賊E「い、いやそういうことじゃなくてですね……」
293: 以下、
地主「どけ! お前じゃ話にならん!!」ドンッ
山賊E「うわっ!」ドサッ
地主「……ほう? なんだよく見ればお前も中々上玉じゃねぇか。逃げた奴隷の代わりにお前を新しく飼うっていうのもいいかもしれねぇなぁ……」ニヤニヤ
お嬢様「あなたのような考え方の人がいるから!」
地主「生意気な女を調教するのも中々乙ってもんだ……」ヘッヘッヘ
山賊E「やめましょうよ、あんまりそれ以上はよくないで……」
地主「うるせぇ! ぶっ殺すぞ!?」
山賊E「一昔前の自分もあんなんだったのかな……そうじゃないと思いたいんだけど……」ハァ
お嬢様「私はあなたなんかに屈したりしませんわ!!」
地主「先ずはそのやかましい口から調教してやるか」ブンッ
お嬢様「……!!」ギュッ
地主「オラァ! 泣いて許しを乞え! 女ぁ!!」
ガチィィン!!
302: 以下、
地主「なっ!」
山賊E「……まぁまぁ、ここは落ち着いて話し合いしましょうよ……」ポタポタ
山賊E「女性に手を上げちゃだめでしょ?」ニコッ
お嬢様「……あなた…」
地主「くっ、この!!」
山賊E「これ以上やると言うなら、こっちも容赦はしませんよ?」ギロッ
地主「………今日のところは勘弁してやる! いいか女、いつか必ずお前を痛い目にあわせてやるからな! 覚悟しておけよ!!」ダッ
お嬢様「おととい来やがれ、ですわ!!」シャー
303: 以下、
山賊E「大丈夫ですか?」
お嬢様「問題ありませんわ! よくあることです」
山賊E「よくあるって……」
お嬢様「あなたの助けがなくてもあんな男、私の蹴りで一発でしたのに……!!」
山賊E「ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ」ナデナデ
お嬢様「!! …・…な、なにを……!?」バッ
山賊E「ああ、すいません。なんというかつい……ってあれ?」
お嬢様「……なにか?」
山賊E「い、いやなんでもありません……」フイッ
お嬢様「まったく、淑女に対して頭を撫でるなど失礼ですよ」フフッ
山賊E「………すみません。でもあなたもなんであんなことに?」
304: 以下、
お嬢様「それはあの男がこちらの警告を散々無視してあの方々に酷いことをするからどうしても許せなくて……!!」
山賊E「それでも、あなたが危険な目にあっては意味がないでしょう。こういう時は役所にですね……」
お嬢様「それでもダメだったからああするしかなかったんです!」
山賊E「でしょうね……」ハァ
お嬢様「まったく! 国はなにをやってるんですか!?」
山賊E「ううっ……耳が痛い」
お嬢様「頭ではなく?」
山賊E「そっちは別に大して……」
お嬢様「……まぁ、それでも助けてくれたことは感謝しないでもないですわよ?」
山賊E「はぁ……じゃ、俺は仕事に行かなきゃいけないんで……」ボタボタ
お嬢様「あ、あなた……せめて名前を……」
山賊E「名乗るほどの者でもないですよ。ただのしがない公務員です」
お嬢様「ちょ、ちょっと!!」
山賊E「では、今後も無茶しないでくださいね?」
お嬢様「話を聞きなさい!!」
山賊E「いや、本当に仕事行かなきゃいけないんで、すみません」
お嬢様「そんな有様で行くんですの!? なんというかあなたすごいことになってますわよ!?」
山賊E「よくわからないですけど急いでるんで……」
お嬢様「待ちなさい!!」
山賊E「すみません」ダッ
お嬢様「……もう!!」
お嬢様「……それにしてもあの方はやはり………」ボソッ
お嬢様「ふふっ、遂に見つけましたの!!」
305: 以下、
――役所――
受付「さーて、今日は君に新しい仕事を教えるんでしたね!」
山賊C「よろしくお願いします! 姉御!!」
受付「うむ、元気があってよろしい! いいですか? 私の命令は絶対です。逆らったりしたらダメですよ!」
山賊C「わかってますよ、姉御!」
受付「ノンノン……いいですか? 私のことは姉御ではなく女王様と呼びなさい」
山賊C「へい! 女王様!」
受付「よろしい」
同僚「なにがよろしいだ、馬鹿」スパーン
受付「痛っ!」
306: 以下、
山賊C「大丈夫ですか? 女王様!!」
同僚「あなたも、この馬鹿の言うことなんて聞かなくていいから、さっさと仕事教わっちゃいなさい」
山賊C「へ、へい」
受付「なんの用ですか……? 同僚さん。さっさと仕事に戻ってくださいよ?」
同僚「いやね、『彼』がまだ来てないのよ。あなた、寮で同室だったわよね? なにか知らない?」
山賊C「いや………あいつ来てないんですか? おかしいな、俺が出てった時はピンピンしてましたぜ?」
同僚「……そう。なにかあったのかしら?」
受付「無断欠勤とは太ぇ野郎ですね! 締めますか?」
同僚「アホみたいなこと言わないの」
受付「もちろん、冗談ですよ。でも心配ですね……」
307: 以下、
山賊C「大丈夫ですか? 女王様!!」
同僚「あなたも、この馬鹿の言うことなんて聞かなくていいから、さっさと仕事教わっちゃいなさい」
山賊C「へ、へい」
受付「なんの用ですか……? 同僚さん。さっさと仕事に戻ってくださいよ?」
同僚「いやね、『彼』がまだ来てないのよ。あなた、寮で同室だったわよね? なにか知らない?」
山賊C「いや………あいつ来てないんですか? おかしいな、俺が出てった時はピンピンしてましたぜ?」
同僚「……そう。なにかあったのかしら?」
受付「無断欠勤とは太ぇ野郎ですね! 締めますか?」
同僚「アホみたいなこと言わないの」
受付「もちろん、冗談ですよ。でも心配ですね……」
308: 以下、
山賊E「すみませーん。遅れましたー」ハァハァ
受付「まったく、どうしたんですかー? ってぎゃぁぁぁぁあああああ!!」
同僚「あなた、どうしたの? それ!?」
山賊C「なにかあったのか!?」
山賊E「いや、ちょっと来る途中に転んじゃいまして……」
受付「転んだ!? どうやって!?」
同僚「と、とにかく医務室に!?」
山賊E「そんな、大袈裟な……大丈夫ですよ、ちょっと頭は痛いけど大したことじゃありません」ボタボタ
山賊C「い、いや……お前、それ……」
309: 以下、
山賊E「え?」ヌルッ
山賊E「これって……血?」
山賊E「あ、俺……血、ダメで……」クラッ
ドサッ!!!
山賊C「おいぃぃぃぃ!!!」
受付「衛生兵! 衛生へぇぇぇえええいいいいい!!!」
同僚「ちょっと! しっかりしなさい!!」
319: 以下、




山賊D「お頭、この家の住民、全員縄で縛っておきました」
山賊C「金目のものは全てここに」
頭領「おお、ご苦労さん」
領主妻「ひぃ……」ガタガタ
召使い「命だけはお助けを……」ガタガタ
領主「……くっ」
頭領「まぁ、ざっとこんなもんだろ」
320: 以下、
頭領「おう、領主様よ。こんなデカイ屋敷に住んでて警備の1人もつけないなんて随分と不用心じゃねぇか?」
領主「なにを馬鹿なことを……警備などをつける理由がどこにある? 魔王は死んだ。これ以上誰と争う必要があるというのだ!?」
頭領「へぇ、人間は皆お友達ってか? 領主様はお考えになることがご立派でございまする……そんなお花畑な脳みそだから俺たちみたいな人間に狙われるんだよ! なぁ、お前ら!!」
山賊達「うぉぉぉぉおおおお!!」
領主「……これで満足か?」
頭領「……なんだと?」
領主「このような生き方をして満足かと聞いている!」
山賊E「……!!」
領主「悪事に身を染め、自らの魂が汚れていくのを感じながら生きていくことで満足か!? その装束で闇に紛れ、顔を隠し、ろくに素顔を晒すこともできない……そんな生き方でお前たちは本当に満足かと聞いている!」
山賊C「なんだ? こいつ? 宗教家か?」ヘラヘラ
321: 以下、
頭領「知った口を利くんじゃねぇ!!」
領主「!!!」
頭領「俺達はなぁ、どこにも行くところがねぇんだよ。生きるためにはこうするしかないんだ!!」
領主「どういうことだ?」
頭領「おい、領主様よ、俺たちの生活で満足してるかって話だったよな?」
領主「………」
頭領「……満足だよ。清く正しく死ぬよりか、意地汚く醜く生きたほうが何倍もいい!!」
頭領「領主様とそのご家族様はは知らないだろう? 俺たちには帰る場所なんてない。それを理由に悪事に手を染めるどうしようもないクズさ。あんたたちみたいに生き方なんて選べるほど、俺たちの現実は甘くないんだよ!」
領主「そんな……」
頭領「魔王が死んだ!? だからどうした!? なにが変わったって言うんだ? なにも変わりはしねぇじゃねぇか!! 誰かのものを力尽くで奪って、強いものだけが生き残る! この世界はそんな世界のままじゃねぇかよ!!」
頭領「平和? いつそんなものが訪れたんだ? 俺たちにもその平和ってやつを教えてくれよ? なぁ、領主様よ!!!」ガンッ
322: 以下、
領主「そうか………そうだったのか……」
山賊C「頭ぁ! こいつ泣いてますぜ?」
山賊D「大の大人が情けねぇな!!」
あっはっはっは!!
領主「……こんなにも………君たちは………苦しんでいたのだな……」
山賊E「……」
頭領「どうした、領主様。やっぱり自分がたんまり溜め込んだ財産が俺たちのような山賊に根こそぎ奪われるのは悔しいかい? そうだよな? 泣くほど悔しいよな!!」
あははははは!!!
323: 以下、
領主「……ああ、悔しいさ……これ以上無いくらいに悔しい……!!」
頭領「いくら悔しがっても無駄だぜ? 金目のものと食料は全部いただく。精々自分の不運を呪うんだな!」
領主「そんなことではない……!!」
頭領「あ?」
領主「金ならまた貯めればいい。田畑はまた耕せばいい。それでもダメなら頭を下げ、助けを求めればいい。私が言っているのはそんな小さなことでは無いのだ……!!」
頭領「なんだと?」
領主「こんなにも苦しんでいる人々が目の前にいるというのに……私は何も知らず、ただのうのうと生きていたことが悔しいのだ……!!」
山賊D「こいつちょっと頭がおかしいんじゃねぇか?」
領主「無関心は罪だ。私は差し伸べる手を持っていながら君たちが苦しんでいることを気づきもしなかった。その結果君たちは望まない悪事を働いているのだろう。ならば今の君たちの罪は私にあると言っていい」
領主「………すまないことをした。このとおりだ。許してくれ」ザッ
頭領「な、なにを……」
山賊E「……!!」
324: 以下、
頭領「う、うるせぇ! 綺麗事言ってんじゃねぇぞ! この状況で俺たちに同情だと!? ふざけるのも大概にしやがれ!! どうせ誰か、助けを呼ぶための時間稼ぎに決まってる! 騙されねぇぞ!!」
領主「……私が信用できないのであれば屋敷にあるものは全て好きにすればいい。なんなら私の書斎にある金庫の暗証番号をここで言おうか? 中にはそれなりの金額が入っているはずだ」
頭領「なめやがって……!!」
領主妻「……あなた」
領主「すまない。この事態を招いたのは全て、無知であった私の責任だ」
領主妻「いいえ。あなたはきっと正しいことをしているはずですわ」
領主「……君まで危ない目に合わせてしまってすまないな」
領主妻「いつものことでしょう?」フフッ
頭領「……やめろやめろ!! 俺が見たかったのはそんな顔じゃねぇ! そんな顔じゃねぇんだよ!!」
領主「この屋敷にあるものは全て好きにしていい。売って金にするのも、腹いせに壊すのも自由だ」
領主「その代わり、私と約束してほしい」
領主「人に絶望しないでくれ。君たちに手を差し伸べてくれる人は必ずこの世界にいるのだから」
頭領「やめろ! そんなこと言うんじゃねぇ!!」
山賊E「……頭」
頭領「もっと俺たちのことを恨めよ! 俺たちを憎めよ!! そんな顔するんじゃねぇ!」
頭領「そんなんじゃまるで……」
頭領「俺たちが間違ってるみてぇじゃねぇか……!」
325: 以下、
山賊E「……うっ」ピクッ
山賊F「お、気がついたか。まったく、心配かけやがって」
山賊E「……俺は……?」
山賊F「ああ、自分の血見てぶっ倒れたんだよ。相変わらずだな、お前は」ハハハ
山賊E「……そうか」
山賊F「で、今度は誰のために怪我したんだ?」
山賊E「え?」
山賊F「いや、お前が血を見て倒れたって聞いてさ、昔のこと思い出したんだよ。ほら、あの領主様の家を襲撃した時のこと」
山賊E「……」
326: 以下、
山賊F「……あの時もお前、自分の血を見てぶっ倒れたんだぜ? お頭には『転んだ』としか言わねえし」フフッ
山賊E「……丁度その時の夢を見てたんだ」
山賊F「へぇ………偶然ってのはあるもんだな。」
山賊E「……俺たちさ、あの頃に比べたら少しは変われたよな?」
山賊F「どうだろうな……俺にはわからないよ。ただ……」
山賊E「ただ?」
山賊F「あの頃より、今の方が楽しいってのは確かだ」
山賊E「……そうだな」ガバッ
山賊F「おい、おとなしくしてろって」
山賊E「いや、もう大丈夫だ。仕事しないと……今日中に終わらせなきゃいけないのがあるんだ」
山賊F「……あんまり無理はするなよ?」
山賊E「分かってる」スタスタ
山賊E「……そういえばさ」
山賊F「なんだよ?」
山賊E「あの時の領主様達ってどうなったか聞いてるか?」
山賊F「……さぁ、知らないな」
山賊E「……そうか。分かった。ありがとう」
山賊F「気分が悪くなったらすぐ言うんだぞ」
山賊E「……」ヒラヒラ
山賊F「本当にわかってるのか……?」ハァ
327: 以下、
―――――
山賊E「戻りましたー」
同僚「あら、お帰りなさい。もういいの?」
山賊E「はい、大丈夫です。お騒がせしました」
同僚「まったく……なにがあったの?」
山賊E「……転んだんです」
同僚「随分と派手に転んだものね? 頭だけぶつけたの? なにかで殴られたみたいに?」
山賊E「……転んだんです」
同僚「話したくないならいいわ。でも、心配する人間がいることを忘れないで。分かった?」
山賊E「……ありがとうございます」
328: 以下、
受付「ちょ、ちょっとお客様! 困りますって!!」
お嬢様「そんなこと知りませんわ! あの人はここにいるんでしょう!?」
受付「職員のことはプライバシーの都合上話せないんです!」
お嬢様「私はただ『今日頭に怪我をした男』に会いに来ただけですの! それのどこに問題があるんですの!?」
受付「だってただ事じゃない感じなんですもの!!」
お嬢様「ええ、ただ事じゃありませんわ!」ズカズカ
329: 以下、
同僚「あー、ちょっと別室で隠れておく?」
山賊E「いえ、受付の姉貴を助けて来ます」
同僚「……悪いわね、気をつけるのよ?」
山賊E「……はい」
スタスタ
山賊E「あ、あのー」
330: 以下、
受付「あ、ダメですよ。出てきちゃ!!」
お嬢様「やっぱりここにいたんですね!! やっと見つけましたわよ!!」
ズカズカズカ
山賊E「う、うわっ」
ドン
受付「わお……あれが噂の壁ドンですか!?」
同僚「なんかちょっと違う気がするけど……」
山賊E「あ、あの……?」
お嬢様「よくも私を無視してくれましたわね?」
山賊E「い、いや仕事があったんで……」
お嬢様「黙りなさい。もしあの後あの男が帰ってきたらどうするつもりだったんですか?」
山賊E「いや、そこまで面倒見切れませんよ」ハハッ
331: 以下、
お嬢様「笑い事ではありません!」ドンッ
山賊E「す、すみません」
お嬢様「……怪我は大丈夫ですか?」
山賊E「ええ、とりあえず大丈夫です」
お嬢様「……そう」
山賊E「もしかしてそれだけのために?」
お嬢様「もちろん違いますわ」
山賊E「じゃ、じゃあ何の用で?」
お嬢様「一目惚れです。私と結婚しなさい」
受付「は?」
同僚「へ?」
受付・同僚「「ええええええ!!!」」」
山賊E「ごめんなさい。無理です」
受付・同僚「「えええええええ!!!」」
341: 以下、
お嬢様「あら、断るんですの」
山賊E「ええ、断ります」
お嬢様「理由、聞いていいかしら?」
山賊E「こういうのってお互いの相互理解が大事だと思うんですよね、やっぱり。よく知りもしないのに結婚って……そういうのはちょっと……」
お嬢様「……そう」
山賊E「お互いの未来のビジョンっていうのを共有してからって言うか、そこまで焦る年齢でもないし、まだまだ1人の時期を楽しみたいというか、自由っていうのを……」
受付「女の子にそこまで言わせてなに考えてんですか!」スパーン
山賊E「痛っ!」
同僚「あんたみたいな草食男子がいるからねぇ! 私に春が来ないんじゃない! なによ!? 『自分の時間を大事にしたい』って! だったら最初からOKするな!!」
山賊E「ちょ、姉御……頭はちょっとやめてもらえますか……あとなんの話です?」
受付「同僚さんは半年前、付き合ってた彼氏と別れたんですよ!」
同僚「あああ!! あんたみたいなのを見てるとイライラするぅ!!!」
山賊E「姉御、顔、顔!! すごいことになってますって!!」
同僚「誰の顔が酷いって!?」グリン
山賊E「いやそういうことじゃなくてですね……」
342: 以下、
お嬢様「……まぁ、そういうことならいいでしょう」
山賊E「え?」
お嬢様「お互いの相互理解が大事だと言うのならそれもよろしいですわ。そういう期間が重要だということは書庫の本に書いてありましたもの」
山賊E「いや、ちょっと?」
お嬢様「ならば私と恋をしましょう!!」ババーン
受付「再告白きたぁぁぁああああ!!」
343: 以下、
山賊E「いや、だから無理ですって」ハハッ
同僚「断んな!」スパーン
山賊E「本当に叩かないでもらえますか!? 傷口開くんで!!」
344: 以下、
山賊C「……で、こんな感じになったと」
山賊E「姉御達の押しが凄くて……」
お嬢様「………」ギュゥゥゥ
山賊E「あの、仕事の邪魔になるんで離してもらえませんかね……?」
お嬢様「嫌ですわ」キッパリ
山賊E「なぁ、俺どうしたらいいのかな?」
山賊C「死ねばいいんじゃないかな」ニッコリ
山賊E「なんで……?」
345: 以下、
お嬢様「死なれたら困りますわ。この歳で未亡人なんてごめんです」
山賊E「いや、結婚してないんで未亡人とかにはならないですよ」
お嬢様「では結婚しましょう」
山賊E「冗談はやめてくださいよ」ハハッ
お嬢様「むぅ……」プクー
山賊C「いや、もうお前は死ね。今すぐ」
山賊E「えぇ……?」
お嬢様「ああ……!! こうして殿方の腕に抱きつくなんて、以前の私でしたら考えられない行動ですわ……恋は人を変えてしまうのですね!!」
山賊E「寝言は寝て言ってください」ハハッ
お嬢様「あなたの腕の中で眠れるなら私は本望ですわ……」ウットリ
山賊E「ちょっと誰か通訳の人呼んで!!」
346: 以下、
お嬢様「………それにしてもあなたの腕、公務員にしては中々鍛え上げられていますわね? なにかスポーツでもなさっているのですか?」
山賊E「え? これはその……」
山賊C「ああ、こいつはちょっと前に山賊稼業を……」
山賊E「おおおい!!」ガシッ
お嬢様「サン……なんですって?」
山賊E「さ、散歩!! そう散歩が趣味でして、気がついたらこんな肉体に!!」
お嬢様「まぁ、随分と過酷な散歩ですのね!」
山賊E「はい、そりゃもう!!………おい!」
山賊C「なんだよ?」
山賊E「馬鹿、俺たちが元山賊ってことは秘密だろ!」ヒソッ
山賊C「……!! ああ、すまん。つい……」
山賊E「ただでさえ非公式だっていうのに……バレたら、ここにはいられなくなるんだぞ? 牢獄暮らししたいのか?」
山賊C「悪い、お前が憎くて……」
山賊E「憎くてって言った? ねぇ今憎くてって言った!?」
347: 以下、
お嬢様「もう、私をのけ者にしては盛り上がらないでくださるかしら?」プンプン
山賊E「ああ、すみません」
お嬢様「あなたはお散歩が趣味なのですね」
山賊E「え、ええ。歩きながら考え事したり、景色を見たり……」
お嬢様「素敵ですわ……」
山賊C「『どうやったら効率よく人の家に侵入できるかな』とか『ああ、あの家金持ってそうだな』とか」
山賊E「お前、いい加減にしろよ!!」
山賊C「ああ、すまん。お前に殺意を覚えてつい……」
山賊E「え、なに? 俺が悪いの?」
山賊C「お前以外誰がいんの?」アアン?
山賊E「こいつ……!!」
348: 以下、
お嬢様「2人でのんびり歩きながら初デート……うふふ……それも中々風情があって……」
山賊E「だからそんなことしないって!!」
お嬢様「なんでですの!? 男女が付き合うのならば当然デートをするものでしょう!?」
山賊E「付き合ってないんで……」
お嬢様「まだそのようなことを言うんですか? 聞き分けのない人ですね!」
山賊E「いやだから俺が悪いの?」
山賊C「あああ!! 俺の前でイチャイチャするんじゃねぇ!!! このままいったら俺、血反吐吐くぞ!!」
349: 以下、
――終業時間――
山賊E「結局仕事にならなかった……」
お嬢様「私は楽しかったですよ? あなたのお仕事をしている姿を堪能できて満足ですわ」
山賊E「あなたのせいで全然仕事終わらなかったじゃないですか……今日中に終わらせないといけない書類があるのに……ああ、今日は徹夜かな……」ガックシ
お嬢様「二人の愛のためには犠牲はつきものですの」
山賊E「いや、犠牲を払ってるの俺だけですよね!?」
お嬢様「あら、そうでしたか?」
山賊E「……もう帰ってくださいよ……これから残業しなきゃいけないんであなたの相手をしてる暇なんて無いんです」
350: 以下、
受付「あ、君はもう帰ってもらって大丈夫ですよ?」
山賊E「え? でもまだ仕事残ってて……」
受付「頭を怪我しているでしょう? 無茶をしてはいけません。ついでに彼女を送り届けてあげてください」
山賊E「彼女じゃないです。でもいいんですか? これ、今日中に終わらせないといけない書類のはずですよね?」
受付「大丈夫ですよ、私が代わりにやっておきますので」
山賊E「そんな、姉御にそんなこと……悪いですよ」
お嬢様「悪くないですわ! あなた、折角のご厚意ですよ!? 受け取らなければ失礼です!」
山賊E「……その『あなた』ってのやめてください。夫婦でもなんでもないのに」
お嬢様「あら、いずれなるのに?」
山賊E「ハハッ、無いですよ。そんなこと」
351: 以下、
受付「とにかく! 今日は帰ってしっかり休むこと! いいですね!?」
山賊E「……わかりました」
受付「よしっ!」グッ
山賊E「?」
お嬢様「よくやりましたわ」スッ
受付「ありがとうございます!」ガバッ
山賊E「なに受け取ったんですか!? 姉貴!?」
受付「さぁ、なんのことでしょう?」ハテ?
山賊E「いや、そんなキョトンとしたってダメですよ!」
お嬢様「ちょっとした心付けですわ。さぁ、あなた。行きましょう?」グイッ
山賊E「いや、あのちょっと!?」
受付「行ってらっしゃいませ!!」
山賊E「姉貴、俺を売るんですか!?」
受付「はい!」
山賊E「いい返事だな! ちくしょう!」
お嬢様「ほら、行きますわよ!!」グイグイ
山賊E「ちょ、ちょっと!?」
お嬢様「お散歩デートですわ♪」
山賊E「姉貴ぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」ズルズルズル
352: 以下、
同僚「行った?」
受付「行きましたよ。まったく、大義名分がないと行動できないなんて、最近の男には困ったもんです! 本当はじぶんだってその気のくせに!」フンス
同僚「あら? わかるの?」
受付「乙女の勘です!!」ビシッ
同僚「また、オカルトチックな……あながち嘘でもなさそうだけど」
受付「彼、絶対彼女に気がありますよ。これはもう絶対です。受付ちゃんアンテナがビンビンですもの!!」
同僚「まぁでも、彼の場合単純にそういうことじゃ無いんでしょうね」
受付「大方、自分には資格が無いとでも思ってるんじゃないですか?」
同僚「向こうが一目惚れって言うなら尚更ね……」
353: 以下、
受付「まったく! 恋なんて深く考える必要なんてないんですよ! パッと来てグッです!」ヘヘン
同僚「相変わらず無茶苦茶な考え方」ハァ
受付「私ぐらいにもなれば男なんて取っ替え引っ替えですよ!!」フンス
同僚「ダウト」
受付「うぇえあ!?」
同僚「……あんた意外とわかりやすいわね」
受付「ななななななんのことですか?」
同僚「あんた、誰かと付き合ったことないでしょう?」
受付「そそそそそそんなことないですよよよ?」ガタガタ
同僚「ふぅん? 偉そうに言ってたくせにそうなんだー?」
受付「さぁ? なんのことか受付ちゃんわかんなーい」キャルン
同僚「まぁ、今回の件に関しては関係ないわね」フゥ
同僚「あとは二人に任せて、仕事に戻るわよ」
受付「……過去は過去です。いい加減、振り切らなければならきゃダメですよ? 今の君は昔の君とは違うんですから♪」
同僚「なにしてるの? 行くわよ〜」
受付「はーい♪」
359: 以下、
山賊E「………」スタスタスタ
お嬢様「………」スタスタスタ
山賊E(みなさんこんばんは、元山賊です。今の状況を説明させていただくとどういうわけかそのなんていうかえーっと……)
お嬢様「………」
山賊E(沈黙が辛い………)ズーン
山賊E(え、ちょっと待ってこれ、どういうこと? さっきまであんなにグイグイ来てたのに今になってこの状況って……)
山賊E(俺、なんかしたっけ? 思い当たる節は……もちろんあるけども………!!)ハハッ
山賊E(いやでも俺の選択は間違っていないはずだ。だって彼女は……)ジー
お嬢様「あ、あんまり横顔をジロジロ見ないでくださる……?」
山賊E「あ、ああ! す、すみません! 嫌でしたよね!?」
お嬢様「い、嫌じゃありませんわ! 決して!!………ただ」
山賊E「ただ?」
お嬢様「は、恥ずかしいじゃありませんか///」
山賊E「うっ……」
360: 以下、
山賊E(可愛い………じゃなかった! おいおい落ち着け、少々ヒートアップし過ぎだ俺。もっと思考をクールにするんだ。大丈夫、これは一時の気の迷いだ)ブンブン
お嬢様「???」
山賊E(いいか、俺。彼女とは絶対に付き合えない。自分がしたことを考えてみろ。俺はまだその罪を償っている最中じゃないか。今こそ彼女に誠心誠意キッパリと断るべきだ! そうすれば彼女もきっとわかってくれる!!)
お嬢様「大丈夫ですか?」
山賊E(さぁ、踏ん張れ俺! 最終的にひっぱたかれようがなにされようが……頭は勘弁して欲しいけど……ダメなものはダメなんだとしっかり伝えなければ!!)キッ
山賊E「あの………」クルッ
お嬢様「はい?」ズイッ
山賊E「どわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
お嬢様「どうしました!? 傷が痛むのですか!?」
山賊E「な、なななんでそんな近くに!?」
山賊E(顔が!! 吐息が!! あああああああああ!!!)ブンブン
361: 以下、
お嬢様「いえ、頭の傷の様子を見させてもらおうかと思いまして……」
山賊E「急に近くに来たらびっくりするじゃないですか!!」
お嬢様「私だって、急に近くで大声出されてびっくりしましたわ!!」
山賊E「それに関してはすみません……外に出てからずっと黙ったままだったので……」
お嬢様「そうでしたか……」
山賊E「なんか悪いことしました? 俺」
お嬢様「いえ、そのようなことは……」
山賊E「じゃあなんで黙ってたんです? さっきまであんなに元気だったのに」
お嬢様「……改めて二人っきりになるとどうも緊張してしまいまして……」
山賊E「そうだったんですか……」
山賊E(ああ!! かわ………違う違う!! しっかりしろ俺ぇぇぇぇぇ!!!!)グギギギ
お嬢様「あ、あんまり暴れると傷口開きますよ……?」
山賊E「いえ! お構いなく!!」
お嬢様「そうですか?」
スタスタスタ
お嬢様「………」
山賊E「………」
362: 以下、
お嬢様「もう! こういう時はあなたが気を利かせてなにか話題を提供してくれてもいいじゃありませんか!?」
山賊E「いや、なんでですか!」
お嬢様「これが二人の初デートなのですよ!? これではただの帰宅です!」
山賊E「だから! デートじゃないってさっきから言ってるでしょう!!」
お嬢様「仕方ありません! ここは恋人らしく手を繋ぎましょう!」
山賊E「人の話聞いてる!?」
お嬢様「ほら、早く手を出してください!」
山賊E「い、嫌ですよ……」モジモジ
お嬢様「私の言うことを聞けないと言うのですか?」
山賊E「あなただって俺の話、聞かないじゃないですか」
お嬢様「あら、似た者同士ですわね、私達♪」
山賊E「いや、だからなんで話がそっち方向に行っちゃうの!?」
お嬢様「いいから! さっさと手を出しなさい!」グイッ
山賊E「ちょ、ちょっと!」グラッ
363: 以下、
お嬢様「………考えてみれば殿方の手を自ら取るのなんて、私、初めてですわ! なんてはしたないことを……ですがこの恋心はとどまることを知りません!」
山賊E(やっぱり、か、顔が近い……///)
山賊E「……うう」
お嬢様「あなた、顔が赤いですわよ?」
山賊E「赤くありません! いいから離してくださいよ!」
お嬢様「いいじゃありませんか! 今更なにを恥ずかしがることが……あら? これは……火傷の跡……ですか?」
山賊E「……いや、あの、これはその……」
お嬢様「……やっぱり」ボソッ
山賊E「はい?」
お嬢様「……いえ、やっぱり魅力的な手だと思いまして」ワタワタ
山賊E「///もう十分でしょう。離してください」パシッ
お嬢様「ああん、いじわるです……」
山賊E「まったく……」
お嬢様「あなたは恥ずかしがり屋さんですのね」フフッ
364: 以下、
山賊E「……なんでですか?」
お嬢様「はい?」
山賊E「なんで俺なんかを?」
お嬢様「一目惚れじゃ足りません?」
山賊E「足らないです」
お嬢様「では今朝、危ないところを助けていただいたからという理由はどうです?」
山賊E「弱いですね」
お嬢様「むぅ……困りましたわ」
山賊E「困っちゃうのかよ……」
お嬢様「ああ! 顔が好み!」
山賊E「もうちょっとマシなのを好きになってください」
お嬢様「なんでそういうことを言うんですか!」
山賊E「……いいですか。この際だからはっきりと言います。よく聞いてください」
お嬢様「それはプロポーズですか?」
山賊E「ちげぇ」
お嬢様「残念です」フゥ
山賊E「ああ!! 調子狂うな!!」
365: 以下、
お嬢様「それで、仰りたいこととは?」
山賊E「……あなたは身分の高い人でしょう? 貴族とかそういった類の」
お嬢様「……間違いではありませんね」
山賊E「喋り方といい、身につけているものといい、俺とは住んでいる世界が違う」
山賊E「なんていうか、あなたにはもっと相応しい人がいるんじゃないですか?」
お嬢様「……あなたまでそんなこと言いますのね」
山賊E「え?」
お嬢様「私とあなた、なにが違うと言うのですか?」
377: 以下、
山賊E「それは……」
お嬢様「では、質問を変えます。身分とはなんですか?」
山賊E「そんなこと、考えたことも無いですよ」
お嬢様「………父は私に教えてくれました。かつて、自分はある人に頼まれたのだと」
お嬢様「その人は父にこう言ったそうです。『これ以上、自分のような人間を作らないでくれ、私の手はまともに生きていくには汚れすぎてしまった。この世界には自分のような人間がたくさんいる。あなたにその気があるなら、どうか助けてあげて欲しい。ただそれだけが自分の望みである』と」
山賊E「………」
お嬢様「父はその日からこの国の制度と戦うことを決めました。身分制度撤廃を訴え、戦争によって傷ついた人々を支援し、戦争孤児たちを受け入れる施設建設を提案しました」
山賊E「……それは随分と立派な人ですね」
お嬢様「そうでしょうか?」
山賊E「いや、立派ですよ。俺の知ってる貴族なんて酷いもんだったし……復興作業の参考に1度会ってみたいな。役所の講演とかで呼ぶのもありかも……」
お嬢様「今は会えません」
山賊E「え?」
378: 以下、
お嬢様「……父は遠くへ行ってしまいましたから」
山賊E「……そう、ですか……残念です」
お嬢様「でも、寂しくなんかありませんわ! お父様はいつでも私を見守ってくださるはずです!」
山賊E「……本当に立派な人だったんですね」
お嬢様「父が立派なのではありません」
山賊E「どういうことですか?」
お嬢様「……私はこう思うのです。真に立派な人は父に今この世界が間違っていると気付かせたその人なのだと」
お嬢様「今まで普通だと感じていた日常を、違和感を感じていた毎日を『違う』と言ってのけたあの人こそが偉大なのです」
379: 以下、
山賊E「……文句を言うのと実際に行動するのとでは全然違うと思うんですけど……」
お嬢様「きっかけがなければ行動は無いと思いませんか?」
山賊E「……そんなもんですか」
お嬢様「それを踏まえた上で改めてあなたに聞きます。あなたと私のなにが違うと言うのです? 身分とはなんですか? 世界が違うとはなんですか? 私とあなたは同じ人間でしょう? もちろん、奴隷と呼ばれていたあの方達だって!」
お嬢様「人が人である時点で、誰でもが平等であるべきなのです。私はこの世界はそうであるべきだと思っています。そしてそのために行動したいと思っているのです」
山賊E「それであんなことを……」
お嬢様「あの男はあの方達に酷い仕打ちをしていました。それで我慢できなくて……」
お嬢様「もっと、みんなが幸せに生きる方法があるはずですわ! こんなことしなくても皆が手を取り合って生きていける方法がきっとあるはずです!」
お嬢様「だって、この世界は未だに間違え続けたままなのだから!」
山賊E「……そんなの、綺麗事だよ」ボソッ
お嬢様「え?」
380: 以下、
山賊E「……いえ、なんでもありません。本来ならあなたの志の高さを賞賛するべきところなんでしょうけど」
お嬢様「だったら我慢しないで私をギュッと抱きしめてくれてもいいですわよ?」
山賊E「ハハッ……」
お嬢様「なんですか! その乾いた笑いは!!」
山賊E「とにかく、俺はあなたとお付き合いすることはできませんのでいい加減諦めてください」
お嬢様「なぜですか!? 私のどこが不満だと言うのです!?」
山賊E「……自分はもうちょっとおしとやかな人がタイプなんで」
お嬢様「おしとやか? おしとやかになっていればいいのですね! わかりました!!」
山賊E「わかりましたって……」
お嬢様「……まずは話し方からかしら……それとも落ち着いた物腰?……カフェで読書というのも……」ブツブツ
山賊E「えっと……なにを勘違いしてるのかわからないんですけど……なにするつもりですか?」
お嬢様「明日まで待っていてください! すぐにあなたのお好みの女になってきますわ!!」ダッ
山賊E「ええ……?」
お嬢様「それではまた明日お会いしましょう!!」
ダダダダダ!!!
山賊E「あ、ちょっと!?」
山賊E「本当にあの人はなんなんだ……」ハァ
山賊E「でもやっぱり間違いない……彼女は……」ギリッ
388: 以下、
―――――
山賊E「……頭、やるべきことは果たしたはずです。もうこれ以上は……」
頭領「……いや、まだだ」
山賊E「え?」
頭領「屋敷に火を放て」
領主「……」
山賊E「頭、それはいくらなんでも……」
頭領「領主様は俺たちに仰っただろう? 屋敷のものは好きにしていいと! ……あんたたちも自分の家がなくなる苦しみを体感してみればいい。そうすりゃあんな綺麗事なんて言えなくなるはずだ」ククク
領主「……好きにしなさい」
頭領「気に食わねぇ野郎だ……!! やれ!!」
山賊D「へい、お頭!!」バチバチバチ
ゴォォォォォォ!!!
389: 以下、
頭領「はっはっは!! 燃えろ燃えろ!! 全部、全部燃やし尽くせ!!」
領主「………」
頭領「どうだ貴族共!! 俺たちの苦しみをその身をもって思い知れ!!」アッハッハッハ
バチバチバチ!!!
頭領「それでは領主様。俺たちはここらで引き上げるとしますよ。精々これからの生活、楽しんでください」ニヤニヤ
領主「ああ。君たちのこれからに幸あらんことを」
頭領「……クソッ! 最後まで本当に胸糞悪い野郎だ。気分悪りぃぜ!! お前ら!! 引き上げだ!!」
山賊団「「「うぉぉぉぉおおおお!!」」」
ザッザッザッザッザ
390: 以下、
山賊E「……」
バチバチバチ………
領主(人に絶望しないでくれ。君たちに手を差し伸べてくれる人は必ずこの世界にいるのだから)
山賊E(………本当にそうなんだろうか? こんな俺にも手を差し伸べてくれる人なんているんだろうか? )
山賊E(こんな薄汚れた手をとってくれる人がこの世界に……)
山賊F「おい、なにしてるんだ? あんまり長居するとまずい。そろそろ行くぞ?」
山賊E「あ、ああ」
領主「なんだと!? なぜそれを早く言わなかった!」
領主妻「今気がついたんです……!! ああ、どうすれば……」
召使い「奥様、落ち着いてください」
領主「なんということだ……!!」
山賊E「……なにかあったんですか?」
山賊F「お前……! なに話しかけてんだよ! 早く行くぞ!」
山賊E「あ、ああ」
領主妻「娘が! 娘がいないんです!」
領主「……きっとまだ屋敷に……!!」
山賊F「なんだって!?」
391: 以下、
――役所――
山賊F「……それで、こんな状況が3日続いていると」
山賊E「うん……」
お嬢様「あなたが『料理ができる子』が好みと言っていましたので今日はお弁当を作ってきました。どうぞ食べてくださいませ」スッ
山賊E「あ、ありがとうございます……」
お嬢様「これで結婚ですか!?」
山賊E「ごめんなさい」
お嬢様「なぜですの!?」ガビーン
お嬢様「はっ!……おしとやかおしとやか……」ブツブツ
山賊F「もう結婚しちゃえよ」
山賊E「なんでそういうこと言うの!?」
392: 以下、
山賊F「お前がこんなこと続けてるせいで他の奴ら見てみろ、ミイラみたいに干からびてんだぞ!」
「あーあ、見せつけてくれちゃって……」「あれですか、この世の春ってやつですか。俺の心はまだ真冬だっていうのに」「もういっそのこと新しい世界へ…」「ウホッ!」
山賊F「お陰で仕事の効率は悪くなる一方だ」ハァ
山賊E「なんか怪しいこと言ってる奴いなかったか?」
山賊F「とにかく、今のままじゃ仕事に支障が出る。迷惑だ、さっさとなんとかしろ」
山賊E「そんなこと言ったって……あのいい加減諦めてくれませんか?」
お嬢様「ありえません」
山賊E「ええ……?」
お嬢様「そちらこそいい加減、結婚してくれませんか?」
山賊E「ありえません」
お嬢様「ええ……?」
山賊F「俺の前でイチャイチャしないでくんねぇかな!?」ガンッ
山賊E・お嬢様「ええ……?」
山賊F「まったく!!」
393: 以下、
お嬢様「困りましたわ……どうすればあなたと結婚できるんですか?」
山賊E「……だから俺にその気は無いんですって」
お嬢様「他に要望などは?」
山賊E「そんなもの無いですよ! 俺はあなたと結婚する気なんて無いんです。ちゃんと人の話理解してます?」
お嬢様「はい、結婚まで一歩前進ということですね?」
山賊E「はぁ!?」
お嬢様「だってあとはあなたをその気にさせるだけなんでしょう? ちょろいですわ!」フフン
山賊E「そういうことではなくて……!!」グギギギギ
お嬢様「あら? だってもうこれ以上要望が無いんでしょう? つまり今の私はあなたの理想通りの女、というわけですことでしょう? 違いますか?」フンス
山賊E「どこまで前向きなんだこの人は……」
お嬢様「後ろ向きよりかはいいと思いません?」
山賊E「それは……そうでしょうけど」
お嬢様「ふふっ、また一つ魅力的になってしまいましたわ……そうですの!」パンッ
山賊E「またろくでもないこと思いついたのか……」
お嬢様「あなたをその気にさせる秘策を思いつきました!」
山賊E「もう勘弁して……」ナミダメ
394: 以下、
山賊F「さて、俺も魔法の勉強しないと……課長さんに見てもらおうかな」ガタッ
山賊E「1人にしないでください」パシッ
山賊F「離せ」
お嬢様「書庫の本に書いてあった『恋人同士のすれ違い』、これを実践してみましょう!」
山賊E「えっと、つまり……?」
お嬢様「文献によりますとですね、恋人というものはお互いの心の距離が離れてしまった時に初めてお互いの存在の大切さに気づくと書いてあります」
山賊E「だから恋人じゃねぇって」
お嬢様「すれ違うことで最終的に二人の距離は以前に増してグッと近づく……どうですか? 素敵だと思いません?」
山賊E「思いません」
お嬢様「そこで私たちもこれを実際にやってみようではありませんか! そうすることであなたも私の存在の大きさに気づき、再び私の前に現れた時は私を抱きしめつつ耳元でこう囁くんですの……『もうお前を離さない』と」エヘヘ
山賊E「こいつ頭おかしい」ハハッ
山賊F「お前段々ノイローゼになってないか?」
395: 以下、
お嬢様「完璧ですわ! 善は急げ、早、実行するとしましょう! さぁ、あなた早く!」
山賊E「い、いやどうすればいいんですか?」
お嬢様「喧嘩をするのです、なにか適当な理由で!」
山賊E「そ、そんなこと急に言われたって……えっとなにかない?」
山賊F「なんで俺が……あー、適当に悪口でも言えばいいんじゃないか?」
お嬢様「名案ですわ! さ、あなた!! 悪口を早く!!」
山賊E「そんなの悪いですよ……」
お嬢様「こういうのはやったふりでいいのです。なにを言われても本気にしませんから!」
山賊E「えっと……じゃあ、この『ストーカー女』!」
お嬢様「うっ……」グサッ
山賊E「人の仕事の邪魔ばっかりしやがって!」
お嬢様「うう……」グサッグサッ
山賊F「お、おい?」
山賊E「人の話なんて絶対聞かないし!」
お嬢様「………」
山賊E「言ってることの9割は意味不明!」
お嬢様「………」
山賊E「付き合うこっちの身にもなれってんですよ!! それにねぇ……!!」ガァァァァ
山賊F「おい! お前……」
山賊E「なんだよ、今いいところなん……」
山賊F「言いすぎだ」ハァ
山賊E「え? あ……」
396: 以下、
お嬢様「いいのですよ……? こ、これは、わ、私が頼んだことですから……別に気に、気にしてませ……」
お嬢様「………」ジワァ
山賊E「わー! 今の無し! そんなこと、これぽっちも思ってませんから!!」
お嬢様「うう……」グシュッ
山賊F「泣かすなよ」
山賊E「全っ然迷惑なんて思ってませんから! 今の全部嘘ですから!!」
お嬢様「いいんですの……これでお互いの心の距離が離れるというものです……」
山賊E「いや、なんかこれ全然違う気がするけど!!」
お嬢様「私、行きますね……」スクッ
山賊E「いや、ここで別れるとなんかすごい後味悪くなっちゃうんですけど!」
お嬢様「……あなた、寂しいですけど二人の未来のためにしばらくお別れです。早くその気になって私を迎えに来てくださいね………」タッ
山賊E「いや、ちょっと待ちましょうよ!?」
お嬢様「………引き止めても無駄ですわ」グスッ
お嬢様「………私の意思は固いのです! それでは!」ダッ
タッタッタッタッタ
山賊E「いや、あの! 一言くらい謝らせてくださいよ!!」
お嬢様「二人の愛のためですわー!!」タッタッタッタッタ
お嬢様「私は! 全然! まったく!! これっぽっちも!! 1ミリたりとも気にしてませんからー!!」
山賊E「気にしてるでしょ!? それ!?」
397: 以下、
山賊F「あー、なんていうか、ドンマイ」
山賊E「俺は言われた通りにやったつもりだったんだけど……」
山賊F「いや、あれは流石に言いすぎだろ」
山賊E「だよな……」
山賊F「……まぁ、そのよかったじゃないか、これでしばらくは安心ってところだろ?」
山賊E「だよな……」
山賊F「このまま、お前が迎えに行かなければあのお嬢様もいい加減諦め……るのか?」
山賊E「だよな」
山賊F「んじゃ、ひと段落したついでに飯でも食いに行くか。あ、お前はその弁当があるんだっけ?」
山賊E「だよな」
山賊F「おい?」
山賊E「だよな」
山賊F「もしもーし!!」
山賊E「………」
山賊F「炎魔法!!」ゴォォォ
山賊E「………」メラメラ
山賊F「効いてない!?」
398: 以下、
山賊E「……だよな」ボー
山賊F「……お前、もしかして……」
山賊E「……」ボケー
山賊F「なんだよ! 相思相愛じゃねぇか!!」
山賊E「ち、違うって!」
山賊F「じゃあ、なんだ? 今の反応は!?」
山賊E「こ、これは……その……」モジモジ
山賊F「お前さ、それであのお嬢様泳がせてたのか? 最低だろ……」
山賊E「違うんだ、話を聞けって!」
山賊F「……ノロケ話か? だったらお断りだぞ?」
山賊E「そんなんじゃないんだって!!」
山賊F「だったらなんだって言うんだよ?」
山賊E「それはちょっと言えないんだけど……」
山賊F「はぁ!?」
山賊E「悪い、俺同僚の姉貴に資料作成頼まれてるからそろそろ行かないと………」スタスタスタ
山賊F「いや、ちょっと待てよ………おい! ………なんだ、あいつ? ………にしても色男はやることがちがうねぇ……ちょっとあいつらの気持ちわかるかも」
ダダダダダダダダ!!!
地主「な、なぁ!! ここは役所の窓口でいいんだよな!」
山賊F「な、なんですか?」
地主「聞いてくれ! またやられたんだ!」
山賊F「お、落ち着いてくださいよ」
地主「今日という今日はもう我慢できない! 早くあの女を捕まえてくれ!!」
山賊F「なにがあったんですか?」
地主「また俺の奴隷が盗まれたんだ!!」
399: 以下、
―――――
受付「……えっとつまりこういうことですか? 『自分が所有していた奴隷を勝手に解放されたので取り返して欲しい』と」
地主「そうだ! 今週で2回だぞ! 2回!! 最初の時もそちらに被害届を出したはずだが対応されていない! どうなっているんだ!?」
課長「まぁまぁ、落ち着いてください……受付くん、それは本当かね?」
受付「はい、あまりにも馬鹿らしい内容だったので報告する必要も無いかと思いまして」
地主「なんだと!?」
課長「困るよ、きみぃ……そういうことは報告してくれないと」ハァ
受付「こっちは色々と手一杯なんですよ。違法所持しているものを盗まれたからなんとかしろって、そんなアホな要望に応えていられるほど私たちも、騎士団も暇じゃないでしょう?」
地主「こ、この……!!」
課長「確かに要望内容は酷いよ? 酷いけどね、とりあえず対応するふりくらいはしておいたほうがいいじゃないか。そうしたらこんな余計な仕事をしなくて済むだろう?」
地主「なっ!!」
受付「それもそうですけど……」
400: 以下、
課長「君の判断は間違いではないが、正解でもない。これからはちゃんと報告するように。いいね?」
地主「……」プルプル
受付「……すみませんでした」シュン
課長「よろしい。ではこの話はこれまで。次の仕事に取り掛かろうか!」
受付「はい!」
スタスタスタ
受付「いやー、久々に課長に怒られちゃいましたよ」アハハ
課長「誰にでも失敗はあるさ。もちろん私にもね」
受付「じゃあ、課長が失敗した時は私が怒りますね!」
課長「ハハッ、お手柔らかに頼むよ?」
ハッハッハッハッハ!!!
401: 以下、
地主「待て!! まだ私の話は終わっていない!!」ガンッ
受付「えー」
課長「やっぱり、ダメ、ですか?」
地主「いや、なんで今のでいけると思ったんだ!?」
課長「いや、申し訳ない。今、この子が言った通りですね、この地域では奴隷の所持は禁止されているんですよ。その前提がある以上、私たちでは対応できないんです。ご理解ください」
地主「なにをふざけたことを!! そんな条例、形だけのものだろう! あの女が逃した奴隷がいくらすると思っている!? お前らが弁償してくれるのか!?」
受付「ああ!! しつこいですね! 私があんたに奴隷の気持ちをわからせてやりましょうか!?」
地主「この……公僕が市民に逆らっていいと思っているのか!?」
受付「あんたみたいなのを手助けするためにこの場所があるわけじゃないんです!!」
地主「貴様、何様だ!」
受付「女王様ですよ!!」
402: 以下、
課長「……受付くん、それ以上はいけないよ?」
地主「貴様達では話にならん! 責任者を出せ! 話をつける!!」
課長「……それは本気ですか?」
地主「なにがだ!? 貴様達では話にならないから責任者を出せと言っているんだ!!」
課長「公務員が第一に考えることは市民の皆様のことです。それを理解していただいた上でもう一度聞きます。今の要望は本気で言っているのですか?」
地主「ああ。ついでに貴様らの態度についてもじっくり話し合ってやる。ただでは済まさんからな、貴様ら!!」
課長「そうですか。では地下1階から繋がっていますのでご案内しましょう」
地主「さっさと案内しろ!!」
課長「もう一度だけ聞きますけど本当によろしいのですか? あまり賢い選択とは思いませんが……」
地主「くっ、 どこまで私を……いいから案内しろ!!」
課長「……わかりました。お客様がそう望むのならば。行こうか、受付くん」
受付「え?」
課長「いいから、君もついてきなさい。私1人で処理するのは大変そうだ」
受付「は、はぁ………」
410: 以下、
――役所 地下1階廊下――
課長「こちらです。この先の突き当たりが所長室でございます」
地主「なぜこんなところに……」
課長「………私どもの案内はここまでです。ここから先はお客様1人でお願いします」
地主「貴様等はついてこないのか?」
課長「ええ、多分『必要ないでしょうから』」
地主「……なんのことだかわからないがこの先に役所のトップがいるんだな!?」
課長「はい。事実上、役所全支部の業務を取り締まっているお方です」
地主「……覚悟しておけよ。私をぞんざいに扱ったこと、必ず後悔させてやる!」
課長「いってらっしゃいませ」ペコリ
地主「フンッ!!」
ズカズカズカ
411: 以下、
受付「へぇ〜、うちの役所にこんなスペースがあったんですねぇ……知りませんでした」
課長「君がここに来た最初の日に説明したはずだよ?」
受付「そうでしたっけ?」
課長「もちろん。なにせ、命に関わることだからね」
受付「物騒ですね………そういえば私、まだ所長に会ったこと無いんですけど所長ってどんな人なんですか?」
課長「……まだ君は知らなくていいかな」アハハ
受付「え、それはどういう………?」
課長「まぁ、細かいことはいいじゃない………ああ、あとそれとね」
受付「なんです?」
課長「あまり自分の正体をバラすような発言をしてはいけないよ?」
受付「………あら、なんのことでしょう?」フフッ
412: 以下、
課長「とぼけても無駄だ。私は君の父君に君のことを頼まれているんだからね」フフッ
仮面王女「……このことを知っている人間は?」スチャッ
課長「なにも律儀に仮面を着けなくてもいいのに」
仮面王女「………『受付』のままだと中々シリアスな空気にならないのよ」
課長「君の正体を知っているのは私と所長だけだ。あとは君がうっかり口を滑らせない限り、正体がバレる心配は無いはずだ……彼女の時のようにね」クスクス
仮面王女「村娘のことまで……あなた、何者なの?」
課長「君と同じだよ」
課長「ただのしがない子持ちの公務員さ」
課長「まぁ、実を言うと君の父君とは古い友人でね。その関係で話があったというわけさ」
仮面王女「……そう。あのお節介め……」
課長「娘が心配な気持ちはどんな親でも共通しているものだ。それが親心というものだよ。わかってあげなさい」
仮面王女「言われなくてもわかってるわよ、そんなこと……」
413: 以下、
課長「しかし、仮面の姫様がこんな役所で働きたいなんてなにが目的だい?」
仮面王女「………ちょっとした社会見学ってところかしら」
課長「……今は教えてくれないというわけか」
仮面王女「この先永遠に教えるつもりはないわよ」
課長「君の強情なところはやはり、父親譲りのようだ」クックック
仮面王女「あら? 私はお父様よりももっと『強欲』で『狡賢く』て『性格が悪い』自信があるのだけど」
課長「そういったところもそっくりだよ」
仮面王女「そうかしら?」
課長「………さて、お互いの腹の探り合いはこれぐらいにしておいて……そろそろ準備を始めよう。そろそろお客様が帰ってくるはずだから仮面を外しておいてね?」
受付「準備……ですか?」スチャッ
課長「ああ、うちの所長は誰かが入ってくるのをすこぶる嫌がる。特に『この時間帯』はね」
受付「この時間帯って?」
課長「お昼寝の時間だ」
受付「はぁ?」
414: 以下、
課長「さぁ、このクッションを壁沿いに設置してくれるかい?」スッ
受付「ちょっ!? どっから出したんですかこんなもの!?」
課長「近くに用具入れがあるんだよ。こういう時のために」
受付「こういう時って?」
課長「ハハッ、君の父君もよくこのクッションに突っ込んだものだよ」セッセ
受付「???」テキパキ
課長「ちゃんと設置したかい?」
受付「えっと、これで大丈夫ですか?」
課長「……十分だ。それじゃあ、ちょっと離れて」
受付「は、はい」
課長「私がいいと言うまで絶対にクッションに近づかないように。いいね?」
受付「なにが始まるんですか?」
課長「いいから……来るよ!」
受付「???」
カッ!!!
ビュォォォォオオオオオオオ!!!!
「ぬわぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!」
受付「え?」ヒューン
地主「ぐえ!!」ボスッ
415: 以下、
受付「なっ!? 人が飛んできた!?」
地主「あわわわわわわ………」
受付「だ、だいじょうぶですか!?」
課長「お客様、『お話』は終わりましたか?」
地主「なんだ!? なにが起きたんだ!?」
課長「さぁ? わたくし共もそこまでは……」
地主「だ、騙したな! おかしいと思ったんだ! あんなところに責任者がいるはずないじゃないか!!」
課長「いえ、確かにあの部屋には所長がいましたよ? ただ、あなたのタイミングが悪かった、それだけです」
地主「も、もういい!! ふざけやがって! もうお前らなんかに二度と頼らんからな!!」ダッ
受付「え? ちょ、ちょっと!?」
416: 以下、
課長「さっ、早くこの場を離れるよ?」
受付「な、なんなんですかぁ? 今、確かに人間が飛んできましたけど!!」
課長「今日はすこぶる機嫌が悪かったみたいだね」ハッハッ
受付「い、いやなんのことだかさっぱりなんですけど? 大丈夫なんですか、あの人滅茶苦茶怒って帰っちゃいましたけど………」
課長「安心して、私は何度も彼に警告した。こちらに非はないはずだよ」
受付「いや、ですから……」
課長「さぁ、早く。次が来ないうちに!」
受付「次? 次ってなんですかぁ!?」
課長「さぁ、急いで急いで♪」タッタッタッタ
受付「もうちょっと説明が欲しいんですけどぉぉぉぉ!!」タッタッタッタ
417: 以下、
―――――
山賊E「……これでよし。同僚の姉貴、終わりました」
同僚「その姉貴っていうのやめてもらえないかしら?」
山賊E「え? でもみんなそう呼んでますし、俺だけ変えるのもちょっと……」
同僚「……こういうのはお頭さんに言った方がいいのかしら?」
山賊E「そうかもしれないです」
同僚「お頭さんは……確か今いないのよね?」
山賊E「はい、なんか王都で会議があるってことでそれの手伝いに行ってるみたいです」
同僚「ああ、汚染大地の今後について話し合うとかなんとかってやつの……」
山賊E「そうです、出席するのは課長のはずなんですけど、あっちの会場の設営やらなんやらで人手が足りないらしくて……」
同僚「大変ね」
山賊E「でも、お頭はなんか嬉しそうでした。やっと役に立てるって」
418: 以下、
同僚「そう……ああ、世間話なんかしちゃってごめんなさいね、今日はそろそろあがりましょう」
山賊E「え? 今日は……いませんよ?」
同僚「あなたね……もう頼めそうな仕事が無いだけよ? 私の仕事もこれで終わりだし」トントン
山賊E「あ、ああ。そうなんですか……」
同僚「不満かしら?」
山賊E「いやそんなことないです。嬉しいです!」
同僚「そうよね、こんな仕事進んでやりたがる人間いないもんね」
山賊E「いやそういうことじゃなく……!!」ワタワタ
同僚「冗談よ」フフッ
山賊E「からかわないでくださいよ」ハァ
同僚「それじゃ、帰りましょうか」
山賊E「……あ、はい!」
419: 以下、
―――――
同僚「段々暖かくなってきたわねぇ」
山賊E「……そうですね」
同僚「夏もすぐそこってところかしら?」
山賊E「……そうですね」
山賊E(どういう状況だこれ!? どういう状況だこれ!?)
山賊E(落ち着け、状況を整理しろ! えっとどういうわけか同僚の姉貴と一緒に帰ることになって、つまり2人っきりで! なんだろう! このなんとも言えない雰囲気は!?)
山賊E(あの子のことといい、同僚の姉貴といい………あれ、もしかして今俺ってモテ期到来中?)
山賊E(ぐあああああああ!! 調子に乗るな俺!! モテ期なんて空想の産物! あんなものは二次元の話だ、そうだ、そうに決まっている!!)
420: 以下、
同僚「ああ、早く帰ってビールでも飲みたいなぁ……」ハァ
山賊E「………なんかおっさんみたいなこと言いますね」
同僚「いいでしょー? アルコールでも摂取して日々の鬱憤を発散させないと、溜まったストレスでお肌がガサガサになっちゃうもの……」
山賊E「そんなことしなくても姉貴は大丈夫ですって」
同僚「お、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
山賊E「アハハ……」
山賊E(実際のところ、この人本当にレベル高いんだよな……仕事もできるし、綺麗だし……)
同僚「なんだ、その乾いた笑いは!」ガシッ
山賊E「ちょ、ちょっと……なにするんですか!?」
同僚「スキンシップよ! スキンシップ! 大体ね、あんた元山賊ならもうちょっとワイルドに……」ウンタラカンタラ
山賊E(近いしなんかいい匂いするし!! それに腕に柔らかい感触が……これって姉貴のおっぱ……おっぱ……!!! ああああああああ!!! )
同僚「ちょっと聞いてるの!?」
山賊E「おぱ?」
421: 以下、
同僚「ちょっと、なにそれ?」クスクス
山賊E「あ、いや! これは違くてですね!!」
同僚「なーに? 私に見惚れちゃった?」ニヤニヤ
山賊E「いや、そういうことではなく!!」
同僚「そうよね、私って魅力ないもんね……あー、こんながさつな女、男に逃げられて当然ね……」シュン
山賊E「いやだからその……違うんです……」ズーン
同僚「冗談よ」フフッ
山賊E「……またそうやって……」ハァ
同僚「ごめんごめん。いやー、私もまだまだ捨てたもんじゃないわね!」
山賊E「同僚の姉貴はとても魅力的な人です。そりゃ見惚れちゃいますよ。でも俺みたいなのがジロジロ見てるの嫌だろうなーって思ったから……」
同僚「あら、あなた中々お世辞がうまいじゃない。彼女にもそれを言ってあげたら? きっと喜ぶわよ?」
山賊E「……だから彼女じゃないですって」
422: 以下、
同僚「もう、あなたも小学生じゃないんだからそんな態度、お姉さんどうかと思うけどな」
山賊E「ですけど……」
同僚「ダメならダメな理由をちゃんと彼女に伝えなさい。そうしないと彼女がかわいそうじゃない」
山賊E「……」
同僚「……なにが理由なの?」
山賊E「……言えません」
同僚「もしかしてそれってあなたが山賊の頃の話?」
山賊E「………はい」
同僚「……そっか」
山賊E「ここで働いていると忘れそうになるけど、でも忘れちゃダメなんです。自分がしてきたことは」
同僚「………」
山賊E「俺たちは自分が生きるために人を傷つけてきた罪人です。そんな俺が、彼女を幸せにすることなんてできるわけないじゃないですか」
同僚「そこまで自分を責めることないと思うんだけど……」
山賊E「俺の手はきっと汚れている。彼女の手を、こんな汚れた手で握ることなんてできるわけない……」
山賊E「彼女は、ちゃんとした明るい世界で生きなきゃダメなんです。俺みたいな暗がりの人間と一緒にいたら絶対に不幸になってしまう。そんなことはあっちゃいけないことなんですよ。だから、これでいいんです」
同僚「あなた……」
山賊E「皆さんのお陰でこんな生活は送れてはいますけど、俺はやっぱりどこまでいっても『罪人』ですから」ハハッ
同僚「そんな悲しいこと言わないで。私を含めて役所のみんなはもう、あなた達のことを本当の仲間だと思っているのよ?」
山賊E「………ありがとうございます。俺、嬉しいです」
423: 以下、
同僚「となると、やっぱり彼女に諦めてもらうしかないわけだけど……」
山賊E「ええ、そうですけど……」
同僚「そんな簡単なことじゃないことは証明済みか」
山賊E「はい……なんで俺なんかを……」
同僚「あら? 私は中々優良物件だと思うけど?」
山賊E「冗談はよしてください」
同僚「割と本気なんだけどなぁ…………あ!」
山賊E「どうかしたんですか?」
同僚「いいこと思いついたわ!」
山賊E「あれ? なんかデジャブ……」
同僚「私達、付き合っちゃいましょうか!」
山賊E「いやどうしてそうなるんですか!?」
424: 以下、
同僚「私たちが付き合ってるってことにすれば流石のお嬢様でも簡単に手出しはできないでしょ?」
山賊E「い、いやそれはそうかもしれないですけど……!! さっきの俺の話聞いてました?」
同僚「別に本気で付き合う必要なんてないわ、形だけ。ほら、こうしているのをあの子に見せつければ……」ギュッ
山賊E「ちょ、ちょっと!」ワタワタ
同僚「あの子も諦めると思わない?」ウワメヅカイ
山賊E「は、はいぃぃ!?」
山賊E(またしても柔らかいものが腕に! 腕にぃぃぃぃぃ!)
山賊E「そ、そんな……悪いですって姉貴……」フイッ
同僚「でもあの子と付き合う気は無いんでしょう?」
山賊E「それはそうですけど……!!」
同僚「ああ!! はっきりしないわね!! これだから草食系は!!」ガバッ
山賊E「う、うわ!」
同僚「あなたは本当はどうしたいの!?」
山賊E「え?」
同僚「過去のことなんていいわ。あなたはあの子のこと、本当はどう思っているの!?」
山賊E「それは……」
同僚「答えなさい! 今のあなたの本当の気持ちを!」
ドサッ!!
山賊E「え?」
お嬢様「………」
434: 以下、
山賊E「なんで……」
同僚(あちゃー、最悪のタイミングね)
お嬢様「あ、いや、これは違うんですのよ!?」
山賊E「………」
同僚「ちょ、ちょっと? なにか言ったほうがいいんじゃないの?」ヒソッ
山賊E「………俺が迎えに来るのを待つんじゃなかったんですか?」
お嬢様「あ、あら奇遇ですわね、あなた! 私も丁度用事が終わりまして今家路に着くところだったんですわ!」
山賊E「………いつからそこに?」
お嬢様「な、なにを言ってますのやら! 今言いましたように丁度用事が終わったところでしたの! ですから私はなにも見てませんし、聞いてませんわ!」
山賊E「………」
お嬢様「あ、あの……本当ですわよ?」モジモジ
山賊E「正直に」
お嬢様「うう……あの方とあなたが腕を組んでいるところからです……」
山賊E「……そう」
お嬢様「べ、別に盗み見しようとしたわけではなく、たまたま! あくまでたまたまですからね!!」
山賊E「………そう」
435: 以下、
お嬢様「………あの、つかぬことお伺いしますが……おふたりはご姉弟かなにかで……」
同僚(とりあえずここはそういったことにしてお茶を濁すのがベストよね……!!)
同僚「ええ、実はそう――――」
山賊E「見て分からないかな?」
お嬢様「そうですわよね。書庫にあった文献で読んだことがあります。恋愛とは勘違いの連続であると。おふたりはご姉弟でちょっとスキンシップが激しいというだけなのですね。そうです! こういった勘違いから二人の心の距離がすれ違って……なるほど、あ、あなたも口ではあんなことを言っておきながら私の作戦にノリノリだったということですね! なんだ、それならそうと最初から言っていただければ良かったのに―――――」
山賊E「違うよ。俺はこの人と付き合っているんだ」
同僚「ちょ、ちょっと!?」
お嬢様「……ま、またまたご冗談を」フフン
山賊E「冗談じゃないよ」
お嬢様「………私の作戦に付き合ってくれているだけなのでしょう?」
山賊E「誰があんなバカみたいな作戦に付き合うって言うのさ」ハァ
お嬢様「……では……真なのですか?」フルフル
山賊E「ああ、本当だよ。俺はこの人とお付き合いさせてもらってる。とってもいい人だよ」ニコッ
お嬢様「だったらどうして……!!」
山賊E「君の奇行に付き合っていたかって? まぁ、お客様だし、無碍に扱うのもどうかなーって。そういう線引きがまだできないんだよね、なにせ新人だからさ。でも俺は君に何回も言ってただろう? 結婚はできませんって」
お嬢様「で、でも……」
山賊E「まぁ、でも途中から違うことも考えるようになったんだけどね」
お嬢様「え?」
山賊E「『ああ、こいつ貴族だからキープしておけば勝手に貢いでくれるかなー』って」
436: 以下、
同僚「あなた、どうしてそんなこと!?」
山賊E「ちょっと黙っててくれませんか?」
同僚「……!」
お嬢様「そ、そんな……」
山賊E「事実、君は俺にたくさん尽くしてくれた。美味かったよ? 君の作ったお弁当。形はグチャグチャだったけど味は最高だった」
お嬢様「………」
山賊E「でももう終わりだ。そんなことで正妻面されても困るんだよ。それにね彼女と一緒にいて気づいたんちゃったんだ。やっぱり、貴族なんかよりも身の丈にあった生活の方が幸せだってね」
お嬢様「………」
山賊E「これでわかっただろ? 俺はこの人と結婚する。だから君とは一緒になれない」
お嬢様「……!!」
山賊E「わかったら、もう二度と俺の前に現れないでください。ものっすごいウザいんで」
お嬢様「!!!」キッ
バチン!!!
山賊E「……」ビリビリビリ
437: 以下、
お嬢様「見損ないましたわ! まさかあなたがそんな人だったなんて!!」
山賊E「そっちが勝手に俺のことを過大評価しただけでしょ……」
お嬢様「…………んで?」
山賊E「ん?」
お嬢様「そんな人だったらなんで!? なんであの時私を助けてくれたのですか!?」
山賊E「寮の前で大声で喧嘩なんかしてたら誰だって鬱陶しいと思いますよ。別にあなたを助けたわけじゃない」
お嬢様「違います! 私が言っているのはそのことでは……!!」
山賊E「とにかく! もう2度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!」
お嬢様「ううっ………馬鹿!!」シュッ
ボスッ
山賊E「え?」パシッ
山賊E「これは……」
お嬢様「………」ダッ
同僚「あ、待って!」
438: 以下、
山賊E「………」
同僚「普通あそこまでやる? 正直、お姉さん引いたわよ」
山賊E「これくらいしなきゃ、彼女は諦めないと思って……」
同僚「巻き込まれるこっちの身にもなりなさいよね、これじゃ完全に私が悪女みたいじゃない」
山賊E「すみません」
同僚「……頬、痛いでしょう?」
山賊E「ええ、ものすごく」ジンジンジン
同僚「覚えておきなさい、こういう時の女のビンタは特別に痛いものなの」
山賊E「首ごと持っていかれるかと思いましたよ」ハハッ
同僚「いっそ、首ごと飛んでっちゃえばよかったのにね」
山賊E「それは勘弁してください……」
同僚「冷やす? 簡単な氷結魔法なら使えるけど」
山賊E「いえ、大丈夫です」
同僚「腫れるわよ?」
山賊E「………それでも、いいです」
同僚「……そう」
山賊E「めちゃめちゃ痛いですけど……なんか……そういうの……違うかなって……」ズーン
439: 以下、
同僚「全部受け止めたいってこと? ……カッコつけちゃって、生意気よ」
山賊E「すみません……でも俺にはそれしかできそうにないし……」
同僚「いい気味ね、としか言えないわ。あんた今全ての女性を敵に回してるんですもの」
山賊E「うう……」
同僚「あんたはそれだけのことをしたってことよ………そういえばあの子、去り際になんか投げてたけど?」
山賊E「ああ、これ、あの子が持ってたものです」
同僚「あなたへのプレゼントってとこかしら?」
山賊E「………あげますよ」
同僚「はぁ!? もらえるわけないでしょ!?」
山賊E「でも、あんなことしておいて俺が持ってるってのも……」
同僚「気持ちはわからないでもないけどね……流石にこれは……」
山賊E「じゃあ捨てます」
同僚「なんでそうなるのよ!」
440: 以下、
山賊E「……これを見てるとなんか……死にたくなるんで……」プルプル
同僚「わかった! わかったわよ! 泣きそうな顔でこっち見ないで! これは私が預かっておくから! 気持ちに整理がついたら取りに来なさい!! いいわね!!」
山賊E「すみません……」
同僚「世話のかかる新人ね………」
山賊E「申し訳ないです……」
同僚「本当よ」ハァ
山賊E「………心にもないことを言うのって本当にきついですね」
同僚「元山賊が何を言ってるのかしら……」
山賊E「あああ!! 自己嫌悪が今になって……!!」グニニニニニ
同僚「自分の行動にはちゃんと責任を持ちなさい」
山賊E「わかってますけど……罪悪感が……!! ごめんなさい、本当にごめんなさい……!!」ヌォォォォォ
同僚「謝るくらいなら最初からそんなことするなっての……」ハァ
山賊E「俺は本当に……生きる価値のないゴミ虫です!!」ギィィィ
同僚「ああ!! あんたも鬱陶しわね!!」ゲシッ
山賊E「痛い!!」
441: 以下、
―――――
お嬢様「……」タッタッタッタッタ
山賊E(『ああ、こいつ貴族だからキープしておけば勝手に貢いでくれるかなー』って)
お嬢様「……嘘、ですわ」ハァハァ
山賊E(わかったら、もう二度と俺の前に現れないでください。ものっすごいウザいんで)
お嬢様「あなたはそんな人じゃない……そうでしょう?」タッタッタッタ
山賊E(とにかく! もう2度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!)
お嬢様「やっと……やっと会えたと思ったのに……!!」ギュッ
お嬢様「ううう……」ピタッ
お嬢様「こんなことなら……こんなことならあの時追いかけなければよかった……」
お嬢様「なにも知らなかったら……私は幸せでいられたのに!」
お嬢様「知りたくなかった! こんなこと知りたくなかった!!」
お嬢様「知りたくなかったです……」ギュッ
「そう言うなよ。俺は幸せだぞ?」ニタァ
お嬢様「え?」
「これでお前に存分に仕返しできるんだからなぁ!!」
442: 以下、
――――
山賊E「屋敷の中って……」
メラメラメラ!!!
山賊E「あの中に……人が……?」
領主「君! すまないがこの縄を解いてくれないか!? 私は娘を助けに行かなければならない!」
山賊E「あ、はい!!」
山賊F「ダメだ!」
領主「!!!」
山賊E「え、なんで?」
山賊F「罠かもしれないだろ」
領主「なにを……!! 私一人が自由になったところでなにができるというのだ!?」
山賊E「そうだよ、それだったら俺たちが侵入してきた段階でどうにかしてたはずだろ?」
山賊F「いや、それでも信用できない。もしもということがある。俺たちの独断でお頭や仲間を危機にさらすわけにはいかない」
443: 以下、
山賊E「だ、だけどもしこの人たちが言ってることが本当だったら……」
山賊F「………こいつらには俺たちが安全圏に移動するまでこのままでいてもらう。それが俺たちのためだ」
領主「頼む! 君たちに危害を加えることは誓ってしない! だから、この縄を解いてくれ!!」
領主妻「あなた達の望みはこの屋敷の金品や食料でしょう!? 娘は関係ないはずです!」
山賊E「……」
山賊F「さぁ、行くぞ。お頭たちが待ってる」
領主「頼む! お願いだ! 助けに行かせてくれ!!」
領主妻「お願いします!! どうか! どうか!!」
山賊E「………」
山賊F「おい! もう行くぞ!! こいつらのことはほっとけ!!」
山賊E「……領主さん」
領主「頼む!!」ガバッ
山賊E「……あの、ちょっといいですか?」
領主「娘だけは許してやってくれ……!! 頼む!!」
山賊F「おい! いい加減にしろ!」
山賊E「ごめん、ちょっと緊急事態なんで……あの、それでなんですけどね……」
領主「頼む!!」
山賊E「お手洗い借りてもいいですかね?」
領主・山賊F「「は?」」
444: 以下、
山賊E「いや、ちょっと『生理現象』がね、こればっかりはどうしようも無くて……すみません、あ、こっちですかね?」アハハハ
山賊F「ちょっと待て、お前何を考えてる?」
山賊E「いや、ちょっとトイレ借りるだけだって」
山賊F「こんな時にふざけてるのか!」
山賊E「『生理現象』なんだからしょうがないだろ!!」
山賊F「お前、そんなこと言って……!!」
山賊E「………『生理現象』なんだからしょうがないじゃないか……」
山賊F「お前……」
山賊E「………頼むよ、俺、これ以上大事なものを失くすのは嫌なんだって……」
山賊F「……勝手にしろ!」
山賊E「ありがとな。んじゃ、領主様お手洗い借りますね!」ダッ
領主「あ、ああ……」
タッタッタッタッタ
山賊F「………あの馬鹿が」
445: 以下、
――役所――
山賊E「………」ポケー
受付「おっはようございまーす!!」
山賊E「………」ポケー
受付「今日も元気にお仕事頑張っていきまっしょー!」イエイ
山賊E「………」ポケー
受付「あらあら〜、先輩が挨拶をしてるのに無視とは社会人として最っ低ですね!」
山賊E「………」ポケー
受付「まぁ、昨日あなたがやったことは人間として最っ低でしたけどね!」
山賊E「………」ポケー
受付「聞いてます?」
山賊E「………」ポケー
受付「おいコラ、人の話ぐらいちゃんと聞かんかいコラ!!」ドカッ
446: 以下、
山賊E「うわっ! お、おはようございます! 受付の姉貴!!」ビシッ
受付「おうおう、随分となめた態度とってくれるじゃねぇか、先輩が話しかけてるってのによう……?」クチャクチャ
山賊E「す、すみません……」
受付「……お前どこのもんや?」クチャクチャ
山賊E「え、えっと第四課の……」
受付「はっきり喋らんかい!!」ガンッ
山賊E「は、はいぃぃ!!」ビシッ
受付「……お前、あんまりなめた態度とってると一発『キャーン!!』って言わすぞコラ! わかってんのか!?」
山賊E「きゃ、キャーン……?」
受付「なんじゃ!? なんか文句あんのかコラ!!」
山賊E「あ、ありません!!」
受付「………とまぁ、コントはこれくらいにしておきまして……」
山賊E「コントって……」ズコッ
447: 以下、
受付「はい、これ今日のお仕事です! 今日中にお願いしますね♪」ドサドサドサ
山賊E「…………あ、あの、受付の姉貴……?」
受付「なんですか? ゴミ虫?」
山賊E「な、なんか今日やたら量多くないですか?」
受付「そんなことないですよ〜、私だったらこれくらい楽勝です」
山賊E「いや、姉貴と一緒にしないでくださいよ、俺、まだ新人だし、無理ですって!」
受付「いいからやりなさい」ギロッ
山賊E「………は、はい」
受付「ふん!」
ツカツカツカ
山賊E「これを……今日中にって……」
デーン!!
山賊E「会議報告、活動報告書……伝票の整理……しかも全支部分!?」
山賊E「……お、俺、なにかした?」
448: 以下、
課長「あちゃー、やっぱりこうなったか……」
山賊E「課長……俺、受付の姉貴になんかしましたかね……?」ズーン
課長「心当たりはあるかい?」
山賊E「……えっとあるとしたら一つだけ……でも、これは受付の姉貴とは全然関係ないですよ?」
課長「ふむ……もしかしたら彼女はどっかの誰かさんと自分を重ねて見ていたのかもしれないね」
山賊E「どういうことですか?」
課長「身分違いの恋。そういう経験が彼女にもあったのかも知れないよ?」
山賊E「受付の姉貴も貴族を好きになったんですか?」
課長「おや? 私は相手が貴族なんて一言も言ってないんだけどなぁ……?」ニヤニヤ
山賊E「あ……」カーッ
課長「……一つ、これは年長者の意見だと思って聞いてくれるかい?」
山賊E「は、はい」
課長「君がなにをもって彼女を突き放したのかは、私にはわからない。まぁ、色々と察しはつくけどね」
山賊E「なんでそのことを……」
課長「まぁ、聞きなさい……でもね、私は理由がなんであれこう思うんだよ」
課長「『惚れた女を泣かせるなんて男として最低だ』ってね」
山賊E「……」
449: 以下、
課長「ああ、これは男女差別とかそういうことを言いたいんじゃないよ? ただね……惚れた女性の泣き顔より、笑顔が見たい。それが男ってもんだろう?」
課長「君が最後に見た彼女の顔は笑顔だったかい?」
お嬢様(………馬鹿!!)
山賊E「……いえ」ズーン
課長「それで、本当にいいのかい?」
山賊E「……」
課長「ま、じっくり考えてみればいいさ……この仕事は私の方で再分配しておこう。君は気にしなくていい」
山賊E「ありがとうございます……」
課長「気にすることはない。若者を導くのはいつだって年長者の務めみたいなもんだからね」ハハッ
450: 以下、
同僚「課長ー!!」
課長「こらこら、同僚くん役所内は走ってはダメだよ?」
同僚「今はそれどころじゃないですよ!!」ハァハァ
課長「どうしたんだい?」
同僚「じ、実は……」
同僚「あの子が行方不明だそうです!!」
山賊E「え……」
451: 以下、
課長「……あの子、というと……」
同僚「はい、彼にいつもくっついていた女性のことです。昨日から家に戻っていないそうで……最近ここに通っているようだから何かわからないかと、心配した召使いの方が……」
山賊E「ゆ、行方不明って……どういうことですか!?」
同僚「それがまだ私にも詳しいことはわからなくて……」
課長「落ち着いて、とにかく話を聞こう。それでその召使いという方はどちらに?」
同僚「今、応接室で受付が対応しています」
課長「わかった。すぐに私も行こう」
山賊E「お、俺も同席していいですか?」
課長「……いいだろう。来なさい」
山賊E「はい!」
452: 以下、
――応接室――
受付「……それで、昨日の朝、ここに来ると行ったっきり帰ってないんですね?」
召使い「……ええ。今までこんなことはありませんでした。最近、よくこちらに伺っているとの事でしたのでもしかしたらと思って……」
受付「残念ながらうちにも来ていないんですよ
召使い「ああ! お嬢様……!!」
受付「落ち着いてください。パニックになってはダメですよ」
召使い「旦那様も奥方様もいらっしゃらない時に……私はどうしたら!!」
受付「大丈夫ですから、落ち着いてください!」
ガチャ
課長「……お待たせしました」
受付「課長! ……と」
山賊E「……」ペコッ
453: 以下、
課長「悪いけど彼も同席させてもらうよ。話を聞く限りでは恐らく彼が行方不明になる前の彼女に会った、最後の人だろうからね」
召使い「それは本当ですか!? お嬢様はどちらに!?」
山賊E「……それが、わからないんです」
召使い「そんな……」
山賊E「ただ……心当たりはあります」
召使い「心当たり!?」
山賊E「彼女は最近、ある男とひと悶着ありました。もしかすると……」
課長「というと……地主の男か」
受付「うちに来て無茶苦茶言ってたあの野郎ですね」
山賊E「はい。あの後、彼女があの男に捕まったということも考えられます。奴隷を逃したことを随分恨んでたようですし、『必ず痛い目に合わせる』といったことも言ってましたから」
課長「……だが、確証は無い」
454: 以下、
山賊E「直接聞いてみますか?」
受付「『お宅にうちのお嬢様来てませんか』ってですか? すっとぼけるに決まってますよ」
山賊E「ですよね……」
課長「……ふむ、これは行方不明事件として騎士団に動いてもらうしかないね」
受付「ちょっと待ってください。騎士団だってすぐに来てくれるとは限りませんよ?」
課長「だったらどうするって言うんだい?」
受付「直接乗り込んで地主をとっちめましょう!」
課長「……いいかい、受付くん。もちろん理解しているとは思うが我々は公務員なんだ。与えられた権限の範囲内でしか行動できない。この件は完全に我々の権限の範囲外だ」
受付「ですけど、こうしている間に彼女にもしものことがあったら……」
召使い「ああ、お嬢様!!」
課長「それでもだ。我々は正義の味方ではない。法律やルールにのっとった行動をとらなくてはならないんだ」
455: 以下、
受付「誰ですか! こんな面倒なルール作ったのは!?」
課長「それが国を運営する上での秩序というものなんだ、受け入れなさい」
受付「……でも!!」
課長「それに、地主の男の言動が怪しかったというそれだけでは我々も騎士団も彼を裁くことはできない。ちゃんと捜査をしなければ手出しができないんだよ」
課長「困ったことに今の段階では彼女がどうなったのか、目撃情報が無い。我々ができるのは騎士団に連絡することだけだ……そういうことですので、申し訳ないですがご理解ください」
召使い「そんな……」
山賊E「………」
課長「すぐに騎士団を要請しよう、受付くん」
受付「………わかりました」
召使い「……ああ、どうしてこんなことに……」
山賊E「………」スクッ
456: 以下、
課長「どこに行くんだい?」
山賊E「ちょっとお手洗いに」
課長「………『君は自分の立場というものがわかっているのかね?』」
山賊E「新人の癖に話の途中で席に立っちゃってすみません、でも『生理現象なので』」
課長「分かっているのならいい。『生理現象ならば仕方のないことだ』」
山賊E「すみません」
受付「???」
課長「どうせなら目立たないようにする必要があるだろう。2階の更衣室なんて人気が少なくていい。それに『最低限のものは揃っている』君の力になってくれるはずだよ?」
山賊E「……ありがとうございます」
課長「気にしないでくれ。ああ、それと『なるべく早めに済ませてくるんだよ』?」
山賊E「ええ」ダッ
457: 以下、
ガチャッ
受付「えっと……トイレに行くんですよね?」
課長「まぁ、生理現象だから仕方ないね。すみません、新人の教育がなっていないもので」ペコッ
召使「い、いえ……?」
課長「さぁ、受付くん。我々もできることからやっていこうじゃないか!」スクッ
受付「は、はい……」
458: 以下、
――???――
お嬢様(……ここは……どこ……ですか……?)
メラメラメラメラ
お嬢様(ああ、そうでした……屋敷に何者かが侵入したんでした……)
お嬢様(私はみんなを助けるために自室の衣装棚に隠れて機会を伺っていたのです……)
バチバチバチ
お嬢様(部屋を探索しにきた侵入者がこの棚を開けた瞬間、掴みかかり人質にして侵入者を追い払う算段でした……)
お嬢様(ところが……侵入者はこの部屋を探索することがなく……私は極度の緊張と深夜だったということもありうっかり寝てしまったのです)
お嬢様(そしてなにか焦げ臭さを感じて私が目を覚ますと目の前は火の海でした)
459: 以下、
お嬢様「と、扉が開かない!」ガチャガチャ
お嬢様(扉は熱で変形し、私の力では開いてくれませんでした。完全に、閉じ込められてしまったのです)
お嬢様「だ、誰か!!」
お嬢様(助けを呼んでも誰も来ません。それでも私は必死に助けを呼びました……でも)
お嬢様「……け、煙が中に……」ゲホッゴホッ
お嬢様(このまま助けが来なければ死んでしまう。でもこの状況で誰が来てくれると言うのでしょうか……? きっと私はここで死ぬのだろう……そう思いました)
お嬢様「……お父様……お母様……」
お嬢様(あれ? 私はこのまま本当に死んでしまうのでしたっけ?)




お嬢様「……うっ……」
地主「おはようございます、お嬢様。この世の地獄、あるいは天国へようこそ」ニヤッ
460: 以下、
お嬢様「……夢、ですの……?」
地主「どうやら突然のことで混乱しているみたいだな……オラッ! しっかりしろ!」ペシペシ
お嬢様「……うう……」
地主「気分はどうだい? お嬢様?」
お嬢様「……ここは……」
地主「恐れながら俺様のお気に入りの部屋へあなた様をご招待させていただきました」ペコリ
お嬢様「なんですの……この悪趣味な部屋は……」
地主「たくさんの奴隷を飼育しているとよ、自分の立場も理解してねぇクソ生意気な奴がいるもんでね。ここはそういった奴らを改めて教育する場所だよ」ニタッ
461: 以下、
お嬢様「この……」ガチャガチャ
地主「暴れても無駄だ。その鎖は女の力じゃ外れない」ガッ
お嬢様「くっ……その薄汚い手を離しなさい……!!」
地主「また俺の奴隷を勝手に逃がしたな」
お嬢様「私は……この地を預かる……領主の娘として……当然のことをしたまでです!!」
地主「……やっぱり貴族の娘か、どうりで世間を知らねぇわけだ。学校で習わなかったか? 物事にはやっていいことと悪いことがあるって」ギギギ
お嬢様「どの口が……言うのですか……!!」
地主「他のクズみてぇな奴隷はいい。だが『あいつ』だけはやっちゃいけなかった。お前は俺の宝まで逃がしたんだ! どういうことかお前にわかるか!!」
お嬢様「……そんなこと知ったこっちゃないですわ! 私は間違って……いません!!」
地主「なら、俺がお前に現実ってやつをここで叩き込んでやるよ」フフッ
お嬢様「私を……どうするつもりですか……?」
地主「お前も俺が飼育してやるって言ってんだよ。奴隷としてな」ヘッヘッヘ
462: 以下、
お嬢様「なん……ですって……?」
地主「お前がこの部屋を出る頃には俺の言うことをなんでも聞く従順な奴隷になっている。今からそれを……お前の体と心に……たっぷり教えてやるっていうんだよ!!」
お嬢様「そんな……ことをしても……無駄です……うっ」
地主「体に力が入らないだろう? 特殊な薬を使わせてもらった。お前はこの部屋から出られないぞ?」
お嬢様「すぐに……私を……解放きなさい……!! あなたを騎士団に突き出します!!」
地主「おお、怖い怖い。だがその顔がそのうち絶望に変わると思うとゾクゾクするぜ!」
お嬢様「……なにを馬鹿な……ことを!! 私は……」
山賊E(もう二度と俺の前に現れないでください! 迷惑です!!)
お嬢様「……う……あ…」ギュッ
お嬢様「……間違って……いません!!」
463: 以下、
地主「戯言は十分だ。いいか、 俺は今まで多くの奴隷を屈服させてきた。そのお陰で俺の土地はここまで潤い、俺は大金持ちになることができたんだ」
地主「どんな奴も俺に跪く。お前も、例外じゃない」
地主「いずれお前も俺の手足となって働くことに喜びを感じることになるさ」ニタニタ
お嬢様「……ありえ……ませんわ……」
地主「もっとも? お前は肉体労働より、こっちの方が……」サワッ
お嬢様「……恥を知りなさい!!」ペッ
地主「……この!!」バシン
お嬢様「きゃっ……」
地主「生意気な女だ……まぁいい、時間はたっぷりとある……おい」ニヤッ
覆面達「はい」ザッ
地主「まずは少し痛めつけてやれ。こいつに自分の立場をわからせてやるんだ」
覆面「わかりました」スチャッ
地主「それではお嬢様、私は席を外させてもらいますよ。次に来るときはもう少し素直になっておいてくださいね?」
お嬢様「誰があなたなんかに……!!」
地主「……やれ」
覆面達「………」ズラズラズラ
お嬢様「くっ……」
464: 以下、
――更衣室――
山賊E「最低限のものは揃ってるって言ってたけど……」
ズラッ!!
山賊E「まんま俺が使ってた山賊道具じゃないか……ここに来る時に全部押収されたと思ってたのに……課長、とっといてくれてたのか……」
山賊E「山賊七つ道具の一つ目! 潜入用山賊着!!」ババン
山賊E「あ、いや別に誰に言うわけでもないんだけど」ハハッ
シュルシュルシュル
山賊E「まさかもう一度この服を着ることになるなんて思いもしなかったな……でも、これでいいんだよな」
山賊B(……仕方ないって言葉で片付けたら守んなきゃいけない大切なものまで知らないうちに失くしちまうだろ?)
山賊E「仕方ないじゃない……これを仕方ないで片付けちゃったら、俺は俺じゃいられなくなっちゃうと思うから……」
ファサッ……ギュッ
山賊E「よし! 忘れ物は無し、これで準備OKってところかな」
山賊E「みんな……ごめん。俺、もう一回だけ、山賊に戻ります。どうしてもやらなきゃいけないことがあるんで」キッ
山賊E「それじゃ、いってきます!!」ダッ
468: NR 2015/03/07(土) 22:23:41.39 ID:xnJTY65AO
乙ー。
そろそろ幼女の出番を…
そして課長の正体を…
469: 以下、

主人公なのに200レス以上出番がない奴がいるらしい
471: 以下、
>>468
こればっかりは本当に申し訳ないです……
幼女出したいんですけどいきなり出すわけにもいかず、しばらく「むい!」ってセリフも書いてないし……話をまとめるのが下手&遅筆な自分が憎い……
473: NR 2015/03/07(土) 22:49:20.87 ID:xnJTY65AO
頭の中で幼女にいじめられる妄想で頑張って乗り切るさ〜
476: 以下、
おはようございます、昨日のレスを見ていて思いついた話を突発的に投下します。番外編の流れをぶった斬りますがご了承ください
477: 以下、
「幼女は賢くなりました」
――某日、役所待合室にて――
幼女「……むぅ……勉強になる……」
幼女「ヨージョはまたひとつ賢く……なりました!」テレレレテッテッテー
幼女「ムフー!」ドヤッ
勇者「幼女ー!」
幼女「ユーシャ!」ピョンピョン
勇者「ごめんな、幼女。退屈だったろ」
幼女「……お金のためには……必要なこと……でしょ? 大丈夫!」
勇者「なんだろう、物分りが良すぎて逆に罪悪感があるんだけど……」
幼女「チャーハンのためなら………へっちゃらです!」フンス
478: 以下、
勇者「悪いなー、俺もできれば働きたいんだけど」
幼女「そんな気なんて……これっぽっちも……無いくせに」ボソッ
勇者「やっぱりなー、幼女には嘘はつけないなー」ワシャワシャ
幼女「むう……いいってことよ!」ビシッ
勇者「本当にどこでそう言う言葉を覚えてるんだよ……」ハァ
幼女「……これ」スッ
勇者「ん? これ辞書か?」
幼女「言葉を覚えたいって言ったら……助手がくれた!」
勇者(機械性なんだからもっとこう、知識をインストールとかそういうのはできないもんなのか? というか子供に辞書渡すって……)
勇者「面白いのか? それ?」
幼女「知識が増えるということは……喜び……」ムフー
勇者「俺にはわからない感情だな……」
幼女「ユーシャにも教えてあげる……ね!」
勇者「ああ、まぁ付き合ってやるか」
幼女「むい! じゃあ……今日覚えたばかりの!」
勇者「お! 聞かせてもらおうか!」
幼女「『番外編』」
勇者「ん? 番外編って物語とかでよくあるあれのことか?」
479: 以下、
幼女「今から説明……します! ユーシャは黙って……て!」
勇者「ああ、ごめんごめん」
幼女「物語の本編から逸れた派生的な物語のこと。スピンオフ、外伝とも」
勇者(文字を読むときは途切れたりしないんだな……)
幼女「ユーシャ……知ってた?」キラキラキラ
勇者「そうだな幼女。『本編とは全然関係ない話』のことを番外編って呼ぶんだぞ? 本編に比べたらあんなもの、おまけみたいなもんだ!」
幼女「おまけ!」
勇者「そうおまけ! だから本編の方が偉いし、本編の方がすごい! 番外編は所詮、本編がないと存在できないんだよ! わかってんのか、コラァァ!!」ガー
山賊E「あ、あの勇者様……一応ここ、役所の待合室なんでもうちょっと声絞ってもらっても……」
勇者「おお、ごめんね、仕事の邪魔しちゃって『番外編』君!!」ポンポン
山賊E「あ、いやなんのことかさっぱりなんですけど……」
勇者「あんまり調子に乗んなよ?」ミシミシミシ
山賊E「痛い! 痛いですよ勇者様!!」
幼女「むい?」
勇者「ああ、ごめんな幼女。次の言葉にいこうか」
幼女「うん! ………えっとね……おお、これがいい……かも!!」
勇者「ん? なんだなんだ?」
幼女「ユーシャにぴったりな……言葉!」
山賊E(なんか嫌な予感がする……)ダラダラ
勇者「お、それじゃあ教えてくれるか?」
幼女「『主人公』」
勇者「………」ピキッ→
481: 以下、
幼女「物語のメインとなる役割を持つ人物のこと、基本的に物語はその人物を中心に描かれる。人気も一番高いことが多い」
勇者「………」ピキピキッ
幼女「ユーシャ、知ってた? ねぇ、知ってた?」キラキラキラ
勇者「ああ、幼女。それは知らなかったなー、そうか、主人公ってそんな人のこと言うのかー」アハハ
幼女「主人公……ユーシャにぴったり!」ピョンピョン
勇者「ありがとうな、幼女。俺、嬉しいよ」ナデナデ
幼女「えへへ」
勇者「そうか……」ギロッ
山賊E「あ、あの……勇者様……なぜ先程から俺のこと見て……?」
勇者「そうか……」ジー
山賊E「い、いや、あのなんか怖いんですけど!!」
勇者「いや別になんとも思ってないっすよ?」
山賊E「じゃ、じゃあなんでこっち見てるんですか!?」
勇者「いやぁ、別にー!!!」ガンッ
山賊E「態度悪いな!!」
勇者「ああ、でもなんていうかさー」
山賊E「な、なんですか……?」
勇者「一発殴らせろ」
山賊E「はいぃ!?」
482: 以下、
「おら待てコラァ!! 俺は主人公じゃねぇのかコラァ!!」「そんなの知らないですよ!!」「コラ、ふざけてないで仕事しなさい! 勇者様もあんまり騒がないでください!」「うるせぇ! おめぇはいいよなー、平均的に出番あってよー!」「あなたの財布を握っているのは私たちだってこと理解してますか?」「………はい」
幼女「今日も……賢くなりました!」
幼女「もっと色んなこと……知りたいなぁ」
「そんなんだから出番減らされるんですよ!」「……はい」「自分の立場にあぐらをかいているから数々の変人どもに埋もれてしまうんです!」「……おっしゃるとおりです」「私のようにもっと物事に対して貪欲にいかなければなりません!」「……はい」「今を変えていかなければ未来はないんですよ!?」「……はい」「ちょっと聞いてます!?」「はい! ちゃんと聞いてます! 勉強になるっす!!」「まったく……!!」
483: 以下、
以上です
早く続き書きやがれって話ですよね、本当に申し訳ありません。でも勇者いじりをしてみたくて……
夜の方もちゃんと通常通りに投下していきますのでよろしくお願いします!
ではありがとうございました!!
490: 以下、
――王都 『復興支援大会議』会場―――
「すみませーん、会場で使う椅子の準備をお願いしまーす!」
頭領「へい!」タッタッタッタ
「この資料をそっちに運んでおいてくださーい!」
山賊D「了解っす!」ウォォォォ!!
「来賓の方にお出しするお茶菓子のセットは……」
頭領「ああ、それならもう自分が手配しておきました! もう会場に着いているころだと思いますぜ!」
「あ、ありがとうございます……」
頭領「いやー、流石王都で行う会議だぜ!! 規模が違えな!」
山賊D「も、もう忙しすぎて目が回りますよ、お頭……」
頭領「バカ野郎! そんなんで根をあげてんじゃねぇ!! 俺達は他の皆さんと違って頭の出来が悪ぃんだから体を使わねぇと!」
山賊D(ついてい行くんじゃなかった……)
491: 以下、
ツンツン
山賊D「ん?」
緑髪の少女「やっと見つけたのです!」ビシッ
山賊D「女の子? どうしたんだいお嬢ちゃん? もしかして迷子かな?」
緑髪の少女「君達が噂の山賊なのですね!!」ババーン
山賊D「ちょ!?」バッ
「山賊?」「今誰か山賊って言ったか?」「どうせ空耳だろ」
緑髪の少女「ムー!! ムゥゥゥゥ!!!」
頭領「おい、なにしてやがる!? お前もこっち来て手伝え……って、どうしたんだ?」
山賊D「い、いやなんか迷子みたいなんですけどね……」
緑髪の少女「ムガガガガガ!!!」バシッバシッ
頭領「………離してやれよ。死にそうだぞ」
山賊D「ああ、やべ……」パッ
緑髪の少女「こ、殺す気ですか!?」ゼェゼェ
492: 以下、
頭領「これはすまねぇな! 嬢ちゃん! こいつが失礼なことしちまってよ!」ガハハ
緑髪の少女「まったく、知能指数が低い山賊なのですよ!!」
頭領「!!!」バッ
緑髪の少女「ムー!!」ジタバタ
頭領「お、おい! なんでこの嬢ちゃん、俺たちのこと知ってんだ!?」
山賊D「わかりません! いきなり現れたんで……」
緑髪の少女「ムゥゥゥゥ……」サー
山賊D「そんなことより、お頭……この子顔色変わってきちゃってますよ?」
頭領「ああ、それはまずいな」パッ
緑髪の少女「君達……わざとやってるのですか……? だとしたら許せません……!!」ゼェゼェ
493: 以下、
頭領「ダメだぜ嬢ちゃん、俺たちは山賊から足を洗ったんだ。こんなところで昔のことを喋られたら困るんだ」ヒソッ
緑髪の少女「こんな奴らを雇うなんて、やっぱりあの男が考えていることはまったく理解できないのですよ! この山ぞ……」ムガッ
山賊D「だから! 言わないでって!!」
緑髪の少女「ムー!!………ぷはっ!! いい加減にするのです!!」
山賊D「お嬢ちゃんが人の話を聞かないからでしょ!!」
緑髪の少女「お嬢ちゃんではありません! まったく! 礼儀知らずな輩ですね……!! これだから人間は嫌いなのです!」
頭領「ハッハッハ! おかしな嬢ちゃんだ。なんだい、ママとはぐれちまったのかい?」
緑髪の少女「なっ! よりによって今度は私を子供扱いですか!? 私はただ君達がどんな奴か様子見しにきただけなのです!」
頭領「強がるな、強がるな!」ガッハッハッハ
緑髪の少女「違うのですよー!! 人の話を聞きなさい、愚かな人間ども!!」
山賊D「じゃあ俺、誰か呼んできますよ。このまま放ったらかしじゃかわいそうですし」
緑髪の少女「だーかーらー!!」プンスカ
頭領「ああ、頼む」
山賊D「へい!」タッタッタッタ
494: 以下、
頭領「安心しな、ママはすぐに見つかるからな」ヘヘッ
緑髪の少女「本当に単純な思考をしているのですね……」
頭領「え?」
緑髪の少女「君達は物事を短絡的にしか捉えることができない」
緑髪の少女「『あの時はこうするしかなかった』『生きるためには仕方なかった』……だから自分に罪は無くて自分は許されるべきなんだ………違いますか?」
頭領「………」
緑髪の少女「いくら君達が罪の意識に苛まれ、苦しんだ振りをしたところで君たちに奪われた物や金品、あるいは命、事実は消えてなくなったりはしません。君達の罪は君たちが死ぬその瞬間まで消えてなくなることはないのですよ」
緑髪の少女「自分から更生したと宣言したところで君達の魂は罪で汚れたまま……君達が許されることは永久にない………罪を償う? 笑わせてくれるのです。 『君達は一生罪人ですよ』」ウフフ
495: 以下、
頭領「………痛いところ突くなぁ、嬢ちゃん」
緑髪の少女「事実を言っただけなのです」
頭領「なら、お嬢ちゃんにひとつ聞いてもいいかい?」
緑髪の少女「いいですよ」
頭領「罪人が平和を願っちゃダメかね?」
緑髪の少女「………」
頭領「俺たちがひでぇことした事実は変わんねぇさ、嬢ちゃんには刺激が強すぎて言えねぇことも色々とやってきた」
頭領「でもよ、そんな俺たちを必要だって言ってくれて、手を差し伸べてくれた人が確かにいたんだよ。こんな俺たちの力を貸してくれって言ってくれた人がいたんだ」
頭領「………初めてだったんだよ。山賊を始めてから誰かに必要とされたことなんざ今まで無かったからよ。だから思っちまったんだな、この人たちの力になりてぇ、この人たちが望む未来を作りてぇって」
頭領「そしたら段々俺たちの世界が広がってってよ、あの人たちの夢が今じゃ俺の夢になってんだ」
緑髪の少女「夢……ですか?」
頭領「ああ、でっけえ夢さ。俺たちみたいな半端もんを二度と産まない、そんな優しい世界を作るって夢。『力が全て』なんて世界じゃなくて、誰もが笑って暮らせる世界。夢物語だろうけどよ、いつかそんな世界をこの目で見てみてぇんだ」
緑髪の少女「誰もが笑って暮らせる世界……」ギュッ
頭領「そのためだったら俺はこの命、いつでも賭けてみせるぜ? あいつらもそう思ってくれているはずだしな!」ガッハッハッハッハ
緑髪の少女「……本当に……単純なのですよ」ハァ
頭領「おお、だけど悪くねぇだろ?」ガッハッハッハ
緑髪の少女「……そうですね、悪く、ないのです……」
山賊D「お頭―!!」
頭領「おお、見つかったか?」
緑髪の少女「ならばその夢……叶えてみせるのですよ……」フッ
頭領「え?………おい、嬢ちゃん?」
山賊D「とりあえず知ってそうな人に聞いてみたんですけど、とりあえず設営本部に連れてきてくれって……あれ、あの子は?」
頭領「……消えた……? なんだってんだ? 一体……」
496: 以下、
――地主の屋敷 廊下――
山賊E「これで……よし。開いた!」
ガチャ!
山賊E「山賊七つ道具の二つ目……『鍵開けピック』!!」ババン
山賊E「……周りには誰も……いない……よね?」キョロキョロ
山賊E「どうやら大丈夫そうだ……といっても久々の仕事だから鈍ってるな、スピードも落ちたし……本当はこんな技術必要ないんだけど」ハァ
山賊E「さて、あの子はどこにいるのかな……」ソロリソロリ
ザン!!
山賊E「うわっと!!」ヒラッ
「侵入者……発見……」
山賊E「……もう見つかった……人ん家に忍び込むのとか得意だったんだけどな……」
497: 以下、
「排除……する……」チャキッ
山賊E「……あんまり、手荒なことしたくないんだけど……って」クルッ
「覚悟は……いい……?」
山賊E「なに? その変態みたいな格好……ほとんど裸じゃないか……寒くないの?」
「これが……私の……制服……」ビキニッ
山賊E「こんな小さな女の子にこんな格好させるなんて……あの男、最低だな」
「失礼な………こう見えても18……」
山賊E「え、同い年!? 見えないな……じゃあ君は、ここの奴隷ってことでいいんだよね?」
奴隷戦士「……そう。私はここのご主人様に仕える……奴隷。侵入者は……見つけ次第……殺す……それが……命令……」
山賊E「参ったな……侵入者じゃないって言ったら信じてくれる?」
奴隷戦士「無理……」チャキッ
山賊E「一応、聞くけどその手に持ってる大斧をどうするつもりかな?」
奴隷戦士「……これであなたの……頭を……パッカーンと……割るの……」
山賊E「わぁお、思ってたよりバイオレンス……」
498: 以下、
奴隷戦士「攻撃……開始……」ビュオッ
山賊E「ちょっ!? っ!!」
奴隷戦士「……パッカーン……」ブンッ
ドガァァン!!
山賊E「ぎ、ギリギリセーフ……!!」
奴隷戦士「さっさと……死んで……?」
山賊E「その前に目的を果たさないとね!」ダッ
奴隷戦士「……来るの……?」
山賊E(あの大斧、取り回しが難しいはず。ゼロ距離ならこっちにも勝算がある!!)
山賊E「距離を詰めて……!!」
奴隷戦士「……」ヒラッ
山賊E「距離を……!!」
奴隷戦士「……」ヒラッ
山賊E「詰めさせてくれよ! ちくしょう!!」ガンッ
499: 以下、
奴隷戦士「あなたの……考えてること……チョコレートより……甘々……」
山賊E「ですよねぇ……」
奴隷戦士「茶番は……終わり……」チャキッ
山賊E「げっ……」
奴隷戦士「今度こそ……パッカーン……!!」ビュンッ
山賊E「た……タイム!!!」
奴隷戦士「……」ピタッ
山賊E「……ダメ?」
奴隷戦士「ダメ……」
山賊E「ちょ、チョコレートあるよ?」
山賊E(ああ!! 何言ってんだ俺!?)
奴隷戦士「……!!」ピクッ
山賊E(嘘、手応えあり?)
奴隷戦士「そ、そんな嘘に……私は……騙されない……」チラッチラッ
山賊E「う、嘘じゃないって……ほ、ほら!!」スッ
奴隷戦士「………おー」
500: 以下、
山賊E「ほ、ほらどうぞ」
奴隷戦士「…………」クンクン
山賊E(すごい嗅いでる……犬みたい……)
奴隷戦士「本物……?」
山賊E「ほ、本物!」
奴隷戦士「初めて……見た……話には……聞いてたけど……」
山賊E「そ、そうなんだ……」
奴隷戦士「タイムを……許可する……」
山賊E「あ、ありがとう……」
山賊E(残業の時用にお菓子持っててよかったぁぁぁぁああああ!!!)
奴隷戦士「……♪」カサカサ
山賊E(なんか心なしか嬉しそうだ……)
奴隷戦士「………」アーン
パクッ
奴隷戦士「ふぅおおおおおお!!!」
山賊E「お、美味しい?」
奴隷戦士「……こんな美味しいもの……食べたの……初めて……」
山賊E「……そう」
501: 以下、
奴隷戦士「……ありがとう……」
山賊E「じゃ、じゃあ一つ聞いてもいいかな?」
奴隷戦士「許可する……」
山賊E「ここに女の子が連れて来られたと思うんだけど、知らない?」
奴隷戦士「……知らない……ここにはいっぱい奴隷が来るから……」
山賊E「そう……」
奴隷戦士「……ただ……」
山賊E「ただ?」
奴隷戦士「……言うことを聞かない……奴隷は……調教室に……連れて行かれる……」
山賊E「調教室!?」
奴隷戦士「……そこで……ここでの生き方を……徹底的に……叩き込まれる……私も……」
山賊E「そんな……」
奴隷戦士「私も……?……うっ」ズキッ
502: 以下、
山賊E「どうしたの!?」
奴隷戦士「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガチガチガチ
山賊「大丈夫!?」
奴隷戦士「言う通りにしますから言う通りにしますから!! 妹だけには手を出さないで!! 妹だけには!!!」ガタガタガタ
山賊E「ちょ、ちょっと!?」
奴隷戦士「いや、いやぁ!!」
奴隷戦士「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
山賊E「おい! しっかりしろ!!」
奴隷戦士「…………」
山賊E「大丈夫……か?」
奴隷戦士「…………」ギロッ
山賊E「!!!」
奴隷戦士「攻撃……再開……!!」
山賊E「……マジかよ!?」
奴隷戦士「!!!」ブォッ
山賊E「――!! 山賊七つ道具の三つ目!! 『煙玉』!!!」
バンッ!! モクモクモク………
山賊E「どうだ!………て、えええ!!??」
奴隷戦士「うぁぁぁぁああああああ!!!!!」ブンッブンッ
山賊E「危なっ!」ヒラッ
503: 以下、
山賊E(視界を奪ったはずなのに……闇雲に大斧を振り回してるだけなのか?)
奴隷戦士「うがぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!」ブンブンブン
山賊E「ち、違う! あれは闇雲に振り回してるんじゃなくて……斧の回転で煙を……!!」
奴隷戦士「ふん!!」ブォッ
山賊E「煙を払っちゃったよ……この人」
奴隷戦士「……見つけた……」ギロッ
山賊E「ダメだ……これは勝てる相手じゃ無い……こういう時は……」
奴隷戦士「侵入者は……殺す…殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」
山賊E「逃げるしかないでしょぉぉぉぉ!!」ダッ
奴隷戦士「待て!」
山賊E(あの大斧持って追いかけるんだ。逃げ切れる……はず!!)
山賊E「ああもう! 俺は勇者や騎士様じゃないんだって!!」
ダダダダダダダダダダ!!!
504: 以下、
――調教室――
ガチャッ
地主「首尾の方はどうだ?」
覆面「一通り済みました」
地主「それで?」
覆面「依然として反抗的な目を……」
地主「まさか、手加減なんてしてねぇよな?」ギロッ
覆面「め、滅相もありません……」ガタガタガタ
地主「まぁいい、こっからが本番だしな……下がってろ」
覆面達「………」ザッ
地主「……さて、気分の方はどうだい、お嬢様よ?」
お嬢様「……気分? そんなもの身体中のあちこちが痛くて最悪ですわ……!!」ペッ
505: 以下、
地主「女にこの仕打ちはきつかったか? だが悪いな、家畜には身分なんて関係ないんだ。俺は男だろうが女だろうが同じように扱う」ヘッヘッヘ
お嬢様「……今に見てなさい……すぐに誰かが助けに……」
地主「おいおい……助けなんか来るかよ! 仮に来たとしてもうちには優秀な警備の奴隷がいる。 俺のために喜んで命を差し出すような奴隷がな。騎士団が来たところで返り討ちだぜ?」
お嬢様「そんなことを……すれば……法律によって……あなたは罰せられ……」
地主「法律? そんなもんが機能してるところなんて見たことあるか? あいつら公務員はろくに仕事もしねぇ、そのくせ俺たちに税金を納めろと偉そうに言ってきやがる!」
地主「あいつらなんてな! 金を握らせちまえば黙る犬っころなんだよ!!」ガッハッハッハッハ
地主「誰も俺に逆らえない! 奴隷も! 公務員も! そしてお前もだ!!」
地主「たっぷりと……まだまだ時間をかけて……俺好みの奴隷にしてやるよ!!」
お嬢様「くっ……」
お嬢様(誰か……)
山賊E(俺はこの人と結婚する。君とは一緒になれない)
お嬢様「うっ……」ズキッ
お嬢様(こんな時、あの方が来てくださったら……なんて、出来過ぎですわよね……だってあの方にはもう心に決めた人が……)
山賊E(ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ)
お嬢様(手、あったかかったな……)グスッ
506: 以下、
地主「おいおい泣いたって無駄だぞ? まだまだ地獄は続くんだ……まぁ、今すぐここで俺に忠誠を誓い、靴でも舐めてくれたら許してやらないこともないけどな?」ククク
お嬢様「誰が……そんなこと……!! 本当に……あなたの……魂は……腐ってます!!」
地主「魂が腐ってる? 面白いことを言うじゃねぇか」
お嬢様「そんなことをし続けて! あなたの良心は痛まないというんですか!」
地主「そんなもの気にしてちゃ、この世界じゃ生きてけないぜ? お嬢様よ!」ケッケッケ
お嬢様「今すぐ悔い改めなさい!! あなたは間違っています!!」
地主「……どうやらお前には厳しい現実ってやつを教えてやらなきゃならないらしいな……おい」ニヤッ
覆面達「はい……」ザッ
お嬢様「現実……?」
地主「お前の目にはこいつらがどう映るんだろうな? ほらよ!」バサッ
覆面達「………」バッ
お嬢様「なにを……?」
地主「さっきからお前を散々痛めつけていたこいつら……どこかで見た顔じゃないかい?」
お嬢様「……あなた達は!!!」
「…………」
お嬢様「私が解放した方達……どうして!!」
地主「昨日のことさ……こいつらはな、帰ってきたんだよ。自らの足でな!!」フッフッフ
地主「そしてこいつらは俺に向かってこう言った! 『なんでもするからここにいさせてくれ』ってなぁ!!」
お嬢様「そ、そんなことありえませんわ! あ、あなたが無理矢理捕まえたのでしょう!?」
507: 以下、
地主「違うね、間違いなくこいつらは自分の意思でここに戻ってきたんだよ!!……いいか、お嬢様よ。奴隷ってのは一人じゃ生きていけねぇのさ。誰かに従い! 踏みにじられ! ゴミのように扱われる! そんな生き方しかこいつらは知らないんだよ!! だからこうして自ら地獄のような場所に戻ってきたんだ! 違うか?」
お嬢様「そ、そんな……じゃ、じゃあ今まで私は……」
地主「そうだ。お前は『助けたと思った奴らに痛めつけられてた』んだよ!」ニヤニヤ
お嬢様「!!!」
地主「なぁ、どうだ、お嬢様よ? 人に隷属することでしか生きられない。差し伸べた手を振り払うどころか、その恩を仇で返す……自分の意思を失ったこいつらの魂こそ『腐ってる』って思わないかい?」
お嬢様「そ、そんなことない……」
地主「ならこいつらの目を見てみろ!助けてくれてありがとうって目をしてるのか? 捕まって申し訳ないって目をしてるか?」
奴隷達「………」ジー
地主「『余計なことをしやがって』って目じゃないか?」ニタァ
お嬢様「……!! そ、それもこれも!! 全部あなたがあの方達を!!」
地主「あいつらをこんな風にしたのは俺だけじゃない! 歴史が! 戦争が! ルールが! そしてなによりこいつらが自分自身を奴隷にしたんだよ!!」
地主「俺はただそれを有効利用しているだけだぜ?」
お嬢様「……う……あ……」ガタガタ
508: 以下、
地主「おい、お前ら! 黙ってないでおなんか言ってやれ! こいつのせいで自分がどんな目にあったのか!!」
奴隷「……ムチで叩かれた……」ボソッ
奴隷「逃げている最中……石を投げられた……」ボソッ
奴隷「一昨日から……なにも……食べていない……」ボソッ
お嬢様「いや……いや……」
奴隷「いっぱい……お仕置きをされた……」
奴隷「……こんなことになるくらいなら……逃げなきゃよかった……」
奴隷「……自由なんていらない……」
お嬢様「やめて……そんなつもりじゃ……」
奴隷「こんなことになったのも……全部お前のせいだ……」
お嬢様「やめて……」
奴隷「そうだ……お前のせいだ……」
「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」
お嬢様「いや……いやぁぁあああああああああ!!!!!」
510: 以下、
地主「いいか、よく聞け。世間知らずのお嬢様! これが奴隷どもの現実なんだ! こいつらは支配されることを望んでるんだよ! 俺は何一つ悪くない!!」
お嬢様「……それでは……私は……私はなんのために……」
地主「残念だったな! お前のやったことなんて、こいつらにしてみたらただのお節介でしかないんだよ!!!」
お嬢様「……うう……」
お嬢様(本当に……? 本当に……私のやってきたことは……)ガクンッ
地主「……チッ、少しは歯ごたえがあるかと思ったが……あっけないもんだな!! もう心が折れかかってるじゃねぇか!!」ガッ
お嬢様「……あう……!!」
地主「なぁ、もう一度言ってみろよ? 俺が間違ってるってさ。悔い改めなさいって言ってみろよ」グリグリ
お嬢様「…………」
地主「心ここにあらずってやつか……笑えるぜ」カッカッカッカ
地主(没落貴族の娘や潰れた国の姫を従える時……まずやるべきことは『心を壊すこと』……こいつの価値観を徹底的にぶっ壊してやることだ)
地主(他の奴隷は帰ってきたが結局『あいつ』は帰って来なかった……お前の罪は重い……完膚なきまでに壊し、俺の奴隷に作り変えてやるよ……女ぁ!!!)ニタニタ
地主「さぁ、こっからさらに楽しい楽しい調教の時間だぜぇ!!!」
「山賊七つ道具の四つ目! 壁壊し用簡易爆破術式符!!!」
511: 以下、
地主「なにっ!?」
バゴォォォォォォン!!!
地主「か、壁が!!」
パラパラパラ……
山賊E「ゲホッゲホッ……久々に使うと威力の調整がうまくいかない……」
地主「……なんだ!? どうなってやがる!?」
山賊E「いやー、お騒がせしちゃってすみません……こっちもあんまり時間がないもので……って」
お嬢様「…………」
山賊E「……あのー、もしかしてこれっていきなりクライマックスってやつですか?」
地主「なにを訳の分からないことを!! お前は何者だ!?」
山賊E「聞かれて名乗れるほど立派な名前じゃないんだけど……どうも、山賊です」ペコッ
地主「山賊ぅ……!? 山賊が一体なんの用だってんだよ!?」
山賊E「それを聞きます? 山賊に対して」
地主「なんだと!?」
山賊E「山賊ならやることは一つしかねぇだろ! 奪いに来たんだよ、てめぇが持ってるもん根こそぎな!」ババンッ
512: 以下、
地主「なんだと……? たかが山賊が人でなにができるって言うんだ!?」
山賊E「うん、勢いで言っちゃったけど流石に根こそぎ奪うのは無理ですね。あんまり時間も無いし」
地主「人の屋敷を勝手に壊しやがって……お前には死んでもらうしかないようだな」
山賊E「おっとそれは勘弁」ニヤッ
山賊E「なんで、お目当てのお宝だけ勝手にもらってっちゃいますね!」
地主「ぬかせ! 今すぐぶっ殺してやる!」
山賊E「おお怖っ……ってな訳で山賊七つ道具の3つ目『煙玉』!! 本日2発目!!」
パン! モクモクモク
地主「なんだ!? 前が……ええい山賊風情が小賢しい!!」
コソコソ……
地主「お前ら! 手探りでいいからあの男を探し出せ!!」
奴隷達「……は、はい!!」オロオロ
地主「チッ、無能共め……ならば扉だ! 扉を開けて煙を出せ! このままではなにも見えん!」
ガチャガチャガチャ……バンッ
地主「くそ! 警備の奴らはなにをやっていたんだ!!」
スゥゥゥゥ……
地主「これで少しはマシになったか……奴はどこだ!?」
山賊E「ここですよー」ヒラヒラ
513: 以下、
地主「いつの間に!! ……しかもそいつは!?」
山賊E「よかった……普通の人相手だったらまだまだ現役……それで、こっちの様子はっと……?」チラッ
お嬢様「う……あ……」ボソッ
山賊E「おーい?」フリフリ
お嬢様「……いや……いや……いや……」
山賊E「おいあんた、この人になにをしたんだ!?」
地主「別に特別なことなんて何もしていないぜ。俺はただ、このお方に現実を教えてやっただけさ」ニヤニヤ
山賊E「こいつ……!!」
地主「簡単だったぜ? こいつの心を折るのはよ?」ケッケッケ
山賊E「この……!!」
「侵入者……発見……殺します……」ビュオッ
山賊E「げっ、もう見つかったの!?」
奴隷戦士「パッカーン……!!」ブンッ
ドガァァアアアアン!!!
514: 以下、
山賊E「あ、危ないよ!! 女の子がそんな物騒なもの振り回しちゃダメでしょうが!!」
奴隷戦士「いい加減……死んで……?」
地主「貴様、今までなにをしていた!? 侵入者は全て殺せと命じただろうが!!」
奴隷戦士「……ご、ご主人様……!! 申し訳ありません……」
地主「命令を無視して山賊をここまで入れるとは……どうやら貴様の妹がどうなってもいいようだな……」
奴隷戦士「そんな! 妹だけは……どうか妹だけは……!!」
地主「だったらさっさと自分の仕事をしろ! それと女は殺すなよ?」
奴隷戦士「……わかりました……」
山賊E「なんかヤバそうな雰囲気……」
奴隷戦士「……お遊びは……終わり……!!」ゴゴゴゴゴッ
山賊E「やっぱり、ここも逃げるが勝ち……!! 行きますよ!」グイッ
お嬢様「……う……」シーン
山賊E「……ダメか……仕方ない、ちょっと失礼します!!」ヒョイッ
お嬢様「……!」
山賊E「それじゃ、いただくものはいただいたんで俺はこれで!」ペコッ
地主「させるか! おい! やれ!」
奴隷戦士「……はい……!!」ビュンッ
山賊E「あんなのに付き合ってられるか!」ダッ
地主「お前らもなにをしている!? ボケっと突っ立ってないでお前らも追え!!」
奴隷達「は、はいぃぃぃ!!」ダッ
地主「絶対に逃がすな! あの女は必ず俺の奴隷にする!!」
515: 以下、
――???――
お嬢様(これは……先ほどの夢の続き……ですか……?)
お嬢様「もう……ダメ……誰か……」
お嬢様「ゲホッゴホッ……」
お嬢様(煙を吸いすぎて、体に力が入らなくなりました。部屋の中は熱く、容赦なく私の体力を奪っていきます)
お嬢様「……このままじゃ……本当に……」
お嬢様(私の頭の中で明確に『死』という文字が浮かび上がりました。恐怖で体が震え、逃げることもできず、私はただ時が過ぎることを待つしかできませんでした)
お嬢様「誰か!! 誰か!!」ゲホッゴホッ
「……えっと……なんか今声が聞こえたような……あの、もしかして誰かいらっしゃったりとかしちゃいます?」
516: 以下、
お嬢様「!!! ここです……!! ここにいます……!!」ゼェゼェ
「声!? そこに誰かいるんですか?」
お嬢様「……衣装棚の中……です……!!
「ほ、本当にいた!? だ、大丈夫ですか!?」
お嬢様「扉が……固くて……出られないのです……」
「わかりました。ちょっと待っててください!」
お嬢様「……はい……」ゲホゲホ
「簡易爆発符は……この距離じゃ危ないよな……ええい、時間が無い!」ギュッ
「くっ……うぉぉぉぉおおおお!!!」
ギギギギギギ……
「ふんぎぎぎぎぎ!!」
ギギギギ……
「開けぇぇぇえええええ!!」
ギギギギギギ……バンッ!!
517: 以下、
「よ、よし……な、なんとか……開いてくれた……!」ゼェゼェ
お嬢様「……ゲホッゴホッ!!」
「達成感に浸ってる場合じゃなかった……えっと大丈夫ですか!?」
お嬢様「……あ、あなたは……?」
「え?……あの、その……あれ、どうしよう……えーと……き、騎士団の特殊救助隊の者です!!」
お嬢様「そうですか……騎士団の……まるで山賊みたいな格好ですね……」
「ギクッ」
お嬢様「?」
「そ、そんなことよりなんでこんな所に!? あたり一面火の海ですよ!?」
お嬢様「ちょっと……屋敷に侵入した不逞の輩に不意打ちをかけてやろうと思いましたら……いつの間に……出られなく……」
「ダメじゃないですか、そんなやんちゃしちゃ……」ハァ
お嬢様「……大きな……お世話です……領主の……娘……ならば……これくらいの……苦境……なんとも……」
「もう大丈夫です」ナデナデ
518: 以下、
お嬢様「……なにを……?」
「俺があなたを助け……痛っ!」
お嬢様「あなた……まさか……素手で扉を……?」
「あ、いやこんなの大したことないですよ。そんなことより、見つけるのが遅くなってすみません。怖かったでしょう?」
お嬢様「……べ、別に……こ……怖くなんて……」ジワッ
「……ごめんなさい。俺たちのせいで……やっぱり、こんなこと……間違ってますよね?」ボソッ
お嬢様「……え…?」
「安心してください。俺がちゃんと外まで連れて行きますから!」
お嬢様「ありがと……お願いしま……」フッ
「え? ちょ、ちょっと!? しっかりしてください!……大丈夫で……」
お嬢様(火の海でそう言ったその人の顔は……意識が朦朧としていたことと黒いマフラーに隠れて……よく……見え……)
519: 以下、
――地主の屋敷の一室――
地主「まだどこかに隠れているはずだ! 探せ! 探せぇぇぇえええ!!」
山賊E「……ここならバレないよな……?」コソッ
山賊E「流石に彼女を背負ったままあの斧から逃げ続けるのは無理があるし……回復するまで様子見するしか無いよね……それにしても」ハァ
山賊E(い、勢いで出てきちゃったけどこの後どうしよう……? とりあえずここに来ればなんとかなるって思ってたからあんんまり深く考えてなかったんだよな……)チラッ
お嬢様「………」
山賊E(なんか、錯乱してたっぽいし、俺の正体が昔家を襲撃した山賊だって知ったらもっと混乱するよな……というか昨日あんなことがあっただけに、公務員として会うのは気まず過ぎるし……)グヌヌ
山賊E(いいや、とりあえず別人ってことにしておこう。顔隠しちゃえば誰かわからないだろうし! あ、でも声で……)
お嬢様「……うっ……」
山賊E「あ、目、覚めました?」
お嬢様「……あな……た?」
山賊E「あ、いや……私はその……違いますよ(裏声)」
お嬢様「?」
山賊E「私は……その……えっと……役所から派遣された捜査官です!!(裏声)」
520: 以下、
お嬢様「……そう、ですか……」シュン
山賊E「はいぃ、そうなんです(裏声)」
お嬢様「捜査官さんはまるで山賊のような格好をされていますのね?」フフッ
山賊E「ギクッ……ええ、潜入捜査なのでこのような格好を……(裏声)」
お嬢様「……なぜかしら、前にもこんな会話をしたことがあるような気がします……」
山賊E「………きっと気のせいですよ(裏声)」フイッ
お嬢様「……そうですか……うっ」
(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)(お前のせいだ)
お嬢様「あ……ああ……いや……いやぁぁぁ……」ガタガタガタ
山賊E「どうしました!?」
(お前のやってることはただのお節介だったんだよ!)
お嬢様「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、私が……私が余計なことを……こんなことなら……こんなことなら!!!」
(もう二度と俺の前に現れないでください!)
お嬢様「いや、いやぁぁぁぁぁああああ!!!」
山賊E「しっかりしてください!」ガッ
521: 以下、
お嬢様「……!! ……あ……すみません、取り乱してしまいまして……」
山賊E「……なにがあったんですか?」
お嬢様「……あなたに尋ねてもいいでしょうか……?」
山賊E「ええ」
お嬢様「……私のしてきたことは……無意味だったのですか……?」
山賊E「はい?」
お嬢様「私は正しい行いをしていると自負していました。でも……それは間違っていたのでしょうか……?」
山賊E「……それは」
お嬢様「違うと言ってくれるのですか!? ではあなたに聞きます! なぜあの方々は自らこの場所へ帰ってきたのです!? なぜ自ら奴隷として生きようとするのですか!?」
山賊E「………」
お嬢様「私にはわからない……あの方達を救う方法が……単純に奴隷としての鎖を解き、自由にすることで救えると思ってた……だけどそれは違ってて……!! 私がやったことはただのお節介で……あの人達にとっては迷惑でしかなくて……!!」
山賊E「………」
山賊E(自分の目の前で辛そうに泣く彼女は……以前のような凛とした彼女では無くて……)
お嬢様「……こんな勘違い女、あの人に見向きもされなくて当然ですわね……私はなにを思い上がっていたのでしょう……本当に自分のことしか考えていない……自己満足の塊、まるで勝手に踊り狂う道化ではありませんか」フフッ
山賊E(今にも自ら崩れ落ちてしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)
522: 以下、
すみません訂正です
山賊E(今にも自ら崩れ落ちてしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)→×
山賊E(今にも消えてなくなってしまいそうなほどとても、とても小さく見えた)→○
それでは続けていきます
523: 以下、
お嬢様「……もう、どうでもいいですわ……フフッ、いっそのことあの男に屈服して奴隷として生きるのもいいかもしれません」
山賊E「なにを……!!」
お嬢様「わざわざ助けてくれたのに申し訳ないのですけども、もう私のことは放っておいて早く逃げてください。どうせ私はあなたの足手まといになります。私のお節介にあなたが付き合う必要なんてないのですから」
山賊E「……なんでそんなこと言うんですか……」ギリッ
お嬢様「もう疲れました。これ以上、なにも考えたくないのですよ……こんな世間を知らない箱入り娘、いつ死んだって世界にはなんの影響もないはずですし、もう放っておいてください」フフッ
山賊E「そんなことない!!」
お嬢様「だったらなぜあの人は私を騙していたのですか!? だったらなぜあの方たちは私を責めるのですか!? 私は……私はただ正しいことを……したかっただけなのに!! あの人に伝えたいことがあっただけなのに!!」
山賊E「!!!」
お嬢様「だから……もういいのです……私を置いて1人で逃げてください……」フフッ
山賊E(そう言う彼女の目は絶望に染まっていて、このまま消えてしまうんじゃないかと思った)
お嬢様「ああ、良心や世間体が気になると言うのなら家族にこう伝えてください。『私は望んでここにいる』のだと……」ウフフ
山賊E(俺は彼女がこのまま消えてしまいたくないと思ったのか)
山賊E「………」スッ
お嬢様「……なんですか………あ……!!」ヒシッ
山賊E(気が付けば俺は彼女のことを抱きしめていた)
524: 以下、
お嬢様「な、なにを……するのです……?」
山賊E「救うなんて、あなたは何様のつもりですか……?」
お嬢様「………」
山賊E「奴隷全てを救うなんて1人でできるわけないじゃないですか」
お嬢様「そうですわよね……私なんかが……」
山賊E「あなたが言ってることは現実を知らない箱入り娘の綺麗事です。この世界のルールを変えることは並大抵のことじゃない。1人でははっきり言って無理です」
お嬢様「……だからもう放っておいてくださいと何度も……!!」
山賊E「でも!!」
お嬢様「!!!」ビクッ
山賊E「でも、俺がいます」
お嬢様「え?」
山賊E「1人ではできなくても、二人ならできるかもしれない。それがダメなら三人で。そうやって少しずつやっていけばいい。すぐにはできないかもしれないけど、それでも俺はあなたに付き合いますよ」
お嬢様「それは……どういう……」
山賊E「『あなたは間違ってない』」
お嬢様「!!!」
山賊E「大丈夫、誰になんと言われたって俺が何度だってあなたに言ってやりますよ、あなたは間違ってないって!」
お嬢様「ううう……」グスッ
山賊E「だって、この世界は未だに間違え続けたままなのだから!」
お嬢様「!!!」
山賊E「でしょう?」
お嬢様「うあ……」グスッ
山賊E「だからもう、そんなこと言わないでください。お願いします」
お嬢様「うわぁぁぁぁああああ!!!」
山賊E(彼女は大声を上げて泣いていた。俺はそれを聞きながら彼女を抱きしめることしかできなかった)
山賊E(えーっと……敵にバレたらどうしよう……)ドキドキ
525: 以下、
お嬢様「グスッ、グスッ………」
山賊E「落ち着きましたか?」
お嬢様「はい……ありがとうございました……」
山賊E「………」
お嬢様「………」
山賊E(き、気まずい……!!)
山賊E(あああ!! 俺としたことがやっちまったぁぁぁ!! いきなり抱きしめちゃうなんて! しかも昨日思いっきり自分の都合で振った女の子を勢いで抱きしめるなんて!! 俺はなんてことぉぉぉぉ!!! バレた? 絶対バレたよな、だって今の会話自分で正体喋っちゃったみたいなもんじゃん!!)
お嬢様「あの……」
山賊E「はいぃぃ!!」
お嬢様「そろそろ……離してもらっても……」
山賊E「あ、はいそうですね! すみませんでしたなんか!!」
526: 以下、
お嬢様「そういえば捜査官さん、声が若干……」
山賊E「ええ? なんのことですか? 捜査官はわかりませーん(裏声)」
お嬢様「そうですか、知っている人に似ていたので……」
山賊E「あははは……そんなわけないじゃないですかー(裏声)」アタフタ
お嬢様「そうですわよね、あの人のわけないですものね」
山賊E「そうですそうです! 捜査官、嘘つかなーい!!(裏声)」アタフタ
お嬢様「面白い方ですね」フフッ
山賊E(ああ、本当に可愛いなちくしょう!!)グヌヌヌヌ
お嬢様「あの……大丈夫ですか?」
山賊E「大丈夫、大丈夫!! 捜査官、いつだって元気!! ほら、こんなところで逆立ちだってできちゃう!!」ヒョイッ
お嬢様「あまり無理はなさらない方が……」
山賊E「大丈夫大丈夫!!」
ガチャン!
山賊E「え?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
山賊E「どわぁ!!」
527: 以下、
お嬢様「捜査官様!!………これは隠し扉ですか!?」
山賊E「痛てて……どうなってるんだ? 一体?」
「イチャイチャタイムは終わったね」
お嬢様「誰ですの!?」
「あんまり大声出さないで欲しいな、耳に響くの」
山賊E「君は……」
「もう、待ちくたびれたの、具体的に言うと8年2ヶ月と4日と7時間34分56秒も待ったの」
山賊E「なんだって?」
「はじめまして、お兄ちゃん。いや、私たちを救ってくれる人」
528: 以下、
といったところで今日の投下は以上です
明日の投下も同じ時間帯を予定しています!!
なんとしてでも自らが定めた期限内に終わらせるため、今から書き溜め作業に戻ります
今日もお付き合いくださり、ありがとうございました!!
537: 以下、
山賊E「檻の中に……女の子?」
お嬢様「あなたもここの奴隷……なのですか?」
「うーん、奴隷って言葉、大っ嫌いだけど、間違いじゃないの。私のことは占い師って呼んでほしいの!」
お嬢様「占い師さん……ですか」
占い師「そう! 占い師さんなの!」ニコッ
お嬢様「はぁ……」
山賊E「それで、君はなんで閉じ込められてるんだ?」
占い師「私ってちょっと特殊な能力の持ち主でね、色んなことが見えるの。それに目をつけたあの男は私の力を独占するためにこの檻で私を閉じ込めてるということなの」
お嬢様「そんなことを……」
占い師「あの男の趣味なの。特殊な力を持った奴隷を集めて自らの利益とする。だから特殊な奴隷は特に重宝されてこんな専用の部屋で監禁されているってわけ。貴族のお姉ちゃんはあいつの一番のお気に入りを逃がしちゃったからあんな目にあったんだよ?」
お嬢様「そうでしたか……」
山賊E「そんなに大切なら逃げられるなよ……」
お嬢様「しかし、このような狭い檻に人間を閉じ込めておくなど許せませんね……!!」
占い師「うーん、倫理観とかを無視するなら間違った方法じゃないと思うけどね、技術や特殊技能を独占できればそれだけ他のライバルより優位に立てるってもんだし。あいつはやり過ぎだけど」
山賊E「それはそうと、色んなことが見えるってどういうことだい?」
538: 以下、
占い師「説明するの難しいんだけど、例えばお兄さんの過去とかこれから起こる未来のこととかね……断片的にだけどぼやぼやーっと見えるの……つまりは一種の予言とか透視とかそういった類?」
山賊E「随分とアバウトなんだね……」
占い師「結局、未来なんて移ろいやすいものだから。当たるも八卦、当たらぬも八卦ってね。だから私は占い師なの!」
お嬢様「それでも素晴らしい力ですわ」
山賊E「ええ? 自分から胡散臭いって言ってるのに信じるんですか?」
占い師「うーん、私は私の力を明確に証明する術を持ってないから無理もないの。でもちょっとは信じて欲しいな……『山賊さん』?」
山賊E「うわぁぁぁぁああああ!!!」
お嬢様「え?」
山賊E「なななななな……なんで?」ヒソッ
占い師「だからさっきから見えてるって言ってるのぼやぼやーっとだけどね」
山賊E「仮にそうだとしても……だったらこっちの事情も知ってるでしょう? バレたりしたらどうするんですか?」ヒソッ
占い師「大丈夫大丈夫、あのお嬢様は主人公体質だからどうせ聞こえないの」
山賊E「はぁ!?」
お嬢様「あの……先程からなんの話を?」
占い師「ね? 聞こえてないでしょ?」
山賊E「なんか納得いかねぇ……!!」
539: 以下、
占い師「まぁ、茶番はこれくらいにしてあんまり時間無いから本題に移りたいんだけどいいかな?」
お嬢様「え、ええ。そうでしたわね」
占い師「私がお兄ちゃんに頼みたいことはひとつだけなの」
山賊E「なにかな?」
占い師「私とお姉ちゃんを自由にしてほしいの」
山賊E「えっと……この檻から出してほしいってこと?」
占い師「それも含めて、かな? 私たちを人間にしてほしいってことなの」
お嬢様「つまり奴隷身分からの解放……ということですね!」
占い師「うん! お願いできるかな?」
お嬢様「ええ、ええ!! もちろんですわ!!」
占い師「貴族のお姉ちゃんならそう言ってくれると思ってたの!!」
540: 以下、
お嬢様「それでお姉さんはどちらに?」
山賊E「別の部屋に捕まってるのか?」
占い師「あれ? お兄ちゃんはここに来てから何度も合ってると思うけど?」
山賊E「……まさか」タラー
占い師「うん、そのまさかなの」
山賊E「いや、無理でしょ」アハハ
占い師「でも、そうしないと私もお兄ちゃん達もここから出られないんじゃない?」
山賊E「確かにそうだけど……あれと戦うのは……」
占い師「ちなみに私を無視して脱出しようとした場合のお兄ちゃんたちの悲惨な未来、聞きたい?」
山賊E「え」
541: 以下、
お嬢様「一応、聞いておきましょうか」
占い師「まず、お兄ちゃんは逃げているところをお姉ちゃんにパッカーンされるの! まさに瞬殺って感じだね!」
山賊E「ええ……?」
占い師「このチャンスを逃せばもちろん私はこの部屋から一生出られないし、貴族のお姉ちゃんは……あ」
お嬢様「な、なんですか!?」
占い師「今の無しなの……世の中には知らないこともあるの!」
お嬢様「そう言われると気になるでしょう!? ちゃんと教えてください!!」
占い師「あくまでも占いだからね? 気分を悪くしないで欲しいの」
お嬢様「そこまで前置きされたら余計気になるではないですか!」
占い師「えーっと……その……グチャグチャ……なの」
お嬢様「グチャグチャ……?」ゾッ
山賊E「そのグチャグチャっていうのは精神的な意味で……? それとも……」
占い師「いやどっちもなの」
山賊E「どっちも!?」
お嬢様「なんとしてでもお姉さんを助けましょう!」
山賊E「なんかこの子に脅されてるだけな気がするんだけど……」
占い師「占い師は嘘をつかないの! ただ言ったことがたまに外れちゃうだけなの!」
山賊E「それじゃダメだろ!!」
542: 以下、
占い師「お願いお兄ちゃん! 私にとってこれが最後のチャンスなの! お姉ちゃんを助けて!!」
山賊E「……そんなこと言われちゃったら断れないじゃないか」ハァ
占い師「うふふ、ありがと! お兄ちゃん!」
山賊E「なんでこんな目に……」
占い師「もうちょっとでお姉ちゃんが来ると思うから頑張ってね?」
お嬢様「それも透視の力というものですか?」
占い師「まぁ、そんなところなの!」フンス
山賊E「………は? え、もう!?……あのちょっと待って……」
占い師「グッドラック!!」グッ
山賊E「いや、檻の中からそんないい顔で親指立てられましても!!」
お嬢様「どうやら私たちはやるしかないみたいですわよ?」フフフ
山賊E「まぁ、頭をパッカーンは勘弁してもらいたいところですからね……」
お嬢様「それに、助けを求めている人を無視するなんて私にはできませんわ」
山賊E「でしょうね」
お嬢様「私はやっぱり納得なんて出来ません。あの男がやっていることはとても酷いこと。人が人を支配する世界なんておかしいと思うのです……これがこの世界の現実だと言うのなら、私はその現実と徹底的に戦います………私の考えは間違っているでしょうか?」
山賊E「………その質問は卑怯ですよ」
お嬢様「いいではありませんか。これは信頼関係の表れです。私は間違っていますか? あ・な・た?」フフッ
山賊E「………」
山賊E「………」
山賊E「………え?」
543: 以下、
お嬢様「どうしました? あなた?」クスッ
山賊E「…………あの………いつから気づいていたんですか」ダラダラダラ
お嬢様「バレてないと思ってたんですの? 嫁入り前の娘をあんなに力強く抱きしめておいて」ジトー
山賊E「いや、あれはその流れでつい……」
お嬢様「それで、顔を隠しておけばなんとかなると?」
山賊E「……いつものパターンならいけるかなと……本当にすみません……」シュルシュル
お嬢様「私をなめないでください! 顔なんて見えなくても、あなただってことくらいわかります!」シャー
山賊E「その、なんていうか……昨日はすみませんでした……」
お嬢様「詳しいことは今は聞きません。でもこれだけは言わせてください」
山賊E「はい?」
お嬢様「………助けに来てくれて本当に嬉しかったです」
山賊E「………はい」
お嬢様「さぁ、あなた。もう一度改めて聞きます! 『私は間違っていますか?』」
山賊E「間違ってない!」
お嬢様「よろしい。ならば共にお姉さんを開放しましょう!! あの男にぎゃふんと言わせてやります!!」
山賊E「ぎゃふんって……そういえばこれから戦闘とかになると思うんですけど大丈夫なんですか?」
お嬢様「昔、うちの家庭教師に少しだけ剣術を教えてもらったことがあります!」フンス
山賊E「無いんですね……」ハァ
お嬢様「でも筋はいいと褒められましたわよ!?」
山賊E「そうですか……」
占い師「もう! 長々とイチャイチャしている場合じゃないよ!! もうそこまで来てるの! ちゃんと避けないと体が真っ二つになっちゃうから気をつけてね!」
ダダダダダダダダッ
山賊E「物騒なこと言わないでくださいよ!!」チャキッ
「はああああああ!!!」ブォッ
ドガァァァン!!!
552: 以下、
奴隷戦士「……妹……今助けるから……!!」ユラァ
占い師「お姉ちゃん!!」
山賊E「クソ、相変わらずデタラメな威力だな!!」
奴隷戦士「死んで……!!」ブンッ
山賊E「し、死ぬ!!」ヒラッ
占い師「お姉ちゃん! ダメ!!」
奴隷戦士「……すぐに……お姉ちゃんが……助けてあげるからね……!!」ブンッブンッ
山賊E「このままじゃ本当に頭パッカーンになっちゃうぅぅ……!!」ヒラッ
お嬢様「あなた!」ダッ
山賊E「来ちゃダメです!! 死にますよ!!」
お嬢様「ですが……!!」
占い師「お姉ちゃん、私は大丈夫なの!! だから話を聞いてよ!!」
奴隷戦士「……妹は……私が……守る!!」グワァ
山賊E「や、やばい!!」
占い師「お姉ちゃん!!」
奴隷戦士「『壊転』!!!」
ブンッブンッブンッブンブンブンブン……
山賊E「人間扇風機かよ!?」
ザンッ!!
山賊E「うわぁぁぁぁぁああああ!!」
553: 以下、
お嬢様「あなた!!!」
奴隷戦士「侵入者は……全て……殺す……!!」ブンブンブンブン
山賊E「し、死ぬ……これは本当に死ぬぅぅぅ!!!」
ガキィィィン!!
奴隷戦士「!!!」
お嬢様「斧が壁に!!」
山賊E「止まった!」
奴隷戦士「………!!」グイグイ
山賊E「今がチャンス!! 七つ道具5つ目! 拘束用粘着ネット!!」バサッ
奴隷戦士「!?」ジタバタ
山賊E「どうだ! これで身動き取れないはず!! おとなしく投降しろ!!」
奴隷戦士「……ベトベト……いや……!!」ジタバタ
お嬢様「あの……どこでそんなものを売ってるんですか……?」
山賊E「俺、血が苦手ですから……こういう戦い方しかできなくって……」アハハ
占い師「二人とも! まだ終わりじゃないの!!」
554: 以下、
山賊E「何言ってるんだよ。刃物で切らない限りあの網は……」
奴隷戦士「ベトベト……いや……!!」ガチャン
山賊E「斧の柄が……外れた……!?」
お嬢様「中から剣が!?」
奴隷戦士「……スッパーン……」
シュパパパパパ!! パサッ
奴隷戦士「……食べたことあるからわかる……」
奴隷戦士「……やっぱり……君は……チョコレートより甘々……」
山賊E「ひ、卑怯だよそれは!!」
555: 以下、
占い師「お姉ちゃん、違うの! この人達は私たちを助けてくれる人なんだよ!!」
奴隷戦士「……待っててね……すぐにお姉ちゃんが助けてあげるから……」チャキッ
占い師「話を聞いて、お姉ちゃん!!」
カツカツカツ………
「おいおい……こんなところにいたのか……お前ら」ニヤリ
山賊E「ああもう!! 次から次に面倒だな!!」ハァ
地主「……まさかここの隠し部屋をみつけるとはな……道理で中々見つからねぇ訳だ。占い師、お前が呼んだのか?」
占い師「私は運命に身を任せただけなの」
地主「ご自慢の透視能力か、能力で見たものは全て俺に伝えろと命令したはずだが?」
占い師「教えるわけないの。なんも知らないあんたが破滅するところを見たかったんだもん」
地主「破滅!? この俺が? おいおい随分と物騒な未来を占ってくれるじゃねぇか!」ケッケッケ
占い師「……いい加減、お姉ちゃんを奴隷身分から解放して。あんたには私の力で十分すぎるくらい儲けさせてやったはずでしょ」
地主「奴隷ごときがこの俺に意見か? いつからそんなに偉くなったんだ? お前は? ええ?」
お嬢様「……占い師さんはあなたと同じ人間……そこに優劣などありませんわ!!」ザッ
山賊E「ちょっと! 前に出たら危ないですって!」
地主「おお? これはこれはお嬢様、ちょっと見ない間に随分とお元気になりましたね? さっきまでは心が折れかかっていたのに」
お嬢様「ええ、なにせ私はもう1人ではありませんから。私には一緒に歩いてくれる人がいるのです!! 例え箱入り娘のお節介だったとしても、私は私の信念で世界の過ちをを正します!!」
山賊E「ってなわけですよ。この人はあんたの奴隷に堕ちるような人じゃない。残念でしたね」
地主「お前、この女になにか吹き込んだのか?」
山賊E「いいえ、俺はただ、『事実』を教えてあげただけですよ」ニヤッ
556: 以下、
地主「チッ、余計なことを……また調教のし直しかよ、めんどくせえ……こりゃお嬢様も占い師も共々調教してやらなきゃな!!」
奴隷戦士「!!! やめてください……!! 話が違います……!! 妹のオシオキは全て私が……!!!」
地主「うるせぇ!!」バシン
奴隷戦士「うっ……」
占い師「お姉ちゃん!!」
地主「俺は! お前らの!! なんだ!?」
奴隷戦士「ごめんなさいごめんなさい……」
地主「何年も俺に飼われていて! まだ主人に対する礼儀がなって! ねぇのか!?」バシンバシン
奴隷戦士「許してください許してください……」
地主「余計な仕事を増やしやがって!! こうなったのも元はと言えばお前が! この男の侵入を許したせいだろうが!」バシンバシン
奴隷戦士「許してください許してください許してください」
占い師「やめるの!! お姉ちゃんはなにも悪くないの!!」
地主「いいや、やめてやらねぇよ! これはこいつとの約束だからな。やめるわけにはいかねぇ!!」
奴隷戦士「妹……お姉ちゃんは……大丈夫……だから……気にしないで……ね?」
占い師「お姉ちゃん……」
地主「お前には見えてるよなぁ……俺がこいつとどんな約束をしたのかをよ?」
山賊E「約束って……?」
占い師「私の分のお仕置きは全部お姉ちゃんが肩代わりするってやつでしょ」
お嬢様「それではあの方は……」
占い師「うん。私に何もしない代わりにこいつはお姉ちゃんをいっぱい虐めてるんだよ。私が協力しなかったらお姉ちゃんがもっと虐められる……だから私はこいつの言う通りに力を使うしかなかったの」
557: 以下、
地主「お前の透視の力のお陰で、俺は随分といい思いをさせてもらったぜ? 商人貴族様もこの農場の成功を喜んでくださった!」
お嬢様「商人貴族……!? あの方も絡んでいると言うのですか!?」
地主「ああ、もちろんそうさ。あのお方は奴隷を使ったビジネスが得意でね。その手腕でここの奴隷農場はもちろんのこと東のコロシアムに奴隷市場も大盛況ってやつだ!」
地主「まったく奴隷商売ってのはボロい商売だな! 各国でかき集められた魔王軍によって親を殺されたガキや亡国の人間どもを集めて奴隷として再教育し、他の国の奴らに売ったり、見世物にしたりする! うまく躾ければ主人の言うことはなんでも聞くし、飼うにしたって水とクソみてえな残飯やってればいいから安上がりってもんだ! 」
地主「まさにこの世界は奴隷をうまく扱える俺みたいな支配者によって支えられている! お前らが今までに口にしてきたものも全て! 奴隷達が汗水たらして作ったものかもしれないぜ?」
山賊E「随分と大きい話になっちゃったな……」
占い師「あんたやっぱり最低だよ。反吐が出るの」
地主「ほう、姉との件をを理解した上でまだ歯向かうってのか? お姉ちゃんがどうなってもいいのかよ?」ケケケ
奴隷戦士「……許してください許してください……」ブツブツブツ
占い師「これ以上お姉ちゃんを傷つけることは許さないの。このゲス野郎」
地主「……どうやら占い師さんはお仲間を得て随分と強気になっているらしい……おい、わかってるな?」
奴隷戦士「はい……」
地主「男は確実に殺せ。それとあの女も腕の一本くらいは構わない。言う通りにすれば俺に何度も無礼を働いたお前の妹を特別に許してやる。特別にな」
奴隷戦士「……それは……本当……ですか……?」
地主「ああ、一切危害は加えない。俺は優しい主人だろう?」
奴隷戦士「……ありがとうございます……」
558: 以下、
山賊E「なぁ、占い師」
占い師「なーに? 今私、腸煮えくり返りそうなんだけど?」
山賊E「ちょっと確認しておきたくてですね」
占い師「どうせ透視でお姉ちゃんの動きを教えて欲しいとかそういう類の話でしょ?」
山賊E「そう………できる?」
占い師「できないの」
山賊E「え? でも未来が見えるんでしょ?」
占い師「いくら未来が見えてもそれは断片的なものでしかないの。私が見えているのは、『あなたがお姉ちゃんを助ける可能性』と『あなたの頭がパッカーンしている可能性』という結果の二つだけ。お姉ちゃんの動きを逐一読み取るのは無理だよ」
山賊E「じゃ、じゃあどうすればいいのさ!?」
占い師「力なんかに頼ってちゃ人間ダメになるよ?」
山賊E「もしかして自力で勝てってこと?」
占い師「うん!!」ニコッ
山賊E「いい笑顔だな畜生!」ガンッ
お嬢様「仕方ありませんね、ここは私が……!!」
山賊E・占い師「下がっててください」「下がってるの」
お嬢様「はい……」シュン
山賊E「いや、でも……」
山賊E(本当にどうしよう……)ズーン
559: 以下、
地主「さぁ、さっさとあの目障りな奴らに現実ってやつを思い知らせてやれ! 奴隷戦士!」
奴隷戦士「………悪く……思わないで……!!」ビュンッ
山賊E「ええい、やるっきゃない!!」
山賊E「七つ道具の六つ目!! 『戦闘用・脅迫用の剣』!!」チャキッ
お嬢様「脅迫用!?」
山賊E「あ、いや……致し方ない場合だけですよ?」
占い師「アホみたいなことやってる場合じゃないの! 来るよ!!」
山賊E「うおっと!!」ザッ
ガキィィン!!
奴隷戦士「……そんななまくらで勝てると思ってる……?」ギリギリギリ
山賊E「思ってない……けどさ!!……君が俺ら側についてくれれば……この場を乗り切れる……と思うんだけど……どうかな?」
奴隷戦士「……それは……無理……」
お嬢様「なぜですか!? 占い師さんは私たちに自由になりたいと訴えてくれました! あなたもそうでしょう!?」
奴隷戦士「……妹はなにも知らないから……そんなことは絵空事だって……!!」ブンッ
山賊E「んぎぎぎぎ……!!」ギリギリギリ
山賊E(こんな小さな体のどこに……そんな力があるんだよ!!)
奴隷戦士「……自由になったところで……私達が奴隷とわかったら……お前たち人間は直ぐに手のひらを返す……!!」
560: 以下、
お嬢様「そんなことありません!!」
奴隷戦士「嘘だ!!」グンッ
山賊E「うお!?」
山賊E(さらに力が強く……!!)
奴隷戦士「希望なんて持ったってなんの意味もない! どうせ裏切られるくらいなら最初から諦めてた方が……傷つかなくて済む!!」
お嬢様「……!!!」
奴隷戦士「私は……妹が無事なら……それでいいの……私はどうなってもいい!! 私のことは放っておいて!!」
占い師「放っておけないの! お姉ちゃんも一緒に自由になるの!」
奴隷戦士「……自由になって……どこへ行くって言うの……? また捕まって……別の人の奴隷になるの……?」
占い師「お姉ちゃん……」
奴隷戦士「わかってよ……妹……私の力じゃ……これが精一杯なんだよ……次のご主人様のところでは……あなたを守れないかもしれない……そうなってしまったら……私の……私の今まではなんだったっていうの……?」ギリギリギリ
山賊E「くっ……!!! あ、あのそろそろ厳しいんですけど……!!」プルプルプル
お嬢様「もうちょっと……もうちょっとだけ彼女と話を……お願いします」
山賊E「……りょーかい……」プルプルプル
お嬢様「お姉さん……剣を納めてください。私たちには戦う理由など無いはずです!!」
奴隷戦士「……理由? ……理由ならある……お前たちのせいで妹が傷つくかもしれない……私にはそれが耐えられない!!」
地主「そうだ、奴隷戦士。お前が俺の言うとおりにしなければお前の妹を痛めつけてやる……生まれてきたことを後悔させてやるくらいにな!!」ニタァ
奴隷戦士「だから私は戦う……それ以上……理由なんて必要ない……!!」ギギギギギッ
山賊E「くぅ……」
お嬢様「お願いです! お姉さん! 止まってください! 妹さんもそれを望んでいます! もちろん私だって!!」
奴隷戦士「黙れ!! 貴族のあなたに……私たちのなにがわかるっていうの……? 知ったような口聞かないで!!」
地主「いつまでもごちゃごちゃと……耳を貸すなよ、奴隷戦士。早く奴らを黙らせろ!!」
奴隷戦士「……はい」ギギギ
山賊E「流石に……もう……限界……」プルプル
561: 以下、
奴隷戦士「私たち奴隷はこうするしかないの! 誰かに従って虐められて……それでも仕方ないって諦めるしかないの! それが奴隷なの! この世界に奴隷の居場所なんてないんだ!!!」
山賊E「……『仕方ないって諦めてたらいつの間にか大事なもんまで失くしちまう』……」ギリギリギリ
奴隷戦士「……え?」
山賊E「……仲間が俺に言ってくれた言葉……なんだ……」
山賊E「俺もさ、人には言えないことばっかりやってきた……生きるために仕方ないって……この世界に俺みたいな奴の居場所なんてないって……でも!!」
山賊E「仕方ないって言葉で片付けちゃういけないもんだってあるんだよ!!」グググッ
奴隷戦士「……そんなの……綺麗事……!!」
山賊E「ああ……綺麗事だよ。綺麗事だけど……あの人はそんな綺麗事を現実にしたいって本気で思ってる!」
お嬢様「……この世界にあなたの居場所がないのなら……私がなります……! だからもう全てを諦めたりしないで……私と、共に歩いてくれませんか!? この世界を変えるために!!」
奴隷戦士「!!!」
562: 以下、
地主「なにをしている奴隷戦士!! さっさとやれ!!」
奴隷戦士「……あなたが……私の居場所……?」スッ
奴隷戦士「……本当……?」
地主「おい! どうした!?」
お嬢様「あら? この私を疑うって言うんですの? 私は宣言したことはちゃんと守りますわ! 私自身の誇りにかけて!」フフン
山賊E「この人はとてもしつこいよ? 身を以て体験した俺が言うんだ……間違いない」
奴隷戦士「…………」
地主「どうした! 早く殺せ! 妹がどうなってもいいのか!?」
奴隷戦士「……あ、あう……」ウツムキ
占い師「お姉ちゃん、この人たちなら大丈夫だよ……? 信じてあげて?」
奴隷戦士「……妹……」
占い師「お姉ちゃんがこれ以上傷つくの、私見てられないの……」
奴隷戦士「妹……」
地主「早く殺せ! お前は俺の奴隷だろう!! ええ!?」
奴隷戦士「そう……私は……ご主人様の……奴隷……」
地主「そうだ! お前は一生! 俺の奴隷なんだよ!!」
563: 以下、

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【生活】忘れられないイタズラ電話  part5

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