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キョン「海で遭難したわけだが」


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1:
焼け付くような太陽の日差し。
海風が潮の匂いを運んでくる。
俺たちは海のど真ん中にいた。
古泉の親戚……ということになってる機関の人の
南の島の別荘に、SOS団一同+鶴屋さんとで遊びにきていたのだ。
ハルヒ「見てっ! イルカよイルカ! 食えるかしら!」
みくる「わあ?。可愛いですね?」
鶴屋「わはは! 捕まえるのが大変そうだねっ!」
2:
クルーザーのデッキで長門は眩し過ぎるほどの照明の下で
分厚い小説か何かを読んでいる。
まったく、お前ら気楽でいいな。
今、リアルタイムで遭難してるってのに。
キョン「さて、どうしたもんかね」
古泉「ええ、まったく困ったものです」
お前まで緊張感の無いニヤケ面をするな。
3:
古泉「だって、以前雪山の洋館に閉じ込められた時も
 結局助かったではないですか。
 このような状況に我々を置いたのは、観測が目的でしょう。
 我々を始末したいなら、嵐でも起こせばいいのですから」
キョン「そう上手くいくかね、まったく」
長門が言うには、またあの天蓋領域とか言う連中の仕業らしい。
クルーザーを操縦していた多丸裕さんは突如行方不明。
おまけに故障したのかエンジンがかからない。で、遭難。
ほんと、くだらない嫌がらせをしてくれるもんだぜ。
てなわけで長門のインチキも使えないという、実にご都合主義な展開である。
4:
ハルヒ「ねー、これだけしかないの? 食べるもの。
 あたしはステーキとか食べたいのに!」
キョン「んなもんあるわけないだろ、贅沢言うな」
古泉「たとえ非常食でも、食べられるものがあるのは
 ありがたい事です」
いくら最近の非常食はそこそこ美味しくできてるからって、
こんなもんばっかり食ってたら飽きてくるぜ。
それにしてもこの海には、魚の一匹もカモメの一羽もいやしねえ。
イルカとクジラが遠くの方で泳いでるぐらいだが、あいつらは何食ってるんだ?
兵糧攻めかよ、まったく……。
5:
ハルヒ「あーもう、もっと頂戴! おかわり!」
キョン「ねえよ。食料は貴重なんだからよ」
鶴屋「ハルにゃん、あたしのわけてあげるよっ!」
みくる「あ、あたしのもどうぞ?」
キョン「だ、だめですよそんなの。
 ちゃんと食べないと、後で……」
ハルヒ「どうせそのうち助けが来るわよ。
 江戸っ子は宵越しの非常食を持たないのよ」
誰が江戸っ子だよ。
6:
さて、それから五日が過ぎた。
ハルヒ「あーもう……お腹すいたわね……」
キョン「……お前は他の人の分まで食ってたのに
 そんなこと言える立場かよ……」
長門「…………」
長門まで元気が無い。そういやこいつ食うのが好きだったな。
でも宇宙人のインターフェイスって食事する必要あるのか?
古泉「エネルギーを体外から取り入れる構造なのでしょう。
 なんせここでは情報統合思念体とコンタクトできないそうですから。
 長門さんもお腹が空くのでしょう」
7:
さらに三日が経過した。
とっくに食料は無くなり、雨水を利用した飲み水も
雨が降らないせいで、喉の渇きも限界だ。
ハルヒ「…………」
鶴屋「…………」
みくる「…………」
みんな喋る気力も無いわけで。
本気でやばいんじゃないか、これ。
キョン「長門……何か手はないか……」
長門「…………」
古泉「以前、雪山で我々がパズルを解いて脱出できたように、
 何か……何かヒントがあるはずです……」
8:
その翌日。
キョン「いやー美味い! ハルヒも食えよ」
ハルヒ「…………」
キョン「ほら、食えって。じゃんじゃん食え」
ハルヒ「鶴屋さんは、どこにいったの……」
キョン「さあ、泳いで帰ったんじゃないか?」
みくる「きっとそうですよ?」
古泉「食べないと餓死してしまいますよ、涼宮さん」
9:
ハルヒ「この肉……なんの肉?」
キョン「ああ。魚を取ってきてな。ほれ、美味いぞ」
ハルヒ「嘘! 道具も無しにどうやって……
 それにこれ……どう見たって動物の肉じゃない!」
などと意地を張って、どうしても食べようとしない。
どうしてだろうね、こんなに美味いのに。
15:
夜、ハルヒが厨房でなにやら探し物をしていた。
ハルヒ「あれは……あれは絶対……」
キョン「何してんだ、こんな夜中に」
ハルヒ「……! い、いえ、別に……」
キョン「見ちゃったのか……なあ?」
ハルヒ「な、なにも見てない! やだ……近寄らないで!」
キョン「鶴屋さんがどうなったか教えてほしいか?」
ハルヒ「いやああぁあぁあぁぁ!!」
翌日、ハルヒは『退場』していた。
17:
みくる「それにしても、ちょっと涼宮さんに申し訳ないですね。
 あたしたちだけ……」
キョン「まーいいんじゃないですか? こうやってメシに
 ありつけるのもハルヒのおかげだし、
 こんな場所にいるより、あいつだって
 退場できて喜んでますよ、きっと」
古泉「ええ、そうに違いありません。涼宮さんに感謝して
 今は美味しい食事をいただきましょう」
俺はパクパクとステーキを平らげる長門を眺めながら、
まだ新鮮な赤い液体を一気に飲み干した。
21:
それから二日後、よく食う長門のおかげで思ったより
早く『食料』を食い尽くした俺は、次に『退場』してもらう
人物を考える。
キョン「朝比奈さん……」
みくる「……はい」
キョン「もう、食料がなくなりました。
 ……次は、あなたです」
みくる「でも……あたし……まだ……」
キョン「あなたの体力じゃ、これ以上は……
 だから、あなたの番ですよ」
みくる「……わかりました」
そして、朝比奈さんは『退場』した
22:
キョン「いやー美味い。やっぱ新鮮な肉は最高だな
 それに脂肪分多くてジューシーだぜ」
古泉「本当は熟成させた方が美味なのですがね。
 まあこの気温なら腐ってしまいますが」
キョン「そういや腐りかけが美味いって言うよな
 ちょっと腐らせてみるか」
古泉「そんなことをしてたら、いつまでたっても戻れませんよ」
さて、その『食料』も三日で無くなった。
次は……
25:
古泉「あなたが、退場してください」
キョン「いや、お前だろ」
古泉「ここは僕が残るべきです、ですから」
キョン「俺が残る! ほら、さっさと退場しろ
 ごちゃごちゃ言うな、古泉!」
長門「……あなたより古泉一樹の方が、体力の消耗が大きい。
 退場するのは古泉一樹」
古泉「そんな、僕は…………わかりました」
キョン「じゃあな、古泉」
古泉「すぐ会えますよ、すぐね」
こうして古泉も『退場』した。
キョン「歯ごたえがあるっていうか、硬いっていうか。
 まあこれはこれで美味いけどよ、古泉」
27:
長門「…………」
それにしても食うの早いなお前は。
お前のおかげだぜ、早く戻れそうなのはさ。
え? 戻れるのかって? ああ、先に
鶴屋さん、ハルヒ、朝比奈さん、古泉には
戻ってもらったしな。おっと、あの世じゃないぞ。
キョン「長門、もっと食うか? 欲しいなら焼いてくるが」
長門「…………」
コクっと小さく頷く長門。
そうかそうか、食いたいか。
29:
俺は人間が一人入れるぐらいの小さな倉庫の扉を開ける。
そこにはパック詰めされた生肉と、ビン詰めのぶどうジュースが入っている。
え? 古泉の肉だろうって?
おいおい、そんなわけないだろう。人肉なんて死んでも食いたくない。
さて、これが何なのか説明しよう。
食料も水もとっくに尽き、これはもう死ぬだろうなと思ったとき、
この小さな倉庫に、以前にはなかった文字が刻まれているのを
発見したんだ。
31:
誰も態度変わってないのが怖い
32:
『――これは――フードファイト―― ――1人が現実に戻れば
 ――食料が与えられる―― ――それを全て――食べ尽くせば
 ――また1人が戻れる―― ――さあ―― ―この中に入れ――
 その者から―― ――戻れる―― これは―― ――挑戦』
だ、そうだ。
いやあ、馬鹿らしいと思ったね。
フードファイト? 天蓋領域とやらはテレビの見過ぎか?
でも、以前にも数学パズルを解かせようとしたお茶目な奴らだ、
それに他に脱出方法は無さそうだったしな。
34:
でも、罠かもしれないとも思った。
だから、最初に誰が入るか、みんな躊躇したぜ。
誰が最初に行くか、ひょっとしたら死ぬんじゃないかってな。
そしたら鶴屋さんが、
『お先に失礼するよっ。もし罠だったらお経ぐらいはあげておくれ』
って書置きを残して、知らん間に消えてしまってた。
まったく、あなたの勇気に感謝しますよ。
あなたのおかげで出現した食料にもね。
妙に量が少なかったのは、正式なSOS団員ではないからなんだろうな。
まあそれも最初は、もしかしたら鶴屋さんの肉じゃないか?
って恐ろしい想像したさ。
でも長門が調べたところ、それは本物の牛肉と
ぶどうジュースだったらしい。それも極上の。
35:
てなわけで、極上肉を食って食って食いまくる
フードファイトの船旅に突入したわけさ。
ま、とは言っても、こんな何も無い海の上で肉を食ってるより
早く元の世界に戻りたいぜ。肉ばっかじゃ体にも悪いしな。
さて、夜。
長門と二人きりになっちまったわけだが、
次に退場してもらうのは長門だな。
あいつが1人で肉食ってるの想像したら、
なんだか寂しいぜ。
などと考えていると、長門が俺のベッドの
横に立っていた。
36:
キョン「お? なんだ、長門?
長門「…………」
キョン「長門、どうした? 元気ないな」
長門「……心細い」
キョン「え?」
それは俺も同感だが、長門がこんなことを言うなんて、
どうしちまったんだおい?
長門「…………」
長門が俺の胸に飛び込んできた。
40:
キョン「長門……」
長門「傍に、いてほしい」
長門が俺の胸に顔を埋めている。
お、おい、そんなことされたら……
長門「もっと、触れたい……」
長門が俺のTシャツをまくりあげ……
唇を……って、おい……長門どうした?
キョン「おい、ちょ、俺、風呂入ってないから
 臭いって、そんなとこ舐め……」
長門「いい」
42:
長門の小さな手が、既にガチガチに勃起している
俺の股間に触れる。
キョン「はあっ……長門……」
長門「これが、欲しい」
キョン「長門……俺……初めてなんだ……」
長門「私も」
その夜、俺は長門を何度も抱いた。
何度も、長門の中で果てた。
44:
それから三日が経った。
俺は朝っぱらから長門の下にいた。
俺の上で気持ちよさそうに腰を振る長門。
あれからセックスばかりしている。
他にすることがないからな。
俺はもう肉欲に溺れきっている。
長門「良かった……」
長門と舌を絡め合わせる。
俺、歯も磨いてないし口臭くないだろうか。
肉ばっか食ってるしさ。
48:
長門「歯ブラシなら、そこに」
おや、あったのか歯ブラシ。歯磨き粉まで。
てなわけで早磨こう。長門のためにもな。
長門「……性交ばかりだと、飽きる?」
キョン「うーん、他にすることもないし……
 それに俺は満足だぜ」
長門「たまには、息抜き……」
長門が指さした先には、プラズマテレビがあった。
……あれ、こんなものあったっけ?
スイッチを付ける。映る。
なんで映る……? いや、テレビなんだし映って当然か。
52:
長門「ゲームも」
おお、PS3に……XBOX360に……Wiiもあるじゃないか。
なんだ、もっと早く見つけたかったぜ。
おーこれこれ、龍が如く3。やりたかったんだよな。
キョン「あーでも、こんなことしてる場合じゃ……
 だってほら、もう食料が……」
長門「ある」
あれ、冷蔵庫なんてあったのか。
肉に魚に野菜に果物……おお、米だ。
食いたかったぞ、米。
53:
長門「あなたの望むものなら、全て」
あーここは天国だ。もうずっとここで暮らしたい。
キョン「じゃ、とりあえずメシにしようぜ」
長門「食事が終わったら……性交したい……」
キョン「ああ、もちろんだ。しようぜ」
58:
「50年前の……高校生海難失踪事件についてお聞かせ
 願えませんか、鶴屋当主」
鶴屋「私は何度も……お断りしたはずです」
「あの時のクルーザーが発見されたのはご存知ですか?」
鶴屋「そんな……まさか……」
「これはまだ公になっていませんが、ええ、確かです。
 その件についての情報と……交換ということで、どうでしょう」
鶴屋「わかりました……お話します。
 あの時私達は、遭難して何日も経って、食料も底を尽き
 飢え死にを待つばかりでした」
59:
「なるほど、それで」
鶴屋「そうしたら……信じていただけないでしょうが……
 小さな倉庫の扉に、確かこんな文字が……」
「ほう、なるほど……ふむ。あ、いや、信じます。
 それぐらいのことがあってもおかしくないですから。
 なんせ……ええ、続きを」
鶴屋「私は怪しさを感じて、夜こっそりその倉庫の中に、
 手を入れてみたんです……そしたら。
 私の左腕は綺麗に切り取られて、中には
 パックに包まれた、肉が……」
「パックの……肉ですか? ふふふ。あいえ、失礼しました。
 なるほど、その時ですね、腕を失われたのは」
60:
鶴屋「そして、恐ろしくなって……そこから立ち去ろうと
 したら、後ろには長門さんが冷たい目をして立っていました」
「行方不明になった……長門有希さんですね」
鶴屋「はい……私は、命の危険を感じて、
 無我夢中で逃げ出し、海に飛び込んだのです。
 そうしたら、海に飛び込んだはずなのに、
 島の海岸で倒れていました」
「なるほど、あなたが発見されたのはあの島の海岸でしたね」
鶴屋「私の知る事は以上です。……お話ししてくださいますか、
 あの、船のこと」
65:
「はい。数日前に、漁船によって発見されたのですが……
 この写真、見てください」
鶴屋「これは……そんな……」
「50年間海上を彷徨っていたにしては随分と綺麗でしょう?
 まあ老朽化はしていますがね。それより、海に沈んでいなかったのが奇跡です。
 それとほら、テレビやらゲーム機やら……こんなものありました?」
鶴屋「いいえ、ありません。あるはずが……」
「これはもっと驚きますよ、特別にお見せしましょう」
鶴屋「この老人は……まさか!」
67:
「ええ、あなたがたがキョンと呼んで居た人物です。
 発見された時には亡くなられていたのですが……
 大変不思議なことにね、この人物は発見される
 少し前まで、生きていたようなんですよ。
 つまりどういうことかわかりますか? 
 50年間あの船で暮らしていたんですよ、彼は」
鶴屋「ありえない、ありえません……」
「さらにもう一つ、この船にはもう1人、誰かの暮らしていた
 痕跡があるんですよ……それ、誰だかわかりませんか?
 あなたなら、ご存知じゃないですか?」
68:
鶴屋「…………それは……おそらく……」
「それは誰です? 教えてください! ……おや、お部屋に
 お孫さんがいらっしゃったんですか? いつのまに……」
鶴屋「え…………?」
「ほら、あなたの後ろ。可愛らしいお嬢さんですね」
おわり。
71:
なんという展開w
お疲れ様でした
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78:
超展開すぎるwww
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