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キョン「……これはきっと夢だ」


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7:
キョン「最近、よく夢を見るんだ」
ハルヒ「夢?」
キョン「ああ」
ハルヒ「……なんかとてつもなく平凡な話題ね」
キョン「まあそう言ってくれるなよ」
ハルヒ「どうでもいいわそんな事」
キョン「……」
8:
いつもと変わらぬ放課後、SOS団部室。
傾きだした太陽が窓から差し、簡素な部屋を照らしている。
キョン「なんていうか……この……すごくリアルな夢なんだ」
ハルヒ「……」
キョン「別に大した事ない夢なんだが……普通に登校してたり、授業受けてたり」
ハルヒ「ふーん……」
みくる「お茶を淹れましたぁ」
古泉「どうも」
ハルヒ「みくるちゃん、ちょうだい」
9:
メイド服姿の朝比奈さんがいつものようにお茶を全員に配る。
俺はその温かいお茶を飲む。
いつも通りの風景。
みくる「今回はお茶っ葉を少し変えてみたの」
キョン「すごく美味しいですよ、朝比奈さん」
みくる「どうもありがとう」
ハルヒ「ズズー」
長門「……」
古泉「何か気になる事があるんですか?大した内容ではない夢なのに」
キョン「ここんとこ毎日見るんだよ」
古泉「ほう」
10:
キョン「いつからだったか正確には思い出せないが……二週間近く前からかな?」
ハルヒ「それは何やら変な話ね」
キョン「ようやく食いついてきたか」
古泉「夢というのは、その日の出来事を脳が記憶するために起こる現象と聞きます」
キョン「平凡な日常を送ってる事を脳髄の奥にまで刻まれてるわけか」
ハルヒ「あんたにはお似合いじゃない」
キョン「うるせえな」
長門「……」
その日は特に何も変わった事もなく暮れていった。
いつもの通りに飯を食べ、風呂に入り、ぐうたらと色々してから、寝た。
11:
俺は学校へ続く坂道を登っている。
太陽はしつこいくらいに俺の頭へ降り注ぎ、髪をじりじりと焦がしている。
谷口「おーっすキョン」
キョン「よう」
谷口「お前数学やったか?」
キョン「あれ……宿題なんて出てたか?」
谷口「なんだお前も同類かぁー」
普段通りの谷口。
いい意味でフランク、悪く言って馴れ馴れしい態度は朝のテンションでは少し対応に困る。
13:
ガラッ
谷口「ういーっす」
国木田「おはよう」
キョン「よう」
谷口「国木田は数学やってきた?」
国木田「うん、やってあるけど……時間的にヤバいんじゃない?」
谷口「俺の写しスキルを舐めるなよ!?」
国木田「キョンもどうせやってないんだろ?」
キョン「ああ、でも俺はいいよ」
キョン「今更面倒臭い事だ」
15:
机に突っ伏してまどろんでいると、不意に後方から拳を喰らった。
キョン「いてっ」
ハルヒ「まーた遅くまでゲームでもしてたんでしょ?」
キョン「そんなんじゃねーよ」
ハルヒ「じゃあなんなのよ?」
キョン「最近変な夢ばかり見てさ」
ん?
何かおかしい。
俺は自分で口走ったその言葉に違和感を感じた。
夢……?
「……ョン!起きなさいよ!キョン!」
17:
キョン「……ん?」
ハルヒ「何寝ぼけてんのよ!さされてるわよ!」
昇りきった太陽が窓際の席を暖かい光で包んでいる。
昼過ぎ……?五限……?
「ようやく起きたか。さっさと教科書開け」
キョン「あれ……?」
「204ページから」
キョン「数学……?」
ハルヒ「もう、バカ!現国よっ!」
授業中のうたた寝の合間に見た夢だったらしい。
俺はハルヒの教科書を借り、なんだかよく分からんままその場をやりくりした。
19:
キーンコーンカーンコーン……
ハルヒ「もう!恥ずかしいわね!」
キョン「……ああ、すまん」
ハルヒ「まーた遅くまでゲームでもしてたんでしょ?」
キョン「そんなんじゃねーよ」
昨日も俺は夢を見た気がする。
しかし近頃の俺の夢を見る頻度はとんでもないな。
授業中まで夢に追われてたら、なにがなんだか分からなくなっちまう。
キョン「……」
キョン「なにが……なんだか……」
21:
いつもと変わらぬ放課後、SOS団部室。
傾きだした太陽が窓から差し、簡素な部屋を照らしている。
キョン「……それで結局犯人はどいつだったんだ?」コトッ
古泉「真相は分からず仕舞いです。読者の想像にお任せする、と作者は言いたいようですね」コトッ
キョン「なんだか釈然としねーな」コトッ
古泉「あっ」
キョン「チェック」
みくる「お茶を淹れましたぁ」
古泉「ありがとうございます……しかしお強いですねえ」
キョン「お前が弱いだけだ」
ハルヒ「みくるちゃん、ちょうだい」
22:
夢中夢か。自分も2回ぐらい経験ある・・・
24:
メイド服姿の朝比奈さんがいつものようにお茶を配る。
俺はその温かいお茶を飲む。
いつも通りの風景。
キョン「すごく美味しいですよ。朝比奈さん」
みくる「どうもありがとう」
古泉「ズズー」
長門「……」
ハルヒ「それにしても暇ねー……キョン、何か面白い話ない?」
キョン「いきなりそんな事言われてもな」
長門「……」
キョン「……最近、よく夢を見るんだ」
ハルヒ「夢?」
キョン「ああ」
ハルヒ「……なんかとてつもなく平凡な話題ね」
キョン「まあそう言ってくれるなよ」
28:
ん?
何かおかしい。
俺は自分で口走ったその言葉に違和感を感じた。
夢……?
キョン「……あれ、この話って前にもしなかったっけ」
ハルヒ「なに言ってんの?初めて聞くけど」
古泉「僕も、初めてですね」
みくる「私もですぅ」
長門「……」
キョン「そうか……」
大した内容の夢ではないが、何故かそれを毎日見続けている事を俺は皆に話した。
平凡な日常の中の、たまにある変な話として、話題はその場に溶けて流れていった。
30:
長門「……」パタン
キョン「お、もうこんな時間か」
古泉「そのようですね」
ハルヒ「じゃあ、今日はこれで終わり!」
みくる「はぁい」
いつも通りの帰り道。
夕日が道路を赤く染めている。
閑静な住宅街に、踏切の音が騒がしく響き渡っている。
キョン「……ん?」
何も考えずに歩いていた俺の前方、電柱の裏から小柄な人影が不意に現れた。
灰色のカーディガンに北高の制服。こいつは……
キョン「長門?」
長門「……」
32:
夕陽を背負った長門の顔は逆光で暗く、表情が見えない。
まあ、長門の事だからいつもと同じ無表情だろうけどな。
キョン「どうした長門?お前のマンション……こっちじゃないよな」
長門「……」スッ
キョン「……?」
長門「気をつけて」
静かに言うと、長門は古びた文庫本を俺に差し出した。
なんだかよく分からないまま受け取る俺。
長門「念の為」
一言そう残し、長門は俺を置いてその場を歩き去っていった。
34:
こういう経験は何度かある。
何らかのトラブルに巻き込まれそうな時、長門はこんな感じに接触してくる事を俺は十分承知している。
キョン「……やれやれ」
キョン「また何か起こるのか?」
俺はその文庫本を鞄にしまい、帰路についた。
いつもの通りに飯を食べ、風呂に入り、ぐうたらと色々してから、寝た。
37:
いつもと変わらぬ放課後、SOS団部室。
傾きだした太陽が窓から差し、簡素な部屋を照らしている。
掃除当番に当たっているのが多いらしく、
部屋には俺と、メイド服姿の朝比奈さんしか以外に誰もいない。
こぽこぽとお茶を淹れる音が心地良く響く。
みくる「はい、キョン君」
キョン「ありがとうございます。……まだ皆揃ってないのに、いいんですか?」
みくる「いいの。キョン君には先にあげちゃう」
朝比奈さんは悪戯っぽく微笑む。
くそぅ、可愛い。
キョン「ズズー」
みくる「あれ?その本……」
キョン「はい?」
40:
机に投げられた俺の鞄の口から、薄っぺらい文庫本が覗いていた。
みくる「私、これ読んだ事ありますよ」
キョン「そうなんですか。どうでした?」
みくる「とても興味深い本です」
キョン「ほう」
みくる「長門さんから借りたりでもしたんですか?」
キョン「ええ、そうですよ」
ん?
長門から借りた?
俺はいつ長門に本を借りたんだっけ?
思い出せない……昨日?……もっと前……?
46:
俺は学校へ続く坂道を登っている。
空は陰鬱な灰色で塗り潰され、朝のテンションを更に低くする。
国木田「おはよう、キョン」
キョン「よう国木……ッうわあっ!!!」
国木田「?どうしたのキョン?」
聞き慣れた声に振り返った俺は、心臓が止まるほどの衝撃を受けた。
国木田の顔が、無いのだ。
眼、口、鼻があるべき顔が、真っ平らな皮膚でつるつるになっている。
普段通りの朝に、のっぺらぼうに出くわす事を誰が予想できるだろうか。
49:
キョン「お、お前」
国木田「どうしたの?そんなにびっくりした顔して」
突然、顔のちょうど中心あたり、本来なら鼻筋が縦に通っている場所に、亀裂が走った。
それは口だった。
縦に裂けた口から白い歯が覗き、笑い声が漏れだした。
国木田「ははははははははは、はははははははははははははは」
あまりにもおぞましく、俺は坂を全力で駆け上がり、逃げた。
51:
キョン「はぁ……はぁ……なんだ、あれは」
心臓が爆弾のように打っている。
一体あれはなんだ?何がどうなっているんだ?
下駄箱に着くと、谷口がうずくまって靴を脱ごうとしている。
俺は思わず話しかけた。
キョン「谷口っ!国木田、国木田がっ」
谷口「ういっすキョン!元気か?」
キョン「!?」
後ろから不意に谷口の声が聞こえてきた。
あれ……?谷口は……お前……俺の前にいるじゃないか……
54:
振り返ると、そこにはマネキンが立っていた。
キョン「……!?」
谷口「ういっすキョン!元気か?」
マネキンは虚ろな眼を俺に向け、何度も何度も同じ台詞を繰り返していた。
壊れてしまったカセットテープのように。
キョン「うわああああああっ!!!」
その場から逃げるように走り出し、俺は教室へ向かった。
荒い息のままドアを開けた。
ガラッ
キョン「はぁ……はぁ……」
キョン「……?」
教室は不自然なほどに静かだった。
うつむきながら呼吸を元に戻そうとしていた俺は、頭を上げて教室を見渡した。
56:
キョン「……なんだこれは」
教室には異様な空気が立ちこめていた。
人の気配が全く無い。電気が点いていないし、カーテンが閉め切ってある。
朝にも関わらず教室は真っ暗だった。
キョン「電気は……」
蛍光灯を点けようと、入ってすぐの壁にあるスイッチを押した。
パチッ
教室が明るくなった。
キョン「!?」
57:
並べられた机に、クラス全員が座っている。
さっきまで誰もいなかった教室が、生徒で満たされていた。
「じゃー次、204ページから読め」
教卓に立っているのは現国の教師だ。
合成音声のような声で指名する。
「「「キョン!!なに寝ぼけてんのよ!さされてるわよ!!」」」
突然、クラス全員が首をひねり、俺を一斉に見た。
全員、ハルヒの顔をしている。
血走った眼が小刻みに震え、俺を凝視する。
俺はもう限界だった。
58:
キョン「ああああああああああっ!!!」
俺は教室を飛び出し、何処へ行くのも分からず廊下を走った。
15分近く廊下を走り続けた。
それでも校舎の果てはやって来ない。
キョン「はぁ……はぁ……なんなんだよ、畜生」
俺は廊下に倒れた。
自分の荒い息だけが、誰もいない廊下に響いている。
古泉「おや、どうされました?」
床に伏した俺の上から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
キョン「古泉!!」
古泉「大丈夫ですか?さあ、手を」
61:
古泉はいつも通りの笑顔を浮かべながら、倒れている俺に手を差し伸べた。
その手を掴む俺。
グニャッ
キョン「……あ?」
掴んだ古泉の手の感触は、まりで粘土のように柔らかく感じた。
いや、それは実際に柔らかかったのだ。
俺は古泉の手を握りつぶしていた。
キョン「うわっ!!!」
慌てて手を離し、古泉を見上げる。
それは、古泉の形をした茶色い土くれだった。
俺に手を差し出したままの姿勢で固まっている。
茶色一色の人形の顔は、笑顔が刻まれたように描かれているだけだった。
キョン「……はは、ははははははは」
訳も分からず笑いが溢れてくる。
俺は立ち上がり、また走り出した。
64:
キョン「……これはきっと夢だ」
キョン「そうだ、これは夢なんだ」
キョン「こんな事が現実にあってたまるか、これは夢だ……これは……」
キョン「夢だ……夢だ……夢だ……夢だ……夢だ……夢だ……」
走る俺の腕に、ひんやりした何かが絡みついた。
キョン「!?」
無数の腕が、俺の後方遥か遠くから蜘蛛の糸のように伸びている。
わきわきと不気味に動く手に、俺は絡めとられていった。
キョン「やめろっ!!やめろぉぉぉ!!!」
俺は持っていた鞄を振り回し、腕を払おうとした。
しかし腕は離れない。
足も掴まれ、バランスが崩れそうになる。
キョン「うわああああああああ!!」
66:
腕は体に巻き付き、爪を立てて食い込ませている。
俺は無我夢中で鞄を振るった。
バサッ
キョン「……!?」
半開きだった俺の鞄から一冊の本がこぼれ落ち、俺の足元に転がった。
それは長門に手渡された文庫本だった。
俺はいつかの帰り道での長門の警句を思い出す。
そうだ、長門のくれた本。
きっとこれには……何かしらヒントや助けになる事が託されているに違いない。
キョン「もう少し……!」
なんとか腕を伸ばし、本を手に取った。
68:
パラッ
開かれた文庫本から、一枚のしおりがひらりと落ちた。
しおりには文字が書かれている。
キョン「……『うつし世は夢、夜の夢こそまこと』……?」
それを呟いた瞬間、俺は意識を失った。
73:
「……ョン!起きなさいよ!キョン!」
キョン「……ん?」
ハルヒ「なに寝ぼけてんのよ!……団長に心配かけさせるなんて、とんだ不届き者ね!」
みくる「よかったぁ……キョン君……」
長門「……」
気が付くと俺は白いベッドの中にいた。
わずかな薬品の匂いが鼻をつく。どうやら保健室らしい。
古泉「大丈夫ですか?」
キョン「あれ……俺なんでここに……?」
古泉「今は放課後ですよ。貴方が熱中症で倒れたと聞いて」
キョン「熱中症……?」
74:
ハルヒ「ほっんと貧弱なんだから!少しは体鍛えなさいよね!」
古泉「まあまあそう言わずに。一番心配していたのは涼宮さんじゃないですか」
ハルヒ「うっ……うるさいわね!///団長が団員を心配するのは当然よっ!」
みくる「……」
古泉「まあ今はゆっくり休んで下さい」
キョン「……あ、ああ」
夢だったのか?
常識的に考えれば、俺が見た光景は現実では有り得ないものだろう。
しかし、俺は先刻の恐怖の記憶を今も鮮明に覚えている。
教室の異常な光景も、生々しい腕の感触も……
あれは……本当に夢だったのか……?
キョン「なんなんだ……一体……」
77:
その後はそのまま保健室でのんびりとした。
下校時刻になる頃にはすっかり調子を取り戻した。
キョン「悪いな。心配かけて」
ハルヒ「……!ふんっ、分かればいいわよ分かれば」
みくる「……」
キョン「多分もう大丈夫だ」
古泉「お大事にどうぞ」
長門「……」
ハルヒ「二度とブッ倒れるんじゃないわよ!」
キョン「ああ」
ハルヒ「あたし教室寄って帰るから、お先?」
古泉「さようなら」
みくる「あ、私もちょっと部室に忘れ物しましたぁ」
ハルヒと朝比奈さんは残り、それ以外は学校を後にした。
78:
帰り道、校門をちょうど出たところに、長門が立っていた。
キョン「!」
長門「……」
キョン「……長門、俺を助けてくれたのか?」
長門「そう」
キョン「そうか……ありがとな」
長門「別に、いい」
キョン「……なあ長門、今回は一体何が起きてるんだ?」
長門「……」
キョン「……」
何処へ向かうのも知れないまま、俺たちは夕暮れの道を歩き出した。
長門は歩きながら、ポツポツと喋り出した。
79:
長門「あなたは重度の幻覚症状を起こし、現実と夢の区別ができない状況にあった」
キョン「……!」
長門「幻聴や記憶障害も伴っていたと考えられる」
キョン「なんてこった……」
長門「私が本に仕込んだ非常用簡易ワクチンによってそれは治療された」
キョン「まさか……そんな事……」
長門「……」
81:
キョン「……なあ長門、俺が突然そんなんになったのは訳はなんなんだ?」
長門「……」
キョン「またどっかの未来人やら超能力者やらの仕業か?」
長門「そうではない」
長門「今まで起きた事件は、ほぼ全てが涼宮ハルヒ及び涼宮ハルヒの周囲における超常的な力によるもの」
長門「今回はそのような力は関与していない。もっと単純で、原始的な問題」
キョン「単純で原始的?」
長門「そう」
84:
キョン「幻覚を起こすのがどう原始的なんだ?」
長門「クスリ」
キョン「……え?」
長門「あなたに幻覚剤を摂取させた人がいる」
なんつう話だ。
俺が普段通りのスクールライフを送っている中で、気付かれずに薬を盛ろうとした奴がいるとは。
世の中は俺の思っていた以上に怖いらしい。
87:
キョン「長門……」
長門「なに」
キョン「誰なんだ……?俺にヤバい薬を盛ったのは」
長門は立ち止まると、俺の方に振り返った。
俺の眼を見据えて、ゆっくりと口を開いた。
長門「それは……」
89:
ギャギャギャギャギャギャ!!
キョン「うおっ!?」
長門「……」
俺と長門の目の前に、黒塗りの車が派手にドリフトを決めて停まった。
道路にタイヤの跡がくっきりと残った。
キョン「……この車は……」
ガチャッ
古泉「探しましたよ。こんな所にいましたか」
思った通り、車から古泉が出てきた。
少し様子がおかしい。
いつものニヤニヤ笑いは消えていた。
90:
古泉「緊急事態です。お二人ともすぐに乗って下さい」
運転席に森さんが、助手席に古泉が搭乗していた。
俺と長門は後ろに座り、シートベルトを締めて森さんの走り屋よろしく運転テクに備えた。
キョン「何があったんだ!?」
古泉「……」
長門「……」
古泉「……落ち着いて聞いて下さいね」
キョン「……」
古泉「涼宮さんが刺されました」
92:
キョン「は!!?」
長門「……」
古泉「つい今し方監視から連絡が、場所は部室です」
キョン「意味が分からん!なんであいつがそんな事されなきゃいけない!?」
古泉「事態は複雑になっているのですよ」
キョン「大体、誰だ?誰かそんな事しでかしたんだ」
古泉「……」
長門「……」
キョン「おい」
古泉「信じがたい話でしょうが……」
キョン「早く言え」
古泉「朝比奈さんです」
93:
俺は絶句した。
朝比奈さん?なんで朝比奈さんがハルヒを刺さなきゃいけない?
いつも部室で笑顔を振りまいていた朝比奈さんが?
SOS団の愛らしいマスコットの、朝比奈さんが?
何故?
キョン「……なんだって?」
古泉「残念ですが、事実です」
長門「……」
キョン「……なんで……?」
古泉「それを今から、確かめに行くんです」
森さんが飛ばす車は正門に入り、砂埃を上げて停まった。
97:
古泉「では、行きます」
キョン「……」
森「念の為、持っていきなさい」
森さんはジャケットから何やら黒い物を取り出し、古泉に渡した。
それは小振りの拳銃だった。
森「万が一、という事も考えられます。用心して」
古泉「了解」
キョン「おい……!そんな物騒な物」
古泉「万が一の手段です」
キョン「……!」
古泉「実感がまだ湧かないかもしれませんが、彼女は殺人未遂を起こしたのです。それを頭に置いて下さい」
キョン「……」
長門「……」
古泉「急ぎましょう」
98:
俺たちは全力で部室棟へと向かった。
先頭の古泉がドアを蹴り開けた。
バンッ!!
キョン「……!」
古泉「……」
長門「……」
みくる「……あ、キョン君……」
100:
奥の机の陰になった場所に、ハルヒがうつ伏せになって倒れている。
隣に立つ、返り血を浴びた朝比奈さん。
その手には包丁が握られている。
部屋に真っ赤な絨毯が敷かれたように、床が血で染まっていた。
キョン「朝比奈……さん……?」
みくる「ごめんねキョン君……私……」
朝比奈さんはそう言いかけて黙ってしまった。
俺は未だにこの状況が信じられない。
……何故、俺に謝るのだろうか?
101:
何故置き去りにして車でお出迎え
102:
古泉「説明して……頂けますか?」
古泉「何故こんな事をしたのかを」
みくる「……」
キョン「……」
長門「……」
古泉「貴女には説明する義務がある」
古泉「分かりますね?」
しばらくすると、朝比奈さんはゆっくりと語り出した。
103:
みくる「分かってたんです、好きになっちゃいけない事くらい」
キョン「……?」
みくる「それは決められている事だから……今と未来を繋ぐために、世界が世界であるために」
みくる「はじめは、自分を押し殺そうとしたんです」
みくる「でもね……私はもう駄目だった。壊れそうだった」
みくる「いや、もう壊れてたのね……世界と自分の願望とを天秤にかけてしまった」
キョン「……」
古泉「……」
105:
長門「彼のお茶に幻覚剤を混ぜていたのはあなた」
みくる「……そうです。長門さんにはお見通しね。黙ってくれるかもって思ってたけど」
長門「私の役目は監視。でも例外もある」
キョン「……」
みくる「幸せな2人を見る事ができなかったの」
みくる「こんな世界なんか忘れて、あなたと一緒に何処か遠いところへ行きたかった」
みくる「ただ好きなだけだったのに……どうしてこんな事になっちゃったのかな……」
朝比奈さんは包丁を手で弄びながら、独り言のように呟いていた。
108:
みくる「ねえキョン君、一緒に逃げましょう」
キョン「……え?」
みくる「世界は壊れたおもちゃなのよ。だから一緒に逃げましょう」
狂気じみた瞳を向ける朝比奈さんは、血に濡れた両手を突き出して、言った。
古泉「それ以上動かないで下さい」
みくる「……!」
110:
古泉は冷たくそう言い放ち、銃を朝比奈さんに向けた。
みくる「そんなもの怖くないです」
古泉「……」
みくる「それに古泉君は、本当に私を撃ったりできるの?」
古泉「……ッ!」
みくる「キョン君、逃げましょう……ワタシと……ニゲヨウ……ふふふふ」
キョン「……!!」
古泉「だから動くなと言ってるでしょう!!」
112:
その瞬間、鼓膜を突き破るような轟音が響いた。
俺に向かってきた朝比奈さんはバランスを崩し、ドアの前に転がった。
白いふくらはぎに一筋の血が伝っていた。
みくる「うぅ……キョン君……」
キョン「……!」
古泉「待て!!」
古泉が叫んだのと、朝比奈さんがドアを開けて廊下へ出ようとしたのは、ほぼ同時の事だった。
長門「大丈夫」
みくる「!?」ガクン
長門「四肢の筋肉活動を停止させた」
廊下へ走り出た朝比奈さんはその勢いで床に倒れ、その身を引きずった。
117:
みくる「……ぅぅ」
キョン「……朝比奈さん」
みくる「キョン君」
キョン「……?」
みくる「今度の週末は、どこへ行きましょうかぁ……?」
キョン「……え?」
みくる「この前買ってもらった綺麗なお洋服着てくるから……楽しみ……」
焦点の定まらない眼をしばたきながら、朝比奈さんは嬉しそうに笑う。
幸せそうな表情を浮かべて、歪んだ口から俺の名を洩らす。
みくる「うふふ……キョン君……ふふふふふふ」
キョン「……」
長門「応える必要は無い。彼女は幻覚を見ているだけ」
120:
古泉「……彼女も薬を常飲してたのですか」
キョン「……」
古泉「二人で夢の世界に逃げようとでも思ったのでしょうか……?」
古泉「いくら夢に逃げたって、現実から逃げ切る事はできないのに」
キョン「……」
朝比奈さんは、突如がくんとうなだれるように頭を床に落とした。
しばらく経つと、ボソボソと喋り出した。
みくる「……これが全部夢だったらいいのにね」
キョン「……」
122:
みくる「ある作家の言葉でね、『うつし世は夢、夜の夢こそまこと』っていうのがあるの」
キョン「……」
みくる「この世界がみんな、作り物だったらいいのになぁ……」
古泉「……」
長門「……」
みくる「……新月……追われた……」
キョン「……?」
みくる「二人の……影を……かぁくして……」
近づいてくるサイレンの音に混じって、朝比奈さんのか細い歌声が聞こえてきた。
123:
 新月
 追われた
 二人の影を
 かくして
 ぼくらは
 逃げよう
 こわれたおもちゃ
 世界は
 くらく ひくく 流れて
 君と いくよ
 パノラマ島へ
125:
古泉「……これからどうなっちゃうんでしょうね」
キョン「何が?」
古泉「この世界の話です」
キョン「……さあ、俺たちにとっちゃスケールがでかすぎる話さ」
朝比奈さんの歌声は、悲しいほどに綺麗だった。
世界を壊してまで、俺と一緒になる事を望んだ朝比奈さんは、
いつまでも、いつまでも、歌い続けていた。
127:
ひとまず終わりです
寝て起きて残ってたらエピローグ的なの投下するかもわからん
128:

132:

俺は朝比奈さんとならどこまでも行けるよ
156:
『同級生を刺した女子生徒、護送中に忽然と消え去る!』
俺は辛気くさい雰囲気が漂う病院のロビーで新聞を広げている。
あれから三日経った。
ハルヒはまだ目を覚まさないし、朝比奈さんは消えてしまった。
残された俺たちはただ途方に暮れていた。
キョン「未来に帰ったのかな」
古泉「おそらくそうでしょうね」
長門「……」
157:
キョン「……お前忙しくないのか、バイト」
古泉「涼宮さんが昏睡状態に陥ってから、不思議な事に閉鎖空間は一つも発生していません」
キョン「そうか」
長門「……」
古泉「あれから少し考えてみたのですが……」
キョン「……」
古泉「涼宮さんがこのまま目を覚まさかった場合、どうなるかは僕も全く見当が付きません」
古泉「もし目覚めた場合……何が起こるか、考えられる可能性は少なくとも二つあります」
キョン「……」
長門「……」
159:
古泉「世界が崩壊するか、全てがリセットされてまたやり直されるか」
キョン「……あの時の8月みたいにか?」
古泉「はい。いつからやり直されるか分かりませんが」
キョン「……全部壊れちまうより、忘れた方が楽だろうな」
古泉「そうですよねぇ」
長門「……」
160:
キョン「……なあ、目覚めたハルヒがこの現実を受け入れる、って選択肢はないのか?」
古泉「……どうでしょうね。可能性としては、あり得る話かもしれません」
キョン「……」
古泉「もう、何が起きてもおかしくない状況なんです。しかし、僕たちは今もこうして談話している」
古泉「……なんだか、夢みたいですね」
隣に座る古泉は、天井を眺めながらぼんやりと言った。
161:
帰り道。
俺と長門は陰鬱な灰色の空の下を歩いている。
世界から太陽が消えてしまったように街は暗い。
キョン「それにしても、また世話になっちまったな」
長門「別にいい」
キョン「……」
長門「……」
163:
長門「……本、読んだ?」
キョン「え?」
長門「私が貸した、本」
キョン「いや、まだ読んでない」
長門「読んで」
キョン「……ああ、分かったよ」
いつもの通りに飯を食べ、風呂に入り、ぐうたらと色々してから、その本を開いた。
理想を追い求め夢を見続けた男が、探偵に正体を見破られて
最後は自ら花火と共に散っていく、そんな話だった。
キョン「……パノラマ島、か」
166:
ハルヒ「……」
ハルヒ「……これはきっと夢だわ」
<終>
167:
>>1乙
175:
乙!
今まで寝てたわwww
18

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