貴音「狂気」back

貴音「狂気」


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3:
「いつから…」
貴音「いつから…こんな風になってしまったのでしょうか…」
????????????
生まれた時から、すでに私は呼吸することを強制されていたのではないでしょうか
私はこの時、すべてを決めるべきだったのです。
私の、人生のすべてを…
でも決められるはずもないでしょう?
私は墓の入り口に向かって走り出すしかないのです…
4:
????????????
物心付いた時には私は一人でした
兄が一人、妹が一人の兄弟で育ったはずなのに
何をするわけでもなく、ただ時間が過ぎるのを待つだけ
私を育ててくれたのは母や父ではなく、執事や召使。
誰の愛情も感じず、ただただ何も考えずに無意味に時間が過ぎていきました
思い出など何もありません
6:
生まれ育った古都の王であった父は私の妹を可愛がり、私と妹を産んで早々に亡くなった母は顔も覚えておりません
兄は母が亡くなった数年後、父に勘当され何処へ行ったのかもわかりません
この古都を出るわけでもなく私の人生の道案内をしてくれる親切な誰かをずっと待っているだけの日々
ただ寝そべったり、食事を何度も繰り返したのちに
もう10年が過ぎ去ったことに今更気付くのです
誰も私に、走り方すら教えてくれなかった
私はすでに始まっていたレースのスタートの号砲を聞きのがしたのです…
9:
こんな所で死んでしまっては生まれてきた意味がないのでは、と思い立ち
ようやくスタートラインに立とうとしたのですが
どこがスタートラインなのでしょうか…
????????????
12:
黒井「今日からわが事務所に所属した四条君だ。」
黒井「彼女には輝くものがある。王者になる素質があるのだ」
黒井「まあ。君たちにもその素質は十分にある。精々頑張るがよい…」
貴音「四条貴音です。よろしくお願いします。」
????……
スタートラインに立つことに成功したのかもわかりません。
しかし言えることは”目標”なるものを手に入れたということです
アイドルというものは面妖なるものですね…
人を喜ばせ楽しませる。故に道化のはずなのに…
なぜあそこまで煌びやかに見えるのでしょうか…
14:
????……
響「自分、我那覇響だぞ!よろしくな!えーと…」
貴音「どう呼んでくださっても構いませんよ」
響「じゃあ貴音!」
貴音「よろしくお願いしますね、響。ふふ…」
????……
充実した毎日のはずだったのです…
しかし目指した場所は一向に見えてきません
私はいつか息を切らして日々死が近づいて
一年一年が短く感じられ静かな絶望に身を委ねるだけの体になってしまうのです
もっと言いたいことは沢山あったはずなのに…
17:
????????????
古都を飛び出してから私は小さなアパートに住むようになりました
出来ることなら外に出ず、響やほかのだれかとも合わず、ずっとここにいたい…
小さな暖房器具の前でそんなことを思うのです
画面の向こうでは私ではない別の私が歌い、踊り、
歓声を送るファンの方々 まるで宗教の信者のように
その眼には光が、生きる希望が映し出されているのです
なぜ生きる希望を捨てようとした人間を見て眼に光が宿るのか…
真、面妖なものです…
????????????
19:
美希「みんな?!ありがとうなの?!」
ウォォォォォ?ミキチャーン!!タカネー!!ケッコンシテクレー!!ヒビキー!!
響「ラスト一曲だぞ!皆たのしんでくれよな!!」
ウオォォォォォォォォォ!!!
貴音「最後の一曲は…」
「「「」」」
????……
最後の楽曲が流れる
アップテンポなリズムにエレキギターが跳ねる
もう何回目だろうか
皆心のそこから疲弊しきっていた
21:
????……
黒井「フェアリーちゃん達?今日もよくやってくれた。収入も過去最高を記録しているぞ」
美希「ふーん…そうなんだ…」
黒井「美希ちゃん?どうしてそんなに暗いのだ?金だぞ?金」
美希「どうでもいいかなー…あふぅ…」
響「疲れた…自分、もう限界だぞ…」
貴音「黒井殿、皆もう疲弊しきっています。そろそろ大きなオフをとっても…」
黒井「何を馬鹿げたことを言っている!!お前たちは金の成る木なんだ!!
 今のうち稼がないと何時使えないゴミになるかわからないだろう?」
23:
貴音「黒井殿…!あなたって人は…!」
黒井「まだ口答えするのかぁ?…ふぅん…そうかそうか。褒美が欲しいのか…
 そうだろう?、一流ホテルでキャビア、新居に自家用ジェット!欲しいものは何でも買えるぞ!…クックック…」
貴音「そういうことではございません!響を見てください!これ以上酷使したら死んでしまいます!」
黒井「うるさいぞ!小娘のくせに出しゃばりおって!」バシン!
貴音「ひぅっ!?」
美希「貴音!?」
響「うぅ…貴音…!」
黒井「貴様らも口答えしてみろ!こういう風になるってことをよぉく覚えておくんだな!」
????????????
夢とは儚いものです
夢が夢で無くなるとき
すなわち人が立ち入ることによって
夢のままのほうがよかった… なんて後悔するもの…
????????????
24:
「号外?今人気のフェアリーが961プロから765プロへ?」
ガヤガヤ…
????……
高木「皆も知ってのとおり、今日からともに活動する星井美希くん、我那覇響くん、そして四条貴音くんだ。
 皆、仲良くやってほしい」
「「「「「……」」」」」
P「…よろしく」
響「よ、よろしくだぞ…?」
貴音「よろしくお願いいたします」
美希「よろしくなの…」
????……
961プロから飛び出した私たちは、逃げることしかできなかったのです。
そしてたどり着いた765プロでは歓迎する雰囲気など微塵もありませんでした…
27:
高木「君ィ…たぶんわかっていると思うが彼女たちは961プロの嫌がらせとは全く関係のないのだ。
 今まで961プロにやられていた事の仕返しが、彼女たちに降りかからないよう、注意してくれたまえ」
P「わかりました。皆にもそう伝えておきます」
????????????
伊織「あんたたち…961プロなんかからよくやってこれたわね!!」
響「えーと…なんで怒ってるんだ?」
真「なんで?じゃないよ!ボクたちがどれだけ961プロに妨害工作されたか知らないのかい!?」
美希「ミキ、そんなことしてないの!」
貴音「そうです!私たちは、そんなこと…」
29:
春香「衣装は破られてるし、メイクさんもキャンセルされた。謎の照明事故でテレビは放送されないし、
 押さえてたライブ会場はいつの間にか961名義に買収されてた…何度も…何度も何度も?」
春香「ついにはやよいが…やよいが…ビルの階段から…!」
春香「こんな…こんなひどい事ってないよ…?」
貴音「そんなことが…?」
美希「でも、ミキたちは関わってないの?信じて!?」
千早「今更信じるなんて言葉使われても…」
真「961側だった君たちにそんな言葉は通用しないよ」
????????????
765プロ側も961プロ側も私たちには地獄だったわけです
私たちも彼女たちも
結局ただの人なのです。
30:
やられたらやり返す…私たちが犯した過ちを…
繰り返すのです。ずっと…ずっと…
誰にも誰かを助けることができません。あまりにも数が多すぎて
敵や仲間という言葉が戦いの元凶だと誰が否定できるでしょうか…
????????????
P「大丈夫か?」
貴音「はい…ケホッ…大丈…夫です…」
P「俺はああなってしまった彼女たちをもう止めることはできないかもしれない。」
貴音「もう…わかっている事なのです…」
P「そうか…」
31:
貴音「あなた様は…あなた様は私を蹴り殴らないのですか…?」
P「そんなことはしないよ…貴音たちは何も悪いことはしていない…わかっているんだ…」
貴音「ああ…まだ私にも生きる希望はあったのですね…」
P「…俺、頑張るよ。お前がこの事務所でちゃんと過ごせるように…
  必ずみんなの誤解を解いてみせる…貴音…」
????????????
なぜここまでして私を救おうとしてくださるのでしょうか
あの方の努力は少しずつ、少しずつと皆の考え方を変えていきました。
32:
????????????
貴音「おはようございます」
真「おはよう!」
響「おはよう!貴音!」
千早「美希…早く起きなさい?」
美希「はーいなの…」
貴音「おはようございます、伊織」
伊織「…おはよう」
高木「仲良きことは美しきかな…さあ、皆今日も張り切って活動してくれたまえ」
「「「「はい!!」」」」
????????????
33:
????????????
私達は足掻きました
この世界で、必死に自分の存在を知ってもらうために
しかしその足掻きや頑張り、全てが一瞬の出来事で終わってしまうのです。
????????????
34:
?事務所前?
貴音「ふふっ…あなた様、今日も月が綺麗ですね…」
P「ん?…ああ、そうだな。ああいう月を見ると自分の故郷を思い出すよ…」
貴音「そうなのですか…?」
P「ああ、いつも月がきれいな場所だったな…なんていうか月の明るい部分がさ…」
???「ちょっとすいません。765の方ですか?」
P「え?あ、はいそうですg貴音??」
パアァァン?
P「ぐぁ…?あッ…?」ドサッ
貴音「え…?」
35:
P「あ……がッ……」
貴音「あなた様!?あなた様!?」
オイアレヤベェンジャネェノ?キュウキュウシャヨベヨ?ハヤク?
ガヤガヤ…ガヤガヤ…
春香「ちょっとちょっと!何事ですk…」
春香「貴音さん…なんでプロデューサーさんが…血まみれで…?」
貴音「あな、た…様…?」
P「うっ…!貴音…!」
貴音「あなた様…!」
P「俺を襲ったのは…ぐっ…!961だ…!スタッフの顔に見覚えが…!
  警察にその事を…!」
貴音「そのようなことより、早く救急車を!誰か!」
36:
P「貴音…!もういい…もういいんだ…」
P「俺は……お前のこと…兄として…愛してあげられなかった…!」
P「これはお前への償いだ……」
貴音「!?…お兄様!?お兄様なのですか!?」
P「たか…ね……」
貴音「お兄様!?…」
ピーポーピーポー…
????……
37:
「いつから…」
「いつから…こんな風になってしまったのでしょうか…」
「そんなことを考えても、無駄ですね…」
「もう私には何も残っていないから…」
「触れるものすべて 見るものすべて
 味わうものすべて 感じることすべて
 愛するものすべて 憎むものすべて
 信用しないものすべて 大切にするものすべて
 すべて…」
????……
38:
?集中治療室前?
伊織「グスッ…どうして…??なんでアイツがこんな目に合わないといけないのよ…!!」
真美「ウエエェェェェン??兄゙じゃーん゛??」
律子「死んでないだけでもマシね…それでも意識不明って…」
千早「プロデューサー…うふふ…いひ…アハハハハハ??!」
春香「千早ちゃん??」
千早「もうプロデューサーは帰ってこないのよ!!意識不明なんて今だけ??じき死ぬわ!!
 それなら私の生きる意味なんてないじゃない??いっそのこと死んでやるわ!!」
春香「千早ちゃん?落ち着いて?」
真「千早?」
39:
千早「…アハハ…ウフ…イヒヒヒヒヒ??アハハハハはfjklだjf??」
千早「アハハハハ……プロデューサー…」
千早「プロ…デューサー…」
雪歩「ち…千早ちゃん?」
千早「あいつは…あいつはどこにいるの?…」
雪歩「あ、あいつって?」グスッ
千早「四条貴音しかいないじゃない!!」ガン??
雪歩「ひぇっ!!」
千早「何処よ!!どこにいるのよ!!教えなさいよ!!」ガン??ガン??ガン??!
雪歩「ちはっ?いたっ!!やめてっ!!」
春香「千早ちゃん?!もうやめてよ??!」グスッ
千早「何処よ…!!あいつ…!!」
40:
????????????
もう誰も手の届かない場所へ、あるいは誰でも手の届く場所に
私は到達してしまったのかもしれません。
私の叫び声もついに誰にも届く事はなくなり頭の中でどす黒い考えが分裂と破裂を繰り返しているのです
別に誰の為というわけでは御座いません
ただ私の為だけに…
????????????
41:
黒井「クックック…ついに765もおしまいの時が来たようだな」
黒井「金は偉大だ!!積めば欲しいものは何でも手に入る!それが人の死でさえもだ!!」
貴音「そうですね…」
黒井「四条貴音!?お前、いつからそこに!?」
貴音「いつからでしょうか?コレを手にしてから真面に物を捉えておりません故」
黒井「それは…!?」
貴音「貴方も言ったでしょうに…。人の死は金で買えるのですよ?」
黒井「やめろぉ!!来るなぁ!!」
貴音「もう、良いのです」
パアァァァン?
42:
黒井「グぃっ…ぁ……!!」
黒井「貴様…!!」
パアァァァン!!
黒井「っがぁぁぁぁぁぁ!!」ドサッ
黒井「あぁぁあぁ…あああ?!ああががあぁあ!」
黒井「ああぁぁぁぁぁ…ぁ……ぁ……」
貴音「必要のないものが一つ減りましたね…」
貴音「あと一つ…」
「誰にも見つからない場所で…しかしすべては太陽の下
 その太陽は徐々に月に浸蝕されていくのです」
貴音「うふふふふふふふ…アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
パアァァァン!!
43:
????????????
????????????
俺が目を覚ましてからのニュースは連日同じことを放送していた
「765プロのプロデューサー、襲われ重体」「961プロの黒井氏、殺害される」
そして
「765プロの四条貴音さん(19)行方不明」
俺のせいで…
貴音は、何も悪いことはしていないのに
??「プロデューサー…来たぞー…」
P「お、響じゃないか。久しぶり」
響「そんな事よりプロデューサー…これ、貴音から手紙…」
44:
P「貴音!?どうやって!?」
響「プロデューサーが襲われて少ししてから貴音が
(貴音「もしあの方が起きたのならばこれを渡してください…
 もう私は渡しに行くことなどできないのですから」)
 って…」
P「そんな…!」
響「貴音のやつ、どこにいるんだろうな…?」
P「貴音…!!貴音…!!」
46:
????……
本当は月の暗い側なんて存在しないのですよ。何故なら、すべてが闇そのものだから
私もあなた様に照らされていただけの石ころに過ぎないのです。何の価値もございません
私など生まれても生まれなくてもよい存在だったのです。解っているのです。
こんなことを書いて誰も得をしないことなど、でも伝えたかったのです
「誰の心にも狂気が潜んでいることを」
おわれ
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