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ココア「みんなー! おでんできたよー!」
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1:
チノ「すごくいいにおいがしますね」
リゼ「ココアは小器用だなぁ」
千夜「大根、こんにゃく、ちくわにハンペン。玉子とがんも。
……ニンジンが入っているのは珍しいわね?」
ココア「ふふーん。私のお母さんが作ったおでんは、ニンジンが入ってたんだよー」
シャロ「ちょっと!」ドン!
ココア「わっ! ……どうしたの? シャロちゃん」
シャロ「どうして私のは大根しか入ってないのよ!
しかもラーメンどんぶりに山盛りで!」
3:
ココア「え……」
シャロ「おかしいじゃない! なんで私のだけみんなのと違うのよ!」
千夜「わー、本当ねぇ……。
シャロちゃんのだけ器が倍の大きさだし、具が大根だけだわ」
リゼ「確かにおかしいな。どうしてだ? ココア」
ココア「そ、それは……」
シャロ「なんなのよ! 嫌がらせ!?」
ココア「違う……。違うのに……」ポロポロ
シャロ「あ……」
5:
チノ「ココアさん……。泣かないでください」
ココア「ごめんねぇ……! シャロちゃん……、ホントごめん……」ボロボロ
シャロ「ちょ、ちょっと……。泣くことないじゃないの……」
ココア「ひぐ……っ! うう……っ! だってぇ……。
シャロちゃん……、おでんの大根好きだって言ってたからぁ……!」
シャロ「確かに言ったけど……」
リゼ「それでシャロのは大根だけだったのか」
7:
ココア「シャロっ……ちゃんが……っ、喜ぶと思ってぇ……っ!」ボロボロ
シャロ「わ、分かったわよ。……私の方こそ、悪かったわ」
ココア「……怒って、ない?」
シャロ「もちろんよ。大根がたくさんあってうれしいわ」
ココア「良かったあ!」パァァ
千夜「でもこれだとバランスが悪いから、
他の種類も入れてあげて、大根を大目にすればいいんじゃないかしら」
シャロ「そうね。せっかくココアが作ってくれたんだし、他のも食べたいわ」
ココア「うんっ! 他のも持ってくるね!」トタタッ
9:
シャロ「う……」
ココア「どうしたの? シャロちゃん。
……もしかして、おいしくなかった?」
シャロ「いや、おいしいはおいしいんだけど……。
少し量が多くて……」
ココア「そう……。
シャロちゃんが喜んでくれるかと思ってたくさん作ったんだけど……。
迷惑だったよね……。うう……っ!
ホントごめん……っ! ごめんねぇ……っ!」ボロボロ
シャロ「な、泣かないでよ! 全部食べるから!」モソモソ
11:
チノ「ふう。ようやく後片付けが終わりましたね」
ココア「そうだねー」ニコニコ
チノ「……? さっきから随分ご機嫌ですね」
ココア「だって、シャロちゃん喜んでくれてたでしょ?
おいしいおいしいって言って、全部食べてくれたのがうれしいんだー」
チノ「そうですか……」
ココア「明日も作ってあげよーっと」
12:
シャロ「……こんな時間にどうしたのよ」ガチャッ
ココア「えへへー。これ作ってきたんだー」ガサゴソ
シャロ「……」
ココア「はい! おでん!」
シャロ「……ココア」
ココア「なぁに? シャロちゃん」
シャロ「時間を考えて。もう夜中の2時よ」
ココア「えっ……」
13:
シャロ「私はもう寝ていたの。明日も学校で早いから」
ココア「そんな……。私はシャロちゃんが喜ぶと思って……」
シャロ「気持ちは嬉しいけど、家に来るなら明日の朝でもいいでしょう?」
ココア「おいしくできたから……、すぐにシャロちゃんに食べさせたくって……。
うう……っ。うううう……っ! うあああああああああああっ!!!!
シャロ「!?」
ココア「ごめえええええんっ!!!!!!
シャロちゃんごめんねええええええっ!!!!」
シャロ「ちょ、ちょっとココア……! 近所迷惑よ……っ!」ヒソヒソ
ココア「うあああああああああああん!!!!!」
14:
ココア「ひぐ……っ。ひぐ……っ」グスグス
シャロ「……どう? 少しは落ち着いた?」
ココア「うん……。シャロちゃん、本当にごめんなさい……」ポロポロ
シャロ「もう……。泣かないでったら……」
ココア「だって……。だってえ……っ!
シャロちゃんが優しいからあ……っ!」
シャロ「はぁ……。(何なのよ、この子は)」
16:
ココア「おはよう! シャロちゃんっ!」ニコニコ
シャロ「……おはよぅ。(結局家に泊めてしまったわ)」
ココア「んんー……! ふわーあ……」
シャロ「……? 随分眠そうね」
ココア「んー……。一晩中シャロちゃんの寝顔見てて、一睡もしてないからぁ……」
シャロ「え……」
ココア「シャロちゃんの寝息も録音したし、いい写真もたくさん取れたんだー。
目の前に無防備なシャロちゃんがいると思うと、
つい襲い掛かっちゃいそうで……。
我慢しすぎて気が狂いそうだったよぉ」
シャロ「な……! (狂ってる……。ココアは狂ってるわ……)」
19:
千夜「ココアちゃんが?」
シャロ「そうなのよ……。夜中に家まで来て……」ガタガタ
千夜「そう……」
シャロ「怖かった……。すごく怖かったのよ……!」ブルブル
千夜「シャロちゃん……」
シャロ「ううう……っ」
千夜「……そういうことなら、私に任せて」
シャロ「え……」
千夜「私が何とかするわ」
20:
千夜「チノちゃん。こんにちは」カランコロン
チノ「こんにちは、千夜さん。ラビットハウスに来るなんて珍しいですね」
千夜「ええ、ちょっと。ココアちゃんに用事があって」
チノ「ココアさんに……」
千夜「……どうしたの?」
チノ「ココアさん……、様子が変なんですよ。
今も厨房にこもって、おでん作ってるんです……。
たまにシャロさんの名前を呼んでは、ニタニタ笑ってて……」
千夜「そうなの。じゃあ厨房にちょっとお邪魔していいかしら。
チノちゃんはお店のことをやってて平気よ。
ココアちゃんのことは私に任せてね」
22:
千夜「ココアちゃん。こんにちは」
ココア「……邪魔しないで」グツグツ
千夜「おでんの鍋は、あまり沸騰させない方がいいわよ」
ココア「そんなこと分かってるよ。沸騰させてないのは向こうにあるから」
千夜「そう……。ひぃふぅみぃ……。同時にいくつ作ってるのかしら」
ココア「味付けと煮る温度を変えて、20種類だよ」
千夜「……シャロちゃんは」
ココア「……なぁに」
千夜「もうココアちゃんのおでんは食べないわよ。
ココアちゃんには会わないって」
23:
ココア「でたらめ言わないでッ!」ガチャン!
千夜「……でたらめじゃないわ」
ココア「でたらめだよ! シャロちゃんが私に会わないなんてッ!
あはははははっ! もしかして! もしかして、千夜ちゃん嫉妬してるの!?
昨日なんて私、シャロちゃんと一緒に寝ちゃったよ!
一つのベッドで裸で抱き合って、一晩中愛し合ったの!」
千夜「……それこそでたらめね。さっき、シャロちゃんに話を」
ココア「うるさいうるさいッ! 少し黙っててよ!」
千夜「黙らないわ。シャロちゃんはココアちゃんのことを」
ココア「黙ってって言ってるでしょ!?」ガッシャーン!
25:
ココア「黙れ黙れ黙れ黙れェッ!」ゴシャッ!
千夜「……」
ココア「うふっ……。んっはははは……っ」
千夜「……」
ココア「あっははははははははははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははは」
千夜「……」
ココア「ようやく黙ってくれたねー。
これで、おでん作りに専念できるよぉ」
28:
トントン。
玄関がノックされる音を、シャロは聞いた。
シャロ「千夜っ!?」ガチャッ
慌てて扉を開くと、
口元のみに笑みを浮かべているココアの顔が視界に飛び込んでくる。
29:
シャロ「……ココア。
いったい何の用よ……。千夜はどうしたの……?
千夜が尋ねていったはず……。何よ、これ。……おでん?
別にいらない……。何よ、その目は。
これ、何が入ってるの。
……スープが真っ赤じゃない。
ねぇ……、千夜はどうしたのよ……。
何か言いなさいよ。
……何か言いなさいよッ!!!
千夜は……! ちょっと、やめっ……! 離してえっ!
千夜はどこに行ったの!? 千夜ぁ!!!
離しなさいよっ! ふざけないで……。
……やめてよ。何、してるのよ。
馬鹿なことはやめ……。
誰か! 助けてェ! 誰か……っ!
千夜ぁ! 助けてっ! 千夜ああああああああっ!!!!!!」
終わり
31:
おつ
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