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扶桑「耳かきを致しましょう」


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1:
<執務室>
カリカリ…
提督「……」ムスッ カリカリ
扶桑「……」カリカリ
扶桑「……あっ……」
提督「……」ムッスー カリカリ
扶桑「……」オロオロ
提督「……」ムカムカ カリカリ
2:
扶桑「あの、提督……?」
提督「……」
提督「……?」ギギギキ゛
提督「どうした?」グルッ
扶桑「ッ!」ビクッ
扶桑「こ、ここの数字が、その……」
提督「どれどれ? oh……隣の欄と混ざってるじゃないか。これは失礼……」カリカリ
提督「……これでどうだ」
扶桑「はい、確かに……ありがとうございます」
提督「いや……」ムスッ
扶桑「……」
3:
<昼時 食堂>
大・伊・長「「「提督の顔が怖い?」」」
扶桑「えぇ……」
伊勢「提督ってそんな強面キャラだっけ?」
扶桑「そうじゃなくて……最近、ずっと怖い表情でお仕事を……」
扶桑「提督に、何かあったのかと思って……」
長門「表情が怖いなどと……秘書艦がそれしきで動揺してどうする」
大和「何なら変わりましょうか?」ニヤリ
扶桑「ダメっ! 折角秘書艦の椅子を勝ち取ったのに!」
扶桑「……あ……///」カァァ
5:
伊勢「お熱いねぇ……んで、何か情報は?」
長門「…………そういえば……」
大和「心当たりがあるんですか?」
伊勢「何だかんだ言いつつ情報提供してくれる長門マジツンd」
長門「……」ゲシッ
伊勢「あぅっ!」
6:
長門「一昨日の午後の演習、三戦目が終わった後の事だ」
長門「提督は、桟橋で私の艦隊を待っていたんだ」
長門「そこまではいつもの事だったんだが……」
提督『…………………………』ムカムカ
提督『……チッ、あぁクソッ……』ムカムカ
伊勢「えっ……!?」
長門「一瞬だったからか、遠目だったからか、気付いたのは私だけだった様だが……」
長門「あの温厚な提督が、あんな顔で舌打ちを、まして悪態をつく様など初めて見た……」
伊勢「待って! 一昨日の午後の三戦目って言えば!」
長門「あぁ。練度も装備も格下の相手に、惨敗を喫した時だ……!」ギリッ
大和「しかも……その日の午前と合わせて四連敗目だった様な……」
扶桑「という事は、提督は不甲斐ない私達に怒りを……!?」
7:
伊勢「じゃ、じゃあ、そのうち……」
提督『チッ、使えない連中だ……』
提督『もう良い。貴様ら全員不要だ』
提督『この海域で、弾と燃料の続く限り戦ってこい』
提督『一体でも多く深海棲艦共を倒して、そこで沈め』
提督『二度とその顔を見せるな』
扶桑「いやああああっ!!」
長門「ま、待て待て待て! いくっ、いくらなんでもそそそそれは無い! 無いはずだ!」
大和「そっ、そうです! 提督に限ってそんな事は!」
8:
提督「俺が、どうかしたか?」スッ
「「「「ッ!?」」」」ビックゥ
提督「戦艦の皆が集まって、何か会議かな? 食事の時間くらい気を休めればいい」ムカムカ ニ゙ゴッ
扶桑「そそっ、そう、ですね!」
大和「お気遣い、かっ感謝します!」
提督「ははっ、そんなに畏まらなくても……じゃ!」スタスタ
伊勢「…………確かに、すっごいムカムカしてた……」
扶桑「やっぱり、何か怒って……」
大和「少し強引に笑顔を作ろうとしている様にも見えた様な……?」
9:
扶桑「……でも待って。演習の負け続きはそれまでで、その後の四戦目からは今まで勝ち続きよ?」
伊勢「じゃ、じゃあ私達に怒ってた訳ではないって事?」
長門「あくまで仮説だし、"演習では"なさそうというだけだがな」
大和「他に、他には何か手がかりは……」
10:
扶桑「……ハッ! もしかして、提督はお体が……」
長門「バカな! 仕事をしっかりこなしつつ、駆逐艦達の遊びにも付き合える程には元気な人だぞ!」
大和「でも、もしそれが私達に心配かけまいとして、苦痛を堪えていたとしたら……?」
伊勢「そしていずれ……」
提督『よーし! 今度はこっちから……ゴハッ!』
提督『ゲホッゴホッ……いや、何でもない……って言っても信じて貰えないか』
提督『隠しててすまない……俺は、実はもう長くないんだ』
提督『でも俺は、最後の瞬間まで提督として皆を……ぐふっ!』
提督『……ちっ、くしょう……ここまでか……』ガクッ
大和「ひぃぃいいいっ!」
長門「そんな……そんな事ってないぞ! あんまりだ!」
扶桑「そっ、そうよ! 前回の健康診断で、提督は健康体だった事は確認していたんだったわ!」
伊勢「ちょ、脅かさないでよ!」ドキドキ
大和「じ、自分で確認していながら、忘れていた、なんて……」ドキドキ
長門「ふっ、ふふふ扶桑は、うっかり屋さんだなぁ!」ドキドキ
扶桑「ごっ、ごめんなさい! 私ったら……」
12:
長門「しかし、怒りでも、病気でもない……他に何がある?」
大和「花粉症でくしゃみを我慢……いや、提督がくしゃみをしている所なんてよく見るし……」
伊勢「いや、案外こんな感じだったりして……」
提督『……』ムカムカ
提督『…………』ムカムカ
提督『………………』ムカムカ
扶桑『提督? どこか、お体が悪いのですか……?』
提督『なーんちゃってー! びっくりしたー!?』
提督『”意味深な事をして艦娘を心配させてみよう作戦”成功!』ジャーン!
提督『ほらカメラ向いて! はい、ドッキリ大成功!』テッテレー!
扶桑「……」ガコォン
伊勢「うわぁっ! 無言で砲向けるのやめて! 怖い!」
扶桑「あなたは……人が……本気で心配しているというのに……」ゴゴゴゴ
長門「お、落ち着け!」
大和「こんな所で撃ったら大変な事になりますよ!?」
伊勢(あれ、”撃つ所”の心配だけ!? ”撃たれる対象”は!?)
長門「きっと冗談だ! 伊勢流のジョークなのだ!」
伊勢「そ、そうそう! ちょっと暗い感じになって来てたから、盛り上げようと……」
扶桑「そう……つまり提督は、あなたにとって冗談程度の存在という事ね?」ズズズズズ
長門「いや、だからだな……」
13:
?
??
???
扶桑「ごめんなさい。取り乱して……」
伊勢「いや、こっちこそ、ごめん……」
長門「しかしどうする。このまま話していても埒が明かんぞ」
扶桑「えぇ……相談しておいてなんだけど、やっぱり直接聞くのが一番早いのかも……」
大和「まぁ、一番確実な方法ではありますよね」
長門「だが……」
伊勢「まぁ、秘書艦だしね。機会はいくらでもあるでしょ」
扶桑「……そうね。後で聞いてみるわ……」
14:
<夜 執務室>
扶桑(とは言ったものの……)
提督「……」カリカリ ムスッ
扶桑(お昼から未だに聞けずに、もう夜……)
扶桑(……いい加減、覚悟を決めないと!)
扶桑「て、てい、とく……?」ビクビク
提督「……」ムカムカ
提督「どうした」グルッ
扶桑「……ッ!」ビクッ
15:
扶桑(い、いけない……!)
扶桑「あの……その……」
提督「ん?」
扶桑「最近、提督が……難しい、お顔を……」
提督「えっ、そんな顔していたのか、俺?」
扶桑「え、えぇ……何か、あったのですか?」
扶桑「まさか、病気、なんてことは……」
提督「いや……あぁー……」
提督「まぁ、中らずと雖も遠からず、かな」
扶桑「っ!?」
16:
扶桑「で、ではもう、提督は……」フルフル…
提督「ま、待て待て! そんな大騒ぎする事じゃないんだ!」
提督「それに、そもそも病気ですらない!」
扶桑「えっ?」
提督「いや、ちょっとな……婦女子相手にこんな事言うのもなんだが……」
扶桑「はい……」
17:
提督「その、耳がな?」
扶桑「耳が、悪いのですか……?」
提督「いや、その……痒いんだ。もの凄く」
扶桑「…………へ?」
提督「だからつまりその、最近耳掃除してなくて……」
提督「人前で耳ほじる訳にも行かないからさ……」
提督「でも一人の時に限って痒みが収まって、そんな時は耳かきする気なんて起きないし……」
扶桑「では、提督は痒みを堪える為に、ずっと顔を……」
18:
提督「そういう事だ。すまんな、何か心配させた様で」
扶桑「いえ、そんな……」
扶桑(あぁ…………良かった……何でも、なくて……!)ウルッ
扶桑(……そうだ)
扶桑「提督」
提督「ん?」
扶桑「耳かきを致しましょう」
提督「……え?」
31:
扶桑「私が、提督の耳掃除を致します」スッ
提督「なんと。い、良いのか?」
扶桑「はい。日頃から、提督にはお世話になっていますから」フトンニセイザ
扶桑「さぁ、こちらへ……」ポンポン
提督「お、おぉ……では、お言葉に甘えて……」ポスッ
提督(膝枕……女性特有の柔らかさ……硬過ぎず、かといって弛んでもいない)
提督(綺麗な脚だ……良い匂いもする気がする」
扶桑「えっ!?///」
提督「あれっ!? い、いや何でもない!」
扶桑「は、はい……では失礼して……///」
32:
扶桑(かなり溜まっている……確かにこれは痒そう……)
扶桑「まず外側から行きます」
提督「頼む」
カサッ、パリパリパリッ
パリペリパリッ、パリッ
提督「う……うぉぉぉっ……」
提督(耳たぶの内側……早く中まで入ってほしいもどかしさと……)
提督(このままずっと掻いていてほしい気持ち良さ……)
提督(なんと、心地の良い板挟みか……)
カサッ、パリパリ
カリカリペリペリ
扶桑「痛くは、ありませんか?」
33:
扶桑「ふふっ……良かった……」
カサリカサリ、パサッパサッ
パリパリパリッ……
スーッ、ススーッ
扶桑(…………敵影なし。掃討完了……)
扶桑「ふぅ。ではそろそろ中をします」
扶桑「危ないので、なるべく頭を動かさないでくださいね」
提督「あぁ……わかった」
スイーッ……
カリッ、カリカリカリ
提督「ぉおぅ」ビクッ
扶桑「提督っ!? 痛かったですか?」
提督「いや、大丈夫……」
提督(やっぱり、人にしてもらった方が気持ちいいな……)
34:
カリコリ、コリコリッ
コリッ、カリッカリッ
提督(おぉ……耳の中が綺麗になって行くのが良く分かる……)
コリッコリッ、コリッ
カリュカリュッ、パリッ
扶桑「少し大きいものが……耳道に引っかかっていますね……」
カリカリッ…コリュッコリュッ
カリリッ、パリッペリッ
提督「んおっ……」
扶桑「どうかしましたか?」
35:
提督「それ、ずっと気になってたヤツだきっと」
扶桑「では、すぐに取ってしまいますね」
パリパリ、パリパリッ
ペリッペリッ
扶桑(よし、掬えた。後は落とさない様に……)
スーッ……
提督(異物が消えて行く……抜けたっ)
扶桑「ふぅー、取れましたよ」
提督「あぁ……スッキリだ……」
扶桑「では仕上げを……」
36:
??
???
扶桑「……ふぅ。これでこちらは完了です。反対側をしますので……」
提督「あぁ、わかった」ムクッ…
扶桑「あ、待ってください……」
提督「え?」
扶桑「お、起き上がらないで……そのまま転がって、良いですよ……?///」ドキドキ
提督(……マジか)
提督「では……お言葉に甘えて……」クルリ
扶桑「……っ!!///」ドキーン
提督(お、おおお……目の前に……)ドキドキ
39:
扶桑「すぅーっ、はぁーっ…………いざ」
グイッ
扶桑(……こちらの方が手強そう……本気でかからないと……)
ペリッ、ペリリッ
パリパリパリッ
扶桑(確か提督の利き手は……逆側だからかしら、取りにくいのかも……)
ピリピリ、ピリピリパリ
ペリペリ
ススーッ
扶桑「ふぅ。中を掻きます」
提督「安全運航でな」
扶桑「はい。心得ています」
スィーッ
40:
ミシッ、ミリミリ
ミリミリパリッ
提督「おぉ……ミリミリ言ってる。こんなの初めてだ」
扶桑「反対側に比べてかなり溜まっています。そのためでしょう」
提督「うわぁなんか恥ずかしい……」
ミシミシ、パリッパリッ
パリパリ……
コシュッコシュッ
スイーッ
扶桑「むっ……」
提督「何だ、何を見つけた?」
扶桑「大物です。必ず仕留めます」
提督「頼む」
42:
ゴソッ
ゴソゴソゴソ……
ゴシュッ
提督「音が重々しい……」
扶桑「鼓膜に近付いています。ここからは本当に危ないので……」
提督「あぁ……動かさない……」
提督(というか、気持ち良くて体が動かん……)
45:
ゴシュゴシュ……
ゴッ、グッグッ
ザッザッ、ガサッ
扶桑(あと、少し……)
ザッ、ザスッ
グッグッ、グッ
バリッ
提督「んおっ……!」
バリ、ビリ、バリバリバリ
ビッ
扶桑「……っと……えいっ……」
ススッ
ズボゥ……
扶桑「すーっ……はぁぁーっ……」
扶桑「取れました!」
提督「……おぉ……おぉぉぉ……」
49:
提督「なんじゃ、こりゃ……こんなモンが入ってたのか……」
扶桑「これからは、こんなに溜めてはダメですよ?」
提督「あぁ……分かっ……てる…………」
扶桑「それでは仕上げです」
フワッ
フワフワッ、モフモフッ
コシュコシュ
フワッ
ふぅーっ……
扶桑「……これでお終いです。お疲れ様でした」
提督「……zzz」
扶桑「ふふっ……」
扶桑「お休みなさい、提督」
52:
<翌朝 食堂>
提督「ようおはよう戦艦の皆! 今日も頼むぞ! ハハハッ!」ニコニコ
提督「おっ、電! ちと背が伸びたんじゃないか? 牛乳飲んでた甲斐あったな!」スタスタ
大・伊・長「……」
扶桑「ふふ……」モグモグ
伊勢「ねぇ、何したの……?」
長門「よもや、一晩でいきなりあぁなるとは……」
大和「結局、原因は何だったんですか?」
扶桑「……内緒」
伊勢「えぇーっ!?」
長門「お、おい。気になるじゃないか……」
大和「そうですよ! それに何か……う、羨ましい事が進行している気がします!」
扶桑(うっ……流石、鋭い……)
53:
扶桑「とにかく、何も悪くはなかったから、それだけは安心して」
長門「それは、まぁ良かったが……」
大和「むぅぅ……」
伊勢「ブーブー!」
扶桑(あれは、私の役目)
扶桑(私だけの特権)
扶桑(そしてあそこは)
扶桑(私だけの、特等席)
扶桑(だから)
扶桑(だからまた、また今度)
扶桑(…………♪)
このあと滅茶苦茶した
おわり
5

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