許嫁「不束者ですが……」back

許嫁「不束者ですが……」


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1:
男「Fooooooo! やっぱりFPSはやめられないぜ!」カチャガチャ
母「まったくたまに帰ったと思ったらゲームばかりして……男、彼女の一人でもできたの?」
男「はっ! 作る気もしねえな!」
男「孫の顔が見たいならクローン技術の発展を待ったほうが早いと思うぜ!」ヒャッハー
母「それじゃあ……彼女はいないんだね?」
男「くどいぜ! いないって!」カチャカチャ
父「それは都合がいい、男、今日はお前の許嫁を連れてきたぞ」ガラッ
許嫁「不束者ですが……」ペコリ
男「ん?」
男「 ん ? 」
3:
男「えーと理解が追いつかないんだけど」
父「何度も言わせるんじゃない、この子はお前の許嫁だ」
父「お前が一向に彼女をつくろうとしないからな、一家断絶を危惧してわざわざ見繕って来たんだ」
母「こんな可愛い子がお嫁に来てくれるなんて幸せじゃないか」
男「ウェイト、ウェイトアミニッツ!」
男「言わなかったか? 俺結婚するつもり微塵もないんだけど!?」
5:
男「それにさぁー今どき許嫁とか封建的すぎでしょー」
男「なにより君も嫌でしょ? こんなブ男と無理やり結婚なんて、ね?」ポン
許嫁「い、いえ……私は男さんと結ばれることを幸せに感じています///」ポッ
男「」
男「ちょっと家族だけで大事な話があるんだけどいいかな?」
母「何いってんのよ、この子ももう立派な家族でしょ!」
男「シャット・アップ」
男「いいね、そこで待っててくれよ」
許嫁「は、はい」
6:
男「……どういうことだよマジで」
父「どういうことも何も、さっき説明したとおりだ」
男「いやそれがまず意味不明なんだよ!」
父「さすがにな、お前に真剣に交際している人がいればここまではしない」
父「だがこうまで女っ気がないと親としては心配になるだろう」
男「だからって……見ず知らずの人と結婚なんかできるか!」
父「いや、見ず知らずじゃないぞ?」
男「はあ? どうせちっちゃい頃に結婚の約束をしたとかだろ? そんなんノーカン――」
父「向こうは高校の頃からお前を物陰から見守っていたそうだ」
男「ヤンデレ属性持ちかよ! 不安要素が増えたわ!」
8:
父「とりあえず少しでいいから話してきなさい、案外気にいるかもしれないぞ?」
男「……ああもう、わかったよ、話だけだからな!」
ガラッ
許嫁「あっ、男さん……」
母「もう! 女の子を待たせちゃダメじゃない!」
父「母さん」
母「あらっ、あとはお若い二人で……ってことね!」オホホ
男「いっぺん地獄に落ちてくれ」
10:
許嫁「……///」モジモジ
男「……さて」
男「そろそろいいだろ、本当のことを教えてくれよ」
許嫁「へ?」キョトン
男「どうせこの話は親に無理やり押し付けられたとかそういう感じなんだろ?」
許嫁「え、え」
男「でなきゃ君みたいな子がこんなことしないよな?お互い困った親だよな」
許嫁「その、あの」
男「にしてもなんで家に嫁入りなんかさせられたんだ? あ、もしかして親父に何か弱みを握られてるとか?」
許嫁「いえ、ちがっ」
男「でもそういうときでもキッパリ断わんなきゃダメだぜ? 何なら俺も手伝うから今からでも遅くない、キチンと拒絶の意志を――」
許嫁「わた、わたしっ、そんなんじゃ……」グスッグスッ
男「……え」
12:
母「コラー! 何泣かせてるの!」バタンッ
男「若い二人に任せるって数十秒前発言どこへ言った」
許嫁「わたしっ、本気で男さんのお嫁さんになりたくてっ」エグエグッ
男「えー……いやでもほら! 女の子を泣かせちゃうような最低なやつだしさ俺」
許嫁「……いえ、いいんです、私がすぐ泣くのがいけないんです……」グスッ
男「うわこれじゃ完全に悪者じゃねえか俺」
13:
許嫁「私じゃ……ダメですか?」
男「えー……うーん……確かに可愛いし……」
男(おっぱいでかいし)
男「別に不満はないっちゃないんだけど……」
父「ならいいじゃないか」
母「優柔不断ねえ」
男「とにかく! それを加味して結婚なんてしない! ナシだナシ!」
母「まっ、女の子を泣かせておいて責任すらとらないような男に育てた覚えはないわよ」
男「誤解を招くような言い回しやめて」
許嫁「いいんですお義母さん……私も男さんにわがままは言いたくありませんし……」
男「君もさらっとお義母さんって呼ぶのやめようか」
18:
許嫁「その代わり……ひとつだけお願いを聞いてくれませんか?」
男「嫌な予感しかしないけど……何ですか」
許嫁「一月だけ……一ヶ月だけお試しで私と過ごしてくれませんか?」
男「えぇ……なんかそれズルズルいつきそうだなあ」
母「捨て犬を拾ってきたときの母親みたいな言い方ね」
許嫁「それで不満があったら私も諦めます、二度と男さんの前に現れません、ですからお願いします」ペコリ
父「ほら、ここまで言っているんだ、ちゃんと応えてあげたらどうだ?」
男「うーん……わかったよ、本当に一月だけだからな」
許嫁「あ、ありがとうございます!」パアア
男(まあ一月俺と一緒にいれば向こうが嫌気差すだろう)
19:
男「おし、じゃーな母さん父さん」
父「ああ、許嫁ちゃん、うちのドラ息子を頼んだよ」
許嫁「はいっ! お任せください!」
母「忘れ物しないようにね」
男「なんかあったら送ってちょ」
許嫁「ささ、行きましょう男さん、早くしないと飛行機の時間に遅れてしまいますよ」
男「はいはい……」
20:
――男の家(アパート)
許嫁「ここが男さんのハウスかぁ……」ワクワク
男「そういう不穏な言い方やめようね」
男(ふっ、初っ端からインパクトのあるジャブを食らわせてやるぜ……)ニヤッ
ガチャ
許嫁「っ!」
男の部屋「」グチャア……
男(見たか! これが一人暮らし五年目の野郎の汚部屋だ!)
男(散らかっているなんてレヴェルじゃねえ……圧倒的汚さ! あとなんか臭う!)
男(さあこれで不快感を感じない女はいない……デリヘル嬢だって職務放棄して逃げ出すレベルだぜ!)
許嫁「こ、これは……」フルフル
許嫁「――お掃除のしがいがありそうです!」フンス
男(何ィ!?)
21:
許嫁「お掃除……してもいいですか?」
男「あ、ああ、構わんよ?」
男(驚きのあまり変な受け答えをしてしまった……こいつ、手強い……!)
許嫁「それじゃあ頑張っちゃいますね! あ、男さんはゆっくりしていてください!」
男「あ、ありがとうございます……」
22:
――数時間後
男(嘘……だろ……?)
男(あの冒涜的に汚染された部屋が……見違えている……なんということでしょう)
男(ああ、カーペットってこんな色だったんだな、つかゴミが積んであったところが逆に綺麗だ)
許嫁「ふう、あとはゴミ箱のゴミを――っ!///」カァ
男(あ、オナティッシュの山か)
男(掃除ついでにウブなところもアピールするとはな……侮れん)
許嫁「あ、ゴミ捨てついでに晩御飯の食材も買ってきちゃいますね!」
許嫁「男さんは何が食べたいですか?」
男「ん、そうだな……唐揚げ、とか?」
許嫁「わかりました♪」ガチャ
男「いってらっしゃーい……」
男「……さて」
男「エロ本は厳重に隠しておこう……」
23:
許嫁「ごはんですよー」
男「ほう」
男(むむ、見た感じ文句のつけようのない料理だな……)
男(しかし料理は中身、つまりは味が肝心だ……)
男「いただきます」パクッ
男「っ!?」
許嫁「ど、どうかしましたか? 味付けおかしかったかなあ」オロオロ
男「う、うまい……美味すぎて一瞬脳の処理が追いつかなかった……」
男「つかビニ弁と外食以外の飯を食う事自体久しぶりだ……」
許嫁「よかった……おかわりもありますからいっぱい食べてくださいねっ」ホッ
男「うめっこれめっちゃうめっ」ガツガツ
26:
――食後
ジャーカチャカチャ
男(ふぃーなんだこの満腹感とはまた違う満足感)
男(いやいやいや、このままだとヤツの策略に嵌ってしまう……どこか粗を見つけ出さねば)
男(ま、見つからなくても難癖でも屁理屈でもなんでもゴネてお引取り願うけどねー)カチャカチャ
許嫁「何をされているんですか男さん?」
男「ん、FPS、女にゃわからない硬派な世界だ、覗き込むなあっちいけ」シッシッ
許嫁「すみません……」
男(は? 味方noobかよファック)ガチャガチャ
許嫁「…………」チラチラッ
男(……リスポン地点で芋ってんじゃねえぞ凸れや)カチャカチャ
許嫁「…………」構ってほしそう
28:
男(……ああああああああああああああああああっ!!!!!!)
男(ぼくんちにしらないひとがいるうううううううううあああああああ!!!)ガシャン
許嫁「!」ビクッ
男「はぁ、はぁ……もう寝る……」フラフラ
許嫁「もうお休みになるんですか?」
男「うん……明日も仕事……あるし……」
29:
ガチャ、バタン
男「は???なんだこれ、対人ストレスか?」ボフッ
男「せっかく一人暮らしを堪能してたってのによ???」
男「まあいいや一ヶ月の我慢だ、もうねよ」フカフカ
男「…………」ウトウト
ガチャ
男「……ん?」
許嫁「あ、起こしてしまいましたか?」パジャマー
男「…………ん?」
30:
男「いやなんでここにいるのかな? 布団出しておいたよね?」
許嫁「お恥ずかしながら……ご同衾願いたく///」
男(ヤバイッ! こいつ既成事実を狙ってやがるッ!)
男「ダメダメダメダメ! そんな若い男女が一つの寝床でなんてそれにこのベッド狭いしそもそも俺は婚前交渉は――」
許嫁「無理はわかっています、でも私、こうして男さんの温もりを感じるのがずっと夢だったんです……」
許嫁「添い寝だけでも……ダメですか?」ギュッ
男(ひいいいいいいいいあたってるううううううううう)
男「わかった! わかったからそんなに引っ付かないで!!」
許嫁「わぁ、嬉しいですっ」ギュム
男「ぎゃああああああああああ」
31:
許嫁「すぅ……すぅ……」ピトッ
男(……こんなん寝られるか)ゴソ
ガラッ
男「はあ、ベランダで酒のんで頭冷やそ」
男「ごくごく、ぷはぁ?」
男「どうなっちまうんだこれから……」
男「確かに許嫁は俺にはもったいないくらいの子だけどさ……」
男「でも――」
男「……待てよ? ってことはもしかしてもしかしなくても今日から一ヶ月間……」
男「強制オナ禁月間?」ゾッ
32:
――翌朝
男「あ゛?」←結局敷いた布団で寝た
許嫁「おはようございます、朝ごはん出来てますよ♪」
男「朝飯か、実家以外で食べたことなかったな」
男「いただきまーす」モグモグ
許嫁「スーツ、アイロンかけておきました」
男「ありがと」ムシャムシャ
男(んーなんというか、これって)
男(ザ・真人間の生活って感じだよなあ……)
34:
――それから一週間が経ち
男「おーっす」
同僚「……なあお前、最近なんかあったか?」
男「は? なんでだよ」
同僚「だって……なあ」
同僚「日に日に血色は良くなっていくのに顔色だけが悪くなっていってるし……」
男「ああ、どうも人間の生活には適応しきれなくてな……」
同僚「……大丈夫か? お前」
男「いろいろあってな……まあ、お前には言ってもいいか、今夜飲みに行こうぜ」
同僚「いいけどさ……」
35:
――居酒屋
ガヤガヤガヤ
男「『今日は遅くなるからご飯はいりません』っと」ピッピッピッ
ピロリン♪
『浮気はダメですからねっ!(╹◡╹)』
男「……『君と俺の関係で浮気も何もないだろ』っと」ポチポチ
同僚「わりい待たせた、で、なんだって?」
男「ああ、まずは飲もうや、すいません生2つ」
37:
男「実はかくかくしかじか」
同僚「しかくいむーぶ、あぁ!? なんだそれ! 羨ましいじゃねえか!」
男「そうでもないんだよなあ……俺は孤りで気ままに生きて独りで寂しく死にたいんだよ」
同僚「なんだそりゃ、それでお前はどうしたいんだよ」
男「やんわーり、それとなーくお引取り願いたい」
同僚「ひでえ話だな、じゃあ相手が愛想尽かすのを待つしかなさそうだが」
男「それなんだが……実はもう色々やってる」
同僚「そうなのか?」
38:
男「おう、この間も『働くの嫌だなーニートになろっかなーそうなったら許嫁に養ってもらおー』ってヒモ宣言したわけよ」
同僚「色々と神経を疑う発言だな、で?」
男「そしたら『じゃあアルバイトとかパートとかいっぱいしますね』だとよ」
同僚「ひゃーっすげえ器のデカさだな、お前なんかすっぽり収まっちまいそうだ」
同僚「もうそれ嫁としては最高じゃん、マジでヒモニートになれるんじゃないか?」
男「わかんねえぞ? 一ヶ月たったらコロっと態度変わったりして」
同僚「ははは! お前の部屋じゃ猫を被るどころか平常心も保てなさそうだけどな!」
40:
男「それがその子のおかげですっかり片付いちまってさ、ほれ」写メ見せ
同僚「は? これどこだよ?」
男「俺の部屋」
同僚「おいおい嘘だろ!? ……つかお前の家の壁って白かったんだな」
男「」
同僚「ともあれ、これだけ尽くしてくれるってことは本気でお前を愛してくれてるんじゃないのか?」
同僚「どうしてそう拒絶するんだ」
男「さっきも言ったろ? 俺は孤高を愛する男なのさ」
同僚「孤高と孤独(ぼっち)は別物だが?」
男「うっせ」
42:
男「ああ、もうこんな時間かよ……終電間に合うかな……」
同僚「おっそうだな、じゃあ結論だけ言うがな」
同僚「その子の愛情に、別に愛情で返すことはない」
同僚「お前がどうしても嫌ならお試し期間が終わったあとスッパリ言ってやればいい」
同僚「向こうが持ちかけた条件だからな、多分わかってくれるだろう」
同僚「ただし――彼女の愛情に対してきちんと”誠意”をもって相対しろ」
同僚「彼女は本気だ、だからそれに対してふざけた態度でいちゃいけない」
同僚「YesでもNoでも本気で返せ、でなけりゃ失礼だしきっとその子を傷つけることになる」
同僚「それが惚れられた――いや惚れさせたオトコの義務ってもんさ」
43:
同僚「俺から言えるのはそれくらいかな」
男「おお……まさかそんな真っ当な返答が来るとは」
男「さすが恋愛マスターだな」
同僚「よせよそんな軽そうな称号」
同僚「俺は経験は多いが付き合ってる時は一筋だぜ?」
男「へいへい」
男「――ありがとな」
同僚「……いいってことよ、ダチだろ?」
男「へっ!」
44:
プシュー
男「ぜぇ、ぜぇ、っぶね終電逃すとこだった……」
男「ふう……ん、許嫁から着信来てたのか」
男「『今電車乗ったところだからあと――』」ポチポチ
男「……いや、さすがにもう寝てるだろ」パタン
45:
ガチャ
男「ただいま?」ソロー
男「ん? 電気ついて……」
許嫁「すぅ……すぅ」
男「……ずっと待ってたのか、これは……」
男「しじみ、汁」
男「…………」
『彼女の愛情に対してきちんと”誠意”をもって相対しろ』
男「誠意、ねえ」
男「っ、ふぅ」ゴクゴク
男「よいしょっと」
許嫁「Zzz」オヒメサマダッコ
男「風邪引くぞ……って超熟睡してるし……」ボフッ
男「…………」
47:
チュンチュン
許嫁「ふはぁ! 寝てしまいました……」ガバッ
男「おうおはよう」ジュー
許嫁「ああ男さんいいんですよ!? 朝ごはんなら私が――」アセアセ
男「いやいいっていつも作ってもらってばかりだからな」
許嫁「いいんですか?」オド
男「いいのいいの、俺だって目玉焼きくらい――うわっ! 焦げてる!?」
許嫁「あわあわ」
49:
男「すまん……結局トーストになってしまった」
男「まさか炊飯器の使い方がわからなくなっているとは……」
許嫁「大丈夫ですよ、少しずつ覚えていけば、きっと!」
許嫁「それに……男さんが作ってくれたものならなんでもうれしいですっ」ニコッ
男「そ、そうか」ポリポリ
50:
許嫁「ああっ洗い物は私がやりますよ」
男「いいのいいの、基本的に家の中を汚してるの俺だし」
男「これからは家事はちゃんと当番制にしないか?」
許嫁「でも……」
男「いや、そうしないと俺の気が済まないから」
許嫁「じゃ、じゃあ」
男「それと……今日休みだしさ、どこかいかないか?」
男「たまには許嫁を労いたいんだ」
許嫁「は、はいっ!」パアア
51:
男「……とは言ったもののデートスポットなんてしらねえよ俺」
男「まさかこんなところで彼女いない歴が祟るとはな」
男「許嫁はどこか行きたいところないのか?」
許嫁「えーと……私はどこでも……」
男「……初めてあった時から思ってたけど主体性ないよね君」
許嫁「えっ! お、男さんがそう言うなら主体性を持てるように……」
男「そういうのを主体性ないって言うんだよ!」
許嫁「ひぇぇ……」
52:
男「じゃ、適当に映画でいいか?」
許嫁「はいっ!」
男「今話題だしな、ベイ○ックス」
許嫁「私も観てみたいです、○イマックス」
男「俺もそうだけど悪意あるよねその伏せ方」
男「じゃあ方向音痴の味方グーグルマップ大先生で検索検索ぅ?」
53:
許嫁「あの……」
男「うん?」
許嫁「……て……///」モジモジ
男「どうした」
許嫁「て、つないでもいいですか?」カアッ
男「え……」
許嫁「あのっ、ダメならいいんです……」
男「う、うーむ……」
男「じゃあ、腕組むくらいなら……」
許嫁「わぁい♪」ギュッ
男「ぐほぉっ! あた、あたたたたたて」
許嫁「?」ムニュン
男(くっ……失策だったか……)
54:
男「さて……着いたのだが……」
『濃密! 乱れる人妻激情の一滴(ひとしずく)』
男「ああシネマってそういう」
許嫁「あの男さんここって///」
男「いやさすがにここでは観ないようん」
57:
――映画館
男「ふぃーなんとか上映時間に間に合って良かったな」
許嫁「はい……」ポーッ
男「まさかあそこで○イ○ックスが変形するなんてなー」
許嫁「はあ……」ポーッ
男「……もしかして上映中ずっと銀幕じゃなくて俺見てた?」
許嫁「へぁ!? いや、その……」
男「……色々と感服に値するよ」
許嫁「いやあ」テレテレ
男「褒めてねーよ」
58:
男「……なあ、ずっと聞きたかったんだけどさ」
許嫁「はい」
男「許嫁さ……どうしてそんなに俺のこと好きなんだ?」
許嫁「……男さんは知らないかもしれないですけど、私、男さんと同じ高校に通っていたんですよ」
男「ええっ、でもその頃って……」
許嫁「はい、その頃男さんは……その……」
男「いや別にオブラートに包まなくていいよ、あの頃俺めっちゃデブだったからな」
61:
男「でもそれならなおさらわからんな」
許嫁「確かに初めてみたときの男さんはとてもふくよかでした」
許嫁「でもあるとき見ちゃったんです、放課後、運動部もいなくなってから、誰もいないグラウンドで走る男さんを」
男「…………」
許嫁「一生懸命自分のコンプレックスを克服しようとする男さんはとてもかっこよくて」
許嫁「いつしか私は男さんに憧れていました」
62:
許嫁「えへへ、これでも私昔は不器用でお料理とかお掃除とか大の苦手だったんですよ?」
許嫁「それでも、つまづきそうになる度男さんのことを思い出して頑張りました」
許嫁「男さんがいたから、今の私はあるんです」
男「……だから、か」
許嫁「……はい」
男「そう、だったのか」
男「……お、もうこんな時間か、帰って晩飯の準備をしなくちゃな」
許嫁「あ、そうですね、今日はカレーにしましょう♪」
64:
――夜
男「……ふぅ」ゴロン
コンコン
許嫁「あの……今夜も一緒に寝てもいいですか」マクラカカエ
男「…………」
男「駄目だ」
許嫁「!」
68:
男「いいか、許嫁」
男「俺は今まで君のことを都合のいいメイドのように扱っていた」
男「向こうが好きでやってることだから、俺は結婚するつもりなんかないから、と」
許嫁「…………」
男「でも、それじゃ駄目だって気付かされたんだ」
男「俺のことを本気で愛してくれてる君に対して」
男「いい加減に利用したり、適当に相手するんじゃ駄目なんだって」
男「だから俺はちゃんと最後の一日まで君と向き合う」
男「一人の女性として君と向き合う」
男「だから、この一ヶ月の間に、変に恋人ごっこのような真似はしたくないんだ」
男「言ってしまえばこれは君と俺との真剣勝負だ」
男「対等な、フェアな立場でやるべきなんだ、無駄に期待させたり悲しませたりはない」
男「だから君とは眠れない」
男「今日のことだって、あれは普段世話になってる君に対する慰労だ、それ以上の意味は無い」
69:
許嫁「……わかりました」
許嫁「男さんにくっつけないのは悲しいです、でも……」
許嫁「その勝負受けて立ちます! きっと……ううん、絶対男さんを振り向かせてみせます!」
許嫁「私、頑張りますから……!」ウルウル
男「……ふっ」
男「上等だ」 
70:
それからも、俺と許嫁、二人の奇妙な生活は続いた
互いを尊重し合い、それでいて踏み入りすぎない
関係としては最高のものだっただろう
許嫁はその間中ずっと俺に尽くしてくれたし、少しでも俺の気持ちを得ようと頑張ってくれていた
俺としてもこの生活はとても楽しいものだった
当初感じていた息苦しさもなくなり、彼女がいる日常が当たり前のように感じられた
……それでも俺の気持ちは変わらない
それでも、俺は彼女と結婚する気にはなれなかった
そうこうしているうちに、無情にも時間は去りゆく
気づけば今日は約束の、最後の日
でも、決して彼女が、許嫁が悪いんじゃない
きっと、いや、わかりきっている
悪いのは――
72:
ガチャ
男「……ん?」
許嫁「…………」
男「どうした許嫁、言ったはずだぞ一緒には――」
許嫁「…………」ボロボロ
男「ちょ、泣いてるのか?」
許嫁「涙が、止まらないんです、これでもう男さんといられるのは最後なんじゃないか」
許嫁「明日にはもうっ、二度と会えなくなるんじゃないかって……おもうとっ」ボロボロ
男「……『絶対振り向かせてみせます』って言ってた自信はどこいっちまったんだ?」
許嫁「それでも不安なんです! 私、私……」グスッ
許嫁「お願いします、これが私の最後のわがままです」
許嫁「一晩だけ、私と一緒にいてください……」
男「…………」
75:
男(なんだかんだ言って甘いな、俺も)
許嫁「…………」ギュッ
男(まあ、でもこれで最後、か)
許嫁「男さん、起きてますか?」
男「ん、ああ起きてる」
許嫁「最後に、言っておきたいことがあります」
男「なんだ?」
許嫁「今ならわかります、どうして、不安なのか」
許嫁「――私、自分が本当に男さんのことを好きなのか、わからなかったんです」
76:
男「……え?」
許嫁「私は結局、高校のときに男さんに想いを伝えることはおろか、声をかけることすら出来ませんでした」
許嫁「その、勇気がなかったんです」
許嫁「そんな私は本当に男さんのことを愛しているのか? 愛する資格があるのか?」
許嫁「だからこんな”一ヶ月だけの夫婦ごっこ”をして試したんだと思います」
許嫁「男さんの気持ちじゃなく、自分の気持ちを知る、そんな自分勝手な理由だけで……」
許嫁「事実、一ヶ月も一緒にいて私は直接想いを伝えることは出来なかった」
男「あ……」
男(そういえばそうだ、この一ヶ月間一度も彼女に”好き”だなんて言われたことは……)
男「じゃあ、それって……」
78:
許嫁「でも!」
許嫁「男さんのことを好きなのかわからなかっ”た”……もう、過去の話です」
男「!」ドクン
許嫁「今なら言えます! 勇気を出して言えます!」
許嫁「――私、男さんのことが大好きです」
男「…………」ゴクリ
79:
男(一ヶ月もかかった、ひどく、遠回りな告白)
男(それでも勇気を振り絞った、告白)
男(許嫁から、俺に対する愛の告白)
男(途端に、同僚の言葉が再び脳裏をかすめる)
男(『誠意』)
男(彼女は勇気を出した、それならば俺はどうだ?)
男(俺は結局、未だ言い訳を続けているだけなんじゃないか?)
男(自分が傷つくのが怖いから、逃げ続けているんじゃないか?)
男(それで本当に、許嫁に誠意を示したことになるのか?)
男(俺に……俺なんかのために勇気を振り絞ってくれた、そんな、許嫁に――)
80:
ガシッ
許嫁「男……さん……?」
男「許嫁……俺も、君に言わなくちゃいけないことがあるんだ」ギュッ
許嫁「!」
男(そう、誰にも言ったことのない秘密)
男(それでも――許嫁には、伝えなくちゃいけない)
男「よく聞いてくれ許嫁、あのな――」
男「――俺、好きな人がいるんだ」
82:
許嫁「え、え、それじゃあ、今まで頑なに結婚を拒んでいたのは……」
男「ああ……その人を忘れられなかったからだ」
許嫁「そんな……それじゃあ私は……!」
男「……最後まで聞いてくれ許嫁」
男「俺は高校のとき、その人を好きになった」
許嫁「!」
男「ああそうだ、少しでも彼女に近づきたくて死に物狂いで痩せたんだ」
男「それでも――体型は変えられても中身は変えられなかったよ」
男「結局俺は何も出来ずに卒業してしまったんだ」
男「そのあとも、何度も何度も彼女のことを忘れようとした」
男「でもできなかった、できなかったんだよ……」
男「俺には、告白する勇気も、諦める勇気もなかったんだ」
84:
男「それでこのザマさ、ずるずるその恋を引きずって、その人以外愛せなくて」
男「いや――その人以外の誰かを愛する勇気すらなくて、君を傷つけた」
許嫁「……男さん……」
男「――でも君の告白で俺は変われそうな気がするんだ」
許嫁「!」
男「君が俺を見て、変わろうと思ったように、今度は俺が、君を見て勇気を出したいと思う」
男「俺、その子に勇気を出して告白する、そして玉砕してきてやる」
男「そして、全部綺麗さっぱり終わらせたら――俺と、結婚して下さい」
許嫁「――っ、ぁ、はいっ、う、うわあああああん!」ボロボロ
男「何泣いてるんだよ、まったく」
許嫁「うっ、うれじぐで……うぅ、ぐすっ」
男「……ありがとう許嫁、俺に勇気をくれて、こんな俺を、愛してくれて」
許嫁「うぅ、こちらこそ……」
86:
――チュンチュン
男「……ん」
許嫁「すぅすぅ……」
男「嬉し泣きで泣き寝入りとはね……まったく」ナデ
男「……さて」
男「次は――俺の番だ」
『今度、高校のときのメンツで飲み会しないか?』
87:
――某日某所
男「……大丈夫だって、そんなに心配すんなよ」
男「俺だって男だ、腹括ってるよ」
男「……え? いやいや、それはないって、ああ絶対にだ」
男「それじゃあ切るぞ、上手くいったらまた電話するから、ああ、またな」ピッ
ガラガラ
男「あの、予約していた男ですが……」
89:
ワイワイガヤガヤ
「あーっやっときた!」
「幹事が遅れちゃ仕様がねえな!」
男「はは、悪い悪い……みんな変わらんな」
男「えーっ、それではお待たせしましたみなさん!」
男「本日は急な呼びかけにもかかわらず――」
「「「かんぱああああああい!!!」」」
男「最後まで聞けよオイイイイイ!」
90:
ワッショイワッショイ
「いやーお前がこんな激痩せするなんてなー」
男「ははは、まあな」
女「…………」グビ
男「…………」グッ
91:
男「よう女、久しぶり」ポン
女「ん、おー久しぶり」
男「相変わらずちっちゃいな、どこもかしこも」
女「うっさいデブ……ってもう今は違うよね」
男「ふふん、お前にもう言い返す隙は与えん」
女「うざ……まあ私は陽気なデブは嫌いじゃなかったけどね」
男「ははは、ところでさ女」
女「なによ」
男「ちょっとさ、えーと」
女「だからなに?」
男「……ええい、まどろっこしい、ちょっとこっち来てくれ」ガシッ
女「えっちょっ!」
92:
女「……なんなのさこんなところに連れてきて、愛の告白でもしようっての?」
男「…………」
女「なによ、気色悪いからなんか言ってよ」
男「……そうだ」
女「は?」
男「……今から俺はお前に告白する」
女「え、何言って――」
男「俺はずっと前からあなたのことが好きでした!」
93:
女「っ!」
男「好きで好きでしょうがなかった! 少しでもお前につりあいたくて大嫌いな走り込みを毎日やった!」
男「テストのたびに少しでも成績の良いお前といろいろ話がしたくて勉強を頑張った!」
男「興味なかったワックスとかにも手を出した! 結局前衛的な髪型になっただけだったけど!」
女「…………」
男「あと……これは言うべきじゃないってわかってる、わかってるけど言いたい」
95:
男「俺には許嫁がいる!」
男「優しくて可愛くて料理が上手くておっぱいがでかい! 俺貧乳派だけど!」
男「ちなみに俺が貧乳派になったのはお前の影響だ!」
男「だけどそんなことはどうでもいい!」
男「そいつは――許嫁は俺を愛してくれてる、愛していると言ってくれた!」
男「俺はそんな許嫁と結婚したい!」
男「だから……俺はお前へ募らせたこの恋を終わらせなくちゃいけないんだ!」
男「世界一、いや宇宙一最低な告白だってことくらいわかってる!」
男「でも言わせてくれ!」
男「俺はあなたのことが好き”でした”!」フカブカッ
97:
女「」アゼン
男「……して」
男「返事のほうはいかがで?」ニッ
女「――――」
100:
許嫁「……遅いです」ソワソワ
許嫁「日付が変わる前に帰ってくるって言ってたのに……これはいくらなんでも」ソワソワ
許嫁「ま、まさか! 同窓会で久しぶりに会ってお酒も入ってそのままアッフーンなことに……」ワナワナ
許嫁「いえ、でも、そんなことはありません……男さんに限って……」
許嫁「でも……うぅ……」
バッターン!
許嫁「ひぅっ!」
男「うひゃほへふほおほおおおおおおおうえええええええええ!!!」
101:
男「ピャーーーーーー-----!!!!」
許嫁「どうしたんですか男さん! と、とにかくご近所迷惑ですから落ち着きましょ、ねっ?」
男「ふひほはひほ」
許嫁「あわわ、男さんが壊れてしまいました……」アワワ
男「ふーぅ」
許嫁「それで……結果はどうだったんですか?」
男「んー? 告白の結果か?」
105:
男「そりゃあもう……大☆惨☆劇」
――
――――
――――――
女「……最低」バシン
男「あふん!」
――――――
――――
――
男「このとおり見事なビンタを食らって振られてきてやったぜ!」ジンジン
許嫁「あらら……」
106:
男「でもまあ、なんだかすごく気分はいいぜ! もやもやしてたものが全部落ちた感じだ」
男「思わず走って帰って来ちゃったよ」
許嫁「それで遅かったんですか……」
男「でもまあそれもこれも許嫁のおかげだ、ありがとな」
許嫁「いいんですよ、うふふ」
男「さあこれで何の蟠りもなく許嫁と結婚できるな」
許嫁「……私、とっても嬉しいです、やっと、やっと……」ウルッ
108:
男「ははっ、本当に泣き虫だな許嫁は、大丈夫、愛してるよ許嫁」ギュッ
許嫁「むっ、それはもう聞きましたよ」
男「えっ?」
許嫁「ちゃんと行為で示してください♪」
男「……仕方ないな」
許嫁「…………」クイッ
男「…………」
――X
男Side 完
114:
おまけ
女「…………」髪イジイジ
女(……何を期待してるんだろう)
『今度、高校のときのメンツで飲み会しないか?』
女(同窓会なんて、別に珍しいことじゃない、し)
女友「お・ん・なー♪」ダキッ
女「何よもう酔ってるの?」
女友「私はこれでもシラフですーそれよりさー」
女友「今日久々に会えるじゃーん? 大好きな――」
ガラガラ
男「あの、予約していた男ですが……」
女「はいはいこの話はやめやめ!///」
女友「んもう、照れちゃってかわゆい♪」
115:
「「「かんぱああああああい!!!」」」
男「最後まで聞けよオイイイイイ!」
女(ノリは変わんないなあ)ジーッ
「いやーお前がこんな激痩せするなんてなー」
男「ははは、まあな」
女(でも高校出た時よりも更に痩せてる……昔はベイマックスみたいでかわいかったなー)ジー
女友「ちょっとちょっと女」
女「ん?」
女友「見・過・ぎ♪」
女「///!」ボンッ
116:
女「…………」グビチラッ
女(……あれ、なんか近づいてない? えっもしかしてこっちくる!?)ドキドキ
男「よう女、久しぶり」ポン
女(来たーーーーーーー!)ドッキドッキ
女「ん、おー久しぶり(平静を! 平静を装わないと!)」
117:
男「相変わらずちっちゃいな、どこもかしこも」
女「うっさいデブ……ってもう今は違うよね」
男「ふふん、お前にもう言い返す隙は与えん」
女「うざ……まあ私は陽気なデブは嫌いじゃなかったけどね」
女(あーもう私のバカ! どうして悪態しか出ないのよ!)
男「ははは、ところでさ女」
女「なによ」
男「ちょっとさ、えーと」
女「だからなに?」
男「……ええい、まどろっこしい、ちょっとこっち来てくれ」ガシッ
女「えっちょっ!」
118:
女(えっなにこれ!? ってか手! 手握られてる!)
女(高校の時はこんなことなかったのに……なんなのよもうー!)
女「……なんなのさこんなところに連れてきて、愛の告白でもしようっての?(まさかね……)」
男「…………」
女「なによ、気色悪いからなんか言ってよ(嘘、まさか本当に……?)」
男「……そうだ」
女「は?(え? え?)」ドックンドックン
男「……今から俺はお前に告白する」
女(????!!!!????)
女「え、何言って――」
119:
女「っ!」
男「好きで好きでしょうがなかった! 少しでもお前につりあいたくて大嫌いな走り込みを毎日やった!」
男「テストのたびに少しでも成績の良いお前といろいろ話がしたくて勉強を頑張った!」
男「興味なかったワックスとかにも手を出した! 結局前衛的な髪型になっただけだったけど!」
女(言わなきゃ……今度こそ言わなきゃ『私も好きです』って! でも……ああもう! 喉が渇いて声が――)
女「…………」
男「あと……これは言うべきじゃないってわかってる、わかってるけど言いたい」
女(――え?)
120:
女(その後のことはよく覚えていない)
女(それでも確かに一つだけくっきりと私の中に刻まれている)
女(抗いようのない、敗北感)
女(その許嫁は、私に出来なかったことをした)
女(その許嫁は、私が動かせなかった心を動かした)
女(でも、男は私のことをずっと想い続けていたと言ってくれた)
女(ここで『私も好きだ』と泣きつけば、迷ってくれるかな)
女(――でも、そんなことは、できなかった)
女(だって、こんな告白して、振られるとわかっているのに、彼はとても嬉しそうな顔をしていたんだ)
女(もう、私の入る隙間なんてどこにもない)
女(なら、すべきことは一つ、涙をこらえてかつて愛した人のためにできることは――たった一つ)
女「――最低」バシン
女(本当に、最低だ)
124:
女(その後私は走った)
女(ただひたすらに逃げた)
女(自分でもびっくりするくらい、まるで子どもみたいに泣いた)
女(人目も気にせず泣いた)
女(力尽きて、その場にへたり込んだあとも泣いた)
ポンッ
女「……へ?」グスッ
女友「あーらら、この様子じゃフラれたな??」
女「うぅ……なんでアンタは私のいく先々にいるのよ……」
女友「泣いてる親友を放っては置けないでしょ」ニカッ
女「うぅ……死ねえ……」
女友「いいさいいさ泣けばいいさ、女は男一筋だったからわからないだろうけどね、失恋の涙は女を強くするのよぉ」
女「ばかやろーーーー!」
125:
女(不思議と、立ち直れる気はした)
女(顔面グシャグシャの私を止めどなく流れる体液も気にせず抱きしめてくれた憎らしい悪友のおかげかもしれない)
女(――きっと、私の恋は消費期限切れだったのだろう)
女(傷んだ恋をうっかり口にしてしまったから、お腹が、胸が、痛くなって泣いた)
女(――きっと、ただそれだけ)
女Side 完
146:
おまけのおまけ
――アナザーワールド
男「俺はずっと前からあなたのことが好きでした!」
男「…………」チラッ
女「」ワナワナ
男(お、怒ってる……?)
女「……も……き……」
男「へ?」
女「私も……ずっと好きだった……」フルフル
男「え」
男「ええええええええ!?」
147:
男(まさか……まさかこんなことになるとは……)
男(いや、予兆はあった、あの許嫁からの電話だ)
ポワンポワン
許嫁『男さん、本当に大丈夫ですか?』
男「……大丈夫だって、そんなに心配すんなよ」
許嫁『でも……』
男「俺だって男だ、腹括ってるよ」
許嫁『それもそうなんですが……もし、もしですよ?』
許嫁『相手の女の人が男さんの告白にOKしてしまったら……』
男「……え? いやいや、それはないって、ああ絶対にだ」
許嫁『それならいいのですけど……』
男「それじゃあ切るぞ、上手くいったらまた電話するから、ああ、またな」ピッ
ポワンポワン
男(圧倒的フラグッ……!)
148:
男(まあ許嫁のこと事前に話しとかなかった俺も悪いんだけどね……)
女「ふーん、それで、ここがあの女がいるハウスなのね」
男「何故みなさん僕の家の前で決まって不穏な言葉を吐きたがるのでしょう」
女「うふふ、男の部屋に行くの初めてだからなー楽しみだなー」
男「女さんハイライトをどこかに忘れてますよ」
150:
ガチャ
許嫁「あ、お帰りなさい男さ――え、ど、どなたですか?」
男「ああー、すまない許嫁、端的にいうと……失敗した」
女「あらあなたが許嫁さん? 上がらせてもらうわねー」
許嫁「ちょ、ちょっと待って下さい!」
男「お母さん今から僕は修羅場を踏み越えます、生きて返ってこられたら今度の休みに帰省したいです」
152:
男「かくかくしかじかしかくいむーぶ」
男「――と、いうことなんですが」
許嫁「そ、そんなあ……」
女「そういうわけだから、明日にはここから出て行ってね」
許嫁「な、なんでですか!?」
女「決まってるでしょ、彼の家に女の子がいて平気だと思う?」
許嫁「彼って……私は男さんの許嫁です!」
女「勝手にそう言ってるだけでしょう!」
許嫁「あ、あなたこそ!」
男「違う意味で恋愛ができないこころとからだになりそう」
153:
女「ちゃーんと言質だってあるんだから! ね、男、私の事好きだよね?」
男「お、おう、まあな」
許嫁「私だって……! 男さん、私と結婚してくれるって言ってくれましたよね!?」
男「う、うん、そうだな」
女「なんですって?そもそも何よ! 突然しゃしゃり出てきて! 私は高校のときからずっと男のことが好きだったんだから!」
許嫁「私もです! ずっと男さんのこと見てました!」
男「ね、君たちここは一つ穏便に……ねっ?」
女&許嫁「「男(さん)はちょっと黙ってて(ください)!」」
男「」
154:
女「そもそも男が優柔不断なのがいけないんじゃない!」
男「あ、やっぱりそうなる? やっぱり矛先こっち向く?」
許嫁「やめてください、男さんが怖がっているじゃないですか……」ダキッ
許嫁「でも私ちょっぴり悲しいです、信じて送り出したのに……」スリスリ
女「ちょっと! ドサクサに紛れてくっつかないでよ!」ベシッ
男「いでっ」
許嫁「まあなんて乱暴な……」
女「あんたがそうさせてるんでしょ!」
ギャースカワーワー
男「こりゃ埒が明かん」
156:
男「とにかく、もう夜も遅いし……議論は明日にでも……ねっ?」
許嫁「……そうですね」
女「仕方ないわね」
許嫁「それじゃあ男さん、寝ましょうか、それとも先にお風呂でお背中でも……///」
女「げふんげふん!」
許嫁「あら、どうしたんですか、早くお帰りになったほうがいいかと……」
女「決めた、私ここに泊まる」
男「え、ええええええ!?」
157:
男「そりゃいったいどういう……」
女「男とそこの泥棒猫が何か間違いでも起こしたら事でしょ!」
男「信用ないなあ……」
許嫁「私達は夫婦になる身ですから、間違いではありません! むしろあるべき行為だと思います!」ムギュ
男「あた、あたた」
女「なによデレデレしちゃって……私だって!」ギュッ
スカッ
女「」
159:
許嫁「あ、あの、女性の魅力は何も胸だけでは――はっ!」
男「」最高の笑顔
女「ふんっ、男は貧乳派なのよ!」フンス
許嫁「むむむ……」バチバチバチ
女「ぎぎぎ……」バチバチバチ
男「はいはいストップストップ」
男「もう俺も疲れたから寝ましょうほらほら」
女許嫁「「ふんっ!」」プイッ
男「どうしてこうなった」
162:
――ベッド
男「さーてお待ちかねおやすみタイム」
男「一日の疲れを癒やす至福の睡眠時間……のはずが」
女「」ガシッ
許嫁「」ギュッ
男「つらい」
163:
モゾモゾ……
女「むにゃむにゃ……」
許嫁「すぅすぅ……」
男「だから眠れないって、こんな状況で」ゴソゴソ
男「俺を受け入れてくれるのベランダだけだよ」
男「……しかし」
男「どちらかを選ぶこと……俺にはできるのだろうか?」
男「……はぁ」
164:
――チュンチュン
男「」ゲッソリ
女「ちょっと! どきなさいって!」
許嫁「嫌です! 男さんの朝食を作るのは私の務めです!」
女「いいえ私が作ります―!」
男(二人が朝から制空権ならぬ制キッチン権を争って白兵戦を繰り広げている)ゲッソリ
許嫁「男さんも私のお料理のほうが美味しいと思ってくれるはずです!」
女「男は調理実習のときに私の料理を食べて『いいお嫁さんになれるよ』って言ってくれたもん!」
ギャーギャー
男「」ゲンナリ
166:
朝から晩まで俺を取り合って二人がいがみ合う
『私のために争わないで!』とは言うが洒落にならない
自分のせいだとはわかってはいるが、実際板挟みになるとその心労は計り知れない
そんな日々が何日か続き……ついに
――俺の中で何かが切れた
167:
許嫁「た、大変です女さん!」ドタドタ
女「なによ……」
許嫁「こんな手紙を置いて男さんが……」
女「どれどれ?」
『たびにでます さがさないでください』
女「( ゚д゚)」
女「( д)  ゜゜」
169:
女「な、な、なんで!? ていうか一人暮らしなのに家出って!」
許嫁「……きっと私達が醜い争いを繰り返しているから嫌気が差してしまったんだと思います」
女「そんなぁ……」
許嫁「女さん、今私達は手と手を取り合うべきなのです、男さんの幸せのために」
女「……悔しいけど、確かにそうかもね」
許嫁「女さん」
女「許嫁ちゃん」
ガシッ!(固い握手)
――その頃
男「わーここどこだろー?」
男「とちぎー? こがねいー?」
男「わぁ、なんもないやぁ」
170:
女「何か心当たりはない? 行きそうな場所とか」
許嫁「いえ……あ、もしかしたら同僚さんならなにか知っているかもしれません」
女「オーケー、私は高校の同級生あたってみるからそっちよろしく!」
女「はい!」
171:
prrrr
同僚「もしもし?」
許嫁「もしもし、同僚さんですか? あの、あのっ」
同僚「どうしたの許嫁ちゃん、落ち着いて落ち着いて」
許嫁「男さんが――」
同僚「なに!? 失踪したァ!?」
ザワザワザワ
同僚「うっ……ともかく、俺も会社早退してそっちに向かうから」ブツッ
許嫁「ああ、男さん……」
173:
女「私の知り合いが宇都宮で男らしき人を見かけたって!」
許嫁「もうそんな遠くまで……」
女「とにかく向かうわよ!」
許嫁「は、はい!」
タッタッタッ
パッパー!
同僚「二人とも早く乗った乗った!」
許嫁「あ、ありがとうございます!」
女「渡りに船ね!」
174:
同僚「あいつ……一体何やってんだ」
許嫁「まさか……これを苦にじさ――」サー
女「ちょっと! 縁起でもないこと言わないでよ!」
同僚「それはないだろうよ、一応会社には休むって連絡入ってるし」
同僚「これから死のうなんて人間がそんなことするとは思えない、まあ律儀なところはあいつらしいが」
許嫁「うぅ……」
女「お願い、無事でいて……!」
175:
――そして日は暮れ
同僚「クソッ、もう栃木県一周はしたぞ……」
許嫁「もしかしたら県外にもう出てしまったのかも……」
女「一体どこに――えっ?」
許嫁「ん?」
同僚「ん?」
177:
ガヤガヤガヤ……
男「あれ、どうしたの揃いも揃って、つか同僚お前仕事は?」
同僚「マジかよ……灯台下暗しとはこのことか」
同僚「まさかいつもの居酒屋にいるとは……宇都宮での目撃証言はなんだったんだ?」
男「ん、餃子食って帰った」
同僚「はぁ……もういい、あとは若い二人――もとい三人に任せるわ」フリフリ
許嫁「おどござぁぁぁぁん!」グスグス
女「まったくどこまで心配かければ気が済むのよ!」
男「許嫁はいつもの二割増しで鼻水出てるぞ、女はいつもの二倍怖い」
男「なんだよ、ちょっと気分転換に旅に出てただけだろ、ちゃんと置き手紙もしたし」
女「あの手紙で心配するなって方が無茶な話よ……」
許嫁「うえええええええん!」
男「まあ、二人とあと同僚は俺のこと心配してくれたんだな、ありがとうな」
男「……というかなんか仲良くなった? 普段からそうしてくれるとありがたいんだけど」
女「人の気も知らないで……」ビキビキ
178:
――帰宅
男「……で、その紙は?」
許嫁「決まってるじゃないですか///」
女「婚約届と、養子縁組届よ!」
男「……ん?」
男「…………ん?」
男「ちょっと待ってどういうことなの」
許嫁「男さんがいなくなってから私達二人で決断したんですっ!」
女「二人の愛情の深さは優劣つけがたいから、二人とも愛してもらうことにしたの」
女「まあ一夫多妻は日本じゃ認められてないから養子縁組は裏ワザみたいなものね」
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