違和感【俺ガイル】back

違和感【俺ガイル】


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1:
注意。
八幡×小町です
地の文(になっているかは分からない)メインです。
短編で、完結してます。
ちょいエロです。
お願いします。
2:
 違和感を感じるという言葉に違和感を感じたことはあるだろうか。
 諸説あり、それでいいという人もいれば、違和感は覚えるもんだという人もいるし、違和感に気づくという人もいる。
 だが、少し待ってほしい。
 違和感と言うものはそもそもがいつも=日常とは違うものに対して感じるものであり、覚えようが気づこうが、それこそ感じようが大事なのは“違和感”が存在していることなのではないだろうか。
 つまり、比企谷八幡という存在がクラスにとって違和感の塊だったとして、それを感じようが覚えようが気づこうが、当の本人はそれを知ることがないのだからどの表現を使ったとしても、何も思う所がないということだ。
3:
 では、現在比企谷家を支配している違和感の正体はなんだろうか。
 視界にはいつもの比企谷家しか存在していない。
 築十数年の建築物だが煙草を吸わない両親のおかげで白さを保っている壁紙、毎週小町と交代で掃除しているため隅までピカピカの廊下、夜にトイレへ行くことを怖がる小町の為にマメに変えている明々とした電球、全てがいつも通りだった。
 触覚的にはどうか、これも別段変わりはない。
 初冬ということもあり、廊下の床は冷たく、空気の流れがないために外ほどの寒さは感じない。やはり、いつも通りの比企谷家だ。
 嗅覚的には……少し違和感があった。
 いつもなら家族四人が生活し、外出した後の臭いに満たされているはずだが、今はそれよりも新鮮なにおいがどこからともなく鼻を刺激している。決して良い匂いとは言えないそれは、どこかで嗅いだ事のある懐かしさよりも親しみのようなものを感じさせた。
 そして、聴覚に意識を集中させる。
(なんだ……水の音?)
4:
 ジャバジャバというレタスを洗う時のような豪快な水音が遠くから聞こえた。
 だが、方向的には台所ではなく、その奥の洗面所辺りから聞こえるような気がする。
 俺は夜中にヘッドフォンを着用してバイオハザードをプレイするような緊張感と共に、一歩、また一歩と歩みを進めた。
 そして――開く。
 流石に十数年も建てばドアは軋み、微かだが「きぃ」という音を立てた。
 だが、逆に言えば家族四人で出入りを4回以上、洗濯や朝の洗顔を含めれば十数回は毎日開閉していると言うのにこの程度で済んでいるのは、流石は日本の技術力と言えるだろう。
 事実、そのきぃという音は水音に完全にかき消され、洗面所で健康的なつるりとしたお尻を丸出しにして、半べそをかきながらスカートとパンツを洗っている妹は俺の存在に全く気付いていないようだった。
(……あ……え?)
5:
 違和感なんてレベルじゃない。
 目の前に広がる異常な光景は、俺の思考を土台からぶち壊すのに十二分で、走馬灯のように妹との思い出が駆け巡る。
 ……え、改めて思いだすと小町って可愛すぎじゃね?
 思考のトリップは一瞬で、すぐさま理性を取り戻した俺はこの次の行動を迫られた。
 もちろん視線は小町の想像よりも女性らしいプリンとしたお尻を永久保存するのに精いっぱいで、実際に何が起きたのか把握することは当分難しそうだ。
 かといって、このまま立ち止まっていたらいずれ小町は俺がここにいることに気づくだろう。
 その時に目線が少しでも下がっていたら、変態お兄ちゃんの名をほしいままにしてしまう。妹が一生喋ってくれないなんて嫌だ!
 ……蔑んだ目で見られるのは少し良い…くない!
6:
 俺は思い出す。かつて、様々な場面で失敗を繰り返してきた。
 林間学校で皆のご飯を地球に還した時。
 ドッジボールで至近距離から女子の顔面に思い切りボールをぶつけた時。
 修学旅行でパンツを忘れて集合時に先生に名前を呼ばれた時。
 いつだって、最も心を抉るのは“視線”。
 咎めるような、責めるような、憐れむような、嘲笑うような、そんなこの世の悪意を詰め込んだような視線。
 それが身体に刺さると、インフルエンザにかかったような脱力感と、サウナに入ったような発汗、50メートルを全力で駆け抜けたような動悸、そして何より今すぐ千葉から富士の樹海に突入したくなるような苦しみと後悔が全身に広がるのだ。
 それを知っている俺が、誰よりも放っておいてほしい時に放っておいてくれない痛みを理解している俺が、このまま小町に対してやれることはただ一つ。
(気づかれないように……去る)
7:
 ゆっくりと気づかれないように退散し、何事もなかったかのように家を出ることだ。
 そう言えば、国民的ラノベ「俺は青春ラブコメの劣等生オンライン」略して流石ですお兄様最新刊129巻の発売日だった。
 早く買いにいかな――、
「……あ…」
 人生とは失敗の連続であり、後悔の森をコンパスもなく歩き続ける行為に等しい。
 何度も何度も同じ場所を回っては、それに気づくことすらない。同じ木の根に引っ掛かり、同じ木の枝に頭をぶつける。
 成長したのは失敗に諦める潔さだけ。
 ドアの角と小指が衝突し、つま先から脳天へ痛みが雷光のように駆け巡る。
「いたっ!?」
8:
 人は弱い。
 どれだけ他人ことを想っていても、
 どれだけ強い信念があっても、
 どれだけ凄惨な過去があっても、
 こんなに単純に崩れ去ってしまうのだから。
「……あ…う…」
 それでも、足の痛みよりも先に小町の事を確認したのは、俺の兄としての最後のプライドだったように思える。
 俺の方を向いて、三白眼、いや四白眼になるほど目を見開いている。
 肩は小刻みに震え、息は荒い。
 水道から流れ落ちるジャージャーという水音にかき消されて、彼女のパクパクと開く口が何を発しているのかは分からなかったが、
 俺がとる行動は一つ。
9:
「訴えないでください」
 有史以来最も完璧な土下座が、ここに誕生した。
10:
「そっか……、我慢できなかったのか」
 比企谷八幡の部屋は階段の突きあたりに存在していて、両親の部屋へ行くには必ず俺の部屋の前を通る。
 つまり、小町の泣き声は外に漏れると気づかれる可能性があり、
 もし帰宅した親父にそれがバレ、しかも俺がこうして膝の上に小町を乗せて頭を撫でているところを見られようものなら、
 千葉県にホームレスが1人増えることとなるのだ。
 だが、それでも、そのリスクを負ってでも俺は小町の心のケアを優先した。
 別に優しさなどではない。
 身内が苦しんでいれば助けるのが道理だし、 見返りを求めぬ優しさなんて偽善だ。
 小町を慰めることは当たり前で偽善じゃないのだから、そこに優しさなど介入する余地もない。
 それが家族ってもんだ。
 女子が腹痛で苦しむ俺を見て「だいじょうぶー?」と言いながらもその目に一切の心配もないのが優しさであり、
 同時にクラスメイトから比企谷ごときを気にかける私可愛いでしょアピールするのが見返りだ。
 数度繰り返せば、比企谷を心配するなんて変じゃねと思われていることに気づき、やめる。
 こうして比企谷八幡は救急車が到着するまでじっと独りで痛みに耐えるのだった。
 って、さっきから過去の傷を舐めすぎだろ俺。
11:
「うん……」
 小町は問いに対して小さく答え、ギュッと俺の腹部を抱きしめた。
 ベッドに腰掛けた状態でもたれかかるように行われたそれは、
 不謹慎にも少しだけエッチな妄想が頭によぎり、下半身に熱いもの感じたが俺はそれを必死に抑えた。
 小町の温かさを身体で感じること数分、ようやく落ち着きを取り戻してきたのか、
 俺の腹部にゴリゴリと顔を擦りつけ、その後「ぶーーーっ」と吐息を吹きかけた。
 もちろん俺の息子はフェスティバっていたが、そんなことが些細に感じるほど――、
 小町が俺に向けた視線は欲情的で、女性的だった。
 「もう、おにぃちゃんの所為でお嫁にいけないじゃん」
12:
 いつもなら冗談めいた感じで両頬をぷくーと膨らませ、
 眉は釣り上がって笑いをこらえているのがバレバレなのだが、
 今回は違った。
 透き通る瞳は潤み、
 眉は垂れ下り頬は赤い。
 視線は伏し目がちで両手は俺の服をギュっと掴んで逃がさないぞと主張している。
 つまり、本気だ。
「せ、責任とれって言うのか? 俺の将来の夢は専業主夫だぞ。甲斐性なんて千葉県の海抜よりも低いぜ」
13:
 あまりの焦りに何を言っているのか自分でもわからない。
「大丈夫、期待してないから」
「ひ、ひでーな。俺はこれでも国語学年三位なんだぜ」
「大丈夫、何の役にも立たないから」
 だが、焦ると言うことは俺の中で小町の本気に応えてしまうかもしれない自分がいる訳で、
 ゆっくりと俺の唇を奪いに後頭部を抱える妹に何もできないのも納得できる事象だった。
 ――ちゅぷり。
 本当に、そんな音が口内に響いたと思う。
 実際には唇と唇が触れただけ、ただそれだけなのだが、
 一瞬だけ小町の舌先が俺の固く閉じたモノをねじ開けようとした感覚が確かにあった。
「えへへ……、小町にはもう、おにぃちゃんしかいないんだからね」
14:
 崩れて消えそうなほど儚げな笑みを見せた小町と、
 何度も、
 何度も唇を重ねた。
 気づいたら俺の中で違和感は消え、
 ああ、これからは小町とこうしないことこそが違和感になるんだなと、腑に落ちた自分に笑った。
 舌を絡め、
 唾液を共有し、
 吐息を交換するその先には、一体何が待っているのだろうか。
 今はただ、その快楽を貪るのみである。
(弁当に下剤入れておいて本当に良かった。)
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