真姫(7)「サンタさん・・・?」ぱいちゃん「!?」back

真姫(7)「サンタさん・・・?」ぱいちゃん「!?」


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1:
ぱいちゃん(どーもー。西木野真姫役のPileでーす)
ぱいちゃん(早ですが、わたくしPileはただ今、尾行中です)
ぱいちゃん(誰をって? それは勿論・・・)
真姫「・・・・・・・・・」テクテク
ぱいちゃん(そうです。真姫ちゃんです。意味がわからないって? そんなの、私もわかりません)
にこ「・・・にこたち、まるでストーカーみたいニコ」
ぱいちゃん(そして横には、我らが矢澤にこちゃん。訳がわからないって? 勿論、私もわかりません)
ぱいちゃん(ちょっと外出するだけのつもりだったのに・・・なんで、こんな変なことになっちゃったのかな・・・?)
2:
…………
……
MC「という訳で、本日のゲストは先日メジャーソロデビューを果たしたPileさんでしたー」
ぱいちゃん「どうもありがとうございましたー」
MC「Pileさんは、クリスマスイブにミニライブを行う予定なんですよね!」
ぱいちゃん「そうなんです。観覧フリーなので、もしお時間ある方は来て頂けると嬉しいです!」
MC「当日は、クリスマス仕様の衣装で歌われるという噂も聞きますが・・・?」
ぱいちゃん「はい、サンタさんっぽいコスチュームで歌う予定です! 良かったら期待しててください!」
4:
?ぱいちゃんのマンション?
ぱいちゃん「ふー。テレビ番組の収録にもだいぶ慣れてきたけど、やっぱり緊張するな」
ぱいちゃん(明日はクリスマスイブ・・・ミニライブか・・・)
ぱいちゃん(ラブライブや歌のお仕事が忙しくなってから、クリスマスに友達とパーティーしたりもできないけれど・・・)
ぱいちゃん「でも・・・うん! やれることがあるって、幸せだなあ、私」
ぱいちゃん(あ、そうだ。イブのライブで着る衣装、試作を1着、もらってたんだっけ)
ぱいちゃん(・・・せっかくだから、ちょっと着てみようかな?)
6:
ぱいちゃん「・・・うん。ちょっとスカート丈が短めだけれど・・・なかなか決まってる、私」
ぱいちゃん「よーし、自撮り自撮り」カシャ
ぱいちゃん「うん、いい感じ。後でツイッターにあげとこう」
ぱいちゃん「・・・イブの夜に大人しく寝てたら、枕元に私がいるかもよ? ・・・なんちゃって」
ピロリン♪
ぱいちゃん「・・・あ。μ'sのみんなからLINEが来てる」
9:
えみつん『明日のライブ、頑張ってね! ファイトだよ!(ノ≧∀≦)ノ』
みもりん『むー、ライブ見に行きたいけど仕事だー』
くっすん『ライブいいなー! プリシクも頑張ろうねー』
ぱいちゃん(他にも、なんちゃん、シカちゃん、そらまる、りっぴー、うっちーからも・・・)
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(・・・不思議だなあ。昔、1人でやってた頃は、こんな応援し合える仲間が出来るなんて思ってもみなかったのに・・・)
ぱいちゃん(・・・でも、今は嬉しい。ありがと、みんな)
10:
ぱいちゃん「・・・うーん、でも今日はもう疲れちゃったなー。ゆっくり半身浴でもして・・・」
ぱいちゃん「・・・あ」
ぱいちゃん(そう言えば、コンディショナー切らしてたんだ・・・どうしよ、この時間じゃお店も閉まってるし・・・)
ぱいちゃん(うーん、しょうがない・・・今日は近所のコンビニので我慢しとこう。コンビニのなんて使ったことないけど)
ぱいちゃん(そうと決まればさっさと行って買って来よう。服は・・・いいか、この上にコート着て前をとめれば)
ぱいちゃん(お財布と・・・一応、マスクと眼鏡も。・・・ヤバい、完全に不審者だ。さっさと行って来よう・・・)
11:
ぱいちゃん「うー、外寒いかなー。でもすぐそばだし、早く行って帰ってくれば・・・」
ぱいちゃん(・・・その時)
ぱいちゃん(私は、このちょっとした“外出”が、あんなことになるなんて、思ってもいませんでした)
ぱいちゃん(でも、この時の私は、玄関の扉を開けるまで、異変なんて全く感じていなかったんです)
ぱいちゃん(そう。それは、ドアノブを回し、扉を開いた瞬間の出来事――)
ガチャ
ぱいちゃん「・・・・・・!?」
ぱいちゃん(なになにこれ!? 外が真っ白・・・!? 光!?)
ぱいちゃん(まぶしいっ・・・! なんなの、これ・・・!?)
12:
ぱいちゃん(真っ白な光に覆われて、周りの景色は完全に見えなくなりました)
ぱいちゃん(視界が白く染まるのと同時に、私の意識も、遠くなっていったように思います)
ぱいちゃん(そして、私は――)
???「・・・ー。・・・ねー・・・ねーってばー・・・」
???「ねー、お姉さん?」
13:
ぱいちゃん「あー・・・あー・・・あ?」
???「あ、気づいた」
ぱいちゃん「・・・・・・え?」ガバッ
ぱいちゃん(どこ、ここ・・・公園の、ベンチ・・・!? 私、なんでこんな所にいるの・・・!?)
ぱいちゃん(それに・・・なんで、昼なの・・・!? 夜中だったはずなのに・・・!)
???「お姉さん、やっと起きた。こんな所で仰向けになって寝てたら、風邪ひくニコよ?」
ぱいちゃん「・・・ニコ?」
ぱいちゃん(そして私は、さらに信じられない光景を目にした)
ぱいちゃん(私の目の前で、私の顔を覗き込んでいる女の子・・・それは、紛れもなく・・・)
ぱいちゃん「にこ・・・ちゃん・・・!?」
14:
にこ「え!? お姉さん、なんでにこの名前を知ってるニコ?」
にこ「あ、まさか音ノ木坂小学校一番のアイドル、ニコニーにこちゃんは、もうそんなに有名になってるニコ?」イヤーン
ぱいちゃん(この子・・・見た目は小学生くらいだけれど・・・)
ぱいちゃん(間違いない、『ラブライブ!』に出てくる矢澤にこちゃんだ・・・!)
ぱいちゃん(どどど、どういうこと!? なんでにこちゃんが!? しかもなんで小さいの!?)
にこ「お姉さん、変な顔してどうしたニコ?」
ぱいちゃん「あ、あの・・・ここ、どこだか教えてくれない・・・?」
にこ「ここ? 音ノ木坂小学校のそばにある、公園ニコよ?」
16:
ぱいちゃん(慌てて立ち上がった私は、公園の中にあった住宅地図を見た)
ぱいちゃん(見たことのない地名・・・そして地図の中にある、“音ノ木坂”の文字・・・)
ぱいちゃん「・・・え? これって、夢・・・? それとも、ドッキリ・・・!?」
ぱいちゃん(ドッキリ・・・とは思えない。かといって、夢にしては妙にリアルで・・・)
ぱいちゃん「・・・意味わかんない。まさか・・・私・・・頭おかしくなっちゃった・・・?」
にこ「・・・お姉さん、なんだか顔が怖いニコ・・・」
ぱいちゃん「・・・ええと。ちなみに今日は、何月何日?」
にこ「12月24日。クリスマスイブだニコ!」
ぱいちゃん(時間も・・・半日経ってる・・・)
20:
ぱいちゃん(混乱する頭のまま、顔を上げた私は・・・)
ぱいちゃん(公園の向こう側の道路を歩いている、1人の女の子の姿を見て、さらに混乱した)
ぱいちゃん「あ・・・あれって・・・?」
ぱいちゃん(赤い髪。伏せ気味の横顔から覗く、ツンと澄ましたような表情・・・)
ぱいちゃん(間違いない。あれは――)
ぱいちゃん「ま・・・真姫、ちゃん・・・?」
22:
ぱいちゃん(真姫ちゃんは、小さなポーチだけを肩からさげて、1人、てくてく歩いてた)
ぱいちゃん(真姫ちゃんも、にこちゃんと同じく、すごく幼く見える・・・見た感じ、小学校1年生くらい?)
にこ「あの子、真姫ちゃんっていうニコ? お姉さんの知り合い?」
ぱいちゃん「知り合い・・・というか・・・」
ぱいちゃん(私自身・・・というか・・・うーん、わかんない)
にこ「それより、なんでにこ達、こっそり後ろからあの子をつけてる感じになってるニコ?」
にこ「知り合いなら、声をかけてあげればいいのにー」
ぱいちゃん「い、いいでしょ、別に・・・!」
25:
ぱいちゃん(そう・・・声をかければ良かったのかもしれない)
ぱいちゃん(でも私は、混乱した思考の中、その女の子に声をかけることが出来なかった)
ぱいちゃん(私の頭がおかしくなっただけなのかもしれない。でも・・・もしも・・・)
ぱいちゃん(もしもここが、『ラブライブ!』の中の世界で・・・あの女の子が、本物の真姫ちゃんだったとしたら・・・?)
ぱいちゃん(真姫ちゃんに会えて、嬉しい気持ちと・・・同時に、怖い気持ちがあった)
ぱいちゃん(なんて声をかければ良いのかわからない。そもそも、私のことをどう説明する?)
ぱいちゃん(もしも、真姫ちゃんに嫌われてしまったら・・・?)
ぱいちゃん(・・・それでも、放っておくことなんて出来なくて。なんとなく私は、真姫ちゃんをこっそり追いかけんだ)
…………
……
28:
ぱいちゃん「・・・以上、回想終わり」
にこ「なんか言ったニコ?」
ぱいちゃん「なんでもない。ね、にこ・・・ちゃん。にこちゃんは、何年生?」
にこ「にこは、小学3年生ニコ!」
ぱいちゃん(そうすると、2学年下の真姫ちゃんは、やっぱり1年生ってことか・・・)
にこ「ところでお姉さん、すごく怪しいニコ。なんでサンタさんみたいな服の上に、コート着てるニコ?」
ぱいちゃん(う・・・しまった、慌ててたせいで、前がはだけてる・・・)
にこ「おまけに色の入った眼鏡とマスク・・・完璧に不審者ニコ。・・・あ、まさか本物の不審者!?」
ぱいちゃん「ち、違う違う、怪しくない! 色々事情があるのよ!」
ぱいちゃん(・・・ていうか、にこちゃんに言われたくないわよ。貴方も将来、似たような格好するんだから)
ぱいちゃん(うう、こんなことになるなら、もっとちゃんとした服で外出するんだった・・・メイクもたぶんボロボロだし・・・)
29:
ぱいちゃん「にこちゃんの方こそ、なんでついて来るの? 用事とかないの?」
にこ「今日は学校も冬休みだから平気ニコ。お散歩してたら、たまたまお姉さんを見つけたニコ」
にこ「それに・・・にこ、お姉さんの正体、わかっちゃった」
ぱいちゃん「・・・え!?」
にこ「お姉さんは・・・ずばり、駆け出しのアイドルだニコ!」
ぱいちゃん「・・・・・・Pardon?」
にこ「アイドルで顔が知られるとまずいから、そうやって顔を隠してるニコ」
にこ「でも駆け出しだから、そんな貧相な格好で、おうちもなくって公園のベンチで寝てたんだニコ」ドヤァ
ぱいちゃん(だ・・・駄目よ駄目よ、抑えるのよエリコ・・・! 相手は子供なんだから・・・!)ピクピク
30:
にこ「でもやっぱり、本物のアイドルはとっても美人だニコ!」
ぱいちゃん「え?」
にこ「にこも将来アイドルになるために、そんな美人のお姉さんからアイドルの生態を学ぶニコ!」
ぱいちゃん(うーん、美人か・・・こうして言われると、悪い気はしないわね・・・)ニマー
にこ「・・・なんてこと言ってるうちに、あの子を見失いそうニコ」
ぱいちゃん「うわ、まずい! 待って、真姫ちゃん!」
31:
真姫「・・・・・・・・・」テクテク
ぱいちゃん(真姫ちゃん、どこ行くのかしら・・・ピアノ教室? 塾? でも荷物はポーチだけだし、遊びに行くだけ?)
にこ「・・・そう言えば、お姉さんの名前をまだ聞いてないニコ」
ぱいちゃん「私? 私は、Pileっていうの。Pileお姉さんよ」
にこ「パイン?」
ぱいちゃん「ぱ・い・る!」
にこ「変な名前ー、もしかして外国人?」
ぱいちゃん「違うわよ。えーと・・・ほら、本物のアイドルっていうのは本名を名乗らないものなの」
にこ「おおー! やっぱりアイドルは違うニコ!」
ぱいちゃん(適当だけど、ま、いいか・・・)
にこ「・・・あ! ぱいるお姉ちゃ・・・言いにくいからぱいちゃん、あれ見るニコ!」
35:
真姫「・・・・・・!」
グルル・・・
にこ「野良犬ニコ! なんか機嫌悪そうニコよ!」
ぱいちゃん「ま、真姫ちゃん・・・」
ワン!
真姫「・・・・・・!」ビクッ
にこ「このままじゃ、あの子危ないニコよ!」
ぱいちゃん「よし、ニコちゃん、囮になって」
にこ「・・・冗談はポケットん中だニコ」
37:
ぱいちゃん「よーし、こうなったら・・・」
にこ「え? ぱいちゃん、小石なんか持って・・・もしや・・・」
ぱいちゃん「えいっ」ピューン
コンッ
ぱいちゃん「当たった!」
にこ「で・・・でも・・・」
グルルル・・・
ぱいちゃん「え・・・まさか・・・」
ワンワンワン!!
ぱいちゃん「うわーこっち来たー!!」
にこ「当たり前だニコ! 逃げるニコー!!」ダダダダ
真姫「・・・・・・??」
38:
ぱいちゃん「ぜえ、はあ・・・ひ、ひどい目にあったわ・・・」
にこ「こ、こっちの台詞だニコ・・・ぱいちゃん、もしかしてお馬鹿・・・?」
真姫「・・・・・・・・・」テクテク
ぱいちゃん「・・・ん? なんだか、餡子のいい香りが・・・」
にこ「あ、あそこ、和菓子屋さんだニコ」
ぱいちゃん「あ、あれ、『穂むら』!? すごーい、本物だ! アニメのまんま!」
にこ「・・・なに言ってるニコ?」
ぱいちゃん「・・・と、いうことは・・・もしや・・・」
41:
穂乃果「いらっしゃいませー! 『穂むら』のおまんじゅう、いかがですかー!」
雪穂「いらっしゃいませー!」
ぱいちゃん「や、やっぱり・・・! 穂乃果と、雪穂・・・」
にこ「ちっちゃい子がいるニコ。にこより下っぽいから、2年生と、幼稚園ぐらい?」
ぱいちゃん(か、かわいい・・・! だ、駄目よ駄目よエリコ、子供に手を出しちゃ・・・)
ぱいちゃん(それに勿論、一番可愛いのは真姫ちゃんだけど!)
ぱいちゃん「うふふ・・・」
にこ「・・・なんか怖いニコ」
42:
真姫「・・・・・・・・・」ピタッ
にこ「あ、なんか見てるニコ。おまんじゅう欲しいのかな?」
穂乃果「あ、そこのあなたー! おまんじゅういかがですか!?」
真姫「うぇ!? わ、私・・・?」
雪穂「お、お姉ちゃん、無理矢理は駄目だよ?・・・」
穂乃果「えー、だって欲しそうな顔してたよ! ねえ、おまんじゅう食べたくない!?」
真姫「わ、私は別に・・・それに買い食いしちゃ駄目だって、ママが・・・」
穂乃果「いいじゃんいいじゃん! じゃあ試食してみて! 半分どーぞ!」
真姫「・・・・・・・・・」ゴクッ
真姫「・・・・・・・・・!」カプッ
真姫「・・・・・・・・・」モグモグ
真姫「・・・・・・・・・!」パアーッ
44:
穂乃果「まいどありがとうございましたー!」
真姫「・・・・・・・・・」ニコニコ
にこ「結局あの子、買ってるニコ・・・それにしても、さっきの売ってた子は恐ろしいニコ・・・あの営業力・・・」
ぱいちゃん「ううー、おまんじゅう食べてニコニコの真姫ちゃんも可愛い・・・! 流石私の真姫ちゃん・・・!」
にこ「・・・こっちも駄目ニコ」
45:
真姫「・・・・・・・・・」テクテク
ぱいちゃん「・・・どこまで行くのかしら? 大きな商店街に出たけど」
真姫「・・・・・・・・・?」キョロキョロ
にこ「ねえ・・・もしかしてだけれど」
真姫「・・・・・・・・・?」オドオド
にこ「あの子、迷子になってるんじゃない? さっきから、やたらキョロキョロしてるし・・・」
ぱいちゃん「え・・・? 確かに、言われてみたら・・・」
真姫「・・・・・・・・・」ピタッ
にこ「・・・あ。おもちゃ屋さんの前で止まったニコ」
真姫「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(真姫ちゃん、ショーウインドウの中の・・・クマのぬいぐるみ、かな? じっと見てる・・・)
ぱいちゃん(欲しいのかな、真姫ちゃん・・・でも真姫ちゃんの家ってお金持ちだし、そんなのいくらでも・・・)
47:
ガーッ
???「ねえねえお姉ちゃん、帰ったらこれで遊ぼうよー!」
???「うふふ、ほらほら、そんなに引っ張らないで」
ぱいちゃん(え・・・あの、おもちゃ屋さんから出てきた子・・・!)
ぱいちゃん(あの金髪ポニテ、間違いない、絵里ちゃんだ・・・! ということは、小さい方は亜里沙ちゃん・・・?)
ぱいちゃん(一緒にいるのは、お父さんとお母さんと・・・噂のおばあちゃんか・・・)
絵里「もう亜里沙ったら、焦らないの。時間はたっぷりあるんだから」
亜里沙「でも、私が日本にいるのはお正月までだから・・・それまでお姉ちゃんといっぱい遊ぶの!」
48:
亜里沙「それに今日は、サンタさんが来てくれる日だもの! サンタさん、どんなプレゼントくれるのかな?」
おばあちゃん「そうね。エリーチカとアリーチカはとってもいい子だから、きっと素敵なプレゼントをくれるわよ」
絵里「ハラショー! すごく楽しみね!」
亜里沙「うん! 早く明日の朝にならないかなー!」
ワイワイ キャッキャッ
真姫「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん「真姫・・・ちゃん・・・?」
49:
真姫「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(どうして・・・そんな悲しそうな顔するの・・・? どうして・・・)
真姫「・・・・・・・・・!」ダッ
にこ「あ! 走ってっちゃったニコ!」
ぱいちゃん「真姫ちゃん・・・!」
プププーッ
ぱいちゃん「・・・!?」
50:
にこ「危ない!! トラックが!!」
キキキキーッ
真姫「・・・・・・・・・!!」
ぱいちゃん「真姫ちゃん!!」ダッ
52:
ぱいちゃん(無我夢中で、私は飛び出した)
ぱいちゃん(道路の真ん中で、硬直している真姫ちゃんに、必死で飛びつく)
ぱいちゃん(そして・・・気づいた時には・・・)
運ちゃん「馬鹿ヤロー死にてえのかー!!」ブロロー
ぱいちゃん「はあっ・・・はあっ・・・」
ぱいちゃん(間一髪・・・真姫ちゃんを抱きかかえた私は、紙一重で、トラックにひかれずに済んだ)
にこ「た・・・助かった・・・!? し、死んじゃったかと思った・・・」ヘナヘナ
53:
真姫「あ・・・あ・・・!」ガタガタ
ぱいちゃん「・・・もうっ! 急に道路に飛び出すんじゃないわよ、死んじゃうところだったのよ!!」
真姫「う・・・うう・・・」ポロポロ
ぱいちゃん「真姫ちゃん・・・」
ガバッ
ぱいちゃん「良かった・・・良かった、無事で・・・!」
真姫「ご・・・ごめん、なさい・・・ごめんなさい・・・」ポロポロ
54:
にこ「・・・あ!」
ぱいちゃん「・・・にこちゃん?」
にこ「思い出したニコ! その子、西木野総合病院の子じゃないかな?」
にこ「病院に行った時、何度か見かけたことがあるニコ」
ぱいちゃん「にこちゃん・・・」
ぱいちゃん「・・・病院の場所、わかる?」
55:
ぱいちゃん(あーあ・・・ついに、このコートも泥だらけ。ひざもすりむいて、血がにじんでるし)
ぱいちゃん(私が、こんな格好することになるなんて、ね。家が無いと思われてもしょうがないか)
ぱいちゃん(・・・病院に向かう道中、真姫ちゃんは言葉少なだった)
ぱいちゃん(ただ・・・1人で歩いていた理由は、聞くことが出来た)
ぱいちゃん「・・・家出!?」
にこ「へー、そんなにちっちゃいのに家出とは、やるニコね」
真姫「・・・別に、関係ないでしょ」
56:
ぱいちゃん「なんで、家出なんて・・・」
真姫「・・・・・・・・・」
にこ「よりによって、クリスマスイブに家出なんてしなくてもいいのに。サンタさん、来てくれないニコよ?」
ぱいちゃん「そうそう。イブの夜にいい子で寝てたら、枕元にサンタがいるかもよ? なんて・・・」
真姫「・・・いる訳ないじゃない」
ぱいちゃん「・・・え?」
真姫「サンタなんている訳ないじゃない! 学校の子たちだってみんな言ってるもん!」
真姫「サンタはお父さんとお母さんなんだって・・・! サンタなんて、いないもん!!」
ぱいちゃん「真姫・・・ちゃん・・・?」
57:
ぱいちゃん(西木野総合病院に到着した後も、しばらく真姫ちゃんのお父さんとお母さんは出てこなかった)
ぱいちゃん(応対してくれた看護師さんによれば、急患が入ったため、ご両親とも手が離せないらしい)
ぱいちゃん(廊下の長椅子に、ひとりポツンと座る真姫ちゃんは、すごく寂しそうに見えた)
看護師「院長先生ご夫妻も・・・仕方の無い部分もあるんです。この病院も、出来てからまだ日が浅いので・・・」
看護師「将来、もっと規模が大きくなって、スタッフも増えればご夫妻ももっと楽になると思うんですが・・・」
看護師「今は、院長先生ご夫妻も大忙しで、娘さんになかなか構ってあげられないとよくこぼしています」
看護師「今日も、クリスマスイブですけど、昼に急な手術が入ってしまって・・・」
看護師「患者さんの容態が変わる可能性もあるので、ご夫妻は家に帰れない、とおっしゃっていました」
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
58:
ぱいちゃん(おしゃべりな看護師さんの話を聞いていて、なんとなく私は、思った)
ぱいちゃん(真姫ちゃんが家出したのは・・・きっと、イブの夜に、お父さんとお母さんと過ごせないから)
ぱいちゃん(本当は、親子でパーティーをする予定で、楽しみにしていたのかも)
ぱいちゃん(でも・・・お父さんお母さんから、パーティーが出来なくなったことを聞いて・・・)
ぱいちゃん(寂しくて、悲しくて・・・怒りをどこにぶつけたらいいのかもわからなくて・・・)
ぱいちゃん(・・・そんな真姫ちゃんの、精いっぱいの反抗だったのかも)
ぱいちゃん(絵里ちゃんたちを見ていた時の、悲しそうな顔も・・・そんな想いがあったから・・・)
59:
真姫パパ「・・・真姫!」
真姫ママ「真姫ちゃん・・・!」
ぱいちゃん(その時、奥からばたばたと、お父さんとお母さんが慌しくやって来た)
真姫パパ「一体、何をやってるんだ・・・! 心配したんだぞ!」
真姫ママ「お手伝いの和木さんからも、病院に何度も電話がかかってきたのよ? 勝手に家を飛び出すなんて・・・!」
真姫「ごめん・・・なさい・・・」
ぱいちゃん(・・・その時の真姫ちゃんの表情に、私は軽いショックを受けた)
ぱいちゃん(言いたいことも・・・想いも、色々あるはずなのに。そういうのを全部、封じ込めたような表情)
ぱいちゃん(まだ、1年生だよ? 7歳だよ? もっともっと、感情をぶつけていいはずなのに――)
ぱいちゃん(お父さんとお母さんの望む、“いい子”であろうとするその姿が、ひどく悲しかった)
60:
ぱいちゃん(ひと通りのお説教の後、お父さんがこちらへやって来て、私は軽く緊張する)
真姫パパ「娘がお世話になったそうで・・・大変ご迷惑をおかけしました」
ぱいちゃん「あ・・・いえ、そんな・・・」
ぱいちゃん(こんな胡散臭い格好の私に深々と頭を下げて、お父さんは、厳しいけれど誠実な人なんだろう)
真姫パパ「大変申し訳ありませんが、今はお構いさせて頂く時間もないもので・・・」
真姫パパ「ご迷惑でなければ、ぜひ一度お礼がしたいので、こちらまでご連絡ください」
ぱいちゃん(そう言ってお父さんは、裏に住所と電話番号をを走り書きした名刺をくれた)
62:
ぱいちゃん(・・・その後、やって来たお手伝いさんに連れられて、真姫ちゃんは帰っていった)
ぱいちゃん(私は・・・真姫ちゃんに声をかけようとして・・・結局、何も言えなかった)
ぱいちゃん(真姫ちゃんは、そんな私を一瞥し――顔を伏せたまま、行ってしまった)
にこ「・・・・・・・・・」
にこ「・・・あの子も、色々大変なのニコね」
ぱいちゃん「・・・にこちゃん?」
63:
にこ「・・・さあ、それじゃ、にこもおうちに帰るニコ」
ぱいちゃん「え・・・帰っちゃうの・・・?」
にこ「実は、この前、妹が産まれたばかりなんだニコ。双子だから、ママも世話が大変。お手伝いするニコ」
ぱいちゃん(あ・・・そうか)
ぱいちゃん「偉いね、にこちゃんは」
にこ「・・・そんなことないよ」
にこ「でも、ママもパパも頑張ってるから。パパ、妹たちが増えたから、頑張るぞーってすごくたくさん働いてる」
にこ「今日もお仕事で帰ってこれないみたい。そのうち、倒れちゃうよって心配してるんだけど」クスッ
ぱいちゃん(・・・そういえば・・・)
ぱいちゃん(聞いた話だと・・・確か、にこちゃんのお父さんって・・・)
64:
ぱいちゃん「にこちゃんは・・・寂しく、ないの?」
にこ「寂しくない」
にこ「・・・・・・なんて、言ったら嘘だよね」
にこ「にこも、知ってるよ。サンタさんはいないって。でも、別にいいんだ」
にこ「だって・・・パパも、ママも、にこたちのためにすごく一生懸命、色んなことをしてくれてるんだもの」
にこ「そんなパパとママが用意してくれるプレゼントは、にこ、すごく嬉しい」
ぱいちゃん(そう答えた、にこちゃんの顔は・・・夕日を浴びて、なんだかとても、大人びて見えた)
にこ「・・・なんだか、恥ずかしい話をしちゃったニコ。お姉さんには、なんか色々話せて不思議な感じ」
にこ「スーパーアイドル、ニコニーにこちゃんは、すごい大金持ちの豪邸に住んでることになってるから、さっきの話は内緒ニコ♪」
66:
ぱいちゃん(・・・そう言って、にこちゃんは帰っていった)
ぱいちゃん(ひとりになった私は、なんとなく、元の公園に戻って、ベンチに座ってる)
ぱいちゃん(・・・にこちゃんも、真姫ちゃんも。小さいのに、どこか無理して、大人であろうとしてるような気がして)
ぱいちゃん(・・・なぜだか私は、寂しくなった)
――サンタなんている訳ないじゃない!
――サンタはお父さんとお母さんなんだって・・・! サンタなんて、いないもん!!
ぱいちゃん(真姫ちゃん・・・)
ぱいちゃん(でも・・・真姫ちゃん、絵里ちゃんたちを見た時・・・すごく、寂しそうだったよね・・・?)
ぱいちゃん(・・・・・・・・・)
ぱいちゃん(ひとりは・・・寂しいよ・・・)
67:
ぱいちゃん「・・・よしっ!」
ぱいちゃん(・・・私は、ひとり決心して、立ち上がる)
ぱいちゃん(正直まだ、自分が置かれてる状況もよくわからない)
ぱいちゃん(頭がおかしくなったのか、それとも本当に別の世界に来てしまったのか)
ぱいちゃん(ライブは? 元の世界に戻る方法は? 心配は尽きないけれど――)
ぱいちゃん(正直、今の私にとっては、そんなことは全部吹っ飛んじゃってた)
ぱいちゃん(ひとりでいることのつらさは――私だって、よく知っていたから――)
68:
ぱいちゃん「・・・真姫ちゃん」
ぱいちゃん(メイクはボロボロ、ネイルもとれて、コートは泥だらけ――)
ぱいちゃん(ステージの上やファンの前では、精いっぱい輝けるようにって、いつも気にしているけれど――)
ぱいちゃん(今日の格好は、それとはかけ離れてる。――でも、いい)
ぱいちゃん(大好きな、真姫ちゃんのために――私は、私がしたいことをするだけだ)
ぱいちゃん「・・・待っててね」
86:
ぱいちゃん(普段カードで買い物しているせいで、財布の中に、現金は少ししか入っていなかった)
ぱいちゃん(カードは・・・使えない。ここが別の世界だとしたら、私の名義のカードも使えないだろう)
ぱいちゃん(だから私は、なけなしの現金を握り締めて――閉店間際の、おもちゃ屋さんに駆け込んだ)
ぱいちゃん(目当ては――そう。真姫ちゃんが見つめていた、あの、クマのぬいぐるみ――)
87:
ぱいちゃん(近くの喫茶店の隅っこの席で、人目を気にしながら時間を潰す)
ぱいちゃん(イブの夜に、こんな不審者寸前の姿でいる私って、周りからどう見られてるんだろう・・・)
ぱいちゃん(・・・ちょっと悲しくなる。うん、これもいい経験だ・・・そう思うことにしよう)
ぱいちゃん(真姫ちゃんのお父さんからもらった名刺に書いてある住所を確認する。幸い、歩いていける距離だ)
ぱいちゃん(そして私は、やって来た――真姫ちゃんの家に)
ぱいちゃん(アニメで見た通りの、大きな門のお屋敷――夜もふけて、ひっそりと静まり返ってる)
88:
ぱいちゃん「・・・さて」
ぱいちゃん(張り切って、来てみたものの)
ぱいちゃん(・・・実は、ノープランだったりする)
ぱいちゃん(真姫ちゃんに、プレゼントをあげたい一心で、ぬいぐるみを買ってここまで来たけれど・・・)
ぱいちゃん「・・・どうしよ。郵便受けには・・・入らないよね、流石に」
ぱいちゃん(肝心な所でたまに抜けてるんだよね、私・・・前も、イベント会場間違えて大迷惑かけちゃったし・・・)
ぱいちゃん(・・・うーん。袋に入れて、門の取っ手に引っ掛けとく? でもそれじゃ、なくなっちゃうかも)
ぱいちゃん(かと言って、家に入る訳にもいかないし・・・そもそも入れないだろうし・・・)
ぱいちゃん(煙突は・・・流石に無いか)
ぱいちゃん「はあ・・・サンタさんって、大変なんだなあ」
ぱいちゃん(そうつぶやいて、何気なく、門の取っ手に手をかけたら――)
ガチャ
ぱいちゃん「・・・え?」
91:
ぱいちゃん「門・・・開いてる? お手伝いさんが、鍵をかけ忘れたのかな・・・?」
ぱいちゃん(恐る恐る、門の中に入ってみる。玄関の前にプレゼントを置いておけば、なくなる心配はないかも)
ぱいちゃん(・・・でも)
ぱいちゃん「もしかして・・・」
ぱいちゃん(私は――ひょっとしたら、という気持ちで、玄関扉のノブを握る)
ぱいちゃん(そして――)
ガチャ
ぱいちゃん「嘘・・・」
92:
ぱいちゃん「・・・ほんとに? 開いてる・・・なんで?」
ぱいちゃん(流石に、お手伝いさんが玄関扉まで鍵をかけ忘れたとは考えにくい。無防備すぎる)
ぱいちゃん(だとしたら、誰が――?)
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(しばしの迷い。逡巡。葛藤。この扉を開けてしまったら――)
ぱいちゃん(『アイドル声優、住居不法侵入!』新聞に踊る見出し。積み上げてきたものの崩壊。怒るパパ、泣くママ・・・)
ぱいちゃん「私の人生・・・終わるかも・・・」
――サンタなんて、いないもん!!
ぱいちゃん(・・・その時。甦ってきたのは、寂しそうな真姫ちゃんの表情)
ぱいちゃん「・・・ええい」
ぱいちゃん(どうにでもなれー!)
ガチャ
94:
ぱいちゃん(・・・入っちゃった。不審者みたいな人から不審者にランクアップだ)
ぱいちゃん「セコム解除されてますようにセコム解除されてますように・・・!」ブツブツ
ぱいちゃん(これだけのお屋敷だし、セコムぐらい入ってて当然だろうけれど、幸い変わった様子はない)
ぱいちゃん(それでも、恐る恐る、音を立てないようにそろそろと進む)
ぱいちゃん「・・・そう、別に泥棒に入った訳じゃないし。プレゼントだけ置いて、すぐ帰るもん」
ぱいちゃん(自分に言い聞かせて、真っ暗な家の中を進む。真姫ちゃんの部屋は――2階、かな?)
95:
ぱいちゃん(真姫ちゃんの部屋は、すぐに見つかった。“MAKI”と、ネームプレートの架かった扉)
ぱいちゃん(音を立てないように――そっと、扉を開く)
ぱいちゃん(少し高そうな学習机。ぬいぐるみが並べられた、ごく普通の、女の子の部屋――)
ぱいちゃん(そしてベッドの上で、真姫ちゃんは、すやすやと眠っていた)
96:
ぱいちゃん(そろそろと――部屋の中に入り込む。寝息を立てている真姫ちゃんの顔を、ちょっと覗いてみた)
真姫「すう・・・すう・・・」
ぱいちゃん(真姫ちゃん・・・)
ぱいちゃん「・・・やっぱり、可愛い」エヘヘ
ぱいちゃん(・・・おっと、いけないいけない。真姫ちゃんが可愛いからって、見とれてる場合じゃない)
ぱいちゃん(プレゼントを置いて、早く出ていかないと・・・)
真姫「・・・うう?ん・・・?」
ぱいちゃん「・・・・・・!?」ビクッ
ぱいちゃん(恐る恐る、振り返る。幸い、寝返りをうっただけみたい)
ぱいちゃん(ほっとした私は――その時、気づいた)
ぱいちゃん(真姫ちゃんの、枕元に――)
ぱいちゃん「靴下・・・?」
99:
ぱいちゃん(サンタなんて信じない、って言っていたのに。なんで、靴下が・・・?)
ぱいちゃん(そしてまた、私は気づいた。そばにあった学習机の上――)
ぱいちゃん「手紙・・・?」
ぱいちゃん(封筒には入っていない。・・・置き手紙?)
ぱいちゃん(サンタやツリーのイラストがプリントされた、可愛らしい便箋)
ぱいちゃん(そこには、色鉛筆で書かれた、真姫ちゃんらしい綺麗な、でもどこか幼さの残る字が並んでいた)
100:
サンタさん。
サンタさんはいないって、しってます。
でも、もしも、もしも、ほんとうにいるなら。
わたしのところにきてください。
わたしのいえにはえんとつがないので、げんかんをあけておきます。
おねがいします、サンタさん。
ぱいちゃん「真姫ちゃん・・・」
101:
ぱいちゃん(サンタなんていない、って言っていた真姫ちゃん)
ぱいちゃん(でも・・・やっぱり、一人で過ごすイブの夜が、寂しくて)
ぱいちゃん(いない、ってわかっていても・・・どこかで、サンタを信じたくなったのかも)
ぱいちゃん「真姫ちゃん・・・」
真姫「サンタさん・・・?」
ぱいちゃん「!?」
103:
ぱいちゃん(恐る恐る、振り返る。目に入ってきたのは――)
ぱいちゃん(ベッドの上で体を起こし、こちらを見つめる、真姫ちゃんの姿)
ぱいちゃん(ヤバい・・・見られた・・・見られた・・・!)
ぱいちゃん(全身から、どっと汗が吹き出す)
真姫「サンタさん・・・なの・・・?」
ぱいちゃん(寝起きの真姫ちゃんは、とろんとした表情で、まだ少し寝ぼけてるように見える)
真姫「ねえ・・・? サンタさん・・・?」
ぱいちゃん(・・・ええい。泥棒に間違われるよりはマシよ)
ぱいちゃん「・・・そうじゃよ、わしがサンタさんじゃよ。真姫ちゃんのために、プレゼントを持ってきたんじゃよ」ホッホッホ
104:
ぱいちゃん(半ばやけくそ気味に、しわがれた声を出してみたら)
真姫「・・・え!? 本当に、サンタさん!?」
ぱいちゃん(・・・予想外に、食いつかれた)
真姫「でも・・・サンタさんって、おじいさんじゃないの・・・?」
ぱいちゃん(・・・ですよねー)
ぱいちゃん「さ、サンタさんも世代交代なのよ。私は、サンタさんの孫で、次期サンタなの」
ぱいちゃん(今度は澄ました声で、滅茶苦茶なことを言う)
ぱいちゃん(幸い、昼間はメガネとマスクをしていたし・・・)
ぱいちゃん(コートは、家にお邪魔するときに脱いだので、昼間の不審者と同一人物だとはバレてないみたい)
ぱいちゃん(偶然着てた、ライブ用のサンタコスが、こんな形で役に立つとは思わなかった)
106:
真姫「ほんとに・・・ほんとにいたんだ、サンタさん・・・」
真姫「それに・・・サンタさんが、女の人だったなんて・・・」
ぱいちゃん(真姫ちゃん、ちょろすぎだよ・・・まあでも、そこがいい)
ぱいちゃん「そうそう。あと、いくらサンタさんのためとはいえ、鍵を開けっ放しにしちゃ駄目よ」
ぱいちゃん「気持ちはすごく嬉しいけど・・・泥棒が入ったりしたら、洒落にならないから」
真姫「ご・・・ごめんなさい・・・サンタさん、入ってこれなかったら困るかなって思って・・・」
ぱいちゃん「大丈夫! 最新のサンタさんは、家の壁をすり抜けられる技術を持っているのだ!」ドヤッ
真姫「ほんとに!? すごーい!」キラキラ
107:
真姫「あ、じゃ、じゃあ、もしかして・・・」モジモジ
ぱいちゃん(真姫ちゃんが、なんだかもじもじそわそわしている。何かを期待するような表情)
ぱいちゃん(・・・勿論、わかってるよ)クスッ
ぱいちゃん「さあ、真姫ちゃんは今年、いい子にしてたかな?」
真姫「・・・・・・・・・!」ブンブン
ぱいちゃん(真姫ちゃんが、一生懸命首を縦に振る。・・・かわええ)
ぱいちゃん「じゃあ、そんないい子でいた真姫ちゃんには・・・」ガサゴソ
ぱいちゃん「・・・じゃ?ん! クリスマスプレゼント!」
真姫「・・・・・・・・・!」パアアーッ
109:
真姫「サンタさん・・・! ありがとう・・・!」
ぱいちゃん(私が渡したプレゼントの包みを、真姫ちゃんは満面の笑みで抱きしめた)
ぱいちゃん(・・・その笑顔が見れただけで、私は良かったよ)
真姫「私・・・今日は、ひとりだったから・・・ありがとう、サンタさん・・・」
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん「やっぱり・・・寂しい?」
真姫「・・・・・・・・・」
110:
ぱいちゃん(聞いてから、後悔した。寂しくないわけ、ないじゃない)
ぱいちゃん(やっぱり・・・私は、肝心なところで抜けてる。こんなこと、真姫ちゃんに訊くなんて・・・)
真姫「・・・寂しい、けど・・・でも、パパもママも頑張ってるから」
真姫「パパとママは、すごいもの。毎日、病院でたくさんの人を診てあげてて・・・」
ぱいちゃん(・・・そっか。真姫ちゃんは、お父さんもお母さんも尊敬しているから・・・)
ぱいちゃん(自分を育ててくれた両親のことが――大切で大好きだから)
ぱいちゃん(だから、こんなに小さいのに、我慢してる)
ぱいちゃん(してるけど、やり場のない気持ちが、きっとプチ家出という形で現れたんだろう)
ぱいちゃん(ほんとに、なんていうか――いじらしいなあ・・・)
111:
ぱいちゃん(そんな時、サイドボードの上に置いてある、小さな盾が目に入った)
ぱいちゃん(“○○ピアノスクール 第××回ピアノコンクール”・・・そんな文字が、金色の文字で掘られてる)
真姫「それね、ピアノの発表会で、真姫、2位だったの」
真姫「6年生のお姉さんもいる中で、真姫が小学生の部で2位だったの。すごいでしょ?」
ぱいちゃん(・・・言葉とは裏腹に。なんだか、真姫ちゃんの表情と声には、元気がなくて)
ぱいちゃん「すごいすごい! そんなすごいコンクールで2位なんて流石だね! 将来はピアニストにだってなれるよ!」
真姫「・・・・・・・・・」
真姫「・・・ううん」
ぱいちゃん(真姫ちゃんは、ちょっと寂しそうに、首を振る)
真姫「私・・・将来、お医者さんになるの。パパの病院を継ぐの」
真姫「それが・・・パパと、ママと・・・私の、夢だから」
112:
ぱいちゃん(私は、何も言えなかった)
ぱいちゃん(真姫ちゃんの言葉は・・・きっと、嘘じゃない)
ぱいちゃん(大好きな両親の期待に応えたい、それが正しいことだ――)
ぱいちゃん(そう思ううち、お医者さんという夢が、真姫ちゃん自身の夢になって)
ぱいちゃん(でも――真姫ちゃんの、本当の夢は?)
ぱいちゃん(音楽が、ピアノが大好きな真姫ちゃんの――やりたいことは?)
113:
ぱいちゃん「・・・真姫ちゃん」
ぱいちゃん(私は、ベッドに腰掛ける)
ぱいちゃん「・・・真姫ちゃんは、ピアノが好きなんでしょう?」
真姫「それは・・・好き、だけれど・・・」
ぱいちゃん(当たり前だ。好きなことだけやって生きていけたら、苦労しない)
ぱいちゃん(私だって、そうだった。やりたいことがあって、でもそれがなかなか叶わなくて――)
ぱいちゃん(若さゆえ、だけれど。自分の中で思い描いていた理想と違うことが、嫌で嫌で、苦しくて、つらくて――)
ぱいちゃん(でも――だから、私は――)
ぱいちゃん(やりたいことができない――そのつらい気持ちは、すごくよくわかる)
114:
ぱいちゃん「私はね――歌だった」
真姫「・・・え?」
ぱいちゃん「歌うことが、誰よりも好きで・・・歌いたい、ただその一心で・・・」
真姫「・・・サンタさん?」
ぱいちゃん「・・・ね、真姫ちゃん」
ぱいちゃん「歌おっ!」
真姫「・・・え?」
115:
歌おう。
1人で歌っても楽しい。
誰かと歌えば、もっと心が踊る。
そうだ。みんなで歌うと、とっても楽しいってこと――
私も、みんなに、教えてもらったんだ。
116:
ぱいちゃん「真っ赤なお鼻の トナカイさんは♪」
ぱいちゃん「いつもみんなの わらいもの♪」
ぱいちゃん「さ、一緒に?!」
真姫「・・・でも、その年の クリスマスの日♪」
真姫「サンタのおじさんは いいました♪」
ぱいちゃん「暗い夜道は ぴかぴかの♪」
真姫「おまえの鼻が 役に立つのさ♪」
2人「「いつも泣いてた トナカイさんは♪」」
2人「「今宵こそはと 喜びました♪」」
117:
真姫「・・・わあ?! サンタさんって、歌がとっても上手なんだ!」
ぱいちゃん「えへへ・・・真姫ちゃんもね」
ぱいちゃん「・・・ね、真姫ちゃん」
真姫「・・・え?」
ぱいちゃん「好きなことを・・・好きだって思える気持ちを、忘れないでほしいの」
真姫「好きなこと・・・?」
ぱいちゃん「勿論ね、好きなことだけやるのは大変。思い通りにならなくて、つらい思いをすることもたくさんあるわ」
ぱいちゃん「でもね・・・真姫ちゃんもいつか、自分の好きなことを自分で選ぶことの大切さを、知ってほしいの」
118:
ぱいちゃん「でも、ひとりで頑張ってると、きっとくじけそうになると思う。潰れちゃいそうになると思う」
ぱいちゃん「私も、ずっとひとりだったから――ひとりで頑張ることのつらさは、よくわかるよ」
ぱいちゃん「だけど、私は巡り会えた。わかり合える仲間、大切なメンバーに」
ぱいちゃん「ひとりの時に考えるのは、自分のことばっかりで――」
ぱいちゃん「辛くて悩んで泣くことは、自分のことでばかりだったけど――」
ぱいちゃん「みんなで頑張るようになると、みんなのことを考えられる。みんなで共感できる」
ぱいちゃん「つらい時に、相談だって、できるようになるんだよ」
119:
ぱいちゃん「真姫ちゃんも、いつか必ず、巡り会える。大切な仲間、大切な友達に」
ぱいちゃん「だから――そんな、素敵な仲間に巡りあった時に――」
ぱいちゃん「真姫ちゃんは、自分の好きなことを、自分で選んでほしいの」
ぱいちゃん「そうしたら・・・もっともっと、キラキラ眩しいなにかを、知ることができるから――」
真姫「・・・サンタさん・・・」
120:
真姫「ありがとう、サンタさん・・・私、ピアノ、もう少し続けてみるね」
真姫「・・・好きだから」
ぱいちゃん(そう言って、はにかむ真姫ちゃんの顔は・・・なんだかキラキラ、輝いて見えた)
ぱいちゃん「・・・ごめんね。少し、話しすぎちゃった。そろそろ、行くね」
真姫「え・・・行っちゃうの・・・!?」
ぱいちゃん「ごめんね。サンタさん、他の子たちのところにも行かなくちゃ」
真姫「あ・・・じゃ、じゃあ、ちょっと待って!」
ぱいちゃん(ベッドから降りた真姫ちゃんは、机に駆け寄って、何かを書いている。なんとなく、私は見ないようにする)
122:
真姫「これ・・・サンタさんに・・・!」
ぱいちゃん(そう言って、真姫ちゃんが差し出したのは――小さく折りたたんだ、手紙と――)
ぱいちゃん「・・・バラの花・・・の、飾り?」
真姫「これ、発表会でもらった、ブーケの中のお花・・・」
真姫「サンタさんに、1つ、あげる」
ぱいちゃん「そんな・・・大切なものを・・・」
ぱいちゃん(私は、手紙とバラの飾りを受け取って――そっと、胸に抱いた)
ぱいちゃん「ありがとう・・・大切にするね」
132:
ぱいちゃん「・・・それじゃ、ちゃんと鍵、閉めるのよ」
真姫「うん」
ぱいちゃん(玄関まで送ってくれった真姫ちゃん。名残惜しいけれど、長居をする訳にもいかない)
真姫「・・・ね、サンタさん」
ぱいちゃん「ん?」
真姫「・・・来年も、また・・・来てくれる・・・?」
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(咄嗟に、言葉が詰まる。でも、真姫ちゃんの期待は、裏切れなくて)
ぱいちゃん「・・・勿論。真姫ちゃんがまた、いい子にしてたら、ね」
真姫「・・・・・・うんっ!」
ぱいちゃん(・・・満面の笑みに。なんだかちょっと、切なくなった)
134:
ぱいちゃん(玄関の扉を、そっと開けて、外に出る)
ぱいちゃん(その時――私の目に、入ってきたもの――)
真姫「わあ・・・! 雪だ・・・!」
ぱいちゃん(暗い空から、ちらちらと舞い散る雪)
ぱいちゃん(儚くて――でも、とっても綺麗で――)
ぱいちゃん「・・・真姫ちゃん」
真姫「・・・え?」
ぱいちゃん「会えてよかった」
ぱいちゃん「・・・メリー・クリスマス」
ガチャン
135:
真姫「・・・・・・・・・」
真姫「サンタさん・・・」
真姫「・・・あ。そうだ、サンタさんのプレゼント、開けてみよう」
ガサゴソ
真姫「・・・これ・・・」
真姫「クマさんの・・・ぬいぐるみ・・・」
真姫「・・・・・・・・・」ギュッ
真姫「ありがとう・・・サンタさん・・・」
136:
ぱいちゃん(お礼を言うのは、こっちの方だよ)
ぱいちゃん(今の私があるのは・・・真姫ちゃんに、出会えたから)
ぱいちゃん(真姫ちゃんと・・・μ'sのみんなと出会えたから、ここまで来れた)
ぱいちゃん(真姫ちゃんのおかげで・・・いろんな、素敵な景色を、見ることができたんだよ)
ぱいちゃん(・・・ありがとう、真姫ちゃん)
空を見上げてみた。
ゆっくり、ゆっくり、舞い降りる雪。
周りの景色が、白く、白く、染まっていって――
ぱいちゃん(これからも、一緒に歩いて行こうね。寄り添って)
ぱいちゃん(大好きだよ、真姫ちゃん)
137:
…………
……

チュンチュン
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(・・・カーテンの向こうから差し込む、柔らかい光)
ぱいちゃん(気づいたら・・・私は、サンタコスのまま、自分のマンションのベッドの上にいた)
ぱいちゃん(体を起こしながら、枕元にあった時計を手に取る。12月24日の朝――)
ぱいちゃん「夢・・・だったの・・・?」
ぱいちゃん(その時――)
ぱいちゃん(私の指先が、何かに触れた)
138:
ぱいちゃん(手元にあった、それは――)
ぱいちゃん「バラの花飾り・・・それと・・・」
ぱいちゃん(――手紙)
ぱいちゃん(折りたたんであるそれを、そっと開く)
ぱいちゃん(そこに書いてある言葉を読んで――自然と、笑みがこぼれてきた)
ぱいちゃん「夢だけど――」
ぱいちゃん「――夢じゃなかった」
139:
サンタさんへ
わたしのところへきてくれてありがとう
プレゼントもありがとう
いっしょにうたがうたえてうれしかったです
わたし、がんばるから
サンタさんも、がんばってね
まき
140:
…………
……

真姫(μ'sのみんなで、合宿にやって来た別荘)
真姫(ここ数年は、毎年、この別荘でクリスマスを過ごしてる)
真姫(経営が安定したお陰で、毎年家族でクリスマスが過ごせると――)
真姫(嬉しそうに話すパパとママを見てると、私も嬉しくなる)
真姫(それにしても・・・)
141:
にこ「ぷぷ・・・あんた・・・真姫が・・・サンタ・・・!」
花陽「にこちゃん!」
絵里「それは駄目よ!」
穂乃果「駄目だよ! それを言うのは重罪だよ!」
凛「そうにゃ! 真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!」
真姫(にこちゃんと、他のみんなは、なにを揉めてるのかしら? ・・・イミワカンナイ)
142:
真姫(・・・サンタさん)
真姫(サンタさんの言う通りだったわ。私は、大切な仲間、友人と巡り会えて――)
真姫(自分の好きなことを、自分で選ぶことができた)
真姫「・・・ありがとう、サンタさん」
真姫(・・・今年もまた、来てくれるかな?)
143:
…………
……

ぱいちゃん(・・・結局、あの出来事はなんだったんだろう?)
ぱいちゃん(夢? 現実? ・・・でも私は、深く考えないようにした)
ぱいちゃん(だって今日は、クリスマスイブ。どんな奇跡が起こったって、不思議じゃないもんね)
ぱいちゃん「・・・真姫ちゃんにも、会えたしね」
ピロリン♪
ぱいちゃん「・・・あ。μ'sのみんなから、LINEだ」
145:
ぱいちゃん「・・・ふふっ、えみつん、また『ファイトだよ!』って・・・いっつも同じじゃない」プッ
ぱいちゃん「他のみんなも・・・忙しいくせに、LINEなんてしてないで、自分の仕事しなさいよ」クスクス
ぱいちゃん「・・・・・・・・・」
ぱいちゃん(・・・真姫ちゃん)
ぱいちゃん(私も、巡り会えたよ。素敵な仲間に)
スタッフ「Pileさん、そろそろ準備お願いしまーす!」
ぱいちゃん「はーい!」
149:
MC「さあ会場にお集まりの皆さん、お待たせしました! Pileさんの登場でーす!!」
ワーワー
キャーキャー
ぱいちゃん「みなさん、こんばんはー! Pileでーす!!」
ぱいちゃん(会場を埋めた、みんなの顔。照りつけるスポットライト)
ぱいちゃん(・・・これも、真姫ちゃんが連れてきてくれたステージ)
ぱいちゃん(そして私の、サンタ風のライブ衣装の胸元には)
ぱいちゃん(――赤い、バラの花飾り)
150:
MC「今日はクリスマスイブということで・・・」
MC「Pileさんから、ぜひ会場の皆さんに、クリスマスらしい一言をお願いできますか?」
ぱいちゃん「クリスマスらしい一言・・・ですね。わかりました!」
ぱいちゃん(・・・実はもう、考えてあったりして)クスッ
ぱいちゃん「イブの夜に、大人しく寝てたら、枕元に私がいるかもよ♪」
おしまい
153:
乙!
154:
乙ー
15

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