岡崎「京ア゛ニ゛?」part2back

岡崎「京ア゛ニ゛?」part2


続き・詳細・画像をみる

5:
朋也「俺に嘘なんてつくなっ」
渚「ごめんなさいです…」
渚「実は学校を出てから、熱っぽかったです…」
朋也「馬鹿…早く言ってくれ…」
渚「ごめんなさいです…」
朋也「もう、いいから…」
朋也「帰ろうな」
俺は渚の脇に腕を回して、歩き始めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――古河家 廊下
朋也「どうでしたか、早苗さん」
早苗「大丈夫ですよ。落ち着いてください」
朋也「すみません…俺が無理させすぎたかもしれないです」
早苗「そんなに恐縮しないでください。自分の彼女じゃないですか」
朋也「え…知ってたんですか」
早苗「わかりますよ、それぐらい。自分の娘ですから」
47:
朋也「至らない彼氏っす」
早苗「そんなことないですよ」
早苗「岡崎さん」
朋也「はい」
早苗「朋也さんとお呼びしていいですか」
ますます渚に似てきた。まぁ、渚は『くん』だけど。
朋也「ええ、そうしてください」
早苗「では、朋也さん」
朋也「はい」
早苗「渚はこんなふうに体が弱い子ですが…末永くお付き合いください。よろしくお願いします」
朋也「いえ、こちらこそお願いしたいくらいです。嫌われないようにしないと…」
早苗「大丈夫ですよ。何かあったときは力になります」
朋也「それは頼もしいです」
早苗「朋也さんも疲れたでしょう。渚のことはわたしに任せて、休んでください」
朋也「一日中遊んでおいて、面目ないです」
49:
早苗「いいえ」
朋也「それじゃ、お言葉に甘えさせていただきます」
早苗「はいっ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6月3日火曜
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――古河家 廊下
翌朝。
結局渚の熱は下がらず、学校を欠席することになる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――渚自室
朋也「いってくるからな、渚」
寝込んだままの渚に声をかける。
渚「はい、いってらっしゃいです」
顔だけこちらに向けて、笑顔で送ってくれる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――廊下
廊下に戻ると、お粥を載せた盆を持って、オッサンが立っていた。
秋生「てめぇらは新婚夫婦かっ」
51:
今のやり取りを聞かれていたようだ。
秋生「ちっ、自分たちだけ楽しみやがって、俺と早苗も新婚生活に戻せ、この野郎」
朋也「無理です」
秋生「わかってるよ、馬鹿っ。俺と早苗はアツアツだからいいんだよ。この野郎」
朋也「なら、言うな」
秋生「けっ…てめぇと話してたら、渚の朝食が冷めちまう。とっとと行け、この野郎」
朋也「言われなくても、行くよ」
秋生「こら待て、両手ふさがってるんだから、おまえが開けねぇと入れないだろ、この野郎」
今のうちに一発殴っておこうかと思う。
秋生「ちなみに日中は渚と話をするからな、妬くんじゃねぇぞ、この野郎」
朋也「なんの話だ」
秋生「家族の話だよ。これだけはてめぇに任せておけねぇからな。しばくぞ、この野郎」
朋也「ああ、いい。任せるよ」
この家族ならば、できてしまった溝だって、簡単に埋まってしまうのだろう。
そう思いながら、その場を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
52:
6月4日水曜
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝も渚の熱は下がらなかった。
しかし俺にできることは何ひとつなく、学校に行くしかなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――古河家 廊下
昼の間に、かかりつけの医者も来たらしい。
でも熱を下げる手だてはなく、ただ、安静にして様子見する他ない、ということだった。
ずっと、早苗さんの看病が続く。
俺はその合間を見て、渚に会いに行くだけだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――渚自室
渚「今日も休んでしまいました」
朋也「いいんだよ。よくなるまで、休んでいればいい」
渚「学校は、楽しかったですか」
朋也「楽しかねぇよ」
渚「どうしてですか」
朋也「おまえがいないからだよ」
渚「すみません…」
渚「でも、うれしいです。そう言ってもらえると」
54:
朋也「俺、ずっと待ってたんだ」
渚「なにをですか」
朋也「バスケとかやってさ…」
朋也「創立者際に向けて演劇頑張ったりさ…」
朋也「俺、あの頃からおまえが好きだった」
渚「はい」
朋也「それで、やっと、付き合ってるふたりっぽく、学校で過ごせると思ったんだ」
朋也「そういう生活を待ってたんだ」
渚「すみません…」
朋也「そういうのって、学校生活の醍醐味だと思わないか」
渚「思います」
朋也「本当に、そう思うか」
渚「え? どうしてですか?」
朋也「だって、おまえ、そういうこと全然意識してくれないからさ」
渚「そ、そうでしょうか…」
57:
朋也「おまえ、子供だからなぁ」
渚「そんなことないです」
渚「わたし、朋也くんより年上です」
朋也「いや、歳は関係ないだろ」
渚「でも、ちゃんとわたしだって、そういうことしたいです」
渚「学校や、いろんなところで、朋也くんとそういうことしたいです」
朋也「そういうことって…?」
渚「その…並んで歩いて…お話したりです」
朋也「それって、いつもしてるような気がするんだけど」
渚「あ、そうかもしれないです…じゃあ…」
渚「手をつないで、歩きます」
朋也「…よし」
朋也「じゃあ、早くよくなって、そうしようぜ」
朋也「俺、それ期待して、待ってるからさ」
渚「はい、わかりました」
59:
野球難しそうwwww俺じゃ無理wwwwwwwwwww
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一週間が過ぎても、二週間が過ぎても、渚は学校には行けなかった。
ずっと、下がりそうで下がらない微熱が続いていた。
その間に、いろんな奴らが見舞いに来てくれた。
演劇部のメンバーに、SOS団や、軽音部の連中…
田井中たちは、なにを思ったのか、新入部員である中野梓という子まで連れてきていた。
それに、直接渚とは関わりのない宮沢まで、見舞いに来てくれた。
田井中たちから渚のことを聞いたのだという。
見舞いに来てくれる連中の好意を受け取った渚は、一度無理して登校しようとしたが、立って歩いただけで、熱が上がってしまった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6月が終わり、梅雨が明けて…
7月が来て、夏休みに入って…
それでも、渚は部屋の中にいた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――渚自室
渚「朋也くん…」
朋也「なんだ、渚」
渚「夏休みです」
朋也「そうだな、夏休みだな」
渚「わたしに構わないで、遊んできてください」
62:
朋也「いいんだよ、ここに居させてくれ」
渚「こんなところに居ても、退屈です」
朋也「退屈じゃない。こうして話できるだろ」
渚「そんな夏休みってないです。楽しい思い出もできないです」
朋也「楽しいんだよ、これで」
渚「でも、もう話す話題もないです」
渚「わたしは寝てるだけですから…」
朋也「いいんだよ、話すことなんてなくても」
朋也「俺は期待して待ってる、それを思うだけで楽しいんだよ」
渚「何をですか」
朋也「おまえと手をつないで歩ける日をだよ」
渚「………」
渚「他の人ひとと…」
朋也「…ん?」
渚「他のひとと手をつないで歩いてくれても…わたしは構わないです」
63:
ゾリオンwwwwwwww更に難易度上がったwwww無理wwww
朋也「馬鹿っ、怒るぞ」
渚「だって、こんなわたしが彼女ではおもしろくないです」
渚「朋也くんが、かわいそうです…」
朋也「おまえ、俺を振る気かよ…」
朋也「俺はおまえのこと好きなのに、おまえは違う人を探せって俺に言うのかよ…」
渚「言いたくないです…」
渚「わたしも、朋也くんのこと好きですから…」
朋也「なら、言うな、馬鹿…」
渚「はい…」
朋也「二度と言うなよ…」
渚「はい…わかりました」
渚「………」
渚「朋也くん」
朋也「ああ、なんだ」
65:
渚「手、つないでくれますか」
渚「歩くことはできないですけど…」
朋也「ああ、いいよ」
渚が、細く白い腕を上げる。
俺はその手のひらを自分の両手で強く握った。
渚「………」
朋也「疲れたろ、眠るか」
渚「はい、そうします」
朋也「ああ、そうしろ」
渚が目を閉じる。
じわっと、押し出された涙が零れた。
せめて…夢の中では、ふたりで歩けますように。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
二学期が始まった。
学校では、皆、来春の自分を見据えて、脇目も振らず勉強していた。
休み時間になっても、机を離れず、参考書に向かっていた。
そんな中、俺だけは、渚のことを考えていた。
あいつが今年学校に居たのは、たった一ヶ月だけだ。
その短い間に、俺はあいつと出会って、ひとつの目標に向かって頑張って…
66:
俺が三年かかっても、できなかったことをやり遂げた。
そして、俺はあいつのことを好きになっていた。
最初は自分を支えてくれる存在として、必要とした。
でも、今はただ、好きなだけだった。
一緒に同じ時間を過ごしたい。
それだけだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――学校 廊下
不良とダブりの組み合わせとか、後ろ指さされたっていい。
校内をふたりで歩きたかった。
今は、それだけが俺の望みだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
残暑の厳しい9月が終わり、秋の気配が近づく頃。
俺はオッサンに呼び出され、古河家の話し合いの場に会すことになる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――古河家 居間
秋生「まぁ、てめぇには言っておいたほうがいいと思ってな」
オッサンはそれだけを言って、頬杖をついてそっぽを向く。
早苗「朋也さん」
早苗さんが話を引き継いだ。
68:
早苗「渚は、もう一年、三年生をやることになるかもしれないです」
朋也「え…」
朋也「それは…卒業できないって…ことですか…」
早苗「はい、このままだと」
俺はそこまで頭が回っていなかった。
ただ、本当に回復するのを待ち続けていただけなのだ。
今更自分を馬鹿だと思った。
朋也「………」
早苗「先生は中退して、療養に専念すべきじゃないかと、言ってくれました」
早苗「学業がすべてじゃないですから」
早苗「わたしたちも、学歴になんてこだわりません」
早苗「すべてはあの子の意志に任せたいと思います」
早苗「だからもし、あの子が卒業できなくても…」
早苗「そこでどんな選択をしようとも…」
早苗「朋也さんは、受け入れてあげてくださいね」
朋也「………」
69:
朋也「嫌だ…」
早苗「え…?」
朋也「嫌だって言ったんです」
朋也「俺はあいつと卒業したい。それ以外は嫌なんです」
秋生「わがまま言うな、馬鹿」
秋生「てめぇなんかより、本人のほうがよっぽど辛ぇんだ」
早苗「朋也さんの気持ちはよくわかります」
早苗「朋也さんは、この半年、ずっと渚のそばに居てくれた人です」
早苗「とても、深い絆が生まれたんだと思います」
早苗「だから、一緒に卒業できないこと、その辛さはよくわかります」
秋生「てめぇ、だから、本人のほうが辛ぇって言ってんだろ、馬鹿」
早苗「いえ、秋生さん。同じぐらい辛いんだと思いますよ」
秋生「ちっ、なら一緒にダブっちまえ、馬鹿」
早苗「秋生さん、まだ渚は卒業できないと決まったわけではないですよ」
秋生「ああ、そうだな。わりぃ」
71:
早苗「朋也さん。まだいいです。でも、ゆっくりでもいいですから、考えていってください」
早苗「そんな日が来るかもしれない、ということを」
朋也「………」
わかっている。目の前のふたりは、渚にとって最高の両親だ。
そのふたりが、間違ったことを考えるはずがない。
俺ひとりが子供なんだ。
だったら、今は素直に返事をするしかなかった。
朋也「…はい」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
11月になると、突然肌寒くなった。
俺は風をこじらせ、それを移すまいと、しばらく渚に会わないようにした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
12月もあっという間に過ぎ去ろうとしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――坂の下
けど、クリスマスだけは…と、忙しく過ぎる時間の中で、俺は足を止めていた。
恋人同士には、特別な日だ。
そして、俺には、その恋人…渚の誕生日でもあった。
とてもとても大切な日だ。
こんな日だけは、どうかゆっくりと、時間が流れてほしい。
73:
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――渚自室
渚の部屋で、ささやかなパーティーをした。
俺、渚、早苗さん、オッサンに加え、演劇部のメンバーや、SOS団、それに、軽音部の連中と一緒に宮沢まで来てくれた。
早苗さんが作ってくれたケーキは、十九本のろうそくともみの木が立ち並ぶ、クリスマスケーキとバースデイケーキを兼ねたものだった。
その火を渚が吹いて消した。
渚は一口だけ食べて、残りをみんなで食べた。
その後、各自持ち寄ったプレゼントを渚に渡す。軽音部の連中は、新曲を披露してくれた。
時を刻む唄、という曲名らしい。まだ未完らしく、曲の長さが1分半程度だったが、いい曲に思えた。
聞いていたみんなも、同意見のようだった。
俺はというと、おもちゃ屋を何件も回って見つけだした、だんご大家族の大きなぬいぐるみを渚にプレゼントした。
喜んだ後、渚は、みんなに返すものがないと言って、落ち込んだ。
でも、早苗さんがだんご大家族の歌を歌いだすと、渚も笑顔で歌い出した。
いつしかみんなで、だんご大家族の歌を合唱していた。
渚は本当に楽しそうに歌っていた。
歌い終わった後、渚はみんなに礼を言って…
そして泣いた。
渚「ありがとうございます、みなさん…」
渚「こんなわたしのために…」
秋生「こんな、じゃねぇ。渚、てめぇは俺たちの大事な家族なんだよ」
秋生「おまえが幸せになれば、俺たちも幸せになれらぁ」
秋生「だから、幸せになれ、渚」
秋生「誰よりもな」
75:
渚「はい、がんばります」
涙を拭いて、頷いた。
秋生「よしっ」
その数時間前には…
渚の留年が決定していたのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1月、2月も療養に費やした。
体を動かさなければ、平熱を保てる状態にまで落ち着いた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――渚自室
ふたりで、窓から初雪も見た。
風邪を引かないようにと、その体を後ろから抱きながら。
小さくて弱い存在。
それでも、頑張り続ける存在。
ずっと、守っていきたいと思った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――校門
3月。
まだ冷たい風が吹く日。
卒業式が行われた。
77:
朋也「なあ、春原」
春原「あん?」
朋也「今から、窓ガラスをふたりで割って回らないか」
声「なにを物騒なこと言ってるんだ、岡崎」
朋也「キョン…」
キョン「なんだ? 俺だけのけ者にして、悪だくみ中か?」
朋也「いや、おまえはせっかく、涼宮と同じいい大学に受かったから、悪いと思ってな」
春原「つーか、なんでそんなことすんだよ」
朋也「いや、そうすれば、留年するかなって、さ」
春原「留年じゃなくて、退学な」
朋也「そっか…だったら意味ねぇな」
キョン(古河さんのことを考えて…だろうな…)
春原「……?」
その日、俺は卒業した。
大切なものを、残したままで。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――古河パン前
78:
渚「卒業おめでとうございます」
表で、渚が待っていた。
初めてデートした時のお気に入りの服を着て。
朋也「馬鹿、こんな風が冷たい日にでるんじゃねぇよ」
渚「本当は、校門まで行きたかったです」
朋也「体力つけてからにしてくれ」
渚「見たかったんです、どうしても」
渚「朋也くんの…最後の学生服姿」
朋也「………」
朋也「そっか…」
朋也「そうだよな…」
朋也「なぁ、渚…」
渚「はい」
朋也「俺、卒業しちまった」
朋也「二度と、あの学校には戻れなくなったんだ」
朋也「二度と、叶えられなくなったんだ」
79:
昔の幸村じーさんを見たい
80:
朋也「手をつないでさ…校内を歩くこと」
朋也「他にもさ、いっぱいやりたいことあったんだ」
朋也「春だけじゃなくて、夏も、秋も、冬もさ…」
朋也「どんな時もさ、おまえとふたりで過ごしたかったんだ」
朋也「おまえとの思い出、たくさん作りたかったんだ」
朋也「学校なんて、大嫌いだったけどさ…」
朋也「おまえとなら、いつまでだって過ごしていたいと思ったんだ」
朋也「そんなこと思うなんてさ…思わなかった」
朋也「ずっと腐ったような学生生活を続けてきて…」
朋也「それでも、おまえと過ごした一ヶ月だけはさ…」
朋也「…楽しかったんだ」
なぜだか、視界が揺らいで…仕方がなかった。
俺は顔を伏せた。
朋也「幸せだったんだ…」
朋也「ずっと過ごしていたい…」
朋也「おまえと、あの大嫌いな学校でずっと過ごしていたい…」
81:
堪えきれず、涙が頬を伝い始めた。
朋也「な、渚…」
朋也「俺は…そうしたかったんだ…」
朋也「そう…」
涙声になって…聞き取れないような声で…俺は喋り続けた。
朋也「なのに…」
朋也「俺はもう…」
もう…
朋也「………」
…言葉が出なかった。
代わりに涙が、とめどなくあふれ出た。
ぽたぽたと地面に落ち続けていた。
子供のように、俺は泣き続けた。
渚「朋也くん」
朋也「………」
渚「朋也くん」
83:
朋也「なんだよ…」
渚「手をつないでもいいですか」
朋也「なんでだよ…」
渚「歩きたいです」
渚「朋也くんと、手をつないで歩きたいです」
朋也「やめとけよ…また熱…ぶり返すぞ…」
渚「大丈夫です。ちょっとだけです」
渚「いいですか」
朋也「………」
朋也「…好きにしろよ」
渚「はい。好きにします」
俺の手より冷たい手。
それが俺の手をぐっと握った。
渚「歩きましょう、朋也くん」
俺の泣きぬれた顔を笑いもせずに…穏やかな顔で、そう渚は言った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
85:
俺たちは歩いた。
春の光の中を。
ゆっくりと、ゆっくりと。
ずっと手をつないで。
渚の小さな手が、愛おしくて…仕方がなかった。
渚が、好きで好きで、仕方がなかった。
俺は…立ち止まってしまった。
朋也「俺もやっぱり… 留年するべきだったんだ…」
渚「違います、朋也くん」
渚「そんなことで足を止めたらダメです」
渚「がんばれるなら、がんばるべきなんです」
渚「進めるなら、前に進むべきなんです」
渚「朋也くんは、進んでください」
朋也「………」
87:
朋也「…渚は、強くなったな」
渚「はい」
渚「だから、わたしは…」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
渚「もう一年がんばります」
朋也「そうか…」
朋也「そう決めたのか、渚は」
渚「はい。決めました」
俺のいない学校で渚は大丈夫だろうか。
さらなるハンデを背負って。
また、あの坂の下で、立ち止まってしまわないだろうか。
俺がその背を押してやらなくて大丈夫だろうか。
登っていけるだろうか。
歩いていけるだろうか。
………。
89:
………。
でも、ずっと頑張り続けて…。
そして、最後にはやり遂げたこいつだったから…
きっと、登っていける…
その先へ、歩いていける。
朋也「渚」
俺はその細い肩を抱きしめた。
朋也「俺、ずっと待ってるから…」
そして、
朋也「頑張れ…」
励ました。
渚「はい、がんばります」
今度は立ち止まることなく…歩きたかった。
どこまでも、どこまでも。
ずっと続く、坂道でも…
92:
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ふたりで。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
95:
おつ
108:
3日間乙
11

続き・詳細・画像をみる


三洋電機グループ消滅のお知らせ…最後の1社がパナから投資ファンドに売却される

誕生日すぎちゃったけどって言いつつ、夫が外食に連れて行ってくれた。

【衝撃】20歳の女子大生がいちいち張り合ったり悪口言ってくるんだけど・・・マジなんなの・・・

小学校教師「コーラに骨を漬けると溶けるぞwwww」 

お前らパチンカスはウシジマ君読め

【サッカー】 U22代表9―0ミャンマー 鈴木・中島ともに4点目

【画像あり】昭和のコミケのオタクwwwww

錦織圭の海外での二つ名wwwwwwwwwww

右折禁止なのに俺の後ろでクラクション鳴らす右折車両に言ってやった

【野球】巨人 松坂を獲らなくて正解だった

少年サッカーチームの監督による酷い体罰を捉えた衝撃映像がアップされて炎上

30代後半以上のテレビの黄金時代を知る世代と、10代から20代の若者とのギャップ

back 過去ログ 削除依頼&連絡先