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輿水幸子「世界一カワイイボクの普通の日常」


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1:
幸子「ふぅ……仕事も増えてきてボクのかわいさをようやく世間が理解してきたけれど」
幸子「毎日が忙しくなってきたなぁ……」
幸子「……そうだ! 日記を書いてみようかな」
幸子「どんな仕事をしたのか、ボクがどれだけかわいかったのか」
幸子「それがわかりやすくふりかえれるように。うん、我ながら名案かも」
幸子「流石はボクだよね!」
幸子「……」
幸子「一人でやってないで、どんなこと書くか決めていこう」
2:
幸子「そうだなぁ……まずは今日の出来事から書いていこうかな?」
幸子「んーっと、7月11日……」
―――
☆ 7月 11日 晴れ
ボクの記念すべき初日記の日。
今日は割と普段通りの一日だったと思う。
朝起きて、顔を洗って―――
4:
時計『にょわー! おっきろー! あさだよー☆ きらりんパワー☆ で今日も一日がんばるにぃ! にょわー!』
幸子「んん……う、うるさ……」
時計『にょわー! おっき』バチッ
幸子「……ふわぁ。この目覚まし本気で売る気なのかな」
時計『……』
幸子「……どうせならボクの時計とか……うーん、でもボクの声だと落ちついて眠くなっちゃうかな?」
幸子「なんてね……顔洗ってこよう……」フラフラ
幸子「んー、ちょっとだけねむ……」
幸子「おっといけない。キチンとしてないと」
幸子「家の中でもちゃんとカワイイ振る舞いをしなきゃね」
8:
幸子「……ん」パシャッ
幸子「ふぅ……」フキフキ
幸子「よし。今日もボクはカワイイぞ」
幸子「……再確認するほどのことでもないけれど」
顔を洗ったあと、ちゃんとカワイイっていってあげることにしてる。
自己催眠とか、そういうのも意識はしている。
たとえば綺麗になぁれって言い続けた花は本当に綺麗に咲く……らしい。
まぁ、これは聞いた話なんだけれど。
おっと、話がそれた。ボクが読むだけだけどキチンと整えて書かなきゃね。
カワイイっていってあげるのは意識を持つためだ。
カワイイ人はちゃんとカワイイ振る舞いをする責任があると思う。
ノブレス・オブリージュ? 高貴なる者の振る舞いっていう言葉があるけどそれみたいなもの。
……うん、ボクのかわいさはちゃんと自覚しないといけないよね。
11:
――
幸子「それから……うーんと、事務所にいって……」
幸子「ふんふんふーん♪」
カリカリカリ……
―――
そのあと事務所について、その日のお仕事についてのお話をした。
ボクのお仕事はアイドル。
カワイイボクにぴったりだと思う。
なんていったって人に見られることを意識しないといけないんだから。
まぁ、誰もみていなくてもカワイイのがボクなんだけど?
……なんてね
13:
幸子「おはようございます。……あれ?」
ちひろ「おはよう、幸子ちゃん。……どうしたの?」
幸子「いえ、今日はちひろさん一人なんですか?」
ちひろ「うーん、もう少し後からの子が多いから。幸子ちゃんが一番早いかな?」
幸子「そうですか……」
ちひろ「……プロデューサーさんなら奥の仮眠室で寝てると思うよ?」
幸子「べ、べつに聞いてませんから。なんでそこでプロデューサーさんが出てくるんですか?」
ちひろ「うーん、女のカン……かしら」
幸子「だったら見当はずれもいいところです。ボクは別にプロデューサーさんのことなんてどうだっていいんですから」
ちひろ「そっかぁ、ごめんね幸子ちゃん」
幸子「……なんでニヤけてるんですか?」
ちひろ「なんでもなーいよ?」
16:
幸子「さて……ちひろさん。今日のお仕事なんですけれど」
ちひろ「今日のお仕事は……幸子ちゃんはショートライブとサイン会があるわね」
幸子「わかりました……どこでですか?」
ちひろ「割と近くなんだけど……はい」
幸子「なるほど……って、え? なんですかこれ」
ちひろ「自転車のキーよ?」
幸子「ちょっと待ってください。送ってくれないんですか?」
ちひろ「今日は私もプロデューサーさんも手がはなせなくて……ごめんね?」
幸子「だからってボクが自転車で移動だなんて……」
ちひろ「幸子ちゃんなら多少の無理ぐらい聞いてくれるかなーって思ったんだけど……だってできた子だしね!」
幸子「……はぁ。ボクがいくらカワイイからって無茶ぶりするのはどうかと思いますよ」
ちひろ「きゃーさっちゃんかっわいー!」
幸子「からかわないでください。……仕方ないなぁ、地図もらえますか?」
20:
ちひろ「はいこれ。自転車は下の駐車場にあるやつね?」
幸子「はいはい……それじゃ、いってきます」
ちひろ「いってらっしゃーい」
幸子「……本当に忙しいんですか? ちひろさん」
ちひろ「えーっ、すごくいそがしくて大変なのよ?」
幸子「やれやれ……もう。深くは聞きませんけどね」
ちひろ「うん。そうそうスタミナドリンクいる?」
幸子「また怪しげなものを作って……結構です。いってきますね」
ちひろ「はーい。それじゃあがんばってね!」
ちひろさんは時々よくわからないドリンクを作る。
基本的にはいい人なんだと思うんだけど……うーん、あの趣味はどうなんだろう?
はっきりいってすごくまずい。ちょっとだけ涙が出そうになった時もあったぐらいだ。
あと、ボク達の事務所はたぶん職員の数が足りてない。
プロデューサーさんに街で才能がありそうな女の子に片っ端から声をかける癖があるせいだ。
……まぁ、ボクのことを見つけてくれたわけだし、そこまで悪い気はしないけど。
それでも、もう少し計画性を持ってほしい。ボクはカワイイだけじゃなくて優しいから許してあげるけど
21:
――
幸子「……っと。この部分消しておこうかな」
幸子「まるでボクがプロデューサーさんのことを気にしているみたいになっちゃうしね」
幸子「……ま、まぁ嫌いじゃないけど。さて続き続き……」
カリカリカリカリ……
―――
そのあと、仕事場に向かった。
サイン会の場所では既に行列ができていて、ボクの人気を再認識した……と思ったんだけど。
ちょっとばかり忌々しい。いや、別にボクがちょっとだけ手加減してあげただけなんだけれど……
うん、そう。近くでサイン会をしてた双葉杏。彼女にちょっとだけ同情してあげただけなんだ。
だからボクは負けてないし悪くない。
22:
幸子「ふぅ……暑かった……」
幸子「プロデューサーさんもちひろさんも、ボクが優しいから許してあげてるけどこんなことはやめてもらいたいなぁ」
ウィーン
幸子「あー、涼しい……あれ?」
ガヤガヤガヤ……
幸子「もうこんなに人が……やれやれ、ボクのサインが楽しみでしょうがない人たちかな?」
幸子「カワイイっていうのも楽じゃないなぁ、まったく」
幸子「はいはい、どいてください。通れないと準備もできないじゃないですか……」グイグイ
男「あぁん? なんだあんた」
幸子「なんだ、ってボクですよ?」
男「しらねーよ! 横入りしようとすんじゃねぇ!」
幸子「ひっ……な、なんなんですか! ボクは……」
26:
警備員「はい、なにやってるんですかー」
男「このガキが横入りしようとしてよぉ」
幸子「何いってるんですか! 主役はボクですよ?」
男「主役ぅ? なにいってんだ、今日ここでやるイベントっていったら3階の双葉杏ちゃんサイン会だろうが」
幸子「……えっ?」
男「ファンだったらマナーは守らねぇといけねえだろ。な?」
幸子「この階でやる……ボクのサイン会は……」
男「ん? この階……あぁ、そういえば別のアイドルのサイン会もやるんだっけか」
幸子「……」
男「ひょっとしてあんた……」
幸子「もういいです。ふーんだ! あなたにはボクのサイン、土下座したってあげませんからね!」
男「ちょ、ちょっとまて。すまんかった知らなくてだな……」
幸子「いいからどいてください! ボクはボクのファンの人のために準備しないといけませんから!」
29:
幸子「……ふぅ。まったく……失礼しちゃうなぁ」
幸子「ボクのことを知らないなんてあの人もかわいそうに。顔も覚えたし謝ったって許してあげないんだから」
幸子「さーて準備準備っと」
結論からいえば、ボクのサイン会にはほとんど人が来なかった。
たぶん、暑さのせいで熱中症になってしまったりしたファンの人が大勢いたはずだ。
ボクのファンの人達は健康管理もきちんとできるから、予防のために外出を控えたのかもしれない。
……とにかく、ボクのサイン会にはあまり人が来なかったけれどそれはボクのせいじゃない。
きっと、双葉杏のサイン会に並んでいる人達が多すぎてボクのサインがもらえる場所がどこかわからなかったんだ。
まったく、ボクが本気を出していたらその双葉杏ファンまで奪ってしまうから本気を出さなかったけれど……
同じ日に近くでサイン会だなんて嫌がらせなのかもしれない。ボクがかわいすぎて目が出ないように?
カワイイっていうのも疲れる。業界全体が敵なのかもしれない……
幸子「……ファンの人、まだかなぁ。今なら特別に握手ぐらいしてあげても……」
……カツカツカツ
幸子「誰か来た! ふふん、遅れてくるだなんてまったくもうしょうがない人……」
男「あの……さっきはすまなかったな。謝ろうと思って……」
幸子「なんであなたなんですかぁ!」
34:
――
幸子「……それにこの時は暑い中を自転車で移動したから汗かいてたし」
幸子「そもそもボクをちゃんと送ってくれなかったプロデューサーさんも悪い。あそこでもめたせいで変にめだったし」
幸子「うん、ボクが悪いわけじゃないよね」
幸子「それから、えーっと……」
カリカリカリ……
―――
そのあとのショートライブでは、何故か双葉杏と一緒にやることになった。
同じアイドルなのだから……っていう短絡的な考えからなのかな。まったくもっていい迷惑だ。
双葉杏……働きたくないなんていっている色モノアイドル。
ボクが本気を出したらファンを全員奪ってしまいかねないから花を持たせてあげたけど……
働きたくない、なんていってるくせにパフォーマンスはしっかりしてた。
やっぱりキャラなんじゃないのかな。確かに動きは小さかったけど……
……そもそも身体も小さかったなぁ。ボクより小さい人ってあんまりいないのに。
35:
杏「やー、みんなー。働きたくないかー!」
\働きたくなーい!/
杏「よーし、私もだ! だから帰ってもいいよねー?」
\えーっ!?/
杏「……ですよねー。わかってたよ、うん……じゃあ歌ってあげよう!」
\ワーッ!/
杏「聞いてください。そしてついでにCD買って印税生活の助けになってね!」
杏「あんずのうた!」
\メーデーメーデメーデー! メメメメーデー!/
幸子「……あれが双葉杏かぁ」
幸子「……観客のほうが歌ってないかな? あれ。あれでいいの?」
40:
幸子「……でも盛り上がってる。あれもパフォーマンスってことかな……でも……」
杏「……あー、疲れた……次のステージやるのってあんただよね?」
幸子「えっ? あれ、歌……」
杏「よーし、いいからこっち!」
幸子「ま、待って! ボクは……」
杏「いっつぁ、カエダーマ作戦! どうぞ!」
幸子「えっ、あっ……こほん」
幸子「愛も 夢も 全部♪」
\キラキラ!/
幸子「届け!キミの元へ♪」
\Fu-Fu-!/
幸子「靴紐結んだら……全力ダーッシュ!」
\GO!/
幸子(すごい……ファンの息がここまでぴったりだなんて……少しぐらい認めてあげてもいいかも……)
44:
杏「はいっ。いっしょにー。歌詞こっちで」
幸子「えっ? ちょっと……」
杏「愛も夢も全部ー♪」
幸子「ふとんにつま……えっ!?」
杏「ほらほら、もっとキリキリ歌ってもらわなきゃ私が口パクで乗り切る作戦がうまくいかないでしょ?」
幸子「えっ、ええぇぇっ!?」
杏「まくらぎぬゅっーとしたら♪」
幸子(こうなったらもう……ヤケだ! 歌えばいいんでしょう、歌えば!)
幸子「全力ダーイブ!」
\おやすみー!/
――

杏「いい歌いっぷりだったね……そうだ!」
杏「ここから先のパフォーマンスはキミにもつきあってもらおう!」
幸子「ちょっと待ってください、ボクだってまだ……」
杏「ほら、私も手伝うから、たぶん」
46:
幸子「ちょっと、手伝うって……」
杏「ステージの端っこで寝てることにする」
幸子「手伝う気ありませんよね?」
杏「ううん。ほら……座敷童子みたいな。私がいるだけで十分だと思わない?」
幸子「思いません! だいたいボクのライブはボクだけでも十分です」
杏「そう? それなら私さっさと帰って寝ちゃうけど……」
幸子「それで結構です!」
杏「そっか……うん、カエダーマ作戦への協力ありがとう。報酬だよ、とっといて」
幸子「……飴?」
杏「特別だよ。……がんばってね」
幸子「がんばるって……」
杏「さぁ、次の曲で私の出番は終わり。帰るからねー!」
\えーっ!/
52:
結局、ボクは双葉杏のライブに途中からゲスト参加する形になったわけだけど。
すごい盛り上がりっぷりだった。ボクが知らないような……会場が沸き立つような。
そして、双葉杏ショートライブが終わってボクの単独ステージになった時。
ある程度はお客さんが残っていたのに……さっきまでとの違いを嫌ってほど肌で感じた。
ボクのランクが低かったから? 彼女のランクが高いから?
それだけじゃない、もっと強烈な差を感じてしまった。くやしかった。
ボクのほうがカワイイのに。ボクが本気を出せばあんなの簡単に……
―――
幸子「……本気を、だせば……」
幸子「ボクは……」
幸子「あぁもう、日記なんてやめた!」
幸子「ふんだ。今日はちょっと体調が悪かっただけで……」
幸子「それに、暑くて……気分も乗らなくて……」
54:
幸子「……」
幸子「……うぅ」
幸子「……悔しい……」
幸子「悔しい、悔しいよぉ……ボクだって、みんながわかんないところでがんばってるのに……!」
幸子「なんで、あんな……働きたくない、なんてふざけたこと言ってるのに……」
幸子「……なんで、ボクのところにはサインを欲しがる人も来なかったのかな……」
幸子「ボクだって、ボクだって……!」
幸子「うぅぅぅ……」
幸子「……もう、寝よう。今日はきっと日が悪かったんだ」
幸子「ボクは……」
58:
時計『にょわー! おっきろー! あさだよー☆』
幸子「……ん」バシッ
時計『にょわっ』
幸子「……今日は早起きしなくてもよかったんだっけ」
幸子「……眠いなぁ……顔、洗ってこよう……」
幸子「……このままじゃ、カワイイ顔も台無しだし、ね……なんて」
幸子「……あはは……」
幸子「……」フラフラ
幸子「……ん」
幸子「……」パシャパシャ
幸子「あと、ケアと……えっと……」
63:
幸子「今日は……学校行く気にもなれないや」
幸子「家にいてもヒマだろうしちょっと街でもぶらつこうかな……」
幸子「……」
幸子「まるで不良……だよね。ボク、割とマジメなほうだったと思ってたんだけどなぁ」
幸子「あはは……はぁ」
幸子「じゃあ着替えて……っと……」
幸子「……いってきます」
幸子「……って、学校にいくわけじゃないしまだ二人とも起きてないだろうけど」
幸子「帰ってきたら、怒られるかな?」
67:
☆ 街中
幸子「……」
TV『今こそ知りたい! 注目新人アイドルたちのパフォーマンスはこのあと!』
雑誌『アイドルデビューを目指すあなたへの10のステップ』
幸子「……改めて見てみると、本当にアイドルって多いんだよなぁ」
幸子「ボクが一番、カワイイ……けど……」
幸子「……」
幸子「なんちゃって、ね。はぁ……どうしようかな……」
幸子「ボクが一番カワイイって証明してくれるって、プロデューサーさん……いってくれたのに……」
ドンッ
幸子「あっ、すいませ……ん……?」
P「……っつぅ……こちらこそ……って、あ?」
68:
幸子「……プロデューサーさん。どうしたんですか? こんな街中で」
P「幸子こそどうした? 今日は学校じゃなかったのか?」
幸子「別に……どうだっていいでしょう?」
P「いや、だが……」
幸子「……あぁ、プロデューサーさんはひょっとしてまた新人アイドル候補でも探してたんですか?」
P「なに?」
幸子「だってそうでしょう? 他に誰かを連れてるわけでもないようですし、一人で街をうろつくなんてヒマだとしか思えません」
P「幸子……お前……」
幸子「いいんじゃないですか? 才能ある人を探してプロデュースしてあげれば!」
P「お、おい?」
幸子「ボクみたいなハンパものよりずっと素敵な人、見つけれるといいですね!」
P「待て、幸子! 話を聞け!」
幸子「うるさい! ボクに触らないでください!」
71:
P「どうしたんだ? 昨日のことなら……」
幸子「……聞いたんですか。笑えますよね? ファンの人は来ない、ライブは前の惰性で見ている人ばかり」
P「……すまなかった。まさか双葉杏のイベントが被っていると思わなかったんだ」
幸子「いいんです、別に。あんなふざけた相手に勝てないんじゃボクに才能は無かったってことでしょうから」
P「……なに?」
幸子「だってそうでしょう? 働きたくないなんていってる相手に全面的に負けたんですよ!?」
P「幸子、それは違う」
幸子「なにが違うっていうんですか!」
P「お前のファンが来なかったのは俺の責任だ」
幸子「……なんですって?」
75:
幸子「どういう意味ですか?」
P「……俺が、広告を打つ量を間違えた」
幸子「……」
P「もっと幸子のファンが気付けるようにしてやるべきだったんだ。アウェーじゃ実力は発揮できない」
幸子「そんなの……アウェーとかホームとか。それ以前にやる気が無い相手に負けたんですよ?」
P「違う。双葉杏は特殊なんだ」
幸子「特殊? なにがですか?」
P「元々のパフォーマンスは高いのにやる気がないことに対してあまりにも投げやりなだけなんだ」
幸子「……働きたくない、っていってましたよ?」
P「ライブの最中は、口でなんて言っていようと100%の力を出しているよ。働かないけど投げ出さないのが信念らしくてな」
幸子「……でも、負けは負けです」
P「……」
幸子「もうダメなんだと思っちゃったんですよ……ボクじゃ、勝てないって」
78:
P「幸子……」
幸子「ボクが世界一カワイイって、証明してくれるって言いましたけれど……もう、疲れちゃいました」
P「……そうか」
幸子「ふふっ、カワイイボクを最後までプロデュースできなくて残念でしたね……プロデューサーさん」
P「なぁ、幸子」
幸子「なんですか?」
P「……最後に、ショッピングでもしないか?」
幸子「ショッピング……?」
P「あぁ、もちろん奢るぞ?」
幸子「……ふふっ、いいですね。これまで散々ほったらかしにされたんだからその分の迷惑料ってことで納得してあげます」
P「よし、じゃあいこう」
81:
幸子「あっ、あれもいいなぁ……んー、でもこっちもいいし……」
P「じゃあ両方買うか?」
幸子「えっ?」
P「だって両方似合うしな。奢るっていったろ?」
幸子「……まぁ、ボクがカワイイから仕方ないですね」
P「だな。幸子はかわいいよ」
幸子「……」
P「ん?」
幸子「なんでもありません。次いきましょう」
82:
幸子「プロデューサーさん。こっちとこっちならどっちが似合いますか?」
P「両方似合ってるな。買おう」
幸子「……まじめに考えてますか?」
P「あぁ、真剣だぞ?」
幸子「ふざけているようにしかとれませんよ? まったく……」
P「幸子がかわいいからだって」
幸子「……また」
P「ん?」
幸子「イヤミのつもりですか?」
P「なんのことだ?」
85:
幸子「ボクがもうやめるっていったから、いまさらカワイイっていって取り繕おうっていうんでしょう?」
P「……」
幸子「無駄ですよ。だいたい残ったところでボクには無理だって思っちゃいましたし……」
P「それは違う」
幸子「違う? なにがですか?」
P「俺が幸子のことをかわいいって思ったのは本音だ。トップアイドルになれるって思ってスカウトだってしたんだ」
幸子「……無理だったじゃないですか」
P「いや、幸子ならまだできるはずだって思ってる」
幸子「……ふざけないでください。いまさらすぎます」
P「幸子なら……一人でも成長していってくれると思ってたんだ」
幸子「都合がいいんですね……ここからはレッスンするからレッスン料払え、とでもいう気ですか?」
88:
P「そんなことはない! 俺はただ……」
幸子「……」
P「ただ……」
幸子「そこで言葉が続かなくなっちゃうんですね?」
P「幸子を、トップアイドルにしたかった」
幸子「その割にはボクにはついてくれなかったじゃないですか」
P「それは……いまさらなんだろうけど。これのためだったんだ」ピラッ
幸子「これって……オーディション?」
P「幸子にぴったりの役柄のはずだ。ファンの獲得のためにも勝たなきゃいけなかった」
幸子「これを探してたからボクをほったらかしにしてた? ふざけないでください」
P「あぁ、本末転倒だと俺も思うよ」
91:
幸子「それに……ボクよりもずっとすごい人達も出るでしょう? ボクが受けられるかどうかすら怪しい規模じゃないですか」
P「そこをねじ込んだ。幸子なら絶対にいけるって思ったんだ」
幸子「無理です。今のボクにはそんなこと……」
P「幸子。お前が俺に初めて会った時……お前は自分のことをカワイイっていってはばからなかった」
幸子「まぁ、そうですね……」
P「……最近、自信が無くなっているようだった」
幸子「そんなことありませんよ。ボクはボクです」
P「俺はな、幸子……自信過剰で、その理想像へ向けて裏でストイックにがんばってるお前のことが大好きだ」
幸子「……がんばってる? そんなことしてませんよ。ボクのかわいさは生まれつきですから」
P「だけど、そのせいでお前の本来の魅力が損なわれるのが惜しいんだ!」
幸子「……本来の魅力?」
P「あぁ、大人びたように思わせておいてふと見せるあどけなさ……天然のかわいい成分だよ」
幸子「そんなの、演技です」
92:
P「違う。今日のショッピングで確信した……幸子、お前はまだやれるはずなんだ」
幸子「まだ……やれると、本気で思ってるんですか?」
P「やれる。幸子、お前はかわいいんだ……自信を持ってくれ。それで、また……」
幸子「また?」
P「……証明させてくれ、お前のかわいさを」
幸子「……そこまで頼まれたらちょっとは考えてあげてもいいですけど」
P「本当か!?」
幸子「考えてあげるだけですよ? このオーディションだって……今のままじゃ勝てる気がしません」
P「そこについては考えがあるんだ」
幸子「考え……?」
P「あぁ、俺と定期的にショッピングに来てくれ!」
幸子「はい?」
93:
P「幸子の本当のかわいさはふとした所作に現れてるんだ」
幸子「はぁ……確かにそういってましたね」
P「だから、そこを意識することで自分の魅力を認識し直してもらいたい」
幸子「ボクの魅力を……認識しなおす……?」
P「あぁ。他の誰に言われようと、なにが起ころうと揺るがない……『自称・カワイイ』を極めてほしいんだ」
幸子「……それ、言葉の響きとしては最悪ですけれど」
P「それでも揺るがない、絶対的な自信。それさえあれば幸子はまだまだ上を目指せる!」
幸子「……まじめな話ですよね?」
P「あぁ」
幸子「『自称・カワイイ』ですか……そんなもの、自称しなくたって……」
P「ん?」
幸子「……ボクがカワイイなんて、世界の常識でしょう?」
P「うん、それだ……それでいい!」
95:
P「ただ、ずっとオンでいるのは疲れるだろうからそこらへんの切り替えも考えてみよう」
幸子「……これ、キャラだとでも思ってるんですか?」
P「違うのか?」
幸子「違いますよ……ほんの少しだけしおらしいふりをして、奢らせるっていう考えのもとに自信が無いフリしてただけですから」
P「そ、そうなのか!?」
幸子「えぇ、だから……」
P「ん?」
幸子「別に、感謝もしてませんよ。オーディションに勝てるかは別問題ですしね」
P「あぁ、そうだな……まずは勝てるかどうかだもんな」
幸子「……まぁボクにかかれば余裕ですね」
P「心強いなぁ」
96:
幸子「……そうですね、それじゃあまた」
P「また、ってどこいくんだ?」
幸子「今さらでしょうけれど、学校まで! ボクに会えなかった同級生たちもがっかりしてるでしょうからね」
P「なるほどな……送るか?」
幸子「結構です。歩きたい気分ですから」
P「わかった、気をつけろよ?」
幸子「もちろん。かわいすぎて犯罪に巻き込まれないよう細心の用心をしますよ」
P「じゃあ幸子、また明日」
幸子「……えぇ、また明日」
99:
―― 夜
幸子「……結局間に合わないし、怒られるし」
幸子「まったく、これならいかなくてもよかったかも……」
幸子「……なんて。まったく、プロデューサーさんは」
幸子「あっ、日記……」
幸子「……」
幸子「……うん」
カリカリカリカリ…
幸子「これでよし。寝ようかな」
―――
☆ 7月12日 晴れ
ボクのかわいさを全世界に認めさせる!
世界中の人が、ボクに出会えたことを感謝するぐらいにカワイイトップアイドルになってみせる!
ボクはきっとトップアイドルになって……プロデューサーさんは、イヌみたいに走り回ることになる!(はず)
だから……プロデューサーさんといっしょに、もう一度だけがんばろう
おわり
102:

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